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  • 特開-ろ過装置、及びろ過装置の運転方法 図1
  • 特開-ろ過装置、及びろ過装置の運転方法 図2
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  • 特開-ろ過装置、及びろ過装置の運転方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014889
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】ろ過装置、及びろ過装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 24/02 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
B01D23/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119085
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】山本 征一郎
(72)【発明者】
【氏名】岸 研吾
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼山 敦史
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA02
4D116BA12
4D116DD02
4D116FF02A
4D116GG09
4D116KK03
4D116QA12C
4D116QA12F
4D116QB48
4D116QC08B
4D116QC14B
4D116QC20B
4D116QC22A
4D116QC24
4D116QC26
4D116RR01
4D116RR14
4D116VV07
(57)【要約】
【課題】例えば、ろ過砂の洗浄が滞るというような異常が生じても正常化を図ることができるろ過装置を提供する。
【解決手段】ろ過砂を充填して形成されるろ過層3に上向きに原水を流すことにより原水をろ過処理するとともに、エアリフトポンプ10によってろ過層3下部よりろ過砂と共に上昇させる水を洗浄排水として排出するように構成されたろ過装置1Aであって、ろ過装置1Aの異常を解消する異常解消手段としての高圧流体噴射装置50を備えるものとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過砂を充填して形成されるろ過層に上向きに原水を流すことにより前記原水をろ過処理するとともに、エアリフトポンプによって前記ろ過層下部より前記ろ過砂と共に上昇させる水を洗浄排水として排出するように構成されたろ過装置であって、
前記ろ過装置の異常を解消する異常解消手段を備えるろ過装置。
【請求項2】
前記ろ過装置の運転状態を判定する運転状態判定手段をさらに備え、
前記異常解消手段は、前記運転状態判定手段の判定結果に基づいて、前記ろ過装置の異常を解消する請求項1に記載のろ過装置。
【請求項3】
前記異常解消手段は、前記運転状態判定手段が、前記ろ過砂の揚砂状態が不良であると判定したときに、前記エアリフトポンプの作動を一旦停止させ、その後、再起動させるように構成されている請求項2に記載のろ過装置。
【請求項4】
前記異常解消手段は、前記運転状態判定手段が、前記ろ過砂の揚砂状態が不良であると判定したときに、前記ろ過層内に高圧流体を噴射するように構成されている請求項2に記載のろ過装置。
【請求項5】
ろ過砂を充填して形成されるろ過層に上向きに原水を流すことにより前記原水をろ過処理するとともに、エアリフトポンプによって前記ろ過層下部より前記ろ過砂と共に上昇させる水を洗浄排水として排出するように構成されたろ過装置の運転方法であって、
前記ろ過装置の異常を解消する異常解消工程を包含するろ過装置の運転方法。
【請求項6】
前記ろ過装置の運転状態を判定する運転状態判定工程をさらに包含し、
前記運転状態判定工程の判定結果に基づいて、前記異常解消工程が実施される請求項5に記載のろ過装置の運転方法。
【請求項7】
前記異常解消工程は、前記運転状態判定工程において、前記ろ過砂の揚砂状態が不良であると判定したときに、前記エアリフトポンプの作動を一旦停止させ、その後、再起動させる再起動工程を包含する請求項6に記載のろ過装置の運転方法。
【請求項8】
前記異常解消工程は、前記運転状態判定工程において、前記ろ過砂の揚砂状態が不良であると判定したときに、前記ろ過層内に高圧流体を噴射する高圧流体噴射工程を包含する請求項6に記載のろ過装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過砂を充填して形成されるろ過層に上向きに原水を流すことにより原水をろ過処理するとともに、エアリフトポンプによってろ過層下部よりろ過砂と共に上昇させる水を洗浄排水として排出するように構成されたろ過装置、及びろ過装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下水の水処理に用いられるろ過装置としては、重力式下向流ろ過方式(固定床)、重力式上向流ろ過方式(固定床)、及び上向流移床式ろ過方式がある。これらのうち、上向流移床式ろ過方式は、ろ過操作を実施すると同時に、ろ材であるろ過砂を連続的に洗浄する方式であるため、ろ過池の損失水頭の上昇が少なく、連続してろ過水が得られ、且つメンテナンスが容易であるという特徴を有しており、水処理に広く用いられている。
【0003】
上向流移床式ろ過方式のろ過装置としては、ろ過層とエアリフトポンプとを備えて構成されるものが知られている(特許文献1参照)。ろ過層は、懸濁物質(SS)を含んだ被処理水としての原水をろ過するためのろ過砂がろ過槽に充填されることで形成されている。エアリフトポンプは、ろ過槽の上部から下部に亘って挿入されるエアリフト管と、エアリフト管に隣接するように配置されるエア供給管とを備え、エア供給管を介して供給されるエアリフト用空気により、ろ過層の下部のろ過砂を水と共にエアリフト管を通してエアリフト管の上方に配された分離器へと搬送することができるようになっている。
【0004】
特許文献1に開示されたろ過装置においては、ろ過層内に原水を流入させているときに、エアリフトポンプを連続的に作動させて、ろ過処理に供されたろ過砂を水と共にエアリフト用空気で上昇させる揚砂を実施することにより、ろ過砂を水と空気とにより撹拌洗浄するようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-166113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のろ過装置の上流側に設置された前処理設備の運転状況によっては、SS濃度が設計流入水質を超えることがあり、その状態が長く続くと、ろ過砂の流動性が低下して揚砂不良となり、ろ過砂の洗浄が滞る場合がある。また、上記のろ過装置において、装置内に異物や夾雑物(以下、「異物等」と称する。)が混入し、異物等によってエアリフト管の吸込口が塞がれた場合にも、揚砂不良となり、ろ過砂の洗浄が滞ってしまう。このように、ろ過砂の洗浄が滞るというような異常が生じた場合、正常化を図ることが望まれている。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、例えば、ろ過砂の洗浄が滞るというような異常が生じても正常化を図ることができるろ過装置、及びろ過装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明に係るろ過装置の特徴構成は、
ろ過砂を充填して形成されるろ過層に上向きに原水を流すことにより前記原水をろ過処理するとともに、エアリフトポンプによって前記ろ過層下部より前記ろ過砂と共に上昇させる水を洗浄排水として排出するように構成されたろ過装置であって、
前記ろ過装置の異常を解消する異常解消手段を備えることにある。
【0009】
本構成のろ過装置によれば、ろ過装置の異常を解消する異常解消手段を備えるので、例えば、ろ過砂の洗浄が滞るというような異常が生じても正常化を図ることができる。
【0010】
本発明に係るろ過装置において、
前記ろ過装置の運転状態を判定する運転状態判定手段をさらに備え、
前記異常解消手段は、前記運転状態判定手段の判定結果に基づいて、前記ろ過装置の異常を解消することが好ましい。
【0011】
本構成のろ過装置によれば、ろ過装置の運転状態を判定する運転状態判定手段の判定結果に基づいて、ろ過装置の異常が異常解消手段によって解消されるので、装置故障に至る前に正常化を図ることができる。
【0012】
本発明に係るろ過装置において、
前記異常解消手段は、前記運転状態判定手段が、前記ろ過砂の揚砂状態が不良であると判定したときに、前記エアリフトポンプの作動を一旦停止させ、その後、再起動させるように構成されていることが好ましい。
【0013】
本構成のろ過装置によれば、異常解消手段は、運転状態判定手段が、ろ過砂の揚砂状態が不良であると判定したときに、エアリフトポンプの作動を一旦停止させ、その後、再起動させるように構成されている。このような構成により、揚砂不良により流動性が低下しているろ過砂に対し、エアリフトポンプの作動停止及び再起動による衝撃を加えることができ、衝撃によりろ過砂の流動性を回復させて揚砂不良を解消することができる。
【0014】
本発明に係るろ過装置において、
前記異常解消手段は、前記運転状態判定手段が、前記ろ過砂の揚砂状態が不良であると判定したときに、前記ろ過層内に高圧流体を噴射するように構成されていることが好ましい。
【0015】
本構成のろ過装置によれば、運転状態判定手段によってろ過砂の揚砂状態が不良であると判定されると、ろ過層内に高圧流体が噴射される。揚砂不良がろ過砂の固着等に起因している場合、固着等したろ過砂が高圧流体によって解砕される。このようにして、ろ過層をほぐすことにより、ろ過砂の流動性を回復させて、揚砂不良を解消することができる。
【0016】
次に、上記課題を解決するための本発明に係るろ過装置の運転方法の特徴構成は、
ろ過砂を充填して形成されるろ過層に上向きに原水を流すことにより前記原水をろ過処理するとともに、エアリフトポンプによって前記ろ過層下部より前記ろ過砂と共に上昇させる水を洗浄排水として排出するように構成されたろ過装置の運転方法であって、
前記ろ過装置の異常を解消する異常解消工程を包含することにある。
【0017】
本構成のろ過装置の運転方法によれば、ろ過装置の異常を解消する異常解消工程を包含するので、例えば、ろ過砂の洗浄が滞るというような異常が生じても正常化を図ることができる。
【0018】
本発明に係るろ過装置の運転方法において、
前記ろ過装置の運転状態を判定する運転状態判定工程をさらに包含し、
前記運転状態判定工程の判定結果に基づいて、前記異常解消工程が実施されることが好ましい。
【0019】
本構成のろ過装置の運転方法によれば、ろ過装置の運転状態を判定する運転状態判定工程の判定結果に基づいて、異常解消工程が実施され、ろ過装置の異常が解消されるので、装置故障に至る前に正常化を図ることができる。
【0020】
本発明に係るろ過装置の運転方法において、
前記異常解消工程は、前記運転状態判定工程において、前記ろ過砂の揚砂状態が不良であると判定したときに、前記エアリフトポンプの作動を一旦停止させ、その後、再起動させる再起動工程を包含することが好ましい。
【0021】
本構成のろ過装置の運転方法によれば、異常解消工程は、運転状態判定工程において、ろ過砂の揚砂状態が不良であると判定したときに、エアリフトポンプの作動を一旦停止させ、その後、再起動させる再起動工程を包含する構成とされている。このような構成により、揚砂不良により流動性が低下しているろ過砂に対し、エアリフトポンプの作動停止及び再起動による衝撃を加えることができ、衝撃によりろ過砂の流動性を回復させて揚砂不良を解消することができる。
【0022】
本発明に係るろ過装置の運転方法において、
前記異常解消工程は、前記運転状態判定工程において、前記ろ過砂の揚砂状態が不良であると判定したときに、前記ろ過層内に高圧流体を噴射する高圧流体噴射工程を包含することが好ましい。
【0023】
本構成のろ過装置の運転方法によれば、運転状態判定工程において、ろ過砂の揚砂状態が不良であると判定されると、ろ過層内に高圧流体を噴射する高圧流体噴射工程が行われる。揚砂不良がろ過砂の固着等に起因している場合、固着等したろ過砂が高圧流体によって解砕される。このようにして、ろ過層をほぐすことにより、ろ過砂の流動性を回復させて、揚砂不良を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係るろ過装置を模式的に表した概略構成図である。
図2図2は、本発明の第一実施形態に係るろ過装置における高圧流体噴射装置の動作説明図である。
図3図3は、本発明の第二実施形態に係るろ過装置を模式的に表した概略構成図である。
図4図4は、本発明の第二実施形態に係るろ過装置による処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について、図1乃至図4を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。なお、図1乃至図3において、本発明のろ過装置を構成するろ過槽やエアリフトポンプ、制御装置、濁度計、水位計、振動計、異常報知手段等の各種機器について、説明容易化のため適宜誇張又は簡略化しており、実際のろ過装置における各種機器の大小関係や配置等を厳密に反映したものではない。
【0026】
〔第一実施形態〕
<全体構成>
図1は、本発明の第一実施形態に係るろ過装置1Aを模式的に表した概略構成図である。図1に示すように、ろ過装置1Aは、筒状の胴部2a及び逆コーン状の底部2bを有するろ過槽2と、ろ過槽2内にろ材としてのろ過砂が充填されて形成されるろ過層3と、ろ過層3の下部のろ過砂を水と共に上昇させるエアリフトポンプ10とを備えている。
【0027】
[原水流入部]
ろ過槽2の下部には、懸濁物質(SS)を含んだ被処理水としての原水をろ過層3に流入させる原水流入部4が設けられている。この原水流入部4には、例えば三角形状の断面で下面側が開放された単一又は複数本の分散板の集合体からなる原水分散板5が配されている。原水分散板5には、パイプ6,7を介して原水が供給されるようになっている。こうして、原水は矢印Aで示されるように原水分散板5の下部より流出し、ろ過層3中を上向流になって通過する間にろ過層3により含有するSS成分がろ過される。ろ過後の処理水(ろ過水)は、図1中記号B,C,D矢印で示すように、ろ過槽2の上部からオーバーフローされて集水トラフ8へと流れ、ろ過水排出管9から次の処理装置(図示省略)へと送られる。
【0028】
<エアリフトポンプ>
エアリフトポンプ10は、主として、エアリフト管11、エアコンプレッサ12、箱体13、吸込管14、及びエア供給管15から構成されている。エアコンプレッサ12は、エアリフトポンプ10における圧縮空気供給源であり、ろ過槽2の外部に配設されている。
【0029】
エアリフト管11は、ろ過槽2の内部においてろ過槽2の上部から下部に亘って延在するように配設されている。エアリフト管11には、エアリフト管11の下方部を包み込むように箱体13が装着されている。箱体13の底部には、箱体13の内部に連通するように吸込管14が接続されている。箱体13とエアコンプレッサ12とは、エア供給管15によって接続されている。エア供給管15には、圧縮空気流れの上流側から下流側に向かって、流量制御弁16及び流量計17がこの記載順に介設されている。流量制御弁16は、後述する制御装置30からの弁開度信号に応じて弁開度が制御される。流量計17は、エア供給管15における流量制御弁16の下流側を通流する圧縮空気の流量を計測する。流量計17の計測信号は、後述する制御装置30へと送信される。制御装置30は、流量計17の計測信号を読み取り、現在の圧縮空気の流量を目標値に近づけるように流量制御弁16の弁開度を演算し、算出された弁開度に基づく弁開度信号を流量制御弁16へと送信する。
【0030】
エアリフトポンプ10においては、エアコンプレッサ12から流量制御弁16の弁開度に応じた流量の圧縮空気(エアリフト用空気)が、エア供給管15を介して箱体13の内部に供給される。箱体13の内部に供給されたエアリフト用空気は、図1中記号E矢印で示すように、エアリフト管11の内部に吹き込まれる。すると、図1中記号F矢印で示すように、ろ過槽2の底部における水及びろ過砂が吸込管14を介して箱体13の内部へと吸い上げられる。箱体13の内部に吸い上げられたろ過砂は、エアリフト管11の内外の比重差により生じる上昇力により、図1中記号G矢印で示すように上昇し、上昇中に、空気と水とにより撹拌洗浄される。
【0031】
エアリフト管11の上端側にはガイド管20が配設されている。ガイド管20には、エアリフト用空気の作用により、ろ過砂と共に水(洗浄排水)がエアリフト管11を通して搬送される。ガイド管20においては、上昇空気と、同伴するろ過砂及び洗浄排水とが分離される。図1中記号H矢印で示すように、分離されたろ過砂は、ラビリンス構造のろ材洗浄器21へと沈降する。ろ材洗浄器21の下部からは、図1中記号Iで示すように、ろ過層3を通過したろ過水の一部が洗浄水として導入され、導入された洗浄水と沈降するろ過砂とを向流接触させることにより、ろ過砂とSSとを分離させ、ろ過砂を洗浄する。洗浄されたろ過砂は、図1中記号J矢印で示すように、ろ過層3へと戻される。SSは、上向水に同伴してろ材洗浄器21の内部を上方へと移動し、ガイド管20で分離処理された洗浄排水と共に、ガイド管20の周りに形成される分離器22に一時滞留する。分離器22に滞留されたSSを含む洗浄排水は、分離器22のオリフィスプレート23の孔を通って溢流して、図1中記号Kで示すように、洗浄排水管24を介して装置外へと排出される。
【0032】
ろ過装置1Aは、CPU、メモリ、I/Oポート等を内蔵する制御装置30を備えている。制御装置30は、タイマ制御回路35を有しており、タイマ制御回路35によるタイマ設定時間Ts内において、流量制御弁16に向けて弁開作動信号を送信し流量制御弁16を開き、タイマ制御回路35によるタイマ設定時間Tsを超えたときに、流量制御弁16に向けて弁閉作動信号を送信し、流量制御弁16を所定時間閉じることができるように構成されている。
【0033】
<異常解消手段>
第一実施形態のろ過装置1Aには、ろ過砂の揚砂状態が不良である場合に、ろ過層3内に高圧流体を噴射するように構成される異常解消手段としての高圧流体噴射装置50が配設されている。高圧流体噴射装置50は、主として、給水ポンプ60、高圧流体分配器70、第一高圧流体噴射管81、及び第二高圧流体噴射管82により構成されている。
【0034】
高圧流体分配器70は、手動操作により開閉する、例えば、電磁式開閉弁である第一開閉弁71、第二開閉弁72、第三開閉弁73、及び第四開閉弁74を備えている。第一開閉弁71の入口ポートとエアコンプレッサ12とは、第一接続管61によって接続されている。第一開閉弁71の出口ポートは、第二接続管62、継手55、及び第三接続管63を介して第二開閉弁72の入口ポートに接続されている。第三開閉弁73の入口ポートと給水ポンプ60の吐出ポートとは、第四接続管64によって接続されている。第三開閉弁73の出口ポートは、第五接続管65、継手55、及び第六接続管66を介して第四開閉弁74の入口ポートに接続されている。
【0035】
第一高圧流体噴射管81は、ろ過槽2の底部2bにおける側壁部、及び底面部の所要箇所に配設されている。第一高圧流体噴射管81は、底部2bの側壁部、及び底面部に貫通状態で固定される直管状の部材よりなり、ろ過層3内に高圧流体(圧縮空気、圧力水)を噴射する噴射ノズルとして機能する。第一高圧流体噴射管81のそれぞれは、第一高圧流体供給管91を介して第二開閉弁72の出口ポートに接続されている。
【0036】
第二高圧流体噴射管82は、案内シュート部57の下側に配置されている。ここで、案内シュート部57は、エアリフト管11を内包する筒状体59の下部に設けられており、ろ過槽2の胴部2a内のろ過砂が下降する際、ろ過砂が底部2bの側壁部に向けて流れるようろ過砂を案内することができるような下方に向けて末広がり形状に形成された円錐台状部材により構成されている。第二高圧流体噴射管82は、案内シュート部57の底辺周囲に固定された噴射管であり、案内シュート部57の周辺に高圧流体を噴射することができるように構成されている。第二高圧流体噴射管82は、第二高圧流体供給管92を介して第四開閉弁74の出口ポートに接続されている。
【0037】
図2は、本発明の第一実施形態に係るろ過装置1Aにおける高圧流体噴射装置50の動作説明図である。なお、図2(a)~(f)に示す第一~第四開閉弁71~74を模式的に示した図形において、白抜き状態は弁開状態を示し、塗り潰し状態は弁閉状態を示す。
【0038】
図2(a)は、手動操作により、第一開閉弁71、第二開閉弁72、及び第四開閉弁74が開状態とされる一方で、手動操作により、第三開閉弁73が閉状態とされた状態図である。この場合、エアコンプレッサ12からの圧縮空気が、第一接続管61、第一開閉弁71、第二接続管62、継手55、第三接続管63、第二開閉弁72、及び第一高圧流体供給管91を介して第一高圧流体噴射管81に供給される。これと同時に、エアコンプレッサ12からの圧縮空気が、第一接続管61、第一開閉弁71、第二接続管62、継手55、第六接続管66、第四開閉弁74、及び第二高圧流体供給管92を介して第二高圧流体噴射管82に供給される。これにより、ろ過槽2における底部2bの側壁部、及び底面部の近傍のろ過層3に対して、第一高圧流体噴射管81から圧縮空気が噴射される。これと同時に、ろ過槽2における底部2bの案内シュート部57の近傍のろ過層3に対して、第二高圧流体噴射管82から圧縮空気が噴射される。
【0039】
図2(b)は、手動操作により、第二開閉弁72、第三開閉弁73、及び第四開閉弁74が開状態とされる一方で、手動操作により、第一開閉弁71が閉状態とされた状態図である。この場合、給水ポンプ60からの圧力水が、第四接続管64、第三開閉弁73、第五接続管65、継手55、第三接続管63、第二開閉弁72、及び第一高圧流体供給管91を介して第一高圧流体噴射管81に供給される。これと同時に、給水ポンプ60からの圧力水が、第四接続管64、第三開閉弁73、第五接続管65、継手55、第六接続管66、第四開閉弁74、及び第二高圧流体供給管92を介して第二高圧流体噴射管82に供給される。これにより、ろ過槽2における底部2bの側壁部、及び底面部の近傍のろ過層3に対して、第一高圧流体噴射管81から圧力水が噴射される。これと同時に、ろ過槽2における底部2bの案内シュート部57の近傍のろ過層3に対して、第二高圧流体噴射管82から圧力水が噴射される。
【0040】
図2(c)は、手動操作により、第一開閉弁71、及び第二開閉弁72が開状態とされる一方で、手動操作により、第三開閉弁73、及び第四開閉弁74が閉状態とされた状態図である。この場合、エアコンプレッサ12からの圧縮空気が、第一接続管61、第一開閉弁71、第二接続管62、継手55、第三接続管63、第二開閉弁72、及び第一高圧流体供給管91を介して第一高圧流体噴射管81に供給される。これにより、ろ過槽2における底部2bの側壁部、及び底面部の近傍のろ過層3に対して、第一高圧流体噴射管81から圧縮空気が噴射される。なお、第二高圧流体噴射管82には、エアコンプレッサ12からの圧縮空気、及び給水ポンプ60からの圧力水の何れも供給されない。このため、第二高圧流体噴射管82からは高圧流体が噴射されない。
【0041】
図2(d)は、手動操作により、第二開閉弁72、及び第三開閉弁73が開状態とされる一方で、手動操作により、第一開閉弁71、及び第四開閉弁74が閉状態とされた状態図である。この場合、給水ポンプ60からの圧力水が、第四接続管64、第三開閉弁73、第五接続管65、継手55、第三接続管63、第二開閉弁72、及び第一高圧流体供給管91を介して第一高圧流体噴射管81に供給される。これにより、ろ過槽2における底部2bの側壁部、及び底面部の近傍のろ過層3に対して、第一高圧流体噴射管81から圧力水が噴射される。なお、第二高圧流体噴射管82には、エアコンプレッサ12からの圧縮空気、及び給水ポンプ60からの圧力水の何れも供給されない。このため、第二高圧流体噴射管82からは高圧流体が噴射されない。
【0042】
図2(e)は、手動操作により、第一開閉弁71、及び第四開閉弁74が開状態とされる一方で、手動操作により、第二開閉弁72、及び第三開閉弁73が閉状態とされた状態図である。この場合、エアコンプレッサ12からの圧縮空気が、第一接続管61、第一開閉弁71、第二接続管62、継手55、第六接続管66、第四開閉弁74、及び第二高圧流体供給管92を介して第二高圧流体噴射管82に供給される。これにより、ろ過槽2における底部2bの案内シュート部57の近傍のろ過層3に対して、第二高圧流体噴射管82から圧縮空気が噴射される。なお、第一高圧流体噴射管81には、エアコンプレッサ12からの圧縮空気、及び給水ポンプ60からの圧力水の何れも供給されない。このため、第一高圧流体噴射管81からは高圧流体が噴射されない。
【0043】
図2(f)は、手動操作により、第三開閉弁73、及び第四開閉弁74が開状態とされる一方で、手動操作により、第一開閉弁71、及び第二開閉弁72が閉状態とされた状態図である。この場合、給水ポンプ60からの圧力水が、第四接続管64、第三開閉弁73、第五接続管65、継手55、第六接続管66、第四開閉弁74、及び第二高圧流体供給管92を介して第二高圧流体噴射管82に供給される。これにより、ろ過槽2における底部2bの案内シュート部57の近傍のろ過層3に対して、第二高圧流体噴射管82から圧力水が噴射される。なお、第一高圧流体噴射管81には、エアコンプレッサ12からの圧縮空気、及び給水ポンプ60からの圧力水の何れも供給されない。このため、第一高圧流体噴射管81からは高圧流体が噴射されない。
【0044】
<再起動工程>
以上に述べたように構成されるろ過装置1Aにおいて、制御装置30は、タイマ制御回路35によるタイマ設定時間Ts内において、流量制御弁16に向けて弁開作動信号を送信し流量制御弁16を開く。これにより、エアリフトポンプ10が作動状態となる。タイマ制御回路35によるタイマ設定時間Tsを超えると、制御装置30は、流量制御弁16に向けて弁閉作動信号を送信し、流量制御弁16を閉じて、エアリフトポンプ10の作動を停止させる。所定時間経過後、制御装置30は、エアリフト用空気の流量が、揚砂を実施する上で必要な所定流量以上となるように流量制御弁16を開いた状態とする弁開度信号を流量制御弁16へと送信する。これにより、エアリフト管11に対してエアリフト用空気が再度供給され、エアリフトポンプ10が再起動される(再起動工程)。制御装置30は、タイマ制御回路35によるタイマ設定時間Tsをリセットして再度カウントを開始する。こうして、エアリフトポンプ10を、一定時間毎に自動的に停止させ、所定時間経過後に再起動させることを繰り返すことにより、エアリフトポンプ10の作動停止及び再起動による衝撃を一定時間毎にろ過層3に加えることができ、衝撃によりろ過砂の流動性を回復させて揚砂不良を未然に防ぐことができる。
【0045】
<異常解消工程(高圧流体噴射工程)>
ろ過装置1Aを管理・運転している作業者は、例えば、ろ過砂の固着等に起因する揚砂不良によりろ過砂の洗浄が滞るというような異常がろ過装置1Aに生じた場合、正常化を図るべく、異常解消工程を実行する。すなわち、作業者は、手動操作により、各開閉弁71~74を開閉し、図2(a)~(f)に示す高圧流体噴射動作の何れか一つ、又は2以上を適宜組み合わせて実行する。これにより、固着等したろ過砂が高圧流体によって解砕される。このようにして、ろ過層3をほぐすことにより、ろ過砂の流動性を回復させて、揚砂不良を解消することができ、ろ過装置1Aの運転の正常化を図ることができる。
【0046】
〔第二実施形態〕
図3は、本発明の第二実施形態に係るろ過装置1Bを模式的に表した概略構成図である。なお、第二実施形態において、第一実施形態と同一又は同様のものについては、図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略し、以下においては、第一実施形態に係るろ過装置1Aと異なる部分を中心に説明する。
【0047】
<運転状態判定手段、異常解消手段>
図3に示すろ過装置1Bにおいて、制御装置30は、濁度計41による濁度の計測値、水位計42による水位の計測値、及び振動計43による振幅の計測値の少なくとも一つに基づいて、ろ過装置1Bの運転状態(エアリフトポンプ10の作動状態、揚砂状態)を判定する運転状態判定手段として機能する。また、制御装置30は、ろ過砂の揚砂状態が不良であると判定したときに、エアリフトポンプ10の作動を一旦停止させ、その後、再起動させるように構成されており、ろ過装置1Bの異常を解消する異常解消手段として機能する。さらに、異常解消手段としての高圧流体噴射装置50は、制御装置30により制御される構成とされている。
【0048】
制御装置30には、信号伝達可能に各種機器が接続されている。ここでの各種機器としては、濁度計41、水位計(レベル計)42、振動計43、画像表示器44、音声スピーカ45、赤色警告ランプ46、及び黄色警告ランプ47が挙げられる。図3中記号「Q」の囲い線で示すグループ、すなわち制御装置30、画像表示器44、音声スピーカ45、赤色警告ランプ46、黄色警告ランプ47等の機器を、例えば、電気設備が格納された建物内の部屋又は空間である電気室に設置する態様がある。また、これらの機器を一つに纏めて管理ユニットを構成し、かかる管理ユニットを、ろ過装置1Bの本体であるろ過槽2の近傍に設置したり、上記の電気室に設置したりする態様もある。
【0049】
<濁度計>
濁度計41は、分離器22に一時的に滞留している洗浄排水の濁度を計測できるように配設されている。濁度計41としては、例えば、透過散乱光方式や表面散乱光方式、積分球方式、透過光方式、散乱光方式、粒子数計測方式等のものが挙げられるが、何れの方式のものを用いてもよい。
【0050】
<水位計>
水位計42は、分離器22に一時的に滞留している洗浄排水の水位を計測できるように配設されている。水位計42としては、例えば、検出すべき水位の高さ箇所に下端が位置するように水位検出用の第一電極棒を分離器22内に垂設するとともに、分離器22内の底部の水と接触可能に第二電極棒を配設し、これら第一及び第二の電極棒間の通電状態に基づいて分離器22内の水位を検出するようにしたものが挙げられる。ただし、これに限定されるものではなく、洗浄排水と接触させて計測する接触式のものとして、圧力式やフロート式等の水位計が挙げられ、洗浄排水に対し非接触で計測できる非接触式のものとして、超音波式、レーザ式、光学式等の水位計が挙げられる。
【0051】
<振動計>
振動計43は、エアリフトポンプ10の作動に伴う振動を計測できるように分離器22の側壁に取り付けられている。振動計43としては、例えば、機械方式や電磁方式、圧電方式、光学方式、電磁波方式等のものが挙げられるが、何れの方式のものを用いてもよい。
【0052】
<異常報知手段>
画像表示器44は、ろ過装置1Aが異常である旨の内容を画像表示によって知らせる機器である。音声スピーカ45は、ろ過装置1Aが異常である旨の内容を音声によって知らせる機器である。赤色警告ランプ46及び黄色警告ランプ47は、ろ過装置1Aが異常である旨を赤色及び黄色にそれぞれ点灯することによって知らせる機器である。画像表示器44、音声スピーカ45、赤色警告ランプ46及び黄色警告ランプ47は、何れもろ過装置1Aの異常を報知する異常報知手段として機能する。
【0053】
図4は、本発明の第二実施形態に係るろ過装置による処理手順を示すフローチャートである。制御装置30におけるメモリには、図4のフローチャートの手順に従って作成された所定プログラムや、各種データ等が記憶されている。制御装置30においては、メモリに格納されている所定プログラムをCPUが読み込んで実行し、濁度計41、水位計42、振動計43、画像表示器44、音声スピーカ45、赤色警告ランプ46、黄色警告ランプ47及び流量制御弁16との協働により、ろ過装置1Aの運転状態を判定したり、ろ過装置1Bの異常を解消したりする機能が発揮される。
【0054】
次に、ろ過装置1Bの運転方法について、図4のフローチャートを用いて説明する。なお、以下の処理内容は、流量計17によって計測される、エア供給管15における流量制御弁16の下流側を通流する圧縮空気(エアリフト用空気)の流量が、ろ過処理に供されたろ過砂を水と共にエアリフト用空気で上昇させる揚砂を実施する上で必要な所定流量以上であることを前提に、つまり、エアコンプレッサ12から流量計17に至る部分に不具合がなく正常に作動していることを前提に実施される。図4のフローチャートにおいて、図中記号「S」はステップを表す。また、図4のフローチャートに示される処理は、所定サイクルタイム毎に繰り返し実行される。
【0055】
<S1:計測工程>
図4のフローチャートのステップS1において、濁度計41は、分離器22に一時的に滞留している洗浄排水の濁度を計測する(濁度計測工程)。水位計42は、同洗浄排水の水位を計測する(水位計測工程)。振動計43は、エアリフトポンプ10の作動に伴う振動(分離器22の側壁の振動)の振幅を計測する(振動計測工程)。
【0056】
<S2:計測値読込工程>
次いで、制御装置30は、濁度計41、水位計42及び振動計43のそれぞれの計測機器の計測によって得られる洗浄排水の濁度の計測値、洗浄排水の水位の計測値、及びエアリフトポンプ10の作動に伴う振動の振幅の計測値をそれぞれ読み込む(S2)。
【0057】
<S3:ろ過装置の運転状態(エアリフトポンプの作動状態)の判定工程>
制御装置30は、ステップS2で読み込んだ振動計43による振幅の計測値に基づいて、ろ過装置1Bの運転状態、ここではエアリフトポンプ10の作動状態を判定する(S3)。
【0058】
エアリフトポンプ10の作動中には、エアリフト管11を上昇するエアリフト用空気の上昇流及び揚砂される砂により、ろ過装置1Bが振動しており、エアリフト用空気の空気量が減少すると、振幅が小さくなり、エアリフト用空気の空気量が増加すると、振幅が大きくなる。従って、エアリフトポンプ10の作動に伴う振動の計測値に基づいて、エアリフトポンプ10の作動状態を正確に判定することができる。
【0059】
<S4:異常報知工程>
ステップS3において、振幅の大きさが所定値未満の場合(S3において「YES」)、制御装置30は、エアリフトポンプ10が作動不良であると判定し、エアリフトポンプ10が作動不良であることを示す報知指令信号を、画像表示器44、音声スピーカ45及び赤色警告ランプ46のそれぞれの機器に送信する(S4)。これにより、画像表示器44は、エアリフトポンプ10が作動不良である旨の内容の画像を表示する。音声スピーカ45は、エアリフトポンプ10が作動不良である旨の内容の音声を発する。赤色警告ランプ46は、エアリフトポンプ10が作動不良であること示す赤色に点灯する。
【0060】
<S5:異常解消工程(高圧流体噴射工程、再起動工程)>
制御装置30は、異常解消工程を実行する。すなわち、制御装置30は、各開閉弁71~74に所定の開閉信号を送信し、図2(a)~(f)に示す高圧流体噴射動作の何れか一つ、又は2以上を適宜組み合わせて実行する。または、制御装置30は、流量制御弁16を全閉状態とする弁開度信号を流量制御弁16へと送信することにより、エアリフト管11に対するエアリフト用空気の供給を止めて、エアリフトポンプ10の作動を停止させ、その後、程なくして、エアリフト用空気の流量が、揚砂を実施する上で必要な所定流量以上となるように流量制御弁16を開いた状態とする弁開度信号を流量制御弁16へと送信することにより、エアリフト管11に対してエアリフト用空気を再度供給して、エアリフトポンプ10を再起動する。
【0061】
異常解消工程では、運転状態判定工程(ステップS3)において、エアリフトポンプ10が作動不良であると判定されると、ろ過層3内に高圧流体(圧縮空気、圧力水)を噴射する高圧流体噴射工程が行われる。エアリフトポンプ10の作動不良の原因がろ過砂の固着等である場合、固着等したろ過砂が高圧流体によって解砕される。このようにして、ろ過層3をほぐすことにより、ろ過砂の流動性を回復させて、エアリフトポンプ10の作動不良を解消することができる。または、エアリフトポンプ10の作動を一旦停止させ、その後、再起動させる再起動工程が行われる。これにより、エアリフトポンプ10の作動停止及び再起動による衝撃をろ過層3に加えることができ、衝撃によりろ過砂の流動性を回復させてエアリフトポンプ10の作動不良を解消することができる。
【0062】
<S6:ろ過装置の運転状態(揚砂状態)の判定工程>
ステップS3において、振幅の大きさが所定値以上の場合(S3において「NO」)、制御装置30は、ステップS2で読み込んだ濁度計41による濁度の計測値に基づいて、ろ過装置1Bの運転状態、ここでは揚砂状態を判定する(S6)。
【0063】
<S7:ろ過装置の運転状態(揚砂状態)の判定工程>
ステップS6において、濁度の大きさが所定値以上の場合(S6において「NO」)、制御装置30は、ステップS2で読み込んだ水位計42による水位の計測値に基づいて、ろ過装置1Bの運転状態、ここでは揚砂状態を判定する(S7)。
【0064】
エアリフト用空気によりろ過砂と共に上昇される水が相対的に増加した場合、言い換えれば揚砂されるろ過砂の量が減少した場合、洗浄排水の濁度の計測値は低下する。一方、エアリフト用空気によりろ過砂と共に上昇される水が相対的に減少した場合、言い換えれば揚砂されるろ過砂の量が増加した場合、洗浄排水の濁度の計測値は上昇する。従って、洗浄排水の濁度の大きさが所定値未満の場合、揚砂されるろ過砂の量が不足、つまり揚砂不良であると判定することができる。
【0065】
また、エアリフト用空気により上昇されたろ過砂は、水よりも比重が大きいため、エアリフト用空気によって共に上昇された水と分離して落下する。正常に揚砂されている場合には、落下するろ過砂の下降流によって洗浄排水が押し下げられて、洗浄排水の水位がろ過水の水位よりも低くなる。一方、揚砂不良の場合には、正常に揚砂されている場合よりも落下するろ過砂の量が減少するため、落下するろ過砂の下降流による洗浄排水への押下力が相対的に減少し、ろ過水の水位に近づくように洗浄排水の水位が上昇する。従って、洗浄排水の水位の大きさが所定値を超えた場合、揚砂されるろ過砂の量が不足、つまり揚砂不良であると判定することができる。
【0066】
<S8:異常報知工程>
ステップS6において、濁度の大きさが所定値未満の場合(S6において「YES」)や、ステップS7において、水位の大きさが所定値を超えた場合(S7において「YES」)、制御装置30は、揚砂不良であると判定し、揚砂不良であることを示す報知指令信号を、画像表示器44、音声スピーカ45及び黄色警告ランプ47のそれぞれの機器に送信する。これにより、画像表示器44は、揚砂不良である旨の内容の画像を表示する。音声スピーカ45は、揚砂不良である旨の内容の音声を発する。黄色警告ランプ47は、揚砂不良であること示す黄色に点灯する(S8)。
【0067】
<S9:異常解消工程(高圧流体噴射工程、再起動工程)>
制御装置30は、異常解消工程を実行する。すなわち、制御装置30は、各開閉弁71~74に所定の開閉信号を送信し、図2(a)~(f)に示す高圧流体噴射動作の何れか一つ、又は2以上を適宜組み合わせて実行する。または、制御装置30は、流量制御弁16を全閉状態とする弁開度信号を流量制御弁16へと送信することにより、エアリフト管11に対するエアリフト用空気の供給を止めて、エアリフトポンプ10の作動を停止させ、その後、程なくして、エアリフト用空気の流量が、揚砂を実施する上で必要な所定流量以上となるように流量制御弁16を開いた状態とする弁開度信号を流量制御弁16へと送信することにより、エアリフト管11に対してエアリフト用空気を再度供給して、エアリフトポンプ10を再起動する。
【0068】
異常解消工程では、運転状態判定工程(ステップS6,S7)において、ろ過砂の揚砂状態が不良であると判定されると、ろ過層3内に高圧流体(圧縮空気、圧力水)を噴射する高圧流体噴射工程が行われる。揚砂不良の原因がろ過砂の固着等である場合、固着等したろ過砂が高圧流体によって解砕される。このようにして、ろ過層3をほぐすことにより、ろ過砂の流動性を回復させて、揚砂不良を解消することができる。または、エアリフトポンプ10の作動を一旦停止させ、その後、再起動させる再起動工程が行われる。これにより、エアリフトポンプ10の作動停止及び再起動による衝撃をろ過層3に加えることができ、衝撃によりろ過砂の流動性を回復させてエアリフトポンプ10の作動不良を解消することができる。
【0069】
本実施形態のろ過装置1Bにおいて、制御装置30は、洗浄排水の濁度の計測値、洗浄排水の水位の計測値、及びエアリフトポンプ10の作動に伴う振動の振幅の計測値の少なくとも一つに基づいて、ろ過砂の揚砂状態やエアリフトポンプ10の作動状態を含むろ過装置1Bの運転状態を判定する。従って、ろ過装置1Bの運転状態を作業者の目視に依ることなく正確に判定することができる。そして、ろ過装置1Bの運転状態の判定結果に基づいて、ろ過装置1Bの異常が異常解消手段によって解消されるので、装置故障に至る前に正常化を図ることができる。
【0070】
また、制御装置30は、ろ過装置1Bの運転状態の判定結果に基づき、エアリフトポンプ10の作動不良や揚砂不良が生じている判断した場合(図4のフローチャートにおけるS3、S6、S7において「YES」)、エアリフトポンプ10の作動不良や揚砂不良を示す報知指令信号を画像表示器44や音声スピーカ45、赤色警告ランプ46、黄色警告ランプ47に送信する。これにより、画像表示器44等による報知によってエアリフトポンプ10の作動不良や揚砂不良を知ることができ、ろ過装置1Bの正常化を図るべく速やかに対応することができる。
【0071】
以上、本発明のろ過装置、及びろ過装置の運転方法について、複数の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0072】
上記実施形態において、状況によっては、作業者の判断により、エアリフトポンプ10の作動停止・再起動や、図2(a)~(f)に示す高圧流体噴射動作を実行しない場合もある。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のろ過装置、及びろ過装置の運転方法は、例えば、下水、上水、一般排水等の水処理の用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1A,1B ろ過装置
3 ろ過層
10 エアリフトポンプ
30 制御装置(運転状態判定手段、異常解消手段)
41 濁度計
42 水位計
43 振動計
44 画像表示器(異常報知手段)
45 音声スピーカ(異常報知手段)
46 赤色警告ランプ(異常報知手段)
47 黄色警告ランプ(異常報知手段)
50 高圧流体噴射装置(異常解消手段)
図1
図2
図3
図4