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特開2023-148879建築パネルの組立方法及び建築パネルを組み立てる際に用いられるシート案内用治具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148879
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】建築パネルの組立方法及び建築パネルを組み立てる際に用いられるシート案内用治具
(51)【国際特許分類】
   E04C 2/38 20060101AFI20231005BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20231005BHJP
   E04F 21/00 20060101ALI20231005BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E04C2/38 S
E04B1/80 100Q
E04F21/00 B
E04G21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057153
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】中川 雅至
(72)【発明者】
【氏名】馬場 峰雄
(72)【発明者】
【氏名】牛山 歩
(72)【発明者】
【氏名】南川 達浩
【テーマコード(参考)】
2E001
2E162
2E174
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001DD02
2E001FA03
2E001FA11
2E001FA14
2E001GA12
2E001GA23
2E001GA29
2E001HA32
2E001HC04
2E001HD11
2E162CA35
2E162CC05
2E162CD13
2E174AA02
2E174CA34
2E174DA17
2E174DA33
2E174DA62
(57)【要約】
【課題】品質の向上と施工作業の省力化を両立させることができる高気密性及び高断熱性建築パネルの組立方法と、建築パネルを組み立てる際に用いられるシート案内用治具を提供する。
【解決手段】根太2の間に気密シート5を架設するとともに断熱材3を介在させた床パネル1の組立方法は、最初に、所定の間隔を隔てて第一の根太2と第二の根太2が並ぶように配置する。次に、長尺な気密シート5を第一の根太2及び第二の根太2の間に架け渡す。続いて、気密シート5を介して第一の根太2及び第二の根太2の間にシート案内用治具10を嵌合し、第一の根太2及び第二の根太2の間に、断熱材3を収容可能な断熱材収容凹部Sを形成する。気密シート5を両面テープによって根太2に架設した後に、断熱材収容凹部Sに断熱材3を配設し、最後に第一の根太2及び第二の根太2に床面材4を固定する。
【選択図】図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の長尺な下地材の間に気密シートを架設するとともに前記複数の下地材の間に断熱材を介在させた建築パネルの組立方法であって、
所定の間隔を隔てて第一下地材及び第二下地材が並ぶように配置する工程と、
長尺な前記気密シートの一方の端部側を前記第一下地材に固着し、前記気密シートの他方の端部側を前記第二下地材よりも前記第一下地材から離隔する位置に配置することによって、前記気密シートを前記第一下地材及び前記第二下地材に架け渡す工程と、
前記気密シートを介して前記第一下地材及び前記第二下地材の間にシート案内用治具を嵌合し、前記第一下地材及び前記第二下地材の間に、前記断熱材を収容可能な断熱材収容凹部を形成する工程と、
前記気密シートを前記第二下地材に固着することによって前記気密シートを前記第一下地材及び前記第二下地材に架設する工程と、
前記断熱材収容凹部に前記断熱材を配設する工程と、
前記第一下地材及び前記第二下地材にパネル材を固定する工程と、を含むことを特徴とする建築パネルの組立方法。
【請求項2】
前記シート案内用治具は、
長尺形状を有する本体部と、該本体部の短手方向の一方の端部において、長手方向に突出する左右の突出部と、を有し、
前記本体部は、前記短手方向の他方の端部において、前記長手方向に延びる面状部を有し、
前記断熱材収容凹部を形成する工程では、
前記気密シートを介して前記第一下地材及び前記第二下地材の間に前記シート案内用治具を嵌合し、前記第一下地材及び前記第二下地材の各々に前記突出部を当接することと、
前記面状部の表面に沿うように前記気密シートを前記長手方向に摺動することと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の建築パネルの組立方法。
【請求項3】
前記シート案内用治具は、
長尺形状を有する本体部と、該本体部の短手方向の一方の端部において、長手方向に突出する左右の突出部と、を有し、
前記本体部は、前記短手方向の他方の端部において、前記長手方向に延びる面状部を有し、
前記断熱材収容凹部を形成する工程では、
前記気密シートを介して前記第一下地材及び前記第二下地材の間に前記シート案内用治具を嵌合し、前記第一下地材及び前記第二下地材の各々に前記突出部を当接することと、
前記面状部によって前記気密シートを前記短手方向に押圧することと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の建築パネルの組立方法。
【請求項4】
所定の間隔を隔てて配置された複数の長尺な下地材の間に気密シートを架設するとともに、前記複数の下地材の間に断熱材を介在させた建築パネルを組み立てる際に用いられるシート案内用治具であって、
長尺形状を有する本体部と、該本体部の短手方向の一方の端部において、長手方向に突出する左右の突出部と、を有し、
前記本体部は、前記短手方向の他方の端部において、前記長手方向に延びる面状部を有し、
前記シート案内用治具は、前記複数の下地材の間に架け渡された前記気密シートを介して前記複数の下地材の間に嵌合し、
前記突出部は、前記気密シートを介して前記複数の下地材の各々に当接し、
前記面状部は、前記気密シートに対向し、前記気密シートが、前記複数の下地材の間に前記断熱材を収容可能な断熱材収容凹部を形成するように前記気密シートを案内することを特徴とするシート案内用治具。
【請求項5】
前記面状部は、前記長手方向の両端部において前記短手方向に延びるように湾曲する湾曲部を有し、
前記湾曲部は、前記気密シートが、前記湾曲部に沿って前記短手方向及び前記長手方向に摺動することを案内することを特徴とする請求項4に記載のシート案内用治具。
【請求項6】
前記突出部は、傾斜部を有し、前記傾斜部は、前記気密シートが、前記傾斜部に沿って前記長手方向へ摺動することを案内することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のシート案内用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築パネルの組立方法及び建築パネルを組み立てる際に用いられるシート案内用治具に係り、特に断熱性及び気密性を有する建築パネルの組立方法及び断熱性及び気密性を有する建築パネルを組み立てる際に用いられるシート案内用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の根太を並設するとともに、根太の間に断熱材を介在させることによって断熱性を向上させた建築パネルが、住宅用床パネルとして普及している。特許文献1には、従来から普及している高断熱性の床パネルと、床下の基礎構造が開示されており、これを図7に示す。
図7に示すように、床パネル101は、大引き107が組み立てられた基礎Bの上に設置される。床パネル101は、床面材104と、床面材104に対して一定の間隔を隔てて固定された複数の根太102と、根太102の間に介在する断熱材103によって構成されている。
【0003】
また近年、省エネルギー性の向上を目的とした、高気密性、高断熱性住宅が注目されている。高気密性、高断熱性住宅の床、壁又は天井に用いられる建築パネルは、長尺の下地材(根太、又はスタッド)の間に断熱材を配設するとともに、建築パネル全体が気密シートで被覆されている。これによって建築パネルの気密性及び断熱性の向上が図られている。
【0004】
図8Aから図8Eは、このような高気密性、高断熱性を有する建築パネルの組立手順の一例を示している。まず図8Aに示すように、作業台Tに、複数の根太102が所定の間隔を隔てて並ぶように載置される。根太102は、後述する床面材104の下地材としての役割を担う長尺な鋼材である。各々の根太102の上面には、後述する気密シート105を接着するための両面テープPが2枚ずつ貼着されている。
【0005】
次に、図8Bに示すように、ロール状に巻回された気密シート105の先端側を、両面テープPを介して一方の根太102(図8Bにおいて左側に図示される根太102)に接着する。そして、気密シート105のロール体を、他方の根太(図8Bにおいて右側に図示される根太102)よりも一方の根太102から離隔する位置に配置することによって、気密シート105を2本の根太102の間に架け渡す。気密シート105は、自重によって撓み、弛緩した状態で2本の根太102の上に展開する。
気密シート105は、両面テープPによって他方の根太102に接着されて、2本の根太102の間に架け渡された状態で固着される。
【0006】
続いて、図8Cに示すように、根太102の間に断熱材103を配設する。断熱材103はロックウールを採用することができるが、これに限定されない。図8Cにおいて、断熱材103は、防湿シートによって被覆されている。断熱材103を防湿シートで被覆することによって、防塵性、及び床パネル101の施工性を向上することが可能となる。
【0007】
図8Dに示すように、最後に根太102及び断熱材103の上に、パーティクルボードからなる床面材104を配置する。そして、ねじ等の固定具106を用いて床面材104を根太102に対して固定する。根太102に対して、パーティクルボードとともに、仕上げ材を固定してもよい。
以上により、床パネル101の組立手順が終了する。図8Eは、組み立てが完成した状態の床パネル101を示している。床パネル101は、上方に吊り上げられてから基礎Bに組み立てられた大引き107に対して固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平08-060773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した組立手順によって、高気密性及び高断熱性を有する床パネルを組み立てることができるものの、施工現場では、床パネルの品質の向上及び施工作業の省力化が求められていた。以下で、詳細に説明する。
【0010】
図9は、床パネル101の要部を拡大した側面図である。図9において、床面材104と断熱材103の間には、隙間Gが形成されており、これにより床パネル101の断熱性能が低下した状態を示している。断熱材103は、気密シート105によって下方から支持されてため、気密シート105が過剰に弛んだ状態で根太102間に架設されると、床面材104と断熱材103の間に無用な隙間Gが発生する。一方、根太102間において気密シート105が引っ張られた状態で架設されると、断熱材103を根太102の間に介在させた状態で床面材104を根太102に対して固定することが困難となる。そこで、施工作業の負担を増大させることなく、気密シート105を根太102の間に適切に架設することが可能な床パネルの組立方法が求められていた。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、品質の向上と施工作業の省力化を両立させることができる高気密性及び高断熱性建築パネルの組立方法と、建築パネルを組み立てる際に用いられるシート案内用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題は、本発明の建築パネルの組立方法によれば、複数の長尺な下地材の間に気密シートを架設するとともに前記複数の下地材の間に断熱材を介在させた建築パネルの組立方法であって、所定の間隔を隔てて第一下地材及び第二下地材が並ぶように配置する工程と、長尺な前記気密シートの一方の端部側を前記第一下地材に固着し、前記気密シートの他方の端部側を前記第二下地材よりも前記第一下地材から離隔する位置に配置することによって、前記気密シートを前記第一下地材及び前記第二下地材に架け渡す工程と、前記気密シートを介して前記第一下地材及び前記第二下地材の間にシート案内用治具を嵌合し、前記第一下地材及び前記第二下地材の間に、前記断熱材を収容可能な断熱材収容凹部を形成する工程と、前記気密シートを前記第二下地材に固着することによって前記気密シートを前記第一下地材及び前記第二下地材に架設する工程と、前記断熱材収容凹部に前記断熱材を配設する工程と、前記第一下地材及び前記第二下地材にパネル材を固定する工程と、を含むことにより解決される。
【0013】
上記構成によれば、気密シートが第一下地材及び第二下地材に架け渡された後に、気密シートを介して第一下地材及び第二下地材の間にシート案内用治具が嵌合される。そのため、気密シートは、シート案内用治具によって案内されて第一下地材及び第二下地材の間に、断熱材を収容可能な断熱材収容凹部を形成する。これにより、気密シートを、適正な寸法形状を有する断熱材収容凹部を形成した状態で下地材に固着することが可能となり、パネル材と断熱材の間に無用な隙間が発生することを抑制し、断熱性の向上を図ることが可能となる。
また、シート案内用治具を用いることによって適切な寸法形状を有する断熱材収容凹部を容易に形成することができるため、施工作業が省力化される。以上により、高気密性及び高断熱性を有する建築パネルの品質の向上と施工作業の省力化を両立させることが可能となる。
【0014】
また、前記シート案内用治具は、長尺形状を有する本体部と、該本体部の短手方向の一方の端部において、長手方向に突出する左右の突出部と、を有し、前記本体部は、前記短手方向の他方の端部において、前記長手方向に延びる面状部を有し、前記断熱材収容凹部を形成する工程では、前記気密シートを介して前記第一下地材及び前記第二下地材の間に前記シート案内用治具を嵌合し、前記第一下地材及び前記第二下地材の各々に前記突出部を当接することと、前記面状部の表面に沿うように前記気密シートを前記長手方向に摺動することと、を含むと好適である。
上記構成によれば、第一下地材及び第二下地材の間にシート案内用治具を嵌合した状態で気密シートを長手方向に摺動することによって、適切な寸法形状を有する断熱材収容凹部を容易に形成することができ、高気密性及び高断熱性を有する建築パネルの品質の向上と施工作業の省力化を両立させることが可能となる。
【0015】
また、前記シート案内用治具は、長尺形状を有する本体部と、該本体部の短手方向の一方の端部において、長手方向に突出する左右の突出部と、を有し、前記本体部は、前記短手方向の他方の端部において、前記長手方向に延びる面状部を有し、前記断熱材収容凹部を形成する工程では、前記気密シートを介して前記第一下地材及び前記第二下地材の間に前記シート案内用治具を嵌合し、前記第一下地材及び前記第二下地材の各々に前記突出部を当接することと、前記面状部によって前記気密シートを前記短手方向に押圧することと、を含むと好適である。
上記構成によれば、第一下地材及び第二下地材の間にシート案内用治具を嵌合し、面状部によって気密シートを短手方向に押圧することによって、適切な寸法形状を有する断熱材収容凹部を容易に形成することができ、高気密性及び高断熱性を有する建築パネルの品質の向上と施工作業の省力化を両立させることが可能となる。
【0016】
前記課題は、本発明のシート案内用治具によれば、所定の間隔を隔てて配置された複数の長尺な下地材の間に気密シートを架設するとともに、前記複数の下地材の間に断熱材を介在させた建築パネルを組み立てる際に用いられるシート案内用治具であって、長尺形状を有する本体部と、該本体部の短手方向の一方の端部において、長手方向に突出する左右の突出部と、を有し、前記本体部は、前記短手方向の他方の端部において、前記長手方向に延びる面状部を有し、前記シート案内用治具は、前記複数の下地材の間に架け渡された前記気密シートを介して前記複数の下地材の間に嵌合し、前記突出部は、前記気密シートを介して前記複数の下地材の各々に当接し、前記面状部は、前記気密シートに対向し、前記気密シートが、前記複数の下地材の間に前記断熱材を収容可能な断熱材収容凹部を形成するように前記気密シートを案内することにより解決される。
【0017】
上記構成によれば、シート案内用治具を複数の下地材の間に嵌合すると、シート案内用治具の面状部は、複数の下地材の間に架け渡された気密シートが断熱材収容凹部を形成するように気密シートを案内する。そのため、気密シートが、複数の下地材の間に適正な寸法形状を有する断熱材収容凹部を形成した状態で下地材に対して固着することが可能となり、パネル材と断熱材の間に無用な隙間が発生することを抑制し、断熱性の向上を図ることが可能となる。
また、シート案内用治具を用いることによって適切な寸法形状を有する断熱材収容凹部を容易に形成することができるため、施工作業が省力化される。以上により、高気密性及び高断熱性を有する建築パネルの品質の向上と施工作業の省力化を両立させることが可能となる。
【0018】
また、前記面状部は、前記長手方向の両端部において前記短手方向に延びるように湾曲する湾曲部を有し、前記湾曲部は、前記気密シートが、前記湾曲部に沿って前記短手方向及び前記長手方向に摺動することを案内すると好適である。
上記構成によれば、複数の下地材の間にシート案内用治具を嵌合した状態で、気密シートを長手方向に円滑に摺動させることができる。そのため、適切な寸法形状を有する断熱材収容凹部を容易に形成することができ、高気密性及び高断熱性を有する建築パネルの品質の向上と施工作業の省力化を両立させることが可能となる。
【0019】
また、前記突出部は、傾斜部を有し、前記傾斜部は、前記気密シートが、前記傾斜面に沿って前記長手方向へ摺動することを案内すると好適である。
上記構成によれば、複数の下地材の間にシート案内用治具を嵌合した状態で、気密シートを長手方向に円滑に摺動させることができる。そのため、適切な寸法形状を有する断熱材収容凹部を容易に形成することができ、高気密性及び高断熱性を有する建築パネルの品質の向上と施工作業の省力化を両立させることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の建築パネルの組立方法及び建築パネルを組み立てる際に用いられるシート案内用治具によれば、高気密性及び高断熱性を有する建築パネルの品質の向上と施工作業の省力化を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】床パネルの基本構成を説明する図である。
図2A】根太を並べて配置した状態を示す図である。
図2B】気密シートを根太に架け渡した状態を示す図である。
図2C】シート案内用治具を嵌合して断熱材収容凹部を形成した状態を示す図である。
図2D】根太の間に断熱材を配設した状態を示す図である。
図2E】床面材を根太に固定した状態を示す図である。
図2F】床パネルの組み立てが完成した状態を示す図である。
図3A】シート案内用治具の斜視図である。
図3B】シート案内用治具の正面図である。
図4A】気密シートが弛緩した状態で根太に架け渡された状態を示す図である。
図4B】気密シートがシート案内用治具によって案内されて断熱材収容凹部を形成した状態を示す図である。
図4C】気密シートを2本の根太に固着し、架設した状態を示す図である。
図5A】気密シートが引っ張られた状態で根太に架け渡された状態を示す図である。
図5B】気密シートがシート案内用治具によって案内されて断熱材収容凹部を形成した状態を示す図である。
図5C】気密シートを2本の根太に固着し、架設した状態を示す図である。
図6】断熱材が床面材に対して隙間なく固定された状態を説明する図である。
図7】従来の床パネルの設置状態を示す図である。
図8A】根太を並べて配置した状態を示す図である。
図8B】気密シートを根太に架け渡した状態を示す図である。
図8C】根太の間に断熱材を配設した状態を示す図である。
図8D】床面材を根太に固定した状態を示す図である。
図8E】床パネルの組み立てが完成した状態を示す図である。
図9】断熱材が床面材に対して隙間を介して固定された状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1図6を参照しながら、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る床パネル1の組立方法及び床パネル1を組み立てる際に用いられるシート案内用治具10について説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。つまり、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0023】
本発明の床パネル1の組立方法は、複数の根太2に架け渡された気密シート5を、シート案内用治具10によって案内して断熱材収容凹部Sを形成し、断熱材収容凹部Sに断熱材3を配設して高気密性及び高断熱性を有する床パネル1を組み立てるために用いられる。またシート案内用治具10を用いることによって、適切な寸法形状を有する断熱材収容凹部Sを容易に形成することができる。換言すると、高気密性及び高断熱性を有する床パネル1の品質の向上と施工作業の省力化を両立することが可能となる。
【0024】
<<床パネル1の基本構成>>
図1は、床パネル1の基本構成を示す図である。図1に示すように、床パネル1は、床パネル1の下地材として用いられる根太2と、床パネル1の気密性を確保するための気密シート5と、気密シート5を介して根太2の間に介在する断熱材3と、根太2に固定される床面材4と、を含んで構成されている。
【0025】
根太2は、長尺形状を有する鋼材である。根太2の下には、大引き(不図示)を支持する基礎Bが形成されている。根太2は、床面材4を支持するとともに、床に加わる荷重を、大引きを介して基礎Bに伝達する役割を担っている。複数の根太2が、互いに並ぶように配置される。根太2の間隔は、例えば455mmであるが、これに限定されない。
根太2は、下地材に相当する。
【0026】
気密シート5は、根太2と、断熱材3及び床面材4と、の間に介在することによって床パネル1を被覆する。気密シート5は、床パネル1を外気から密閉状態とすることによって床パネル1が設置される建物の気密性を確保する。また気密シート5は、断熱材3を収容するとともに下方から支持し、床面材4に対して断熱材3を固定する役割を担う。気密シート5は、例えばポリエチレン製のフィルムシートである。
【0027】
根太2の間には、気密シート5を介して断熱材3が介在するように配置される。断熱材3は、床下断熱材として一般的に広く利用されているロックウールと、ロックウールを全面被覆する防湿シート3aと、から主に構成されている。
【0028】
ロックウールは、耐熱性に優れた鉱石や製鉄プロセスの副産物の高炉スラグを原材料とし、これらを高熱で溶かして繊維状にした後、マット状に成型加工したものである。ロックウールは、断熱性、防火性及び防音性を有している。
【0029】
防湿シート3aは、ロックウールを被覆することによって気密状態とし、断熱材3の防塵性及び作業者の施工性を向させている。防湿シート3aは、気密シート5と同様に、ポリエチレン製のフィルムシートである。
【0030】
床面材4は、パーティクルボード4a及び仕上げ材4bから主に構成されている。パーティクルボード4aは、小木片を加熱圧縮することによって形成された板状体である。床面材4にパーティクルボード4aを採用することによって、床パネル1の遮音性及び断熱性を向上させることが可能となる。
【0031】
仕上げ材4bは、床パネル1の意匠性を向上させるために用いられ、フローリング材と呼ばれる板状体である。
パーティクルボード4aと仕上げ材4bの間に、制震性や遮音性を有する機能性合板材が介在してもよい。これにより、床パネル1に追加的な機能性を付加することが可能となる。
床面材4、パーティクルボード4a、及び仕上げ材4bは、パネル材に相当する。
【0032】
<<床パネル1の組立方法>>
次に、床パネル1の組立方法について説明する。図2Aから図2Fは、床パネル1を組み立てる手順の一例を示している。以下の手順は、二人以上の作業員によって行われることを想定した床パネル1の組立方法である。
【0033】
まず、図2Aに示すように、複数の根太2が、所定の間隔で並ぶように作業台Tの上に載置される。根太2の上面には、後述する気密シート5を接着するための両面テープPが貼着されている。両面テープPの数及び配置は、図2Aに示す例に限定されない。図2Aおいて、両面テープPは、長尺形状を有する根太2の両端部の近傍に貼着されているが、3枚以上両面テープが根太2の上面に貼着されていてもよい。
【0034】
次に、図2Bに示すように、複数の根太2に気密シート5が架け渡される。詳細に説明すると、ロール状に巻回された気密シート5の先端部5aが、一方の根太2(第一下地材に相当)に貼着された両面テープP1を介して一方の根太2に接着される。そして、気密シート5の基端部5b(ロール状に巻回された端部側)が、他方の根太2(第二下地材に相当)よりも一方の根太2から離れた側に配置される。この時点では、気密シート5は他方の根太2に対して接着されていない。換言すると、他方の根太2の上面に貼着された両面テープP2は剥離テープによって被覆されている。
【0035】
気密シート5は、自重によって撓み、弛緩した状態で複数の根太2の間に展開している。そして気密シート5は、根太2の長手方向の寸法よりも幅広の寸法を有している。そのため、気密シート5が架け渡された根太2は、気密シート5によってその全体が被覆される。
【0036】
続いて、図2Cに示すように、シート案内用治具10が、気密シート5を介して複数の根太2の間に嵌合される。図2Cにおいて、一つのシート案内用治具10が根太2間に嵌合されているが、これに限定されない。気密シート5のシート幅方向の両側の各々にシート案内用治具10が嵌合されてもよい。また、三つ以上のシート案内用治具10が根太2間に嵌合されてもよい。
【0037】
図3A及び図3Bは、シート案内用治具10の外観図である。図3Aはシート案内用治具10の斜視図である。そして図3Bは、シート案内用治具10の正面図である。
図3A及び図3Bに示すように、シート案内用治具10は、本体部11と、本体部11の長手方向の両側に突出する突出部12と、を有している。
【0038】
本体部11は、略長方形形状を有する木製の板状体である。本体部11は、案内面11aと、被押圧面11cと、を有している。案内面11aは、左右の突出部12から下方(シート案内用治具10の短手方向)に延びるとともに、湾曲部11bを介して本体部11の下面を含むように長手方向に面状に延びている。案内面11aは、面状部に相当する。
【0039】
被押圧面11cは、本体部11の上面を含み、長手方向に延びる平坦面である。シート案内用治具10は、被押圧面11cを上方から下方に向けて押下されることによって複数の根太2の間に嵌合する。
【0040】
突出部12は、本体部11の上端側において長手方向に本体部11から突出している。突出部12は、傾斜部12aを有している。傾斜部12aは、突出部12の長手方向の先端と、本体部11の側面と、を斜め下方に傾斜しながら接続している。
【0041】
図2Cに戻って、シート案内用治具10を、複数の根太2の間に上方から下方に向けて嵌合すると、突出部12は、気密シート5を介して根太2の各々の上面に当接する。案内面11aは、シート案内用治具10の下方において気密シート5に対向する。
このとき、気密シート5の基端部5bを、シート案内用治具10の長手方向(図2Cの矢印方向)に向かって移動させると、気密シート5は、シート案内用治具10の案内面11aに沿って摺動する。これにより、気密シート5は、複数の根太2の間に、後述する断熱材3を収容可能な断熱材収容凹部Sを形成する。以下では、断熱材収容凹部Sについて、図4Aから図4C及び図5Aから図5Cを参照して説明する。
【0042】
図4Aは、シート案内用治具10が用いられる前の状態を示している。図4Aにおいて、複数の根太2の間に気密シート5が弛緩した状態で展開している。この状態で、シート案内用治具10を根太2の間に嵌合する。続いて、気密シート5を、図4Bの矢印に示すようにシート案内用治具10の長手方向に移動させて、気密シート5を根太2間に張架させる。すると、気密シート5は、シート案内用治具10の下面に形成された案内面11aによって案内されながら、長手方向に摺動する。これにより、図4Cに示すように、根太2の間に架け渡された気密シート5は、後述する断熱材3を収容可能な断熱材収容凹部Sを形成する。
【0043】
ここで、案内面11aの長手方向の両端部には、案内面11aがシート案内用治具10の短手方向に延びるように湾曲する湾曲部11bが形成されている。そのため、気密シート5は、湾曲部11bに沿って円滑に案内されながら、シート案内用治具10の短手方向及び長手方向に摺動することができる。これにより、適切な寸法形状を有する断熱材収容凹部Sを、容易に形成することが可能となる。
【0044】
また、突出部12の下方には、突出部12の先端から本体部11の側面に向けて傾斜する傾斜部12aが形成されている。そのため、気密シート5は、傾斜部12aに沿って円滑に案内されながら、シート案内用治具10の長手方向に摺動することができる。これにより、適切な寸法形状を有する断熱材収容凹部Sを、容易に形成することが可能となる。
【0045】
断熱材収容凹部Sは、断熱材3を収容可能な寸法形状を有している。そして、断熱材収容凹部Sは、断熱材3を収容した際に、断熱材3の上面が根太2の上面と高さ方向において略等しい高さに位置する深さ寸法を有している。そのため、断熱材3を断熱材収容凹部Sに収容させた際に、後述する床面材4と断熱材3との間に隙間Gが生じることが抑制され、床パネル1の断熱性能を十分に発揮することが可能となる。
【0046】
図5Aは、シート案内用治具10が用いられる前の状態を示している。図5Aにおいて、複数の根太2の間に気密シート5が張架された状態を示している。この状態から、シート案内用治具10を根太2の間に嵌合すると、気密シート5は、図5Bの矢印に示すようにシート案内用治具10の下面の案内面11aによって案内されながら、下方(シート案内用治具10の短手方向)に押圧される。これにより、図5Cに示すように、根太2の間に架け渡された気密シート5は、後述する断熱材3を収容可能な断熱材収容凹部Sを形成する。
【0047】
以上のように、シート案内用治具10を用いることによって適切な寸法形状を有する断熱材収容凹部Sを形成することが可能となるため、後述する床面材4と断熱材3との間に隙間Gが生じることが抑制され、床パネル1の品質の向上を図ることが可能となる。
【0048】
そして、シート案内用治具10を用いることによって、複数の根太2の間に適切な寸法形状を有する断熱材収容凹部Sを、容易に形成することができる。これにより、施工作業の省力化を実現することが可能となる。
【0049】
図2Dに戻って、断熱材収容凹部Sに、断熱材3が配設される。このように根太2の間に断熱材3を介在させることによって、床パネル1の断熱性を向上させることが可能となる。ここで、断熱材3は、防湿シート3aによって前面被覆されており、防塵性及び施工性が向上されている。
なお、断熱材収容凹部Sに断熱材3を配設する前に、気密シート5を、両面テープPで接着することによって左右の根太2に架設してもよい。
【0050】
図2Dに示すように、巻回された状態にある気密シート5を展開することによって、さらに他の根太2に対して気密シート5が架け渡され、図2Bから図2Dを参照して説明した作業が繰り返し行われる。
【0051】
最後に、図2Eに示すように、床面材4が、ねじ等からなる固定具6を用いて根太2と固定される。ただし、ねじを用いることなく、接着剤を用いて床面材4と根太2を固定してもよい。上述したように、床面材4は、パーティクルボード4a、仕上げ材4b、及び各種の機能性を有する板状体を含むことができる。
【0052】
図2Fは、床パネル1の組み立てが完成した状態を示す。図2Fに示すように、床パネル1の、複数の根太2間に断熱材3が介在している。これにより、床パネル1の断熱性の向上が実現されている。また、床面材4及び断熱材3と、根太2と、の間には、気密シート5が介在している。これにより、床パネル1の気密性の向上が実現されている。そして、気密シート5は、床パネル1の下面の全体を一様に被覆するのではなく、床面材4及び断熱材3と、根太2と、の間に交互に架設される。これにより、気密シート5が、断熱材3を下方から支持し、断熱材3を床パネル1に対して安定的に固定することが可能となる。
【0053】
図6は、床パネル1の要部を拡大した側面図である。断熱材3は、上述したシート案内用治具10を用いて形成された断熱材収容凹部Sに収容されている。そのため、床面材4と断熱材3の間に、隙間Gが形成されていない。これにより、床パネル1は、断熱材3が有する断熱性能を十分に発揮することが可能となる。また、断熱材収容凹部Sに収容された断熱材3によって干渉されることなく床面材4を根太2に対して固定することができ、床パネル1の組立作業における作業性の低下を抑制することが可能となる。
【0054】
<<第一変形例>>
以上、本発明の一実施形態に係る床パネル1について説明したが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
上述した実施形態では、シート案内用治具10は、1枚の板状体からなる本体部11と、突出部12と、から主に構成されていることとして説明したが、これに限定されない。すなわち、第一変形例に係るシート案内用治具10は、一対の本体部11と、該一対の本体部11の長手方向の両端部を接続する一対の接続部(不図示)と、突出部12と、を有する枠状体とすることができる。
【0055】
枠状体からなるシート案内用治具10の本体部11は、根太2間の間に嵌合可能な幅寸法を有し、一対の本体部11を接続する接続部は、根太2の長手方向の寸法と略等しい長さ寸法を有すると好適である。これにより、一対のシート案内用治具10を根太2の間に嵌合することによって、根太2の長手方向の全長に亘って断熱材収容凹部Sを形成することが可能となる。そのため、複数のシート案内用治具10を根太2間に嵌合する場合と比べて、施工作業のさらなる省力化が可能となる。
【0056】
<<第二変形例>>
また、上述した実施形態では、突出部12は、シート案内用治具10が根太2の間に嵌合した際に、各々の根太2の上面に載置されて当接することとして説明したが、これに限定されない。突出部12は、根太2に対して係合、又は嵌合可能な形状を有し、根太2に対して嵌合、又は係合されてもよい。
【0057】
このとき、突出部12は、根太2に対して嵌合可能な溝部を有していると好適である。これにより、気密シート5をシート案内用治具10の長手方向に摺動させた際に、シート案内用治具10が根太2の上方に浮き上がる(シート案内用治具10が根太2に対して非嵌合状態となる)ことが抑制される。
【0058】
また、上述した実施形態は、シート案内用治具10が、木製であるとして説明したが、これに限定されない。すなわち、シート案内用治具10は、樹脂製であってもよい。これにより、シート案内用治具10を軽量化することができ、シート案内用治具10の取扱性を向上させることが可能となる。
【0059】
上述した実施形態では、建築パネルとして床パネル1を例示したが、本発明はこれに限定されず、その他の建築パネル、例えば壁、天井などで使用される建築パネルに適用することもできる。
【符号の説明】
【0060】
1 床パネル(建築パネル)
2 根太(下地材)
3 断熱材
3a 防湿シート
4 床面材(パネル材)
4a パーティクルボード(パネル材)
4b 仕上げ材(パネル材)
5 気密シート
5a 先端部
5b 基端部
6 固定具
10 シート案内用治具
11 本体部
11a 案内面(面状部)
11b 湾曲部
11c 被押圧面
12 突出部
12a 傾斜部
101 床パネル
102 根太
103 断熱材
104 床面材
105 気密シート
106 固定具
107 大引き
B 基礎
G 隙間
P、P1、P2 両面テープ
S 断熱材収容凹部
T 作業台
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9