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特開2023-148861コーティング層の除去方法及びコーティング層の除去装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148861
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】コーティング層の除去方法及びコーティング層の除去装置
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/02 20060101AFI20231005BHJP
   B29C 35/04 20060101ALI20231005BHJP
   B29D 7/01 20060101ALI20231005BHJP
   B29C 55/06 20060101ALI20231005BHJP
   B29B 13/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B29B17/02
B29C35/04 ZAB
B29D7/01
B29C55/06
B29B13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057132
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 太寿
(72)【発明者】
【氏名】深谷 知巳
(72)【発明者】
【氏名】森 裕一
(72)【発明者】
【氏名】吉延 毅朗
【テーマコード(参考)】
4F201
4F203
4F210
4F213
4F401
【Fターム(参考)】
4F201AC03
4F201AG01
4F201AG03
4F201BA04
4F201BC01
4F201BN01
4F203AC03B
4F203AG01
4F203AH81
4F203DA12
4F203DB02
4F203DC04
4F203DD06
4F203DJ32
4F210AA03
4F210AA12
4F210AA19
4F210AA21
4F210AA23
4F210AA24
4F210AA28
4F210AA29
4F210AA31
4F210AA40
4F210AC03
4F210AG01
4F210AG03
4F210QA03
4F210QC02
4F210QD13
4F210QD21
4F210QD33
4F210QG01
4F210QG15
4F210QG18
4F210QM11
4F210QM15
4F210QW21
4F210QW36
4F210QW45
4F213AA03
4F213AA24
4F213AA28
4F213AA29
4F213AC03B
4F213AG01
4F213AG03
4F213AH81
4F401AA02
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA16
4F401AA17
4F401AA22
4F401AA23
4F401AA24
4F401AA26
4F401AB07
4F401AD01
4F401AD07
4F401BA13
4F401CA31
4F401CA37
4F401CA39
4F401CA49
4F401CA91
4F401CB01
4F401CB34
4F401CB35
4F401EA47
(57)【要約】
【課題】基材フィルムとコーティング層とを有する積層フィルムにおいて、ロールツーロールで搬送される積層フィルムからコーティング層を容易に除去できるコーティング層の除去方法を提供すること。
【解決手段】基材フィルムと、コーティング層とを有する積層フィルム50が巻回されたロール1を準備する工程と、ロール1から、積層フィルム50を繰り出す工程と、繰り出された積層フィルム50を延伸する工程と、延伸された積層フィルム50Aからコーティング層を除去する工程と、コーティング層が除去された基材フィルム51をロール状に巻き取る工程と、を有する、コーティング層の除去方法。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、コーティング層とを有する積層フィルムが巻回されたロールを準備する工程と、
前記ロールから、前記積層フィルムを繰り出す工程と、
繰り出された前記積層フィルムを延伸する工程と、
延伸された前記積層フィルムから前記コーティング層を除去する工程と、
前記コーティング層が除去された前記基材フィルムをロール状に巻き取る工程と、を有する、
コーティング層の除去方法。
【請求項2】
前記コーティング層を除去する工程は、前記コーティング層を前記基材フィルムから粘着ロールに転着させる工程である、
請求項1に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項3】
前記コーティング層を除去する工程は、前記コーティング層をブレード又はワイヤブラシを用いて前記基材フィルムから掻き落す工程である、
請求項1に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項4】
前記コーティング層を除去する工程は、前記コーティング層を前記基材フィルムからブラスト材で削り取る工程である、
請求項1に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項5】
前記積層フィルムを延伸する工程は、前記積層フィルムを加熱しながら行う、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項6】
前記積層フィルムを延伸する工程の後、かつ前記コーティング層を除去する工程の前に、延伸された前記積層フィルムの前記コーティング層に向けて過熱水蒸気を吹き付ける工程を有する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項7】
前記積層フィルムは、セラミックグリーンシートの製造に用いられ、前記セラミックグリーンシートが剥離された後の積層フィルムである、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項8】
基材フィルムと、コーティング層とを有する積層フィルムから前記コーティング層を除去するコーティング層の除去装置であって、
前記積層フィルムが巻回されたロールから前記積層フィルムを繰り出す繰出手段と、
繰り出された前記積層フィルムを延伸する延伸手段と、
延伸された前記積層フィルムから前記コーティング層を除去する除去手段と、
前記基材フィルムをロール状に巻き取る巻取手段と、を備える、
コーティング層の除去装置。
【請求項9】
前記除去手段は、粘着ロールを備え、前記コーティング層を前記基材フィルムから前記粘着ロールに転着させる手段である、
請求項8に記載のコーティング層の除去装置。
【請求項10】
前記除去手段は、ブレード又はワイヤブラシを備え、前記コーティング層を前記基材フィルムから掻き落す手段である、
請求項8に記載のコーティング層の除去装置。
【請求項11】
前記除去手段は、ブラスト処理装置を備え、前記コーティング層を前記基材フィルムからブラスト材で削り取る手段である、
請求項8に記載のコーティング層の除去装置。
【請求項12】
水蒸気吹付手段をさらに備え、
前記水蒸気吹付手段は、延伸された前記積層フィルムの前記コーティング層に向けて過熱水蒸気を吹き付ける手段である、
請求項8から請求項11のいずれか一項に記載のコーティング層の除去装置。
【請求項13】
前記延伸手段は、前記積層フィルムを加熱する加熱手段を備える、
請求項8から請求項12のいずれか一項に記載のコーティング層の除去装置。
【請求項14】
前記積層フィルムは、セラミックグリーンシートの製造に用いられ、前記セラミックグリーンシートが前記積層フィルムから剥離された後の積層フィルムである、
請求項8から請求項13のいずれか一項に記載のコーティング層の除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング層の除去方法及びコーティング層の除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球資源保護や環境保護等の観点から、各種分野で、廃棄物の発生抑制、再使用、及び再生利用等の取組みを通じて、循環型社会の構築を目指す動きが活発化している。
例えば、特許文献1には、プラスチック部品の表面に塗装膜が形成された塗膜付きプラスチック部品を400℃以上1000℃以下の高温雰囲気に曝して、前記塗装膜を脆化処理して除去することを特徴とする塗膜付きプラスチック部品の処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-167213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の処理方法は、様々なサイズのプラスチック部品を直接高温雰囲気に曝して表面の塗装膜を脆化させるため、脆化が不十分な箇所が生じ、塗装膜を容易に除去できない可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、基材フィルムとコーティング層とを有する積層フィルムにおいて、ロールツーロールで搬送される積層フィルムからコーティング層を容易に除去できるコーティング層の除去方法及びコーティング層の除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、基材フィルムと、コーティング層とを有する積層フィルムが巻回されたロールを準備する工程と、前記ロールから、前記積層フィルムを繰り出す工程と、繰り出された前記積層フィルムを延伸する工程と、延伸された前記積層フィルムから前記コーティング層を除去する工程と、前記コーティング層が除去された前記基材フィルムをロール状に巻き取る工程と、を有する、コーティング層の除去方法が提供される。
【0007】
本発明の一態様に係るコーティング層の除去方法において、前記コーティング層を除去する工程は、前記コーティング層を前記基材フィルムから粘着ロールに転着させる工程であることが好ましい。
【0008】
本発明の一態様に係るコーティング層の除去方法において、前記コーティング層を除去する工程は、前記コーティング層をブレード又はワイヤブラシを用いて前記基材フィルムから掻き落す工程であることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様に係るコーティング層の除去方法において、前記コーティング層を除去する工程は、前記コーティング層を前記基材フィルムからブラスト材で削り取る工程であることが好ましい。
【0010】
本発明の一態様に係るコーティング層の除去方法において、前記積層フィルムを延伸する工程は、前記積層フィルムを加熱しながら行うことが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係るコーティング層の除去方法において、前記積層フィルムを延伸する工程の後、かつ前記コーティング層を除去する工程の前に、延伸された前記積層フィルムの前記コーティング層に向けて過熱水蒸気を吹き付ける工程を有することが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係るコーティング層の除去方法において、前記積層フィルムは、セラミックグリーンシートの製造に用いられ、前記セラミックグリーンシートが剥離された後の積層フィルムであることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様によれば、基材フィルムと、コーティング層とを有する積層フィルムからコーティング層を除去するコーティング層の除去装置であって、
前記積層フィルムが巻回されたロールから前記積層フィルムを繰り出す繰出手段と、
繰り出された前記積層フィルムを延伸する延伸手段と、
延伸された前記積層フィルムから前記コーティング層を除去する除去手段と、
前記基材フィルムをロール状に巻き取る巻取手段と、を備える、
コーティング層の除去装置が提供される。
【0014】
本発明の一態様に係るコーティング層の除去装置において、前記除去手段は、粘着ロールを備え、前記コーティング層を前記基材フィルムから前記粘着ロールに転着させる手段であることが好ましい。
【0015】
本発明の一態様に係るコーティング層の除去装置において、前記除去手段は、ブレード又はワイヤブラシを備え、前記コーティング層を前記基材フィルムから掻き落す手段であることが好ましい。
【0016】
本発明の一態様に係るコーティング層の除去装置において、前記除去手段は、ブラスト処理装置を備え、前記コーティング層を前記基材フィルムからブラスト材で削り取る手段であることが好ましい。
【0017】
本発明の一態様に係るコーティング層の除去装置において、水蒸気吹付手段をさらに備え、前記水蒸気吹付手段は、延伸された前記積層フィルムの前記コーティング層に向けて過熱水蒸気を吹き付ける手段であることが好ましい。
【0018】
本発明の一態様に係るコーティング層の除去装置において、前記延伸手段は、前記積層フィルムを加熱する加熱手段を備えることが好ましい。
【0019】
本発明の一態様に係るコーティング層の除去装置において、前記積層フィルムは、セラミックグリーンシートの製造に用いられ、前記セラミックグリーンシートが前記積層フィルムから剥離された後の積層フィルムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、基材フィルムとコーティング層とを有する積層フィルムにおいて、ロールツーロールで搬送される積層フィルムからコーティング層を容易に除去できるコーティング層の除去方法及びコーティング層の除去装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】第1実施形態に係るコーティング層の除去方法で用いることができる積層フィルムの断面図の一例である。
図1B】延伸工程により、図1Aに示す積層フィルムが長手方向に延伸されたときの、積層フィルムの断面図の一例である。
図2】コーティング層にクラックが生じた状態を示す顕微鏡写真であり、積層フィルムをコーティング層の側から見た上面図である。
図3】第2実施形態に係るコーティング層の除去装置の一例を示す概略図である。
図4】第3実施形態に係るコーティング層の除去装置の一例を示す概略図である。
図5】第4実施形態に係るコーティング層の除去装置の一例を示す概略図である。
図6】第5実施形態に係るコーティング層の除去装置の一例を示す概略図である。
図7】第6実施形態に係るコーティング層の除去装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第1実施形態〕
(コーティング層の除去方法)
本実施形態に係るコーティング層の除去方法は、基材フィルムと、コーティング層とを有する積層フィルムが巻回されたロールを準備する工程(以下、準備工程とも称する)と、前記ロールから、前記積層フィルムを繰り出す工程(以下、繰り出し工程とも称する)と、繰り出された前記積層フィルムを延伸する工程(以下、延伸工程とも称する)と、延伸された前記積層フィルムから前記コーティング層を除去する工程(以下、除去工程とも称する)と、前記コーティング層が除去された前記基材フィルムをロール状に巻き取る工程(以下、巻き取り工程とも称する)と、を有する。
【0023】
図1Aは、第1実施形態に係るコーティング層の除去方法で用いることができる積層フィルム50の断面図の一例である。
積層フィルム50は、基材フィルム51と、コーティング層52とを有する。積層フィルム50は、基材フィルム51とコーティング層52とが直接接している。
図1Bは、延伸工程により、図1Aに示す積層フィルム50が長手方向(搬送方向)に延伸されたときの、積層フィルム50Aの断面図の一例を示す。
図1Bには、延伸された積層フィルム50Aのコーティング層52Aに、複数のクラック522が生じている状態が示されている。
【0024】
本実施形態において、延伸工程とは、コーティング層にクラックを生じさせる工程である。コーティング層にクラックを生じさせるとは、コーティング層の厚み方向にひび割れ(亀裂)が生じることを意味し、基材フィルムとの界面にまで到達するクラックが生じることが好ましい(例えば図1B)。コーティング層に生じるクラックは、初め延伸方向に対して略直交する方向に沿って形成され、さらに延伸することにより延伸方向に沿ってクラックが生じる。延伸することにより、基材フィルム上のコーティング層がクラックによって外周を囲まれた小片状となることが好ましい。図2は、コーティング層にクラックが生じた状態を示す顕微鏡写真であり、積層フィルムをコーティング層の側から見た上面図である。
また、コーティング層にクラックが生じるときの衝撃で、基材フィルムとコーティング層に部分的に剥離が生じる場合がある。図2の顕微鏡写真において、多角形の外周が白く見える箇所は、クラックの近傍でコーティング層が基材フィルムとの界面で浮き剥がれ、空気を巻き込んだ箇所である。このような剥離が生じれば、次の工程で行われるコーティング層の除去が、より確実に行えるようになるため、好ましい。
また、本実施形態に係るコーティング層の除去方法によれば、ロールツーロール方式で連続して各工程を実施するため、コーティング層の除去及び基材フィルムの巻き取りを効率よく行うことができる。
【0025】
本実施形態に係るコーティング層の除去方法は、例えば、第2実施形態から第6実施形態に係るコーティング層の除去装置を用いて実施できる。
始めに、第2実施形態に係るコーティング層の除去装置100について説明する。
【0026】
〔第2実施形態〕
〔コーティング層の除去装置100〕
図3は、第2実施形態に係るコーティング層の除去装置100の一例の概略図である。
以下では、延伸された積層フィルムを「延伸後の積層フィルム」と称し、延伸されたコーティング層を「延伸後のコーティング層」と称することがある。
図3図7におけるX軸、Y軸、及びZ軸は、それぞれが直交する関係にあり、X軸、及びY軸は、所定平面内の軸とし、Z軸は前記所定平面に直交する軸とする。
【0027】
第2実施形態に係るコーティング層の除去装置100は、基材フィルム51と、コーティング層52とを有する積層フィルム50からコーティング層52を除去するコーティング層の除去装置100であって、積層フィルム50が巻回されたロール1から積層フィルム50を繰り出す繰出手段10と、繰り出された積層フィルム50を延伸する延伸手段20と、延伸された積層フィルム50Aからコーティング層(延伸後のコーティング層52A)を除去する除去手段30と、基材フィルム51をロール状に巻き取る巻取手段40と、を備えている。
第2実施形態においては、除去手段30が粘着ロール5を備える場合について説明する。
【0028】
除去装置100に適用される積層フィルム50は、セラミックグリーンシートの製造に用いられ、セラミックグリーンシートが剥離された後の積層フィルムであることが好ましい。このようにして製造されたセラミックグリーンシートは、積層セラミックコンデンサ(MLCC)の製造に用いられることが好ましい。
【0029】
<繰出手段10>
繰出手段10は、積層フィルム50が巻回されたロール1と、ロール1を回転自在に指示する支持部材(不図示)と、駆動ローラ(不図示)とを備えている。
【0030】
<延伸手段20>
延伸手段20は、第1延伸ロール3Aと、第1延伸ロール3Aよりも下流側に設けられた第2延伸ロール3Bと、第1延伸ロール3A及び第2延伸ロール3Bの周速を制御する周速制御手段3Cと、第1延伸ロール3A及び第2延伸ロール3Bにそれぞれ対向して設けられた第1ニップロール2A及び第2ニップロール2Bと、を備えている。
第1延伸ロール3A及び第2延伸ロール3Bのそれぞれの軸部には、駆動モータM1,M2に接続されている。周速制御手段3Cはこれらの駆動モータM1,M2を制御することで、第1延伸ロール3A及び第2延伸ロール3Bの周速を制御する。周速制御手段3Cは、例えばコンピュータ等である。
【0031】
延伸手段20は、積層フィルム50を加熱する加熱手段を備えることが好ましい。
加熱手段としては特に限定されないが、例えば、赤外線ヒータ、ハロゲンヒータ、UVランプ、及び熱風発生装置等が挙げられる。
加熱手段は、基材フィルムを延伸させ易くする観点から、積層フィルム50の基材フィルム51の側に配置され、基材フィルム51の側から積層フィルム50を加熱することが好ましい。加熱手段は、積層フィルム50のコーティング層52の側に配置され、コーティング層52の側から積層フィルム50を加熱してもよい。
図3の場合、第1延伸ロール3Aから第2延伸ロール3Bの間に、積層フィルム50を基材フィルム51の側から加熱する加熱手段80が設けられている。
【0032】
<除去手段30>
除去手段30は、粘着ロール5を備え、コーティング層(延伸後のコーティング層52A)を基材フィルム51から粘着ロール5に転着させる手段である。
粘着ロール5は、例えば、基材シートと粘着剤層とを有する粘着シート60が巻回されたロールである。基材シートとしては特に限定されず、例えば、紙及び樹脂シート等が挙げられる。粘着剤層は特に限定されず、公知の粘着剤層を用いることができる。
除去手段30は、粘着ロール5と、粘着紙巻き取りロール6と、粘着ロール5に対向して設けられたガイドロール7とを備えている。
図3の場合、粘着シート60の粘着剤層にコーティング層(延伸後のコーティング層52A)が転着される。粘着紙巻き取りロール6は、前記コーティング層52Aが転着した粘着シート(以下、コーティング層付き粘着シート61とも称する)を巻き取る。
【0033】
<巻取手段40>
巻取手段40は、基材フィルム51をロール状に巻き取るための巻き取りロール4と、巻き取りロール4を回転自在に支持する支持部材(不図示)と、駆動ローラ(不図示)とを備えている。
【0034】
第2実施形態に係るコーティング層の除去装置100を用いた場合、第1実施形態に係るコーティング層の除去方法は、例えば、以下の工程を経て実施される。
【0035】
<準備工程>
準備工程は、基材フィルム51とコーティング層52とを有する積層フィルム50が巻回されたロール1を準備する工程である。
準備工程は、予め製造されたロール(積層フィルム50が巻回されたロール1)を単に準備するだけの工程であってもよいし、積層フィルム50が巻回されたロール1を製造する工程であってもよい。
積層フィルム50は、セラミックグリーンシートの製造に用いられ、前記セラミックグリーンシートが剥離された後の積層フィルムであることが好ましい。
【0036】
<繰り出し工程>
繰り出し工程は、積層フィルム50が巻回されたロール1から、積層フィルム50を繰り出す工程である。
図3の場合、繰出手段10によりロール1から繰り出された積層フィルム50は、第1ニップロール2Aへ向かって(図3中、X軸方向)搬送される。
図3中、領域R1における積層フィルムの拡大図は、例えば図1Aで示される。ロール1から繰り出された積層フィルム50は、図3の領域R1では、Z軸方向に向かって基材フィルム51とコーティング層52とがこの順で積層されている。
【0037】
<延伸工程>
延伸工程は、積層フィルム50を延伸する工程である。
図3の場合、ロール1から繰り出された積層フィルム50は、第1ニップロール2A及び第1延伸ロール3Aを略S字状に湾曲しながら通過した後、第1延伸ロール3Aから第2延伸ロール3Bまで積層フィルム50が搬送される領域R2で延伸される。延伸工程により、コーティング層52には、クラックが生じる。図3中、領域R2における延伸後の積層フィルム50Aの拡大図は、例えば図1Bで示される。また、領域R2における延伸後の積層フィルム50AをZ軸から見た状態は、例えば図2で示される。
積層フィルム50を延伸する方法としては、例えば、
・搬送経路の下流側に設けられた第2延伸ロール3Bの周速を、搬送経路の上流側に設けられた第1延伸ロール3Aの周速よりも速くなるように制御する方法、及び
・第1延伸ロール3Aから第2延伸ロール3Bまでの間に他の延伸ロールを1以上設け、積層フィルム50を第1延伸ロール3A、他の延伸ロール及び第2延伸ロール3Bに巻き掛けながら搬送する方法等が挙げられる。
積層フィルム50を延伸する方法としては、搬送経路の下流側に設けられた第2延伸ロール3Bの周速を、搬送経路の上流側に設けられた第1延伸ロール3Aの周速よりも速くなるように制御する方法が好ましい。
【0038】
延伸工程は、積層フィルム50を加熱しながら行うことが好ましい。
図3の場合、積層フィルム50が第1延伸ロール3Aから第2延伸ロール3Bまで搬送される領域R2において、積層フィルム50は基材フィルム51の側から加熱手段80を用いて加熱される。
積層フィルム50を加熱しながら延伸工程を実施することで、延伸工程を常温で実施する場合に比べ、コーティング層52にクラックが生じ易くなる。
延伸工程における加熱は、積層フィルム50として、例えば、セラミックグリーンシートが剥離された後の積層フィルムを用いる場合に、より効果を発現する。
セラミックグリーンシートが剥離された後の積層フィルム、すなわち、使用済の積層フィルムには、セラミックグリーンシートごとに打ち抜き加工が施され、残された表面に微小な切れ目が生じることがあり、この微小な切れ目を起点に積層フィルムの破断が生じ易くなる。よって、使用済の積層フィルムを用いる場合には、積層フィルムを加熱しながら延伸工程を実施することで、積層フィルムの破断が生じにくくなる。その結果、積層フィルム上に形成されたセラミックグリーンシートが所定サイズにカットされ、そしてセラミックグリーンシートが剥離された後の積層フィルムを用いた場合でも、ロールツーロール方式でコーティング層の除去及び基材フィルムの巻き取りを問題なく完遂し得る。
積層フィルム50を加熱する際の加熱温度及び加熱時間は、基材フィルム51及びコーティング層52の材質により決定される。
【0039】
積層フィルム50の加熱は、以下の理由により、基材フィルム51のガラス転移温度Tg以上の温度で行うことが好ましい。
積層フィルム50における基材フィルム51のガラス転移温度Tg、およびコーティング層52のガラス転移温度Tgは、JIS K7121(2012)に定められている方法に準拠して求められ、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定する。尚、延伸時の温度は、基材フィルム51を破断せずに延伸し易くさせ、一方でコーティング層52を破断し易くさせるため、基材フィルム51のガラス転移温度Tg以上が好ましく、基材フィルム51のガラス転移温度Tg以上かつコーティング層52のガラス転移温度Tg以下がより好ましい。
【0040】
<除去工程>
除去工程は、延伸された積層フィルム50Aからコーティング層(延伸後のコーティング層52A)を除去する工程である。
図3の場合、除去工程は、延伸後のコーティング層52Aを基材フィルム51から粘着ロール5に転着させる工程である。
延伸工程で延伸された積層フィルム50Aは、第2延伸ロール3B及び第2ニップロール2Bを略S字状に湾曲して通過した後、粘着ロール5へ向かって搬送される。延伸された積層フィルム50Aは、粘着ロール5及びガイドロール7の間を通過する際に、前記コーティング層52Aが、基材フィルム51から粘着シート60の粘着剤層に転着される。前記コーティング層52Aが転着した粘着シート(コーティング層付き粘着シート61)は、粘着紙巻き取りロール6で巻き取られる。
【0041】
<巻き取り工程>
巻き取り工程は、コーティング層(延伸後のコーティング層52A)が除去された基材フィルム51をロール状に巻き取る工程である。
図3の場合、基材フィルム51は、巻き取りロール4によってロール状に巻き取られる。
【0042】
〔第3実施形態〕
〔コーティング層の除去装置100A〕
第3実施形態に係るコーティング層の除去装置100Aについて説明する。
第3実施形態では、第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明については同一の符号を付す等により、その説明を省略または簡略化する。
図4は、第3実施形態に係るコーティング層の除去装置100Aの一例の概略図である。図4に示す除去装置100Aは、第2実施形態で説明した除去装置100に対し、除去手段が異なる点以外は第2実施形態と同様である。
【0043】
<除去手段30A>
除去手段30Aは、ブレード5Aを備え、延伸後のコーティング層52Aを基材フィルム51から掻き落す手段である。
ブレード5Aは、延伸工程で延伸された積層フィルム50Aよりも下流側の任意の位置に設けられる。
図4の場合、ブレード5Aは、ガイドロール7の下流側で積層フィルム(延伸後の積層フィルム50A)に当接するように設けられている。除去手段30Aは、延伸後のコーティング層52Aを掻き落すブレード5Aと、掻き落とされた前記コーティング層52Aを回収する受け皿63と、を備えている。
ブレード5Aの材質は特に限定されない。
【0044】
第3実施形態に係るコーティング層の除去装置100Aを用いた場合、第1実施形態に係るコーティング層の除去方法は、例えば、以下の工程を経て実施される。
以下では、第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0045】
<除去工程>
除去工程は、延伸後のコーティング層52Aを、ブレード5Aを用いて基材フィルム51から掻き落す工程である。
ブレード5Aによって掻き落とされたコーティング層(延伸後のコーティング層52A)は受け皿63に回収される。
【0046】
〔第4実施形態〕
〔コーティング層の除去装置100B〕
第4実施形態に係るコーティング層の除去装置100Bについて説明する。
第4実施形態では、第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明については同一の符号を付す等により、その説明を省略または簡略化する。
図5は、第4実施形態に係るコーティング層の除去装置100Bの一例の概略図である。図5に示す除去装置100Bは、第2実施形態で説明した除去装置100に対し、除去手段が異なる点以外は第2実施形態と同様である。
【0047】
<除去手段30B>
除去手段30Bは、ワイヤブラシ5Bを備え、延伸後のコーティング層52Aを基材フィルム51から掻き落す手段である。
ワイヤブラシ5Bは、延伸後の積層フィルム50Aよりも下流側の任意の位置に回転可能に設けられる。
図5の場合、ワイヤブラシ5Bは、ガイドロール7と対向して設けられている。除去手段30Bは、延伸後のコーティング層52Aを掻き落すワイヤブラシ5Bと、掻き落とされた前記コーティング層52Aを回収する受け皿63と、を備えている。
ワイヤブラシ5Bの材質は特に限定されない。
図5に示すように、ワイヤブラシ5B及びガイドロール7を水平方向に対向して配置し、前記コーティング層52Aを下方向に掻き落とすことにより、前記コーティング層52Aを効率よく回収できる。
【0048】
第4実施形態に係るコーティング層の除去装置100Bを用いた場合、第1実施形態に係るコーティング層の除去方法は、例えば、以下の工程を経て実施される。
以下では、第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0049】
<除去工程>
除去工程は、延伸後のコーティング層52Aを、ワイヤブラシ5Bを用いて基材フィルム51から掻き落す工程である。
延伸後の積層フィルム50Aがワイヤブラシ5B及びガイドロール7の間を通過する際、ワイヤブラシ5Bの回転により、コーティング層(延伸後のコーティング層52A)が基材フィルム51から掻き落とされる。掻き落とされたコーティング層(延伸後のコーティング層52A)は受け皿63に回収される。
【0050】
〔第5実施形態〕
〔コーティング層の除去装置100C〕
第5実施形態に係るコーティング層の除去装置100Cについて説明する。
第5実施形態では、第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明については同一の符号を付す等により、その説明を省略または簡略化する。
図6は、第5実施形態に係るコーティング層の除去装置100Cの一例の概略図である。図6に示す除去装置100Cは、第2実施形態で説明した除去装置100に対し、除去手段が異なる点以外は第2実施形態と同様である。
【0051】
<除去手段30C>
除去手段30Cは、ブラスト処理装置5Cを備え、延伸後のコーティング層52Aを基材フィルム51からブラスト材で削り取る手段である。
ブラスト処理装置5Cは、延伸後の積層フィルム50Aよりも下流側の任意の位置に設けられ、ブラスト材をコーティング層(延伸後のコーティング層52A)に吹き付けることにより、前記コーティング層52Aを削り取る。
図5の場合、除去手段30Cは、ブラスト処理装置5Cと、削り取られた前記コーティング層52Aをブラスト材(不図示)と共に回収する受け皿63と、を備えている。
ブラスト処理装置5Cは、公知のブラスト処理装置を用いることができる。
ブラスト材としては、例えば、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、炭化ケイ素粒子、アルミナ粒子、ドライアイス粒子、及びメラミン樹脂粒子等が挙げられる。ブラスト材としてドライアイス粒子を用いた場合、ドライアイス粒子はブラスト処理後に消失するので、粒子の除去作業が不要となることで好ましい。ブラスト材の粒径は、好適には5μm以上40μm以下である。
ブラスト材の吹き付け条件は、コーティング層の材質により決定される。
【0052】
第5実施形態に係るコーティング層の除去装置100Cを用いた場合、第1実施形態に係るコーティング層の除去方法は、例えば、以下の工程を経て実施される。
以下では、第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0053】
<除去工程>
除去工程は、コーティング層(延伸後のコーティング層52A)を基材フィルム51からブラスト材で削り取る工程である。
延伸された積層フィルム50Aは、ブラスト処理装置5C及びガイドロール7の間を通過する際、ブラスト処理装置5Cからブラスト材(不図示)が吹き付けられることにより、延伸後のコーティング層52Aが基材フィルム51から削り取られる。削り取られたコーティング層(延伸後のコーティング層52A)はブラスト材と共に受け皿63に回収される。
【0054】
〔第6実施形態〕
〔コーティング層の除去装置100D〕
第6実施形態に係るコーティング層の除去装置100Dについて説明する。
第6実施形態では、第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明については同一の符号を付す等により、その説明を省略または簡略化する。
図7は、第6実施形態に係るコーティング層の除去装置100Dの一例の概略図である。
【0055】
図7に示す除去装置100Dは、第2実施形態で説明した除去装置100に対し、延伸手段及び除去手段の間に水蒸気吹付手段が設けられた点以外は第2実施形態と同様である。
【0056】
<水蒸気吹付手段>
水蒸気吹付手段は、延伸された積層フィルム50Aのコーティング層(延伸後のコーティング層52A)に向けて過熱水蒸気を吹き付ける手段である。
水蒸気吹付手段は水蒸気を加熱するためのヒータと、過熱水蒸気を吹き付けるための水蒸気吹付ノズルとを備えていればよい。
水蒸気吹付手段は、延伸手段20と除去手段30との間に設けられる。
【0057】
図7の場合、水蒸気吹付手段は、複数の水蒸気吹付ノズル70aと、処理室72とを有する過熱器70である。過熱器70は、ボイラー71と処理室72との間に設けられている。過熱器70はボイラー71に接続されており、ボイラー71で発生した水蒸気を加熱して過熱水蒸気を発生させ、水蒸気吹付ノズル70aから、処理室72内のコーティング層(延伸後のコーティング層52A)に向けて過熱水蒸気を吹き付ける。
【0058】
第6実施形態に係るコーティング層の除去装置100Dを用いた場合、第1実施形態に係るコーティング層の除去方法は、例えば、以下の工程を経て実施される。
以下では、第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0059】
<蒸気吹き付け工程>
蒸気吹き付け工程は、延伸工程の後、かつ除去工程の前に、延伸された積層フィルム50Aのコーティング層(延伸後のコーティング層52A)に向けて、過熱水蒸気を吹き付ける工程である。
図7の場合、延伸後の積層フィルム50Aは、水蒸気吹付ノズル70aから前記コーティング層52Aに向けて過熱水蒸気が吹き付けられた後、処理室72から排出され急冷される。この急冷により、コーティング層52Aと基材フィルム51との熱膨張率の差からコーティング層52Aに歪みが生じ易くなり、コーティング層52Aの界面剥離が助長される。その結果、続く除去工程で、コーティング層52Aが基材フィルム51からより除去され易くなる。
過熱水蒸気の温度は、100℃以上450℃以下が好ましく、150℃以上400℃以下がより好ましく、200℃以上350℃以下がさらに好ましい。
過熱水蒸気の吹付時間は、コーティング層の材質、及び積層フィルム50の搬送速度等により決定される。
【0060】
〔実施形態の変形〕
第2実施形態から第6実施形態に係る除去装置において、加熱手段80は、繰出手段10及び第1延伸ロール3Aの間に設けられてもよい。すなわち、加熱手段80は、積層フィルム50が延伸される前に、積層フィルム50を加熱するように配置されることも好ましい。この場合、第1実施形態に係る除去方法は、繰り出し工程の後、かつ延伸工程の前に、積層フィルム50を加熱する工程をさらに有する。延伸工程を実施する前に積層フィルム50を加熱することで、コーティング層52にクラックが生じ易くなる。
本発明は、前記実施形態に限定されない。本発明は、本発明の目的を達成できる範囲での変形及び改良等を含むことができる。
【0061】
第1実施形態に係るコーティング層の除去方法、及び第2実施形態から第6実施形態に係るコーティング層の除去装置に用いられる積層フィルムの構成について説明する。
【0062】
〔積層フィルム〕
前述のいずれかの実施形態で用いる積層フィルムは、基材フィルムと、コーティング層とを有する。
コーティング層は単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上のコーティング層からなる複層であってもよい。また、基材フィルムの両面にコーティング層が形成されていてもよい。
積層フィルムは、当該積層フィルムからコーティング層を除去し、残存する基材フィルムを回収し易くする観点から、基材フィルムとコーティング層とが、直接積層している構成であることが好ましい。ここで、「直接積層」とは、例えば、基材フィルムと、コーティング層との間に、他の層を有さずに、基材フィルム及びコーティング層が互いに直接接触している構成を指す。
【0063】
<基材フィルム>
基材フィルムは、回収を予定している樹脂成分が製膜された樹脂フィルムが使用される。
樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム;ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリアミドフィルム;ポリカーボネートフィルム;ポリアセテートフィルム;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体フィルム;エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム;シクロオレフィンポリマーフィルム;ポリウレタンフィルム;ポリフェニレンスルフィドフィルム;セロハン;等を用いることができる。
これらの中でも、耐熱性及び強度の観点から、ポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムとしては、樹脂の回収及び再生がし易い観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレートのいずれかを主たる構成成分とするポリエステルフィルムが好ましい。
また、樹脂フィルムは、公知のフィラー、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、及び触媒等を含有してもよい。また、樹脂フィルムは、透明なものであっても、所望により着色等されていてもよい。また、基材フィルムの少なくとも1つの表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、及び酸化等のエッチング処理等の表面処理を必要に応じて施してもよい。
【0064】
基材フィルムの厚さは、特に制限はないが、強度、剛性等の観点から、好ましくは10μm以上500μm以下、より好ましくは15μm以上300μm以下、更に好ましくは20μm以上200μm以下である。
【0065】
<コーティング層>
前記コーティング層は、機能層であることが好ましい。機能層としては、例えば、剥離剤層、印刷層、ハードコート層、易接着層及び粘着剤層が挙げられる。これらの中でも、コーティング層は、剥離剤層であることが好ましい。
コーティング層が剥離剤層である場合、前記剥離剤層は、剥離剤組成物から形成された層であることが好ましい。
前記剥離剤層の形成に用いられる剥離剤組成物としては、剥離性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、シリコーン系化合物;フッ素化合物;長鎖アルキル基含有化合物;オレフィン系樹脂、ジエン系樹脂などの熱可塑性樹脂材料;などを主成分とする剥離剤組成物を用いることができる。また、エネルギー線硬化型又は熱硬化型樹脂を主成分とする剥離剤組成物を使用することが好ましい。これらの剥離剤組成物は、1種を単独で用いてもよく、又は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
シリコーン系化合物を主成分とする剥離剤組成物において、前記シリコーン系化合物としては、基本骨格としてオルガノポリシロキサンを有するシリコーン系化合物が挙げられる。また、前記シリコーン系化合物としては、付加反応型及び縮合反応型などの熱硬化型シリコーン系化合物;紫外線硬化型、及び電子線硬化型などのエネルギー線硬化型シリコーン系化合物;などが挙げられる。
【0067】
フッ素化合物を主成分とする剥離剤組成物において、前記フッ素化合物としては、フッ素シリコーン化合物、フッ素ボロン化合物、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有化合物などが挙げられる。
【0068】
長鎖アルキル基含有化合物を主成分とする剥離剤組成物において、前記長鎖アルキル基含有化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール系重合体に、長鎖アルキルイソシアネートを反応させて得られたポリビニルカーバメートや、ポリエチレンイミンに、長鎖アルキルイソシアネートを反応させて得られたアルキル尿素誘導体、あるいは長鎖アルキル(メタ)アクリレートの共重合体などが挙げられる。さらに、多価アルコールと多塩基酸との縮合反応によって得られるアルキド樹脂に、長鎖脂肪酸を変性剤として用いた長鎖アルキル変性アルキッド樹脂が用いられてもよい。
【0069】
エネルギー線硬化型樹脂を主成分とする剥離剤組成物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基及びマレイミド基から選択される反応性官能基を有するエネルギー線硬化性化合物と、ポリオルガノシロキサンとを含むものが好ましい。この剥離剤組成物により形成された剥離剤層においては、相互に分子構造、極性、分子量が異なるエネルギー線硬化性化合物及びポリオルガノシロキサンを用いているので、硬化前にポリオルガノシロキサンに由来する成分が剥離剤層の外表面付近に偏析した状態となり、その後エネルギー線により硬化し偏析が固定化する。これにより、剥離剤層の剥離性を向上することができる。エネルギー線硬化型樹脂を主成分とする剥離剤組成物としては、更に、光重合開始剤を含んでいてもよい。
【0070】
熱硬化型樹脂を主成分とする剥離剤組成物としては、例えば、メラミン樹脂を主成分とする剥離剤組成物やエポキシ樹脂を主成分とする剥離剤組成物が挙げられる。メラミン樹脂を主成分とする剥離剤組成物としては、主剤であるメラミン樹脂、メラミン樹脂を熱硬化させる酸触媒、及び剥離剤層に剥離性を付与するポリオルガノシロキサンを含む組成物が挙げられる。また、エポキシ樹脂を主成分とする剥離剤組成物としては、主剤であるエポキシ樹脂、エポキシ樹脂を熱硬化させる酸又は塩基性の熱硬化触媒、及び剥離剤層に剥離性を付与するポリオルガノシロキサンを含む組成物が挙げられる。硬化前にポリオルガノシロキサンに由来する成分が剥離剤層の外表面付近に偏析した状態となり、その後硬化して偏析が固定化する。これにより、剥離剤層の剥離性を向上することができる。
【0071】
また、前記コーティング層には、前述の樹脂成分以外に、その他の添加剤を含有していてもよい。その他の添加剤としては、例えば、老化防止剤、光安定剤、難燃剤、導電剤、帯電防止剤、可塑剤等が挙げられる。
【0072】
コーティング層の厚さは、適宜、選択することが可能であり、特に制限はないが、例えば、好ましくは0.02μm以上5μm以下、より好ましくは0.03μm以上2μm以下、更に好ましくは0.05μm以上1.5μm以下である。
【0073】
各実施形態で用いられる積層フィルムは、一般に、特定の用途に用いられる他の機能性シートや各種部品の製造、運搬、保管時等に、これらの機能性シートや部品の表面を保護する目的等で用いられる。実際にこれらの部品等の保護の役目を果たした後は、表面から剥離され、廃棄されることも多い。そのため、前記積層フィルムを用いることで、積層フィルムからコーティング層と基材フィルムとを容易に分離することができるため、資源保護、環境保護の観点からも、貢献度の高い用途である。
【符号の説明】
【0074】
1…ロール、2A…第1ニップロール、2B…第2ニップロール、3A…第1延伸ロール、3B…第2延伸ロール、3C…周速制御手段、4…巻き取りロール、5…粘着ロール、5A…ブレード、5B…ワイヤブラシ、5C…ブラスト処理装置、6…粘着紙巻き取りロール、7…ガイドロール、10…繰出手段、20…延伸手段、30,30A,30B,30C…除去手段、40…巻取手段、50,50A…積層フィルム、51…基材フィルム、52,52A…コーティング層、60…粘着シート、61…コーティング層付き粘着シート、63…受け皿、70…過熱器、70a…水蒸気吹付ノズル、71…ボイラー、72…処理室、80…加熱手段、100,100A,100B,100C,100D…除去装置、522…クラック。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7