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特開2023-148844高輝度光源からの光の輝度レベルを検出するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148844
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】高輝度光源からの光の輝度レベルを検出するための方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/114 20130101AFI20231005BHJP
【FI】
H04B10/114
【審査請求】有
【請求項の数】34
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057100
(22)【出願日】2022-03-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000209751
【氏名又は名称】池上通信機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504194878
【氏名又は名称】国立研究開発法人海洋研究開発機構
(71)【出願人】
【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
(71)【出願人】
【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
(71)【出願人】
【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 太郎
(72)【発明者】
【氏名】駒野目 裕久
(72)【発明者】
【氏名】澤 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】武内 伴照
(72)【発明者】
【氏名】後藤 慎平
(72)【発明者】
【氏名】小澤 佑介
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA26
5K102AA27
5K102AD01
5K102AH26
5K102AL23
5K102PB01
5K102PB02
5K102PB18
5K102PC11
5K102PC12
5K102PH31
5K102RB07
5K102RD28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】イメージセンサの飽和レベルを超える強さを持つ光の輝度レベルを検出するための、高輝度光源からの光の輝度レベルを検出する方法、装置及び光通信システムを提供する。
【解決手段】方法は、第1の発光素子11からの光をイメージセンサ13で受光するステップと、第1の発光素子11からの光を受光した受光領域のうち、受光量がイメージセンサ13の飽和レベルより大きい第1の飽和領域を検出するステップと、第1の発光素子11からの光の輝度レベルを表す第1の検出値として、第1の飽和領域の大きさを決定するステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の発光素子からの光をイメージセンサで受光するステップと、
前記第1の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量が前記イメージセンサの飽和レベルより大きい第1の飽和領域を検出するステップと、
前記第1の発光素子からの光の輝度レベルを表す第1の検出値として、前記第1の飽和領域の大きさを決定するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
送信データに対応する輝度レベルで前記第1の発光素子を発光させるステップと、
前記第1の検出値に基づいて前記送信データを取得するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の発光素子を発光させるとき、前記第1の発光素子とは異なる第2の発光素子を同時に発光させるステップをさらに含み、
前記第1の発光素子の輝度レベルと前記第2の発光素子の輝度レベルとの和は、前記送信データに依らず予め設定されたレベルに維持される、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の発光素子からの光を前記イメージセンサで受光するステップと、
前記第2の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量が前記イメージセンサの飽和レベルより大きい第2の飽和領域を検出するステップと、
前記第2の発光素子からの光の輝度レベルを表す第2の検出値として、前記第2の飽和領域の大きさを決定するステップと
をさらに含み、
前記送信データは、前記第1の検出値及び前記第2の検出値に基づいて取得される、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の発光素子の輝度レベルと前記第2の発光素子の輝度レベルとは異なり、
前記送信データは、前記第1の検出値と前記第2の検出値との間の大小関係に基づいて取得される、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記送信データは、前記第1の検出値と前記第2の検出値との間の大小関係、及び前記第1の検出値と前記第2の検出値との差分絶対値に基づいて取得される、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
他の送信データに対応する輝度レベルで第3の発光素子を発光させ、前記第3の発光素子とは異なる第4の発光素子を前記第3の発光素子と同時に発光させるステップをさらに含み、前記第3の発光素子の輝度レベルと前記第4の発光素子の輝度レベルとの和は、前記他の送信データに依らず予め設定されたレベルに維持され、
前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子は同じ第1の発光色を有し、前記第3の発光素子及び前記第4の発光素子は同じ第2の発光色を有し、前記第1の発光色と前記第2の発光色とは異なる、
請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の発光素子からの光を前記イメージセンサで受光するステップと、
前記第2の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量が前記イメージセンサの飽和レベルより大きい第2の飽和領域を検出するステップと、
前記第2の発光素子からの光の輝度レベルを表す第2の検出値として、前記第2の飽和領域の大きさを決定するステップと
前記第3の発光素子からの光を前記イメージセンサで受光するステップと、
前記第3の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量が前記イメージセンサの飽和レベルより大きい第3の飽和領域を検出するステップと、
前記第3の発光素子からの光の輝度レベルを表す第3の検出値として、前記第3の飽和領域の大きさを決定するステップと
前記第4の発光素子からの光を前記イメージセンサで受光するステップと、
前記第4の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量が前記イメージセンサの飽和レベルより大きい第4の飽和領域を検出するステップと、
前記第4の発光素子からの光の輝度レベルを表す第4の検出値として、前記第4の飽和領域の大きさを決定するステップと
をさらに含み、
前記送信データは、前記第1の検出値及び前記第2の検出値に基づいて取得され、前記他の送信データは、前記第3の検出値及び前記第4の検出値に基づいて取得される、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量が前記イメージセンサの飽和レベルより小さい第1の非飽和領域における受光量の分布から、前記第1の飽和領域における受光量の分布を推定し、推定された前記第1の飽和領域における受光量の分布に基づいて前記第1の飽和領域の中心を決定するステップをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の飽和領域の重心を求め、前記重心の位置を前記第1の飽和領域の中心と推定するステップをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の発光素子からの光を受光した受光領域の各位置における受光量を重みとする前記受光領域の加重重心を求め、前記加重重心の位置を前記第1の飽和領域の中心と推定するステップをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子の発光色が第1の色であり、前記第1の色を透過色とする第1のフィルタを通過した光についての、前記第1の検出値と前記第2の検出値との差が予め設定された差分閾値より小さいとき、
前記送信データは、前記第1の色とは異なる第2の色を透過色とする第2のフィルタを通過した光についての、前記第1の検出値及び前記第2の検出値に基づいて取得される、
請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
光通信に利用可能な装置であって、
第1の発光素子からの光を受光するイメージセンサと、
前記第1の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量が前記イメージセンサの飽和レベルより大きい第1の飽和領域を検出し、前記第1の発光素子からの光の輝度レベルを表す第1の検出値として、前記第1の飽和領域の大きさを決定する制御部と
を備える、装置。
【請求項14】
前記イメージセンサは、送信データに対応する輝度レベルで発光された前記第1の発光素子からの光を受光し、
前記制御部は、前記第1の検出値に基づいて前記送信データを取得する、
請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記イメージセンサは、前記第1の発光素子からの光と同時に、前記第1の発光素子とは異なる第2の発光素子からの光を受光し、前記第1の発光素子の輝度レベルと前記第2の発光素子の輝度レベルとの和は、前記送信データに依らず予め設定されたレベルに維持されており、
前記制御部は、前記第2の発光素子からの光を受光した前記イメージセンサ上の受光領域のうち、受光量が前記イメージセンサの飽和レベルより大きい第2の飽和領域を検出し、前記第2の発光素子からの光の輝度レベルを表す第2の検出値として前記第2の飽和領域の大きさを決定し、前記第1の検出値及び前記第2の検出値を用いて前記送信データを取得する、
請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記第1の発光素子の輝度レベルと前記第2の発光素子の輝度レベルとは異なり、
前記制御部は、前記第1の検出値と前記第2の検出値との間の大小関係に基づいて前記送信データを取得する、
請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記第1の検出値と前記第2の検出値との間の大小関係、及び前記第1の検出値と前記第2の検出値との差分絶対値に基づいて前記送信データを取得する、
請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記第1の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量が前記イメージセンサの飽和レベルより小さい第1の非飽和領域における受光量の分布から、前記第1の飽和領域における受光量の分布を推定し、推定された前記第1の飽和領域における受光量の分布に基づいて前記第1の飽和領域の中心を決定する
請求項13に記載の装置。
【請求項19】
前記制御部は、前記第1の飽和領域の重心を求め、前記重心の位置を前記第1の飽和領域の中心と推定する
請求項13に記載の装置。
【請求項20】
前記制御部は、前記第1の発光素子からの光を受光した受光領域の各位置における受光量を重みとする前記受光領域の加重重心を求め、前記加重重心の位置を前記第1の飽和領域の中心と推定する
請求項13に記載の装置。
【請求項21】
第1の色を透過色とする第1のフィルタと、前記第1の色とは異なる第2の色を透過色とする第2のフィルタとをさらに備え、
前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子の発光色が第1の色であり、前記第1のフィルタを通過した光についての、前記第1の検出値と前記第2の検出値との差が予め設定された差分閾値より小さいとき、
前記制御部は、前記第2のフィルタを通過した光についての、前記第1の検出値及び前記第2の検出値に基づいて前記送信データを取得する、
請求項15~17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
第1の発光素子を含む発光部と、送信データに対応する輝度レベルで前記第1の発光素子を発光させる第1の制御部とを備える、第1の装置と;
前記発光部からの光を受光するイメージセンサと、前記第1の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量が前記イメージセンサの飽和レベルより大きい第1の飽和領域を検出し、前記第1の発光素子からの光の輝度レベルを表す第1の検出値として前記第1の飽和領域の大きさを決定し、前記第1の検出値に基づいて前記送信データを取得する第2の制御部とを備える、第2の装置と;
を含む、光通信システム。
【請求項23】
前記発光部は、第2の発光素子をさらに含み、
前記第1の制御部は、前記第1の発光素子を発光させるとき、前記第2の発光素子を同時に発光させ、
前記第1の発光素子の輝度レベルと前記第2の発光素子の輝度レベルとの和は、前記送信データに依らず予め設定されたレベルに維持される、
請求項22に記載の光通信システム。
【請求項24】
前記イメージセンサは、前記第2の発光素子からの光を受光し、
前記第2の制御部は、前記第2の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量が前記イメージセンサの飽和レベルより大きい第2の飽和領域を検出し、前記第2の発光素子からの光の輝度レベルを表す第2の検出値として前記第2の飽和領域の大きさを決定し、前記第1の検出値及び前記第2の検出値を用いて前記送信データを取得する、
請求項23に記載の光通信システム。
【請求項25】
前記第1の発光素子の輝度レベルと前記第2の発光素子の輝度レベルとは異なり、
前記第2の制御部は、前記第1の検出値と前記第2の検出値との間の大小関係に基づいて前記送信データを取得する、
請求項24に記載の光通信システム。
【請求項26】
前記第2の制御部は、前記第1の検出値と前記第2の検出値との間の大小関係、及び前記第1の検出値と前記第2の検出値との差分絶対値に基づいて前記送信データを取得する、
請求項25に記載の光通信システム。
【請求項27】
前記発光部は、第3の発光素子及び第4の発光素子を含み、
前記第1の制御部は、他の送信データに対応する輝度レベルで前記第3の発光素子を発光させ、前記第4の発光素子を前記第3の発光素子と同時に発光させ、前記第3の発光素子の輝度レベルと前記第4の発光素子の輝度レベルとの和は、前記他の送信データに依らず予め設定されたレベルに維持され、
前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子は同じ第1の発光色を有し、前記第3の発光素子及び前記第4の発光素子は同じ第2の発光色を有し、前記第1の発光色と前記第2の発光色とは異なる、
請求項23に記載の光通信システム。
【請求項28】
前記イメージセンサは、前記第2の発光素子からの光及び前記第3の発光素子からの光を受光し、
前記第2の制御部は、
前記第2の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量が前記イメージセンサの飽和レベルより大きい第2の飽和領域を検出し、前記第2の発光素子からの光の輝度レベルを表す第2の検出値として前記第2の飽和領域の大きさを決定し、前記第1の検出値及び前記第2の検出値を用いて前記送信データを取得し、
前記第3の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量が前記イメージセンサの飽和レベルより大きい第3の飽和領域を検出し、前記第3の発光素子からの光の輝度レベルを表す第3の検出値として前記第3の飽和領域の大きさを決定し、
前記第4の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量が前記イメージセンサの飽和レベルより大きい第4の飽和領域を検出し、前記第4の発光素子からの光の輝度レベルを表す第4の検出値として前記第4の飽和領域の大きさを決定し、
前記第3の検出値及び前記第4の検出値を用いて前記他の送信データを取得する、
請求項27に記載の光通信システム。
【請求項29】
前記発光部は、複数の素子アレイを有し、各素子アレイは、第1の方向に並べて配置された2以上の発光素子で形成され、前記各素子アレイにおいて、隣接する発光素子の発光色は互いに異なり、前記複数の素子アレイは、前記第1の方向と直交する第2の方向に整列され、隣接する素子アレイ間の距離は、前記各素子アレイにおける隣接する発光素子間の距離より大きい、
請求項22~28のいずれか1項に記載の光通信システム。
【請求項30】
前記第1の装置は、前記発光部からの光が透過する拡散板をさらに備える、
請求項22~29のいずれか1項に記載の光通信システム。
【請求項31】
前記第2の制御部は、前記第1の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量が前記イメージセンサの飽和レベルより小さい第1の非飽和領域における受光量の分布から、前記第1の飽和領域における受光量の分布を推定し、推定された前記第1の飽和領域における受光量の分布に基づいて前記第1の飽和領域の中心を決定する
請求項22に記載の光通信システム。
【請求項32】
前記第2の制御部は、前記第1の飽和領域の重心を求め、前記重心の位置を前記第1の飽和領域の中心と推定する
請求項22に記載の光通信システム。
【請求項33】
前記第2の制御部は、前記第1の発光素子からの光を受光した受光領域の各位置における受光量を重みとする前記受光領域の加重重心を求め、前記加重重心の位置を前記第1の飽和領域の中心と推定する
請求項22に記載の光通信システム。
【請求項34】
前記第2の装置は、第1の色を透過色とする第1のフィルタと、前記第1の色とは異なる第2の色を透過色とする第2のフィルタとをさらに備え、
前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子の発光色が第1の色であり、前記第1のフィルタを通過した光についての、前記第1の検出値と前記第2の検出値との差が予め設定された差分閾値より小さいとき、前記第2の制御部は、前記第2のフィルタを通過した光についての、前記第1の検出値及び前記第2の検出値に基づいて前記送信データを取得する、
請求項24~26のいずれか1項に記載の光通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度光源からの光の輝度レベルを検出するための方法、及び、その方法を実装する装置及び光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、可視光通信技術が様々な分野で広く利用されている。例えば、非特許文献1には、交通信号機などのインフラ設備と、そのインフラ設備の周囲にある車両との間での通信に可視光通信を利用する例(V2I-VLC:Vehicle to Infrastructure - Visible Light Communications)が示されている。また、同文献には、車車間通信に可視光通信を利用する例(V2V-VLC:Vehicle to Vehicle - Visible Light Communications)が示されている。また、特許文献1には、核燃料プールの環境情報を外部に送信するための通信に可視光通信を利用する例が示されている。
【0003】
上記以外にも、船舶間での信号通信に可視光通信を利用する例は古くから知られており、また、家屋や商業施設などの建造物内に設置された照明と、建造物の内部にいる人のモバイル機器との間のデータ通信に可視光通信を利用する例なども知られている。可視光通信には、様々な光源が利用できるが、電力効率が良く、点滅速度が速く、寿命が長いLED(Light Emitting Diode)が光源として広く利用されている。また、LD(Laser Diode)も可視光通信の光源として利用されることがある。可視光通信の受光部としては、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)センサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどのイメージセンサが利用されうる。
【0004】
イメージセンサは、受光面に入射した光の強度(以下、受光量)に相当する量の電荷を蓄積し、蓄積した電荷を信号処理回路へと出力する。イメージセンサに蓄積可能な電荷の量には上限(以下、飽和電荷量)があり、イメージセンサが飽和する強度(以下、飽和レベル)以上の光が入射すると、イメージセンサから出力される電荷の量は一定量(飽和電荷量)になる。そのため、受光量が飽和レベルを超えると、イメージセンサの出力から受光量の多寡を判定することができなくなる。従って、イメージセンサが飽和するような高輝度の光源を利用して可視光通信を実現するには何らかの工夫が必要になる。
【0005】
特許文献2では、受光量が飽和レベルを超えているイメージセンサ上の領域を手がかりとして信号光を受光している領域を抽出する方法が提案されている。特許文献3では、イメージセンサが飽和する輝度の主通信光を発光させると共に、イメージセンサが飽和しない輝度の副通信光を発光させ、副通信光の明暗を読み取って情報を取得する方法が提案されている。引用文献4では、受光量が飽和レベルに達しないように、シャッタースピードや絞り値を制御する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6829439号公報
【特許文献2】特開2009-027480号公報
【特許文献3】特開2016-058887号公報
【特許文献4】特開2007-019870号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Takeya Yamazato et al., "Image-Sensor-Based Visible Light Communication for Automotive Applications", IEEE Communications Magazine, July 2014, pp.88 - pp.96
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば、特許文献2の方法は、受光領域を抽出する方法であり、特許文献2の方法を適用しても、受光領域での受光量から情報を取得することはできない。特許文献3の方法は、情報を取得するために低輝度の副通信光を発光する方法であり、特許文献3は、イメージセンサが飽和する高輝度の主通信光から情報を取得することについて全く開示していない。特許文献4の方法は、シャッタースピードや絞り値を制御してイメージセンサが飽和しないように輝度を下げる方法であり、特許文献4は、イメージセンサが飽和する輝度の通信光から情報を取得することについて全く開示していない。
【0009】
上記のように、いずれの文献でも、イメージセンサが飽和する高輝度の光で直接的にデータ通信するための方法については検討されておらず、その方法を実現すること自体が課題である。また、特許文献3の方法では、副通信光で通信するための手段を別途設ける必要があり、その手段を設ける分だけ送信デバイスのサイズやコストが増大するという課題もある。また、特許文献4の方法では、シャッタースピードや絞り値を制御するための制御機構を持たない送信デバイスには適用できないという課題もある。
【0010】
なお、上記の説明では「可視光通信」の例について述べたが、可視光域に限らず、赤外、近赤外、近紫外、紫外などの他の波長域を利用する光通信技術においても上記と同様の課題が存在する。また、上記の説明では「通信」の例について述べたが、離れた場所で高輝度光源の輝度レベルを測定して、その輝度レベルを「通信」以外の用途で活用するシステムにおいても上記と同様の課題が存在する。
【0011】
上記のような課題に鑑み、後述する本発明のある態様では、イメージセンサの飽和レベルを超える光の輝度レベルを検出するための方法を提供することを目的とする。また、後述する本発明の他の態様では、その方法を実装する装置及び光通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、第1の発光素子からの光をイメージセンサで受光するステップと、第1の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量がイメージセンサの飽和レベルより大きい第1の飽和領域を検出するステップと、第1の発光素子からの光の輝度レベルを表す第1の検出値として、第1の飽和領域の大きさを決定するステップとを含む、方法が提供される。
第1の態様によれば、イメージセンサが飽和する高輝度光の輝度レベルをイメージセンサの出力から直接的に検出することが可能になる。
【0013】
また、上記方法は、送信データに対応する輝度レベルで第1の発光素子を発光させるステップと、第1の検出値に基づいて送信データを取得するステップとをさらに含んでよい。上記の通り、第1の態様によれば、イメージセンサが飽和する高輝度光の輝度レベルをイメージセンサの出力から直接的に検出することが可能になるため、この実装例のように、検出された高輝度光の輝度レベルに基づいて送信データを取得することができ、高輝度光を利用した光通信を実現することが可能になる。
【0014】
また、上記の方法は、第1の発光素子を発光させるとき、第1の発光素子とは異なる第2の発光素子を同時に発光させるステップをさらに含んでよく、第1の発光素子の輝度レベルと第2の発光素子の輝度レベルとの和は、送信データに依らず予め設定されたレベルに維持されてよい。
この実装例によれば、第1の発光素子及び第2の発光素子の少なくとも一方の輝度レベルが変化しても見た目の明るさは一定に維持される。そのため、光通信に伴うフリッカーの発生や明るさの変化が抑制される。また、予め設定されたレベルを調整することで、見た目の明るさを変えることもでき、第1の発光素子及び第2の発光素子のペアを含む発光部を様々な用途の照明として利用することが可能になる。
【0015】
また、上記の方法は、第2の発光素子からの光をイメージセンサで受光するステップと、第2の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量がイメージセンサの飽和レベルより大きい第2の飽和領域を検出するステップと、第2の発光素子からの光の輝度レベルを表す第2の検出値として、第2の飽和領域の大きさを決定するステップとをさらに含んでよく、送信データは、第1の検出値及び第2の検出値に基づいて取得されてよい。
この実装例によれば、第2の発光素子からの光の輝度レベルも検出することで、第1の検出値と第2の検出値との相対値で送信データを送受信することが可能になる。第1の発光素子及び第2の発光素子からの光は、ある媒体(例えば、空気や水)を介してイメージセンサへと到達するため、媒体の揺らぎによって輝度レベルと受光量との関係が時間的に変化することがある。しかし、媒体の揺らぎが生じても、同じ期間に同じ媒体中を伝播する第1の発光素子及び第2の発光素子からの光は同じ影響を受けるため、媒体の揺らぎが輝度レベルの相対的な関係性に及ぼす影響は十分に小さい。従って、輝度レベルの相対値で送信データを送信し、第1の検出値及び第2の検出値を用いて送信データを取得することによって、媒体の揺らぎによる影響を抑制することができ、正しく送信データを受信することが可能になる。
【0016】
また、上記の方法において、第1の発光素子の輝度レベルと第2の発光素子の輝度レベルとは異なってよく、送信データは、第1の検出値と第2の検出値との間の大小関係に基づいて取得されてよい。この実装例では、輝度レベルの大小関係を利用して送信データを送信することができ、少なくとも2値の送信データを送信することが可能になる。
【0017】
また、上記の方法において、送信データは、第1の検出値と第2の検出値との間の大小関係、及び第1の検出値と第2の検出値との差分絶対値に基づいて取得されてよい。この実装例では、輝度レベルの大小関係と、輝度レベルの差分絶対値との組み合わせを利用して送信データを送信することができ、少なくとも4値の送信データを送信することが可能になる。
【0018】
また、上記の方法は、他の送信データに対応する輝度レベルで第3の発光素子を発光させ、第3の発光素子とは異なる第4の発光素子を第3の発光素子と同時に発光させるステップをさらに含んでよく、第3の発光素子の輝度レベルと第4の発光素子の輝度レベルとの和は、他の送信データに依らず予め設定されたレベルに維持されてよく、第1の発光素子及び第2の発光素子は同じ第1の発光色を有してよく、第3の発光素子及び第4の発光素子は同じ第2の発光色を有してよく、第1の発光色と第2の発光色とは異なってよい。
この実装例のように、発光色が異なる複数の素子ペア(第1の発光素子と第2の発光素子のペア、第3の発光素子と第4の発光素子のペア)を設定し、複数の素子ペアで異なる送信データを送信することによって多重送信が実現され、伝送効率が向上する。
【0019】
また、上記の方法は、第2の発光素子からの光をイメージセンサで受光するステップと、第2の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量がイメージセンサの飽和レベルより大きい第2の飽和領域を検出するステップと、第2の発光素子からの光の輝度レベルを表す第2の検出値として、第2の飽和領域の大きさを決定するステップと第3の発光素子からの光をイメージセンサで受光するステップと、第3の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量がイメージセンサの飽和レベルより大きい第3の飽和領域を検出するステップと、第4の発光素子からの光の輝度レベルを表す第4の検出値として、第4の飽和領域の大きさを決定するステップとをさらに含んでよく、送信データは、第1の検出値及び第2の検出値に基づいて取得され、他の送信データは、第3の検出値及び第4の検出値に基づいて取得されてよい。
この実装例のように、発光色が異なる複数の素子ペア(第1の発光素子と第2の発光素子のペア、第3の発光素子と第4の発光素子のペア)を設定し、複数の素子ペアで異なる送信データを送信することによって多重送信が実現され、伝送効率が向上する。
【0020】
また、上記の方法は、第1の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量がイメージセンサの飽和レベルより小さい第1の非飽和領域における受光量の分布から、第1の飽和領域における受光量の分布を推定し、推定された第1の飽和領域における受光量の分布に基づいて第1の飽和領域の中心を決定するステップをさらに含んでよい。この実装例によれば、受光側で、受光量のピークに対応するイメージセンサ上の位置(輝度中心)を決定することが可能になる。
【0021】
また、上記の方法は、第1の飽和領域の重心を求め、重心の位置を第1の飽和領域の中心と推定するステップをさらに含んでよい。この実装例によれば、受光側で、受光量のピークに対応するイメージセンサ上の位置(輝度中心)を決定することが可能になる。
【0022】
また、上記の方法は、第1の発光素子からの光を受光した受光領域の各位置における受光量を重みとする受光領域の加重重心を求め、加重重心の位置を第1の飽和領域の中心と推定するステップをさらに含んでよい。この実装例によれば、受光側で、受光量のピークに対応するイメージセンサ上の位置(輝度中心)を決定することが可能になる。
【0023】
また、上記の方法において、第1の発光素子及び第2の発光素子の発光色が第1の色であり、第1の色を透過色とする第1のフィルタを通過した光についての、第1の検出値と第2の検出値との差が予め設定された差分閾値より小さいとき、送信データは、第1の色とは異なる第2の色を透過色とする第2のフィルタを通過した光についての、第1の検出値及び第2の検出値に基づいて取得されるようにしてもよい。第1の発光素子及び第2の発光素子の輝度レベルが非常に大きくなると、飽和領域の大きさの差が見分けにくくなることがあるが、この実装例によれば、第2のフィルタによって光が減衰するため、飽和領域の大きさの差が見分けやすくなる。そのため、さらに高輝度の光源を利用しても送信データを正しく取得することが可能になる。
【0024】
本発明の第2の態様によれば、高輝度光源からの光の輝度レベルを検出するための装置が提供される。この装置は、第1の発光素子からの光を受光するイメージセンサと、第1の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量がイメージセンサの飽和レベルより大きい第1の飽和領域を検出し、第1の発光素子からの光の輝度レベルを表す第1の検出値として、第1の飽和領域の大きさを決定する制御部とを備える。
第2の態様によれば、イメージセンサが飽和する高輝度光の輝度レベルをイメージセンサの出力から直接的に検出することが可能になる。
【0025】
また、上記の装置において、イメージセンサは、送信データに対応する輝度レベルで発光された第1の発光素子からの光を受光してよく、制御部は、第1の検出値に基づいて送信データを取得してよい。上記の通り、第2の態様によれば、イメージセンサが飽和する高輝度光の輝度レベルをイメージセンサの出力から直接的に検出することが可能になるため、この実装例のように、検出された高輝度光の輝度レベルに基づいて送信データを取得することができ、高輝度光を利用した光通信を実現することが可能になる。
【0026】
また、上記の装置において、イメージセンサは、第1の発光素子からの光と同時に、第1の発光素子とは異なる第2の発光素子からの光を受光してよく、第1の発光素子の輝度レベルと第2の発光素子の輝度レベルとの和は、送信データに依らず予め設定されたレベルに維持されてよく、制御部は、第2の発光素子からの光を受光したイメージセンサ上の受光領域のうち、受光量がイメージセンサの飽和レベルより大きい第2の飽和領域を検出してよく、第2の発光素子からの光の輝度レベルを表す第2の検出値として第2の飽和領域の大きさを決定し、第1の検出値及び第2の検出値を用いて送信データを取得してよい。
この実装例によれば、第1の発光素子及び第2の発光素子の少なくとも一方の輝度レベルが変化しても見た目の明るさは一定に維持される。そのため、光通信に伴うフリッカーの発生や明るさの変化が抑制される。また、予め設定されたレベルを調整することで、見た目の明るさを変えることもでき、第1の発光素子及び第2の発光素子のペアを含む発光部を様々な用途の照明として利用することが可能になる。
また、この実装例によれば、第2の発光素子からの光の輝度レベルも検出することで、第1の検出値と第2の検出値との相対値で送信データを送受信することが可能になる。第1の発光素子及び第2の発光素子からの光は、ある媒体(例えば、空気や水)を介してイメージセンサへと到達するため、媒体の揺らぎによって輝度レベルと受光量との関係が時間的に変化することがある。しかし、媒体の揺らぎが生じても、同じ期間に同じ媒体中を伝播する第1の発光素子及び第2の発光素子からの光は同じ影響を受けるため、媒体の揺らぎが輝度レベルの相対的な関係性に及ぼす影響は十分に小さい。従って、輝度レベルの相対値で送信データを送信し、第1の検出値及び第2の検出値を用いて送信データを取得することによって、媒体の揺らぎによる影響を抑制することができ、正しく送信データを受信することが可能になる。
【0027】
また、上記の装置において、第1の発光素子の輝度レベルと第2の発光素子の輝度レベルとは異なってよく、制御部は、第1の検出値と第2の検出値との間の大小関係に基づいて送信データを取得してよい。この実装例では、輝度レベルの大小関係を利用して送信データを送信することができ、少なくとも2値の送信データを送信することが可能になる。
【0028】
また、上記の装置において、制御部は、第1の検出値と第2の検出値との間の大小関係、及び第1の検出値と第2の検出値との差分絶対値に基づいて送信データを取得してよい。この実装例では、輝度レベルの大小関係と、輝度レベルの差分絶対値との組み合わせを利用して送信データを送信することができ、少なくとも4値の送信データを送信することが可能になる。
【0029】
また、上記の装置において、制御部は、第1の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量がイメージセンサの飽和レベルより小さい第1の非飽和領域における受光量の分布から、第1の飽和領域における受光量の分布を推定し、推定された第1の飽和領域における受光量の分布に基づいて第1の飽和領域の中心を決定してよい。この実装例によれば、受光側で、受光量のピークに対応するイメージセンサ上の位置(輝度中心)を決定することが可能になる。
【0030】
また、上記の装置において、制御部は、第1の飽和領域の重心を求め、重心の位置を第1の飽和領域の中心と推定してよい。この実装例によれば、受光側で、受光量のピークに対応するイメージセンサ上の位置(輝度中心)を決定することが可能になる。
【0031】
また、上記の装置において、制御部は、第1の発光素子からの光を受光した受光領域の各位置における受光量を重みとする受光領域の加重重心を求め、加重重心の位置を第1の飽和領域の中心と推定してよい。この実装例によれば、受光側で、受光量のピークに対応するイメージセンサ上の位置(輝度中心)を決定することが可能になる。
【0032】
また、上記の装置は、第1の色を透過色とする第1のフィルタと、第1の色とは異なる第2の色を透過色とする第2のフィルタとをさらに備えてよく、第1の発光素子及び第2の発光素子の発光色が第1の色であり、第1のフィルタを通過した光についての、第1の検出値と第2の検出値との差が予め設定された差分閾値より小さいとき、制御部は、第2のフィルタを通過した光についての、第1の検出値及び第2の検出値に基づいて送信データを取得するように構成されてよい。第1の発光素子及び第2の発光素子の輝度レベルが非常に大きくなると、飽和領域の大きさの差が見分けにくくなることがあるが、この実装例によれば、第2のフィルタによって光が減衰するため、飽和領域の大きさの差が見分けやすくなる。そのため、さらに高輝度の光源を利用しても送信データを正しく取得することが可能になる。
【0033】
本発明の第3の態様によれば、第1の発光素子を含む発光部と、送信データに対応する輝度レベルで第1の発光素子を発光させる第1の制御部とを備える、第1の装置と、発光部からの光を受光するイメージセンサと、第1の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量がイメージセンサの飽和レベルより大きい第1の飽和領域を検出し、第1の発光素子からの光の輝度レベルを表す第1の検出値として第1の飽和領域の大きさを決定し、第1の検出値に基づいて送信データを取得する第2の制御部とを備える、第2の装置とを含む、光通信システムが提供される。
第3の態様によれば、イメージセンサが飽和する高輝度光の輝度レベルをイメージセンサの出力から直接的に検出することが可能になる。そのため、検出された高輝度光の輝度レベルに基づいて送信データを復元することができ、高輝度光を利用した光通信を実現することが可能になる。
【0034】
また、上記の光通信システムにおいて、発光部は、第2の発光素子をさらに含んでよく、第1の制御部は、第1の発光素子を発光させるとき、第2の発光素子を同時に発光させてよく、第1の発光素子の輝度レベルと第2の発光素子の輝度レベルとの和は、送信データに依らず予め設定されたレベルに維持されてよい。
この実装例によれば、第1の発光素子及び第2の発光素子の少なくとも一方の輝度レベルが変化しても見た目の明るさは一定に維持される。そのため、光通信に伴うフリッカーの発生や明るさの変化が抑制される。また、予め設定されたレベルを調整することで、見た目の明るさを変えることもでき、第1の発光素子及び第2の発光素子のペアを含む発光部を様々な用途の照明として利用することが可能になる。
【0035】
また、上記の光通信システムにおいて、イメージセンサは、第2の発光素子からの光を受光してよく、第2の制御部は、第2の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量がイメージセンサの飽和レベルより大きい第2の飽和領域を検出してよく、第2の発光素子からの光の輝度レベルを表す第2の検出値として第2の飽和領域の大きさを決定してよく、第1の検出値及び第2の検出値を用いて送信データを取得してよい。
この実装例によれば、第2の発光素子からの光の輝度レベルも検出することで、第1の検出値と第2の検出値との相対値で送信データを送受信することが可能になる。第1の発光素子及び第2の発光素子からの光は、ある媒体(例えば、空気や水)を介してイメージセンサへと到達するため、媒体の揺らぎによって輝度レベルと受光量との関係が時間的に変化することがある。しかし、媒体の揺らぎが生じても、同じ期間に同じ媒体中を伝播する第1の発光素子及び第2の発光素子からの光は同じ影響を受けるため、媒体の揺らぎが輝度レベルの相対的な関係性に及ぼす影響は十分に小さい。従って、輝度レベルの相対値で送信データを送信し、第1の検出値及び第2の検出値を用いて送信データを取得することによって、媒体の揺らぎによる影響を抑制することができ、正しく送信データを受信することが可能になる。
【0036】
また、上記の光通信システムにおいて、第1の発光素子の輝度レベルと第2の発光素子の輝度レベルとは異なってよく、第2の制御部は、第1の検出値と第2の検出値との間の大小関係に基づいて送信データを取得してよい。この実装例では、輝度レベルの大小関係を利用して送信データを送信することができ、少なくとも2値の送信データを送信することが可能になる。
【0037】
また、上記の光通信システムにおいて、第2の制御部は、第1の検出値と第2の検出値との間の大小関係、及び第1の検出値と第2の検出値との差分絶対値に基づいて送信データを取得してよい。この実装例では、輝度レベルの大小関係と、輝度レベルの差分絶対値との組み合わせを利用して送信データを送信することができ、少なくとも4値の送信データを送信することが可能になる。
【0038】
また、上記の光通信システムにおいて、発光部は、第3の発光素子及び第4の発光素子を含んでよく、第1の制御部は、他の送信データに対応する輝度レベルで第3の発光素子を発光させてよく、第4の発光素子を第3の発光素子と同時に発光させてよく、第3の発光素子の輝度レベルと第4の発光素子の輝度レベルとの和は、他の送信データに依らず予め設定されたレベルに維持されてよく、第1の発光素子及び第2の発光素子は同じ第1の発光色を有してよく、第3の発光素子及び第4の発光素子は同じ第2の発光色を有してよく、第1の発光色と第2の発光色とは異なってよい。
この実装例のように、発光色が異なる複数の素子ペア(第1の発光素子と第2の発光素子のペア、第3の発光素子と第4の発光素子のペア)を設定し、複数の素子ペアで異なる送信データを送信することによって多重送信が実現され、伝送効率が向上する。
【0039】
また、上記の光通信システムにおいて、イメージセンサは、第2の発光素子からの光及び第3の発光素子からの光を受光してよく、第2の制御部は、第2の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量がイメージセンサの飽和レベルより大きい第2の飽和領域を検出してよく、第2の発光素子からの光の輝度レベルを表す第2の検出値として第2の飽和領域の大きさを決定してよく、第1の検出値及び第2の検出値を用いて送信データを取得してよく、第3の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量がイメージセンサの飽和レベルより大きい第3の飽和領域を検出してよく、第4の発光素子からの光の輝度レベルを表す第4の検出値として第4の飽和領域の大きさを決定してよく、第3の検出値及び第4の検出値を用いて他の送信データを取得してよい。
この実装例によれば、各素子ペアについて輝度レベルの相対値によるデータ送信が可能になり、媒体の揺らぎがあっても各素子ペアに対応する送信データを正しく受信でき、また、複数の素子ペアによる多重送信によって高い伝送効率が実現される。
【0040】
また、上記の光通信システムにおいて、発光部は、複数の素子アレイを有してよく、各素子アレイは、第1の方向に並べて配置された2以上の発光素子で形成されてよく、各素子アレイにおいて、隣接する発光素子の発光色は互いに異なってよく、複数の素子アレイは、第1の方向と直交する第2の方向に整列されてよく、隣接する素子アレイ間の距離は、各素子アレイにおける隣接する発光素子間の距離より大きくてよい。この実装例のように、隣接素子の発光素子が異なる複数の素子アレイを配置する場合に、素子アレイの間隔を十分に広げることで、各素子ペアの発光素子間でのクロストークが低減され、イメージセンサ上での各発光素子に対応する受光領域の分離が容易になる。そして、受光領域が正しく分離されることで、各発光素子の輝度レベルを精度良く検出することが可能になる。
【0041】
また、上記の光通信システムにおいて、第1の装置は、発光部からの光が透過する拡散板をさらに備えてよい。この実装例のように、拡散板を設けることで、輝度レベルの変化による飽和領域の大きさの変化を拡大することが可能になる。その結果、飽和領域の大きさに基づいて輝度レベルの変化を検出するときの検出精度が向上する。
【0042】
また、上記の光通信システムにおいて、第2の制御部は、第1の発光素子からの光を受光した受光領域のうち、受光量がイメージセンサの飽和レベルより小さい第1の非飽和領域における受光量の分布から、第1の飽和領域における受光量の分布を推定し、推定された第1の飽和領域における受光量の分布に基づいて第1の飽和領域の中心を決定してよい。この実装例によれば、受光側で、受光量のピークに対応するイメージセンサ上の位置(輝度中心)を決定することが可能になる。
【0043】
また、上記の光通信システムにおいて、第2の制御部は、第1の飽和領域の重心を求め、重心の位置を第1の飽和領域の中心と推定してよい。この実装例によれば、受光側で、受光量のピークに対応するイメージセンサ上の位置(輝度中心)を決定することが可能になる。
【0044】
また、上記の光通信システムにおいて、第2の制御部は、第1の発光素子からの光を受光した受光領域の各位置における受光量を重みとする受光領域の加重重心を求め、加重重心の位置を第1の飽和領域の中心と推定してよい。この実装例によれば、受光側で、受光量のピークに対応するイメージセンサ上の位置(輝度中心)を決定することが可能になる。
【0045】
また、上記の光通信システムにおいて、第2の装置は、第1の色を透過色とする第1のフィルタと、第1の色とは異なる第2の色を透過色とする第2のフィルタとをさらに備えてよく、第1の発光素子及び第2の発光素子の発光色が第1の色であり、第1のフィルタを通過した光についての、第1の検出値と第2の検出値との差が予め設定された差分閾値より小さいとき、第2の制御部は、第2のフィルタを通過した光についての、第1の検出値及び第2の検出値に基づいて送信データを取得するように構成されてよい。第1の発光素子及び第2の発光素子の輝度レベルが非常に大きくなると、飽和領域の大きさの差が見分けにくくなることがあるが、この実装例によれば、第2のフィルタによって光が減衰するため、飽和領域の大きさの差が見分けやすくなる。そのため、さらに高輝度の光源を利用しても送信データを正しく取得することが可能になる。
【0046】
本発明の第4の態様によれば、第1の態様及びその実装例のいずれか1つの方法をコンピュータに実行させるプログラムが提供される。また、本発明の第5の態様によれば、第4の態様のプログラムが格納されたコンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【発明の効果】
【0047】
本発明のある態様によれば、イメージセンサの飽和レベルを超える光の輝度レベルを検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の実施形態に係る輝度レベル検出方法について説明するための模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る飽和領域サイズの検出方法について説明するための模式図である。
図3】イメージセンサの出力と飽和領域サイズとの関係について説明するための図表である。
図4】輝度変調を利用したデータ送信方法の一例を示す図表である。
図5】輝度中心を決定するための第1の方法(外挿方式)について説明するための模式図である。
図6】輝度中心を決定するための第2の方法(重心推定方式)について説明するための模式図である。
図7】本発明の実施形態に係る補符号ペア方式の光通信方法に利用可能な発光部の構成例を示す模式図である。
図8】補符号ペア方式で2値の送信データを送信する場合の発光制御方法及びデータ受信方法について説明するための図表である。
図9】補符号ペア方式で4値の送信データを送信する場合の発光制御方法及びデータ受信方法について説明するための図表である。
図10】複数の発光素子をマトリックス配置にした発光部の構成例を示す模式図である。
図11】補符号ペア方式を色多重送信に拡張する場合の発光部の構成例を示す模式図である。
図12】主色と補色との関係について説明するための図表である。
図13】補符号ペア方式で色多重送信する場合の発光制御方法について説明するための図表である。
図14】発光素子の配置例について説明するための模式図である。
図15】本発明の実施形態に係る光通信システムの構成例を模式的に示したブロック図である。
図16】送信装置の動作例について説明するためのフロー図である。
図17】受信装置の動作例(2値データ受信動作)について説明するためのフロー図である。
図18】受信装置の動作例(4値データ受信動作)について説明するための第1のフロー図である。
図19】受信装置の動作例(4値データ受信動作)について説明するための第2のフロー図である。
図20】補符号ペア方式の変形例について説明するための第1の説明図である。
図21】補符号ペア方式の変形例について説明するための第2の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書及び図面において実質的に同一の機能を有する要素については、同一の参照符号を付することにより重複説明を省略する場合がある。
【0050】
[1.輝度レベル検出方法]
まず、図1を参照しながら、本発明の実施形態に係る輝度レベル検出方法について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る輝度レベル検出方法について説明するための模式図である。
【0051】
図1には、発光素子11からの光が拡散板12を透過してイメージセンサ13に入射する様子が示されている。なお、発光素子11と拡散板12との間、及び/又は拡散板12とイメージセンサ13との間に任意の光学系が設けられていてもよい。発光素子11は、例えば、LEDやLDなどである。発光素子11の発光色は、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)、又はそれらの組み合わせであってよい。また、発光素子11は、赤外、近赤外、近紫外、又は紫外の光を発する発光素子であってもよい。図1の例では、説明を簡単にするために発光素子の数を1つとしているが、以下で説明する輝度レベル検出方法は、複数の発光素子を実装する場合にも適用可能である。
【0052】
拡散板12は、透過する光の配光特性を変化させる光学部材である。拡散板12は、例えば、レンズ拡散板(LSD:Light Shaping Diffusers, Luminit)であってよい。LSDは、微小でランダムなレンズアレイを有し、そのレンズアレイによって透過する光を拡散及び整形する機能を備えた光拡散シート又は光拡散フィルムである。例えば、発光素子11がLEDの場合、その配光特性は、挿入図11aに示すようなランバーシアン配光になる。ランバーシアン配光の光がLSDを透過すると、透過光の輝度レベル分布は、挿入図12aに示すようなガウシアン分布となる。拡散板12の透過光がイメージセンサ13に到達すると、イメージセンサ13の受光領域では、挿入図12aに示した輝度レベル分布に対応する受光量分布(図2を参照)が得られる。
【0053】
発光素子11は、図1の挿入図12aに示すように、イメージセンサ13の飽和レベルに相当する輝度レベルを超える高輝度の光を発しうる。挿入図12aに例示したグラフ21、22のピーク値(散乱角0°に対応する輝度レベル)を比較すると、グラフ21のピーク値は、グラフ22のピーク値より大きい。しかし、これら2つのピーク値は飽和レベル相当の輝度レベルを超えているため、イメージセンサ13から出力される電荷量は同じ一定量(飽和電荷量)になる。従って、発光素子11の輝度レベルが飽和レベル相当の輝度レベルを超えると、イメージセンサ13の出力電荷量の違いから輝度レベルの差を検出することが困難になる。
【0054】
上記の事情から、本発明の実施形態に係る輝度レベル検出方法では、発光素子11からの光をイメージセンサ13で受光し、発光素子11からの光を受光した受光領域のうち、受光量がイメージセンサ13の飽和レベルより大きい飽和領域を検出し、その飽和領域の大きさ(以下、飽和領域サイズ)を、発光素子11からの光の輝度レベルを表す検出値として決定する。この輝度レベル検出方法を適用すれば、発光素子11の輝度レベルが飽和レベル相当の輝度レベルを超えても、イメージセンサ13からの出力に基づいて輝度レベルの差を検出することが可能になる。
【0055】
ここで、図2を参照しながら、本発明の実施形態に係る飽和領域サイズの検出方法について、さらに説明する。図2は、本発明の実施形態に係る飽和領域サイズの検出方法について説明するための模式図である。
【0056】
図2には、図1の挿入図12aに示した輝度レベルのグラフ21、22、23にそれぞれ対応する受光量分布を表すグラフ31、32、33が示されている。図2に示したグラフの縦軸は受光量を表し、横軸は、イメージセンサ13上での受光領域の中心からの距離Xを示している。L1、L2、L3は、それぞれグラフ31、32、33のピーク値を表し、Stは、イメージセンサ13の飽和レベルを表す。また、Wa、Wbは、それぞれ飽和レベルStにおけるグラフ31、32の幅を表す。Wa、Wbは、飽和領域の幅に対応し、飽和領域の大きさを表す指標(飽和領域サイズ)の一例である。
【0057】
説明を簡単にするため、以下では、飽和領域サイズとして飽和領域の幅を利用するが、飽和領域サイズは、飽和領域の大きさを表す指標であればよく、例えば、飽和領域の面積、半径、又は直径などであってもよい。
【0058】
グラフ31、32の比較から明らかなように、飽和領域サイズは、発光素子11の輝度レベルに対応している。また、グラフ33のピーク値L3は飽和レベルStに達しないため、この場合には飽和領域は生じず、飽和領域サイズは0になる。このように、発光素子11の輝度レベルが大きいほど飽和領域サイズは大きくなる。そのため、飽和領域サイズから発光素子11の輝度レベルを評価することができる。なお、受光量のピーク値が飽和レベルに達しないときには飽和領域サイズが0になるが、この場合には、イメージセンサ13の出力電荷量に基づいて発光素子11の輝度レベルを評価することができる。
【0059】
次に、図3を参照しながら、イメージセンサの出力と飽和領域サイズとの関係について、さらに説明する。図3は、イメージセンサの出力と飽和領域サイズとの関係について説明するための図表である。
【0060】
図3の図表41は、図2に示したグラフ31、32、33のケースを例に、受光量(ピーク値)と、イメージセンサ13の出力電荷量(以下、センサ出力)と、飽和領域サイズとの関係を示している。Im0は、飽和電荷量を表す。Im(L)は、飽和レベル未満の受光量Lに対応するセンサ出力を表す。なお、ここで言うセンサ出力は、例えば、受光量のピーク値、及び受光領域中心にある画素の輝度値に対応する。
【0061】
グラフ31のケースでは、受光量L1が飽和レベルStより大きく、センサ出力がIm0となるため、飽和領域サイズWaに基づいて輝度レベルが検出される。グラフ32のケースでは、受光量L2が飽和レベルStより大きく、センサ出力がIm0となるため、飽和領域サイズWbに基づいて輝度レベルが検出される。グラフ33のケースでは、受光量L3が飽和レベルStより小さく、センサ出力がIm0より小さいIm(L3)となるため、センサ出力Im(L3)に基づいて輝度レベルを検出することができる。
【0062】
図1に示した例のように、発光素子11とイメージセンサ13との間に拡散板12を設けると、拡散板12による光の散乱によって受光量分布の幅が拡大され(半値幅が大きくなり)、飽和領域サイズを表すWaとWbとの違いが強調される。例えば、発光素子11の輝度レベルをdP(dP>0)だけ変化させたときの受光量分布の幅Wの変化量dW(dW>0)について、拡散板12を設けないときの変化量をdW1、拡散板12を設けたときの変化量をdW2とすると、dW2>dW1の関係がある。そのため、拡散板12を設けることで、飽和領域サイズに基づいて僅かな輝度レベルの違いを見分けることができるようになり、輝度レベルの検出精度が向上する。
【0063】
なお、発光素子11の配光特性が、イメージセンサ13上の受光量分布に十分な広がりをもたらすものである場合(つまり、dW/dPが十分に大きい場合)には、拡散板12を省略してもよい。また、発光素子11とイメージセンサ13との間の一部又は全部の空間を満たす媒体が光を散乱させる特性を有する場合(つまり、dW/dPが十分に大きい場合)にも、拡散板12を省略してもよい。このような拡散板12を省略する変形例についても当然に本発明の実施形態の技術的範囲に属する。
【0064】
上記のように、上述した輝度レベル検出方法を適用すれば、発光素子11の輝度レベルが飽和レベル相当の輝度レベルを超えても、イメージセンサ13からの出力に基づいて輝度レベルを検出することが可能になる。このことは、イメージセンサ13で高輝度光の輝度レベルを検出して、輝度レベルを利用する任意の処理を実行する装置又はシステムの実装を可能にする。
【0065】
(輝度中心の決定方法)
ここで、図5及び図6を参照しながら、受光量がピーク値となるイメージセンサ13上の位置(以下、輝度中心)を決定する方法について説明する。
【0066】
まず、図5を参照する。図5は、輝度中心を決定するための第1の方法(外挿方式)について説明するための模式図である。第1の方法は、イメージセンサの出力から得られる非飽和領域の受光量分布に基づいて、飽和領域の受光量分布を推定し、推定した飽和領域の受光量分布に基づいて輝度中心を決定する方法である。
【0067】
図5に示した受光量の分布を示すグラフ31~33は、図2に示したグラフ31~33に対応する。但し、図5では、イメージセンサ13で検出される受光量の値(検出値)を太線で示している。既に述べたように、受光量が飽和レベルを超える領域では、イメージセンサ13の出力電荷量が一定(飽和電荷量)になる。そのため、図5のグラフ31、32のように、受光量が飽和レベルを超える領域では、イメージセンサ13の出力から受光量の分布が得られず、受光量のピーク値に対応する輝度中心を精度良く求めるには工夫が必要になる。
【0068】
図5に示すように、イメージセンサ13は、受光量が飽和レベル以下の非飽和領域において、受光量の分布を検出することができる。そのため、受光量の分布がガウシアン分布であると仮定し、非飽和領域における受光量の分布をガウス関数でフィッティングすることによって、飽和領域における受光量の分布を推定することができる。つまり、非飽和領域における受光量の検出値に基づいて、飽和領域における受光量の分布を外挿することができる。この方法を適用すれば、外挿部にある受光量のピークに対応する位置を輝度中心と決定することが可能になる。
【0069】
次に、図6を参照する。図6は、輝度中心を決定するための第2の方法(重心推定方式)について説明するための模式図である。第2の方法は、受光領域の受光量分布に基づいて重心を計算し、計算した重心を輝度中心として決定する方法である。ここでは、飽和領域の重心を輝度中心として決定する方法、及び、非飽和領域の受光量をさらに考慮した受光領域の加重重心を輝度中心として決定する方法について説明する。
【0070】
図6には、複数の画素を有するイメージセンサ(例えば、イメージセンサ13)が模式的に示されている。説明を簡単にするために、イメージセンサは、横方向に10画素、縦方向に10画素の画素構成を有するものとし、横方向に各画素を特定するためのインデックスをn、縦方向に各画素を特定するためのインデックスをmと表記する。つまり、ある画素の位置は、座標(n,m)によって特定することができる。図6の例では、各画素に濃淡が付けられ、濃淡によって受光量の大きさを示している。ここでは、説明を簡単にするために、飽和領域の受光量が1、非飽和領域の受光量が0.5であると仮定する。
【0071】
横方向の重心位置をmGと表記し、縦方向の重心位置をnGと表記する。また、インデックスmの位置にある飽和領域の画素数をfmとすると、mGは、以下の式(1)で与えられる。同様に、インデックスnの位置にある飽和領域の画素数をgnとすると、nGは、以下の式(2)で与えられる。
【0072】
【数1】
【0073】
また、横方向の加重重心の位置をMGと表記し、縦方向の加重重心の位置をNGと表記する。そして、インデックスmの位置にある非飽和領域の画素数をFmとし、インデックスnの位置にある非飽和領域の画素数をGmとすると、MGは、以下の式(3)で与えられ、NGは、以下の式(4)で与えられる。なお、以下の式(3)及び式(4)において、Fm、Gnに掛かっている値0.5は、非飽和領域の受光量に対応する重みである。実際には非飽和領域の各画素で受光量が異なるため、式(3)の「0.5×Fm」の部分は、画素位置(m,n)での受光量に対応する重みρmnを用いて、Σρmn(このΣは、nについての和)に置き換えられうる。同様に、式(4)の「0.5×Gn」の部分は、Σρmn(このΣは、mについての和)に置き換えられうる。
【0074】
【数2】
【0075】
図6の例では、横方向の位置(m)に関するパラメータfm、Fmは、以下の表1のようになり、縦方向の位置(n)に関するパラメータgn、Gnは、以下の表2のようになる。表1及び表2に示したパラメータの値を上記の式(1)~式(4)に代入すると、重心位置(mG,nG)は(5.0,5.0)となり、加重重心の位置(MG,NG)は、(4.91,5.04)となる。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
上記の方法を適用することで、重心位置及び加重重心の位置を求めることができ、これらの位置を輝度中心として利用することができる。飽和領域がある程度広い(例えば、事前設定された閾値面積S1より大きい)場合や非飽和領域が非常に小さい場合には重心位置を利用し、飽和領域が比較的小さく、非飽和領域がある程度広い(例えば、事前設定された閾値面積S2より大きい)場合には加重重心を利用するなど、実施の態様に応じて重心と加重重心とを使い分けてよい。また、計算コストや構成の複雑さなどを考慮して、重心及び加重重心のいずれを利用するかを選択してもよい。また、上述した受光量に対応する重みは、受光量そのものであってもよいし、飽和レベルを基準とする相対値であってもよい。例えば、飽和レベル相当の受光量に対する各画素の受光量の比率を重みとして利用してよい。
【0079】
図5及び図6を参照しながら説明した方法を適用することによって、輝度中心を推定することができる。輝度中心が決まると、例えば、輝度中心からの距離に基づいて飽和領域の半径及び直径を計算することができる。また、輝度中心を決めることで、受光側で発光素子11の位置を特定することが可能になる。図1の例では発光素子の数が1つであるが、複数の発光素子を含む素子アレイを利用する場合、各発光素子の位置を受光側で正しく特定できるようにすることで、各発光素子を精度良く分離して認識することができ、例えば、光通信に利用する場合には、多値化による伝送情報量の増大や伝送誤り率の低減によるスループットの向上などが期待できる。
【0080】
以下では、光通信システムへの実装例について説明するが、上述した輝度レベル検出方法の適用範囲は光通信システムに限定されず、光通信以外の技術分野での利用を想定した装置又はシステムにも当然に適用可能である。
【0081】
[2.光通信方法]
以下では、本発明の実施形態に係る光通信方法について説明する。
【0082】
(輝度変調を利用したデータ送信方法の例)
まず、図4を参照しながら、輝度変調を利用したデータ送信方法について説明する。図4は、輝度変調を利用したデータ送信方法の一例を示す図表である。
【0083】
既に説明した通り、上述した輝度レベル検出方法を適用すれば、飽和レベル相当の輝度レベルを超える高輝度の光について、イメージセンサ13の出力に基づいて輝度レベルを検出することが可能になる。従って、送信データに基づいて輝度レベルを変調すれば、受信側では、イメージセンサ13の出力に基づいて送信データを取得することができる。以下では、このような送信方式を「輝度変調」と称することがある。
【0084】
ここで、図4に示した図表42を参照する。図表42は、4値の送信データと輝度レベルとの対応関係を示している。図表42の例では、送信データのデータ値0、1、2、3が、それぞれ輝度レベルに対応する符号値1/4、1/2、3/4、1に対応付けられている。なお、符号値Cは、予め設定された輝度レベルP0と、発光素子11から発せられる光の輝度レベルPとの比(C=P/P0)を表す。符号値Cが指定された場合、発光素子11は、P(P=C*P0)の輝度レベルで発光するように制御される。
【0085】
図4の図表42は、送信データと飽和領域レベルとの対応関係も示している。図表42の例では、送信データのデータ値0、1、2、3が、それぞれ飽和領域サイズW0、W1、W2、W3に対応付けられている。このような対応関係があるため、受信側では、検出された飽和領域サイズから送信データを取得することができる。そのため、図表42の対応関係を利用することで、高輝度光を利用して4値の送信データを送受信することができる。なお、図表42に示した対応関係は一例であり、3値以下又は5値以上の送信データを送信できるように対応関係を変形してもよい。そのような変形例についても当然に本発明の実施形態の技術的範囲に属する。
【0086】
(媒体中での光の伝播特性)
上記の仕組みは様々な環境に適用されうるが、発光素子11とイメージセンサ13との間の少なくとも一部の空間を満たす媒体は適用環境によって異なる。海中では、潮汐や風などの影響で流動する海水が媒体となる。海水には、プランクトンなどの有機物や、海流で巻き上げられる水底の砂泥などの無機物が浮遊している。そのため、海中を伝播する光は、海中の浮遊物によって散乱する。そのため、媒体中での光の伝播特性(散乱特性)は、海流や温度変化などの環境変化に起因して時間的に変動しうる。また、媒体が空気などの気体である場合、気流や温度変化などの環境要因に起因して、媒体中での光の伝播特性が時間的に変動しうる。
【0087】
上記のような媒体中での光の伝播特性の時間的な変動は、発光素子11の側で制御される輝度レベルと、イメージセンサ13の側で検出される受光量との関係性を時間的に変化させる。そのため、一定の輝度レベルで発光しても、検出時点によって受光量が異なることがある。その結果、検出された飽和領域サイズから正しく送信データを取得できないことがある。例えば、飽和領域サイズW0に対応する符号値1/4相当の輝度レベルで発光しても、媒体での伝播特性の変化によって受信側で飽和領域サイズW1に近い値が検出されると、データ値1が送信されたと誤認識されるリスクがある。
【0088】
伝播特性の時間的な変動への対処方法の1つとして、以下では、複数の発光素子を同時に発光させ、複数の受光量の相対関係を評価して送信データを受信する方法を提案する。同時に同じ媒体中を伝播する光の受光量を相対的に評価することで、送信データのデータ値を認識する上で伝播特性の影響を取り除くことができ、光の伝播特性の時間的な変動があっても正しく送信データを受信することが可能になる。以下では、このような受光量の相対評価に基づく送受信方式を「補符号ペア方式」と称することがある。
【0089】
(補符号ペア方式に利用可能な発光部の構成例)
ここで、図7を参照しながら、本発明の実施形態に係る補符号ペア方式の光通信方法に利用可能な発光部の構成例について説明する。図7は、本発明の実施形態に係る補符号ペア方式の光通信方法に利用可能な発光部の構成例を示す模式図である。
【0090】
図7には、発光部(発光素子51a、51b)からの光が拡散板52を透過してイメージセンサ53に入射する様子が示されている。発光素子51a、52bのそれぞれは、上記の発光素子11と実質的に同じ構成を有する。また、拡散板52は、上記の拡散板12と実質的に同じ構成を有する。また、イメージセンサ53は、上記のイメージセンサ13と実質的に同じ構成を有する。
【0091】
以下では、説明を容易にするため、発光素子51aを「主素子」、発光素子51bを「補素子」と称することがある。また、発光素子51aからの光に対応する飽和領域サイズをWmと表記し、発光素子51bからの光に対応する飽和領域サイズをWsと表記する。また、発光素子51aの輝度レベルをPm、発光素子51bの輝度レベルをPsと表記する。発光素子51a、51bは、発光色が同じであり、輝度レベルPm、Psの和(Pm+Ps)は一定値になるように制御される。この制御により、データ送信中でも明るさが一定に維持され、データ送信に起因するフリッカーの発生も抑制される。そのため、発光部(発光素子51a、51b)を照明として利用することが可能になる。
【0092】
(拡散板52の配置について)
図7の例において、発光素子51a、51bは、イメージセンサ53の受光面に平行な面(X-Y面)上に配置される。発光素子51a、51bの間隔D1は、例えば、約30mm~60mmに設定される。また、発光素子51a、51bの配置面と拡散板52との間の距離D2は、例えば、約15mm~30mmに設定される。
【0093】
既に説明した通り、拡散板52による受光量分布の拡幅効果によって、発光素子51a、51bのそれぞれからの光について輝度レベルの検出精度が向上する。一方、拡幅によって2つの受光領域が重複すると、重複部分で受光量が増幅され、実際より大きな飽和領域サイズが検出されることがある。その結果、輝度レベルの検出精度が低下し、送信データの受信誤り率が増大するリスクがある。そのため、十分に精度良く輝度レベルを検出できるように、拡散板52による受光量分布の拡幅効果を制御することが望ましい。
【0094】
拡散板52による受光量分布の拡幅効果は、発光素子51a、51bと拡散板52との間の距離D2を調整することによって制御することができる。距離D2が大きくなるほど拡幅効果が大きくなり、距離D2が小さくなるほど拡幅効果は小さくなる。また、受光領域の重複は、発光素子51a、51bの間隔D1にも依存する。そのため、D1、D2を好適な値に設定することが、輝度レベルの検出精度を高める上で重要になる。上述したD1、D2の設定例によれば、重複部分の発生を十分に抑制しつつ、受光量分布の拡幅効果によって十分に高い輝度レベルの検出精度を達成することができる。
【0095】
以下、上述した発光素子51a、51bの発光制御方法及びデータ受信方法について、具体例を参照しながら説明する。
【0096】
(発光制御方法及びデータ受信方法:2値送信データ)
まず、図8を参照しながら、補符号ペア方式で2値の送信データを送信する例について説明する。図8は、補符号ペア方式で2値の送信データを送信する場合の発光制御方法及びデータ受信方法について説明するための図表である。
【0097】
図8の図表61は、2値の送信データと、発光素子51a、51bの輝度レベルとの対応関係を示している。以下、表記を簡単にするため、主素子の輝度レベルに対応する符号値を「主符号値」と称し、補素子の輝度レベルに対応する符号値を「補符号値」と称することがある。また、主符号値と補符号値の組を「符号値ペア」と称することがある。
【0098】
図表61の例では、送信データのデータ値0が符号値ペア{0,1}(主符号値0、補符号値1)に対応付けられ、送信データのデータ値1が符号値ペア{1,0}(主符号値1、補符号値0)に対応付けられている。符号値ペア{Cm,Cs}が指定された場合、発光素子51aは、Pm(Pm=Cm×P0+α)の輝度レベルで発光するように制御される。また、発光素子51bは、発光素子51aと同時に、Ps(Ps=Cs×P0+α)の輝度レベルで発光するように制御される。なお、αは、0以上の値である。例えば、α>0に設定すると、常に各発光素子が発光している状態になり、符号値に依らず各発光素子の位置を受信側で認識することが容易になる。
【0099】
送信されるデータ値に依らず(Cm+Cs)は一定値(図表61の例では1)に維持される。そのため、輝度レベルの和(Pm+Ps)は常に一定になり、データ送信中でも全体として明るさは変化せず、かつフリッカーの発生も抑制される。
【0100】
また、図表61は、送信データと、飽和領域サイズの相対関係(識別方法)との対応関係も示している。図表61の例では、発光素子51aからの光に対応する飽和領域サイズWmと、発光素子51bからの光に対応する飽和領域サイズWsとの大小関係に基づいてデータ値を識別する。データ値が0の場合、発光素子51aの輝度レベルPmが、発光素子51bの輝度レベルPsより小さいため、受信側ではWm<Wsの関係が成り立つ。データ値が1の場合、発光素子51aの輝度レベルPmが、発光素子51bの輝度レベルPsより大きいため、受信側ではWm>Wsの関係が成り立つ。従って、受信側では、検出された飽和領域サイズの大小関係に基づいて送信データのデータ値を識別可能である。
【0101】
発光素子51a、51bからの光は、同時に同じ媒体を伝播してイメージセンサ53に到達する。そのため、媒体中での光の伝播特性が時間的に変化しても、発光素子51a、51bからの光は同じ影響を受けるので、発光素子51a、51bに対応する2つの受光量の大小関係は維持される。例えば、データ値0を送信する場合(Pm<Ps)、媒体中での光の減衰量が時間的に変化しても、Wm<Wsの関係は維持される。同様に、データ値1を送信する場合(Pm>Ps)、媒体中での光の減衰量が時間的に変化しても、Wm>Wsの関係は維持される。つまり、補符号ペア方式を適用すれば、光の伝播特性が時間的に変動しても、正しく送信データを受信することが可能になる。
【0102】
(発光制御方法及びデータ受信方法:4値送信データ)
図8の図表61は2値の送信データを送信する具体的な方法を示していたが、上記の補符号ペア方式は、多値データ送信にも適用することができる。その一例として、図9を参照しながら、補符号ペア方式で4値の送信データを送信する方法について説明する。図9は、補符号ペア方式で4値の送信データを送信する場合の発光制御方法及びデータ受信方法について説明するための図表である。
【0103】
図9の図表62は、4値の送信データ(2ビット値)と、発光素子51a、51bの輝度レベルとの対応関係を示している。図表62の例では、送信データのデータ値「00」が符号値ペア{0,1}(主符号値0、補符号値1)に対応付けられ、送信データのデータ値「01」が符号値ペア{1/4,3/4}(主符号値1/4、補符号値3/4)に対応付けられている。また、送信データのデータ値「10」が符号値ペア{3/4,1/4}(主符号値3/4、補符号値1/4)に対応付けられ、送信データのデータ値「11」が符号値ペア{1,0}(主符号値1、補符号値0)に対応付けられている。
【0104】
符号値ペア{Cm,Cs}が指定された場合、発光素子51aは、Pm(Pm=Cm×P0+α)の輝度レベルで発光するように制御される。また、発光素子51bは、発光素子51aと同時に、Ps(Ps=Cs×P0+α)の輝度レベルで発光するように制御される。また、送信されるデータ値に依らず(Cm+Cs)は一定値(図表62の例では1)に維持される。そのため、輝度レベルの和(Pm+Ps)は常に一定になり、データ送信中でも全体として明るさは変化せず、かつフリッカーの発生も抑制される。
【0105】
また、図表62は、送信データと、飽和領域サイズの相対関係(識別方法)との対応関係も示している。図表62の例では、発光素子51aからの光に対応する飽和領域サイズWmと、発光素子51bからの光に対応する飽和領域サイズWsとの大小関係、及び、飽和領域サイズWm、Wsの差分絶対値ΔW(ΔW=|WmーWs|)に基づいて送信データのデータ値を識別する。なお、|…|は絶対値を表す。また、Thは、予め設定された閾値を表す。
【0106】
図表62の例において、送信データのデータ値が「00」又は「01」の場合、発光素子51aの輝度レベルPmが、発光素子51bの輝度レベルPsより小さいため、受信側ではWm<Wsの関係が成り立つ。また、送信データのデータ値が「10」又は「11」の場合、発光素子51aの輝度レベルPmが、発光素子51bの輝度レベルPsより大きいため、受信側ではWm>Wsの関係が成り立つ。従って、受信側では、検出された飽和領域サイズの大小関係に基づいて送信データのデータ値が、「00」又は「01」であるか、或いは、「10」又は「11」であるかを識別することができる。
【0107】
また、送信データのデータ値が「00」又は「11」の場合、発光素子51a、51bの輝度レベルに対応する2つの符号値の差分絶対値ΔCは1である(10ー1|=|1ー0|=1)。一方、送信データのデータ値が「01」又は「10」の場合、発光素子51a、51bの輝度レベルに対応する2つの符号値の差分絶対値ΔCは1/2である(|1/4ー3/4|=|3/4ー1/4|=1/2)。従って、データ値vに対応する飽和領域サイズの差分絶対値をΔW(v)と表記すると、ΔW(00)>ΔW(01)、及びΔW(11)>ΔW(10)の関係が成り立つ。
【0108】
例えば、ΔCが1の場合に対応するΔWと、ΔCが1/2の場合に対応するΔWとの中間値を閾値Thとして予め設定しておくことで、受信側では、ΔWとThとの比較に基づいて、データ値が「00」又は「01」のいずれであるかを判別すること、及びデータ値が「10」又は「11」のいずれであるかを判別することが可能になる。従って、上述した飽和領域サイズの大小関係に基づく判定処理と、飽和領域サイズの差分絶対値に基づく判定処理とを組み合わせることで、4値の送信データのデータ値を識別できる。
【0109】
上記のように、補符号ペア方式は4値のデータ送信にも適用することができる。また、符号値の設定を{0,1/8,3/8,5/8,7/8,1}などに細分化することで、さらなる多値化も可能である。多値化によって一度に送信できるデータ量が増えるため、スループットが向上する。さらにスループットを向上させる方法として、以下では、発光素子51a、51bのペアと同じ構成を有する発光素子のペア(以下、素子ペア)を複数設け、複数の素子ペアを同時に利用してデータ送信する方法を提案する。
【0110】
(素子アレイの構成例)
一例として、図10を参照しながら、複数の発光素子をマトリックス配置にした発光部63の構成について説明する。図10は、複数の発光素子をマトリックス配置にした発光部の構成例を示す模式図である。
【0111】
図10に示すように、発光部63は、複数の発光素子を含む。X方向に間隔dXを空けて並べられた発光素子の一群は1つの素子アレイを形成する。発光部63には、Y方向に間隔dYを空けて複数の素子アレイが並べられている。以下では、複数の発光素子を縦横に並べて配置した構成を「素子マトリックス」と称し、その配置を「マトリックス配置」と称することがある。間隔dX、dYは、例えば、約30mm~60mmに設定される。
【0112】
発光部63は、複数の素子ペアを含む。各素子ペアを構成する2つの発光素子は、上述した発光素子51a、51bのペアと同様に、一方が主素子として動作し、他方が補素子として動作する。例えば、各素子ペアは、図8の図表61又は図9の図表62に示した方式で動作してよい。なお、素子ペアの動作はこの例に限定されず、例えば、一部の素子ペアが第1の方式(例えば、図表61の方式)で動作し、残りの素子ペアが第2の方式(例えば、図表62の方式)で動作してもよい。
【0113】
図10に示した例のように、複数の素子ペアをマトリックス配置にし、各素子ペアを補符号ペア方式で動作させることで、各タイムスロットで送信可能なデータ量を増やすことができる。なお、図10の例では複数の発光素子が1つの平面に配置されているが、例えば、四面体又は多面体の各側面又は一部側面に、発光部63と同様に複数の発光素子を配置してもよい。四面体又は多面体に発光素子を配置することで、様々な方向からのデータ受信に対応することが可能になる。発光素子の配置に関する上記のような変形例についても当然に本発明の実施形態の技術的範囲に属する。
【0114】
(色多重送信)
次に、補符号ペア方式を色多重送信に拡張する方法について説明する。上述したマトリックス配置で、各素子ペアの発光色を同じに設定する場合、発光素子の間隔(dX、dY)をある程度確保することができれば、受光領域の重複部分の発生を十分に抑制できる。また、隣接する発光素子の発光色が異なる場合、カラーフィルタで各発光素子からの光を分離することができるため、発光素子の間隔が短くても受光領域の重複による影響は小さい。以下では、発光色の違いを利用した多重送信への拡張について説明する。
【0115】
まず、図11を参照しながら、補符号ペア方式を色多重送信に拡張するための発光部70の構成について説明する。図11は、補符号ペア方式を色多重送信に拡張する場合の発光部の構成例を示す模式図である。
【0116】
図11に示すように、発光部70は、3つの素子ペア71、72、73を有する。なお、説明を簡単にするために、素子ペアの数が3の例を示しているが、素子ペアの数は2又は4以上であってもよい(例えば、図14を参照)。
【0117】
素子ペア71は、発光色が第1の発光色(R:赤色)である2つの発光素子71a、71bを含む。また、素子ペア72は、発光色が第2の発光色(G:緑色)である2つの発光素子72a、72bを含む。また、素子ペア73は、発光色が第3の発光色(B:青色)である2つの発光素子73a、73bを含む。
【0118】
各素子ペアに含まれる2つの発光素子の間の間隔dYは、受光領域の重複による検出精度の低下を避けるため、例えば、約30mm~60mmに設定される。一方、隣接する素子ペア間の間隔dXは、隣接する素子ペアの発光色が異なるため、間隔dYより小さい値に設定されうる。但し、カラーフィルタは、阻止色以外の色を持つ光の透過を完全に阻止できるわけではない。そのため、間隔dYは、阻止色以外の色を持つ光の漏れ込み(所謂クロストーク)が発生しない程度の範囲で設定されることが好ましい。
【0119】
素子ペア71、72、73のそれぞれの動作は、図7に例示した発光素子51a、51bと同様である(例えば、図8及び図9を参照)。例えば、素子ペア71の発光素子71a、71bは、輝度レベルの和が一定になるように制御される。素子ペア72、73についても同様である。そのため、1つの素子ペアに注目すれば、データ送信中も明るさは一定であり、フリッカーの発生も抑制されている。しかし、素子ペア71、72、73の発光色が互いに異なるため、データ送信に伴って同時に発光する素子ペアの組み合わせが変わると、明るさ及び色味が時間的に変化してしまう。そこで、以下では、補色を利用して明るさ及び色味の時間的な変化を除去する方法を提案する。
【0120】
(補色について)
ここで、図12を参照しながら、主色と補色との関係について説明する。図12は、主色と補色との関係について説明するための図表である。
【0121】
図12の図表81に示すように、赤色Rの補色は、青緑色(G+B)である。ここでは、表記を簡単にするため、緑色Gと青色Bとの混色を(G+B)と表記している。なお、他の混色についても同様に表記する。緑色Gの補色は、赤紫色(B+R)である。青色Bの補色は、橙色(R+G)である。図表81には、主色と補色を入れ替えた組み合わせも示している。また、非発光の状態を黒色とすると、黒色(非発光)の補色は、白色(R+G+B)となるため、図表81には、黒色と白色の組み合わせも示している。
【0122】
上記のように、補色は、主色と混合することで白色になる。そのため、主色及び補色を同時に同じ輝度レベルで発光することで全体として白色に見える。つまり、送信データに依らず、素子ペア71、72、73を同時に同じ輝度レベルで発光すれば、発光部70からの光は常に白色に見え、明るさ及び色味の時間的な変化も生じない。
【0123】
なお、一部の素子ペアの輝度レベル(2つの発光素子の輝度レベルの和)を調整すれば、発光部70からの光の色味を調整することができる。例えば、素子ペア71の輝度レベルを、素子ペア72、73の輝度レベルより僅かに大きくすれば、発光部70からの光は、赤みがかった暖色系の白色に見えるようになる。同様に、素子ペア73の輝度レベルを、素子ペア71、72の輝度レベルより僅かに大きくすれば、発光部70からの光は、青みがかった寒色系の白色に見えるようになる。
【0124】
以下では、上述した発光部70の発光制御について、さらに説明する。
【0125】
(発光制御方法)
図13を参照しながら、補符号ペア方式で色多重送信する場合の発光制御方法について説明する。図13は、補符号ペア方式で色多重送信する場合の発光制御方法について説明するための図表である。
【0126】
図13の図表82には、各発光色について、各タイムスロットにおける送信データと、輝度レベルとの対応関係が示されている。タイムスロットはデータ送信用のクロック周期に対応し、各タイムスロットで1単位のデータ値(例えば、2値データ送信の場合には1ビットのビット値、4値データ送信の場合には2ビットのビット値)が送信される。
【0127】
図表82の例では、図9の図表62に示した4値データ送信に対応し、タイムスロットt(t=0,1,2,3,…)のそれぞれにおいて、各発光色で、2ビットの送信データが送信される。従って、図表82の例では、各タイムスロットで、発光部70から6ビットの送信データが送信される。
【0128】
例えば、タイムスロット0では、発光色Rに対応する素子ペア71がデータ値「00」を送信する。このとき、発光素子71a(主素子)の輝度レベルに対応する符号値は0であり、発光素子71b(補素子)の輝度レベルに対応する符号値は1である。なお、図表82では、表記を簡単にするために、主素子に対応する符号値と、補素子に対応する符号値との組み合わせを{主,補}と表記している。素子ペア71と同様に、タイムスロット0では、発光色Gに対応する素子ペア72がデータ値「10」を送信し、発光色Bに対応する素子ペア73がデータ値「11」を送信する。
【0129】
上記のように、タイムスロット0で素子ペア71、72、73から送信されるデータ値は異なる。しかし、送信データに依らず各素子ペアの輝度レベルは一定に維持されるから、R、G、Bの光が同時に一定の輝度レベルで発光部70から発せられることになる。そのため、発光部70から発せられる光は白色に見える。図表82の例において、タイムスロット1では、タイムスロット0とは異なるデータ値が各素子ペアから送信されるが、R、G、Bの光が同時に一定の輝度レベルで発せられるため、タイムスロット0の場合と同様に、発光部70から発せられる光は白色に見える。
【0130】
上記のように、送信データに依らず各素子ペアの輝度レベルが一定に維持されるように制御し、さらに、各タイムスロットで素子ペア71、72、73が発光されるようにすることで、データ送信時も発光部70からの光の明るさ及び色味が一定になる。このように、データ送信中も明るさ及び色味が一定に維持されることで、発光部70を照明として利用することが可能になる。また、異なる色に異なる送信データを割り当てることができるため、各タイムスロットで送信可能なデータ量が増加し、スループットが向上する。また、同じ発光色の素子ペアを並べたマトリックス配置に比べ、異なる発光色を有する隣接する素子ペアの間隔を短くして素子の集積度を高めることができるなどの利点もある。
【0131】
なお、図13の図表82では、図9の図表62に対応する4値データ送信の例を示したが、図8の図表61に対応する2値データ送信も上記の色多重送信に適用可能である。また、図表82の例では、R、G、Bの3色で多重送信しているが、RとGのみ、GとBのみ、BとRのみの2色に対応する素子ペアだけを用いて多重送信することも原理的には可能である。この場合には、発光部70からの光の色が白色ではなく2色の混合色になるが、送信データに依らず明るさ及び色味は一定に維持される。
【0132】
また、色味を調整するために特定の発光色の輝度レベルを増減させることも可能である。例えば、素子ペア71について、符号値ペア{Cm,Cs}が指定されると、発光素子71aは、Pm(Pm=Cm×P0+α)の輝度レベルで発光するように制御され、発光素子71bは、発光素子71aと同時に、Ps(Ps=Cs×P0+α)の輝度レベルで発光するように制御される。このとき、P0を増減させることで、発光色Rに対応する素子ペア71の輝度レベルを調整することができる。この調整を実行しても、発光部70からの光の明るさ及び色味は、送信データに依らず一定に維持される。他の発光色についても同様に調整することができ、その調整によって好みの色味を指定することができる。
【0133】
(発光素子の配置例)
これまでは、説明を簡単にするために、3つの素子ペア71、72、73を含む発光部70を例に説明を進めてきたが、上述した色多重送信の仕組みは、4つ以上の素子ペアを含む様々な素子配置に拡張可能である。そこで、以下では、図14を参照しながら、上記の色多重送信を適用可能な発光素子の配置例について、さらに説明する。図14は、発光素子の配置例について説明するための模式図である。
【0134】
図14に例示した発光部83の配置例は、所謂ベイヤー配列である。この場合、発光色Gについてのみ同じ発光色の発光素子が斜め方向に隣接し、発光色R、Bについては、同じ発光色の発光素子が隣接することはない。例えば、同じ発光色を持つ隣接する発光素子の間隔dUは、約30mm~60mmに設定されうる。この場合、X方向又はY方向に隣接する発光素子の間隔はdUより小さくなるが、発光色が異なるため、受光領域の重複が十分に小さければカラーフィルタによる色分離によって重複による検出精度の低下を十分に抑制することは可能である。
【0135】
発光部83の配置例では、最も近い同一色の2つの発光素子が素子ペアに設定される(図14の符号a、b、cを参照)。素子ペアの設定方法は、この例に限定されないが、ベイヤー配列の場合、例えば、発光色Gの素子ペアは斜め方向に隣接する発光素子のペアに設定され、発光素子R、Bの素子ペアは、X方向又はY方向で最も近い同色の発光素子のペアに設定されうる。
【0136】
なお、どの発光素子が素子ペアを成すかを示した主色テーブルを予め用意し、受信側で主色テーブルを参照して素子ペアを認識する構成にしてもよい。例えば、主色テーブルには、どの位置にある発光素子が主素子で、どの位置にある発光素子が、その主素子とペアを成す補素子であるかを示す情報が含まれる。この主色テーブルを利用すれば、素子ペアを成す発光素子の組み合わせを任意に設定及び変更することが可能になる。
【0137】
上記の説明ではベイヤー配列を例示したが、同様にして、赤配列ベイヤー配列、青配列ベイヤー配列など、他の素子配置を適用することも可能である。また、図11に例示した発光部70と同じ素子ペアのブロックをX方向に複数並べてアレイ配置とする配置形態や、そのアレイ配置の素子群をY方向に複数並べてマトリックス配置とする配置形態なども利用可能である。このように、素子配置に関しても様々な変形が可能であり、そうした変形例についても当然に本発明の実施形態の技術的範囲に属する。
【0138】
[3.光通信システム]
次に、図15を参照しながら、本発明の実施形態に係る光通信システムの構成例について説明する。図15は、本発明の実施形態に係る光通信システムの構成例を模式的に示したブロック図である。図15に示した光通信システム100は、本発明の実施形態に係る光通信システムの一例である。
【0139】
図15に示すように、光通信システム100は、送信装置101と、受信装置102とを含む。送信装置101は、発光部111と、拡散板112と、第1の制御部113と、記憶部114とを含む。受信装置102は、イメージセンサ121と、第2の制御部122と、記憶部123とを含む。
【0140】
送信装置101は、例えば、照明装置(ストロボ、照明器具、ヘッドライト、テールランプ、交通信号機、街灯など)、照明機能を有するコンピュータ、照明装置にコンピュータを接続した照明システム、又は光通信装置などであってよい。受信装置102は、例えば、撮像装置(デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、防犯カメラ、ドライブレコーダなど)、撮像機能を有するコンピュータ(PC(Personal Computer)、スマートフォン、タブレット端末など)、撮像装置にコンピュータを接続した撮像システム、又は光通信装置などであってよい。
【0141】
発光部111は、1つ以上の発光素子を含む光源デバイスである。発光素子は、例えば、LED又はLDなどである。拡散板112は、LSDなどの光拡散シート又は光拡散フィルムである。第1の制御部113、及び第2の制御部122は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphic Processing Unit)などの1つ以上のプロセッサである。
【0142】
記憶部114、123は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気記録媒体、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどの1つ以上のメモリである。メモリは、コンピュータ可読記憶媒体の一例であり、送信装置101及び受信装置102の少なくとも一方に対する取り付け又は取り外しが可能なリムーバブルメモリであってよい。イメージセンサ121は、CCD又はCMOSイメージセンサなどである。
【0143】
送信装置101及び受信装置102の少なくとも一方には、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、ELD(Electro-Luminescence Display)などのディスプレイデバイス(図示せず)や、有線又は無線LAN(Local Area Network)などに接続するための通信インターフェース(図示せず)や、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)などの外部接続インターフェース(図示せず)などが設けられていてもよい。
【0144】
また、送信装置101の発光部111及び拡散板112と、送信装置101の第1の制御部113及び記憶部114とは物理的に別個の装置として実装されてもよい。同様に、受信装置102のイメージセンサ121と、受信装置102の第2の制御部122及び記憶部123とは物理的に別個の装置として実装されてもよい。また、第1の制御部113が有する複数の機能を複数のソフトウェア又はハードウェアモジュールに分散して実装してもよい。同様に、第2の制御部122が有する複数の機能を複数のソフトウェア又はハードウェアモジュールに分散して実装してもよい。このように、様々な実装形態が可能であり、そのような実装形態についても当然に本発明の実施形態の技術的範囲に属する。
【0145】
発光部111は、第1の制御部113の制御を受けて、送信データに基づいて変調された光を発する。図1に例示した発光素子11を含む発光部、図7に例示した発光素子51a、51bを含む発光部、図10に例示した発光部63、図11に例示した発光部70、及び図14に例示した発光部83は、発光部111の具体例である。発光部111の具体的な機能については、これら具体例に関する上記の説明を参照されたい。
【0146】
発光部111からの光は、拡散板112を透過する。図1に例示した拡散板12、及び図7に例示した拡散板52は、拡散板112の具体例である。拡散板112の具体的な機能については、これら具体例に関する上記の説明を参照されたい。
【0147】
拡散板112を透過した光は、受信装置102のイメージセンサ121へと到達する。イメージセンサ121の前段には、例えば、カラーフィルタ、赤外線カットフィルタ、プリズム、レンズなどの光学系(図示せず)が別途設けられてよい。また、イメージセンサ121は、複数枚のイメージセンサで構成されていてよい。複数枚のイメージセンサで構成する場合、受信装置102に入射する光は、プリズムなどの光学系によって、各色成分に分離されると共に、対応するイメージセンサへと導光される。
【0148】
第1の制御部113は、送信データに基づいて、発光部111に含まれる各発光素子の輝度レベルを決定する。また、第1の制御部113は、決定した輝度レベルに基づいて発光部111の発光素子を駆動する。
【0149】
例えば、第1の制御部113は、発光部111の形態に応じて、図4に例示した図表42、図8に例示した図表61、図9に例示した図表62、及び図13に例示した図表82のような送信方式で各発光素子の輝度レベルを決定し、決定した輝度レベルで各発光素子の発光を制御する。輝度レベルの決定及び発光制御の具体例については、これら具体例に関する上記の説明を参照されたい。なお、図4の図表42、図8の図表61、及び図9の図表62に例示したような、送信データと輝度レベルとの対応関係を示す情報は、記憶部114、123に予め格納される。
【0150】
また、記憶部114には、送信装置101の動作を制御するためのコンピュータプログラムが格納されていてよい。この場合、第1の制御部113は、記憶部114からコンピュータプログラムを読み出し、コンピュータプログラムに含まれる命令を実行することによって送信装置101の動作を制御する。同様に、記憶部123には、受信装置102の動作を制御するためのコンピュータプログラムが格納されていてよい。この場合、第2の制御部122は、記憶部123からコンピュータプログラムを読み出し、コンピュータプログラムに含まれる命令を実行することによって受信装置102の動作を制御する。
【0151】
第2の制御部122は、発光部111からの光がイメージセンサ121で受光されると、発光部111の各発光素子からの光を受光した受光領域について、受光量がイメージセンサ121の飽和レベルより大きい飽和領域を検出する。そして、第2の制御部122は、図2を参照しながら説明したように、発光部111の各発光素子からの光の輝度レベルを表す検出値として、対応する飽和領域の大きさ(飽和領域サイズ)を決定する。
【0152】
また、第2の制御部122は、発光部111の各発光素子に対応する飽和領域サイズに基づいて送信データを復元する。
【0153】
例えば、図4に例示した図表42の送信方式を適用する場合、第2の制御部122は、予め設定されている送信データと飽和領域サイズとの関係に基づいて、検出された飽和領域サイズから送信データを復元する。また、図8に例示した図表61の送信方式を適用する場合、第2の制御部122は、素子ペアに対応する飽和領域サイズの大小関係に基づいて送信データを復元する。また、図9に例示した図表62の送信方式を適用する場合、第2の制御部122は、素子ペアに対応する飽和領域サイズの大小関係と、飽和領域サイズの差分絶対値とに基づいて送信データを復元する。色多重送信を適用する場合、第2の制御部122は、各色について上記の復元方法を実施する。
【0154】
上記のように、図15に例示した光通信システムを利用することで、上述した輝度レベル検出方法を基礎とし、上述した輝度変調、補符号ペア方式、色多重送信、及びそれらの各種変形例を実装することが可能になる。なお、説明を容易にするために光通信システムの例を示したが、上記の輝度レベル検出方法のみを実装して、データを通信する以外の用途で主に利用するシステムを構築することも可能である。このような変形例についても当然に本発明の実施形態の技術的範囲に属する。
【0155】
(送信装置の動作例)
次に、図16を参照しながら、送信装置の動作例(補符号ペア方式での動作)について説明する。図16は、送信装置の動作例について説明するためのフロー図である。
【0156】
(S101、S104)タイムスロット0,1,…,Tのそれぞれにおいて、送信装置101は、S102以降の処理を実行して、受信装置102へと送信データを送信する。タイムスロットTについてS102以降の処理が完了すると、図16に示した一連の処理は終了する。
【0157】
(S102、S103)第1の制御部113は、送信データに基づいて輝度レベルを決定する。発光部111の発光色が1つの場合、第1の制御部113は、例えば、図8の図表61又は図9の図表62に例示した対応関係に基づいて、送信データに対応する輝度レベルを決定する。また、発光部111の発光色が2以上の場合、第1の制御部113は、例えば、図13に例示した図表82のように、各発光色について送信データに対応する輝度レベルを決定する。そして、第1の制御部113は、決定した輝度レベルに基づいて素子ペアの各発光素子を制御する。
【0158】
(受信装置の動作例:2値データ受信動作)
次に、図17を参照しながら、受信装置の動作例(2値データ受信動作)について説明する。図17は、受信装置の動作例(2値データ受信動作)について説明するためのフロー図である。ここでは、図8に示した図表61の方式を例に説明する。
【0159】
(S111、S116)タイムスロット0,1,…,Tのそれぞれにおいて、受信装置102は、S112以降の処理を実行して送信データを復元し、受信データとして出力する。タイムスロットTについてS112以降の処理が完了すると、図17に示した一連の処理は終了する。
【0160】
(S112)第2の制御部122は、素子ペアの2つの発光素子(主素子、補素子)にそれぞれ対応する飽和領域サイズWm、Wsを検出する。例えば、第2の制御部122は、各発光素子に対応する受光領域のうち、飽和電荷量の電荷が出力されるイメージセンサ121上の領域を飽和領域として検出し、検出された飽和領域の幅を飽和領域サイズとして決定する。なお、飽和領域サイズは、幅以外でもよく、飽和領域の面積、半径、又は直径などでもよい。
【0161】
(S113)第2の制御部122は、Wm>Wsの関係を満たすか否かを判定する。Wm>Wsの関係を満たす場合、処理はS114へと進む。一方、Wm>Wsの関係を満たさない場合(Wm<Wsの関係を満たす場合)、処理はS115へと進む。
【0162】
(S114)第2の制御部122は、主素子の輝度レベルに対応する符号値(主符号)が「1」であり、補素子の輝度レベルに対応する符号値(補符号)が「0」であると認識する。そして、第2の制御部122は、主符号「1」、補符号「0」に対応する受信データ「1」を出力する。S114の処理が完了すると、処理はS116へと進む。但し、タイムスロットTについてS114の処理が完了すると、図17に示した一連の処理は終了する。
【0163】
(S115)第2の制御部122は、主素子の輝度レベルに対応する符号値(主符号)が「0」であり、補素子の輝度レベルに対応する符号値(補符号)が「1」であると認識する。そして、第2の制御部122は、主符号「0」、補符号「1」に対応する受信データ「0」を出力する。S115の処理が完了すると、処理はS116へと進む。但し、タイムスロットTについてS115の処理が完了すると、図17に示した一連の処理は終了する。
【0164】
(受信装置の動作例:4値データ受信動作)
次に、図18及び図19を参照しながら、受信装置の動作例(4値データ受信動作)について説明する。図18は、受信装置の動作例(4値データ受信動作)について説明するための第1のフロー図である。図19は、受信装置の動作例(4値データ受信動作)について説明するための第2のフロー図である。ここでは、図9に示した図表62の方式を例に説明する。
【0165】
(S121、S130)タイムスロット0,1,…,Tのそれぞれにおいて、受信装置102は、S122以降の処理を実行して送信データを復元し、受信データとして出力する。タイムスロットTについてS122以降の処理が完了すると、図18及び図19に示した一連の処理は終了する。
【0166】
(S122)第2の制御部122は、素子ペアの2つの発光素子(主素子、補素子)にそれぞれ対応する飽和領域サイズWm、Wsを検出する。例えば、第2の制御部122は、各発光素子に対応する受光領域のうち、飽和電荷量の電荷が出力されるイメージセンサ121上の領域を飽和領域として検出し、検出された飽和領域の幅を飽和領域サイズとして決定する。なお、飽和領域サイズは、幅以外でもよく、飽和領域の面積、半径、又は直径などでもよい。
【0167】
(S123)第2の制御部122は、Wm>Wsの関係を満たすか否かを判定する。Wm>Wsの関係を満たす場合、処理はS124へと進む。一方、Wm>Wsの関係を満たさない場合(Wm<Wsの関係を満たす場合)、処理はS127へと進む。
【0168】
(S124)第2の制御部122は、|WmーWs|>Thの関係を満たすか否かを判定する。Thは、予め設定された閾値である。Thの具体的な設定方法については、図8の図表62に関する上記の説明を参照されたい。|WmーWs|>Thの関係を満たす場合、処理はS125へと進む。|WmーWs|>Thの関係を満たさない場合(|WmーWs|<Thの関係を満たす場合)、処理はS126へと進む。
【0169】
(S125)第2の制御部122は、主素子の輝度レベルに対応する符号値(主符号)が「1」であり、補素子の輝度レベルに対応する符号値(補符号)が「0」であると認識する。そして、第2の制御部122は、主符号「1」、補符号「0」に対応する受信データ「11」を出力する。S125の処理が完了すると、処理はS130へと進む。但し、タイムスロットTについてS125の処理が完了すると、図18及び図19に示した一連の処理は終了する。
【0170】
(S126)第2の制御部122は、主素子の輝度レベルに対応する符号値(主符号)が「3/4」であり、補素子の輝度レベルに対応する符号値(補符号)が「1/4」であると認識する。そして、第2の制御部122は、主符号「3/4」、補符号「1/4」に対応する受信データ「10」を出力する。S126の処理が完了すると、処理はS130へと進む。但し、タイムスロットTについてS126の処理が完了すると、図18及び図19に示した一連の処理は終了する。
【0171】
(S127)第2の制御部122は、|WmーWs|>Thの関係を満たすか否かを判定する。Thは、予め設定された閾値である。Thの具体的な設定方法については、図8の図表62に関する上記の説明を参照されたい。|WmーWs|>Thの関係を満たす場合、処理はS128へと進む。|WmーWs|>Thの関係を満たさない場合(|WmーWs|<Thの関係を満たす場合)、処理はS129へと進む。
【0172】
(S128)第2の制御部122は、主素子の輝度レベルに対応する符号値(主符号)が「0」であり、補素子の輝度レベルに対応する符号値(補符号)が「1」であると認識する。そして、第2の制御部122は、主符号「0」、補符号「1」に対応する受信データ「00」を出力する。S128の処理が完了すると、処理はS130へと進む。但し、タイムスロットTについてS128の処理が完了すると、図18及び図19に示した一連の処理は終了する。
【0173】
(S129)第2の制御部122は、主素子の輝度レベルに対応する符号値(主符号)が「1/4」であり、補素子の輝度レベルに対応する符号値(補符号)が「3/4」であると認識する。そして、第2の制御部122は、主符号「1/4」、補符号「3/4」に対応する受信データ「01」を出力する。S129の処理が完了すると、処理はS130へと進む。但し、タイムスロットTについてS129の処理が完了すると、図18及び図19に示した一連の処理は終了する。
【0174】
上記のように、光通信システム100を適用することで、上述した輝度レベル検出方法、及びこれに基づく補符号ペア方式を実装することができる。なお、上記の説明では、説明を容易にするため、図8に例示した図表61、及び図9に例示した図表62の方式を参照したが、本発明の実施形態に係る技術の適用範囲はこれに限定されず、送信データを飽和領域サイズの相対関係にマッピングできる他の様々な方式に適用可能である。例えば、Wm=Wsの関係をデータ値に対応付ける方式なども利用可能である。このような変形例についても当然に本発明の実施形態の技術的範囲に属する。
【0175】
[4.変形例]
ここで、図20及び図21を参照しながら、上述した補符号ペア方式の変形例について説明する。ここで説明する変形例は、発光素子の輝度レベルが非常に大きく、主符号値に対応する飽和領域サイズと、補符号値に対応する飽和領域サイズとの判別が困難になるような高輝度条件においても、正しくデータ値を受信できるようにする解決手段を提供する。
【0176】
図20には、図2と同様の受光量分布のグラフが示されている。図20の上図には、2つのグラフC11、C12が示されている。グラフC11は、主符号値に対応する輝度レベルで発光する発光素子からの光の受光量分布を示している。グラフC12は、補符号値に対応する輝度レベルで発光する発光素子からの光の受光量分布を示している。グラフC11のピーク値L11は、グラフC12のピーク値L12より大きく、ピーク値L11、L12は、飽和レベルSTより大きい。従って、上述した方法を適用して、飽和領域サイズから各発光素子の輝度レベルを検出し、その相対関係からデータ値を取得することができる。図20の例では、符号値ペアが{0.6,0.4}に設定されている。グラフC11、C12を比較すると、図20の上図の例では飽和領域サイズの差(この例では半径の差)がaになる。
【0177】
図20の下図は、図20の上図と同じ符号値ペアを利用して、輝度レベルを1.5倍にした場合の受光量分布を示している。グラフC21は、主符号値に対応する輝度レベルで発光する発光素子からの光の受光量分布を示している。グラフC22は、補符号値に対応する輝度レベルで発光する発光素子からの光の受光量分布を示している。グラフC21のピーク値L21は、グラフC22のピーク値L22より大きく、ピーク値L21、L22は、飽和レベルSTより大きい。従って、上述した方法を適用して、飽和領域サイズから各発光素子の輝度レベルを検出し、その相対関係からデータ値を取得することができる。グラフC21、C22を比較すると、図20の下図の例では飽和領域サイズの差(この例では半径の差)がbになる。
【0178】
図20から明らかなように、飽和領域サイズの差a、bは、「b<a」の関係がある。また、輝度レベルを大きくするほど、飽和領域サイズの差は小さくなる。飽和領域の差が非常に小さくなると、主符号値と補符号値との大小関係を正しく判別することが難しくなり、データ値の受信精度が低下するリスクがある。そこで、この変形例では、カラーフィルタの特性を利用して、非常に高輝度の光源を利用した場合でも、上述した方法を適用して飽和領域サイズの相対関係からデータ値を受信できるようにする方法を提案する。
【0179】
図21(a)に示すように、赤色(R)、青色(B)、緑色(G)の発光素子が発光部内で分離して配置されている場合、赤色の光は、透過色が赤色のカラーフィルタを通過してイメージセンサに入り、青色の光は、透過色が青色のカラーフィルタを通過してイメージセンサに入り、緑色の光は、透過色が緑色のカラーフィルタを通過してイメージセンサに入る。通常は、各色の飽和領域サイズから、各色に対応する発光素子の輝度レベルが検出される。例えば、緑色の発光素子に対応する輝度レベルは、緑色のカラーフィルタを通過した光の飽和領域サイズから検出される。
【0180】
しかし、図20を参照しながら説明したように、非常に高輝度の光源を利用した場合には、主符号値に対応する飽和領域サイズと補符号値に対応する飽和領域サイズの差が小さくなる。そのため、この変形例では、阻止色に対応するカラーフィルタを透過してイメージセンサに到達した光の飽和領域サイズを利用する。例えば、緑色の発光素子に対応する輝度レベルは、その発光素子から発せられ、かつ赤色又は青色のカラーフィルタを透過した光の飽和領域サイズに基づいて検出する。
【0181】
一般に、青色のカラーフィルタは、赤色光及び緑色光を減衰させるが、僅かに緑色光が透過する。緑色のカラーフィルタは、青色光及び赤色光を減衰させるが、僅かに青色光が透過する。赤色のカラーフィルタは、青色光及び緑色光を減衰させるが、僅かに緑色光が透過する。カラーフィルタの特性は、採用するカラーフィルタの種類などに依存するが、上記のような傾向がある。従って、青色のカラーフィルタは、緑色光の減衰フィルタとして利用でき、緑色のカラーフィルタは、青色光の減衰フィルタとして利用でき、赤色のカラーフィルタは、緑色光の減衰フィルタとして利用できる。
【0182】
減衰フィルタを介すると、イメージセンサに到達する光量が減るため、イメージセンサの受光量が下がる。従って、同じ輝度レベルで発光した場合には、飽和レベルSTを引き上げるのと同等の効果が得られる。例えば、図20のグラフC11、C12、C21、C22において、飽和レベルSTが引き上げられると、飽和領域サイズの差a、bは大きくなる。そのため、発光素子の輝度レベルが非常に大きい場合でも、飽和領域サイズの大小関係を見分けやすくなる。
【0183】
実際の実験結果を図21に示している。図21(a)のような発光部(素子アレイ)を利用すると、緑色のカラーフィルタを透過した光についてのイメージセンサからの出力は、図21(b)のようになる。図21(a)の鎖線枠で囲った緑色の素子ペア(上側の発光素子が主符号値、下側の発光素子が補符号値に対応)に注目すると、図21(b)の結果からは、飽和領域サイズが大きすぎ、2つの飽和領域(白色部分)の大小関係を判別することが難しい。一方、赤色のカラーフィルタを透過した光についてのイメージセンサからの出力は、図21(c)のようになる。図21(c)の結果からは、2つの飽和領域(白色部分)の大小関係を判別することができる。
【0184】
上記のように、カラーフィルタの特性を巧く利用することで、非常に高輝度の光源を利用する場合でも飽和領域サイズの大小関係を正しく判別することができるようになり、イメージセンサの出力から正しくデータ値を取得することが可能になる。なお、カラーフィルタを利用した上記の方法は、図21(a)のように各色の発光素子が独立して配置されていることが必要である。また、阻止色フィルタの透過光を利用する上記変形例の方法と、透過色フィルタの透過光を利用する方法とを選択的に又は組み合わせて実装してよい。例えば、飽和領域サイズの差が予め設定された差分閾値より大きい場合に上記変形例の方法を適用するようにしてもよい。もちろん、他の実装方法が適用されてもよく、そのような方法についても当然に本実施形態の技術的範囲に属する。
【0185】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0186】
100 光通信システム
101 送信装置
102 受信装置
111 発光部
112 拡散板
113 第1の制御部
114、123 記憶部
121 イメージセンサ
122 第2の制御部
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