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特開2023-148852制御装置、制御方法、触覚提示システム及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148852
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、触覚提示システム及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20231005BHJP
   G06F 3/04847 20220101ALI20231005BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G06F3/01 514
G06F3/04847
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057117
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】赤岩 修一
(72)【発明者】
【氏名】木野井 慶介
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA08
5E555BA04
5E555BB04
5E555BB08
5E555BC04
5E555CA27
5E555CB59
5E555CC22
5E555DA24
5E555DC30
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】触覚提示装置にて提示される触覚の知覚度を向上させる制御装置、制御方法、触覚提示システム及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】制御装置は、操作者の操作に対して変位可能に設けられた変位部を有し、変位部の変位量に応じて、前記変位部への操作に対する力覚を生じさせ、表示される対象物の触覚を提示する触覚提示装置の制御装置であって、前記変位部の変位量に対応付けて、前記力覚を生じさせる制御データを前記対象物毎に記憶しておき、設定に基づき、前記制御データの前記変位量と制御データとの対応関係を、前記変位部の変位量の範囲の前記制御データの範囲に対するスケールを変更するように補正し、前記変位部の変位量に対応付けられた補正後の制御データを、前記触覚提示装置へ出力する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者の操作に対して変位可能に設けられた変位部を有し、変位部の変位量に応じて、前記変位部への操作に対する力覚を生じさせ、表示される対象物の触覚を提示する触覚提示装置の制御装置であって、
前記変位部の変位量に対応付けて、前記力覚を生じさせる制御データを前記対象物毎に記憶しておき、
設定に基づき、前記制御データの前記変位量と制御データとの対応関係を、前記変位部の変位量の範囲の前記制御データの範囲に対するスケールを変更するように補正し、
前記変位部の変位量に対応付けられた補正後の制御データを、前記触覚提示装置へ出力する
制御装置。
【請求項2】
前記変位部に対して制御データを出力し始める変位量を、前記設定として受け付け、
受け付けた変位量と前記変位部の可動範囲に基づいて前記スケールを変更する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記スケールの変更を受け付ける
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御データは、前記変位部の可動範囲の実寸と、対象物の実寸とに基づいて前記変位量に対応付けて記憶されており、
変更されたスケールに基づき、前記変位部の変位量と制御データとの対応関係が補正される
請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
操作者の操作に対して変位可能に設けられた変位部を有し、変位部の変位量に応じて、前記変位部への操作に対する力覚を生じさせ、表示される対象物の触覚を提示する触覚提示装置の制御方法であって、
前記触覚提示装置に接続されるコンピュータが、
前記変位部の変位量に対応付けて、前記力覚を生じさせる制御データを前記対象物毎に記憶しておき、
設定に基づき、前記制御データの前記変位量と制御データとの対応関係を、前記変位部の変位量の範囲の前記制御データの範囲に対するスケールを変更するように補正し、
前記変位部の変位量に対応付けられた補正後の制御データを、前記触覚提示装置へ出力する
制御方法。
【請求項6】
操作者の操作に対して変位可能に設けられた変位部を有し、変位部の変位量に応じて、前記変位部への操作に対する力覚を生じさせ、表示される対象物の触覚を提示する触覚提示装置と、
前記触覚提示装置と通信接続し、表示部を備える情報処理装置と
を含み、
前記情報処理装置は、
前記変位部の変位量に対応付けて、前記力覚を生じさせる制御データと、前記表示部に表示する視覚データとを前記対象物毎に記憶しておき、
設定に基づき、前記制御データの前記変位量と制御データとの対応関係を、前記変位部の変位量の範囲の前記制御データの範囲に対するスケールを変更するように補正し、
前記変位部の変位量に対応付けられた補正後の制御データを、前記触覚提示装置へ出力し、
補正後の視覚データに基づき、前記変位部の変位量に応じて前記表示部に画像を出力する
触覚提示システム。
【請求項7】
操作者の操作に対して変位可能に設けられた変位部を有し、変位部の変位量に応じて、前記変位部への操作に対する力覚を生じさせ、表示される対象物の触覚を提示する触覚提示装置に接続されるコンピュータに、
前記変位部の変位量に対応付けて、前記力覚を生じさせる制御データを前記対象物毎に記憶しておき、
設定に基づき、前記制御データの前記変位量と制御データとの対応関係を、前記変位部の変位量の範囲の前記制御データの範囲に対するスケールを変更するように補正し、
前記変位部の変位量に対応付けられた補正後の制御データを、前記触覚提示装置へ出力する
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触覚提示装置にて提示される触覚の知覚度を向上させる制御装置、制御方法、触覚提示システム及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の五感のうち、視覚及び聴覚に係る画像及び音声の伝達技術が高精度化しており、昨今では、触覚を提示する技術(ハプティクス)が種々提案されている。
【0003】
触覚の提示技術としては、タッチパネル内蔵のディスプレイに表示された物体の画像に触れた際の振動、主に三種の振動(ERM:Eccentric Rotating Mass 、LRA:Linear resonant Actuator、ピエゾ素子)での再現が提案されている。しかしながらタッチパネル上での触覚提示では、より深部での触覚、つまり手指の皮膚のみならず、筋や腱で生じる力覚まで再現することは困難である。
【0004】
発明者らは、磁気粘性流体に対する知見に基づいて、操作者が操作可能であって、対象物によって異なる感触を再現する触覚提示装置を提案した(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6906275号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
触覚提示装置は、操作者の操作によって基部に対して変位可能な湾曲板等である変位部を備える。変位部は、触覚提示装置が制御されない状態では、操作者によって抵抗なく変位が可能であるが、制御中の触覚提示装置は、変位部の変位量(ポジション)に応じて変位部に対し生じさせる力覚の大きさ、力覚の出力方法等を変えて感触を提示する。
【0007】
この触覚提示装置の変位部の変位の仕方は、操作者の手の大きさの相違、筋肉の相違等によって異なる。また、操作者によっては、変位部を変位させる操作をした場合に、変位部において力覚が出力されるタイミングにより、感触としての知覚のし易さが相違する。そこで、触覚提示装置を、個々の操作者にとって触覚を知覚し易く設定できるようにすることが望まれる。
【0008】
本発明は、斯かる事情を鑑みてなされたものであり触覚提示装置にて提示される触覚の知覚度を向上させる制御装置、制御方法、触覚提示システム及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施形態の制御装置は、操作者の操作に対して変位可能に設けられた変位部を有し、変位部の変位量に応じて、前記変位部への操作に対する力覚を生じさせ、表示される対象物の触覚を提示する触覚提示装置の制御装置であって、前記変位部の変位量に対応付けて、前記力覚を生じさせる制御データを前記対象物毎に記憶しておき、設定に基づき、前記制御データの前記変位量と制御データとの対応関係を、前記変位部の変位量の範囲の前記制御データの範囲に対するスケールを変更するように補正し、前記変位部の変位量に対応付けられた補正後の制御データを、前記触覚提示装置へ出力する。
【0010】
本開示の一実施形態の制御方法は、操作者の操作に対して変位可能に設けられた変位部を有し、変位部の変位量に応じて、前記変位部への操作に対する力覚を生じさせ、表示される対象物の触覚を提示する触覚提示装置の制御方法であって、前記触覚提示装置に接続されるコンピュータが、前記変位部の変位量に対応付けて、前記力覚を生じさせる制御データを前記対象物毎に記憶しておき、設定に基づき、前記制御データの前記変位量と制御データとの対応関係を、前記変位部の変位量の範囲の前記制御データの範囲に対するスケールを変更するように補正し、前記変位部の変位量に対応付けられた補正後の制御データを、前記触覚提示装置へ出力する。
【0011】
本開示の一実施形態のコンピュータプログラムは、操作者の操作に対して変位可能に設けられた変位部を有し、変位部の変位量に応じて、前記変位部への操作に対する力覚を生じさせ、表示される対象物の触覚を提示する触覚提示装置に接続されるコンピュータに、前記変位部の変位量に対応付けて、前記力覚を生じさせる制御データを前記対象物毎に記憶しておき、設定に基づき、前記制御データの前記変位量と制御データとの対応関係を、前記変位部の変位量の範囲の前記制御データの範囲に対するスケールを変更するように補正し、前記変位部の変位量に対応付けられた補正後の制御データを、前記触覚提示装置へ出力する処理を実行させる。
【0012】
本開示の制御装置、制御方法及びコンピュータプログラムでは、予め変位量と制御データとの対応関係を記憶しておき、触覚提示装置の使用時に、触覚提示装置の変位部の可動範囲内で触覚提示がされるように、スケールが変更される。
【0013】
本開示の一実施形態の制御装置は、前記変位部に対して制御データを出力し始める変位量を、前記設定として受け付け、受け付けた変位量と前記変位部の可動範囲に基づいて前記スケールを変更する。
【0014】
本開示の制御装置では、操作者の選択、あるいは、制御装置自身による制御によって変位部にて触覚が提示され始める変位量(触覚の提示開始位置)が設定されると、その提示開始位置から可動範囲内で触覚が提示できるように、スケールが変更される。
【0015】
本開示の一実施形態の制御装置は、前記スケールの変更を受け付ける。
【0016】
本開示の制御装置では、スケールの変更は外部から受け付け可能である。操作者が好みで変更することができる。
【0017】
本開示の一実施形態の制御装置は、前記制御データは、前記変位部の可動範囲の実寸と、対象物の実寸とに基づいて前記変位量に対応付けて記憶されており、変更されたスケールに基づき、前記変位部の変位量と制御データとの対応関係が補正される。
【0018】
本開示の制御装置では、予め記憶されている制御データは、変位部の可動範囲の実寸と、対象物の寸法とが対応するように変位部に力覚が提示されるように設定されている。対象物をどのスケールで出力するかの設定を受け付け、設定されたスケールによって、変位部に対して力覚が出力される範囲が変更可能となる。
【0019】
本開示の一実施形態の触覚提示システムは、操作者の操作に対して変位可能に設けられた変位部を有し、変位部の変位量に応じて、前記変位部への操作に対する力覚を生じさせ、表示される対象物の触覚を提示する触覚提示装置と、前記触覚提示装置と通信接続し、表示部を備える情報処理装置とを含み、前記情報処理装置は、前記変位部の変位量に対応付けて、前記力覚を生じさせる制御データと、前記表示部に表示する視覚データとを前記対象物毎に記憶しておき、設定に基づき、前記制御データの前記変位量と制御データとの対応関係を、前記変位部の変位量の範囲の前記制御データの範囲に対するスケールを変更するように補正し、前記変位部の変位量に対応付けられた補正後の制御データを、前記触覚提示装置へ出力し、補正後の視覚データに基づき、前記変位部の変位量に応じて前記表示部に画像を出力する。
【0020】
本開示の触覚提示システムでは、予め変位量と制御データとの対応関係を記憶しておき、触覚提示装置の使用時に、触覚提示装置の変位部の可動範囲内で触覚提示がされるように、スケールが変更され、それに応じて、情報処理装置にて画像が表示される。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、操作者に応じて触覚提示装置による触覚提示範囲を調整することが可能となり、触覚の知覚度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】触覚提示システムを示す模式図である。
図2】情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図3】感覚DBの内容例を示す説明図である。
図4】触覚提示装置の構成を示すブロック図である。
図5】触覚提示システムにおける触覚提示の基本処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6】触覚提示システムにおける触覚提示の例を示す概要図である。
図7】設定方法の一例を示すフローチャートである。
図8】表示部に表示される設定画面の一例を示す。
図9】提示開始位置による補正手順の一例を示すフローチャートである。
図10】補正の方法の説明図である。
図11】補正の方法の説明図である。
図12】補正の方法の説明図である。
図13】表示部に表示される設定画面の他の一例を示す。
図14】触覚提示システムにおける触覚提示の例を示す概要図である。
図15】第2実施形態における設定方法の一例を示すフローチャートである。
図16】スケールによる補正手順の一例を示すフローチャートである。
図17】第2実施形態における補正の方法の説明図である。
図18】第3実施形態における触覚提示システムの概要図である。
図19】HMDの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。以下の実施の形態では、触覚提示システムにおける設定方法の実施について説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、触覚提示システム100を示す模式図である。触覚提示システム100は、情報処理装置1と、触覚提示装置2とを含む。情報処理装置1と、触覚提示装置2とは近距離無線通信で通信接続され、相互にデータを授受する。
【0025】
情報処理装置1は、図1に示すようにスマートフォンを用いる。情報処理装置1は、スマートフォンでなく、タブレット端末であってもよいし、ラップトップ型のPC(Personal Computer)であってもよい。
【0026】
触覚提示装置2は、操作者が指を変位部202に沿えて持ちながら指を動かして操作できる装置である。触覚提示装置2は、操作者が指を動かすことで変位する変位部202の位置を読み取り、内蔵するMRF(Magneto-Rheological Fluid )デバイス24をその位置に応じて制御して操作者の変位部202への操作に対する反力(回転抵抗)により力覚を生じさせ、触覚を提示する装置である。触覚提示装置2の変位部202の態様は、図1に示すようなものに限られず、スティック状であってもよいし、カバーに覆われたクッション状のものであってもよい。触覚提示装置2は、MRFデバイス24に代えて、モータやピエゾ素子などを採用し、操作者の操作に対し回転力や振動により力覚を生じさせるものでもよく、変位部202の他、振動や温感、冷感を提示するものと組み合わされてもよい。地面や壁に設置し、操作者の手のひらや足等で操作される構造でもよい。
【0027】
触覚提示システム100では、触覚提示装置2は、情報処理装置1と連携し、情報処理装置1又は他の表示装置やスピーカ等を用いて対象物の画像及び音声を出力させながら、対象物の触覚を触覚提示装置2で出力させる。図1に示す例では、情報処理装置1の表示部13に、柔らかな物体を表示させ、操作者が触覚提示装置2の変位部202を指で押し込むと、触覚提示装置2がグニャリ、若しくはフワフワとした触覚を出力させつつ、表示部13に、物体が、押し込まれたように変化する画像を表示させ、音声出力部14にて物体が押し込まれたことに対応する「グニャリ」と聞こえるような音声を出力する。
【0028】
図2は、情報処理装置1の構成を示すブロック図である。情報処理装置1は、処理部10、記憶部11、通信部12、表示部13、音声出力部14及び操作部15を備える。処理部10は、CPU(Central Processing Unit )及び/又はGPU(Graphics Processing Unit)を用いたプロセッサである。処理部10は、記憶部11に記憶されている触覚提示用の制御プログラムP1に基づき、後述する処理を実行する。
【0029】
記憶部11は、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive )等の不揮発性メモリを用いる。記憶部11は、処理部10が参照するデータを記憶する。制御プログラムP1(プログラム製品)は、通信部12を介して情報処理装置1又は他のプログラムサーバ装置からダウンロードして実行可能に記憶したものである。記憶部11に記憶されている制御プログラムP1は、コンピュータから読み取り可能な記憶媒体8に記憶されていた制御プログラムP8を処理部10が読み出して記憶したものであってもよい。
【0030】
記憶部11は、出力する対象物の触覚データ、視覚データ及び聴覚データを含む感覚データベース(DB:Data Base )110を記憶する。感覚DB110は、対象物を識別する対象物IDに対応付けて、触覚提示装置2における変位部の変位データ毎に、その変位において出力すべき触覚データ、視覚データ(画像、動画)、及び聴覚データ(音声)を格納している(図3参照)。記憶部11は更に、操作者個別の設定データを記憶する。
【0031】
通信部12は、近距離無線通信、例えばBluetooth(登録商標)の通信モジュールである。処理部10は、通信部12によって触覚提示装置2との間でデータを送受信できる。
【0032】
表示部13は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイである。表示部13は例えば、タッチパネル内蔵型ディスプレイである。処理部10は、表示部13に、制御プログラムP1に基づき、触覚提示装置2で触覚を出力させるための操作画面や対象物の画像を表示する。
【0033】
音声出力部14は、スピーカ等を含む。処理部10は、制御プログラムP1に基づき、対象物の音声、音楽等を音声出力部14から出力させる。
【0034】
操作部15は、処理部10との間で入出力が可能なユーザインタフェースであって、表示部13内蔵のタッチパネルである。操作部15は、物理ボタンであってもよい。操作部15は、音声入力部であってもよい。
【0035】
図3は、感覚DB110の内容例を示す説明図である。感覚DB110は、図3に示すように、対象物IDに対応付けて、変位部202の変位量(角度)毎の触覚提示装置2のMRFデバイスへの電流の電流値を触覚データとして格納している。電流値に限らず、電圧値等であってもよい。対象物は複数であり、触覚を提示する物として実在する物体、例えば、ボール又は風船等の静物、グミ、野菜、又は果物等の食べ物、犬、猫又は魚等の動物を含んでもよいし、スライムやモンスター等のキャラクタを含んでもよい。
【0036】
感覚DB110の変位部202の変位量と、電流値との関係は、変位部202の可動範囲の実際の寸法と、対象物の寸法とに合わせて設定されている。例えば、変位部202の可動範囲が50mmであり、対象物が小さなグミのような破裂しない球体であって大きさが15mmに設定されている場合、触覚は最初の15mm程度の範囲で再現され、残りの35mmの範囲は、それ以上押し込めないほどの感触となるような回転抵抗を生じさせる電流値が設定されている。又は、12mm~15mmの範囲は押し込めなくなる大きな電流値が設定され、それ以降の電流値はゼロに設定されていてもよい。また、対象物がソファの座面のような大きな物体であって大きさが変位部202の可動範囲を大きく超える場合、触覚データでは、ソファの座面表面から50mmまでの感触を提示するような電流値が設定される。対象物がモンスター等の仮想的なキャラクタの場合は、そのキャラクタの設定に応じた大きさに基づいて電流値が設定される。
【0037】
感覚DB110は、同様に、対象物IDに対応付けて、変位部202の変位量(角度)毎の画像(フレーム画像)を視覚データとして格納している。ここでフレーム画像は、連続して表示することでアニメーション画像として認識される、1つの静止画像である。また同様にして、対象物IDに対応付けて、変位部202の変位量(角度)毎の音声を聴覚データとして格納している。聴覚データは、各角度によって異なる波形データであってもよい。各角度に対応する音声のタイムスタンプであってもよい。
【0038】
図4は、触覚提示装置2の構成を示すブロック図である。触覚提示装置2は、図1に示したように、扁平な有底円筒状の把持体200に周方向に一部沿うような湾曲部を有する帯状平板の変位部202を設けて構成される。変位部202は、それ自体が撓むことが可能な素材であるが、剛性の高い素材を採用し、把持体200と支軸を介して回動可能に支持されていてもよい。変位部202の先端の外側の面には、布テープ状の結束具203が設けられている。変位部202の先端の内側面は、把持体200内部に収容されているMRFデバイス24のロータの回転軸と連結するリンク機構204が設けられている。
【0039】
操作者は図1に示したように、把持体200を例えば親指と中指とで把持しつつ、人差し指等の指を変位部202に沿わせて結束具203に人差し指を差し込んで使用する。操作者は人差し指を押し込むように変位部202を動かすことができ、また、人差し指を伸ばして把持体200から変位部202を遠ざけるように動かすことができる。
【0040】
触覚提示装置2は、図1に示すような把持体200と、制御部20、記憶部21、通信部22、電源部23、MRFデバイス24、センサ25を備える。把持体200は、MRFデバイス24を内蔵する。制御部20、記憶部21、通信部22、及び電源部23は把持体200と一体に設けられてもよいし、把持体200と無線又は有線により接続される別体に設けられてもよい。
【0041】
制御部20は、CPU、MPU(Micro-Processing Unit )等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリを含む。制御部20は、例えばマイクロコントローラである。制御部20は、内蔵ROMに記憶されている制御プログラムP2に基づいて各構成部を制御し、触覚提示を実現する。
【0042】
記憶部21は、制御部20に対する補助記憶メモリであり、MRFデバイス24の制御データ(触覚データ)を書き換え可能に記憶する。
【0043】
通信部22は、近距離無線通信、例えばBluetooth(登録商標)の通信モジュールである。制御部20は、通信部22によって情報処理装置1との間でデータを送受信できる。
【0044】
制御部20は、電源部23、MRFデバイス24及びセンサ25とI/Oを介して接続されており、相互に信号を授受する。
【0045】
電源部23は、充電可能なバッテリを含む。電源部23は、ON状態になると各構成部及びMRFデバイス24へ電力を供給する。
【0046】
MRFデバイス24は、円板状のロータを、隙間を開けて挟むようにして設けられたヨークを有し、ヨークに設けられたコイルに制御電流を流して磁界を発生させ、隙間に封入されている磁気粘性流体の粘度(ずり応力)を制御してロータの回転抵抗を与える。制御部20が、MRFデバイス24への制御電流の大きさを制御すると即座に回転抵抗が変更される。
【0047】
センサ25は、変位部202の変位量(角度)を測定して制御部20へ出力する。センサ25は変位部202の変位を、角度として測定して出力する。センサ25は、ジャイロセンサ、加速度センサ等の複数のセンサから構成されてもよい。
【0048】
上述のように構成される触覚提示装置2では、変位部202が操作者によって操作されると、変位部202の変位がリンク機構204を介してMRFデバイス24のロータの回転軸への回転方向に伝達される。回転軸は、MRFデバイス24が動作していない場合、即ち制御電流がゼロである間は、自由に回転するため、変位部202は抵抗なく変動する。一方で、MRFデバイス24が動作し、制御電流がゼロでない場合には、MRFデバイス24へ流れる電流の大きさに応じてMRFデバイス24内部の磁気粘性流体の粘度(ずり応力)が変更される。制御部20が、MRFデバイス24への電流の大きさを連続的に変更したり、電流値を所定の周波数で振動させたりすることで、変位部202に対する抵抗の力やその出現方法を変更できる。
【0049】
このようにして触覚提示装置2は、変位部202の押し込む量(変位量)に応じて抵抗(電流値)を変動させてヌルリとした触覚を提示したり、押し込む量が大きくなるにつれて抵抗を大きくしてギュッとした固さの触覚を提示したり、抵抗の大小を繰り返してザクザクとした触覚を提示したりすることができる。
【0050】
図5は、触覚提示システム100における触覚提示の基本処理手順の一例を示すフローチャートである。情報処理装置1の処理部10は、操作者が制御プログラムP1を起動させ、触覚提示装置2の電源をONとすると、触覚提示装置2と連携して以下の処理を開始する。
【0051】
処理部10は、触覚を表示する対象物の候補のリストを含む操作画面を表示部に表示し(ステップS101)、対象物の選択を受け付ける(ステップS102)。処理部10は、選択された対象物の対象物IDに対応する触覚データ、視覚データ及び聴覚データを記憶部11の感覚DB110から読み出す(ステップS103)。
【0052】
処理部10は、読み出した触覚データを、後述する処理で設定されるスケールに基づき、読み出した触覚データ、画像データ及び音声データを補正して、一時記憶する(ステップS104)。ステップS104における補正の方法については詳細を後述する。
【0053】
処理部10は、触覚提示装置2と通信部12による通信を確立させ(ステップS105)、一時記憶した補正後の触覚データを、触覚提示装置2へ送信する(ステップS106)。処理部10は、表示部13に触覚提示を開始することを表示させる(ステップS107)。
【0054】
触覚提示装置2の制御部20は、触覚データを受信すると(ステップS201)、記憶部21に記憶する(ステップS202)。
【0055】
制御部20は、センサ25から出力される変位部202の変位量(角度)に対応する信号をサンプリングする(ステップS203)。制御部20は、サンプリングにより得られる変位量を、情報処理装置1へ送信し(ステップS204)、得られた変位量に対応する電流値を、記憶部21に記憶した触覚データから参照し(ステップS205)、参照した電流をMRFデバイス24へ出力し(ステップS206)、処理をステップS203へ戻す。ステップS203-S206の処理は、情報処理装置1側で終了させる操作がされるまで継続する。
【0056】
情報処理装置1は、触覚提示装置2から変位量を受信し(ステップS108)、処理部10は、受信した変位量に対応する画像及び音声を記憶部11の視覚データ及び聴覚データから参照する(ステップS109)。処理部10は、視覚データ及び聴覚データをそれぞれ、表示部13及び音声出力部14から出力させ(ステップS110)、処理をステップS108へ戻す。触覚提示装置2から変位量が送信される都度、情報処理装置1は、それに対応する画像及び音声を出力する。
【0057】
処理部10は、終了操作がされたか否かを判断する(ステップS111)。終了操作がされていないと判断された場合(S111:NO)、処理をステップS108へ戻し、ステップS108-S110の処理を繰り返す。
【0058】
終了操作がされたと判断された場合(S111:YES)、と処理部10は、表示を終了して触覚提示装置2との通信を切断し(ステップS112)、処理を終了する。
【0059】
図6は、触覚提示システム100における触覚提示の例を示す概要図である。図6には、触覚提示装置2に送信される触覚データにおける変位量に対応して表示部13に表示される画像の変化及び音声の変化を示す。図6に示すように、変位部202の押し込み量に応じて、画像が変化し、触覚に対応する凹み方が変わる。また、図6に示すように、画像中に、操作者の指の画像を表示する場合、接触、即ちMRFデバイス24へ出力する初期位置(変位量がゼロ)の場所から、画像における対象物に接触する指の画像が表示されるようにしてもよい。
【0060】
ここで、変位量と制御データとの関係は、変位部202の可動範囲の実際の寸法と、対象物の実寸とに合わせて設定されている。つまり、図6に示した潰れている対象物における潰れた分の厚み(変化量)は、触覚提示装置2の変位部202の変位量と実寸で一致するようにしてある。これに対し、以下に示す設定で、情報処理装置1は、対象物の変化量と、変位部202の変位量との対応を、実寸に限らずスケールを変更することを可能とする。
【0061】
このように触覚を提示する触覚提示システム100では、上述の触覚提示の処理のうち、図5のフローチャートに示した処理手順のステップS104で、情報処理装置1が触覚データを補正するに際し、触覚提示装置2での出力を操作者個々に合わせることができる。
【0062】
図7は、設定方法の一例を示すフローチャートである。以下に示す処理手順は、制御プログラムP1に基づき表示される操作画面内で、設定メニューを選択した場合に開始される。図7に示す処理手順は、制御プログラムP1に基づく処理を初回に実行する際に自動的に開始されてもよい。初期的には、提示開始位置に対応する変位量は、ゼロである。
【0063】
処理部10は、変位量の角度範囲に対応するバーを含む設定画面を表示する(ステップS301)。処理部10は、バーによる提示開始位置の選択を受け付け(ステップS302)、選択された提示開始位置に対応する変位量(角度)を決定し、記憶する(ステップS303)。ステップS303において処理部10は、バーの長さに対する選択された位置の長さの割合から、変位量の範囲(0~90°)における変位量の位置を決定して記憶する。つまり、バーの長さを100とした場合に、選択された位置までの長さが10であるケースでは10%であるから、9°が提示開始位置に対応する変位量として決定される。
【0064】
処理部10は、提示開始位置に対応する変位量(角度)までの電流値をゼロとし、提示開始位置に対応する変位量以上の変位量に、所定の電流値をセットした触覚データを作成する(ステップS304)。処理部10は、作成した触覚データを触覚提示装置2へ送信し(ステップS305)、設定画面に試すように促すメッセージを表示部13に表示させる(ステップS306)。
【0065】
触覚提示装置2の制御部20は、受信した触覚データに基づいて、変位部の変位量に応じた電流をMRFデバイス24に流し、設定された提示開始位置に対応する変位量よりも変位部202が押し込まれた場合に初めて、所定の反力(回転抵抗)を発するテストを実行可能とする。これにより、反力を感じ始めるまでの猶予(遊び・ズレ)を、操作者が試すことができる。
【0066】
処理部10は、設定画面に、決定ボタンを表示し(ステップS307)、試した結果、ステップS302で選択した提示開始位置でよいか否かを受け付ける。処理部10は、決定ボタンが選択されたか否かを判断する(ステップS308)。決定ボタンが選択されていないと判断された場合(S308:NO)、処理部10は、処理をステップS302へ戻し、決定ボタンが選択されるまで処理を繰り返す。
【0067】
決定ボタンが選択されたと判断された場合(S308:YES)、処理部10は、ステップS303で決定した変位量(角度)を、補正量として記憶部11に記憶し(ステップS309)、処理を終了する。
【0068】
図8は、表示部13に表示される設定画面130の一例を示す。操作部15によって設定メニューが選択された場合に、処理部10は設定画面130を表示部13に表示する。設定画面130には、変位量の範囲に対応する長さに対してスライド可能なコントロール132を含むバーインタフェース131が含まれる。操作者は、表示部13内蔵のタッチパネル上で、コントロール132を上下に動かすことができる。
【0069】
設定画面130は、テストボタン133及び決定ボタン134を含む。テストボタン133が操作者によって選択されると、処理部10は操作部15によりこれを検知し、動かされたコントロール132の位置によってステップS303において変位量を決定する。テストボタン133が選択された場合、処理部10は、ステップS304からステップS308の処理を実行する。
【0070】
決定ボタン134が選択された場合、処理部10は、ステップS308-S309を実行する。
【0071】
これにより、変位部202を操作した場合の提示開始位置の補正量が操作者毎に設定され、図5のフローチャートに示した処理におけるステップS104によって反映される。図9は、提示開始位置による補正手順の一例を示すフローチャートである。
【0072】
処理部10は、ステップS104において、読み出した触覚データの変位量(角度)の最初の値を、補正量として記憶した量(角度)を加算した値とする(ステップS401)。処理部10は、触覚データの変位量に、補正量として記憶した量(角度)を加算した場合、ゼロでない電流値が対応する変位量が、変位部202の可動範囲を超えるか否かを判断する(ステップS402)。
【0073】
可動範囲を超えると判断された場合(S402:YES)、処理部10は、ゼロでない電流値が対応する変位量が、変位部202の可動範囲に収まるように、スケールを変更して補正後の触覚データを作成する(ステップS403)。各々の作成方法については詳細を後述する。
【0074】
ステップS403において処理部10は例えば、補正量として記憶された提示開始位置に対応する値と、変位量の最大値とを加算した値を分母とし、変位部の可動範囲(例えば0~90°の90)を分子とした係数を算出する。処理部10は、触覚データにおける各変位量に、補正量として記憶した量(角度)を加算した値に、係数を乗じたものを配してもよい([方法1])。
【0075】
ステップS403において処理部10は他に、補正量として記憶された提示開始位置に対応する値と、ゼロでない電流値が対応する変位量の最大値とを加算した値を分母とし、、変位部の可動範囲(例えば0~90°の90)を分子とした係数を算出する。処理部10は、触覚データにおける各変位量に、補正量として記憶した量(角度)を加算した値に、係数を乗じたものを配してもよい([方法2])。
【0076】
ステップS403において処理部10は他に、変位量の最大値と補正量として記憶された提示開始位置に対応する値との差分を、変位量の単位個数(例えば0~90°に対応する91個)で分けた増分を、変位量の個数に乗じて、最初の値に加算したものを配してもよい([方法3])。なお、この方法([方法3])の場合は、ステップS402で可動範囲を超えるか否かの判断は不要である。
【0077】
処理部10は、読み出した聴覚データの各変位量に対して、ステップS403と同様の方法で補正を施した聴覚データを作成する(ステップS404)。
【0078】
処理部10は、読み出した視覚データの各変位量に対して、ステップS403と同様の方法で補正を施した補正後の視覚データを作成し(ステップS405)、補正を終了する。
【0079】
ステップS405において処理部10は、視覚データである画像に、操作者の指の画像を仮想的に重畳して表示する場合、補正量として記憶した変位量と同一の変位量が触覚提示装置2から送信されたタイミングで、指の画像が対象物に接触して見えるように指の画像を表示させる座標を算出してもよい。この場合、処理部10は、提示開始位置と、触覚データにおける電流値がゼロでなくなる変位量(角度)とに基づき、触覚が生じるタイミングと、画像において指の画像が対象物に接触して見えるタイミングとが合致するように、画像を調整してもよい。
【0080】
ステップS402において可動範囲を超えないと判断された場合(S402:NO)、処理部10は、読み出した触覚データの各変位量に、補正量として記憶した変位量を加算した、補正後の触覚データを作成する(ステップS406)。これにより、触覚データにおける連続的に変化する電流値を出力し始める変位量をずらすことができる。
【0081】
同様に処理部10は、読み出した聴覚データの各変位量に、補正量として記憶した変位量を加算した、補正後の聴覚データを作成する(ステップS407)。
【0082】
処理部10は、読み出した視覚データの各変位量に、補正量として記憶した変位量を加算した、補正後の視覚データを作成し(ステップS408)、補正を終了する。
【0083】
図10図12は、補正の方法の説明図である。図10は、上述の[方法1]に対応する方法を示し、図11は、[方法2]に対応する方法を示し、図12は、[方法3]に対応する方法を示す。
【0084】
図10に示す補正の方法では、処理部10は、補正量が5°と設定された場合、その5°の値「5」と、変位量の最大値「90」とを加算した値「95」を分母とし、変位部202の可動範囲「90」を分子とした係数「0.95」を算出する。処理部10は、触覚データにおける各変位量(0~90の整数値に対応するN番目の変位量)に、補正量を加算した値(N+5)に、算出した係数「0.95」を乗じて、元の91個の変位量にそれぞれ配して補正データとする。
【0085】
図11に示す補正の方法では、処理部10は、元の触覚データにおいて電流値がゼロでない範囲を0~80°(81°~90°に対応する電流値はゼロ)である場合、補正量が10°と設定されたケースでは、その10°の値「10」と、ゼロでない範囲「80」とを加算した値「90」を分母とし、変位部202の可動範囲「90」を分子とした係数「1.0」を算出する。処理部10は、触覚データにおける各変位量(1~90の整数値に対応するN番目の変位量)に、補正量を加算した値(N+10)に、算出した係数「1.0」を乗じて、元の91個の変位量にそれぞれ配して補正データとする。この場合、電流値がゼロでない範囲は0~80°から0~90°にスケールが変更される。
【0086】
図12に示す補正の方法では、処理部10は、補正量が5°と設定された場合、91個の変位量(0~90°)に5°から90°の変位量を割り振るため、公差を(90-5)/(個数「91」-1)≒0.944と算出する。N番目の変位量として、N番目のNから1減じた数に公差を乗じた数を初期値に加算して得られる数値(=先頭の値+公差×(N-1))を割り振る。これにより、0~90°の変位量に対応していた電流値を、提示開始位置5°から最大値90°までの変位量に割り振り、スケールを例えば1.06(=1/0.944)倍としたことと同様である。
【0087】
このように、補正によって触覚データ、聴覚データ及び視覚データは、図10-12に示すように、補正量が加算後の変位量それぞれに対し、電流値、音声データ、及び画像データが対応付けられたデータとなる。つまり、変位部202の変位量の範囲(可動範囲)と、提示される感触の範囲との比率(スケール)が変わるように補正される。
【0088】
図13は、表示部13に表示される設定画面130の他の一例を示す。設定画面130は、図8に示したように、操作部15によって設定メニューが選択された場合に、処理部10は設定画面130を表示部13に表示する。設定画面130には、変位量の範囲に対して、上からどこまで押し込むと触覚提示が始まるか(触覚提示位置)の異なるパターンが3つ候補として表示されている。
【0089】
図13の例でも、設定画面130は、テストボタン133及び決定ボタン134を含む。決定ボタン134により、いずれかを選択することが可能である。図13に示す例では、3つの候補のうち、中央の候補が、太線の枠(カーソル)により強調されており、この候補が操作部15によるタップで選択された状態であることが示されている。
【0090】
テストボタン133が操作者によって選択されると、処理部10は操作部15によりこれを検知し、動かされたコントロール132の位置によってステップS303において変位量を決定する。テストボタン133が選択された場合、処理部10は、ステップS304からステップS308の処理を実行する。
【0091】
図13に示す設定画面130の例であっても、決定ボタン134が選択された場合、処理部10は、ステップS308-S309を実行する。
【0092】
図14は、触覚提示システム100における触覚提示の例を示す概要図である。図14に示す例では、図6に示した例と比較して、補正後の触覚データにおける変位量に対応して表示部13に表示される画像の変化及び音声の変化とを示す。図14では、補正前の触覚データにおける状態を破線により示している。図14に示すように、補正後は、図6と比較して、変位部202を少しだけ(5°相当)押し込んだ位置から、変位部202から触覚が提示され始め、同様に、画像及び音声が出力され、且つ、変位部202の可動範囲の上限に近くなると、提示位置は補正前と変わらない。
【0093】
このように、触覚提示装置2を使用する際の触覚の提示開始位置を、操作者の好みや感覚に合わせて調整することが可能になる。触覚提示装置2における触覚の提示の方法を操作者に合わせることにより、操作者による知覚度が向上する。
【0094】
情報処理装置1に対して、1つの補正量を記憶することとして説明したが、これに限られない。1つの情報処理装置1の記憶部11に、異なる操作者毎の補正量を記憶しておき、触覚提示装置2を操作する操作者が誰であるかの選択を受け付けてから、処理部10は、設定してある補正量を使用して図5のフローチャートに示した処理を実行してもよい。
【0095】
(第2実施形態)
第2実施形態では、対象物の触覚を提示する際のスケールの設定を、直接的に変更する。第2実施形態における触覚提示システム100の構成は、スケールの設定の変更方法が異なること以外は、第1実施形態における触覚提示システム100と同様の構成である。したがって、第2実施形態の触覚提示システム100の構成のうち、第1実施形態の触覚提示システム100と共通する構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0096】
図15は、第2実施形態における設定方法の一例を示すフローチャートである。以下に示す処理手順は、図5のフローチャートに示した処理において、対象物の選択を受け付けた後に(S102)、実施されてもよいし、操作画面内で、設定メニューを選択した場合第1実施形態における提示開始位置の設定受付と同時に行なわれてもよい。初期的には、スケールの設定は、「1.0」である。
【0097】
処理部10は、スケールの変更画面を含む設定画面を表示する(ステップS501)。ステップS501においてスケールの変更画面は、スケールを数値で受け付けるものであってもよいし、スライドバー、若しくは増減ボタンに対する操作によって初期値「1.0」の変更を受け付けるものであってよい。スケールの範囲は、例えば「0.5」~「1.5」等の範囲で受け付け可能とするとよい。
【0098】
処理部10は、設定画面にてスケールの設定を受け付け、記憶部11にし(ステップS502)、処理を終了する。
【0099】
第2実施形態では設定されたスケールによって、触覚データを補正する。図16は、スケールによる補正手順の一例を示すフローチャートである。図16の処理手順は、第3実施形態の情報処理装置1が第1実施形態同様に図6のフローチャートに示した処理を実行するに際し、ステップS104で実施する処理手順に対応する。
【0100】
処理部10は、設定されたスケールが、1よりも大きいか否かを判断する(ステップS411)。1よりも大きいと判断された場合(S411:YES)、処理部10は、ステップS103で読み出した触覚データの変位量(0~90°)それぞれに、スケールを乗じる(ステップS412)。ステップS412により、例えば、補正前の触覚データにおいて変位量(角度)が30°には電流値1.2が対応付けられていた場合、30°×(スケール>1)の変位量に、電流値1.2が対応付けられる。スケールが1.2の場合は、36°の変位量に電流値1.2が対応付けられ、スケールが1.5の場合は45°の変位量に電流値1.2が対応付けられる。
【0101】
ステップS412でスケールが乗じられることにより、変位量のステップが元の変位量のステップよりも大きくなる。例えばスケールが1.5の場合、変位量は(0°,1°,2°,3°,…,90°)から(0°,1.5°,3°,4.5°,…,120°)となる。処理部10は、スケールが乗じられた後の変位量のうち、可動範囲の上限を超えるデータについては補正後の触覚データからは削除する(ステップS413)。つまり、処理部10は、スケール(例えば1.5)を乗じた後の変位量の91°~120°及びそれに対応する電流値、元の変位量の61°~90°及びそれに対応する電流値については、補正後の触覚データからは削除する。
【0102】
処理部10は、変位量の中間値及びその中間値に対応する電流値を求めて補間する(ステップS414)。
【0103】
処理部10は、提示開始位置に対応する補正量が設定されている場合、変位量に補正量を加算する(ステップS415)。処理部10は、変位量の上限(90°)を超える補正後の変位量及びその変位量に対応する電流値については、補正後の触覚データからは削除し(ステップS416)、補正処理を終了する。
【0104】
ステップS411において1よりも小さいと判断された場合(S411:NO)、処理部10は、ステップS103で読み出した触覚データの変位量(0°~90°)それぞれに、スケールを乗じる(ステップS417)。ステップS417により、例えば、補正前の触覚データにおいて変位量(角度)が30°には電流値1.2が対応付けられていた場合、30°×(スケール<1)の変位量に、電流値1.2が対応付けられる。スケールが0.8の場合は、24°の変位量に電流値1.2が対応付けられ、スケールが0.5の場合は15°の変位量に電流値1.2が対応付けられる。
【0105】
ステップS417でスケールが乗じられることにより、変位量のステップが元の変位量のステップよりも小さくなる。例えばスケールが0.5の場合、変位量は(0°,1°,2°,3°,…,90°)から(0°,0.5°,1°,1.5°,…,45°)となる。処理部10は、スケールを乗じた後の変位量及びその変位量に対応する制御データを間引きして補正後の触覚データから削除する(ステップS418)。ステップS418において処理部10は、変位量が(0°,0.5°,1°,1.5°,…,45°)となった場合には、変位量2つあたりに、1つの変位量を間引く。間引かずに細かな変位量に対応付けた制御データとして補正後の触覚データを作成してもよい。
【0106】
処理部10は、元の変位量の上限値にスケールを乗じた値よりも大きい変位量以降については、電流値に0(ゼロ)若しくは、変位部202が動かなくなる程度の電流値を設定して補正後の触覚データに追加し(ステップS419)、処理をステップS415へ進める。ステップS419において処理部10は、スケール(例えば0.5)を乗じた後の元の変位量の90°よりも大きい変位量46°~90°及びそれに対応する電流値については、電流値をゼロで埋めて追加する。
【0107】
図17は、第2実施形態における補正の方法の説明図である。図17に示す例では、補正前の触覚データは、変位量が0°~60°範囲にゼロでない電流値が対応付けられている。これに対し、スケールを1.5倍に設定された場合、処理部10は、図17の右上部に示すように、0°~90°の範囲に、元の触覚データにおける0°~60°の範囲に対応付けられていた電流値を拡げるようにして対応付けて補正後の触覚データを作成している。また、スケールを0.5倍に設定された場合、処理部10は、図17の右下部に示すように、0°~30°の範囲に、元の触覚データにおける0°~60°の範囲に対応付けられていた電流値を圧縮し、一部を間引いて対応付けて補正後の触覚データを作成している。これにより、設定されたスケールに応じて触覚データを変更し、変位部202の物理的な可動範囲の中で、適宜触覚を提示することも可能である。
【0108】
スケールの設定は、画像の表示環境に応じて自動的に、情報処理装置1にて変更してもよい。例えば、表示部13のスペックに応じて、例えば66mmの大きさのテニスボールを、表示部13にて画面上の寸法に合わせて33mmの1/2のスケールで表示する場合、触覚データを半分のスケールに変更する補正を行なう。この場合、視覚データ及び聴覚データはそのままとする。この場合、変位部202の変位が5mmに相当する角度である場合に、表示部13上の長さで5mm分凹んだ画像が同期して表示される。指画像を重畳する場合には、1/2のスケールに合わせた大きさに指画像の大きさを変更して重ねて表示させてもよい。触覚データが実寸に対応し、例えばスマートフォンのような情報処理装置1の表示部13にて1/2のスケールで表示する場合、触覚提示装置2の変位部202の変位が5mmに相当する角度のときには、表示部13上では2.5mm凹んだ画像(凹みの割合はいずれも7.6%)が同期して表示される。上述したように、表示部13において画像の縮小表示が必要なケースでは、表示部13におけるスケールに合わせて触覚データを補正することで、触覚のスケールと視覚のスケールとを合わせることも可能である。
【0109】
聴覚データについても、三次元的に音声を出力できる音声出力部14を用いる場合には、そのスケールを表示部13のスペックに合わせるようにしてもよい。
【0110】
(第3実施形態)
第3実施形態では、HMD(Head Mounted Display)を用い、対象物に対する視覚情報を三次元画像で提示する。図18は、第3実施形態における触覚提示システム100の概要図であり、図19は、HMD3の構成を示すブロック図である。第3実施形態における触覚提示システム100の構成は、HMDを用いることと、HMDを用いることによる詳細な処理の内容が異なること以外は、第1実施形態における触覚提示システム100と同様の構成である。したがって、第3実施形態の触覚提示システム100の構成のうち、第1実施形態の触覚提示システム100と共通する構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0111】
HMD3は、表示部31、動き検知部32、空間検知部33、及び接続部34を備える。HMD3は、本体に、表示部31、動き検知部32、空間検知部33及び接続部34を設けてもよいし、一部は別体に設けられて相互に通信媒体を介して制御信号を授受できるようにしてあってもよい。
【0112】
表示部31は例えば、小型の液晶ディスプレイ、光学レンズ及び光学系機構を備え、視野角110°以上で三次元画像を表示することが可能である。表示部31は、透明又は半透明のグラス状のディスプレイであり、操作者の実際の視界に、情報処理装置1から出力される画像信号(映像信号を含む)を受け付けて重畳表示させる。表示部31はグラス状のものに限られず、前方に向けて設けられたカメラにて実空間を撮影した画像に、情報処理装置1から出力される画像信号に基づく画像を重畳表示させるものであってもよい。
【0113】
動き検知部32は、本体(表示部31のカバー及び装着ベルト)の各所に、多様な向きで設けられた複数の三軸加速度センサ及びジャイロセンサと、これらのセンサ群からの信号を集約して出力する制御回路とを備える。動き検知部32により、装着者の頭部の動きが検知される。
【0114】
空間検知部33は、本体の外面に外向きに並設された2つ以上の赤外線カメラと、該赤外線カメラの中間位置に同様に外向きに赤外線を照射するように設けられた赤外線LEDとを用いる。空間検知部33は、HMD3の本体の外側に存在する物体までの距離を測定する深度センサとして機能する。空間検知部33は、HMD3本体から、HMD3を装着する操作者の居場所における壁、床等の静物に対する距離を測り、出力することが可能である。空間検知部33は同様に、HMD3本体から操作者の腕、手、指までの距離を測定し、出力することが可能である。
【0115】
接続部34は、情報処理装置1と接続するためのインタフェースである。HMD3は、動き検知部32及び空間検知部33にて測定された結果に対応する信号をそれぞれ、情報処理装置1へ出力すると共に、情報処理装置1から出力される映像信号を取得して表示部31に表示させる。
【0116】
HMD3にスピーカを設け、情報処理装置1の音声出力部14から出力される音声をスピーカにて出力させるようにしてもよい。
【0117】
上述したような構成の第3実施形態の触覚提示システム100において情報処理装置1は、HMD3を用い、空間検知部33で測定された実空間における静物に対する距離を用い、仮想的な対象物の三次元画像を、動き検知部32にて検知される操作者の動きに合わせて重畳表示し、AR表示を実現する。対象物の選択は、HMD3の表示部31に表示される仮想的対象物の三次元画像の画像内の座標(実空間と合致した座標)に対し、空間検知部33により、触覚提示装置2を把持した手指を重ねたことが検知できた場合に、これを選択したものとして情報処理装置1の処理部10が検知する。
【0118】
そして第3実施形態でも、情報処理装置1は、触覚提示装置2との間で変位量及び傾きのデータを授受して、AR表示される画像と触覚提示装置2にて出力される触覚を制御する。処理の内容は第1実施形態及び第2実施形態にて示した処理のいずれを実行してもよい。
【0119】
HMD3を用いたAR表示と触覚提示装置2とを組み合わせることにより、実空間に対象物を仮想的に配置した画像を、操作者は視覚的に観察しながら、その対象物の感触を触覚提示装置2で覚えることが可能である。その際に、第1実施形態にて説明したものと同様に、触覚提示装置2における触覚提示開始位置を、操作者それぞれに応じて補正することができることで、更に知覚度を向上させることができる。
【0120】
上述のように開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0121】
1 情報処理装置
10 処理部
11 記憶部
13 表示部
P1 制御プログラム
2 触覚提示装置
20 制御部
21 記憶部
202 変位部
24 MRFデバイス
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