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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148833
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ハニカムフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20231005BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20231005BHJP
   C04B 38/06 20060101ALI20231005BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B01D39/20 D
B01D46/00 302
C04B38/06 D
F01N3/022 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057084
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 文彦
(72)【発明者】
【氏名】栗本 雄大
(72)【発明者】
【氏名】古田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】寺西 律子
(72)【発明者】
【氏名】坂井 文香
(72)【発明者】
【氏名】大橋 達矢
【テーマコード(参考)】
3G190
4D019
4D058
【Fターム(参考)】
3G190AA02
3G190AA12
3G190BA02
3G190BA17
3G190BA26
3G190CA03
3G190CA13
3G190CB13
4D019AA01
4D019BA05
4D019BB06
4D019BC07
4D019BD01
4D019CB04
4D019CB06
4D058JA37
4D058JA38
4D058JA39
4D058JB22
4D058SA08
4D058TA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】捕集性能に優れ、且つ、圧力損失が低減されたハニカムフィルタを提供する。
【解決手段】第一端面11から第二端面12まで延びる複数のセル2を取り囲むように配置された多孔質の隔壁1を有する柱状のハニカム構造部4と、それぞれのセル2のいずれか一方の開口部に配設された目封止部5と、を備え、構造解析によって求められた隔壁1の細孔径分布において、累積細孔容積が総細孔容積の10%、50%及び90%となる細孔径(μm)を、それぞれD10、D50及びD90とした場合に、下記式(1)~(6)の全てを満たす。
3.9μm<D10・・(1)
10.5μm<D50<16.6μm・・(2)
D90<38.7μm・・(3)
(logD90-logD10)/logD50<0.80・・(4)
logD90/logD50<1.36・・(5)
logD50/logD10<1.56・・(6)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一端面から第二端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配置された多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造部と、
それぞれの前記セルの前記第一端面側又は前記第二端面側の開口部に配設された目封止部と、を備え、
構造解析によって求められた前記隔壁の細孔径分布において、累積細孔容積が総細孔容積の10%となる細孔径(μm)をD10とし、累積細孔容積が総細孔容積の50%となる細孔径(μm)をD50とし、累積細孔容積が総細孔容積の90%となる細孔径(μm)をD90とした場合に、下記式(1)~(6)の全てを満たす、ハニカムフィルタ。
3.9μm<D10 ・・・ (1)
10.5μm<D50<16.6μm ・・・ (2)
D90<38.7μm ・・・ (3)
(logD90-logD10)/logD50<0.80 ・・・(4)
logD90/logD50<1.36 ・・・ (5)
logD50/logD10<1.56 ・・・ (6)
【請求項2】
構造解析によって求められた前記隔壁の気孔率が、50%を超え、65%未満である、請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
前記隔壁の厚さが、165.1μmを超え、266.7μm未満である、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
前記ハニカム構造部のセル密度が、31.0個/cmを超え、62.0個/cm未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
前記ハニカム構造部の前記第一端面側の開口部が前記目封止部によって目封止された前記セルを流出セルとし、前記ハニカム構造部の前記第二端面側の開口部が前記目封止部によって目封止された前記セルを流入セルとし、
前記ハニカム構造部の前記セルが延びる方向に直交する断面において、前記流出セルの形状と、前記流入セルの形状とが異なる、請求項1~4のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項6】
前記流出セルの形状が、四角形又は八角形のうちのいずれか一方の形状であり、且つ、前記流入セルの形状が、四角形又は八角形のうちのもう一方の形状である、請求項5に記載のハニカムフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。更に詳しくは、捕集性能に優れ、且つ、圧力損失が低減されたハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のエンジン等の内燃機関より排出される排ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタや、CO,HC,NOxなどの有毒なガス成分を浄化する装置として、ハニカム構造体を用いたハニカムフィルタが知られている(特許文献1参照)。ハニカム構造体は、コージェライトなどの多孔質セラミックスによって構成された隔壁を有し、この隔壁によって複数のセルが区画形成されたものである。ハニカムフィルタは、上述したハニカム構造体に対して、複数のセルの流入端面側の開口部と流出端面側の開口部とを交互に目封止するように目封止部を配設したものである。即ち、ハニカムフィルタは、流入端面側が開口し且つ流出端面側が目封止された流入セルと、流入端面側が目封止され且つ流出端面側が開口した流出セルとが、隔壁を挟んで交互に配置された構造となっている。そして、ハニカムフィルタにおいては、多孔質の隔壁が、排ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタの役目を果たしている。以下、排ガスに含まれる粒子状物質を、「PM」ということがある。「PM」は、「particulate matter」の略である。
【0003】
ハニカムフィルタによる排ガスの浄化は、以下のようにして行われる。まず、ハニカムフィルタは、その流入端面側が、排ガスが排出される排気系の上流側に位置するように配置される。排ガスは、ハニカムフィルタの流入端面側から、流入セルに流入する。そして、流入セルに流入した排ガスは、多孔質の隔壁を通過し、流出セルへと流れ、ハニカムフィルタの流出端面から排出される。多孔質の隔壁を通過する際に、排ガス中のPM等が捕集され除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-149510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車のエンジンから排出される排ガスの浄化に使用されるハニカムフィルタは、多孔質の隔壁として、気孔率の高い高気孔率の多孔質体が採用されていた。近年、自動車排出ガス規制の強化等により、ハニカムフィルタの捕集効率の更なる向上が求められている。
【0006】
ハニカムフィルタの捕集効率を向上するための手段として、例えば、多孔質の隔壁の平均細孔径を小さくする方法を挙げることができる。しかしながら、隔壁の平均細孔径は、ハニカムフィルタの圧力損失にも大きな影響を及ぼすものであり、隔壁の平均細孔径を小さくすると、ハニカムフィルタの圧力損失が上昇してしまうという問題があった。また、圧力損失の上昇を抑制する対策として、隔壁の気孔率を高くすることも考えられるが、隔壁の気孔率を更に高くすると、ハニカムフィルタの強度が低下してしまうという問題があった。
【0007】
また、従来、上述したような隔壁の平均細孔径については、水銀圧入法によって測定された測定値によって管理されることが一般的であった。隔壁のような多孔質体の細孔には、その細孔の径が膨らんでいる部分と、そのような径が膨らんでいる部分間のくびれ部分(以下、「ネック」ともいう)とがある。しかしながら、従来の水銀圧入法によって測定された細孔径(以下、「水銀圧入細孔径」ともいう)などの値は、細孔の入口側のネックの径に依存するものとなり、このようなネックよりも内部の細孔径が正確に測定されていないことがあった。このため、従来のような水銀圧入細孔径では、ハニカムフィルタの良好な特定が得られないという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明によれば、捕集性能に優れ、且つ、圧力損失が低減されたハニカムフィルタが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下に示す、ハニカムフィルタが提供される。
【0010】
[1] 第一端面から第二端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配置された多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造部と、
それぞれの前記セルの前記第一端面側又は前記第二端面側の開口部に配設された目封止部と、を備え、
構造解析によって求められた前記隔壁の細孔径分布において、累積細孔容積が総細孔容積の10%となる細孔径(μm)をD10とし、累積細孔容積が総細孔容積の50%となる細孔径(μm)をD50とし、累積細孔容積が総細孔容積の90%となる細孔径(μm)をD90とした場合に、下記式(1)~(6)の全てを満たす、ハニカムフィルタ。
【0011】
3.9μm<D10 ・・・ (1)
10.5μm<D50<16.6μm ・・・ (2)
D90<38.7μm ・・・ (3)
(logD90-logD10)/logD50<0.80 ・・・(4)
logD90/logD50<1.36 ・・・ (5)
logD50/logD10<1.56 ・・・ (6)
【0012】
[2] 構造解析によって求められた前記隔壁の気孔率が、50%を超え、65%未満である、前記[1]に記載のハニカムフィルタ。
【0013】
[3] 前記隔壁の厚さが、165.1μmを超え、266.7μm未満である、前記[1]又は[2]に記載のハニカムフィルタ。
【0014】
[4] 前記ハニカム構造部のセル密度が、31.0個/cmを超え、62.0個/cm未満である、前記[1]~[3]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0015】
[5] 前記ハニカム構造部の前記第一端面側の開口部が前記目封止部によって目封止された前記セルを流出セルとし、前記ハニカム構造部の前記第二端面側の開口部が前記目封止部によって目封止された前記セルを流入セルとし、
前記ハニカム構造部の前記セルが延びる方向に直交する断面において、前記流出セルの形状と、前記流入セルの形状とが異なる、前記[1]~[4]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0016】
[6] 前記流出セルの形状が、四角形又は八角形のうちのいずれか一方の形状であり、且つ、前記流入セルの形状が、四角形又は八角形のうちのもう一方の形状である、前記[5]に記載のハニカムフィルタ。
【発明の効果】
【0017】
本発明のハニカムフィルタは、捕集性能に優れ、且つ、圧力損失を低減することができるという効果を奏するものである。即ち、本発明のハニカムフィルタは、構造解析によって求められた隔壁の細孔径分布において、上述したD10、D50、D90の値が、上記式(1)~(6)の全てを満たすように構成されている。
【0018】
特に、上記式(1)のように、細孔径分布におけるD10を高く設定して小細孔を減らすことにより、隔壁の透過抵抗が低くなり、ハニカムフィルタの圧力損失の上昇を有効に抑制することができる。また、上記式(3)のように、細孔径分布におけるD90を低く設定して大細孔を減らすことにより、隔壁内を透過する流体の流速が局所的に高くなることを抑制し、ハニカムフィルタの捕集効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のハニカムフィルタの一の実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた斜視図である。
図2図1に示すハニカムフィルタの流入端面側からみた平面図である。
図3図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
図4】隔壁中の連通孔の数を測定する際に用いられるgray value図の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0021】
(1)ハニカムフィルタ:
図1図3に示すように、本発明のハニカムフィルタの第一実施形態は、ハニカム構造部4と、目封止部5と、を備えた、ハニカムフィルタ100である。ハニカム構造部4は、第一端面11から第二端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を取り囲むように配置された多孔質の隔壁1を有する柱状のものである。ハニカムフィルタ100において、ハニカム構造部4は、柱状を呈し、その外周側面に、外周壁3を更に有している。即ち、外周壁3は、格子状に配設された隔壁1を囲繞するように配設されている。
【0022】
目封止部5は、それぞれのセル2の第一端面11側又は第二端面12側の開口部に配設されている。図1図3に示すハニカムフィルタ100においては、所定のセル2の第一端面11側の開口部、及び残余のセル2の第二端面12側の開口部に、目封止部5がそれぞれ配設されている。ここで、第一端面11を流入端面とし、第二端面12を流出端面とした場合に、流出端面側の開口部に目封止部5が配設され、流入端面側が開口したセル2を、流入セル2aとする。また、流入端面側の開口部に目封止部5が配設され、流出端面側が開口したセル2を、流出セル2bとする。流入セル2aと流出セル2bとは、隔壁1を隔てて交互に配設されていることが好ましい。そして、それによって、ハニカムフィルタ100の両端面に、目封止部5と「セル2の開口部」とにより、市松模様が形成されていることが好ましい。
【0023】
図1は、本発明のハニカムフィルタの一の実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた斜視図である。図2は、図1に示すハニカムフィルタの流入端面側からみた平面図である。図3は、図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
【0024】
ハニカムフィルタ100は、ハニカム構造部4を構成する隔壁1の細孔径分布に関して特に重要な構成を有している。即ち、ハニカムフィルタ100は、構造解析によって求められた隔壁1の細孔径分布において、下記式(1)~(6)の全てを満たすものである。ここで、下記式(1)~(6)において、D10は、上記細孔径分布の累積細孔容積が総細孔容積の10%となる細孔径(μm)を示す。D50は、上記細孔径分布の累積細孔容積が総細孔容積の50%となる細孔径(μm)を示す。D90は、上記細孔径分布の累積細孔容積が総細孔容積の90%となる細孔径(μm)を示す。総細孔容積に対する累積細孔容積は、細孔径の最小値(例えば、0μm)を起点とした細孔容積の積算値である。
【0025】
3.9μm<D10 ・・・ (1)
10.5μm<D50<16.6μm ・・・ (2)
D90<38.7μm ・・・ (3)
(logD90-logD10)/logD50<0.80 ・・・(4)
logD90/logD50<1.36 ・・・ (5)
logD50/logD10<1.56 ・・・ (6)
【0026】
本実施形態のハニカムフィルタ100は、捕集性能に優れ、且つ、圧力損失を低減することができる。特に、上記式(1)のように、細孔径分布におけるD10を高く設定して小細孔を減らすことにより、隔壁1の透過抵抗が低くなり、ハニカムフィルタ100の圧力損失の上昇を有効に抑制することができる。例えば、D10の値が3.9μm以下であると、ハニカムフィルタ100の圧力損失の上昇を抑制することが困難となる。D10の上限値については、上記式(4)及び式(6)を満たす値であれば、特に制限はない。
【0027】
D10の値は、上記式(1)を満たし、且つ、上記式(4)及び式(6)を満たすように構成されていれば特に制限はないが、D10の値は、3.9μmを超えることが好ましく、4.9μmを超えることが更に好ましい。
【0028】
また、上記式(3)のように、細孔径分布におけるD90を低く設定して大細孔を減らすことにより、隔壁1内を透過する流体の流速が局所的に高くなることを抑制し、ハニカムフィルタ100の捕集効率の向上を図ることができる。例えば、D90の下限値については、上記式(4)~式(6)を満たす値であれば、特に制限はない。一方で、D90の値が38.7μm以上となると、ハニカムフィルタの捕集効率が低下することがある。
【0029】
D90の値は、上記式(3)を満たし、且つ、上記式(4)~式(6)を満たすように構成されていれば特に制限はないが、D90の値は、38.8μm未満であることが好ましく、35.5μm未満であることが更に好ましい。
【0030】
また、上記式(2)のように、細孔径分布におけるD50を所定の数値範囲とすることで、ハニカムフィルタ100の捕集効率の向上および圧力損失上昇の抑制を期待できる。例えば、D50の値が10.5μm以下であると、圧力損失上昇の点で好ましくない。一方で、D50の値が16.6μm以上となると、捕集効率低下の点で好ましくない。
【0031】
D50の値は、上記式(2)を満たし、且つ、上記式(4)及び式(5)を満たすように構成されていれば特に制限はないが、D50の値は、10.5μmを超え、14.9μm未満であることが好ましい。
【0032】
更に、上記式(4)~式(6)のように構成することで、ハニカムフィルタ100の捕集効率の向上及び圧力損失上昇の抑制を期待できる。なお、式(4)~式(6)における「logD10」、「logD50」及び「logD90」は、D10、D50及びD90の10を底とする対数である。
【0033】
例えば、式(4)における「(logD90-logD10)/logD50」の値が、0.80以上であると、ハニカムフィルタ100の捕集効率の向上及び圧力損失上昇抑制の効果を期待できる。式(5)における「logD90/logD50」の値が、1.36以下であると、ハニカムフィルタ100の捕集効率の向上を期待できる。式(6)における「logD50/logD10」の値が、1.56以下であると、ハニカムフィルタ100の圧力損失上昇の抑制を期待できる。
【0034】
本発明において「構造解析によって求められた隔壁1の細孔径分布」とは、以下のような解析手法による構造解析によって求められた細孔径分布のことを意味する。即ち、ドイツ国のMath2Market GmbH社によって開発されたミクロ構造シミュレーションソフトである「GeoDict(商品名(以下同じ))」のインターフェースモジュールの一つである「Granulometry機能」を用いた解析により求められた細孔径分布のことを意味する。以下、「Granulometry機能を用いた解析手法」を、「Granulometry解析法」ということがある。したがって、本実施形態のハニカムフィルタ100における「隔壁1の細孔径分布」とは、Granulometry解析法により求められた隔壁1の細孔径分布のことをいう。Granulometry解析法により求められた隔壁1の細孔径分布は、隔壁1内部の細孔径をより正確に解析することができる。即ち、隔壁1内部において、細孔の径が膨らんでいる部分や逆にくびれている部分(即ち、ネック)が存在する場合においても、それらの細孔径を適切に求めることができる、このため、従来の水銀圧入法では正確な測定が困難であった隔壁1内部の細孔径、特に、細孔のネックよりも内部の細孔径をより正確に得ることができる。
【0035】
ここで、隔壁1の細孔径分布を求めるための「Granulometry解析法」について説明する。以下、「Granulometry解析法」を、単に「本解析法」ということがある。本解析法は、ハニカムフィルタ100の隔壁1を、X線CT装置により断層写真を取得し、取得した断層写真を三次元化した隔壁構造モデルから、隔壁1の細孔径分布を求めるものである。
【0036】
具体的には、まず、ハニカムフィルタ100から隔壁1の一部を切り出し、解析用の隔壁試料片を作製する。但し、目封止部5が存在する部分は、隔壁試料片から除くこととする。なお、隔壁試料片は、ハニカムフィルタ100の第一端面11から第二端面12に延びる方向(以下、「軸方向X」ともいう)、及びこの軸方向Xと直交する方向ともに中央の位置にて採取する。隔壁試料片は、上記軸方向Xの長さが約1cm、上記軸方向Xと直交する隔壁1の表面方向の幅が約0.5cm、上記長さ及び幅の双方に直交する厚さが隔壁1の厚さである直方体状とされる。
【0037】
次に、作製した隔壁試料片を真空脱気しながら樹脂包埋し、X線CT撮像サンプルとする。ここで、「CT」とは、Computed Tomography(コンピュータ断層撮影)の略である。このサンプルについて、X線CT装置を用い、電圧:60kV、ステップ:0.1°、分解能:1.2μm/pixelの撮像条件にて連続断層画像を取得する。連続断層画像は、TIFF(Tagged Image File Format)形式の連続断層画像とする。得られたTIFF形式の連続断層画像は、Math2Market GmbH社によって開発されたミクロ構造シミュレーションソフトである「GeoDict」のモジュールの一つである「PoroDict機能」のうち、「Granulometry機能」を用いて、1.2μm/voxelの条件にて読み込む。
【0038】
次に、読み込んだ画像の骨格部と空間部とを分離するため、図4に示されるようなgray value図における二つの山に分離した際の交差部を閾値として、隔壁試料片を三次元モデル化する。
【0039】
次に、三次元モデルのノイズを除去し、400voxel×400voxel×隔壁厚さvoxelとなるように不要部分を除去する。次に、この三次元化された隔壁構造モデルM中における細孔の大きさを、GeoDictのモジュールの一つである「PoroDict機能」のうち、「Granulometry機能」を用いて導出する。GeoDictにおけるGranulometry機能による計算方法は、各細孔に対して、その大きさに沿う球をあてはめていく方法である。
【0040】
隔壁構造モデルMを上述したGranulometry機能で分析することで、細孔径分布及び上記D10、D50、及びD90の値を求めることができる。なお、「Granulometry機能」は、「GeoDict」の上記モジュールにおける「Granulometry機能(2020年版)」を用いることとする。「Granulometry機能(2020年版)」とは、このGranulometry機能が提供された年(西暦)を示す。したがって、本解析法は、西暦2020年に提供されたGranulometry機能を用いた分析結果に基づいたものである。ここで、2020年版とは、日本国内にて提供された年(西暦)を示しているが、同一解析結果が得られることが明らかな場合は、この限りではない。また、2020年以外(例えば、2020年以前又は以降)に提供されたGranulometry機能が、上記したGranulometry機能(2020年版)と同一解析結果が得られることが明らかな場合は、それらを用いて分析を行ってもよい。
【0041】
本実施形態のハニカムフィルタ100は、以上説明した本解析法によって求められた隔壁1の細孔径分布におけるD10、D50、及びD90の値が、上記式(1)~式(6)を満たすものである。ここで、従来、隔壁1の細孔径分布としては、水銀圧入法によって測定された細孔径分布などが広く知られている。しかしながら、水銀圧入法によって測定された細孔径分布やその細孔径分布によって求まる細孔径などの値は、入口のネックの径に依存するものであり、内部の細孔径が正確に測定できないため、ハニカムフィルタ100の良好な特定が得られないことがあった。一方で、本実施形態のハニカムフィルタ100は、捕集効率の向上や圧力損失の抑制に対して、上述したネック径等が大きく寄与するという知見に基づいたものである。ネック径は、上記しように水銀圧入法では正確に測定できないため、以上説明した本解析法を用いて隔壁1の細孔径分布を特定するものである。したがって、本実施形態のハニカムフィルタ100のように、本解析法によって求められた隔壁1の細孔径分布に基づき、そのD10、D50、及びD90の値を管理することにより、従来のハニカムフィルタに比して、捕集効率の向上及び圧力損失上昇の抑制の点において特に優れた特性を得ることができる。
【0042】
ハニカムフィルタ100は、隔壁1の気孔率が、50%を超え、65%未満であることが好ましい。本発明において、隔壁1の気孔率は、構造解析によって求められた値である。具体的には、隔壁1の気孔率は、これまでに説明した「GeoDict」のモジュールの一つである、「PoroDict機能」のうち、Open and Closed Porosity法によって測定された値である。隔壁1の気孔率を50%超、65%未満とすることにより、圧力損失の低減を図ることができる。隔壁1の気孔率が50%以下であると、ハニカムフィルタ100の圧力損失を低減する効果が十分に得られないことがある。一方、隔壁1の気孔率が65%以上であると、ハニカムフィルタ100の機械的強度が低下してしまうことがある。隔壁1の気孔率は、50%を超え、65%未満であることが更に好ましく、52%を超え、62%未満であることが特に好ましい。なお、隔壁1の気孔率を求める際の隔壁構造モデルMは、これまでに説明した隔壁1の細孔径分布を求めるための「Granulometry解析法」と同様の方法で得ることができる。
【0043】
隔壁1の厚さについては特に制限はないが、例えば、165.1μmを超え、266.7μm未満であることが好ましく、177.0μmを超え、266.7μm未満であることが更に好ましく、177.0μmを超え、242.1μm未満であることが特に好ましい。隔壁1の厚さは、例えば、走査型電子顕微鏡又はマイクロスコープ(microscope)を用いて測定することができる。隔壁1の厚さが薄すぎると、捕集性能が低下する点で好ましくない。一方、隔壁1の厚さが厚すぎると、圧力損失が増大する点で好ましくない。
【0044】
隔壁1によって区画形成されるセル2のセル密度が、31.0個/cmを超え、62.0個/cm未満であることが好ましく、31.0個/cmを超え、55.0個/cm未満であることが更に好ましい。このように構成することによって、ハニカムフィルタ100を、自動車のエンジンから排出される排ガスを浄化するためのフィルタとして好適に利用することができる。
【0045】
ハニカム構造部4に形成されているセル2の形状については特に制限はない。例えば、セル2の延びる方向に直交する断面における、セル2の形状としては、多角形、円形、楕円形等を挙げることができる。多角形としては、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等を挙げることができる。なお、セル2の形状は、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形であることが好ましい。なお、本発明において、セル2とは、隔壁1によって取り囲まれた空間のことを意味する。
【0046】
ハニカム構造部4に形成されているセル2の形状については、全てのセル2の形状が同一形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。例えば、図示は省略するが、四角形のセルと、八角形のセルと混在したものであってもよい。例えば、ハニカム構造部のセルが延びる方向に直交する断面において、流出セルの形状と、流入セルの形状とが異なるように構成されていてもよい。このような態様において、例えば、流出セルの形状が、四角形又は八角形のうちのいずれか一方の形状であり、且つ、流入セルの形状が、四角形又は八角形のうちのもう一方の形状であることが好ましい。
【0047】
また、ハニカム構造部4に形成されているセル2の大きさについては、全てのセル2の大きさが同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、図示は省略するが、複数のセルのうち、一部のセルの大きさを大きくし、他のセルの大きさを相対的に小さくしてもよい。
【0048】
ハニカム構造部4の外周壁3は、隔壁1と一体的に構成されたものであってもよいし、隔壁1の外周側に外周コート材を塗工することによって形成した外周コート層であってもよい。例えば、図示は省略するが、外周コート層は、製造時において、隔壁と外周壁とを一体的に形成した後、形成された外周壁を、研削加工等の公知の方法によって除去した後、隔壁の外周側に設けることができる。
【0049】
ハニカム構造部4の形状については特に制限はない。ハニカム構造部4の形状としては、第一端面11(例えば、流入端面)及び第二端面12(例えば、流出端面)の形状が、円形、楕円形、多角形等の柱状を挙げることができる。
【0050】
ハニカム構造部4の大きさ、例えば、第一端面11から第二端面12までの長さや、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に直交する断面の大きさについては、特に制限はない。ハニカムフィルタ100を、排ガス浄化用のフィルタとして用いた際に、最適な浄化性能を得るように、各大きさを適宜選択すればよい。
【0051】
隔壁1の材料については特に制限はなく、上記式(1)~式(6)を満たすような細孔径分布となる多孔質材料であればよい。例えば、隔壁1の材料としては、炭化珪素、コージェライト、珪素-炭化珪素複合材料、コージェライト-炭化珪素複合材料、窒化珪素、ムライト、アルミナ及びチタン酸アルミニウムから構成される群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。隔壁1を構成する材料は、上記群に列挙された材料を、90質量%以上含む材料であることが好ましく、92質量%以上含む材料であることが更に好ましく、95質量%以上含む材料であることが特に好ましい。なお、珪素-炭化珪素複合材料とは、炭化珪素を骨材とし、珪素を結合材として形成された複合材料である。また、コージェライト-炭化珪素複合材料とは、炭化珪素を骨材とし、コージェライトを結合材として形成された複合材料である。本実施形態のハニカムフィルタ100において、隔壁1を構成する材料は、特に、コージェライトが好ましい。
【0052】
目封止部5の材質は、隔壁1の材質として好ましいとされた材質であることが好ましい。目封止部5の材質と隔壁1の材質とは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
【0053】
ハニカムフィルタ100は、複数のセル2を区画形成する隔壁1に排ガス浄化用の触媒が担持されていることが好ましい。隔壁1に触媒を担持するとは、隔壁1の表面及び隔壁1に形成された細孔の内壁に、触媒がコーティングされることをいう。このように構成することによって、排ガス中のCOやNOxやHCなどを触媒反応によって無害な物質にすることができる。また、捕集した煤等のPMの酸化を促進させることができる。本実施形態のハニカムフィルタ100においては、多孔質の隔壁1の細孔の内部に触媒が担持されていることが特に好ましい。このように構成することによって、低触媒量時の触媒担持後において捕集性能の向上及び圧力損失の低減の両立を図ることができる。更に、触媒担持後において、ガスの流れが均一となることで、浄化性能の向上も期待することができる。
【0054】
隔壁1に担持する触媒については特に制限はない。例えば、白金族元素を含有する触媒であって、アルミニウム、ジルコニウム、及びセリウムのうちの少なくとも一種の元素の酸化物を含む触媒を挙げることができる。
【0055】
(2)ハニカムフィルタの製造方法:
次に、本実施形態のハニカムフィルタの製造方法について説明する。本実施形態のハニカムフィルタは、例えば、以下のような方法により製造することができる。まず、ハニカム構造部を作製するための可塑性の坏土を調製する。ハニカム構造部を作製するための坏土は、例えば、以下のように調製することができる。原料粉末としてタルク、カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム、及び多孔質シリカを用意し、有機造孔材として吸水性ポリマー、バインダ、界面活性剤、水を加えて、可塑性の坏土を調製する。特に、坏土の調製において、原料粉末や有機造孔材の配合比率を調整することより、得られる隔壁を、上記式(1)~式(6)を満たすような細孔径分布とすることができる。
【0056】
次に、このようにして得られた坏土を押出成形することにより、複数のセルを区画形成する隔壁、及びこの隔壁を囲繞するように配設された外壁を有する、ハニカム成形体を作製する。
【0057】
得られたハニカム成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥し、ハニカム成形体の作製に用いた材料と同様の材料で、セルの開口部を目封止することで目封止部を作製する。目封止部を作製した後に、ハニカム成形体を更に乾燥してもよい。
【0058】
次に、目封止部を作製したハニカム成形体を焼成することにより、ハニカムフィルタを製造する。焼成温度及び焼成雰囲気は原料により異なり、当業者であれば、選択された材料に最適な焼成温度及び焼成雰囲気を選択することができる。
【0059】
以上のような製造方法により、上記式(1)~式(6)を満たすような細孔径分布が実現された隔壁を有するハニカムフィルタを製造することができる。
【実施例0060】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
坏土を調製するための成形原料として、タルク、カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム、及び多孔質シリカを用意した。そして、各原料の累積粒度分布を、HORIBA製のレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(商品名:LA-960)を用いて測定した。実施例1においては、各原料の配合比率(質量部)が表1に示す値となるように、各原料を配合してコージェライト化原料を調製した。表1において、「粒度D50(μm)」の横方向の行は、各原料の50体積%の粒子径(即ち、メジアン径)を示している。
【0062】
次に、成形原料100質量部に対して、造孔材として吸水性ポリマーを2.5質量部、バインダを6質量部、界面活性剤を1質量部、水を74質量部、加えて坏土を調製した。造孔材として吸水性ポリマーは、粒子径が10μmのものを用いた。バインダとしては、メチルセルロース(Methylcellulose)を使用した。分散剤としては、ラウリン酸カリ石鹸を使用した。表2に、造孔材(有機造孔材)及びその他原料の配合比率(質量部)を示す。表2において、「粒度D50(μm)」の横方向の行は、有機造孔材の50体積%の粒子径(即ち、メジアン径)を示している。また、表2に示す配合比率(質量部)は、コージェライト化原料100質量部に対する比率を示している。
【0063】
次に、得られた坏土を、押出成形機を用いて成形し、ハニカム成形体を作製した。次に、得られたハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて更に乾燥した。ハニカム成形体におけるセルの形状は、四角形とした。
【0064】
次に、乾燥後のハニカム成形体に、目封止部を形成した。まず、ハニカム成形体の流入端面にマスクを施した。次に、マスクの施された端部(流入端面側の端部)を目封止スラリーに浸漬し、マスクが施されていないセル(流出セル)の開口部に目封止スラリーを充填した。このようにして、ハニカム成形体の流入端面側に、目封止部を形成した。そして、乾燥後のハニカム成形体の流出端面についても同様にして、流入セルにも目封止部を形成した。
【0065】
次に、目封止部を形成したハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。次に、乾燥したハニカム成形体を、脱脂し、焼成して、実施例1のハニカムフィルタを製造した。
【0066】
実施例1のハニカムフィルタは、端面の直径が228.6mmであり、セルの延びる方向の長さが184.2mmであった。また、隔壁の厚さが241.3μmであり、セル密度が54.3個/cmであった。隔壁の厚さ及びセル密度の値を表3に示す。
【0067】
実施例1のハニカムフィルタについて、以下の方法で、隔壁の気孔率を測定した。隔壁の気孔率は、59%であった。測定結果を表3に示す。
【0068】
(気孔率)
隔壁の気孔率の測定は、GeoDictのモジュールの一つである、PoroDict機能のうち、Open and Closed Porosityを用いて測定した。具体的な解析方法については、本実施形態において説明した解析法の通りである。また、三次元モデル及び隔壁構造モデルMについては、本実施形態において説明した細孔径分布を求めるための「Granulometry解析法」と同様の方法により得た。
【0069】
また、実施例1のハニカムフィルタにおける隔壁の細孔径分布を、Granulometry解析法によって求め、得られた細孔径分布(解析値)に基づいて、D10、D50及びD90の値を求めた。なお、D10は、累積細孔容積が総細孔容積の10%となる細孔径(μm)を示し、D50は、累積細孔容積が総細孔容積の50%となる細孔径(μm)を示し、D90は、累積細孔容積が総細孔容積の90%となる細孔径(μm)を示す。Granulometry解析法による一連の解析は、これまでに説明した方法によって行い、その解析に際しては、Math2Market GmbH社によって開発されたミクロ構造シミュレーションソフトである「GeoDict(商品名)」を用いた。求められたD10、D50及びD90の値を、表3に示す。また、D10、D50及びD90の値から、「(logD90-logD10)/logD50」、「logD90/logD50」及び「logD50/logD10」の値を求めた。これらの値を、表3の「式(4)」、「式(5)」及び「式(6)」の欄に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
実施例1のハニカムフィルタについて、以下の方法で、圧力損失、及び捕集効率の評価を行った。各結果を、表4に示す。
【0075】
(圧力損失)
6.7Lディーゼルエンジンから排出される排ガスを、各実施例及び比較例のハニカムフィルタに流入させて、ハニカムフィルタの隔壁にて、排ガス中の煤を捕集した。煤の捕集は、ハニカムフィルタの単位体積(1L)当たりの煤の堆積量が3g/Lとなるまで行った。そして、煤の堆積量が3g/Lとなった状態で、200℃のエンジン排ガスを12m3/minの流量で流入させて、ハニカムフィルタの流入端面側と流出端面側との圧力を測定した。そして、流入端面側と流出端面側との圧力差を算出することにより、ハニカムフィルタの圧力損失(kPa)を求めた。そして、比較例1のハニカムフィルタの圧力損失の値を100%とした場合における、各ハニカムフィルタの圧力損失の比率(%)を算出し、以下の下記評価基準に基づき、各実施例及び比較例のハニカムフィルタの評価を行った。なお、下記評価基準において、「圧力損失比(%)」とは、比較例1のハニカムフィルタの圧力損失の値を100%とした場合における、各ハニカムフィルタの圧力損失の比率(%)のことである。
評価「優」:圧力損失比(%)が、80%以下である場合を「優」とする。
評価「良」:圧力損失比(%)が、80%を超え、90%以下である場合を「良」とする。
評価「可」:圧力損失比(%)が、90%を超え、100%以下である場合を「可」とする。
評価「不可」:圧力損失比(%)が、100%を超える場合を「不可」とする。
【0076】
(捕集効率)
まず、各実施例及び比較例のハニカムフィルタを排ガス浄化用フィルタとした排ガス浄化装置を作製した。次に、作製した排ガス浄化装置を、6.7Lディーゼルエンジン排気マニホルドの出口側に接続して、排ガス浄化装置の流出口から排出されるガスに含まれる煤の個数を、PN測定方法によって測定した。煤の個数判定においては、WHTC(World Harmonized Transient Cycle)モード走行後に排出された煤の個数の累計を、判定対象となる排ガス浄化装置の煤の個数とし、比較例1のハニカムフィルタを使用した排ガス浄化装置の煤の個数を100%とした場合における、各ハニカムフィルタの煤個数比率(%)を算出し、以下の評価基準に基づき、各実施例及び比較例のハニカムフィルタの評価を行った。表4の「捕集効率(煤個数比率(%))」の「判定」の欄は、下記評価基準に基づいた評価の判定結果を示す。
評価「優」:煤個数比率(%)が60%以下である場合を「優」とする。
評価「良」:煤個数比率(%)が60%を超え、70%以下である場合を「良」とする。
評価「可」:煤個数比率(%)が70%を超え、100%以下である場合を「可」とする。
評価「不可」:煤個数比率(%)が0%を超える場合を「不可」とする。
【0077】
(実施例2~8)
実施例2~8においては、コージェライト化原料に用いる各原料の配合比率(質量部)を表1に示すように変更した。また、有機造孔材及びその他原料の配合比率(質量部)についても表2に示すように変更した。このような原料を用いて坏土を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法でハニカムフィルタを作製した。
【0078】
(比較例1~4)
比較例1~4においては、コージェライト化原料に用いる各原料の配合比率(質量部)を表1に示すように変更した。また、有機造孔材及びその他原料の配合比率(質量部)についても表2に示すように変更した。このような原料を用いて坏土を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法でハニカムフィルタを作製した。
【0079】
実施例2~8及び比較例1~4のハニカムフィルタについても、実施例1と同様の方法で、隔壁の気孔率の測定を行った。また、実施例2~8及び比較例1~4のハニカムフィルタについて、隔壁の細孔径分布をGranulometry解析法によって求め、得られた細孔径分布(解析値)に基づいて、D10、D50及びD90の値を求めた。各結果を、表3に示す。
【0080】
実施例2~8及び比較例1~4のハニカムフィルタについて、実施例1と同様の方法で、圧力損失、及び捕集効率の評価を行った。各結果を、表4に示す。
【0081】
(結果)
実施例1~8のハニカムフィルタは、圧力損失、及び捕集効率の全て評価において、基準となる比較例1のハニカムフィルタの各性能を上回るものであることが確認できた。比較例1のハニカムフィルタは、これまでに説明した式(1)~式(5)の関係式を満たさないものである。実施例1~8のハニカムフィルタは、捕集性能に優れるとともに、比較例1のような従来のハニカムフィルタに比して、圧力損失の上昇を抑制することができることが分かった。一方、比較例2のハニカムフィルタは、これまでに説明した式(1)~式(3)及び式(5)の関係式を満たさないものであった。このような比較例3のハニカムフィルタは、圧力損失の上昇を抑制することができるものの、捕集効率の評価が著しく悪いものであった。比較例3のハニカムフィルタは、D10の値が3.5μmと非常に低く、また、これまでに説明した式(4)及び式(6)の関係式を満たさないものであった。このような比較例3のハニカムフィルタは、捕集効率の改善が見られるものの、圧力損失の悪化が激しかった。比較例4のハニカムフィルタは、式(5)の値が1.32となっており、これまでに説明した式(5)の関係式を満たさないものであった。このような比較例4のハニカムフィルタは、圧力損失、及び捕集効率の双方の評価結果が劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のハニカムフィルタは、排ガスに含まれる微粒子等を除去するための捕集フィルタとして利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1:隔壁、2:セル、2a:流入セル、2b:流出セル、3:外周壁、4:ハニカム構造部、5:目封止部、11:第一端面、12:第二端面、100:ハニカムフィルタ。
図1
図2
図3
図4