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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148813
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】重荷重用空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/06 20060101AFI20231005BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20231005BHJP
   B60C 15/00 20060101ALI20231005BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20231005BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20231005BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20231005BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B60C15/06 F
B60C9/00 J
B60C9/00 A
B60C15/00 L
B60C11/03 100B
B60C9/00 C
B60C11/00 G
B60C15/06 N
B29C33/02
B29C35/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057053
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻林 聡子
【テーマコード(参考)】
3D131
4F202
4F203
【Fターム(参考)】
3D131AA32
3D131AA39
3D131AA44
3D131BA03
3D131BB03
3D131BC02
3D131BC12
3D131BC20
3D131BC31
3D131BC34
3D131BC35
3D131BC36
3D131BC42
3D131BC51
3D131BC55
3D131DA43
3D131DA58
3D131EA02U
3D131EB11V
3D131EB11W
3D131EB11X
3D131EB16V
3D131EB16W
3D131EB16X
3D131EB23V
3D131EB23X
3D131EB24V
3D131EB24X
3D131EB28V
3D131EB28W
3D131EB28X
3D131EB72X
3D131EC01X
3D131EC12V
3D131EC12W
3D131HA37
3D131HA42
3D131HA43
3D131HA44
3D131HA45
3D131LA28
4F202AA45
4F202AB03
4F202AH20
4F202AJ08
4F202AJ12
4F202AR11
4F202CA21
4F202CU01
4F202CY17
4F202CY21
4F203AA45
4F203AB03
4F203AJ08
4F203AJ12
4F203AR11
4F203DA11
4F203DB01
4F203DC01
4F203DD10
4F203DL10
4F203DL11
(57)【要約】
【課題】 加硫時間の短縮を図りつつ、ショルダー陸部に設けられた穴周辺のスポット摩耗の発生を抑制し、穴を起点とする欠けやリブテアの発生を抑制することができる、重荷重用空気入りタイヤ2の提供。
【解決手段】このタイヤ2は、ショルダー陸部28sには、その外面からベルト14に向かって延びる複数の穴を備える。並列した多数の繊維コードを含み、この繊維コードがナイロン繊維からなる繊維補強層を備える。この繊維補強層22は、内側繊維補強層66と、外側繊維補強層68とを含む。この内側繊維補強層66は、軸方向において外側からスチール補強層20の外端を覆い、外側繊維補強層68は、軸方向において外側から内側繊維補強層66の外端を覆う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に延びるコアを有する一対のビードと、
一方のコアと他方のコアとを架け渡す本体部と、前記本体部に連なりそれぞれのコアの周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部とを有し、並列した多数のカーカスコードを含むカーカスプライを備えたカーカスと、
前記本体部の径方向外側に位置するトレッドと、
前記本体部の径方向外側に位置し、前記トレッドの径方向内側に位置するベルトと、
前記コアの周りで折り返され、軸方向において前記本体部の内側に位置する内端と、軸方向において前記折り返し部の外側に位置する外端とを有し、並列した多数のスチールコードを含む、スチール補強層と、
並列した多数の繊維コードを含む繊維補強層と、を備え、
前記トレッドには、軸方向に並列した少なくとも3本の周方向溝が刻まれることにより、軸方向に並列した少なくとも4本の陸部が構成され、これら周方向溝のうち、軸方向において最も外側に位置する周方向溝がショルダー周方向溝であり、これら陸部のうち、軸方向において最も外側に位置する陸部がショルダー陸部であり、
前記ショルダー陸部には、その外面から前記ベルトに向かって延びる複数の穴が設けられ、
前記繊維コードがナイロン繊維からなり、
前記繊維補強層は、軸方向において最も内側にある内側繊維補強層と、軸方向において最も外側にある外側繊維補強層とを含み、前記内側繊維補強層は、軸方向において外側から前記スチール補強層の外端を覆い、前記外側繊維補強層は、軸方向において外側から前記内側繊維補強層の外端を覆う、重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記穴から前記ショルダー陸部の外端までの距離は、前記ショルダー陸部の軸方向最大幅の0.12倍以上0.88倍以下である、請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記穴の深さは、前記ショルダー周方向溝の深さの1/3倍以上1倍以下である、請求項1又は2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項4】
径方向において、前記外側繊維補強層の外端が前記折り返し部の端よりも外側に位置し、
前記外側繊維補強層の外端までの径方向距離は、前記折り返し部の端までの径方向距離の1.4倍以上1.8倍以下である、請求項1から3のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項5】
径方向において、前記内側繊維補強層の外端が前記外側繊維補強層の外端よりも内側に位置し、
前記内側繊維補強層の外端までの径方向距離は、前記外側繊維補強層の外端までの径方向距離よりも小さく、その差は10mm以上15mm以下である、請求項1から4のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記繊維補強層における、前記繊維コードの本数は、前記繊維補強層の幅50mmあたりに20本以上70本以下である、請求項1から5のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記内側繊維補強層において、前記繊維コードが前記カーカスコードに対して傾斜し、
前記外側繊維補強層において、前記繊維コードが前記カーカスコードに対して、前記内側繊維補強層における繊維コードとは逆方向に傾斜し、
前記内側繊維補強層における繊維コードと前記カーカスコードとの交差角度が40度以上80度以下であり、
前記外側繊維補強層における繊維コードと前記カーカスコードとの交差角度が40度以上80度以下である、請求項1から6のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記内側繊維補強層において、前記繊維コードが前記カーカスコードに対して傾斜し、
前記外側繊維補強層において、前記繊維コードが前記カーカスコードに対して、前記内側繊維補強層における繊維コードとは逆方向に傾斜し、
前記内側繊維補強層における繊維コードと前記外側繊維補強層における繊維コードとの交差角度が80度以上160度以下である、請求項1から7のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
重荷重用空気入りタイヤのトレッドは、大きなボリュームを有する。特にショルダー部は、ボリュームが大きく熱が伝わりにくい。そのため、重荷重用空気入りタイヤでは、ショルダー部の形成に必要となる加硫時間が加硫反応の律速となる。そこで、ショルダー部に熱伝導体を挿入した状態で加硫を行い、加硫時間の短縮を図ることが提案されている(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-116976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、製造時に熱伝導体が挿入された穴がトレッドに形成された場合、完成したタイヤにおいて、穴付近の剛性が低くなるため、当該穴の近傍において局所的な摩耗(本明細書では、スポット摩耗ともいう)が発生することがある。そして、このような穴周辺のスポット摩耗が発生すると穴における石噛みや突起物の引っ掛かりが助長される。特に横力のかかりやすい使用条件下では石や突起物が穴に噛み込んだ状態でタイヤ幅方向外側への力が働くことで亀裂が入り、穴を起点とする欠けや、ショルダー部における陸部のちぎれを伴う損傷(リブテアとも称される)が発生する恐れがある。
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、加硫時間の短縮を図りつつ、穴周辺のスポット摩耗の発生を抑制し、穴を起点とする欠けやリブテアの発生を抑制することができる、重荷重用空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、ショルダー部に熱伝導体を挿入した状態で加硫を行い、加硫時間の短縮を図る製造方法を採用しつつ、完成したタイヤにおけるスポット摩耗の発生や、穴を起点とする欠けや陸部テアの発生を抑制する技術について鋭意検討したところ、ビードの部分に所定の補強層を設けることにより、上述した目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明に係る重荷重用空気入りタイヤは、周方向に延びるコアを有する一対のビードと、
一方のコアと他方のコアとを架け渡す本体部と、前記本体部に連なりそれぞれのコアの周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部とを有し、並列した多数のカーカスコードを含むカーカスプライを備えたカーカスと、
前記本体部の径方向外側に位置するトレッドと、
前記本体部の径方向外側に位置し、前記トレッドの径方向内側に位置するベルトと、
前記コアの周りで折り返され、軸方向において前記本体部の内側に位置する内端と、軸方向において前記折り返し部の外側に位置する外端とを有し、並列した多数のスチールコードを含む、スチール補強層と、
並列した多数の繊維コードを含む繊維補強層と、を備え、
前記トレッドには、軸方向に並列した少なくとも3本の周方向溝が刻まれることにより、軸方向に並列した少なくとも4本の陸部が構成され、これら周方向溝のうち、軸方向において最も外側に位置する周方向溝がショルダー周方向溝であり、これら陸部のうち、軸方向において最も外側に位置する陸部がショルダー陸部であり、
前記ショルダー陸部には、その外面から前記ベルトに向かって延びる複数の穴が設けられ、
前記繊維コードがナイロン繊維からなり、
前記繊維補強層は、軸方向において最も内側にある内側繊維補強層と、軸方向において最も外側にある外側繊維補強層とを含み、前記内側繊維補強層は、軸方向において外側から前記スチール補強層の外端を覆い、前記外側繊維補強層は、軸方向において外側から前記内側繊維補強層の外端を覆う。
【0008】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記穴から前記ショルダー陸部の外端までの距離WHが、前記ショルダー陸部の軸方向最大幅WSの0.12倍以上0.88倍以下である。
【0009】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記穴の深さDHは、前記ショルダー周方向溝の深さDSの1/3倍以上1倍以下である。
【0010】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、径方向において、前記外側繊維補強層の外端が前記折り返し部の端よりも外側に位置し、前記外側繊維補強層の外端までの径方向距離H4は、前記折り返し部の端までの径方向距離H3の1.4倍以上1.8倍以下である。
【0011】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、径方向において、前記内側繊維補強層の外端が前記外側繊維補強層の外端よりも内側に位置し、
前記内側繊維補強層の外端までの径方向距離は、前記外側繊維補強層の外端までの径方向距離よりも小さく、その差L1は10mm以上15mm以下である。
【0012】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記繊維補強層における、前記繊維コードの本数は、前記繊維補強層の幅50mmあたりに20本以上70本以下である。
【0013】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記内側繊維補強層において、前記繊維コードが前記カーカスコードに対して傾斜し、
前記外側繊維補強層において、前記繊維コードが前記カーカスコードに対して、前記内側繊維補強層における繊維コードとは逆方向に傾斜し、
前記内側繊維補強層における繊維コードと前記カーカスコードとの交差角度が40度以上80度以下であり、
前記外側繊維補強層における繊維コードと前記カーカスコードとの交差角度が40度以上80度以下である。
【0014】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記内側繊維補強層において、前記繊維コードが前記カーカスコードに対して傾斜し、
前記外側繊維補強層において、前記繊維コードが前記カーカスコードに対して、前記内側繊維補強層における繊維コードとは逆方向に傾斜し、
前記内側繊維補強層における繊維コードと前記外側繊維補強層における繊維コードとの交差角度が80度以上160度以下である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の重荷重用空気入りタイヤは、ショルダー陸部に複数の穴が設けられつつ、ビード部には、ナイロン繊維からなる繊維コードを用いた繊維補強層が設けられているため、加硫時間の短縮を図りつつ、穴周辺のスポット摩耗の発生を抑制し、穴を起点とする欠けやリブテアの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
図2図2は、図1のタイヤのトレッド面が示された展開図である。
図3図3は、図1のタイヤのトレッドの部分の一部が示された断面図である。
図4図4は、図1のタイヤのビードの部分における、カーカスコード、スチールコード及び繊維コードの配列状況を説明する図である。
図5図4は、図1のタイヤのビードの部分が示された断面図である。
図6図6は、図1のタイヤのショルダー陸部に設けられた穴の一例を示す断面図である。
図7図7は、図1のタイヤのショルダー陸部に設けられる穴の別の一例を示す断面図である。
図8図8は、図1のタイヤのショルダー陸部に設けられる穴の別の一例を示す断面図である。
図9図9は、図1のタイヤの製造状況を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤ2(以下、単に「タイヤ2」と称することがある。)の一部を示す。このタイヤ2は、例えば、トラック、バス等の重荷重車両に装着される。
【0019】
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面(子午線断面ともいう)の一部を示す。この図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。この図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
【0020】
図1において、タイヤ2はリムRに組み込まれている。このリムRは正規リムである。タイヤ2の内部には空気が充填され、タイヤ2の内圧が正規内圧に調整されている。このタイヤ2には、荷重はかけられていない。
【0021】
本発明においては、タイヤ2をリムR(正規リム)に組み込み、タイヤ2の内圧が正規内圧に調整され、このタイヤ2に荷重がかけられていない状態は、正規状態と称される。本発明では、特に言及がない限り、タイヤ2及びタイヤ2の各部材の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの断面において、左右のビード間の距離を、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致させて、測定される。
【0022】
本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0023】
本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0024】
本明細書において正規荷重とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最高負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0025】
図1において、軸方向に延びる実線BBLはビードベースラインである。このビードベースラインは、リムR(正規リム)のリム径(JATMA等参照)を規定する線である。
【0026】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード8、一対のチェーファー10、カーカス12、ベルト14、クッション層16、インナーライナー18、一対のスチール補強層20及び一対の繊維補強層22を備える。
【0027】
トレッド4は、その外面5、すなわちトレッド面5において路面と接触する。符号PCは、トレッド面5と赤道面との交点である。この交点PCは、タイヤ2の赤道である。
【0028】
このトレッド4は、ベース部24と、このベース部24の径方向外側に位置するキャップ部26とを備える。ベース部24は、接着性が考慮された低発熱性の架橋ゴムからなる。キャップ部26は、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。キャップ部26は、ベース部24全体を覆う。
【0029】
このタイヤ2では、少なくとも3本の周方向溝28がトレッド4に刻まれる。これにより、このトレッド4には少なくとも4本の陸部30が構成される。このタイヤ2では、少なくとも4本の周方向溝28がトレッド4に刻まれ、これによりこのトレッド4に少なくとも5本の陸部30が構成されてもよい。
図1に示されたタイヤ2では、3本の周方向溝28がトレッド4に刻まれ、このトレッド4に4本の陸部30が構成されている。
【0030】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、トレッド4の端から径方向内向きに延びる。サイドウォール6は、架橋ゴムからなる。
【0031】
それぞれのビード8は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。ビード8は、コア32と、エイペックス34とを備える。
【0032】
コア32は、周方向に延びる。コア32は、巻き回されたスチール製のワイヤを含む。
【0033】
エイペックス34は、コア32の径方向外側に位置する。エイペックス34は、コア32から径方向外向きに延びる。エイペックス34は、内側エイペックス34uと外側エイペックス34sとを備える。内側エイペックス34u及び外側エイペックス34sは架橋ゴムからなる。外側エイペックス34sは内側エイペックス34uに比して軟質である。
【0034】
それぞれのチェーファー10は、ビード8の軸方向外側に位置する。このチェーファー10は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。チェーファー10は、リムRと接触する。チェーファー10は、架橋ゴムからなる。
【0035】
カーカス12は、トレッド4、サイドウォール6及びチェーファー10の内側に位置する。カーカス12は、一方のビード8と他方のビード8とを架け渡す。カーカス12は、少なくとも1枚のカーカスプライ50を備える。このタイヤ2のカーカス12は、1枚のカーカスプライ50からなる。
【0036】
図1に示されるように、このタイヤ2では、カーカスプライ50はそれぞれのコア32の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される。このカーカスプライ50は、一方のコア32と他方のコア32とを架け渡す本体部50aと、この本体部50aに連なりそれぞれのコア32の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部50bとを有する。このタイヤ2では、折り返し部50bの端54は、径方向において、内側エイペックス34uの外端46よりも内側に位置するのが好ましい。
【0037】
カーカスプライ50は並列された多数のカーカスコード52(図4参照)を含む。図示されていないが、これらカーカスコード52は、トッピングゴムで覆われる。それぞれのカーカスコード52は、赤道面と交差する。このタイヤ2では、カーカスコード52が赤道面に対してなす角度は70°以上90°以下である。このカーカス12は、ラジアル構造を有する。このタイヤ2では、カーカスコードの材質はスチールである。有機繊維からなるコードが、カーカスコードとして用いられてもよい。
【0038】
図4には、このタイヤ2の側面の部分におけるカーカスコード52の配列状況が示される。この図4において、実線LRは径方向に延びる基準線である。図4に示されるように、このタイヤ2の側面の部分においては、カーカスコード52は径方向に延びる。
【0039】
図1において、符号PCはビードベースラインからカーカス12の内面までの径方向距離が最大になる位置である。このタイヤ2では、この位置PCは赤道面上に位置する。
【0040】
ベルト14は、トレッド4の径方向内側に位置する。このベルト14は、カーカス12(本体部50a)の径方向外側に位置する。
【0041】
このタイヤ2では、ベルト14は4枚のベルトプライ42からなる。このタイヤ2では、ベルト14を構成するベルトプライ42の枚数に特に制限はない。このベルト14の構成は、タイヤ2の仕様が考慮され適宜決められる。
【0042】
図示されていないが、それぞれのベルトプライ42は並列された多数のベルトコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのベルトコードは、赤道面に対して傾斜する。このタイヤ2では、径方向において最も内側に位置するベルトプライ42Aでは、ベルトコードが赤道面に対してなす角度は40°以上60°以下の範囲で設定される。このベルトプライ42Aの径方向外側に位置するベルトプライ42B、ベルトプライ42C及びベルトプライ42Dでは、ベルトコードが赤道面に対してなす角度は15°以上25°以下の範囲で設定される。
【0043】
このタイヤ2では、4枚のベルトプライ42のうち、ベルトプライ42Aとベルトプライ42Cとの間に位置するベルトプライ42Bが最大の軸方向幅を有する。径方向において最も外側に位置するベルトプライ42Dが、最小の軸方向幅を有する。このタイヤ2では、ベルトコードの材質はスチールである。有機繊維からなるコードが、ベルトコードとして用いられてもよい。
【0044】
それぞれのクッション層16は、ベルト14の端の部分、すなわち、ベルト14の端部において、このベルト14とカーカス12との間に位置する。クッション層16は、架橋ゴムからなる。
【0045】
インナーライナー18は、カーカス12の内側に位置する。インナーライナー18は、タイヤ2の内面を構成する。このインナーライナー18は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー18は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0046】
トレッド4は、架橋ゴムからなる。トレッド4はその外面5において路面と接触する。トレッド5の外面5はトレッド面である。
【0047】
図2は、トレッド面5の展開図を示す。この図2において、左右方向はこのタイヤ2の軸方向であり、上下方向はこのタイヤ2の周方向である。この図2の紙面に対して垂直な方向は、このタイヤ2の径方向である。
図3は、図1のトレッドの部分の一部を示す。この図3において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この図3の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0048】
このタイヤ2では、トレッド4に、少なくとも3本の周方向溝28が刻まれる。これにより、このトレッド4には、少なくとも4本の陸部30が構成される。
【0049】
図1~3において、符号PEはトレッド面5の端である。なお、タイヤ2において、外観上、トレッド面5の端PEが識別不能な場合には、正規状態のタイヤ2に正規荷重を負荷して、キャンバー角を0゜としトレッド4を平面に接触させて得られる接地面の軸方向外側端がトレッド面5の端PEとして定められる。
【0050】
図2において、両矢印WTはトレッド面5の幅である。このトレッド面5の幅WT(以下、トレッド面幅WT)は、トレッド面5に沿って計測される、一方のトレッド面5の端PEから他方のトレッド面5の端PEまでの距離で表される。図3において、両矢印HWTはトレッド面幅WTの半分の長さを表す。また、図3において、両矢印GCはセンター周方向溝28cの幅であり、両矢印GSはショルダー周方向溝28sの幅である。
【0051】
このタイヤ2では、トレッド4は周方向に延びる少なくとも3本の陸部30を備える。これら陸部30は、周方向に延びる。これら陸部30は、軸方向に並列する。図2に示されたトレッド4は、4本の陸部30を備える。
【0052】
4本の陸部30のうち、軸方向において最も外側に位置する陸部30、すなわち、トレッド面5の端PEを含む陸部30がショルダー陸部30sである。軸方向においてショルダー陸部30sよりも内側に位置する陸部30がミドル陸部30mである。
このタイヤ2は、2本のミドル陸部30mを含んでいるが、軸方向においてショルダー陸部30sよりも内側に位置するミドル陸部の本数は、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。
【0053】
このタイヤ2では、一の陸部30とこの一の陸部30の隣に位置する他の陸部30との間は溝である。この溝は、周方向に連続して延びる周方向溝28である。このトレッド4は、周方向に延びる少なくとも3本の陸部30を備え、一の陸部30とこの一の陸部30の隣に位置する陸部30との間は周方向溝28である。
図2に示されたトレッド4には、3本の周方向溝28が刻まれる。
【0054】
これら3本の周方向溝28のうち、軸方向において外側に位置する周方向溝がショルダー周方向溝28sである。軸方向においてショルダー周方向溝28sの内側に位置する周方向溝が、センター周方向溝28cである。このタイヤ2では、センター周方向溝28cは、赤道面上に位置する。
【0055】
このトレッド4には、一本のセンター周方向溝28cと、一対のショルダー周方向溝28sとが刻まれる。
なお、センター周方向溝28cとショルダー周方向溝28sとの間に別の周方向溝が存在してもよい。この場合、センター周方向溝28cとショルダー周方向溝28sとの間に位置する周方向溝はミドル周方向溝とも称される。
また、タイヤ2においては、周方向溝として、赤道面上に位置する周方向溝が含まれていなくてもよい。
【0056】
このタイヤ2では、トレッド4に構成された陸部30のうち、少なくとも1本の陸部30は周方向に並ぶ多数のブロック35を備える。
図2に示されるように、このタイヤ2では、トレッド4を構成する2本のミドル陸部30mがそれぞれ、多数のブロック35を備える。
【0057】
上記多数のブロックは、全ての陸部30が備えていてもよく、ショルダー陸部30sのみが備えていてもよい。
更に、複数本のミドル陸部を備えるタイヤでは、一部のミドル陸部30mにのみ多数のブロック35が構成されてもよく、一部のミドル陸部及びショルダー陸部に多数のブロック35が構成されてもよい。
多数のブロック35を備える陸部30は、タイヤ2の仕様等が考慮され適宜決められる。
【0058】
このタイヤ2は、トレッド4の柔軟性確保の観点から、陸部30にサイプ(図示せず)を設けられてもよい。
トレッド4に設けられたサイプは、トレッド4の柔軟性確保に貢献する。
【0059】
このタイヤ2では、一のブロック35とこの一のブロック35の隣に位置する他のブロック35との間は溝である。この溝は、横溝36と称される。図2に示されるように、このトレッド4には、多数の横溝36が刻まれる。それぞれの横溝36は周方向溝28と連結する。
このタイヤ2では、ミドル陸部30mに横溝36が刻まれる。
【0060】
横溝36と周方向溝28との連結位置においては、周方向溝28の壁に横溝36の口が設けられる。この図2において、符号M1は横溝36の一方の壁と周方向溝28の壁との境界である。符号M2は、横溝36の他方の壁と周方向溝28の壁との境界である。この境界M1と境界M2との間の部分が、周方向溝28の壁に設けられた横溝36の口に相当する。
【0061】
このタイヤ2では、ショルダー陸部30sにも横溝36が設けられてもよい。この場合、トレッド4には、トレッド面5の端PEの部分、すなわち、トレッド4の端部とショルダー周方向溝28sとを架け渡す横溝が刻まれる。
【0062】
このタイヤ2では、横溝36の幅は周方向溝28の幅の30%以上90%以下程度が好ましい。また、横溝36の深さは、3mm以上20mm以下が好ましい。
【0063】
図1~3に示されるように、このタイヤ2では、周方向溝28は多数の突起38を備える。これら突起38は、周方向溝28に沿って間隔をあけて配置される。図1に示されるように、突起38は周方向溝28の底面から外向きに突出する。突起38は、溝28の幅方向中心に位置する。
図2に示されるように、突起38は、横溝36と周方向溝28との連結位置に位置する。
【0064】
このタイヤ2では、トレッド4に刻まれた全ての周方向溝28に突起38が設けられる。センター周方向溝28cのみに突起38が設けられてもよく、ショルダー周方向溝28sのみに突起38が設けられてもよい。なお、このタイヤ2の横溝36には突起は設けられない。
【0065】
このタイヤ2では、周方向溝28に設けられた突起38が、周方向溝28に入り込もうとする石の障害物として機能する。
【0066】
図2に示されるように、このタイヤ2の周方向溝28はジグザグに延びるジグザグ周方向溝である。このタイヤ2では、センター周方向溝28cは周方向にジグザグ状に連続して延びる。ショルダー周方向溝28sは、周方向にジグザグ状に連続して延びる。
【0067】
周方向溝28は、軸方向において、一方側に凸なジグザグ頂点40aと、他方側に凸なジグザグ頂点40bとを有する。この周方向溝28では、ジグザグ頂点40aとジグザグ頂点40bとは周方向に交互に配置される。この周方向溝28は、ジグザグに屈曲しながら、周方向に連続して延在する。
【0068】
周方向溝28は、周方向に連続して延在するので、濡れた路面において、トレッド4と路面との間に存在する水膜を周方向に円滑に案内できる。この周方向溝28は、ジグザグに屈曲しているので、軸方向のエッジ成分として機能し、濡れた路面でのトラクション性能の向上に貢献できる。この観点から、このタイヤ2では、周方向溝28はジグザグに延びるジグザグ周方向溝であるのが好ましい。
【0069】
図2に示されるように、横溝36はセンター周方向溝28cのジグザグ頂点40aとショルダー周方向溝28sのジグザグ頂点40b、又は、センター周方向溝28cのジグザグ頂点40bとショルダー周方向溝28sのジグザグ頂点40aを架け渡す。
【0070】
このタイヤ2では、横溝36は、周方向溝28のジグザグ頂点40a、又はジグザグ頂点40bにおいてこの周方向溝28と連結する。周方向溝28のジグザグ頂点40a、40bは、ジグザグ周方向溝28の折れ曲がりにおける外側の縁に構成される。横溝36は、ジグザグ周方向溝28の折れ曲がりの外側においてこのジグザグ周方向溝28と連結する。
【0071】
このタイヤ2では、横溝36は、隣り合う周方向溝28間の距離が短い部分に配置される。この横溝36は、その長さが短くなるように構成される。
このタイヤ2では、横溝36の長手方向は、タイヤ2の軸方向に対して傾いている。横溝36の長手方向は、タイヤ2の軸方向と一致していてもよい。
【0072】
このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、センター周方向溝28cの幅GCは、トレッド幅WTの2%以上10%以下程度が好ましい。センター周方向溝28cの深さDCは、13mm以上25mm以下が好ましい。
【0073】
このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、ショルダー周方向溝28sの幅GSは、トレッド幅WTの2%以上10%以下程度が好ましい。ショルダー周方向溝28sの深さDSは、13以上25mm以下が好ましい。
【0074】
このタイヤ2では、ショルダー陸部30sに穴90が設けられる。図1~3に示されるように、この穴90は、トレッド面5の一部をなす、ショルダー陸部30sの外面からベルト14に向かって延びる。径方向において、穴90はベルト14と重複する。この穴90の底92は、ベルト14の径方向外側に位置する。図2において、符号HCはショルダー陸部30sに設けられた穴90の口の中心である。この図2において、III-III線は穴90の中心HCを通り軸方向に延びる直線である。
【0075】
前述したように、このタイヤ2のトレッド4はベース部24とキャップ部26とを備える。このトレッド4には、ベース部24とキャップ部26との境界が含まれる。図3に示されるように、このタイヤ2では、ショルダー陸部30sにおいて、穴90の底92はこの境界よりも径方向外側に位置する。
【0076】
図2において、両矢印WSは、ショルダー陸部30sの軸方向最大幅である。ショルダー周方向溝28sはジグザグ周方向溝であるため、ショルダー陸部30sの軸方向寸法は、ショルダー周方向溝28sに沿って変化する。このショルダー陸部30sにおいては、ショルダー周方向溝28sの軸方向外側の縁と、トレッド面5の端PEとの距離が最大値になる部分が、軸方向最大幅となる部分である。
【0077】
図2において、両矢印WLは、隣接するショルダー陸部30sの軸方向最小幅となる部分同士のタイヤ2のトレッド面に沿った離間距離である。
ジグザグ周方向溝を有するタイヤ2では、ショルダー陸部30sの軸方向最大幅となる部分を挟むよう軸方向最小幅となる部分が存在する。このショルダー陸部30sにおいては、ショルダー周方向溝28sの軸方向外側の縁と、トレッド面5の端PEとの距離が最小値になる部分が、軸方向最小値となる部分である。図2においては、仮想線KLで示す部分がショルダー陸部30sの軸方向最小幅となる部分である。
【0078】
タイヤ2おける穴90の形成位置は、図2に示すような、ショルダー陸部30sの軸方向最大幅を示す部分と重なる位置が最も好ましい。
また、穴90の形成位置は、ショルダー陸部30sの軸方向最大幅を示す部分に近い位置であれば好ましい。具体的には、ショルダー陸部30sの軸方向最大幅を示す部分からの周方向に沿った離間距離が、隣接するショルダー陸部30sの軸方向最小幅となる部分同士のタイヤ2のトレッド面に沿った離間距離WLの25%以下である位置が好ましい。
穴90の形成位置がこれよりも上記軸方向最大幅を示す部分から離れると、ショルダー陸部30sにおける軸方向幅が狭く、剛性が相対的に低い部分に穴90が設けられることになる。この場合、ショルダー陸部内において剛性の差が拡大してしまい、穴90を起点とする偏摩耗が起こり易くなってしまう。
【0079】
更に、後述するように、穴90からショルダー陸部30sの外端PEまでの距離WHは、ショルダー陸部30sの軸方向最大幅WSの0.12倍以上0.88倍以下であることが好ましい。
これらを考慮して、タイヤ2が備える1つ穴90Aの好ましい形成位置を図示すると、図2に示した領域Aが穴90Aの好ましい形成位置となる。
【0080】
図3は、図1のタイヤのトレッド部の一部を示す。
図3において、両矢印WHは、穴90の口90aの中心HCからトレッド面5の端PEまでの軸方向距離である。
【0081】
タイヤ2では、穴90からショルダー陸部30sの外端PEまでの距離WHは、ショルダー陸部30sの軸方向最大幅WSの0.12倍以上0.88倍以下であることが好ましい。
穴90の形成位置をショルダー陸部30sの外端PEから一定距離離れた位置とすることで、ショルダー陸部30sにおける穴90より軸方向外側の領域の剛性を確保し、穴90に噛み込んだ突起物に横力がかかっても穴90の形状がタイヤ幅方向に変化しにくくなる。
一方、WH/WSが0.12未満では、穴90より軸方向外側の領域の剛性が弱くなり、穴90が石等を噛んだ状態で横力がかかるとリブテアが起こり易い。WH/WSが0.88を超えると、タイヤ2の製造時に、加硫時間を短縮するというそもそもの目的が達成されにくくなる。
【0082】
図6は、図3に示されたタイヤ2の断面の一部を示す。図6には、ショルダー陸部30sに設けられた穴90が示される。この図6において、両矢印Bは穴90の口90aの幅(以下、口幅Bともいう)である。
穴90の口90aの形状は、図2に示すように円形である。穴90の口90aの形状は限定されず、四角形などの角を有する形状であってもよいが、円形や楕円形などの角のない形状が好ましい。タイヤ2の製造においてタイヤ2からの突起94の引き抜きが容易で、得られたタイヤ2の耐クラック性が良好となるからである。穴90の口90aの形状は、特に円形が好ましい。なお、穴90の口90aの形状が楕円である場合は、この楕円の長軸と短軸との交点を、この穴90の中心軸HCが通ることとなる。
【0083】
穴90の口90aの面積(開口面積)は、2mm以上20mm以下が好ましい。
上記の開口面積が2mmより小さい場合、タイヤ2の製造時に未加硫のショルダー陸部に挿入する突起94(図9参照)の表面積が小さくなるため、タイヤの内部に熱を伝える効果が不十分になる。また、突起94の強度が弱くなるため、突起94に曲がりや破損が発生しやすくなる。一方、上記の開口面積が20mmを超えると、穴90に石や突起物に引っかかりやすく、大きな亀裂が発生する原因となるおそれがある。
【0084】
タイヤ2では、1つのショルダー陸部30sに対して、1又は複数の穴が設けられている。ここで、1つのショルダー陸部30sに設けられた全ての穴90の開口面積の総和の割合は、1つのショルダー陸部30sのトレッド面(穴90の口90aが形成された部分も含む)の面積に対して、0.15%以上5%以下であることが好ましい。穴90の開口面積の総和がショルダー陸部30sのトレッド面の面積の5%より大きくなると、穴90において石等の突起物を噛む確率が高まり、横力がかかった時にリブテアが発生する恐れが高くなる。一方、穴90の開口面積の総和がショルダー陸部30sのトレッド面の面積の0.15%より小さくなると、本発明の目的の1つである加硫時間を短縮する効果が弱まる。
【0085】
穴90の断面形状は、図6に示したように、穴90の口90aから底92に向かって、口幅Bと平行な寸法が徐々に小さくなる形状である。穴90の形状は、略逆円錐形状である。図6中、HCは穴90の中心軸である。図6中、両矢印DHは、穴90の深さである。
この穴90の口幅B、穴90の深さDHは、いずれも図6に示された断面、すなわち、タイヤ2の回転軸と、この穴90の中心軸HCとを含む平面に沿った、このタイヤ2の断面において特定される。
穴90をこのような形状とした場合、石等の突起物が穴90の内部まで侵入しにくく、突起物を穴90でホールドしにくくなるため、リブテアの起点となりえる石の噛みこみ等が発生しにくくなる。
【0086】
穴90の断面形状は、図6に示された形状に限定されない。図7、8は、タイヤ2のショルダー陸部30sに設けられる穴の別の形状を示す断面図である。
【0087】
図7に示されるタイヤの穴190は、穴190の口190a側に設けられた壁面が大きく傾斜したテーパー部194と、テーパー部194よりも穴190の底192側に設けられた穴本体部196とからなる。穴190の口190aの形状は円形である。
【0088】
穴190が設けられたタイヤ2では、テーパー部194が、この口190aの周囲を囲むトレッド面5の動きを抑制する。このテーパー部194を設けることで、偏摩耗の発生がさらに抑制される。
また、テーパー部194を有する穴190を備えたタイヤ2は、加硫後の脱型性にも優れる。
【0089】
図7において、角度θtは、穴190のテーパー部194において、この穴190がないと仮定して得られる仮想トレッド面に対して、このテーパー部194の壁面190cがなす角度(以下、テーパー部194における壁面190cの傾斜角度と称することがある。)である。
【0090】
このタイヤ2では、テーパー部194における壁面190cの傾斜角度θtは80°以下が好ましい。これにより、口190aの周囲を囲むトレッド面5の動きが効果的に抑えられる。このタイヤ2では、偏摩耗の発生が効果的に抑制される。この観点から、この角度θは70°以下がより好ましく、60°以下がさらに好ましい。同様の観点から、この角度θtは20°以上が好ましく、30°以上がより好ましく、40°以上がさらに好ましい。
【0091】
このテーパー部194を有する穴190では、口190aの直径Cに対する、テーパー部194と穴本体部196の境目部分の直径Dの割合は、0.4以上0.8以下が好ましい。
【0092】
図8に示されるタイヤの穴290は、図6に示された略逆円錐形状の穴90と類似の形状を有しているものの、壁面290bの形状が異なる。図8に示された穴290の断面図において、壁面290bを示す線が穴側に凸の曲線である。そして、穴290は、図8に示された断面形状が中心軸HCを中心に回転して描画される形状を有している。言い換えると、穴290の形状は、穴290の口290aから底292にかけての壁面290bが、穴290の容積を減らす方向に反った曲面を有する形状である。
【0093】
このような穴290が設けられたタイヤ2では、穴290の口290aから底292に向かって、口幅Eと平行な寸法が徐々に小さくなるため、石等の突起物が穴290の内部まで侵入しにくく、突起物を穴290でホールドしにくくなるため、リブテアの起点となりえる石の噛み込み等が発生しにくくなる。さらに、穴290の壁面290bの形状が歪を緩和させるのにより適した形状となっており、石噛みが起こった時に亀裂の起点になりにくい。
【0094】
図3に戻って、両矢印DCはセンター周方向溝28cの深さである。両矢印DSは、ショルダー周方向溝28sの深さである。両矢印DHは穴90の深さである。
タイヤ2において、穴90の深さDHは、ショルダー周方向溝の深さDSの1/3倍以上1倍以下であることが好ましい。
穴90の深さDHが、ショルダー周方向溝の深さDSの1/3倍未満では、タイヤ2の製造時に、加硫時間を短縮するというそもそもの目的が達成されにくくなる。一方、穴90の深さDHが、ショルダー周方向溝の深さDSより深いと、タイヤ2のショルダー陸部30sにリブテアが起こり易くなる。また、タイヤ2の製造時に穴に挿入する突起(図8中、94参照)が折れたり、曲がったりするおそれがある。
【0095】
図3において、矢印WBは、ベルト14の軸方向最大幅である。両矢印WAは、ベルト14の軸方向における外端PBと、穴90の底92との軸方向距離である。
タイヤ2では、軸方向距離WAは、ベルト14の軸方向最大幅WBの4%以上であることが好ましい。
WAがWBの4%未満では、穴90の底92とベルト14の外端PBとが接近しすぎて、穴90の底92やベルト14の外端PBがクラックの起点になるおそれがある。更に、穴90の底92がベルト14の外端PBよりも軸方向外側にあると、ショルダー陸部の内部に熱を伝える効果が弱まり、加えて、ショルダー陸部30sにおける穴90より軸方向外側の領域の剛性が弱まるため、穴90が石噛みした状態で横力がかかるとリブテアを発生する可能性が高まる。
タイヤ2では、軸方向距離WAは、ベルト14の軸方向最大幅WBの16%以下であることが好ましい。
【0096】
図5は、図1のビード部BPを示す。この図5において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この図5の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0097】
図5において、両矢印H3はビードベースラインからカーカスプライ50の折り返し部50bの端54までの径方向距離である。両矢印H4はビードベースラインから外側繊維補強層68の外端76までの径方向距離である。
【0098】
それぞれのスチール補強層20は、ビード部BPに位置する。
スチール補強層20は、カーカスプライ50に沿って、コア32の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される。このタイヤ2では、スチール補強層20の少なくとも一部はカーカスプライ50と接する。
【0099】
スチール補強層20の内端58は、軸方向において、本体部50aの内側に位置する。この内端58は、径方向において、内側エイペックス34uの外端46とコア32との間に位置する。スチール補強層20の外端60は、軸方向において、折り返し部50bの外側に位置する。この外端60は、径方向において、折り返し部50bの端54と外側エイペックス34sの内端48との間に位置する。スチール補強層20の内端58は、径方向において、スチール補強層20の外端60よりも外側に位置する。
【0100】
スチール補強層20は、少なくとも1枚のスチールプライ62を備える。このタイヤ2では、スチール補強層20は1枚のスチールプライ62からなる。このスチールプライ62は、並列した多数のスチールコード64を含む。これらスチールコード64はトッピングゴムで覆われる。
【0101】
図4には、スチール補強層20をなすスチールプライ62に含まれるスチールコード64の配列状況が示される。図4に示されるように、このタイヤ2では、スチール補強層20において、スチールコード64はカーカスコード52に対して傾斜する。
【0102】
図4において、符号θcは、スチールコード64とカーカスコード52との交差角度である。タイヤ2では、このスチールコード64とカーカスコード52との交差角度θcは30°以上70°以下が好ましい。ここで、スチールコード64とカーカスコード52との交差角度は、カーカスコード52の外端54において、両者がなす角度である。
【0103】
このスチールプライ62におけるスチールコード64の本数は、スチールプライ62の幅50mmあたりに20本以上40本以下である。
【0104】
このタイヤ2では、スチール補強層20はビード部BPの曲げ剛性の向上に寄与する。このタイヤ2では、コア32を支点としたビード部BPの軸方向外側への大きな曲げ変形が効果的に抑制される。
【0105】
それぞれの繊維補強層22は、ビード部BPに位置する。
このタイヤ2では、繊維補強層22の少なくとも一部がスチール補強層20の軸方向外側において径方向に延びる。この繊維補強層22は、並列した多数の繊維コード74を含む。これら繊維コード74はナイロン繊維からなる。
【0106】
繊維補強層22は、少なくとも、後述する内側繊維補強層66と外側繊維補強層68とを備える。このタイヤ2では、繊維補強層22は、内側繊維補強層66及び外側繊維補強層68、すなわち、2枚のプライで構成される。繊維補強層22は3枚以上プライで構成されていてもよい。
【0107】
内側繊維補強層66は、スチール補強層20に接する。内側繊維補強層66は、軸方向において、外側からスチール補強層20の外端60を覆う。径方向において、内側繊維補強層66の外端70はスチール補強層20の外端60よりも外側に位置する。内側繊維補強層66の内端72は、軸方向においてコア32よりも内側に位置する。
【0108】
このタイヤ2では、径方向において、内側繊維補強層66の外端70はカーカスプライ50の折り返し部50bの端54よりも外側に位置する。
【0109】
図4に示されるように、内側繊維補強層66は並列した多数の繊維コード(内側繊維コードともいう)74Aを含む。このタイヤ2では、この内側繊維補強層66における内側繊維コード74Aの本数は、内側繊維補強層66の幅50mmあたりに20本以上70本以下であることが好ましい。この場合、内側繊維コード74Aのカーカスに対する拘束力が充分に働き、サイドウォール6におけるタイヤ2の径方向の剛性を高めることができる。
一方、内側繊維コード74Aの本数が20本/50mm未満では、内側繊維コード74Aによるカーカスに対する拘束力が低下するため、カーカスの端部の倒れ込みを抑え込むことが困難になることがある。また、内側繊維コード74Aの本数が70本/50mmを超えると、内側繊維コード74Aの外端(内側繊維補強層66の外側端部)に歪が集中し、損傷の起点となることがある。
内側繊維補強層66における内側繊維コード74Aの本数は、内側繊維補強層66の幅50mmあたりに30本以上50本以下であることがより好ましい。
【0110】
外側繊維補強層68は、内側繊維補強層66に接する。外側繊維補強層68は、軸方向において、外側から内側繊維補強層66の外端70を覆う。径方向において、外側繊維補強層68の外端76は内側繊維補強層66の外端70よりも外側に位置する。外側繊維補強層68の内端78は、軸方向において内側繊維補強層66の内端72よりも外側に位置し、径方向においてコア32の内側に位置する。
【0111】
この場合、BBLから外側繊維補強層68の外端76までの径方向距離H4は、BBLからカーカスプライ50の折り返し部50bの端54までの径方向距離H3の1.4倍以上1.8倍以下であることが好ましい。この場合、カーカスの端部の倒れ込みを適切に抑制することができる。
一方、H4がH3の1.4倍未満では、外側繊維補強層68によって、カーカスの端部の倒れ込みを充分に抑制することができないことがある。また、H4がH3の1.8倍を超えると、外側繊維補強層68によって、タイヤ2のサイドウォール6の径方向の剛性が高まりすぎてしまい、乗り心地が悪くなることや、ビード部におけるセパレーションが発生しやすくなることがある。
【0112】
このタイヤ2では、外側繊維補強層68の外端76は、内側繊維補強層66の外端70から距離L1だけ径方向外側に離して配置される。これにより、内側繊維補強層66の外端70への歪みの集中が抑えられ、内側繊維補強層66と外側繊維補強層68との間でのセパレーションの発生を抑制することができる。
この観点から、タイヤ2では、内側繊維補強層66の外端70と、外側繊維補強層68の外端76との径方向距離(図5中、L1)は、10mm以上15mm以下が好ましい。
径方向距離L1が10mm未満では、繊維コード(ナイロン繊維)の端点同士が近づきすぎて、内側繊維補強層66と外側繊維補強層68との間でのセパレーションが発生しやすくなる。一方、径方向距離L1が15mmを超えると、外側繊維補強層68の外端76が動きやすくなり、この場合も内側繊維補強層66と外側繊維補強層68との間でのセパレーションが発生しやすくなる。
【0113】
図4に示されるように、外側繊維補強層68は並列した多数の繊維コード(外側繊維コードともいう)74Bを含む。このタイヤ2では、この外側繊維補強層68における外側繊維コード74Bの本数は、外側繊維補強層68の幅50mmあたりに20本以上70本以下であることが好ましい。この場合、外側繊維コード74Bのカーカスに対する拘束力が充分に働き、サイドウォール6におけるタイヤ2の径方向の剛性を高めることができる。
一方、外側繊維コード74Bの本数が20本/50mm未満では、外側繊維コード74Bのカーカスに対する拘束力が低下するため、カーカスの端部の倒れ込みを抑え込むことが困難になることがある。また、外側繊維コード74Bの本数が70本/50mmを超えると、外側繊維コード74Bの外端(外側繊維補強層68の外側端部)に歪が集中し、損傷の起点となることがある。
外側繊維補強層68における外側繊維コード74Bの本数は、外側繊維補強層68の幅50mmあたりに30本以上50本以下であることがより好ましい。
【0114】
このタイヤ2において、ナイロン繊維からなる繊維コード74の総繊度は、940dtex以上1400dtex以下が好ましい。
繊維コード74の総繊度が940dtex未満では、繊維コード74が細く、ビード部BPの歪を分散させる効果が十分に得られないおそれがある。一方、繊維コード74の総繊度が1400dtexを超えると、繊維コード74が太く、外側繊維補強層68の外端76付近が、損傷の起点となるおそれがある。
繊維コード74は、1本の糸を撚ってなるものであってもよいし、複数本の糸を撚ってなるものであってもよい。
【0115】
このタイヤ2では、部品の共用化による製造コストの削減の観点から、内側繊維補強層66と外側繊維補強層68とは、例えば、図5に示された、このタイヤ2の断面において、その形状に沿って測定される長さに関して、同一の長さを有するのが好ましい。
【0116】
このタイヤ2では、繊維補強層22はビード部BPの剛性に寄与する。特にこの繊維補強層22はナイロン繊維からなる繊維コード74を含むので、ビード部BPは硬くなり過ぎず適度なしなやかさを有する。この繊維補強層22は、ビード部BPの耐久性を向上させるだけでなく、空気の充填時における、ビード部BPの軸方向外向きへの倒れを抑制する。このタイヤ2では、ビード部BPの軸方向外向きへの倒れが抑えられるので、トレッド4の端の部分(ショルダー部分)の径方向内向きへの移動も抑えられる。
【0117】
前述したように、このタイヤ2の繊維補強層22をなす内側繊維補強層66及び外側繊維補強層68はそれぞれ、並列した多数の繊維コード74を含む。図4に示されるように、内側繊維補強層66において、繊維コード74は径方向に対して傾斜する。外側繊維補強層68において、繊維コード74は径方向に対して傾斜する。この外側繊維補強層68における繊維コード74の傾斜方向は内側繊維補強層66における繊維コード74の傾斜方向とは逆である。このような内側繊維補強層66及び外側繊維補強層68を含む繊維補強層22は、空気の充填時における、ビード部BPの軸方向外向きへの倒れを効果的に抑制する。この観点から、このタイヤ2では、内側繊維補強層66において繊維コード74は径方向に対して傾斜し、外側繊維補強層68において繊維コード74は径方向に対して傾斜し、内側繊維補強層66における繊維コード74の傾斜方向は外側繊維補強層68における繊維コード74の傾斜方向とは逆であるのが好ましい。
【0118】
図4において、符号θuは内側繊維補強層66における内側繊維コード74Aとカーカスコード52との交差角度である。符号θsは、外側繊維補強層68における外側繊維コード74Bとカーカスコード52との交差角度である。ここで、繊維コード74とカーカスコード52との交差角度は、カーカスコードの外端において、両者がなす角度である。
【0119】
このタイヤ2では、内側繊維コード74Aのカーカスコード52との交差角度θuが40度以上80度以下に設定され、外側繊維コード74Bが内側繊維コード74Aと逆方向に傾斜し、かつ外側繊維コード74Bのカーカスコード52との交差角度θsが40度以上80度以下に設定される、ことが好ましい。
この場合、効果的にカーカスコード52の引張り力を抑制することができるため、カーカスの端部の倒れ込みが抑えられる。
【0120】
タイヤ2において、交差角度θuと交差角度θsとは同じあってもよいし、異なっていてもよい。部品の共用化による製造コストの削減の観点からは、同じであることが好ましい。
なお、本発明においては、交差角度θuと交差角度θsとの差の絶対値が2°以下である場合、内側繊維コード74Aとカーカスコード52との交差角度θuと外側繊維コード74Bとカーカスコード52との交差角度θsとは等しいと判断される。
【0121】
このタイヤ2では、内側繊維補強層66における内側繊維コード74Aと外側繊維補強層68における外側繊維コード74Bとの交差角度θmは、カーカスコード52の引張り力を抑制するのに適している観点から、80度以上160度以下に設定されることが好ましい。
【0122】
このタイヤ2では、コア32は略六角形の断面形状を有する。このコア32が略矩形の断面形状を有するように、コア32が構成されてもよい。
【0123】
エイペックス34は、内側エイペックス34uと外側エイペックス34sとを備える。内側エイペックス34uは、コア32よりも径方向外側に位置する。外側エイペックス34sは、内側エイペックス34uよりも径方向外側に位置する。外側エイペックス34sは、内側エイペックス34uと接する。内側エイペックス34uと外側エイペックス34sとの境界は、内側エイペックス34uの外端46と外側エイペックス34sの内端48とを架け渡す。図1に示されたタイヤ2の断面において、この境界は軸方向内向きに湾曲する。
【0124】
内側エイペックス34uは、コア32から径方向外向きに延びる。図1に示されたタイヤ2の断面において、内側エイペックス34uは径方向外向きに先細りである。
【0125】
内側エイペックス34uは架橋ゴムからなる。このタイヤ2では、内側エイペックス34uの複素弾性率Euは、40MPa以上65MPa以下の範囲で設定される。この内側エイペックス34uは硬質である。内側エイペックス34uは、ビード部BPの剛性に寄与する。
【0126】
本発明において、内側エイペックス34uの複素弾性率Euは、JIS-K6394の規定に準拠し、粘弾性スペクトロメータを用いて下記の条件にて測定される。なお、後述する、外側エイペックス34sの複素弾性率Es及びチェーファー10の複素弾性率Ecも同様にして測定される。
初期歪み=10%
振幅=±1%
周波数=10Hz
変形モード=引張
測定温度=70℃
【0127】
外側エイペックス34sは、内側エイペックス34uから径方向外向きに延びる。このタイヤ2では、外側エイペックス34sは、内側エイペックス34uの外端46付近において大きな厚さを有する。図1に示されたタイヤ2の断面において、外側エイペックス34sは径方向内向きに先細りであり、径方向外向きに先細りである。
【0128】
外側エイペックス34sは架橋ゴムからなる。このタイヤ2では、外側エイペックス34sの複素弾性率Esは、3MPa以上5MPa以下の範囲で設定される。この外側エイペックス34sはビード部BPのしなやかな変形に貢献する。
【0129】
それぞれのチェーファー10は、主にビード8の軸方向外側に位置する。このチェーファー10は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。チェーファー10は、リムRのシートS及びフランジFと接触する。このチェーファー10は、軸方向において外側から繊維補強層22を覆う。
【0130】
チェーファー10は架橋ゴムからなる。このタイヤ2では、チェーファー10の複素弾性率Ecは、7MPa以上14MPa以下の範囲で設定される。このチェーファー10の複素弾性率Ecが7MPa以上に設定されることにより、チェーファー10のはみ出しによるタイヤ2の表面における歪みの発生が防止される。この観点から、このチェーファー10の複素弾性率Ecは9MPa以上が好ましい。このチェーファー10の複素弾性率Ecが14MPa以下に設定されることにより、チェーファー10の硬化による損傷の発生が防止される。この観点から、このチェーファー10の複素弾性率Ecは13MPa以下が好ましい。
【0131】
このタイヤ2では、コア32とリムRのフランジFとの間において、チェーファー10の最小厚さは2.5mm以上6.0mm以下の範囲で設定される。このタイヤ2では、チェーファー10の最小厚さが2.5mm以上に設定されることにより、チェーファー10の硬化による損傷の発生が防止される。チェーファー10の最小厚さが6.0mm以下に設定されることにより、チェーファー10のはみ出しによるタイヤ2の表面における歪みの発生が防止される。
【0132】
このタイヤ2は、次のようにして製造される。このタイヤ2の製造では、まず、成形機(図示されず)において、トレッド4、サイドウォール6等の部材を組み合わせて、未架橋状態のタイヤ、すなわち、生タイヤが準備される。
【0133】
このタイヤ2の製造では、図9に示された加硫機100において生タイヤ2rが加硫成形される。この加硫機100は、モールド102とブラダー104とを備える。
【0134】
モールド102は、その内面にキャビティ面106を備える。このキャビティ面106は、生タイヤ2rの外面に当接し、タイヤ2の外面を形づける。
【0135】
図9に示されたモールド102は、割モールドである。このモールド102は、構成部材として、トレッドリング108と、一対のサイドプレート110と、一対のビードリング112とを備える。このモールド102では、これら構成部材を組み合わせることにより、前述のキャビティ面106が構成される。図9のモールド102は、これら構成部材が組み合わされた状態、言い換えれば、閉じられた状態にある。
【0136】
このモールド102では、トレッドリング108はタイヤ2のトレッド4の部分を形作る。このトレッドリング108は、多数のセグメント114で構成される。なお、サイドプレート110はタイヤ2のサイドウォール6の部分を形作り、ビードリング112はタイヤ2のビード8の部分を形作る。
【0137】
ブラダー104は、モールド102の内側に位置する。ブラダー104は、架橋ゴムからなる。このブラダー104の内部には、スチーム等の加熱媒体が充填される。これにより、ブラダー104は膨張する。図9に示されたブラダー104は、加熱媒体が充填され膨張した状態にある。このブラダー104は、生タイヤ2rの内面に当接し、タイヤ2の内面を形づける。なお、このタイヤ2の製造では、ブラダー104に代えて金属製の剛性中子が用いられてもよい。剛性中子は、トロイダル状の外面を備える。この外面は、空気が充填されその内圧が正規内圧の5%に保持された状態にあるタイヤ2の内面の形状に近似される。
【0138】
このタイヤ2の製造では、所定の温度に設定されたモールド102に生タイヤ2rは投入される。投入後、モールド102は閉じられる。加熱媒体の充填により膨張したブラダー104が、キャビティ面106に生タイヤ2rを内側から押し付ける。生タイヤ2rは、モールド102内で所定時間加圧及び加熱される。これにより、生タイヤ2rのゴム組成物が架橋し、タイヤ2が得られる。
【0139】
図1から明らかなように、タイヤ2のトレッド4の部分はサイドウォール6の部分のボリュームよりも大きなボリュームを有する。このタイヤ2では、トレッド4の部分のうち、ショルダー陸部30sの部分が最大の厚さを有する。すなわち、このタイヤ2では、ショルダー陸部30sの部分が特に大きなボリュームを有する。
【0140】
このタイヤ2の製造では、生タイヤ2rには、モールド102及びブラダー104によって熱が伝えられる。生タイヤ2rには、小さなボリュームを有する部分と、大きなボリュームを有する部分とが混在する。小さなボリュームを有する部分には熱は伝わりやすいが、大きなボリュームを有する部分には熱は伝わりにくい。
【0141】
熱が伝わりやすい部分を基準に、生タイヤ2rを加圧及び加熱する時間、すなわち加硫時間を設定すると、熱が伝わりにくい部分における、加硫の進行が不十分になることが懸念される。一方、熱が伝わりにくい部分を基準に加硫時間を設定すると、熱が伝わりやすい部分において加硫が過剰に進むことが懸念される。
【0142】
ところで、環境への配慮から、車両に対しては燃費に関する規制が導入されている。この規制をクリアするために、タイヤにおいては転がり抵抗の低減が強く求められている。
【0143】
加硫温度を通常よりも低い温度に設定すると、過剰な加硫の進行を抑えることができ、転がり抵抗の低減を図ることができる。しかしこの場合、長い加硫時間が設定されるため、タイヤの生産性が低下することが懸念される。
【0144】
前述したように、このタイヤ2では、ショルダー陸部30sに穴90が設けられる。このため、図9に示されるように、このタイヤ2のモールド102には、この穴90の形成のための突起94が設けられる。モールド102の構成部材のうち、セグメント114がタイヤ2のトレッド4の部分を形作る。このため、突起94は、セグメント114の、ショルダー陸部30sを形作る部分に設けられる。
【0145】
このタイヤ2の製造では、生タイヤ2rをモールド102内で加圧及び加熱するとき、生タイヤ2rの、ショルダー陸部30sに対応する部分(以下、ショルダー陸部対応部分96)に、前述の突起94が差し込まれる。
【0146】
このタイヤ2の製造では、ショルダー陸部対応部分96の深い位置まで、突起94が差し込まれる。これにより、このショルダー陸部対応部分96はその内部からも加熱される。このため、このショルダー陸部対応部分96が最適な加硫状態になるまでの時間が短縮される。特に、このタイヤ2の製造においては、突起94の先端はベルト14に近接させられる。ベルト14はスチールコードを含んでいるので、この近接により生タイヤ2rはより効果的に加熱される。このタイヤ2の製造は、加硫時間の短縮を図ることができる。このタイヤ2は、生産性の向上に寄与する。
【0147】
このタイヤ2では、ショルダー陸部30sの部分の形成に要する時間が短縮される。この時間の短縮は、熱が伝わりやすい、小さなボリュームを有する部分での、過剰な加硫の進行を抑える。過加硫による損失正接(tanδ)の増大が抑制されるので、このタイヤ2は、耐摩耗性に劣る低発熱性のゴムに依存せずとも、転がり抵抗の低減を図ることができる。
【0148】
図5において、両矢印L2はスチール補強層20の外端60から折り返し部50bの端54までの径方向距離である。両矢印L3は、折り返し部50bの端54から内側繊維補強層66の外端70までの径方向距離である。
【0149】
このタイヤ2では、スチール補強層20の外端60は、折り返し部50bの端54から距離L2だけ径方向内側に離して配置される。これにより、スチール補強層20の外端60への歪みの集中が抑えられる。ビード部BPがしなやかに撓むので、軸方向外向きに倒すようにこのビード部BPに作用する力が効果的に緩和される。このタイヤ2では、ビード部BPの軸方向外向きへの倒れが抑制される。この観点から、径方向においてスチール補強層20の外端60は折り返し部50bの端54よりも内側に位置し、この折り返し部50bの端54からスチール補強層20の外端60までの径方向距離L2は10mm以上15mm以下が好ましい。この距離L2は前述の距離L1と等しいのがより好ましい。
【0150】
このタイヤ2では、内側繊維補強層66の外端70は、折り返し部50bの端54から距離L3だけ径方向外側に離して配置される。これにより、折り返し部50bの端54への歪みの集中が抑えられる。ビード部BPがしなやかに撓むので、軸方向外向きに倒すようにこのビード部BPに作用する力が効果的に緩和される。このタイヤ2では、ビード部BPの軸方向外向きへの倒れが抑制される。この観点から、径方向において内側繊維補強層66の外端70は折り返し部50bの端54よりも外側に位置し、この折り返し部50bの端54から内側繊維補強層66の外端70までの径方向距離L3は10mm以上15mm以下が好ましい。ビード部BPの軸方向外向きへの倒れが効果的に抑制される観点から、この距離L3は前述の距離L1及び/又はL2と等しいのがより好ましい。
【0151】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、加硫時間の短縮を図りつつ、ショルダー陸部に設けられた穴周辺のスポット摩耗の発生を抑制し、穴を起点とする欠けやリブテアの発生を抑制することができる、重荷重用空気入りタイヤ2が得られる。
【0152】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく、この技術的範囲には特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0153】
以上説明された肩落ち摩耗の発生を抑制するための技術は、種々のタイヤにも適用されうる。
【符号の説明】
【0154】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
5・・・外面(トレッド面)
6・・・サイドウォール
8・・・ビード
10・・・チェーファー
12・・・カーカス
14・・・ベルト
16・・・クッション層
18・・・インナーライナー
20・・・スチール補強層
22・・・繊維補強層
24・・・ベース部
26・・・キャップ部
28・・・周方向溝
28c・・・センター周方向溝
28s・・・ショルダー周方向溝
30・・・陸部
30m・・・ミドル陸部
30s・・・ショルダー陸部
32・・・コア
34・・・エイペックス
34u・・・内側エイペックス
34s・・・外側エイペックス
35・・・ブロック
36・・・横溝
38・・・突起
40a、40b・・・ジグザグ頂点
42・・・ベルトプライ
42A、42B、42C、42D・・・ベルトプライ
46・・・内側エイペックス34uの外端
48・・・外側エイペックス34sの内端
50・・・カーカスプライ
50a・・・本体部
50b・・・折り返し部
52・・・カーカスコード
54・・・折り返し部50bの端
58・・・スチール補強層20の内端
60・・・スチール補強層20の外端
62・・・スチールプライ
64・・・スチールコード
66・・・内側繊維補強層
68・・・外側繊維補強層
70・・・内側繊維補強層66の外端
72・・・内側繊維補強層66の内端
74・・・繊維コード
74A・・・内側繊維コード
74B・・・外側繊維コード
76・・・外側繊維補強層68の外端
78・・・外側繊維補強層68の内端
90、90A、190、290・・・穴
90a、190a、290a・・・穴の口
90b、290b・・・壁面
92、192、292・・・穴の底
94・・・突起
96・・・ショルダー陸部対応部分
100・・・加硫機
102・・・モールド
104・・・ブラダー
106・・・キャビティ面
108・・・トレッドリング
110・・・サイドプレート
112・・・ビードリング
114・・・セグメント
190c・・・テーパー部の壁面
194・・・テーパー部
196・・・穴本体部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9