(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148814
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】情報通知システム
(51)【国際特許分類】
B61L 27/57 20220101AFI20231005BHJP
B61L 25/04 20060101ALI20231005BHJP
B61F 5/22 20060101ALI20231005BHJP
B61C 17/12 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B61L27/57
B61L25/04
B61F5/22 F
B61C17/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057055
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】522077948
【氏名又は名称】株式会社Hemisphere Japan
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】江夏 偉鵬
(72)【発明者】
【氏名】ブリセニョ 穂世
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和久
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161JJ01
5H161JJ40
5H161MM03
(57)【要約】
【課題】 精度良く、且つ、簡易に異常判定でき、軌道上を走行する走行車両に警告を促すための情報を通知できるシステムを提供する。
【解決手段】 この情報通知システムは、軌道上を走行する走行車両10と、走行車両10の情報を送受信可能に構成されたサーバ20とを備える。走行車両10は、位置を測定する位置測定部17bと、ロール角AR、ピッチ角AP、ヨー角AYを検出する傾転検出部17cと、測定位置およびAR,AP,AYを、サーバ20に送信する情報送信部17dとを備える。サーバ20は、走行車両10の位置L2と、予め規定された走行車両10の位置L1および傾転度合いT1の相関とに基づいて、比較用のロール角ARr、ピッチ角APr、ヨー角AYrを推定する傾転推定部23cと、AR,AP,AYと、比較用のARr,APr,AYrと、の比較に基づいて、警告を促すための情報を走行車両10へ通知する情報通知部23dとを備える。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道上を走行する走行車両と、
前記走行車両と情報通信ネットワークを介し接続され、前記走行車両の情報を送受信可能に構成されたサーバと、
を備えた、前記サーバから前記走行車両へ情報を通知するための情報通知システムにおいて、
前記走行車両は、
前記走行車両の位置を測定する位置測定部と、
前記走行車両の傾転度合いを検出する傾転検出部と、
前記測定された前記走行車両の位置、及び、前記検出された前記走行車両の傾転度合いを、前記サーバに送信する情報送信部と、
を備え、
前記サーバは、
前記送信された前記走行車両の位置と、予め規定された前記走行車両の位置および前記走行車両の傾転度合いの相関と、に基づいて、比較用の前記走行車両の傾転度合いを推定する傾転推定部と、
前記送信された前記走行車両の傾転度合いと、前記推定された比較用の前記走行車両の傾転度合いと、の比較に基づいて、警告を促すための情報を前記走行車両へ通知する情報通知部と、
を備えた
情報通知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報通知システムにおいて、
前記走行車両の前記情報送信部は、
前記サーバに送信する前記走行車両の位置として、第1位置、及び、前記第1位置の測定よりも後に測定された第2位置を送信し、前記サーバに送信する前記走行車両の傾転度合いとして、前記第1位置に対応する第1傾転度合い、及び、前記第2位置に対応する第2傾転度合いを送信するよう構成され、
前記サーバは、更に、
前記走行車両の位置および前記走行車両の傾転度合いの相関として、前記第1位置および前記第1傾転度合いに基づく機械学習にて得られる学習モデルを生成する相関生成部を備え、
前記サーバの前記傾転推定部は、
前記送信された前記走行車両の前記第2位置を、前記生成された前記学習モデルに入力することで、比較用の前記走行車両の傾転度合いを推定するよう構成され、
前記サーバの前記情報通知部は、
前記送信された前記走行車両の前記第2傾転度合いと、前記推定された比較用の前記走行車両の傾転度合いと、の比較に基づいて、警告を促すための情報を前記走行車両へ通知するよう構成された
情報通知システム。
【請求項3】
請求項2に記載の情報通知システムにおいて、
前記サーバの前記情報通知部は、
前記第2傾転度合いと、前記推定された比較用の前記走行車両の傾転度合いと、の違いが、所定値以上である場合に、警告を促すための情報を前記走行車両へ通知するよう構成された
情報通知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線路等の軌道上を走行する走行車両に、情報通知するためのシステムである情報通知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軌道上を走行する走行車両として、鉄道車両に関する異常を判定するための技術が知られている。一般に、鉄道車両は、軸梁式の台車を備える場合が多く、当該台車が、異常判定の対象とされる技術が開発されてきている。この種の技術として、特許文献1に開示の装置では、台車の軸梁の回転角が算出され、算出された回転角に基づいて異常が判定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-164021号公報(請求項1、段落0026等)
【発明の概要】
【0004】
上記特許文献1における装置によれば、台車の軸箱支持系の剛性低下や、台車枠と軸箱との間に設けられたゴムのへたり等の事象による回転角の変化を取得でき、台車の異常を検知できる。しかしながら、この種の走行車両は、通常、複数の軸梁を備えるため、精度良い異常判定のためには、軸梁毎に設けられる回転角センサも複数個必要となる。このため、異常判定のための装置構成が複雑化する。
【0005】
更に、台車そのものの異常を検知できたとしても、例えば、線路の変形等、台車以外を要因とする異常を検知することが難しい。従って、この装置では、精度良い異常検知が困難である。以上のことから、軌道上を走行する走行車両において、精度良く、且つ、簡易に異常判定でき、走行車両に警告を促すための情報を通知できる技術が、要望されている。
【0006】
そこで、本発明は、上記要望に鑑み、軌道上を走行する走行車両に、情報通知するためのシステムにおいて、精度良く、且つ、簡易に異常判定でき、走行車両に警告を促すための情報を通知できるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。本発明の情報通知システムは、軌道上を走行する走行車両と、前記走行車両と情報通信ネットワークを介し接続され、前記走行車両の情報を送受信可能に構成されたサーバと、を備えた、前記サーバから前記走行車両へ情報を通知するためのシステムである。本発明の情報通知システムにおいて、前記走行車両は、前記走行車両の位置を測定する位置測定部と、前記走行車両の傾転度合いを検出する傾転検出部と、前記測定された前記走行車両の位置、及び、前記検出された前記走行車両の傾転度合いを、前記サーバに送信する情報送信部と、を備え、前記サーバは、前記送信された前記走行車両の位置と、予め規定された前記走行車両の位置および前記走行車両の傾転度合いの相関と、に基づいて、比較用の前記走行車両の傾転度合いを推定する傾転推定部と、前記送信された前記走行車両の傾転度合いと、前記推定された比較用の前記走行車両の傾転度合いと、の比較に基づいて、警告を促すための情報を前記走行車両へ通知する情報通知部と、を備える。
【0008】
上記構成によれば、走行車両が線路等の軌道を走行する際、走行車両の位置、及び、傾転度合いが測定・検出され、サーバへ逐次送信される。サーバにて、多数の位置、及び、傾転度合いの情報が集約され、当該情報は、例えば、データベースとして整理される。データベースに基づいて、線路に異常が無い場合における、位置及び傾転度合いの相関を生成できる。傾転推定部にて、この相関に、走行車両から送信されてくる位置が入力されることで、当該位置に対応する安全な範囲内の傾転度合いを推定できる。情報通知部にて、推定される傾転度合いを比較用の値とし、走行車両から送信されてくる傾転度合いと比較される。
【0009】
ここにおいて、線路等の軌道において所定位置にて変形が生じたり、走行車両の各構成部品に変形が生じたりする等に応じて、傾転度合いも、通常時から大きく変化する場合が多い。この場合、上述した比較が実行されて、精度良く、且つ、簡易に異常判定を行うことができる。そして、情報通知部にて、異常判定された場合に、サーバから走行車両に警告を促すための情報が通知される。従って、上記構成によれば、走行車両の位置及び傾転度合いの情報が利活用されて、精度良く、且つ、簡易に異常判定を行うことができ、走行車両に警告を促すための情報を通知できる。
【0010】
本発明の情報通知システムにおいて、前記走行車両の前記情報送信部は、前記サーバに送信する前記走行車両の位置として、第1位置、及び、前記第1位置の測定よりも後に測定された第2位置を送信し、前記サーバに送信する前記走行車両の傾転度合いとして、前記第1位置に対応する第1傾転度合い、及び、前記第2位置に対応する第2傾転度合いを送信するよう構成され、前記サーバは、更に、前記走行車両の位置および前記走行車両の傾転度合いの相関として、前記第1位置および前記第1傾転度合いに基づく機械学習にて得られる学習モデルを生成する相関生成部を備え、前記サーバの前記傾転推定部は、前記送信された前記走行車両の前記第2位置を、前記生成された前記学習モデルに入力することで、比較用の前記走行車両の傾転度合いを推定するよう構成され、前記サーバの前記情報通知部は、前記送信された前記走行車両の前記第2傾転度合いと、前記推定された比較用の前記走行車両の傾転度合いと、の比較に基づいて、警告を促すための情報を前記走行車両へ通知するよう構成される。
【0011】
本発明の情報通知システムにおいて、前記サーバの前記情報通知部は、前記第2傾転度合いと、前記推定された比較用の前記走行車両の傾転度合いと、の違いが、所定値以上である場合に、警告を促すための情報を前記走行車両へ通知するよう構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、走行車両の位置及び傾転度合いの情報が利活用されて、精度良く、且つ、簡易に異常判定を行うことができ、走行車両に警告を促すための情報を通知できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る情報通知システムの全体概略図である。
【
図3】
図1に示す走行車両の正面図であって、走行車両の長手方向に沿った軸回りに傾転する状態を説明するための図である。
【
図4】
図1に示す走行車両の側面図であって、走行車両の車幅方向に沿った軸回りに傾転する状態を説明するための図である。
【
図5】
図1に示す走行車両の平面図であって、走行車両の車高方向に沿った軸回りに傾転する状態を説明するための図である。
【
図6】
図1に示す走行車両の機能ブロック図である。
【
図7】
図1に示す走行車両における、第1位置、第2位置、第1傾転度合い、及び、第2傾転度合いの測定・送信タイミングを説明するためのタイムチャートである。
【
図9】
図1に示す走行車両が線路を走行する場合における、走行及び位置測定の態様の一例を示す図である。
【
図10】
図1に示すサーバにて生成されるデータベース、及び、データセットの一例を示す図である。
【
図11】
図1に示すサーバにて得られる学習モデルである相関に基づいて、比較用の傾転度合いを推定するプロセスを説明するための図である。
【
図12】
図1に示す情報通知システムの実際の作動を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
<情報通知システム>
図1に示すように、本発明の実施形態に係る情報通知システム100は、走行車両10へ警告を促すための情報を通知するためのシステムである。情報通知システム100は、走行車両10、及び、サーバ20を備えている。軌道上を走行する走行車両10は、サーバ20と情報通信ネットワークNを介し接続されている。走行車両10で取得される情報は、無線通信にてサーバ20に送信可能となっている。
【0016】
サーバ20は、クラウドサーバ等であり、走行車両10からの送信情報を受信し記憶していく。サーバ20は、走行車両10とは異なる場所に位置している。また、サーバ20では、当該記憶された情報、及び、走行車両10からの送信情報等に基づいて、走行車両10へ警告を促すための情報を通知するようになっている。
【0017】
<走行車両>
図2、及び、
図6に示すように、走行車両10は、車体11、集電装置12、走行装置13、表示装置14、測位装置15、傾転検出装置16、制御装置17、及び、通信装置18を備えている。本実施形態では、走行車両10は、線路R等の軌道上を走行するものであり、線路Rに配置された停車場にて、定期的に停車するものである。走行車両10は、本実施形態では、停車場にて乗客の乗降可能となっており、乗客を輸送するために用いられる。なお、走行車両10は、貨物を輸送する車両であってもよく、軌道上を、当該軌道に沿って走行するものであれば、これらに限定されない。また、1つの線路Rに対し1つ又は複数の走行車両10が、走行するようになっていてもよい。走行車両10は、運転手、オペレータ等が乗車して運転されてもよいし、自動運転されてもよい。より具体的には、走行車両10は、電車、鉄道車両、地下鉄車両、新幹線車両、リニアモータカー、路面電車、モノレール車両等であってもよい。
【0018】
車体11は、連結機11a、運転席11b、及び、操作具11cを備えている。車体11は、略直方体状の筐体であり、長手方向が進行方向Kに沿っている。車体11の車幅方向側面には、出入口が設けられ、当該出入口を介して、乗客が車体11の内部空間に乗降可能となっている。車体11の後方には、連結機11aが設けられ、別の車体11の前方と連結される。即ち、複数の車体11は、連結機11aを介して接続されて、走行車両10は、複数の車体11の車列で構成される。
【0019】
なお、走行車両10の進行方向Kと同方向を向く運転手から見て、前・後、左・右、上・下の方向は、各図中に示す矢印における前方向・後方向、左方向・右方向、上方向・下方向に、それぞれ対応している。
【0020】
最前列の車体11の前方には、運転席11bが設けられている。運転席11bは、運転手が乗降可能となっている。運転席11bのコンソールには、表示装置14、操作具11
c等が、設けられている。運転席11bの下部には、制御装置17、通信装置18等が、設けられている。操作具11cは、運転手により操作可能なレバー、スイッチ等であり、制御装置17に対し、駆動系の指示信号を送出する。即ち、操作具11cの操作に応じて、制御装置17を介して集電装置12からの供給電力が調整されて、走行装置13の駆動が、制御されるようになっている。
【0021】
車体11の上部(例えば、ルーフ)には、集電装置12が設けられている。集電装置12は、各車体11にそれぞれ備えられている。集電装置12は、パンタグラフ等であり、走行車両10が走行する場合に、トロリー線に対し摺動する。当該トロリー線の電力は、集電装置12に集電される。集電装置12から、制御装置17を介して、走行装置13に向けて電力供給されるようになっている。
【0022】
車体11の下部には、走行装置13が設けられている。走行装置13は、車輪13a、原動機13b、及び、制動機13cを備えている。走行装置13は、1つの車体11に複数個備えられており、動力分散方式の自走を可能としている。走行装置13は、車幅方向に延びる車軸を有し、車軸端に車輪13aが回転可能に接続されている。走行装置13の車輪13aが、線路Rに案内されることで、走行車両10は、軌道上を走行する。原動機13bは、電動モータ等であり、電力供給されて車輪13aを回転駆動する。制動機13cは、空気ブレーキ等であり、電力供給されて車輪13aを制動する。原動機13b、及び、制御機13cの制御は、操作具11cの操作に応じて、制御装置17に指示されることで実行される。
【0023】
運転席11bの表示装置14は、運転手により視認可能なメータ、モニタ等で構成されている。表示装置14は、走行車両10の状態(例えば、車速等)や、サーバ20から通知される情報(例えば、警告等)を、制御装置17の指示に応じて、表示するようになっている。サーバ20にて、走行車両10の傾転度合いにおいて、異常があると判定された場合に、警告を促すための情報が通知される。表示装置14にて、警告が表示されることで、当該警告を運転手に促すことができる。走行車両10の傾転度合いにおける異常判定は、走行車両10の測定位置と、傾転度合いと、に基づいて実行される。
【0024】
車体11の上部(例えば、ルーフ)には、測位装置15が設けられている。測位装置15は、GNSS等の衛星測位システムにより、緯度、経度を含む測位情報を、検出可能となっている。測位装置15は、測位衛星から送信された測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等を含む衛星信号を受信するようになっている。測位装置15では、当該衛星信号に基づいて、線路Rを走行している走行車両10の緯度、経度が測位される。
【0025】
図2、
図3、
図4、及び、
図5に示すように、運転席11bの下側であって、車幅方向の略中央部に、傾転検出装置16が設けられている。傾転検出装置16は、例えば、加速度センサ、ジャイロセンサなどで構成されるIMU(Inertial Measurement Unit)等である。
【0026】
傾転検出装置16は、本実施形態では、走行車両10の傾転度合いとして、ロール角AR、ピッチ角AP、及び、ヨー角AYが、それぞれ検出されるようになっている。なお、傾転度合いとしては、ロール角AR、ピッチ角AP、及び、ヨー角AYの全てが検出される構成に代えて、これらのうちから、1つ、又は、2つが検出されるようにしてもよい。ロール角AR、ピッチ角AP、及び、ヨー角AYに対応して、軸KR、軸KP、及び、軸KYが、それぞれ規定される。軸KRは、走行車両10の長手方向に沿っており、ロール角ARは、軸KRを中心とした回転角である。軸KPは、走行車両10の車幅方向に沿っており、ピッチ角APは、軸KPを中心とした回転角である。軸KYは、走行車両10の車高方向に沿っており、ヨー角AYは、軸KYを中心とした回転角である。軸KR、軸K
P、及び、軸KYは、互いにそれぞれ直交している。
【0027】
正面図である
図3の破線にて示す状態は、基準となる水平面の線路Rにて、走行車両10が走行している状態である。この状態にて、軸KYと車体11の上端との交点P1が規定される。この状態から、
図3の実線にて示すように、軸KR回りに走行車両10が傾転した場合、交点P1は、回転に従って交点P2に移動する。ロール角ARは、交点P1、軸KR、交点P2を結んで得られる屈曲線の成す角となる。ロール角ARは、軸KR回りの傾転度合いが大きいほど、より大きくなる。このロール角ARは、傾転検出装置16により検出される。
【0028】
側面図である
図4の破線にて示す状態は、基準となる水平面の線路Rにて、走行車両10が走行している状態である。この状態にて、軸KRと車体11の前面端との交点P3が規定される。この状態から、
図4の実線にて示すように、軸KP回りに走行車両が傾転した場合、交点P3は、回転に従って交点P4に移動する。ピッチ角APは、交点P3、軸KP、交点P4を結んで得られる屈曲線の成す角となる。ピッチ角APは、軸KP回りの傾転度合いが大きいほど、より大きくなる。このピッチ角APは、傾転検出装置16により検出される。
【0029】
平面図である
図5の破線にて示す状態は、基準となる水平面の線路Rにて、走行車両10が走行している状態である。この状態にて、軸KPと車体11の側面端との交点P5が規定される。この状態から、
図5の実線にて示すように、軸KY回りに走行車両が傾転した場合、交点P5は、回転に従って交点P6に移動する。ヨー角AYは、交点P5、軸KY、交点P6を結んで得られる屈曲線の成す角となる。ヨー角AYは、軸KY回りの傾転度合いが大きいほど、より大きくなる。このヨー角AYは、傾転検出装置16により検出される。
【0030】
図6に示すように、制御装置17は、CPU、電気回路等で構成されており、各種装置と電気的に接続されている。制御装置17は、駆動制御部17a、位置測定部17b、傾転検出部17c、情報送信部17d、及び、情報表示部17eを備えている。駆動制御部17aは、集電装置12から電力供給されるとともに、操作具11cから操作信号を受け入れる。駆動制御部17aは、操作具11cの操作信号に応じて供給電力を調整し、走行装置13に調整電力を供給し、原動機13bおよび制動機13cの駆動を制御する。
【0031】
位置測定部17bは、走行車両10の位置を測定するよう、測位装置15に指示する。傾転検出部17cは、走行車両10のロール角AR、ピッチ角AP、及び、ヨー角AYを検出するよう、傾転検出装置16に指示する。本実施形態では、測位装置15および傾転検出装置16での測定および検出は、走行車両10の走行中に所定時間毎に同時に実行される。例えば、走行車両10が、線路Rの一端から他端まで往復走行しながら、上述の測定および検出が、複数回同時に実行される。これにより、線路R上の異なる複数の位置が、小刻みに測定される。これとともに、当該複数の位置に対応するように、複数の傾転度合い(ロール角AR、ピッチ角AP、及び、ヨー角AY)が検出される。
【0032】
情報送信部17dは、測定された走行車両10の位置、及び、検出された走行車両10のロール角AR、ピッチ角AP、及び、ヨー角AYの情報を、サーバ20に送信するよう、通信装置18に指示する。走行車両10の位置は、上述のように測定されるたびに、サーバ20に逐次送信されていく。走行車両10のロール角AR、ピッチ角AP、及び、ヨー角AYは、上述のように検出されるたびに、サーバ20に逐次送信されていく。
【0033】
図7に示すように、本実施形態では、所定の期間dt毎に測定されて送信される位置を、第1位置L1とする。当該第1位置L1の測定よりも後に測定されて送信される位置を
、第2位置L2とする。第1位置L1および第2位置L2に対応する傾転度合い(ロール角AR、ピッチ角AP、及び、ヨー角AY)を、それぞれ第1傾転度合いT1及び第2傾転度合いT2とする。
【0034】
より具体的には、
図7(a)に示すように、時刻tにおいて測定された最新の走行車両10の位置が第2位置L2となり、対応する最新の走行車両10の傾転度合いが第2傾転度合いT2となる。時刻tよりも前の時刻t-dt,t-2d・・・において、測定された位置はそれぞれ第1位置L1となり、対応する傾転度合いがそれぞれ第1傾転度合いT1となる。時刻tから期間dtだけ時間が進むと、
図7(b)に示すように、時刻t+dtにおいて、最新の走行車両10の位置が第2位置L2として測定され、対応する最新の走行車両10の傾転度合いが第2傾転度合いT2として検出される。時刻t+dtよりも前の時刻t,t-d,t-2d・・・において、測定された位置はそれぞれ第1位置L1となり、対応する傾転度合いがそれぞれ第1傾転度合いT1となる。
【0035】
即ち、本実施形態では、最新の1つの走行車両10の位置、及び、最新の1つの走行車両10の傾転度合いが、第2位置L2、及び、第2傾転度合いT2となる。一方、過去の複数の走行車両10の位置、及び、過去の複数の走行車両10の傾転度合いが、第1位置L1、及び、第1傾転度合いT1となる。このように送信される第1位置L1、及び、第1傾転度合いT1は、後述するように、サーバ20にて相関を生成するために、用いられる。一方、第2位置L2、及び、第2傾転度合いT2は、後述するように、サーバ20にて走行車両10に警告情報を通知するか否かの判定に、用いられる。
【0036】
通信装置18は、サーバ20の通信装置21と、情報通信を行う通信モジュールである。通信装置18は、例えば、通信規格であるIEEE802.11シリーズの無線通信システム、第5世代通信システム、所定の携帯電話通信網又はデータ通信網などにより、無線通信を行うものであってもよい。通信装置18は、情報送信部17dの指示に応じて、上述のように第1位置L1、第2位置L2、第1傾転度合いT1、及び、第2傾転度合いT2の情報を、サーバ20に送信する。また、通信装置18は、サーバ20から走行車両10に向けて通知される警告を促すための情報を、受信する。情報表示部17eは、通信装置18にて受信した情報に応じて、運転手に視認可能なよう表示装置14に警告を表示する。
【0037】
<サーバ>
図8に示すように、サーバ20は、通信装置21、記憶装置22、及び、演算装置23を備えている。通信装置21、記憶装置22、及び、演算装置23は、バス、インターフェイス等を介して、それぞれ電気的に接続されている。通信装置21は、走行車両10の通信装置18と、情報通信を行う通信モジュールである。当該情報通信のための通信規格は、通信装置18のものと同一である。通信装置21は、走行車両10から送信される、第1位置L1、第2位置L2、第1傾転度合いT1、及び、第2傾転度合いT2を受信する。また、通信装置21は、走行車両10に向けて警告を促すための情報を、走行車両10に通知するよう送信する。
【0038】
記憶装置22は、ストレージであり、例えば、SSD等のフラッシュメモリ、HDD等の磁気ディスクなどである。記憶装置22は、通信装置21を介して受信した走行車両10からの各種情報を、記憶し格納可能となっている。また、記憶装置22は、相関生成部23bにて生成された各種相関も、記憶し格納可能となっている。更に、記憶装置22には、演算装置23にて演算処理に用いられるプログラム、パラメータ等も、格納されている。格納された各種情報等は、演算装置23にて、演算に応じて更新可能かつ読み出し可能となっている。
【0039】
演算装置23は、CPU、電気回路等で構成されており、通信装置21での情報の送受信、記憶装置22への記憶、及び、各種演算を行う。演算装置23は、情報記憶部23a、相関生成部23b、傾転推定部23c、及び、情報通知部23dを備えている。
【0040】
情報記憶部23aは、走行車両10の情報送信部17dから送信され、通信装置21で受信された走行車両10の位置、及び、傾転度合いの情報を、記憶装置22へ記憶する。記憶される情報は、後述するデータベースDBとして整理される(
図10を参照)。走行車両10から新たな情報が送信されるたびに、当該情報は、データベースDBに逐次追加されていく。また、情報記憶部23aは、相関生成部23bにて生成される相関も、記憶装置22へ記憶する。記憶される相関は、第1位置L1、及び、第1傾転度合いT1の相関であり、これらは、相関生成部23bにて更新されるたびに、記憶装置22に逐次記憶されていく。
【0041】
相関生成部23bは、走行車両10の位置および走行車両10の傾転度合いの相関を生成する。当該相関として、学習モデルが生成される。この学習モデルは、上記記憶装置22にて記憶されている第1位置L1および第1傾転度合いT1に基づく機械学習にて得られる。
【0042】
傾転推定部23cは、走行車両10の位置と、予め規定された走行車両10の位置および走行車両10の傾転度合いの相関と、に基づいて、比較用の走行車両10の傾転度合いを推定する。より具体的には、相関生成部23bにて相関として生成された学習モデルに、走行車両10の第2位置L2が入力されることで、比較用の走行車両10の傾転度合いが推定される。
【0043】
情報通知部23dは、送信された走行車両10の第2傾転度合いT2と、傾転推定部23cにて推定された比較用の走行車両10の傾転度合いと、の比較に基づいて、警告を促すための情報を走行車両10へ通知する。例えば、「警告を促すための情報」としては、「線路に異常発生」等、表示装置14にて表示された際に、運転手が視認して異常を検知可能なメッセージでもよいし、同時に警告音が発せられるようにしてもよい。
【0044】
<相関を用いた警告の通知>
サーバ20では、走行車両10の第1位置L1、及び、第1傾転度合いT1の相関が生成される。本実施形態では、当該相関として学習モデルが生成される。生成された学習モデル、及び、走行車両10の第2位置L2を用いて、警告を促すための情報が、走行車両10に向けて通知されるようになっている。以下、相関の生成、及び、相関を用いた警告の通知について、詳述する。
【0045】
図9に示すように、走行車両10が走行する線路Rにおいては、一端が始発点PD、及び、他端が終末点PAに規定されている。走行車両10は、始発点PDから終末点PAに向けて走行する。終末点PAに到達した走行車両10は、始発点PDに向けて走行する。即ち、走行車両10は、始発点PD及び終末点PA間を、定期的に往復するものとする。走行車両10における線路Rの往復に伴い、進行方向Kも切替わるようになっている。
【0046】
測定される走行車両10の第1位置L1は、線路Rを走行している走行車両10の緯度、経度等である。走行車両10が線路Rを往復していくと、所定の期間dt毎に走行車両10の第1位置L1が測定されていく(
図7を参照)。このため、線路Rの始発点PDから終末点PAに向けて、位置L11,L12,L13,L14,・・・,Ln-1,Lnが測定されるものとする。走行車両10が日常的に運行されて、線路Rの往復が多数繰り返されることで、上記各位置にそれぞれ対応する第1傾転度合いT1(ロール角AR、ピッチ角AP、及び、ヨー角AY)が多数検出される。このように測定される位置L11,
L12,L13,L14,・・・,Ln-1,Ln、及び、各位置に対応するロール角AR、ピッチ角AP、及び、ヨー角AYは、走行車両10からサーバ20へ多数送信されていく。これらの情報は、膨大なビッグデータとして、サーバ20に集約されることになる。
【0047】
図10に示すように、サーバ20に集約された情報は、情報記憶部23aによりデータベースDBとして整理され、記憶装置22に格納される。データベースDBは、第1位置L1と、第1位置L1が測定されたときに検出された第1傾転度合いT1(ロール角AR、ピッチ角AP、及び、ヨー角AY)と、で構成される。即ち、ロール角AR、ピッチ角AP、及び、ヨー角AYは、対応する位置L11,L12,L13,L14,L15・・・にそれぞれ紐づけられた状態で、データベースDBが構成される。第1位置L1、及び、対応する第1傾転度合いT1が、サーバ20に送信されるたびに、データベースDBの情報が蓄積されていき、全体として更新される。このように構築されるデータベースDBに基づいて、相関が生成されるようになっている。
【0048】
図11に示すように、本実施形態では、データベースDBに基づいて、相関生成部23bにて、第1位置L1およびロール角ARの相関CR1、第1位置L1およびピッチ角APの相関CR2、第1位置L1およびヨー角AYの相関CR3、の3つの相関が生成される。相関CR1,CR2,CR3は、例えば、機械学習して得られる学習モデルとして生成されてもよい。なお、機械学習としては、教師あり学習、教師なし学習等、種々の手法を用いてもよい。教師あり学習を用いる場合、目標の値を予測するためのモデルとして、線形多項式が用いられてもよい。
【0049】
より具体的には、記憶装置22のデータベースDBから情報を読み出し、相関生成部23bにてデータセットを生成して、当該データセットを教師データとする機械学習が実行されてもよい。この場合、
図10に示すように、例えば、データセットとしては、第1位置L1とロール角ARとが対応づけられたデータセットDS1、第1位置L1とピッチ角APとが対応づけられたデータセットDS2、及び、第1位置L1とヨー角AYとが対応づけられたデータセットDS3が、それぞれ生成される。データセットDS1,DS2,DS3が用いられ、学習が繰り返されていくことで、データセットDS1,DS2,DS3に対応する相関CR1,CR2,CR3が、それぞれ生成される。
【0050】
走行車両10からサーバ20に送信されてくる傾転度合いT1(ロール角AR、ピッチ角AP、及び、ヨー角AY)は、通常、線路Rに変形等の異常がない状態において、何れの位置L1においても安全な範囲内に推移する。このため、上述のように学習される学習モデルである相関CR1,CR2,CR3は、安全な範囲内のロール角AR、ピッチ角AP、及び、ヨー角AYを出力できる。即ち、当該学習モデルに任意の位置情報が入力されると、その位置に対応する、安全な範囲内の傾転度合いが出力される。出力された安全な範囲内の傾転度合いと、実際に検出された傾転度合いと、を比較すれば、異常であるか否かの判定が可能となる。このことを利用して、相関CR1,CR2,CR3を用いて、サーバ20から走行車両10への警告の通知がなされる。
【0051】
図11(a)に示すように、傾転推定部23cにより、走行車両10の第2位置L2が学習モデルである相関CR1に入力されることで、ロール角ARrが出力される。
図11(b)に示すように、傾転推定部23cにより、走行車両10の第2位置L2が学習モデルである相関CR2に入力されることで、ピッチ角APrが出力される。
図11(c)に示すように、傾転推定部23cにより、走行車両10の第2位置L2が学習モデルである相関CR3に入力されることで、ヨー角AYrが出力される。出力されたロール角ARr、ピッチ角APr、及び、ヨー角AYrは、第2位置L2における「安全な範囲内の」ロール角AR、ピッチ角AP、及び、ヨー角AYに相当するため、「比較用の」ロール角A
R、ピッチ角AP、及び、ヨー角AYとして用いられることができる。このようにして、傾転推定部23cにより、比較用のロール角ARr、ピッチ角APr、及び、ヨー角AYrが、推定される。
【0052】
この第2位置L2は、測定・送信される走行車両10の位置のうち最新のものであり、第1位置L1が測定・送信された後に、測定・送信されるものである(
図7を参照)。従って、第1位置L1に基づく相関CR1,CR2,CR3は、第2位置L2の測定・送信前に、予め規定されたものとなる。他方、第2位置L2の測定・送信と同時に、第2傾転T2も検出・送信されている(
図7を参照)。従って、実際に検出された第2傾転度合いT2(ロール角AR、ピッチ角AP、及び、ヨー角AY)と、上述のように推定された比較用のロール角ARr、ピッチ角APr、及び、ヨー角AYrと、をそれぞれ比較することができる。
【0053】
本実施形態では、情報通知部23dにより、実際に検出された第2傾転度合いT2と、推定された比較用の傾転度合いと、の違いが、所定値以上である場合に、警告を促すための情報が走行車両10へ通知される。より具体的には、例えば、下記3つの条件のうち何れか1つが成立したときに、異常があるとして、警告を促すための情報が走行車両10へ通知されてもよい。このように、ロール角AR、ピッチ角AP、及び、ヨー角AYと、3つの角度における傾転に対し、個々に判定がなされる。このため、より精度良い異常判定が、可能となる。
【0054】
1.比較用のロール角ARrと、実際に検出されたロール角ARと、の差の絶対値が、所定値dAR以上である場合
2.比較用のピッチ角APrと、実際に検出されたピッチ角APと、の差の絶対値が、所定値dAP以上である場合
3.比較用のヨー角AYrと、実際に検出されたヨー角AYと、の差の絶対値が所定値dAY以上である場合
【0055】
ここにおいて、所定値dAR、dAP、及び、dAYは、安全を担保できる各角度の最大変位等である。所定値dAR、dAP、及び、dAYは、それぞれ一定値であってもよいし、走行車両10の位置の違い、勾配の違い、カーブの曲率の違い、車速の違い等に応じて、異なるように設定されてもよい。また、ロール角AR、ピッチ角AP、及び、ヨー角AYそれぞれの「差の絶対値」が、判定に用いられているが、これに代えて、それぞれの比率が用いられてもよい。
【0056】
<実際の作動>
上述のように構成された走行車両10、及び、サーバ20を備える情報通知システム100の実際の作動を、
図12に示す一連のフローチャートを参照しながら説明する。ここにおいて、走行車両10は、線路Rを走行しているものとする。また、サーバ20では、過去の第1位置L1及び第1傾転度合いT1に基づいて、相関CR1,CR2,CR3が予め生成されているものとする。
【0057】
先ず、ステップST1において、位置測定部17bは走行車両10の位置を測定し、傾転検出部17cは走行車両10の傾転度合いを検出する。傾転度合いは、走行車両10のロール角AR、ピッチ角AP、及び、ヨー角AYである。位置の測定、及び、傾転度合いの検出は、前回の測定・検出のタイミングから、期間dt後に実行される。ここにおいて、測定される位置、及び、検出される傾転度合いは、最新の第2位置L2、及び、第2傾転度合いT2である(
図7を参照)。
【0058】
次に、ステップST2において、情報送信部17dは、ステップST1にて測定・検出
された第2位置L2及び第2傾転度合いT2(ロール角AR、ピッチ角AP、及び、ヨー角AY)を、走行車両10からサーバ20に送信する。
【0059】
次に、ステップST3において、傾転推定部23cは、ステップST2にて送信された第2位置L2を、相関CR1,CR2,CR3にそれぞれ入力する。この相関CR1,CR2,CR3は、上記第2位置L2及び第2傾転度合いT2が今回送信されたタイミングよりも前に、送信された第1位置L1及び第1傾転度合いT1に基づいて、既に生成されているものである。
【0060】
次に、ステップST4において、傾転推定部23cは、ステップST3での第2位置L2の相関への入力に基づいて、比較用の傾転度合いを推定する。学習モデルである相関CR1からは、比較用のロール角ARrが出力される。学習モデルである相関CR2からは、比較用のピッチ角APrが出力される。学習モデルである相関CR3からは、比較用のヨー角AYrが出力される(
図11を参照)。
【0061】
次に、ステップST5において、情報通知部23dは、ステップST4にて推定された比較用のロール角ARrと、ステップST1にて実際に検出されたロール角ARと、の差の絶対値が、所定値dAR以上であるか否かを判定する。現時点において、当該差の絶対値が所定値dAR未満である場合、ステップST5では「No」と判定される。
【0062】
次に、ステップST6において、情報通知部23dは、ステップST4にて推定された比較用のピッチ角APrと、ステップST1にて実際に検出されたピッチ角APと、の差の絶対値が、所定値dAP以上であるか否かを判定する。現時点において、当該差の絶対値が所定値dAP未満である場合、ステップST6では「No」と判定される。
【0063】
次に、ステップST7において、情報通知部23dは、ステップST4にて推定された比較用のヨー角AYrと、ステップST1にて実際に検出されたヨー角AYと、の差の絶対値が、所定値dAY以上であるか否かを判定する。現時点において、当該差の絶対値が所定値dAY未満である場合、ステップST7では「No」と判定される。
【0064】
次に、ステップST8において、情報記憶部23aは、ステップST2にて送信された第2位置L2及び第2傾転度合いT2を、新たな第1位置L1及び新たな第1傾転度合いT1(ロール角AR、ピッチ角AP、及び、ヨー角AY)として、データベースDBに追加する(
図10を参照)。これにより、データベースDBは、新たに情報が追加された状態に更新される。
【0065】
次に、ステップST9において、相関生成部23bは、ステップST8にて更新されたデータベースDBからデータセットDS1,DS2,DS3を生成し、機械学習により学習モデルである相関CR1,CR2,CR3を生成する。当該相関CR1,CR2,CR3は、上記ステップST3の相関CR1,CR2,CR3から新たに更新されたものであり、次回の第2位置L2及び第2傾転度合いT2の送信時に、用いられる。
【0066】
そして、ステップST1に戻り、ステップST5~ST7の全てにおいて「No」と判定される限り、ステップST1~ST9の処理が繰り返し実行されていく。この場合、情報通知部23dは、異常無しとして、走行車両10への警告情報の通知を実行しない。また、データベースDBには、第1位置L1及び第1傾転度合いT1が蓄積されていき、その都度機械学習されて相関CR1,CR2,CR3も更新されていく。
【0067】
一方、ステップST1~ST9の処理が繰り返し実行されている際に、ステップST5~ST7の何れか1つにおいて「Yes」と判定されると、ステップST10に進み、情
報通知部23dは、警告を促すための情報を走行車両10に通知する。
【0068】
次に、ステップST11にて、情報表示部17eは、ステップST10にて通知された情報に応じて、運転手に視認可能なよう表示装置14に警告を表示する。
【0069】
次に、ステップST12にて、警告表示を視認した運転手は、走行装置13を制御する。例えば、操作具11cが減速方向に操作され、当該操作に応じて、駆動制御部17aは、原動機13b及び制動機13cを減速制御する。そして、ステップST1に戻り、以降の処理が繰り返し実行されていく。
【0070】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本発明の実施形態に係る情報通知システム100によれば、走行車両10が線路R等の軌道を走行する際、走行車両10の位置、及び、傾転度合いが測定・検出され、サーバ20へ逐次送信される。サーバ20にて、多数の位置、及び、傾転度合いの情報が集約され、当該情報は、例えば、データベースDBとして整理される。相関生成部にて、データベースDBに基づいて、線路Rに異常が無い場合における、位置L1及び傾転度合いT1の相関CR1,CR2,CR3を生成できる。傾転推定部にて、この相関CR1,CR2,CR3に、走行車両10から送信されてくる位置L2が入力されることで、当該位置に対応する安全な範囲内の傾転度合いを推定できる。情報通知部にて、推定される傾転度合いを比較用の値とし、走行車両10から送信されてくる傾転度合いT2と比較される。
【0071】
ここにおいて、線路R等の軌道において所定位置にて変形が生じたり、走行車両10の各構成部品に変形が生じたりする等に応じて、傾転度合いも、通常時から大きく変化する場合が多い。この場合、上述した比較が実行されて、精度良く、且つ、簡易に異常判定を行うことができる。そして、情報通知部にて、異常判定された場合に、サーバ20から走行車両10に警告を促すための情報が通知される。従って、情報通知システム100によれば、走行車両10の位置及び傾転度合いの情報が利活用されて、精度良く、且つ、簡易に異常判定を行うことができ、走行車両10に警告を促すための情報を通知できる。
【0072】
また、上記実施形態では特に、情報送信部にて、第1位置L1、第2位置L2、第1傾転度合いT1、及び、第2傾転度合いT2が、それぞれ送信される。第2位置L2は、第1位置L1の測定よりも後に測定された位置であり、第1、第2傾転度合いT1,T2は、第1、第2位置L1,L2に対応する値である。相関生成部にて、第1位置L1及び第1傾転度合いT1のデータセットDS1,DS2,DS3に基づく機械学習にて得られる学習モデル(相関CR1,CR2,CR3)が生成される。このため、線路Rに異常が無い状態の情報として、過去に取得された多数の第1位置L1及び第1傾転度合いを、有効に活用できる。また、異常判定には、最新の第2位置L2を入力し、推定された比較用の傾転度合いと、最新の第2傾転度合いT2と、を用いることができる。従って、機械学習に必要な多数の情報を効率的に集約でき、機械学習にて学習モデルが自動的に得られるため、異常判定のための相関を早期に確立できる。
【0073】
また、上記実施形態では特に、情報通知部にて、第2傾転度合いT2と、比較用の傾転度合いとの違いが、所定値以上である場合に、警告を促すための情報が走行車両10へ通知される。これによれば、所定値を、安全を担保できる傾転度合いの最大変位等に設定できる。また、所定値は、一定値であってもよいし、走行車両10の位置の違い、勾配の違い、カーブの曲率の違い、車速の違い等に応じて、異なるように設定されてもよい。従って、判定基準となる所定値を、線路Rや走行車両10の事情に応じて、簡単かつ適切に設定できる。
【0074】
[変形例]
上記実施形態の情報通知システム100は、1つの線路Rを走行する走行車両10に対して適用されていたが、これに代えて、複数の異なる線路を走行する複数の走行車両10に対して、適用されてもよい。この場合、複数の線路を走行する各走行車両10から、位置、及び、傾転度合いを、1つのサーバ20に送信するようにしてもよい。この場合、サーバ20にて、複数の線路ごとに相関を生成し、複数の線路ごとに異常判定が実行されるようにすると、好適である。
【0075】
また、上記実施形態の情報通知システム100では、走行車両10の傾転度合いとして、ロール角AR、ピッチ角AP、及び、ヨー角AYの3つ回転角が用いられているが、これに代えて、この3つのうちから1つ、又は、2つが用いられてもよい。即ち、サーバ20にて、警告を促すための情報を通知するか否かの判定において、上記3つの回転角のうち、1つ、又は、2つが用いられてもよい。
【0076】
今回開示された上記各実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが、意図される。
【符号の説明】
【0077】
10…走行車両、15…測位装置、16…傾転検出装置、17…制御装置、17b…位置測定部、17c…傾転検出部、17d…情報送信部、20…サーバ、23…演算装置、23b…相関生成部、23c…傾転推定部、23d…情報通知部、100…情報通知システム、AR…ロール角、AP…ピッチ角、AY…ヨー角、ARr…比較用のロール角、APr…比較用のピッチ角、AYr…比較用のヨー角、CR1,CR2、CR3…相関、DB…データベース、DS1,DS2,DS3…データベース、L1…第1位置、L2…第2位置、N…情報通信ネットワーク、R…線路、T1…第1傾転度合い、T2…第2傾転度合い