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特開2023-148828住所・所在地調査結果に基づく拡大推計を行う対象分布推定プログラム、装置、システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148828
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】住所・所在地調査結果に基づく拡大推計を行う対象分布推定プログラム、装置、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20120101AFI20231005BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057077
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100141313
【弁理士】
【氏名又は名称】辰巳 富彦
(72)【発明者】
【氏名】上坂 大輔
(72)【発明者】
【氏名】武田 直人
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮博
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC35
(57)【要約】      (修正有)
【課題】実分布の正解データに頼らず高解像度分布を高精度で推定する対象分布推定プログラムを提供する。
【解決手段】対象分布推定プログラムを実行する通信設備装置1において、存在数決定部111は、端末2の測位結果から対象の存在数分布を決定する。住所・所在地拡大係数決定部112は、区域毎に、住所・所在地での時間区間での滞在端末数と住所・所在地調査結果に基づき、住所・所在地区域とする対象の住所・所在地拡大係数を決定する。住所・所在地区域決定部113は、地点毎に、登録情報・測位結果の履歴情報から当該地点の端末が付された対象の住所・所在地区域を決定する。拡大係数推定部114は、地点毎に、特定された端末が付された対象の区域を住所・所在地区域として算出した割合と住所・所在地拡大係数より当該地点の拡大係数を推定する。対象存在分布決定部115は、存在数分布と推定された拡大係数から各地点の対象の存在数を決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定地域における複数の対象の分布を推定するコンピュータを機能させる対象分布推定プログラムであって、
当該対象に付された端末についての所定期間に取得された測位結果から、当該所定地域における当該対象の存在する数の分布としての存在数分布を決定する存在数分布決定手段と、
当該所定地域内の区域毎に、当該測位結果の履歴情報又は当該端末についての登録情報に基づき、住所又は所在地に関係する時間区間において当該区域内に滞在する当該端末の数を決定し、当該端末の数と、取得された当該対象の住所又は所在地の調査結果とに基づき、当該区域を住所又は所在地区域とする対象に係る拡大係数としての住所・所在地拡大係数を決定する住所・所在地拡大係数決定手段と、
当該所定地域内の地点毎に、当該測位結果から当該地点に係る端末を特定し、特定された端末についての登録情報又は当該測位結果の履歴情報から、該特定された端末が付された対象の住所又は所在地としての住所・所在地区域を決定する住所・所在地区域決定手段と、
当該地点毎に、当該特定された端末が付された対象における当該区域の各々を住所・所在地区域とする割合を算出し、当該割合と当該住所・所在地拡大係数とに基づき、当該地点の拡大係数を推定する拡大係数推定手段と、
当該存在数分布と推定された拡大係数とに基づき、当該所定地域内の複数の地点の各々における当該対象の存在する数を決定する対象存在分布決定手段と
としてコンピュータを機能させることを特徴とする対象分布推定プログラム。
【請求項2】
前記拡大係数推定手段は、当該地点毎に、当該住所・所在地拡大係数を当該割合で重み付けした上で当該住所・所在地区域にわたって合算し、当該合算の結果を、当該地点の拡大係数に決定することを特徴とする請求項1に記載の対象分布推定プログラム。
【請求項3】
前記存在数分布決定手段は、第1の所定期間に蓄積された当該測位結果、及び第1の所定期間よりも短い第2の所定期間であって当該分布の推定時点の直前となる第2の所定期間で取得された当該測位結果から、当該分布の推定時点での又は当該推定時点の直前での存在する数の分布としての推定時存在数分布を決定し、
前記対象存在分布決定手段は、当該推定時存在数分布と推定された拡大係数とに基づき、当該所定地域内の複数の地点の各々における当該対象の存在する数を決定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の対象分布推定プログラム。
【請求項4】
前記存在数分布決定手段は、第1の所定期間として、予め設定された月、日、曜日、平日・休日、及び/又は時間帯に係る期間種別であって、当該分布の推定時点が属する期間種別に該当する期間を設定することを特徴とする請求項3に記載の対象分布推定プログラム。
【請求項5】
前記存在数分布決定手段は、当該測位結果に係る測位時点が第1の所定期間及び第2の所定期間内においてより新しい時点であるほどより大きい重みを当該測位結果に付与して、当該推定時存在数分布を決定することを特徴とする請求項3又は4に記載の対象分布推定プログラム。
【請求項6】
前記存在数分布決定手段は、第1の所定期間及び第2の所定期間で取得された測位結果毎に、当該測位結果に含まれる又は当該測位結果から決定される測位誤差の単調増加関数となる広さを有する領域内に、当該測位結果に相当する少なくとも1つの存在点であってその合計が1となる重みの付与された少なくとも1つの存在点を設定し、当該存在点から当該推定時存在数分布を決定することを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の対象分布推定プログラム。
【請求項7】
前記存在数分布決定手段は、
第1の所定期間及び第2の所定期間に含まれる複数のサブ期間におけるサブ期間毎に、当該サブ期間で取得された当該測位結果から、当該サブ期間の代表時点での存在する数の分布としてのサブ期間存在数分布を決定し、
当該代表時点での当該サブ期間存在数分布を推定時点での存在数分布へ外挿し、外挿して得られた存在数分布を当該推定時存在数分布に決定する
ことを特徴とする請求項3から6のいずれか1項に記載の対象分布推定プログラム。
【請求項8】
所定地域における複数の対象の分布を推定する対象分布推定装置であって、
当該対象に付された端末についての所定期間に取得された測位結果から、当該所定地域における当該対象の存在する数の分布としての存在数分布を決定する存在数分布決定手段と、
当該所定地域内の区域毎に、当該測位結果の履歴情報又は当該端末についての登録情報に基づき、住所又は所在地に関係する時間区間において当該区域内に滞在する当該端末の数を決定し、当該端末の数と、取得された当該対象の住所又は所在地の調査結果とに基づき、当該区域を住所又は所在地区域とする対象に係る拡大係数としての住所・所在地拡大係数を決定する住所・所在地拡大係数決定手段と、
当該所定地域内の地点毎に、当該測位結果から当該地点に係る端末を特定し、特定された端末についての登録情報又は当該測位結果の履歴情報から、該特定された端末が付された対象の住所又は所在地としての住所・所在地区域を決定する住所・所在地区域決定手段と、
当該地点毎に、当該特定された端末が付された対象における当該区域の各々を住所・所在地区域とする割合を算出し、当該割合と当該住所・所在地拡大係数とに基づき、当該地点の拡大係数を推定する拡大係数推定手段と、
当該存在数分布と推定された拡大係数とに基づき、当該所定地域内の複数の地点の各々における当該対象の存在する数を決定する対象存在分布決定手段と
を有することを特徴とする対象分布推定装置。
【請求項9】
所定地域における複数の対象の分布を推定する対象分布推定システムであって、
当該対象に付された端末についての所定期間に取得された測位結果から、当該所定地域における当該対象の存在する数の分布としての存在数分布を決定する存在数分布決定手段と、
当該所定地域内の区域毎に、当該測位結果の履歴情報又は当該端末についての登録情報に基づき、住所又は所在地に関係する時間区間において当該区域内に滞在する当該端末の数を決定し、当該端末の数と、取得された当該対象の住所又は所在地の調査結果とに基づき、当該区域を住所又は所在地区域とする対象に係る拡大係数としての住所・所在地拡大係数を決定する住所・所在地拡大係数決定手段と、
当該所定地域内の地点毎に、当該測位結果から当該地点に係る端末を特定し、特定された端末についての登録情報又は当該測位結果の履歴情報から、該特定された端末が付された対象の住所又は所在地としての住所・所在地区域を決定する住所・所在地区域決定手段と、
当該地点毎に、当該特定された端末が付された対象における当該区域の各々を住所・所在地区域とする割合を算出し、当該割合と当該住所・所在地拡大係数とに基づき、当該地点の拡大係数を推定する拡大係数推定手段と、
当該存在数分布と推定された拡大係数とに基づき、当該所定地域内の複数の地点の各々における当該対象の存在する数を決定する対象存在分布決定手段と
を有することを特徴とする対象分布推定システム。
【請求項10】
所定地域における複数の対象の分布を推定するコンピュータによって実施される対象分布推定方法であって、
当該対象に付された端末についての所定期間に取得された測位結果から、当該所定地域における当該対象の存在する数の分布としての存在数分布を決定するステップと、
当該所定地域内の区域毎に、当該測位結果の履歴情報又は当該端末についての登録情報に基づき、住所又は所在地に関係する時間区間において当該区域内に滞在する当該端末の数を決定し、当該端末の数と、取得された当該対象の住所又は所在地の調査結果とに基づき、当該区域を住所又は所在地区域とする対象に係る拡大係数としての住所・所在地拡大係数を決定し、また、当該所定地域内の地点毎に、当該測位結果から当該地点に係る端末を特定し、特定された端末についての登録情報又は当該測位結果の履歴情報から、該特定された端末が付された対象の住所又は所在地としての住所・所在地区域を決定するステップと、
当該地点毎に、当該特定された端末が付された対象における当該区域の各々を住所・所在地区域とする割合を算出し、当該割合と当該住所・所在地拡大係数とに基づき、当該地点の拡大係数を推定するステップと、
当該存在数分布と推定された拡大係数とに基づき、当該所定地域内の複数の地点の各々における当該対象の存在する数を決定するステップと
を有することを特徴とする対象分布推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の地域における対象の分布、例えば人口分布を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の地域における人口分布(又は時間変化する分布を含む意味での人流)を、高解像度化したデータとして把握することは、マーケティング、交通網の効率的運用(渋滞回避等)や、公共施設等の整備を含む都市計画、さらには感染症対策等にとって非常に重要となる。
【0003】
ここで人口分布(人流)データを高解像度化するとは、人口(人流)の集計を行う単位である地域メッシュ(以下、メッシュと略称)のサイズをより小さくすることである。この点、従来人口分布の元データとして利用されてきた(ユーザの所持する)携帯端末の測位データ群は、例えば緯度経度座標における点に係るデータ群であって、その意味では解像度は最大となっている。しかし当然ながら、このような測位データ群だけでは対象地域における全での人間の位置情報を得ることはできない。
【0004】
したがって、実際には携帯端末の測位データ群から全人口への拡大推計を行って人口分布データを生成しなければならない。ただし携帯端末の測位データ群だけから単純に拡大推計を行うとすると、例えば測位データの存在しないメッシュについては(0人を何倍しても0人であることから)拡大推計による推定値の誤差が大きくなってしまう。また特に都市部では、密集する建造物等の影響によりGPS(Global Positioning System)測位データは元々、大きな誤差を有している可能性が少なくない。
【0005】
その結果、全人間の分布の全体的な傾向を正しく反映した人口分布(人流)データを生成するためには、メッシュのサイズを大きく、すなわち解像度を低く設定して、各メッシュが測位データを含まない事態や、本来有するべき(有すべきでない)測位データを有していない(有している)事態を極力回避するようにせざるを得なかったのである。ここで図6に、まばらな端末位置情報(測位データ)から、より小さなメッシュ(高解像度メッシュ)を用いて人口分布ヒートマップを生成した場合、かえってその精度(正確度)が大幅に低下する様子を模式的に示している。
【0006】
このように困難であった人口分布(人流)の高解像度化を図る技術として、例えば非特許文献1には、人流の空間相関や天候等の外部要因の影響をモデル化し、人口の総和を制約条件としつつ、高解像度な人流マップをAI(Artificial Intelligence)によって推定する技術が開示されている。
【0007】
また、非特許文献2には、空間方向の超解像化を図るAIモデルと時間方向の超解像化を図るAIモデルとを組み合わせることによって、高解像度の人流データを生成する技術が開示されている。
【0008】
さらに、非特許文献3は、(a)スマートフォン位置情報と(b)ビーコンによる位置情報とを組み合わせて詳細な人流データを生成する技術が開示されている。この技術では、(a)のスマートフォン位置情報を「解像度は低いが、ある広域エリアの人流のボリューム(人口)が分かるデータ」と位置づけ、また、(b)のビーコンによる位置情報を「一部のユーザのみのデータであるが、詳細な位置情報が得られるデータ」と位置付けて、トータルの人口が(a)のスマートフォン位置情報の数となるように、(b)のビーコンによる位置情報のデータを拡大推計している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Fan Zhou, Liang Li, Ting Zhong, Goce Trajcevski, Kunpeng Zhang, Jiahao Wang, “Enhancing Urban Flow Maps via Neural ODEs”, Proceedings of the Twenty-Ninth International Joint Conference on Artificial Intelligence (IJCAI2020) Main track. Pages 1295-1302, 2020年
【非特許文献2】Zong, Z., Feng, J., Liu, K., Shi, H., & Li, Y., “DeepDPM: Dynamic Population Mapping via Deep Neural Network”, Proceedings of the AAAI Conference on Artificial Intelligence, 33(01), pp.1294-1301. 2019年
【非特許文献3】「明日の混雑予報ポータル」,[online],[2022年3月10日検索]、インターネット<URL: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000090522.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した非特許文献1~3に開示されたような従来技術は、人口分布(人流)データの高解像度化について依然、問題を抱えているのである。
【0011】
例えば、非特許文献1及び2に開示された技術はいずれも、推定対象エリアにおける高解像度の人流の正解データが取得されることを前提としている。すなわち、AIモデルの訓練に高解像度の正解データを必要とする。しかしながら実際には、そのような正解データの取得されるケースは相当に少なく、したがってこの前提は多くの場合に、非現実的なものとなっている。例えばスマートフォンのGPS測位データ群は、正解とすべき全人口の位置情報のうちで「対象となる通信事業者と契約をしており、GPS搭載機種を保有し、且つGPS測位データの提供に同意しているユーザ」の位置情報だけを提供するのであり、人流(人口分布)の正解データとすることは明らかにできないのである。
【0012】
また、非特許文献3に開示された技術は、スポット的にしか収集されない(b)のビーコンによる位置情報(位置データ)の間を補間処理によって補っており、推定される位置における精度の低下が懸念される。さらに、(a)のスマートフォン位置情報を「人流のボリューム(人口)が分かるデータ」と捉えていて、例えばこの情報に対し単純な一律の拡大推計を施しているにすぎない。その結果、推定される人数における精度の低下が懸念されるのである。
【0013】
そこで、本発明は、対象の実分布に係る正解データに頼ることなく、高い解像度の対象の分布を、より高い精度(正確度)で推定することができる対象分布推定プログラム、装置、システム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、所定地域における複数の対象の分布を推定するコンピュータを機能させる対象分布推定プログラムであって、
当該対象に付された端末についての所定期間に取得された測位結果から、当該所定地域における当該対象の存在する数の分布としての存在数分布を決定する存在数分布決定手段と、
当該所定地域内の区域毎に、当該測位結果の履歴情報又は当該端末についての登録情報に基づき、住所又は所在地に関係する時間区間において当該区域内に滞在する当該端末の数を決定し、当該端末の数と、取得された当該対象の住所又は所在地の調査結果とに基づき、当該区域を住所又は所在地区域とする対象に係る拡大係数としての住所・所在地拡大係数を決定する住所・所在地拡大係数決定手段と、
当該所定地域内の地点毎に、当該測位結果から当該地点に係る端末を特定し、特定された端末についての登録情報又は当該測位結果の履歴情報から、該特定された端末が付された対象の住所又は所在地としての住所・所在地区域を決定する住所・所在地区域決定手段と、
当該地点毎に、当該特定された端末が付された対象における当該区域の各々を住所・所在地区域とする割合を算出し、当該割合と当該住所・所在地拡大係数とに基づき、当該地点の拡大係数を推定する拡大係数推定手段と、
当該存在数分布と推定された拡大係数とに基づき、当該所定地域内の複数の地点の各々における当該対象の存在する数を決定する対象存在分布決定手段と
としてコンピュータを機能させる対象分布推定プログラムが提供される。
【0015】
この本発明による対象分布推定プログラムにおいて、拡大係数推定手段は、当該地点毎に、当該住所・所在地拡大係数を当該割合で重み付けした上で当該住所・所在地区域にわたって合算し、当該合算の結果を、当該地点の拡大係数に決定することも好ましい。
【0016】
また、本発明による対象分布推定プログラムの一実施形態として、存在数分布決定手段は、第1の所定期間に蓄積された当該測位結果、及び第1の所定期間よりも短い第2の所定期間であって当該分布の推定時点の直前となる第2の所定期間で取得された当該測位結果から、当該分布の推定時点での又は当該推定時点の直前での存在する数の分布としての推定時存在数分布を決定し、
対象存在分布決定手段は、当該推定時存在数分布と推定された拡大係数とに基づき、当該所定地域内の複数の地点の各々における当該対象の存在する数を決定することも好ましい。
【0017】
さらに上記の実施形態において、存在数分布決定手段は、第1の所定期間として、予め設定された月、日、曜日、平日・休日、及び/又は時間帯に係る期間種別であって、当該分布の推定時点が属する期間種別に該当する期間を設定することも好ましい。
【0018】
さらに上記の実施形態において、存在数分布決定手段は、当該測位結果に係る測位時点が第1の所定期間及び第2の所定期間内においてより新しい時点であるほどより大きい重みを当該測位結果に付与して、当該推定時存在数分布を決定することも好ましい。
【0019】
また上記の実施形態において、存在数分布決定手段は、第1の所定期間及び第2の所定期間で取得された測位結果毎に、当該測位結果に含まれる又は当該測位結果から決定される測位誤差の単調増加関数となる広さを有する領域内に、当該測位結果に相当する少なくとも1つの存在点であってその合計が1となる重みの付与された少なくとも1つの存在点を設定し、当該存在点から当該推定時存在数分布を決定することも好ましい。
【0020】
さらに上記の実施形態において、存在数分布決定手段は、
第1の所定期間及び第2の所定期間に含まれる複数のサブ期間におけるサブ期間毎に、当該サブ期間で取得された当該測位結果から、当該サブ期間の代表時点での存在する数の分布としてのサブ期間存在数分布を決定し、
当該代表時点での当該サブ期間存在数分布を推定時点での存在数分布へ外挿し、外挿して得られた存在数分布を当該推定時存在数分布に決定する
ことも好ましい。
【0021】
本発明によれば、また、所定地域における複数の対象の分布を推定する対象分布推定装置であって、
当該対象に付された端末についての所定期間に取得された測位結果から、当該所定地域における当該対象の存在する数の分布としての存在数分布を決定する存在数分布決定手段と、
当該所定地域内の区域毎に、当該測位結果の履歴情報又は当該端末についての登録情報に基づき、住所又は所在地に関係する時間区間において当該区域内に滞在する当該端末の数を決定し、当該端末の数と、取得された当該対象の住所又は所在地の調査結果とに基づき、当該区域を住所又は所在地区域とする対象に係る拡大係数としての住所・所在地拡大係数を決定する住所・所在地拡大係数決定手段と、
当該所定地域内の地点毎に、当該測位結果から当該地点に係る端末を特定し、特定された端末についての登録情報又は当該測位結果の履歴情報から、該特定された端末が付された対象の住所又は所在地としての住所・所在地区域を決定する住所・所在地区域決定手段と、
当該地点毎に、当該特定された端末が付された対象における当該区域の各々を住所・所在地区域とする割合を算出し、当該割合と当該住所・所在地拡大係数とに基づき、当該地点の拡大係数を推定する拡大係数推定手段と、
当該存在数分布と推定された拡大係数とに基づき、当該所定地域内の複数の地点の各々における当該対象の存在する数を決定する対象存在分布決定手段と
を有する対象分布推定装置が提供される。
【0022】
本発明によれば、さらに、所定地域における複数の対象の分布を推定する対象分布推定システムであって、
当該対象に付された端末についての所定期間に取得された測位結果から、当該所定地域における当該対象の存在する数の分布としての存在数分布を決定する存在数分布決定手段と、
当該所定地域内の区域毎に、当該測位結果の履歴情報又は当該端末についての登録情報に基づき、住所又は所在地に関係する時間区間において当該区域内に滞在する当該端末の数を決定し、当該端末の数と、取得された当該対象の住所又は所在地の調査結果とに基づき、当該区域を住所又は所在地区域とする対象に係る拡大係数としての住所・所在地拡大係数を決定する住所・所在地拡大係数決定手段と、
当該所定地域内の地点毎に、当該測位結果から当該地点に係る端末を特定し、特定された端末についての登録情報又は当該測位結果の履歴情報から、該特定された端末が付された対象の住所又は所在地としての住所・所在地区域を決定する住所・所在地区域決定手段と、
当該地点毎に、当該特定された端末が付された対象における当該区域の各々を住所・所在地区域とする割合を算出し、当該割合と当該住所・所在地拡大係数とに基づき、当該地点の拡大係数を推定する拡大係数推定手段と、
当該存在数分布と推定された拡大係数とに基づき、当該所定地域内の複数の地点の各々における当該対象の存在する数を決定する対象存在分布決定手段と
を有する対象分布推定システムが提供される。
【0023】
本発明によれば、さらにまた、所定地域における複数の対象の分布を推定するコンピュータによって実施される対象分布推定方法であって、
当該対象に付された端末についての所定期間に取得された測位結果から、当該所定地域における当該対象の存在する数の分布としての存在数分布を決定するステップと、
当該所定地域内の区域毎に、当該測位結果の履歴情報又は当該端末についての登録情報に基づき、住所又は所在地に関係する時間区間において当該区域内に滞在する当該端末の数を決定し、当該端末の数と、取得された当該対象の住所又は所在地の調査結果とに基づき、当該区域を住所又は所在地区域とする対象に係る拡大係数としての住所・所在地拡大係数を決定し、また、当該所定地域内の地点毎に、当該測位結果から当該地点に係る端末を特定し、特定された端末についての登録情報又は当該測位結果の履歴情報から、該特定された端末が付された対象の住所又は所在地としての住所・所在地区域を決定するステップと、
当該地点毎に、当該特定された端末が付された対象における当該区域の各々を住所・所在地区域とする割合を算出し、当該割合と当該住所・所在地拡大係数とに基づき、当該地点の拡大係数を推定するステップと、
当該存在数分布と推定された拡大係数とに基づき、当該所定地域内の複数の地点の各々における当該対象の存在する数を決定するステップと
を有する対象分布推定方法が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の対象分布推定プログラム、装置、システム及び方法によれば、対象の実分布に係る正解データに頼ることなく、高い解像度の対象の分布を、より高い精度(正確度)で推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明による対象分布推定装置の一実施形態における機能構成を示す機能ブロック図である。
図2】本発明に係る存在数分布決定処理の他の実施形態を説明するための模式図である。
図3】本発明に係る存在数分布決定処理の更なる他の実施形態を説明するための模式図である。
図4】本発明に係る存在数分布決定処理の他の実施形態を説明するための模式図である。
図5】本発明による対象分布推定方法における一実施形態の概略を示す模式図である。
図6】高解像度メッシュを用いた人口分布ヒートマップの生成における従来の問題点を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0027】
[対象分布推定装置]
図1は、本発明による対象分布推定装置の一実施形態における機能構成を示す機能ブロック図である。
【0028】
図1に示した通信設備装置1は勿論、通信設備としての機能(例えば中継機能)を果たす装置であるが、本発明による対象分布推定装置の一実施形態にもなっている。すなわち通信設備装置1は、所定地域(例えば47都道府県の全国)における複数の対象の分布、本実施形態では多数の人間の分布(すなわち人口分布)を推定し、推定結果としての人口分布データ(例えば人口分布グラフや人口ヒートマップ)を出力する装置となっている。
【0029】
具体的に、通信設備装置1は、人間(対象)に付された端末2(例えば携帯されたスマートフォン)についての測位結果である「端末測位結果」、例えば、
(a)端末2に搭載されているGPS(Global Positioning System)機能からのGPS測位データ、
(b)基地局3を用いた基地局測位方式による基地局測位データ、及び
(c)端末2がWi-Fi(登録商標)等の無線LAN(Local Area Network)通信機能を備えている場合における無線LANのアクセスポイントによる測位データ
のうちの少なくとも1つを取得し、このデータに基づいて所定地域(全国)における人口分布を推定する。
【0030】
このような推定を実施するため、通信設備装置1は、
(A)所定期間に取得された「端末測位結果」から、所定地域(例えば全国)における対象の存在する数の分布としての「存在数分布」(本実施形態では、後述する推定時存在数分布)を決定する存在数分布決定部111と、
(B)所定地域(全国)内の複数の区域における区域毎に、「端末測位結果」の履歴情報又は端末2についての登録情報に基づき、住所又は所在地に関係する設定された時間区間(例えば1:00~5:00の夜間)において当該区域内に滞在する端末2の数を決定し、端末2の数と、取得された対象(人間)の住所又は所在地の調査結果である「住所・所在地調査結果」とに基づき、当該区域を住所又は所在地区域とする対象(人間)に係る拡大係数としての「住所・所在地拡大係数」を決定する住所・所在地拡大係数決定部112と、
(C)所定地域(全国)内の複数の地点における地点毎に、「端末測位結果」から、当該地点を含む所定範囲に存在している端末2を特定し、特定された端末2についての「端末測位結果」の履歴情報から又は特定された端末2が付された対象(人間)の登録された情報から、特定された端末2が付された対象(人間)の住所又は所在地としての「住所・所在地区域」を決定する住所・所在地区域決定部113と、
(D)当該地点毎に、特定された端末2が付された対象(人間)における複数の区域の各々を「住所・所在地区域」とする割合を算出し、この割合と「住所・所在地拡大係数」とに基づき、当該地点の「拡大係数」を推定する拡大係数推定部114と、
(E)「存在数分布」(推定時存在数分布)と推定された「拡大係数」とに基づき、所定地域(全国)内の複数の地点の各々における対象(人間)の存在する数(存在人数)を決定する対象存在分布決定部115と
を有することを特徴とする。
【0031】
ここで上記(E)の対象存在分布決定部115は本実施形態において、決定した各地点における存在人数から、推定結果としての人口分布データ(例えば人口分布グラフや人口ヒートマップ)を生成し出力するのである。
【0032】
また、上記(B)の「住所・所在地調査結果」は本実施形態において、例えば公開されている国勢調査データとすることができる。勿論、国勢調査データでなくとも、所定地域における全対象(全員)の住所や所在地が分かるデータや、地点毎の全対象(全員)の数が分かるデータであれば、この「住所・所在地調査結果」として採用可能である。
【0033】
通信設備装置1は、このような「住所・所在地調査結果」を用いて「住所・所在地拡大係数」を割り出し、この「住所・所在地拡大係数」と、各地点を含む所定範囲に存在している端末2が付された対象(人間)の「住所・所在地区域」とを用いて、各地点の「拡大係数」を推定し、これにより各地点の対象存在数(存在人数)を決定するのである。
【0034】
ここで、対象(人間)の各地点(各区域)における正解の人数が取得されていなくとも、「住所・所在地調査結果」を用いて「住所・所在地拡大係数」を割り出しているので、各地点の「拡大係数」を獲得することができるのである。また、この「拡大係数」は、例えば(総人口)/(位置情報提供許諾ユーザ総数)といったような従来の単純且つ一律なものとは異なり、その地点における(実人数に影響を及ぼす)特徴を反映したより精度(正確度)の高いものとなっている。
【0035】
さらに、上記(E)における所定地域(全国)内の複数の地点は、十分な数だけ設定することができる。その結果、高い解像度の対象分布データ(人口分布データ)を生成することが可能となる。以上、通信設備装置1によれば、対象(人間)の実分布に係る正解データに頼ることなく、高い解像度の対象(人間)の分布を、より高い精度(正確度)で推定することができるのである。
【0036】
また本実施形態において、その分布を求める対象は「人間」となっており、以下の説明でも対象を「人間」として人口分布(人流)を推定するものとするが、本発明に係る対象は勿論、「人間」に限定されるものではない。すなわち、「端末測位結果」の得られる端末2が付されたものを含んでおり、且つ所在地調査結果や、区域毎の対象数が分かる調査データが入手可能な対象であれば、種々様々なものが本発明に係る対象に採用可能である。例えば、少なくとも一部の自動車に端末2が搭載されていて、且つ自動車の登録された車庫位置(所在地)の調査結果や、区域毎の自動車台数の調査データが入手可能であれば、「自動車」を本発明に係る対象に採用することができる。
【0037】
[装置機能構成,対象分布推定システム・プログラム・方法]
同じく図1の機能ブロック図によれば、本発明による対象分布推定装置の一実施形態としての通信設備装置1は、通信インタフェース部101と、測位結果保存部102と、住所・所在地調査結果保存部103と、ユーザインタフェース部104と、プロセッサ・メモリ(メモリ機能を備えた演算処理系)とを有する。
【0038】
ここで、このプロセッサ・メモリは、本発明による対象分布推定プログラムの一実施形態を保存しており、またコンピュータ機能を有していて、この対象分布推定プログラムを実行することによって、対象分布推定処理を実施する。このことから、通信設備装置1は、通信設備ではない対象分布推定処理専用の装置であってもよく、さらに、本発明による対象分布推定プログラムを搭載した、クラウドサーバ、非クラウドサーバ、パーソナル・コンピュータ(PC)、ノート型若しくはタブレット型コンピュータや、さらにはスマートフォン等の携帯端末とすることもできる。
【0039】
さらに、上記のプロセッサ・メモリは、存在数分布決定部111と、夜間滞在端末決定部112aを含む住所・所在地拡大係数決定部112と、住所・所在地区域決定部113と、拡大係数推定部114と、対象存在分布決定部115と、通信制御部121とを有する。ここで以上に述べた機能構成部は、プロセッサ・メモリに保存された対象分布推定プログラムの実行によって具現する機能と捉えることができる。また、図1における通信設備装置1の機能構成部間を矢印で接続して示した処理の流れは、本発明による対象分布推定方法の一実施形態としても理解される。
【0040】
ちなみに、存在数分布決定部111と、住所・所在地拡大係数決定部112と、住所・所在地区域決定部113と、拡大係数推定部114と、対象存在分布決定部115とのうちの少なくとも1つは、別の装置の機能構成部となっていて、複数の装置(例えば複数のサーバ)全体で本対象分布推定機能を果たすものとすることもできる。この場合、これら複数の装置全体が、本発明による対象分布推定システムを構成する。
【0041】
以下、通信設備装置1における通信制御機能(例えば中継機能)の説明を省略し、本発明に係る対象分布推定処理機能のみの説明を行う。同じく図1において、測位結果保存部102は、上述した端末2の端末測位結果(GPS測位データ等)を、端末2から通信インタフェース部101及び通信制御部121を介して取得し、保存・管理する。ここで、この端末測位結果は、通信事業者と契約しており且つ端末位置情報の提供を許諾したユーザのみについての測位データであり、推定する分布の対象とすべき全人口に対し、その一部の人間(ユーザ)だけのデータとなっている。
【0042】
また、住所・所在地調査結果保存部103は、住所・所在地調査結果を、住所・所在地調査結果管理サーバ4から通信インタフェース部101及び通信制御部121を介して取得し、保存・管理する。ここで本実施形態において、住所・所在地調査結果は国勢調査データとなっている。国勢調査データは、そこから例えばあるメッシュ(区域)における全員の人数(存在人数)を知ることができるようなデータではない。しかしながら国勢調査データによれば、当該メッシュ(区域)内を住所(又は所在地)とする全員の人数を導出することができる。これにより、この後説明する「住所・所在地拡大係数」を決定することが可能となるのである。
【0043】
<存在数分布決定手段>
同じく図1の機能ブロック図において、存在数分布決定部111は本実施形態において、測位結果保存部102から、
(a)第1所定期間(例えば1か月間)に蓄積された端末測位結果(測位データ)と、
(b)第1の所定期間よりも短い第2の所定期間であって分布推定時点の直前となる第2の所定期間(例えば現時点が分布推定時点として直近の過去1時間)で取得された端末測位結果(測位データ)と
から、分布推定時点での又は分布推定時点の直前での存在する数の分布としての「推定時存在数分布」を決定する。
【0044】
この推定時存在数分布は、全人口ではなく一部のユーザのみの測位データから生成・決定されるものであるが、分布推定時点(例えば現時点)における存在数分布に近いものとなっており、この後、拡大係数を掛けるべき存在数分布となっている。ここで、分布推定時点(現時点)付近の測位データだけでは標本点として少なすぎるため、測位間隔やデータ量に応じてある程度の期間(例えば直近1時間)を第2所定期間として設定しているのである。
【0045】
また、推定時存在数分布の決定において長期の第1所定期間(例えば1か月間)に蓄積された端末測位結果も用いるのは、端末測位結果が、上述したように全人口ではなく一部のユーザのみの測位データとなっており、特に人口の少ない郊外・地方においては、多くの地点において測位データが得られず、その結果、当該地点では人口が0人となってしまうことによる。すなわち、長期の第1所定期間(例えば1か月間)を設定することで、例えば1か月に1人でも計測することができれば、1日あたりの人数を例えば約0.03(≒1/30)人といったように0を超える有限値にすることができる。その結果、地点毎の例えば人間の多さの濃淡をより正確に把握することが可能となるのである。ちなみにこれは、暗闇でカメラ撮影を行う際、露光時間(光の蓄積時間)を長くしてより多くの光をカメラセンサに取り込み、より正確な濃淡を有するカメラ画像を得ようとすることと同様のやり方と言える。
【0046】
ここで存在数分布決定部111は本実施形態において、第1所定期間に蓄積された測位データ群、及び第2所定期間で取得された測位データ群を存在分布空間内の点群とみなし、有限の標本点から全体の分布を推定する公知の手法であるカーネル密度推定(KDE,Kernel Density Estimation)を用いて、所定地域(全国)における地点(例えば緯度・経度)xの関数である推定時存在数分布CE(x)を決定する。
【0047】
より具体的に、存在数分布決定部111は、WA及びWBを予め適切に設定された「WA+WB=1」との条件を満たす重み分とし、また、TA及びTBをそれぞれ、第1所定期間の長さ(例えば、720時間(=24時間/日×30日))及び第2所定期間の長さ(例えば、1時間)として、
(a)第1所定期間に蓄積された測位データ群(点群)の個々の測位データ(=(緯度,経度))に対し重みWA/TAを掛け、
(b)第2所定期間で取得された測位データ群(点群)の個々の点(測位データ(=(緯度,経度)))に対し重みWB/TBを掛け、
これらの重みの掛けられた測位データ群(x1, x2, ・・・, xn)を標本点として、次式
(1) CE(x)=PE(x)×VE(x)
ここで、PE(x)=(nh)-1Σi=1 n K((x-xi)/h)
により推定時存在数分布CE(x)を算出する。ここで、hはバンド幅(平滑化パラメータ)である。また、Kはカーネル関数であり、例えば次式(2)の標準的な(平均がゼロであって分散が1である)ガウス関数とすることができる。
(2) K(x')=(2π)-0.5exp(-x'2/2)
【0048】
また上式(1)において、PE(x)は、第1所定期間及び第2所定期間における人間(対象)の存在確率密度分布となっている。また、VE(x)は、第2所定期間で取得された測位データ群の数を用いて決定されたボリュームであって、確率密度値(PE(x)の値)を人数(対象数)に変換する際のいわば"変換率"となっている。すなわち推定時存在数分布CE(x)は、存在確率密度分布PE(x)にこのボリュームVE(x)を掛けたものであって、まさに(測位データに係る)人数(対象の数)の分布とみなすことができる。
【0049】
またその結果、地点xでの推定時存在数分布CE(x)の値(推定時存在数)は、地点xにおける(測位データに係る)人数の期待値と解釈される。すなわち、推定時存在数分布CE(x)によれば、任意の地点における推定時存在数を導出することができるのである。なお、推定時存在数分布CE(x)はこの後、分布推定時の人数(対象数)を推定するために用いられるものであるので、本実施形態においては(分布推定時に近いボリュームとしての)VE(x)を掛けることにより算出されている。
【0050】
ちなみにKDEは、当該分野のエンジニアや研究開発者の多くに利用されている、MATLAB(登録商標)等の数値解析・プログラミングプラットフォームの多くに、標準的な関数モデルとして実装されている。また勿論、有限の標本点から全体の分布を推定可能とする関数ならば、当該関数をKDEの代わりに使用して、推定時存在数分布を決定してもよい。
【0051】
また、存在数分布決定部111は、第1の所定期間として、予め設定された月、日、曜日、平日・休日、及び時間帯のうちの少なくとも1つに係る期間種別であって、人口分布の推定時点が属する期間種別に該当する期間を設定することも好ましい。例えば人口分布の推定時点が「水曜日の8時台」の時点ならば、第1の所定期間を「過去M(Mは正の整数)か月の水曜日の8時台」に設定してもよい。これにより、あるエリアでは「水曜日の8時台」には通勤・通学者が週のうちで最大となるといったような期間種別特有の事情を推定時存在数分布に反映させ、より精度(正確度)の高い人口分布推定を行うことも可能となる。なお、必要となる期間種別毎に予め、当該期間種別に係る推定時存在数分布を準備しておいてもよい。
【0052】
さらに、存在数分布決定部111は、測位データxi(i=1,2,・・,n)の測位時点が第1所定期間内においてより新しい時点であるほど、より大きい重みをこの測位データxiに付与して、推定時存在数分布CE(x)を決定することも好ましい。以下、図2(存在数分布決定処理の他の実施形態を説明するための模式図)を用いて、この実施形態の説明を行う。
【0053】
図2に示したように、存在数分布決定部111は、第1所定期間及び第2所定期間の測位データから推定時存在数分布CE(x)を決定する際、測位データの測位時刻(測位時点)が新しい時点であるほど(分布推定時点に近いほど)、より大きい重みをこの測位データに付与することも好ましい。具体的には、第1所定期間の(重みWA/TAを掛けられた)測位データ及び第2所定期間の(重みWB/TBを掛けられた)測位データをKDEモデルへ入力して推定時存在数分布CE(x)を生成・決定する際、これらの測位データに、次式
(3) WT=(tm-t0)/(t1-t0)
によって算出される重みWTをかけたデータを入力してもよい。
【0054】
これにより、より分布推定時に近い推定時存在数分布を求めることができ、最終的な人口分布推定の精度を向上させることも可能となる。なお、重みは勿論、上式(3)のものに限定されず、測位時刻(測位時点)tmの単調増加関数となるものならば他の様々な形の重みを採用することができる。
【0055】
またさらに、存在数分布決定部111は、第1所定期間に蓄積された測位データ(端末測位結果)及び第2所定期間で取得された測位データ(端末測位結果)毎に、当該測位データに含まれる又は当該測位データから決定される測位誤差の単調増加関数となる広さを有する領域(例えば測位誤差を半径とする円領域)内に、当該測位データに相当するW(Wは正の整数)個の存在点であってその合計が1となる「重み」の付与されたW個の存在点(標本点)を設定し、当該存在点(標本点)から推定時存在数分布を決定することも好ましい。
【0056】
ここで測位誤差は、取得される測位データに通常付与されているものを用いることができる。または、取得した測位データがGPS測位データか、基地局測位データか、又はWi-Fi(登録商標)測位データかによって、予め適切な測位誤差を決めておいてもよい。以下、図3(存在数分布決定処理の更なる他の実施形態を説明するための模式図)を用いて、この実施形態の説明を行う。
【0057】
図3に示したように、存在数分布決定部111は本実施形態において、1つの測位データについて、当該データの位置(緯度,経度)を中心とし、その測位誤差を半径とする円領域を設定し、この円領域の中に、各々重み1/Wの付与されたW個の存在点(標本点)を生成して配置する(例えば重み0.01の存在点を100個生成して配置する)。ここで、設定したW個の存在点(標本点)を、円領域の中心に近いほどより高い密度となるように配置することも好ましい。さらに、各重みの値を均一にせず、円領域の中心に近い存在点ほどより大きな重みが付与されるように(合計が1となる)重みを割り当てることも好ましい。
【0058】
いずれにしても、測位データ群をこの後、KDEモデルへ入力して推定時存在数分布を決定することを考えると、信頼性の高い標本点の数を増やすことによって、決定される推定時存在数分布の精度(正確度)を高めることも可能となる。ここで正しい標本点は、測位誤差が小さいほど、より小さい円領域内(におけるさらに中心近傍)に分布していると考えられるので、以上に述べた手法に従い標本点の数を増やすことによって、推定時存在数分布の精度(正確度)がより向上することが期待されるのである。なお、円領域の中の存在点(標本点)の設定は、上記以外の公知のサンプリング手法によって行うことが可能である。
【0059】
また、存在数分布決定部111は、
(a)第2所定期間(例えば直近3時間)に含まれる複数のサブ期間(例えば直近3時間における1時間毎の3つの期間)におけるサブ期間毎に、当該サブ期間で取得された測位データ(端末測位結果)から、当該サブ期間の代表時点(例えばサブ期間の中点となる時点)での存在数分布としての「サブ期間存在数分布」を決定し、
(b)当該代表時点での「サブ期間存在数分布」を分布推定時点での存在数分布へ外挿し、外挿して得られた存在数分布を推定時存在数分布に決定する
ことも好ましい。なお、上記(a)において、複数のサブ期間を、第1所定期間(例えば1か月間)及び第2所定期間の中から設定することも可能である。以下、図4(存在数分布決定処理の他の実施形態を説明するための模式図)を用いて、この実施形態の説明を行う。
【0060】
図4に示した例では、分布推定時点t(0)を含んでおり代表時点(図4ではサブ期間の中点)がt(-1)(<t(0))である第1サブ期間と、代表時点がt(-2)(<t(-1))である第2サブ期間とが設定されている。ここで、第2サブ期間における(KDEを用いて生成された)存在数分布CE-2(x)は概ね時点t(-2)でのデータであって、一方、第1サブ期間の(KDEを用いて生成された)存在数分布CE-1(x)は概ね時点t(-1)でのデータであると捉えられる。そこで、これら2つの時点の存在数分布から外挿処理を用いて近似的に分布推定時点t(0)での存在数分布を算出し、これを推定時存在数分布CE(x)とするのである。
【0061】
具体的には、例えば次式
(4) CE(x)=CE-1(x)+(t(0)-t(-1))×((CE-1(x)-CE-2(x))/(t(-1)-t(-2)))
を用いて推定時存在数分布CE(x)を生成することができる。勿論サブ期間が3つ以上ある場合でも、公知の外挿処理により同様にして、推定時存在数分布CE(x)が生成される。また線形の外挿処理ではなく、(例えばスプライン外挿等の)より高次の外挿処理を用いることも可能である。いずれにしてもこのような外挿処理によって、より分布推定時点t(0)に近い推定時存在数分布CE(x)を求めることができ、これにより最終的な人口分布推定の精度を向上させることも可能となる。
【0062】
ここで、以上説明した本実施形態の存在数分布決定部111における存在数分布決定処理のまとめを行う。図5は、本発明による対象分布推定方法における一実施形態の概略を示す模式図である。
【0063】
図5に示したように本実施形態において、存在数分布決定部111は、より長期の第1所定期間及びより短期の(分布推定時点を含む)第2所定期間における測位データ(端末位置情報)から、KDEを用いて推定時存在数分布CE(x)を決定する。ここで推定時存在数分布CE(x)はこの後、対象存在分布決定部115において、対象存在分布データ(例えば高解像度人口分布グラフや高解像度人口ヒートマップ)を生成するのに用いられるのである。
【0064】
<住所・所在地拡大係数決定手段>
図1の機能ブロック図に戻って、住所・所在地拡大係数決定部112の夜間滞在端末決定部112aは本実施形態において、所定地域(例えば全国)を多数のメッシュ(区域)に分割したそのメッシュ毎に、測位データ(端末測位結果)の履歴情報に基づき、住所又は所在地に関係する設定された時間区間、本実施形態では1:00~5:00の「夜間」において「当該メッシュ内に滞在する端末2の数」を決定する。
【0065】
ここで「当該メッシュ内に滞在する端末2の数」については、例えば、測位データの履歴情報から公知の移動・滞在判定手法(*)を用いて、ユーザの移動・滞在の時系列データを生成し、各ユーザについて、設定された「夜間」において最も滞在時間の長い(最も滞在確率の高い)メッシュを特定し、特定したメッシュが当該メッシュとなっている端末2の数を求め、この数を「当該メッシュ内に滞在する端末2の数」とすることができる。
(*)例えば非特許文献:小林直, 石塚宏紀, 南川敦宣, 村松茂樹, 小野智弘, 「携帯電話通信履歴に適した移動滞在状態推定方法の提案」, 情報処理学会論文誌 データベース, vol. 10, no. 1, pp.13-23, 2017年に開示された手法が利用可能である。
【0066】
ちなみに変更態様として、夜間滞在端末決定部112aは、端末2が付された人間(端末ユーザ)の登録された情報(例えば、通信事業者との契約における契約者情報)を取得し、これに基づき「(夜間において)当該メッシュ内に滞在する(であろう)端末2の数」を決定することも可能である。例えば登録された住所が当該メッシュ内である端末2の数を、この数に決定してもよい。
【0067】
住所・所在地拡大係数決定部112は、このようにして決定した端末2の数と、取得された国勢調査データ(住所・所在地調査結果)とに基づき、当該メッシュを住所又は所在地区域(住所・所在地メッシュ)とする人間(対象)に係る拡大係数としての住所・所在地拡大係数を決定する。
【0068】
具体的には、メッシュ(の代表地点(例えば中心地点))x毎に、決定した端末2の数S(x)と、国勢調査データから決定されたメッシュx内を住所又は所在地とする人間の数(調査結果人数)N(x)とを用い、次式
(5) r(x)=N(x)/S(x)
によって、メッシュxにおける住所・所在地拡大係数r(x)を算出することができる。すなわち、メッシュx内の全員の人数(人口)を把握できる国勢調査データから得られた調査結果人数N(x)と、一部のユーザの位置しか分からない測位データから算出された「夜間」の端末2の数S(x)との比率を求め、これを住所・所在地拡大係数r(x)としているのである。
【0069】
ここでメッシュは、最終的に高解像度の人口分布データを生成することを見据え、国勢調査データを用いて設定可能な高い粒度のもの、例えば250m×250mの矩形に設定される。所定地域(全国)がこのような高粒度のn個のメッシュ(x1, x2, ・・・, xn)で分割されている場合、全メッシュの住所・所在地拡大係数rは、r=(r(x1), r(x2), ・・・, r(xn))と表すことができる。
【0070】
以上、住所・所在地拡大係数の説明を行ったが、これはいわば、区域(メッシュ)特有の拡大係数となっている。一般に拡大係数とは、全人口に対する「通信事業者と契約しており且つ端末位置情報の提供を許諾したユーザ」の割合に係る値となっている。この「通信事業者と契約」するか否かや「端末位置情報の提供を許諾」するか否かは、本来個々人の考え方・判断次第であるが、そこにはある程度の地域性(その人間の住んでいる地域による傾向。例えばいわゆる県民性)が存在すると考えられる。
【0071】
都道府県レベルで例えるなら、A県在住者は許諾率が高いが、B県在住者は許諾率が低い、といったようなことが考えられる。そこでこの場合、住所・所在地拡大係数決定部112は、より精度(正確性)の高い係数を求めて、例えば都道府県毎の住所・所在地拡大係数=(A県の拡大係数, B県の拡大係数, ・・・)を決定するのである(なお都道府県レベルはあくまで例えであり、本実施形態では上述したように、より高粒度のメッシュを設定している)。
【0072】
<住所・所在地区域決定手段>
同じく図1の機能ブロック図において、住所・所在地区域決定部113は、所定地域(全国)内の複数の地点、本実施形態では高解像度に対応すべく多数の地点における地点毎に、測位データ(端末測位結果)から、当該地点を含む所定範囲(例えば当該地点を中心とした所定半径の円領域)に存在している端末2を特定し、
(a)特定された端末2についての測位データ(端末測位結果)の履歴情報から、又は、(b)特定された端末2が付された人間(端末ユーザ)の登録された情報から、
特定された端末2が付された人間(対象)の住所又は所在地としての「住所・所在地メッシュ」(住所・所在地区域)を決定する。
【0073】
ここで上記(a)の履歴情報からの住所・所在地メッシュの決定は、上述した夜間滞在端末決定部112aでの夜間滞在端末決定処理と同様にして行うことができる。すなわち、特定された(当該地点を含む所定範囲内に位置している)端末2についての移動・滞在の時系列データを生成し、設定された「夜間」において最も滞在時間の長い(最も滞在確率の高い)メッシュを、住所・所在地メッシュとしてもよい。
【0074】
一方、上記(b)の登録された情報からの「住所・所在地区域」の決定は、例えば特定された端末2のユーザの(通信事業者との契約における)契約者情報を取得し、これに基づいて住所・所在地メッシュを決定することができる。例えば、登録された住所を含むメッシュを住所・所在地メッシュとしてもよい。
【0075】
なお、この後の拡大係数推定の際の便宜のため、その中から住所・所在地メッシュを決定するメッシュ群は、本実施形態において、上述した住所・所在地拡大係数決定部112で設定されたメッシュ群(例えば250m×250mの矩形メッシュ群)と同一のものに設定されている。
【0076】
<拡大係数決定手段>
同じく図1の機能ブロック図において、拡大係数推定部114は、住所・所在地区域決定部113で決定された住所・所在地メッシュ情報に基づき、設定された複数(多数)の地点における地点毎に、特定された端末2が付された人間(端末ユーザ)における「複数(多数)のメッシュの各々を住所・所在地メッシュとする割合」を算出し、この割合と、決定された住所・所在地拡大係数とに基づき、当該地点の「拡大係数」を推定する。
【0077】
具体的に、拡大係数推定部114は本実施形態において、例えば所定地域(全国)を高粒度で分割するn個のメッシュ(x1, x2, ・・・, xn)が設定されている場合、
(a)地点xで特定された(地点xを含む所定範囲に存在する)端末2のユーザのうちで住所・所在地(メッシュ)がxi(i=1, 2, ・・, n)であるものの割合h(xi)(i=1, 2, ・・, n)を算出して、
(b)地点xで特定された(地点xを含む所定範囲に存在する)端末2のユーザにおける住所又は所在地の分布(住所又は所在地の内訳)H(x)=(h(x1), h(x2), ・・・, h(xn))を決定する。
ここで上記(b)の分布H(x)はいわば、地点x付近にいる端末2のユーザは、何処(のメッシュ)に住んでいるのか(所在地としているのか)についての情報となっているのである。
【0078】
次いで拡大係数推定部114は、設定された複数(多数)の地点における地点x毎に、住所・所在地拡大係数r(xi)(i=1, 2, ・・, n)を割合h(xi)(i=1, 2, ・・, n)で重み付けした上で(n個の)住所・所在地メッシュにわたって合算し、当該合算の結果を、地点xの拡大係数に決定する。すなわち、
(c)地点x毎に、当該地点xの拡大係数R(x)を、次式
(6) R(x)=H(x)*r
=h(x1)×r(x1)+h(x2)×r(x2)+・・・+h(xn)×r(xn)
によって算出するのである。
【0079】
ここで割合h(xi)は、具体的に言えば、地点xにいる人々における「住所(居住地)がxiである人」の割合となっている。また住所・所在地拡大係数r(xi)は具体的に、地点xに「住所(居住地)がxiである人」が1人いるならば、そこには実際にr(xi)人いるであろうということを示している。その結果、上式(8)のR(x)は、地点xにおける各人(各端末2)の住所(居住地)を勘案した、より高精度の拡大係数になっているとみなすことができるのである。
【0080】
また、拡大係数推定部114は本実施形態において、所定地域(全国)における高解像化したい全地点X=(x1, x2, ・・・, xm) について網羅的に拡大係数(拡大係数マップ)R(X)を推定する。これにより、この後説明するように高精度の人口分布データ、例えば高解像度人口ヒートマップが生成可能となるのである。なお全地点X=(x1, x2, ・・・, xm)は例えば、高解像度人口ヒートマップにおける各メッシュの代表地点(例えば中心地点)の集合とすることもできる(その場合、m=n(メッシュの数))。
【0081】
<対象存在分布決定手段>
同じく図1の機能ブロック図において、対象存在分布決定部115は、存在数分布決定部111で決定された推定時存在数分布CE(x)と、拡大係数推定部114で推定された拡大係数R(x)とに基づき、所定地域(例えば全国)内の複数の地点の各々における人間(対象)の存在する数、すなわち人数(人口)を決定する。
【0082】
具体的に、対象存在分布決定部115は本実施形態において、設定された複数(多数)の地点における地点毎に、当該地点xの人数C(x)を、次式
(7) C(x)=CE(x)×R(x)
によって算出する。このように対象存在分布決定部115は、一部のユーザの測位データから決定される人数ではあるが任意の地点xでの人数を算出可能な推定時存在数分布CE(x)に対し、全人数と測位データが取得されるユーザ数との比率を表している当該任意の地点xでの拡大係数R(x)を掛け合わせることによって、当該任意の地点xにおける人数C(x)を決定することができるのである。
【0083】
また対象存在分布決定部115は、所定地域(例えば全国)における任意の(多数の)地点xについて人数分布C(x)を算出・決定し、例えば高解像度人口分布グラフを生成することもできる。また、高解像化したい全地点、例えば各メッシュの代表地点(例えば中心地点)X=(x1, x2, ・・・, xn) について人数分布C(X)を算出・決定し、例えば高解像度人口ヒートマップを生成することも可能となる。
【0084】
なお、対象存在分布決定部115で生成された人口分布データ(人数分布C(X))、高解像度人口分布グラフや、高解像度人口ヒートマップは、表示部を有するユーザインタフェース部104に表示され、装置1の操作・管理者に提示されてもよい。また、通信制御部121及び通信インタフェース部101を介して外部の情報処理装置へ送信され、そこで利用されてもよい。
【0085】
ここで、以上に説明した本実施形態の住所・所在地拡大係数決定部112、住所・所在地区域決定部113、拡大係数推定部114、及び対象存在分布決定部115における処理の簡単なまとめを行う。図5に示したように、住所・所在地拡大係数決定部112は、測位データ(端末位置情報)と国勢調査データ(住所・所在地調査結果)とを用いて各メッシュにおける住所・所在地拡大係数を導出する。
【0086】
次いで同じく図5に示したように、住所・所在地区域決定部113は、測位データ(端末位置情報)の履歴情報から、各地点(を含む所定範囲)に存在している端末2についての住所・所在地メッシュ情報を決定する。次いで拡大係数推定部114は、住所・所在地メッシュ情報に基づき算出した「各メッシュを住所・所在地メッシュとする割合」と、住所・所在地拡大係数とを用いて、各地点における拡大係数R(x)(拡大係数マップR(X))を推定する。最後に、対象存在分布決定部115は、拡大係数R(x)と存在数分布決定部111で決定された推定時存在数分布CE(x)とを用い、任意の(多数の)地点xにおける人数C(x)を算出・決定し、さらにこれから、高解像度人口分布グラフや、高解像度人口ヒートマップを生成するのである。
【0087】
以上詳細に説明したように、本発明においては、住所・所在地調査結果を用いて住所・所在地拡大係数を割り出し、この住所・所在地拡大係数と、各地点を含む所定範囲に存在している端末2が付された対象の住所・所在地区域とを用いて、各地点の拡大係数を推定し、これにより各地点の対象存在数を決定している。
【0088】
ここで、対象の各地点(各区域)における正解の人数が取得されていなくとも、住所・所在地調査結果を用いて住所・所在地拡大係数を割り出しているので、各地点の拡大係数を獲得することができる。また、この拡大係数は、その地点における(実対象数に影響を及ぼす)特徴を反映したより精度(正確度)の高いものとなっている。その結果、本発明によれば、対象(人間)の実分布に係る正解データに頼ることなく、さらには各地に点在するスマートポール等の実数計測手段や機械学習モデルに頼らずとも、高い解像度の対象の分布を、より高い精度(正確度)で推定することが可能となるのである。
【0089】
さらに、例えば本発明による対象分布推定方法を適用して、都市部における的確且つ詳細な人流予測やさらには交通行動予測を実施し、レジリエントな交通・輸送インフラを整備したり、都市化がもたらす課題を解決する効率的な都市計画を実施したりすることもできる。すなわち本発明によれば、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」や、目標11「都市を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする」に貢献することも可能となるのである。
【0090】
以上に述べた本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲での種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。以上に述べた説明はあくまで実施形態の例示であって、不要な制約を行うものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定されるものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0091】
1 通信設備装置(対象分布推定装置)
101 通信インタフェース部
102 測位結果保存部
103 住所・所在地調査結果保存部
104 ユーザインタフェース部
111 存在数分布決定部
112 住所・所在地拡大係数決定部
113 住所・所在地区域決定部
114 拡大係数推定部
115 対象存在分布決定部
121 通信制御部
2 端末
3 基地局
4 住所・所在地調査結果管理サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6