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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148881
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ロープ
(51)【国際特許分類】
   D07B 1/02 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
D07B1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057157
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】595064887
【氏名又は名称】小浜製綱株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】398046105
【氏名又は名称】カネヤ製綱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 敏行
(72)【発明者】
【氏名】木下 善裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇
【テーマコード(参考)】
3B153
【Fターム(参考)】
3B153AA08
3B153AA09
3B153AA16
3B153AA45
3B153BB01
3B153CC13
3B153CC21
(57)【要約】
【課題】剛性が失われることを防止できるロープを提供する。
【解決手段】径方向の断面形状が長さ方向全域で略同一に構成されるストランド2を複数撚り合わせて又は組み合わせて構成されるロープであって、前記ストランド2は、モノフィラメント糸で構成される第1ヤーンAとマルチフィラメント糸で構成される第2ヤーンBとを複数撚り合わせて又は組み合わせることで構成され、前記第1ヤーンAは、前記第2ヤーンBよりも剛性があり、前記第2ヤーンは、前記第1ヤーンよりも低伸度であり、前記第1ヤーンA同士の間に前記第2ヤーンBが配置されているロープ。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向の断面形状が長さ方向全域で略同一に構成されるストランドを複数撚り合わせて又は組み合わせて構成されるロープであって、
前記ストランドは、モノフィラメント糸で構成される第1ヤーンとマルチフィラメント糸で構成される第2ヤーンとを複数撚り合わせて又は組み合わせることで構成され、
前記第1ヤーンは、前記第2ヤーンよりも剛性があり、
前記第2ヤーンは、前記第1ヤーンよりも低伸度であり、
前記第1ヤーン同士の間に前記第2ヤーンが配置されていることを特徴とするロープ。
【請求項2】
前記ストランドは、前記第1ヤーンと前記第2ヤーンとを複数撚り合わせて構成される内層部と、周方向で前記内層部を覆う外層部とを備える、請求項1に記載のロープ。
【請求項3】
前記ストランドは、前記第2ヤーンから構成される中央部と、周方向で前記中央部を覆う周囲部であって、前記第1ヤーンと前記第2ヤーンとから構成される周囲部とを備える、請求項1又は請求項2に記載のロープ。
【請求項4】
前記周囲部では、前記中央部を中心として周方向で、前記第1ヤーンと前記第2ヤーンとが回転対称に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のロープ。
【請求項5】
前記周囲部では、周方向で、前記第1ヤーンと前記第2ヤーンとが1本ずつ交互に配置されて構成されている請求項4に記載のロープ。
【請求項6】
前記中央部は、複数の前記第2ヤーンから構成される、請求項3乃至5のいずれか一項に記載のロープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロープに関する。
【背景技術】
【0002】
ロープとして、例えば、特許文献1に記載されたものが存在している。このロープは、芯ヤーンを複数本撚り合わせて形成された芯部と、該芯部の周囲に皮ヤーンを複数本配して形成される皮部と、を備えるストランドを3本撚り合わせて構成され、前記芯ヤーンは、ポリエチレンモノフィラメントを複数本撚り合わせて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭63-15351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載のロープにおいて、前記芯ヤーンはポリエチレンモノフィラメントだけを複数本撚り合わせて構成されている。そのため、例えば、ロープを引張って前記芯部に張力を加えると、前記芯ヤーンとしてのポリエチレンモノフィラメントに永久ひずみが発生し、ロープの剛性が失われてしまうという問題が生じる。ちなみに、特許文献1記載のロープは、前記永久ひずみを前記ロープの強度低下抑制のために積極的に用いたものであった。なお、このような問題は、上記特許文献1に記載されたロープに限らず、芯ヤーンをモノフィラメントだけで構成するロープ全般において生じていた。
【0005】
そこで、本発明は、モノフィラメントを用いたロープであって、剛性が失われることを防止できるロープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、径方向の断面形状が長さ方向全域で略同一に構成されるストランドを複数撚り合わせて又は組み合わせて構成されるロープであって、前記ストランドは、モノフィラメント糸で構成される第1ヤーンとマルチフィラメント糸で構成される第2ヤーンとを複数撚り合わせて又は組み合わせることで構成され、前記第1ヤーンは、前記第2ヤーンよりも剛性があり、前記第2ヤーンは前記第1ヤーンよりも低伸度であり、前記第1ヤーン同士の間に前記第2ヤーンが配置されていることを特徴とするロープである。
【0007】
前記構成によれば、前記第1ヤーンに押されて変形した前記第2ヤーンが、前記第1ヤーン同士の間を埋めることで、前記第2ヤーンを介して前記第1ヤーン同士が一体化されるため、第1ヤーンAよりも伸びにくい性質を有する前記第2ヤーンを間に配置されている前記第1ヤーンは個々に動くことが抑制され、例えば、ロープに張力が加わった際には、個々の前記第1ヤーンが伸びることが原因で永久ひずみが生じることを防止でき、これに伴い、ロープが緩んだ状態になることを防止できる。
【0008】
また、本発明のロープでは、前記ストランドは、前記第1ヤーンと前記第2ヤーンとを複数撚り合わせて構成される内層部と、周方向で前記内層部を覆う外層部とを備えてもよい。
【0009】
前記構成によれば、前記外層部が前記内層部を覆うことで、前記外層部で前記内層部を保護できる。
【0010】
また、本発明のロープでは、前記ストランドは、前記第2ヤーンから構成される中央部と、周方向で前記中央部を覆う周囲部であって、前記第1ヤーンと前記第2ヤーンとから構成される周囲部とを備えていてもよい。
【0011】
前記構成によれば、前記中央部は前記マルチフィラメントで構成される前記第2ヤーンから構成されるため、前記中央部は屈折しにくく、また、前記周方向で前記中央部を覆うように前記周囲部を形成するため、前記中央部の周りに前記周囲部を形成でき、前記周囲部を形成しやすい。
【0012】
また、本発明のロープにおいて、前記周囲部では、前記中央部を中心として周方向で、前記第1ヤーンと前記第2ヤーンとが回転対称に配置されていてもよい。
【0013】
前記構成によれば、前記中央部を中心として周方向で、前記第1ヤーンと前記第2ヤーンとが回転対称に配置されているため、前記ストランドにおける周方向の強度を一定にできる。
【0014】
また、本発明のロープにおいて、前記周囲部では、周方向で、前記第1ヤーンと前記第2ヤーンとが1本ずつ交互に配置されて構成されていてもよい。
【0015】
前記構成によれば、前記第1ヤーンと前記第2ヤーンとが1本ずつ交互に配置されているため、前記第2ヤーンを間に配置する2本の前記第1ヤーンを一体化できる。
【0016】
また、本発明のロープでは、前記中央部は、複数の前記第2ヤーンから構成されていてもよい。
【0017】
前記構成によれば、前記中央部は、複数の前記マルチフィラメント糸から構成されているため、より一層、前記中央部を屈折しにくくでき、結果的に、屈折しにくいロープを構成できる。
【発明の効果】
【0018】
よって、本発明のロープによれば、ロープに張力が加わった際には、第1ヤーンが緩んだ状態になることを防止できるから、ロープの剛性が失われることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るロープの径方向の断面を示す図である。
図2図2は、同実施形態に係るストランドの径方向の断面を示す図である。
図3図3は、同実施形態に係るストランドの径方向の断面を示す図であって、径一体部と周一体部とを際立つように示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係るロープ1について説明する。このロープ1は、例えば、漁場において、巻き網や底引き用の綱として利用される。
【0021】
以下の説明において、「径方向」とは、ロープ1やストランド2の太さや径を示す方向であり、「長さ方向」とは、ロープ1やストランド2が延びる方向のことである。また、「周方向」とは、ロープ1やストランド2の中心にて、長さ方向に沿って延びる仮想線(図示しない)まわりの方向のことである。なお、径方向と長さ方向とは直交している。
【0022】
図1に示すように、ロープ1は、複数(本実施形態では、6本)のストランド2を撚り合わせて構成されている。本実施形態のロープ1は、六つ打ちロープである。そのため、ロープ1は複数(本実施形態では6本)のストランド2を有している。また、本実施形態のロープ1では、周方向に配置される複数のストランド2の中央に、芯材Zが設けられている。芯材Zとしては、例えば、直径9mmのポリエステルロープが採用される。なお、本実施形態のロープ1は、樹脂製である。
【0023】
本実施形態のロープ1は、径方向の断面形状が長さ方向全域で略同一に構成されている。上述した通り、ロープ1は複数のストランド2を撚り合わせて構成されている。そのため、長さ方向において、各ストランド2が周方向に捩れることにより、ロープ1は長さ方向全域で同一断面形状となっている。よって、本実施形態のロープ1は、いわゆる「金太郎飴構造」である。ここで、本実施形態のロープ1を構成するにあたって採用されているストランド2は、すべて同種のものである。そのため、以下では、一つのストランド2に着目して説明を行い、他のストランド2にも兼用する。
【0024】
ストランド2は、第1ヤーンAと第2ヤーンBと第3ヤーンCとを複数本(具体的には、図2に示すように、20本)撚り合わせることで構成されている。
【0025】
「第1ヤーン」とは、1本の単糸から構成されたモノフィラメント糸であり、具体的には、直径0.2mm~5.0mmのモノフィラメント糸である。第1ヤーンAとして、例えば、PETモノフィラメントやPPモノフィラメントが該当する。第1ヤーンAはその性質として、屈曲させると屈折して劣化する性質を有する。なお、ここでいう「屈折」とは、折れた状態が元に戻らないことをいう。一方で、「第2ヤーン」とは、数十本の単繊維を合糸して構成される1本のマルチフィラメント糸(例えば、ポリエチレンマルチフィラメント糸)であり、具体的には、強度20cN/dT以上、且つ破断伸度10%以下の超高分子量ポリエチレン繊維(HMPE)糸である。第2ヤーンBとして、例えば、イザナス(登録商標)SK777が該当する。第2ヤーンBは、屈曲させても劣化することがない性質を有し、例えば、衣類や消防服などの緻密な織部分に用いられている。そのため、第2ヤーンBは、屈折しない。また、第2ヤーンBは、高弾性であり、伸びにくい性質を有している。第1ヤーンAは、第2ヤーンBよりも剛性がある。ここで「剛性」とは、外周の硬さや曲がりにくさを示す指標のことであり、曲げや捩れによる損傷に耐える力のことである。本実施形態では、すべての第1ヤーンAは、直径1.5mmのPETモノフィラメントであり、すべての第2ヤーンBは、33cN/dT以上のイザナス(登録商標)SK777(1600d×4×3)である。
【0026】
図2に示すように、本実施形態のストランド2は、第1ヤーンAと第2ヤーンBを10本撚り合わせて内層部4を形成し、該内層部4の表面に10本の第3ヤーンCを配して外層部3を形成した、多重組打構造に構成されている。なお、ストランド2は、径方向の断面形状が長さ方向全域で略同一に構成されている。
【0027】
内層部4は、複数の第1ヤーンAと第2ヤーンBを撚り合わせることで構成されている。本実施形態の内層部4は、中央部40と、該中央部40を周方向で覆う周囲部41とを備える。そのため、本実施形態の内層部4は、多層構造である。内層部4は、第1ヤーンAと第2ヤーンBとを撚り合わせることで構成されている。本実施形態では、合計10本のヤーンを撚り合わせている。なお、本実施形態の内層部4では、第2ヤーンBの本数が、第1ヤーンAよりも多い。
【0028】
中央部40は、ストランド2の径方向の中心となる。本実施形態の中央部40は、第2ヤーンBにより構成されている。また、本実施形態の中央部40は、複数(具体的には、二本)の第2ヤーンBから構成されている。なお、図2に示すように、中央部40を構成する第2ヤーンBは、後述する周囲部41に押されて径方向で変形している。
【0029】
周囲部41は、ストランド2の断面において、中央部40と後述する外層部3との中間に配置される中間層である。この周囲部41は、中央部40を覆うべく、中央部40に沿わせて環状層になっている。周囲部41では、第1ヤーンAと第2ヤーンBとが同じ数である。本実施形態の周囲部41は、4本の第1ヤーンAと4本の第2ヤーンBの合計8本から構成される。また、周囲部41では、第1ヤーンAと第2ヤーンBとが交互に配置されている。具体的には、図2に示すように、中央部40(具体的には、左右で隣り合う第2ヤーンB,B)の左右及び上下に、第2ヤーンBが配置されるように、周方向で第1ヤーンAと第2ヤーンBとが交互に配置されている。さらに、本実施形態の周囲部41では、周方向で、第1ヤーンAと第2ヤーンBとが1本ずつ交互に配置されている。そのため、周囲部41は、径方向において一層構造である。
【0030】
上述した通り中央部40を覆う周囲部41では、周方向で、第1ヤーンAと第2ヤーンBとが1本ずつ交互に配置されている。そのため、周囲部41では、中央部40を中心として周方向で、第1ヤーンAと第2ヤーンBとが回転対称に配置されている。具体的に、周囲部41は、4回回転対称として構成されている。
【0031】
上述したように、内層部4では、中央部40を構成する第2ヤーンBを覆うように、周囲部41を構成する第1ヤーンAと第2ヤーンBとが交互に配置されている。そのため、内層部4では、二つの第1ヤーンAの間に、第2ヤーンBが配置されている。このように、二つの第1ヤーンAと、第1ヤーンA同士の間に配置される第2ヤーンBとで構成されるもののことを、以下では「一体部4a」と規定する。すなわち、内層部4は一体部4aを備える。本実施形態の内層部4は、複数(具体的には、6つ)の一体部4aを備える。
【0032】
図2,3に示すように、一体部4aは、周方向で二つの第1ヤーンAの間に第2ヤーンBが配置されて構成される周一体部4bと、径方向における二つの第1ヤーンAの間に第2ヤーンB(具体的には、二つの第2ヤーンB)が配置されて構成される径一体部4cとを備える。本実施形態の内層部4では、第1ヤーンAと第2ヤーンBとの配置により、4つの周一体部4bと、2つの径一体部4cとが構成されている。なお、図2,3では、説明の便宜のため、周一体部4bと径一体部4cとを一つずつ示している。
【0033】
外層部3は、周方向で内層部4を覆う。外層部3は、ストランド2の径方向で、最外側に配置されている。外層部3は、環状の層として構成されている。外層部3は、例えば、内層部4として構成される第1ヤーンAと第2ヤーンBとが、ばらけることを防止している。外層部3は、複数(本実施形態では、10本)の第3ヤーンCを撚り合わせることにより構成されている。第3ヤーンCの材質は、フィルム糸又はモノフィラメント糸であり、具体的には、繊度1100dT以上のフィルム糸又はモノフィラメント糸であることが好ましい。本実施形態の第3ヤーンCには、超高分子量ポリエチレン繊維(HMPE)(3000d×3)が採用されている。
【0034】
以上、本実施形態のロープ1によれば、第1ヤーンAに押されて変形した第2ヤーンBが、第1ヤーンA同士の間を埋めることで、第2ヤーンBを介して第1ヤーンA同士が一体化されるため、第1ヤーンAよりも伸びにくい性質を有する第2ヤーンBを間に配置された第1ヤーンAは個々に動くことが抑制され、例えば、ロープ1に張力が加わった際には、個々の前記第1ヤーンAが伸びることが原因で永久ひずみが生じることを防止でき、これに伴い、ロープ1が緩んだ状態になることを防止できる。具体的に、本実施形態のストランド2では、二つの第1ヤーンAと、第1ヤーンA同士の間に配置される第2ヤーンBとで、一体部4aが構成されることにより、圧縮された第2ヤーンBが第1ヤーンA同士でズレが生じないように隙間を埋めるため、第1ヤーンA同士が一体化され、さらに第2ヤーンBは第1ヤーンAよりも伸びにくいため、個々の前記第1ヤーンAが伸びて永久ひずみが生じることを防止でき、ロープ1と該ロープ1を構成するストランド2が緩んだ状態になることを防止できる。
【0035】
また、本実施形態では、第2ヤーンBは33cN/dT以上のイザナス(登録商標)SK777であるため、ストランド2は、例えば、金属製ワイヤーと同等の強度を確保でき、また、ストランド2を採用するロープ1は樹脂製であるため、例えば、金属製ワイヤーよりも軽量にできる。
【0036】
また、本実施形態のロープ1では、外層部3が内層部4を覆うため、外層部3で内層部4を保護できる。
【0037】
また、本実施形態のロープ1では、内層部4を外層部3が覆うことで、ストランド2の強度を高めることができるとともに、ロープ1全体としての強度(例えば、耐摩耗性や耐損傷性)を向上させることができる。さらに、本実施形態のストランド2では、内層部4は中央部40と、該中央部40を周方向で覆う周囲部41とを備えるため、その分だけ、ストランド2全体としての強度を向上できる。
【0038】
また、本実施形態のロープ1では、中央部40はマルチフィラメントである第2ヤーンBから構成されるため、中央部40を屈折しにくくできる。また、本実施形態では、内層部4を多層構造とし、中央部40を第2ヤーンBから構成したことで、径方向での第1ヤーンAと第2ヤーンBとの配置により、径一体部4cを構成できる。よって、ストランド2の径方向で、第1ヤーンA同士を一体化でき、第1ヤーンAが個々に動くことを抑制できる。
【0039】
また、周方向で、中央部40を覆うように周囲部41を配置するため、中央部40の周りに周囲部41を形成しやすい。具体的には、周囲部41は、中央部40を覆うべく、中央部40に沿わせて環状層になっているため、形成しやすい。
【0040】
また、本実施形態のロープ1では、中央部40を中心として周方向で、第1ヤーンAと第2ヤーンBとが回転対称に配置されているため、ストランド2における周方向での強度を一定にできる。また、本実施形態の周囲部41は、4回回転対称として構成されているため、内層部4における周方向の美観を一定に保つことができる。
【0041】
また、本実施形態のロープ1及びストランド2では、第1ヤーンAと第2ヤーンBとが1本ずつ交互に配置されているため、第2ヤーンBを間に配置する2本の第1ヤーンAを一体化できる。周方向の全周において、第1ヤーンAと第2ヤーンBとが必ず隣り合うため、第1ヤーンA同士を確実に一体化できる。
【0042】
また、本実施形態のストランド2では、中央部40を構成する第2ヤーンBに沿って、第1ヤーンAと第2ヤーンBとが配置されているため、周囲部41を構成する第1ヤーンAと第2ヤーンBとを配置しやすい。また、中央部40を中心として、第1ヤーンAと第2ヤーンBとが交互に配置されることで、ストランド2の美観を一定に保つことができる。
【0043】
また、本実施形態のロープ1及びストランド2では、中央部40は、複数のマルチフィラメント糸から構成されているため、より一層、中央部40を屈折しにくくでき、結果的に、屈折しにくいロープ1やストランド2を構成できる。
【0044】
また、図2,3に示すように、本実施形態では、第1ヤーンAが径一体部4c及び周一体部4bを構成するため、径方向及び周方向の両方で、第1ヤーンA同士が一体化されて、より確実に、個々の第1ヤーンAが動くことを抑制できる。具体的に、ロープ1やストランド2が長さ方向に引っ張られた際には、まず、周方向で第2ヤーンBが圧縮されて第1ヤーンA同士の間を埋めるため、第1ヤーンA同士が一体化されて周一体部4bが形成される。そして、周一体部4bが形成されることに伴って、径方向でも、第2ヤーンBが圧縮され、第1ヤーンA同士の隙間を埋めることで、第1ヤーンA同士が一体化されて径一体部4cが形成される。よって、周方向での第1ヤーンA同士の一体化によって、径方向での第1ヤーンA同士の一体化も生じることで、径方向及び周方向の両方で、個々の第1ヤーンAが動くことを規制できる。
【0045】
また、本実施形態の内層部4では、第2ヤーンBにより構成される中央部40に沿わせて、図2における中央部40の左右及び上下に、第2ヤーンBが配置されるように、第1ヤーンAと第2ヤーンBとが交互に配置されているため、第1ヤーンA同士の一体化に際して、全ての第2ヤーンBとが無駄なく第1ヤーンA同士の間を埋めるように機能して、一体部4aを形成できる。
【0046】
また、本実施形態では、ストランド2は、第1ヤーンAと第2ヤーンBとを複数本撚り合わせることで構成されているため、ストランド2を長さ方向に引っ張ると、第2ヤーンBが第1ヤーンAに食い込みやすくなり、一体部4aを形成しやすい。さらに、本実施形態のストランド2では、外層部3が第3ヤーンCを複数撚り合わせて構成されているため、第3ヤーンCが内層部4を構成する第1ヤーンAや第2ヤーンBに沿いつつ、外層部3が内層部4を外側から保護できる。
【0047】
また、図2,3に示すように、本実施形態では、内層部4として、中央部40を構成する第2ヤーンBの左右及び上下に第2ヤーンBが配置されるように、周方向で第1ヤーンAと第2ヤーンBとが交互に配置されることにより、周一体部4bと径一体部4cとが交わるように配置されているため、第2ヤーンBに加わる力の向きも交わるため、内層部4を構成する全ての第1ヤーンAが一体化されて、より確実に個々の第1ヤーンAに永久ひずみが生じることを防止できる。
【0048】
また、本実施形態では、第2ヤーンBを介して第1ヤーンA同士が一体化されることにより、永久ひずみの発生を抑制し、結果的にロープ1の剛性を保つことができる。そのため、剛性が保たれたロープ1では、例えば、ウインチによって巻き取られた際に、一周目に巻いたロープ1の間に二周目のロープ1が入り込んでしまうことを抑制できる。また、ロープ1の摩耗による損傷を少なくできる。
【0049】
なお、本発明のロープは上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜、構成の変更や付加、削除、転換等を行ってもよいものとする。
【0050】
上記実施形態では、すべての第1ヤーンAを直径1.5mmのPETモノフィラメントとして説明を行ったが、これに限らず、例えば、第1ヤーンAとしては、直径1.5mmのPETモノフィラメントに加えて、それとは異なる「直径0.2mm~5.0mmのモノフィラメント糸」に該当するものが一緒に含まれていてもよい。また、第2ヤーンBについても同様であり、33cN/dT以上のイザナス(登録商標)SK777に加えて、それとは異なる「強度20cN/dT以上、且つ破断伸度10%以下の超高分子量ポリエチレン繊維(HMPE)糸」に該当するものが含まれていてもよい。
【0051】
上記実施形態では、内層部4において、中央部40を第2ヤーンBで構成し、合計8本の第1ヤーンAと第2ヤーンBとを交互に配置することで周囲部41が構成される場合について説明した。しかし、例えば、中央部40を第2ヤーンBで構成し、周囲部41を合計8本の第1ヤーンAだけで構成してもよい。即ち、中央部40を構成する第2ヤーンBをはさんで、径方向に配置される二つの第1ヤーンAが一体化されることにより、径方向でまんべんなく、径一体部4cが配置されていればよい。これにより、ストランド2(具体的には、内層部4)において、径方向でまんべんなく、第1ヤーンAが個々に動くことが抑制できる。
【0052】
上記実施形態では、内層部4において、中央部40が第2ヤーンBで構成される場合について説明した。しかし、例えば、中央部40を第1ヤーンAで構成し、合計8本の第1ヤーンAと第2ヤーンBとを交互に配置することで周囲部41を構成してもよい。即ち、第2ヤーンBをはさんで、周方向に配置される二つの第1ヤーンAが一体化されることにより、周方向でまんべんなく、周一体部4bが配置されていればよい。これにより、ストランド2(具体的には、内層部4)において、周方向でまんべんなく、第1ヤーンAが個々に動くことが抑制できる。
【0053】
上記実施形態では、第1ヤーンAと第2ヤーンBとを撚り合わせることでストランド2を構成する場合について説明したが、例えば、第1ヤーンAと第2ヤーンBとを固着させるなどして組み合わせることでストランド2を構成してもよい。
【0054】
上記実施形態の内層部4では、第2ヤーンBの本数が第1ヤーンAの本数よりも多い場合について説明したが、例えば、第1ヤーンAの本数が第2ヤーンBの本数が多くてもよい。この場合、第1ヤーンA同士が周方向や径方向で隣り合うことが考えられるが、ストランド2全体で剛性が失われることがないように第1ヤーンAと第2ヤーンBとが配置される。
【0055】
実施形態では、内層部4は、中央部40と周囲部41とを備えることで多層構造であったが、これに限らず、例えば、内層部4は単層構造に構成されていてもよい。この場合、例えば、内層部4は、周囲部41のみを備えることが考えられる。
【0056】
上記実施形態では、中央部40は複数の第2ヤーンBから構成されている場合について説明したが、例えば、中央部40は一本の第2ヤーンBから構成されていてもよいし、三本以上の第2ヤーンBから構成されていてもよい。
【0057】
図2に示すように、上記実施形態の周囲部41では、左右に隣り合う第2ヤーンB,Bで構成される中央部40の左右及び上下に、第2ヤーンBが配置されるように、周方向で第1ヤーンAと第2ヤーンBとが交互に配置される場合について説明したが、これに限らず、例えば、左右に隣り合う第2ヤーンB,Bで構成される中央部40の左右及び上下に、第1ヤーンAが配置されるように、周方向で第1ヤーンAと第2ヤーンBとが交互に配置されてもよい。
【0058】
実施形態では、周囲部41が4回回転対称である場合について説明したが、例えば、周囲部41が3回回転対称や2回回転対称であってもよいし、5回以上の回転対称であってもよい。
【0059】
上記実施形態では、周方向と径方向とで、第1ヤーンA同士の間に第2ヤーンBが配置されることで周一体部4bと径一体部4cとが構成されていたが、これに限らず、第1ヤーンA同士の間に第2ヤーンBが配置されることで、周一体部4bのみを備えていてもよい。
【0060】
上記実施形態では、ストランド2は内層部4と外層部3を備える場合について説明したが、例えば、ストランド2は外層部3を備えなくてもよい。
【0061】
上記実施形態では、外層部3は複数の第3ヤーンCを撚り合わせることに構成されるものと説明したが、例えば、外層部3としては、内層部4の外周面に沿って巻き付けられたテープや筒状のチューブ、PETやナイロンなどの繊維で内層部4を覆うものや、液状の樹脂を塗布して構成されたものであってもよい。
【0062】
上記実施形態では、図2に示すように、外層部3は一層として構成されていたが、例えば、第3ヤーンCをオーバーラップさせることによって、外層部3が二層以上に構成されていてもよい。
【0063】
上記実施形態では、中央部40が第2ヤーンBにより構成されている場合について説明したが、例えば、中央部40は(単数又は複数の)第1ヤーンAを含むように構成されていてもよい。なお、中央部40が複数の第1ヤーンAから構成されている場合、ストランド2全体での剛性が失われることがないように、周囲部41において、第1ヤーンAと第2ヤーンBとが配置されていることが考えられる。
【0064】
上記実施形態の周囲部41において、第1ヤーンAと第2ヤーンBとが1本ずつが配置されることで、周囲部41は一層構造である場合について説明したが、例えば、周囲部41を多層構造としてもよい。この場合、径方向に2つ以上の第1ヤーンA又は第2ヤーンBが配置される。すなわち、上記実施形態のストランド2は、中央部40、周囲部41、外層部3によって三層構造で構成されていたが、ストランド2は、四層以上の多層構造で構成されていてもよい。
【0065】
実施形態では、内層部4は、第1ヤーンAと第2ヤーンBとを合計10本撚り合わせて構成されていたが、これに限らず、例えば、内層部4は、第1ヤーンAと第2ヤーンBとを合計11本以上撚り合わせて構成されてもよい。
【0066】
上記実施形態では、ロープ1が六つ打ちである場合について説明したが、これに限らず、例えば、三つ打ちや八つ打ちのロープであってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1:ロープ、2:ストランド、3:外層部、4:内層部、4a:一体部、4b:周一体部、4c:径一体部、40:中央部、41:周囲部、A:第1ヤーン、B:第2ヤーン、C:第3ヤーン、Z:芯材
図1
図2
図3