(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148864
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】イオン・オゾン風発生装置
(51)【国際特許分類】
H01T 23/00 20060101AFI20231005BHJP
H01T 19/04 20060101ALI20231005BHJP
A61L 9/22 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01T23/00
H01T19/04
A61L9/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057135
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】503317119
【氏名又は名称】株式会社 片野工業
(71)【出願人】
【識別番号】520043327
【氏名又は名称】エアーサクセスジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(74)【代理人】
【識別番号】100173680
【弁理士】
【氏名又は名称】納口 慶太
(72)【発明者】
【氏名】片野 明夫
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA17
4C180AA19
4C180CA10
4C180DD12
4C180EA17X
4C180HH02
4C180HH05
(57)【要約】
【課題】簡便な構成で性能を変化させることが可能なイオン・オゾン風発生装置を提供する。
【解決手段】放電電極体14と、放電電極体14との間に電位差を発生させる対向電極部18であって、放電電極体14と対向電極部18の最短距離が第1の距離となる第1の配置状態と、放電電極体14と対向電極部18の最短距離が第1の距離よりも長い第2の距離となる第2の配置状態と、の少なくともいずれか一方に選択可能な対向電極部18と、を備え、電位差によって、イオン・オゾン風を発生させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極と、
前記放電電極との間に電位差を発生させる対向電極であって、前記放電電極と前記対向電極の最短距離が第1の距離となる第1の配置状態と、前記放電電極と前記対向電極の最短距離が前記第1の距離よりも長い第2の距離となる第2の配置状態と、の少なくともいずれか一方に選択可能な対向電極と、を備え、
前記電位差によって、イオン・オゾン風を発生させるイオン・オゾン風発生装置。
【請求項2】
放電電極と、
前記放電電極との間に電位差を発生させる対向電極であって、軸線を囲む環状形状を有し、第1の開口部と、前記軸線に沿って前記第1の開口部から離隔して位置する第2の開口部と、を有し、前記第1の開口部が前記第2の開口部よりも前記放電電極に近い第1の配置状態と、前記第2の開口部が前記第1の開口部よりも前記放電電極に近い第2の配置状態と、の少なくともいずれか一方に選択可能な対向電極と、を備え、
前記電位差によって、イオン・オゾン風を発生させるイオン・オゾン風発生装置。
【請求項3】
放電電極と、
前記放電電極との間に電位差を発生させる対向電極と、
前記対向電極の向きを変えて前記対向電極を保持し、前記放電電極と前記対向電極との距離を変更することが可能な距離変更部と、を備え、
前記電位差によって、イオン・オゾン風を発生させるイオン・オゾン風発生装置。
【請求項4】
少なくとも1つの突出形状の前記対向電極と、平面形状の前記対向電極とを有し、
前記対向電極を、突出形状の前記対向電極と、平面形状の前記対向電極との間で変更する請求項1又は3に記載のイオン・オゾン風発生装置。
【請求項5】
表裏の位置関係にある平面形状の前記対向電極を有し、
前記対向電極の向きを変えることで、表裏の前記対向電極の変更を行う請求項1又は3に記載のイオン・オゾン風発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナ放電によりイオン・オゾン風を発生させるイオン・オゾン風発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイナスイオンやオゾンを発生させるイオン・オゾン風発生装置を用いて対象空間を消臭、浄化、又は、冷却等する技術が提案されている。イオン・オゾン風発生装置は、空気清浄効果等があるマイナスイオンとオゾンとを同時発生させることが可能である。例えば、特許文献1には、放電効率が高く、良好なイオン風やオゾンを発生させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたようなイオン風発生装置において、使用者がイオン風の性能(風速、風量、強さなど)に過不足を感じた場合、性能を変化させることができれば、イオン風発生装置の利便性が向上する。
【0005】
イオン風の性能を変化させるために、イオン風発生装置への供給電圧を変化させることや、送風ファンを追加すること、又は、性能の異なるイオン風発生装置を複数用意することなどが考えられる。また、他の方法として、放電電極及び対向電極のうち、少なくとも一方を移動させるための機構を設け、放電電極と対向電極の距離を変化させることが考えられる。
【0006】
しかし、これらの方法では、イオン風発生装置の大型化、高重量化、及び、複雑化を避けることが困難である。また、設計変更や部品などのコストが大となったり、比較的頻繁なメンテナンス(清掃など)が必要になったりする。
【0007】
本発明は、このような観点から成されたものであり、簡便な構成で性能を変化させることが可能なイオン・オゾン風発生装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるイオン・オゾン風発生装置は、放電電極と、
前記放電電極との間に電位差を発生させる対向電極であって、前記放電電極と前記対向電極の最短距離が第1の距離となる第1の配置状態と、前記放電電極と前記対向電極の最短距離が前記第1の距離よりも長い第2の距離となる第2の配置状態と、の少なくともいずれか一方に選択可能な対向電極と、を備え、
前記電位差によって、イオン・オゾン風を発生させる。
【発明の効果】
【0009】
簡便な構成で性能を変化させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は第1実施形態に係るイオン・オゾン風発生装置10の内部の構成を概略的に示す正面図、(b)は(a)のE-E線に沿った平断面図、(c)は(b)の状態から対向電極部18を裏返した状態を示す平断面図である。
【
図2】係合爪26の周辺部を拡大して示す平断面図である。
【
図3】係合爪26の周辺部を拡大して示す正面図である。
【
図4】コロナ放電の様子とイオン・オゾン風の発生の様子を模式的に示す説明図である。
【
図5】(a)は第2実施形態に係るイオン・オゾン風発生装置40の構成を概略的に示す説明図、(b)は(a)の対向電極部48を放電電極体14の側から見た状態を示す説明図、(c)は対向電極部48を裏返した状態を示す説明図、(d)は(c)の対向電極部48を放電電極体14の側から見た状態を示す説明図である。
【
図6】(a)は第3実施形態に係るイオン・オゾン風発生装置60の構成を概略的に示す説明図、(b)は(a)の対向電極部68を放電電極体14の側から見た状態を示す説明図、(c)は対向電極部68を裏返した状態を示す説明図、(d)は(c)の対向電極部68を放電電極体14の側から見た状態を示す説明図である。
【
図7】(a)は第4実施形態に係るイオン・オゾン風発生装置100の構成を概略的に示す説明図、(b)は対向電極形成部106を裏返した状態を示す説明図である。
【
図8】(a)は第5実施形態に係るイオン・オゾン風発生装置120の構成を概略的に示す説明図、(b)は対向電極形成部126を裏返した状態を示す説明図である。
【
図9】(a)は第6実施形態に係るイオン・オゾン風発生装置140の構成を概略的に示す説明図、(b)は対向電極形成部146を裏返した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態に係るイオン・オゾン風発生装置について説明する。なお、以下に示す例示はあくまで一例であり、本明細書中にて一例として挙げている実施の形態や変更例は、特定のものに対して適用されると限定的に解すべきでなく、どのような組み合わせであってもよい。例えば、ある実施の形態についての変更例は、別の実施の形態の変更例であると理解すべきであり、また、ある変更例と別の変更例が独立して記載されていたとしても、当該ある変更例と当該別の変更例を組み合わせたものも記載されていると理解すべきである。また、本明細書中において、「電極体」と「電極」とを区別せずに使用する場合がある。
【0012】
<第1実施形態>
図1(a)は、第1実施形態のイオン・オゾン風発生装置10の内部を正面から見た状態を模式的に示しており、
図1(b)は、
図1(a)におけるE-E線に沿って、枠体22と導電板24を横断した状態を示している。
図1(c)は、
図1(b)に示す状態から、位置状態の変更を行った後の状態を示している。位置状態の変更や選択については後述する。
【0013】
図1(a)、(b)に示すように、第1実施形態のイオン・オゾン風発生装置10は、ケース12内に、複数(ここでは3個)の放電電極体14と、1つの対向電極形成部16を有している。対向電極形成部16には、複数(ここでは3個)の対向電極部18が形成されており、1つずつの放電電極体14と、対向電極部18とが組み合わされて、3つのイオン・オゾン風発生部20が形成されている。
【0014】
放電電極体14は、金属などの導電体を針状に加工して形成されており、先鋭な先端を、対向電極部18の中心部に正対させている。放電電極体14は、対向電極部18の中央部に対し、所定の距離(例えば1~3センチメートル程度)を置いて対向している。
図1(a)では、背後から見た状態の放電電極体14が、黒丸の点により模式的に示されている。
【0015】
対向電極形成部16は、矩形状の枠体22と、同じく矩形状の導電板24とを組み合わせて形成されている。枠体22は、合成樹脂製(例えば、ABS、POMなど)であり、電気的に絶縁性である。枠体22は、奥行方向(放電電極体14と向かい合う方向)に、或る程度(例えば1センチメートル程度)の厚みを有している。
図2(a)は、枠体22の一部を拡大して示している。
図2(a)の符号Aは、枠体22の、奥行方向における厚さ寸法を示しており、C1は、奥行方向における中心(寸法Aの中心)を示している。
【0016】
図1(a)、(b)及び
図2(a)に示すように、枠体22は、外周に複数(ここでは4個)の係合爪26を有している。
図1(a)に示すように、係合爪26は、枠体22の各辺における中間部に配置されている。
【0017】
係合爪26は、合成樹脂製であり、枠体22に一体成型されている。
図1(a)、(b)の例では、係合爪26は、矩形の板状に形成され、外向きに突出している。また、枠体22の奥行方向に関して、係合爪26の位置は、ほぼ中間(中心線C1上)である。係合爪26は、枠体22における一方の端面(「一端面」ともいう)22a及び他方の端面(「他端面」ともいう)22bのいずれに対しても、同様の距離に位置している。
【0018】
係合爪26は、
図3に1つのみ拡大して示すように、ケース12に形成された係合凹部28に嵌め込まれる。各係合爪26を係合凹部28に嵌め込むことで、対向電極形成部16が、ケース12に固定され、ケース12によって保持される。係合爪26は、ケース12に弾性的に係合している。
【0019】
例えば、イオン・オゾン風発生装置10のユーザが、手指の爪により、係合爪26を手前に引き出したりすることにより、係合爪26は係合凹部28から分離される。全ての係合爪26が、係合凹部28から分離すると、枠体22が、ケース12から取り外される。また、係合凹部28を、対応する係合爪26に嵌め込むことにより、枠体22が、ケース12に再度装着される。
【0020】
各係合爪26と、ケース12の係合凹部28とにおける形状や寸法、及び、位置の関係は、枠体22を裏返しても(枠体22の表裏を反転しても)変わらない。このため、枠体22は、ケース12から取り外し、裏返してケース12に再度装着することが可能である。ここで、係合爪26と係合凹部28の数や配置は、枠体22を裏返して装着できれば任意に決定できる。また、係合爪26と係合凹部28による支持に限らず、例えば、ビス止め等の方法による支持構造を採用することも可能である。
【0021】
続いて、導電板24について説明する。導電板24は、ステンレス等の金属製であり、ほぼ均一な厚みを有している。導電板24は、全周に亘り、枠体22の内周面に形成された取り付け溝部30に嵌め込まれて、枠体22に固定されている。
【0022】
枠体22の奥行方向に関して、導電板24の位置は、
図2(a)に拡大して示すように、偏倚している。
図2(a)において、寸法B1は、枠体22における一端面22aから、導電板24の中心線(厚さ方向の中心線)C2までの寸法を示している。寸法B2は、枠体22における他端面22bから、導電板24の中心線C2までの寸法を示している。寸法B1と寸法B2の間には、B1>B2の関係がある。
【0023】
図1(a)、(b)及び
図2(a)の例では、枠体22における一端面22aが、放電電極体14の側を向いている。このため、寸法B1の部位が放電電極体14の側に位置し、寸法B2の部位が放電電極体14に対して逆の側に位置している。
【0024】
しかし、枠体22をケース12に裏返して装着することにより、
図1(c)に示すように、一端面22aが放電電極体14に対して反対の側に向き、他端面22bが放電電極体14の側を向く。そして、
図1(c)及び
図2(b)に示すように、寸法B2の部位が放電電極体14の側に位置し、寸法B1の部位が放電電極体14に対して逆の側に位置する。このように、枠体22を裏返すことにより対向電極形成部16の向きが変わり、導電板24も裏返る。
【0025】
枠体22を裏返すことにより、
図1(b)、(c)に示すように、導電板24の位置も変化する。
図1(b)の寸法D1は、枠体22を裏返す前における、放電電極体14の先端部と導電板24との最短距離を示している。
図1(c)の寸法D2は、枠体22を裏返した後における、放電電極体14の先端部と導電板24との最短距離を示している。両寸法D1、D2の間には、D1>D2の関係がある。
【0026】
導電板24には、長手方向(
図1(a)~(c)の左右方向)に沿って、対向電極部18がほぼ等間隔で配置されている。各対向電極部18は、多重リング構造を有するタイプのものである。各対向電極部18は、いずれも同様の構造を有しているため、ここでは1つの対向電極部18について説明し、他の対向電極部18についての説明は適宜省略する。
【0027】
各対向電極部18は、
図1(a)に示すように、導電板24に真円状穴32や、多数の円弧状穴34を同心的に形成することで形成されている。真円状穴32と円弧状穴34の間には、真円状(リング状)や直線状のリブ(柱状部)36が残されており、リブ36の周縁部(及び最外側の円弧状穴34の周縁部)が、角張ったエッジ部(「角部」ともいう)となっている。真円状穴32は、軸線を囲むよう形成されている。
【0028】
対向電極部18は、導電板24の厚さ方向に穴(真円状穴32や円弧状穴34)を開けることにより、環状形状に形成されている。このため、対向電極部18は、表と裏(導電板24の表裏に対応する)のいずれにも導電性を有している。さらに、対向電極部18は、表と裏のいずれにも、エッジ部(リブ36の角張った周縁部)を有している。
【0029】
図1~
図3の例では、導電板24に穴加工を行うことで対向電極部18が形成されているが、対向電極部18や対向電極部18の表裏に導電性を持たせることができれば、種々の構造を採用することが可能である。例えば、枠体22と対向電極部18とを、導電性のリブで接続してもよい。また、枠体22にリブ36を合成樹脂により一体成型し、リブ36に導電性材料を塗布して、リブ36を導電膜で覆ってもよい。
【0030】
放電電極体14と対向電極部18の間には所定の電圧が印加される。放電電極体14は、放電極として機能し、対向電極部18は、受電極として機能する。放電電極体14と対向電極部18との間に電位差が発生することにより、これらの電極体間でコロナ放電が生じる。
【0031】
コロナ放電時には、放電電極体14から放出されるイオンと低濃度オゾンが、対向電極部18へ向かって泳動する。そして、イオンやオゾンを含み、放電電極体14から対向電極部18に向かう空気流、即ちイオン・オゾン風が形成される。
【0032】
泳動するイオンは、空気分子との衝突を繰り返す。電荷を持つイオンは、空気中に浮遊する塵やホコリ、アレルゲンとなる花粉、カビの微粒子、ウイルス、及び、雑菌等の有機物と吸着しやすく、これらの有機物の酸化分解を促進する。発生したイオン風は、オゾンを遠くへ飛ばす役割も発揮する。
【0033】
オゾン(O3)は、有機物に付着し、酸素(O2)と酸素原子(O)に分離する。そして、酸素原子が、有機物を酸化分解する。 反応後に残るのは酸素(O2)である。
【0034】
図4は、イオン・オゾン風発生装置10におけるコロナ放電の様子と、イオン・オゾン風の発生の様子を模式的に示している。イオン・オゾン風発生装置10のように多重リング構造タイプの対向電極部18を採用した場合には、選択的に多重の放電(「多重リング極コロナ放電」ともいう)が行われる。多重リング極コロナ放電では、放電極(ここでは放電電極体14)と、多数の受電極(ここではリング状や直線状のリブ36など)との間の放電に加え、多重リングの中心から外側に向かって連鎖的にコロナ放電が起きる。
【0035】
放電極の先端に対して一番距離が近い中心の円(ここでは真円状穴32)からは相対的に強いイオン・オゾン風が発生し、外側の円(ここでは外側の円弧状穴34)にいくにつれてイオン・オゾン風は弱まる。しかし、中心で発生する強いイオン・オゾン風に巻き込まれて、大量のイオン・オゾン風が勢いよく遠方へ向けて放出される。
【0036】
多重リング極コロナ放電によれば、オゾンを間欠的に発生させ、発生するオゾンの量を少なくして、全体としてオゾンの濃度を低くすることができる。また、多重リングによりコロナ放電が発生しやすい電場を形成することができ、例えば、放電極(ここでは放電電極体14)に平面状の対向電極を向かい合わせた場合に比べ、イオンの風量を大とすることが可能である。そして、これらのことから、大量のイオンと低濃度オゾンを効率よく発生させることが可能である。
【0037】
イオン・オゾン風発生装置10において、前述したように、枠体22(対向電極形成部16)を裏返すことにより、導電板24の位置を変更することが可能である。導電板24の位置を変更することにより、対向電極部18の配置状態が選択される。
【0038】
つまり、
図1(b)のように、枠体22の一端面22aを放電電極体14の側に向けた場合には、導電板24(及び対向電極部18)が、放電電極体14に対して相対的に遠い位置に配置され、第1の配置状態となる。これに対し、
図1(c)のように、枠体22の他端面22bを放電電極体14の側に向けた場合には、導電板24(及び対向電極部18)が、放電電極体14に対して相対的に近い位置に配置され、第2の配置状態となる。
【0039】
対向電極部18と放電電極体14との距離が遠い場合には、イオン・オゾン風は相対的に弱くなる。対向電極部18と放電電極体14との距離が近い場合には、イオン・オゾン風は相対的に強くなる。このため、対向電極部18を裏返すことにより、イオン・オゾン風の強度を変えることができる。そして、イオン・オゾン風発生装置10の性能を、係合凹部28と係合爪26といった簡便な構成により、変更することが可能となる。
【0040】
枠体22(対向電極形成部16)を裏返して、対向電極部18と放電電極体14との距離を変更する際には、枠体22の係合爪26や、ケース12の係合凹部28などが、距離変更部として機能する。また、枠体22を裏返すことは、対向電極形成部16を裏返すことや、対向電極部18を裏返すことでもある。
【0041】
また、放電電極体14と対向電極部18の組の配置は、一列の配置に限らず、例えば、マトリクス状や、千鳥配列状、又は、多重の環状などであってもよい。
【0042】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るイオン・オゾン風発生装置40について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同様の名称や同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
図5(a)~(d)は、第2実施形態に係るイオン・オゾン風発生装置40の構成を模式的に示している。
図5(a)~(d)における符号42は、導電板を示している。
図5(a)~(d)における黒塗り(塗りつぶし)箇所は、導電性を有する部分の断面を示している。
【0043】
図5(a)、(b)の例における導電板42は、真円状に開口する穴44を有している。穴44の内周面46はテーパ状に加工されており、穴44の大きさは、軸方向(導電板42の厚さ方向)の一端側から他端側へ徐々に変化している。
【0044】
導電板42における穴44や、その周縁部は、環状形状に対向電極部48を形成している。対向電極部48は、放電電極体14の尖鋭な先端部に正対している。放電電極体14は、穴44が囲む軸線(中心線、図示略)上に、同軸的に位置している。放電電極体14や導電板42の支持は、第1実施形態における放電電極体14や導電板24と同様に行うことが可能である。
【0045】
具体的には、第1実施形態の係合爪26と係合凹部28の組や、その他の支持手段を、放電電極体14と対向電極部48との距離を変更する距離変更部として用いることが可能である。第2実施形態においても、後述するように、対向電極部48を構成する導電板42が裏返されるが、導電板42の厚み(受電極幅、矢印Fで示す)の1/2の位置(厚み方向のF/2の位置)を中心として裏返す構造を採用してもよい。また、これとは異なり、第1実施形態と同様に、枠体22(
図1(a)を援用する)の奥行方向について、導電板42(
図1(a)の導電板24に相当する)の位置を偏倚させてもよい。
【0046】
図5(a)、(c)では、導電板42の機能が明確になるよう、導電板42の厚み(受電極幅、矢印Fで示す)が、第1実施形態における導電板24よりも数倍大きいように示されている。しかし、導電板42の十分な剛性や、イオン・オゾン風の十分な風量(風速、強さ等を含む)を得ることができれば、導電板42の厚み(矢印Fで示す)はどのような大きさであってもよい。
【0047】
図5(a)、(b)の例では、導電板42の、放電電極体14の側を向いた一方の板面42aにおける穴44の大きさ(開口径)が、放電電極体14とは反対の側を向いた他方の板面42bにおける穴44の大きさよりも大きい。
【0048】
導電板42の、一方の板面42aにおいて、穴44の周縁部には、鈍角のエッジ部52が形成されている。このエッジ部52は、穴44の小径側における開口の周縁部を構成している。導電板42の、他方の板面42bにおいて、穴44のエッジ部54の周縁部には、鋭角のエッジ部54が形成されている。このエッジ部54は、穴44の大径側における開口の周縁部を構成している。
【0049】
導電板42の、一方のエッジ部52は、放電電極体14の側に向けられている。他方のエッジ部54は、放電電極体14とは反対の側に向けられている。他方のエッジ部54は、穴44における小径側の開口の周縁部を構成していることから、放電電極体14の先端部と、仮想的に直線で結ぶことが可能である。
【0050】
つまり、放電電極体14における先端部の位置から穴44を見た場合、
図5(b)に示すように、穴44における手前側のエッジ部52の内側に、奥側のエッジ部54が現れている。そして、両方のエッジ部52、54は、共通の投影面内で視認することができる。
【0051】
穴44の内周面46についても、内周面46は、放電電極体14の側を向いている。このため、
図5(b)に示すように、内周面46も、両エッジ部52、54と共通の投影面内に現れ、放電電極体14における先端部の位置から、内周面46を視認することが可能である。
【0052】
放電電極体14と対向電極部48との間のコロナ放電は、
図5(a)に破線で示すように、放電電極体14と、エッジ部52、54、及び、内周面46との間で行われる。内周面46は、凹凸のある部分や、尖鋭な部分が積極的に形成されているわけではない。しかし、滑らかな曲面や平坦面であるように視認できる面との間であって、選択的なコロナ放電が発生する。
【0053】
ここで、
図5(a)における矢印Gは、放電電極体14の先鋭な先端から、導電板42の、放電電極体14とは反対の側を向いた他方の板面42bまでの距離(
図5(a)における水平距離である最短距離)を示している。
【0054】
図5(c)、(d)は、対向電極部48が、
図5(a)、(b)に示す状態(第1の配置状態)から、導電板42を裏返して設置した状態(第2の配置状態)に変化した様子を示している。導電板42を裏返した場合には、導電板42の、一方のエッジ部52は、放電電極体14とは反対の側に向けられる。また、他方のエッジ部54は、放電電極体14の側に向けられる。
【0055】
ここで、
図5(c)における矢印Hは、放電電極体14の先鋭な先端から、導電板42の、放電電極体14の側を向いた他方の板面42bまでの距離(
図5(a)における水平距離)を示している。この距離Hは、導電板42の厚み(矢印Fで示す)の分だけ、
図5(a)における距離Gよりも小さい。
【0056】
エッジ部52、54、及び、内周面46のうち、放電電極体14の先端部から見た場合の投影面内に視認できるのは、
図5(d)に示すように、エッジ部54のみである。そして、放電電極体14の先端部と、仮想的に直線で結ぶことが可能なのは、エッジ部54のみである。
【0057】
このため、コロナ放電が発生し易い部位は、放電電極体14とエッジ部54の間に限られる。そして、選択的なコロナ放電の対象となる部位の長さや面積が、
図5(a)、(b)の場合と比べて少なくなる。したがって、第2実施形態においても、対向電極部68に関して、配置状態の選択が可能である。
【0058】
このような第2実施形態のイオン・オゾン風発生装置40は、導電板42を裏返して導電板42の向きを変えることにより、導電板42の、コロナ放電を選択的に発生させ得る部位(放電発生部位)の長さや面積を増減させるものと捉えることが可能である。そして、導電板42と放電電極体14との最短距離を変更する技術事項との組み合わせにより、一層大きく(明確に)性能の変更を行うことが可能である。なお、放電電極体14と対向電極部68の組は、複数備えられていてもよい。
【0059】
また、第2実施形態のイオン・オゾン風発生装置40は、例えば、以下のように捉えることも可能である。第2実施形態のイオン・オゾン風発生装置40は、
図5(a)に示す状態では、放電電極体14と一方のエッジ部52との間で積極的にコロナ放電を発生させ、
図5(b)に示す状態では、放電電極体14と他方のエッジ部54との間で積極的にコロナ放電を発生させる。
【0060】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係るイオン・オゾン風発生装置60について説明する。なお、前述の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
図6(a)~(d)は、第3実施形態に係るイオン・オゾン風発生装置60の構成を模式的に示している。
図6(a)~(d)における符号62は、導電板を示している。
図6(a)~(d)における黒塗り(塗りつぶし)箇所は、導電性を有する部分の断面を示している。
【0061】
図6(a)、(b)の例における導電板62は、絶縁板82と結合している。導電板62は、一定の厚みを有しており、真円状に開口する穴64を有している。穴64の内周面66の直径(内径)は、軸方向(導電板62の厚さ方向)に亘り一定である。
【0062】
導電板62は、絶縁板82とともに、環状形状に対向電極部68を形成している。対向電極部68は、放電電極体14の尖鋭な先端部に正対している。放電電極体14は、穴64が囲む軸線(中心線、図示略)上に、同軸的に位置している。放電電極体14や導電板62の支持は、第1実施形態における放電電極体14や導電板24、又は、第2実施形態における導電板42と同様に行うことが可能である。
【0063】
具体的には、第1実施形態の係合爪26と係合凹部28の組や、その他の支持手段を、放電電極体14と対向電極部68との距離を変更する距離変更部として用いることが可能である。第3実施形態においては、導電板62は、絶縁板82と厚さ方向に重ねられている。このため、対向電極部68の厚み(受電極幅、
図6(a)に矢印Jで示す)方向における導電板62の位置は偏倚している。そして、第3実施形態においても、後述するように、対向電極部68が裏返されるが、対向電極部68を裏返すことにより、放電電極体14と導電板62との距離が、後述する矢印K、Jで示すように変化する。
【0064】
絶縁板82は、合成樹脂製であり、電気的に絶縁性である。絶縁板82は、導電板62に重ねられ、導電板62と結合されている。絶縁板82は、真円状に開口する穴84を有している。穴84の内周面86はテーパ状に加工されており、穴84の大きさは、軸方向(絶縁板82の厚さ方向)の一端側から他端側へ変化している。絶縁板82の穴84は、導電板62の穴64と同軸的に並んでおり、空間的に繋がっている。
【0065】
図6(a)、(b)の例では、絶縁板82の、放電電極体14の側を向いた一方の板面82aにおける穴84の大きさ(開口径)が、放電電極体14とは反対の側を向いた他方の板面82bにおける穴84の大きさよりも大きい。絶縁板82の、他方の板面82bにおける穴84の直径は、導電板62における穴64の直径と同等である。ここで、
図6(a)、(c)では、他方の板面82bの符号に係る引き出し線が、黒塗りされた導電板62の影に隠れないよう、アウトラインを白色化して示されている。
【0066】
導電板62の、一方の板面62aにおけるエッジ部(以下では「一方のエッジ部」と称する場合がある)72は、放電電極体14の側に向けられている。一方のエッジ部72は、絶縁板82の穴84を通して、放電電極体14の先端部と、仮想的に直線で結ぶことが可能である。
【0067】
また、導電板62の、他方の板面62bにおけるエッジ部(以下では「他方のエッジ部」と称する場合がある)74は、放電電極体14とは反対の側に向けられている。他方のエッジ部74は、放電電極体14の先端部と、仮想的に直線で結ぶことは不可能ではない。しかし、他方のエッジ部74は、放電電極体14の先端部の位置から見ると、一方のエッジ部72の後方(奥側)に位置する。このため、他方のエッジ部74と放電電極体14との間には、一方のエッジ部72と放電電極体14との間と比べて、コロナ放電が発生し難い。
【0068】
ここで、
図6(a)における矢印Jは、対向電極部68の厚み(受電極幅)を示している。また、矢印Kは、放電電極体14の先鋭な先端から、導電板62の、放電電極体14の側を向いた一方の板面62aまでの距離(
図6(a)における水平距離である最短距離)を示している。
【0069】
図6(c)、(d)は、
図6(a)、(b)に示す状態から、対向電極部68を裏返して設置した状態を示している。対向電極部68を裏返した場合には、絶縁板82が放電電極体14から遠ざかり、導電板62が放電電極体14に近付く。コロナ放電は、主に、放電電極体14と、導電板62における他方のエッジ部74との間で行われる。矢印Lは、放電電極体14の先鋭な先端から、導電板62の、放電電極体14の側を向いた他方の板面62bまでの距離(
図6(a)における水平距離である最短距離)を示している。この距離Lは、
図6(a)に示す距離Kよりも小さい。
【0070】
図6(a)、(b)に示す状態よりも、裏返した後の、
図6(c)、(d)に示す状態の方が、放電電極体14と導電板62との距離が近いことから、コロナ放電が発生し易い。したがって、第3実施形態においても、対向電極部68に関して、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、第1の配置状態と第2の配置状態との間で配置状態の選択が可能である。
【0071】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態に係るイオン・オゾン風発生装置100について説明する。なお、前述の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
図7(a)、(b)は、第4実施形態に係るイオン・オゾン風発生装置100の構成を模式的に示している。
図7(a)、(b)における符号102は、放電電極形成部を示しており、符号106は、対向電極形成部を示している。
図7(a)、(b)における黒塗り(塗りつぶし)箇所は、導電性を有する部分の断面を示している。
【0072】
放電電極形成部102においては、針状の放電電極体108が多数形成されている。放電電極体108の配置としては、マトリクス状や、千鳥配列状、又は、多重の環状(多重リング状)などを例示できる。放電電極体108の突出量は均一である。放電電極体108の形成のために、例えば、基板(符号省略)の上に放電電極体108を多数形成した放電電極アレイを作製することが考えられる。
【0073】
対向電極形成部106は、枠体112に導電板114を組み込んだものを例示できる。導電板114は、板面114aを有しており、
図7(a)の例では、板面114aを、放電電極形成部102に向けている。板面114aの裏側には、針状の対向電極体116が多数形成されている。個々の対向電極体116は、対向電極部を構成する。対向電極体116の配置としては、マトリクス状や、千鳥配列状、又は、多重の環状(多重リング状)などを例示できる。1つの放電電極体108との間で選択的なコロナ放電を行う複数の対向電極体116が1つの対向電極部を構成すると捉えることも可能である。
【0074】
枠体112における導電板114の位置は、第1実施形態における枠体22と導電板24の位置関係(
図2(a)、(b))と同様に、導電板114が、枠体112の奥行方向に関して、偏倚している。
図7(a)の例では、導電板114が、枠体112の内側において、放電電極形成部102に近い側に位置している。そして、第4実施形態においても、後述するように、対向電極形成部106(導電板114を含む)が裏返されるが、対向電極形成部106を裏返すことにより、放電電極体108と導電板114との距離が、後述する矢印M、Nで示すように変化する。
【0075】
図7(a)の矢印Mは、放電電極形成部102における放電電極体108の先端と、対向電極形成部106における導電板114の板面114aとの間の距離(
図7(a)における水平距離である最短距離)を示している。
【0076】
放電電極体108と板面114aとの間のコロナ放電は、
図7(a)に破線で示すように、放電電極体108の尖鋭な先端部と、板面114aとの間で行われる。板面114aは、凹凸のある部分や、尖鋭な部分が積極的に形成されているわけではなく、平坦面であるように視認できる面である。このような平坦面であっても、選択的なコロナ放電が発生する。イオン・オゾン風は、対向電極形成部106の外側を通過するように流れ、遠方(
図7(a)、(b)の左側)へ向けて放出される。
【0077】
図7(b)は、対向電極形成部106(導電板114を含む)が、
図7(a)に示す状態(第1の配置状態)から、裏返った状態(第2の配置状態)に変化した様子を示している。対向電極形成部106を裏返した場合には、対向電極形成部106の、多数の対向電極体116が、多数の放電電極体108と向かい合う。さらに、導電板114が、枠体112の内側において、放電電極形成部102に対して遠い側に位置する。
【0078】
コロナ放電は、
図7(b)に破線で示すように、放電電極体108と対向電極体116との間に発生する。
図7(b)の矢印Nは、放電電極形成部102における放電電極体108の先端と、対向電極形成部106における対向電極体116の先端との間の距離(
図7(b)における水平距離である最短距離)を示している。この距離Nは、裏返す前の距離Mよりも大きい。
【0079】
このように、
図7(a)、(b)の例では、単に距離(ここではM、N)を変化させるのみでなく、放電電極体108と向かい合う部位の形状も変更される。
図7(a)、(b)の例によれば、より多くの放電電極体108を用いてコロナ放電を発生させることが可能となる。
【0080】
なお、
図7(a)の場合と
図7(b)の場合とで、いずれのイオン・オゾン風が強くなるかについて、発明者等は現段階では未だ実験できていないが、板面114aのような平坦面であっても距離が近い方が、イオン・オゾン風が強くなると考えることもできる。また、或る程度距離は離れても、放電電極体108と対向電極体116とを対向させた方が、イオン・オゾン風が強くなると考えることもできる。
【0081】
また、
図7(a)、(b)の例では、イオン・オゾン風が対向電極形成部106の外側を通過するように流れるが、導電板114の厚さ方向に貫通する穴(図示略)を設け、この穴を放電電極形成部102と同軸に配置することで、イオン・オゾン風を対向電極形成部106の内側を通過するように流すことができる。
【0082】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態に係るイオン・オゾン風発生装置120について説明する。なお、前述の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
図8(a)、(b)は、第5実施形態に係るイオン・オゾン風発生装置120の構成を模式的に示している。
図8(a)、(b)における符号102は、放電電極形成部を示しており、符号126は、対向電極形成部を示している。
図8(a)、(b)における黒塗り(塗りつぶし)箇所は、導電性を有する部分の断面を示している。放電電極形成部102は、第4実施形態と同様である。
【0083】
対向電極形成部126においては、導電板134の両方の板面134a、134bが平坦面である。
図8(a)の例では、導電板134は、放電電極形成部102に対し相対的に近い部位に位置しており、一方の板面134aが、放電電極形成部102に向けられている。
図7(a)の矢印Oは、放電電極形成部102における放電電極体108の先端と、対向電極形成部126における一方の板面134aとの間の距離(
図8(a)における水平距離である最短距離)を示している。
【0084】
図8(b)は、対向電極形成部126を裏返した状態を示している。対向電極形成部126を裏返し、第1の配置状態から第2の配置状態とすることにより、導電板134が、放電電極形成部102に対し相対的に遠い部位に移動し、他方の板面134bを、放電電極形成部102に向ける。
図8(b)の矢印Pは、放電電極形成部102における放電電極体108の先端と、対向電極形成部126における他方の板面134bとの間の距離(
図8(a)における水平距離である最短距離)を示している。この距離Pは、裏返す前の距離Oよりも大きい。
【0085】
放電電極体108と、導電板134の板面134a、134bとの間のコロナ放電は、
図8(a)、(b)に破線で示すように、放電電極体108の尖鋭な先端部と、板面134a、134bとの間で行われる。イオン・オゾン風は、対向電極形成部126の外側を通過するように流れ、遠方(
図8(a)、(b)の左側)へ向けて放出される。
【0086】
図8(a)に示す状態よりも、裏返した後の、
図8(b)に示す状態の方が、放電電極体108と板面134a、134bとの間の距離が遠いことから、コロナ放電が発生し難い。したがって、第5実施形態においても、対向電極部(ここでは導電板134の板面134a、134bが該当する)に関して、前述の各実施形態と同様に、第1の配置状態及び第2の配置状態の間での配置状態の選択が可能である。
【0087】
なお、
図8(a)、(b)の例では、イオン・オゾン風が対向電極形成部126の外側を通過するように流れるが、導電板134の厚さ方向に貫通する穴(図示略)を設け、この穴を放電電極形成部102と同軸に配置することで、イオン・オゾン風を対向電極形成部126の内側を通過するように流すことができる。
【0088】
<第6実施形態>
次に、第6実施形態に係るイオン・オゾン風発生装置140について説明する。なお、前述の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
図9(a)、(b)は、第6実施形態に係るイオン・オゾン風発生装置140の構成を模式的に示している。
図9(a)、(b)における符号102は、放電電極形成部を示しており、符号146は、対向電極形成部を示している。
図9(a)、(b)における黒塗り(塗りつぶし)箇所は、導電性を有する部分の断面を示している。放電電極形成部102は、第4実施形態及び第5実施形態と同様である。
【0089】
第6実施形態のイオン・オゾン風発生装置140は、第4実施形態(
図7(a)、(b))の放電電極形成部102における導電板114の位置を移動させた構造を有している。導電板114は、
図9(a)に示すように、枠体112の外側に、多数の対向電極体116を突出させている。
図9(a)の例では、導電板114が、板面114aを、枠体112の内側を通して、放電電極形成部102に向けている。
【0090】
図9(a)の矢印Qは、放電電極形成部102における放電電極体108の先端と、対向電極形成部146における板面114aとの間の距離(
図9(a)における水平距離である最短距離)を示している。放電電極体108と板面114aとの間のコロナ放電は、
図9(a)に破線で示すように、放電電極体108の尖鋭な先端部と、板面114aとの間で、枠体112の内側を通して行われる。
【0091】
図9(b)は、対向電極形成部146を、
図9(a)に示す状態(第1の配置状態)から、裏返して設置した状態(第2の配置状態)を示している。対向電極形成部146を裏返した場合には、対向電極形成部146の、多数の対向電極体116が、多数の放電電極体108と向かい合う。さらに、導電板114が、枠体112の、放電電極形成部102に対して近い側に位置する。
【0092】
コロナ放電は、
図9(b)に破線で示すように、放電電極体108と対向電極体116との間に発生する。
図7(b)の矢印Rは、放電電極形成部102における放電電極体108の先端と、対向電極形成部146における対向電極体116の先端との間の距離(
図9(b)における水平距離である最短距離)を示している。この距離Rは、裏返す前の距離Qよりも小さい。
【0093】
このように、
図9(a)、(b)の例では、単に距離(ここではO、P)を変化させるのみでなく、放電電極体108と向かい合う部位の形状も変更される。
図7(a)、(b)の例によれば、より多くの放電電極体108を用いてコロナ放電を発生させることが可能となる。
【0094】
<各実施形態から抽出される発明>
(1)放電電極(放電電極体14、108など)と、
前記放電電極との間に電位差を発生させる対向電極(対向電極部18、48、68、対向電極体116など)であって、前記放電電極と前記対向電極の最短距離が第1の距離となる第1の配置状態と、前記放電電極と前記対向電極の最短距離が前記第1の距離よりも長い第2の距離となる第2の配置状態と、の少なくともいずれか一方に選択可能な対向電極と、を備え、
前記電位差によって、イオン・オゾン風を発生させるイオン・オゾン風発生装置。
(2)放電電極(放電電極体14など)と、
前記放電電極との間に電位差を発生させる対向電極(対向電極部18、48、68など)であって、軸線(真円状穴32の軸線、穴44、64の軸線など)を囲む環状形状を有し、第1の開口部(第1実施形態における枠体22の一方の端面22aの側の開口、第2実施形態におけるエッジ部52の側の開口、第3実施形態におけるエッジ部72の側の開口など)と、前記軸線に沿って前記第1の開口部から離隔して位置する第2の開口部(第1実施形態における枠体22の他方の端面22bの側の開口、第2実施形態におけるエッジ部54の側の開口、第3実施形態におけるエッジ部74の側の開口など)と、を有し、前記第1の開口部が前記第2の開口部よりも前記放電電極に近い第1の配置状態と、前記第2の開口部が前記第1の開口部よりも前記放電電極に近い第2の配置状態と、の少なくともいずれか一方に選択可能な対向電極と、を備え、
前記電位差によって、イオン・オゾン風を発生させるイオン・オゾン風発生装置。
(3)放電電極(放電電極体14、108など)と、
前記放電電極との間に電位差を発生させる対向電極(対向電極部18、48、68、対向電極体116など)と、
前記対向電極の向きを変えて前記対向電極を保持し、前記放電電極と前記対向電極との距離を変更することが可能な距離変更部(係合爪26、係合爪26と係合凹部28の組など)と、を備え、
前記電位差によって、イオン・オゾン風を発生させるイオン・オゾン風発生装置。
(4)少なくとも1つの突出形状の前記対向電極(第4実施形態及び第6実施形態の対向電極体116など)と、平面形状の前記対向電極(第4実施形態及び第6実施形態の導電板114における板面114aなど)とを有し、
前記対向電極を、突出形状の前記対向電極と、平面形状の前記対向電極との間で変更する上記(1)又は(3)に記載のイオン・オゾン風発生装置。
(5)表裏の位置関係にある平面形状の前記対向電極(第5実施形態の導電板134における板面134a、134bなど)を有し、
前記対向電極の向きを変えることで、表裏の前記対向電極の変更を行う上記(1)又は(3)に記載のイオン・オゾン風発生装置。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本願発明のイオン・オゾン風発生装置は、例えば、殺菌・消臭装置、空気清浄装置等といった各種の環境装置に利用できる。
【符号の説明】
【0096】
10、40、60、100、120、140:イオン・オゾン風発生装置
12 :ケース
14、108:放電電極体
16 :対向電極形成部
18、48、68:対向電極部
20 :イオン・オゾン風発生部
22、112:枠体
22a :一方の端面
22b :他方の端面
24、42、62、114、134:導電板
26 :係合爪
28 :係合凹部
30 :取り付け溝部
32 :真円状穴
34 :円弧状穴
36 :リブ
44、64、84:穴
52、54、72、74:エッジ部
116 :対向電極体