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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148899
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20231005BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20231005BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20231005BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F17/00 D
H01F27/29 123
H01F41/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057181
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晃三
(72)【発明者】
【氏名】儀武 穂
【テーマコード(参考)】
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E062DD04
5E062FF01
5E062FF03
5E070AA01
5E070BA12
5E070BB03
5E070CB02
5E070CB13
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】めっき伸びが抑制され、小型化に有利なコイル部品を提供する。
【解決手段】磁性材料を含有する素体2と、素体中に埋設されたコイルと、コイルに電気的に接続され、素体の底面に設けられた外部電極8a、8bと、素体の底面に設けられた絶縁層7と、を有する積層コイル部品であって、絶縁層は、開口部9a、9bを有し、開口部に、外部電極8a、8bが設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料を含有する素体と、
前記素体中に埋設されたコイルと、
前記コイルに電気的に接続され、前記素体の底面に設けられた外部電極と、
前記素体の底面に設けられた絶縁層と、
を有する積層コイル部品であって、
前記絶縁層は、開口部を有し、
前記開口部に、前記外部電極が設けられている、
コイル部品。
【請求項2】
前記外部電極は、底面電極と、前記底面電極上に設けられためっき層を含む、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記底面電極は、前記素体内に設けられ、前記めっき層は、前記開口部内に設けられる、請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記素体の底面側からの平面視において、前記開口部の面積は、前記底面電極の面積以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記めっき層は、前記絶縁層と面一になるように設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記めっき層は、前記絶縁層の底面から凹んでいる、請求項1~4のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記めっき層は、前記絶縁層から突出するように設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記めっき層は、Cu層、Ni-Sn層、Ni-Au層、Ni-Cu層、又はCu-Ni-Au層である、請求項1~7のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記絶縁層は、前記素体よりも絶縁抵抗が大きい樹脂材料である、請求項1~8のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記磁性材料は、金属磁性体粒子を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項11】
磁性材料を含有する素体と、前記素体中に埋設されたコイルと、前記コイルに電気的に接続され、前記素体の底面に設けられた外部電極と、前記素体の底面に設けられた絶縁層と、を有する積層コイル部品の製造方法であって、
磁性ペースト層及び導体ペースト層を含み、底面に底面電極となる導体ペースト層を積層し、焼成して、積層体ブロックを作製すること、
焼成済みの前記積層体ブロックの、前記底面電極が露出した面上に、前記底面電極の少なくとも一部の領域を露出させる開口部を有する絶縁層を形成すること、
前記開口部において、前記底面電極上にめっき層を形成すること、
前記積層体ブロックを切断すること、
を含むコイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
金属磁性粉を含む磁性体部を有する積層コイル部品が知られている。このような積層コイル部品は、磁性体部に含まれる金属磁性粉が鉄等を配合した導電性粒子であることから、めっき伸びが生じるおそれがある。そこで、表面の絶縁性を確保するために、上面及び下面に、絶縁抵抗が高い絶縁コーティングを施すことが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-254917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような積層コイル部品は、上面及び下面に絶縁コーティングが施されているため、小型化及び低背化が困難である。
【0005】
本開示の目的は、めっき伸びが抑制され、小型化及び低背化に有利なコイル部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の態様を含む。
[1] 磁性材料を含有する素体と、
前記素体中に埋設されたコイルと、
前記コイルに電気的に接続され、前記素体の底面に設けられた外部電極と、
前記素体の底面に設けられた絶縁層と、
を有する積層コイル部品であって、
前記絶縁層は、開口部を有し、
前記開口部に、前記外部電極が設けられている、
コイル部品。
[2] 前記外部電極は、底面電極と、前記底面電極上に設けられためっき層を含む、上記[1]に記載のコイル部品。
[3] 前記底面電極は、前記素体内に設けられ、前記めっき層は、前記開口部内に設けられる、上記[2]に記載のコイル部品。
[4] 前記素体の底面側からの平面視において、前記開口部の面積は、前記底面電極の面積以下である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載のコイル部品。
[5] 前記めっき層は、前記絶縁層と面一になるように設けられている、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のコイル部品。
[6] 前記めっき層は、前記絶縁層の底面から凹んでいる、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のコイル部品。
[7] 前記めっき層は、前記絶縁層から突出するように設けられている、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のコイル部品。
[8] 前記めっき層は、Cu層、Ni-Sn層、Ni-Au層、Ni-Cu層、又はCu-Ni-Au層である、上記[1]~[7]のいずれか1項に記載のコイル部品。
[9] 前記絶縁層は、前記素体よりも絶縁抵抗が大きい樹脂材料である、上記[1]~[8]のいずれか1項に記載のコイル部品。
[10] 前記磁性材料は、金属磁性体粒子を含む、上記[1]~[9]のいずれか1項に記載のコイル部品。
[11] 磁性材料を含有する素体と、前記素体中に埋設されたコイルと、前記コイルに電気的に接続され、前記素体の底面に設けられた外部電極と、前記素体の底面に設けられた絶縁層と、を有する積層コイル部品の製造方法であって、
磁性ペースト層及び導体ペースト層を含み、底面に底面電極となる導体ペースト層を積層し、焼成して、積層体ブロックを作製すること、
焼成済みの前記積層体ブロックの、前記底面電極が露出した面上に、前記底面電極の少なくとも一部の領域を露出させる開口部を有する絶縁層を形成すること、
前記開口部において、前記底面電極上にめっき層を形成すること、
前記積層体ブロックを切断すること、
を含むコイル部品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、外部電極を、絶縁層の開口部内に形成することにより、めっき伸びが抑制され、さらに、小型化及び低背化に有利なコイル部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の実施形態1の積層コイル部品1を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す積層コイル部品1の、II-IIに沿った切断面を模式的に示す断面図である。
図3図3は、図1に示す積層コイル部品1の、III-IIIに沿った切断面を模式的に示す断面図である。
図4図4は、図1に示す積層コイル部品1の、IV-IVに沿った切断面を模式的に示す断面図である。
図5図5は、図1に示す積層コイル部品1の、V-Vに沿った切断面を模式的に示す断面図である。
図6図6は、図1に示す積層コイル部品1の概略底面図である。
図7図7は、図1に示す積層コイル部品1の製造方法を説明する図である。
図8図8は、図1に示す積層コイル部品1の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示のコイル部品について、以下、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本開示のコイル部品、及び各構成要素の形状及び配置等は、図示する例に限定されない。各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態に分けて説明するが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせは可能である。後述の実施形態では、前述と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する場合がある。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態ごとには逐次言及しない場合がある。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。
【0010】
(実施形態1)
本実施形態の積層コイル部品1の斜視図を図1に、底面図を図6に示す。また、積層コイル部品1の、II-II断面図を図2に、III-III断面図を図3に、IV-IV切断面を図4に、V-V断面図を図5に模式的に示す。
【0011】
図1図6に示されるように、本実施形態の積層コイル部品1は、略直方体形状を有している。なお、図面1において、下側の面を底面、上側の面を上面、他の面を側面という。積層コイル部品1は、概略的には、素体2と、素体2に埋設されたコイル3と、外部電極8a,8bと、素体2の底面を覆う絶縁層7とを有する。絶縁層7は、開口部9a,9bを有する。開口部9a,9b内には、それぞれ、外部電極8a,8bが存在する。コイル3は、複数の内部電極層3a~3eが、ビア導体3p~3sにより接続されて形成されている。外部電極8a,8bは、素体2の内部に位置する底面電極5a,5bと、底面電極5a,5b上に設けられ、開口部9a,9b内に位置するめっき層6a,6bと、を有する。外部電極8a,8bは、それぞれ、引出部4a及び4bを介して、コイル3の両端に電気的に接続されている。
【0012】
本開示のコイル部品は、好ましくは、長さ(L)が1.0mm以上6.0mm以下であり、幅(W)が0.2mm以上2.0mm以下であり、高さ(T)が0.2mm以上2.0mm以下であり、より好ましくは長さが1.0mm以上2.0mm以下であり、幅が0.5mm以上1.2mm以下であり、高さが0.5mm以上1.2mm以下である。
【0013】
本実施形態において、素体2は、磁性材料を含む磁性体層を含む。
【0014】
上記磁性材料は、典型的には、金属磁性体粒子である。
【0015】
上記金属磁性体粒子を構成する金属磁性材料としては、磁性を有するものであれば特に限定されず、例えば、鉄、コバルト、ニッケルもしくはガドリニウム、又はこれらの1種又は2種以上を含む合金が挙げられる。好ましくは、上記金属磁性材料は、鉄又は鉄合金である。鉄は、鉄そのものであってもよく、鉄誘導体、例えば錯体であってもよい。かかる鉄誘導体としては、特に限定されないが、鉄とCOの錯体であるカルボニル鉄、好ましくはペンタカルボニル鉄が挙げられる。特に、オニオンスキン構造(粒子の中心から同心球状の層を形成している構造)のハードグレードのカルボニル鉄(例えば、BASF社製のハードグレードのカルボニル鉄)が好ましい。鉄合金としては、特に限定されないが、例えば、Fe-Si系合金、Fe-Si-Cr系合金、Fe-Si-Al系合金等が挙げられる。上記合金は、さらに、他の副成分としてB、C等を含んでいてもよい。副成分の含有量は、特に限定されないが、例えば0.1質量%以上5.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以上3.0質量%以下であり得る。上記金属磁性材料は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。鉄合金としては、特に限定されないが、例えば、Fe-Si系合金、Fe-Si-Cr系合金、Fe-Si-Al系合金等が挙げられる。
【0016】
好ましい態様において、金属磁性材料は、Fe-Si系合金又はFe-Si-Cr系合金である。金属磁性粉末としてFe-Si合金を用いる場合、Siの含有量は、好ましくは、2.0at%以上8.0at%以下である。Fe-Si-Cr合金を用いる場合、Siの含有量は、好ましくは、2.0at%以上8.0at%以下であり、Crの含有量は、好ましくは0.2at%以上6.0at%以下である。
【0017】
上記金属磁性体粒子は、Cr、Mn、Cu、Ni、P、Sなどの不純物成分が含まれていてもよい。これらの不純物成分は、意図的に添加されるものではなく、その含有量は、例えば1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下であり得る。
【0018】
上記金属磁性体粒子は、好ましくは0.5μm以上50μm以下、より好ましくは1μm以上30μm以下、さらに好ましくは2μm以上20μm以下の平均粒径を有する。上記金属磁性体粒子の平均粒径を0.5μm以上とすることにより、金属磁性体粒子の取り扱いが容易になる。また、上記金属磁性体粒子の平均粒径を、50μm以下とすることにより、金属磁性体粒子の充填率をより大きくすることが可能になり、磁性体層の磁気的特性が向上する。
【0019】
ここに、上記平均粒径とは、磁性体層の断面のSEM(走査型電子顕微鏡)画像における金属磁性体粒子の円相当径の平均を意味する。例えば、上記平均粒径は、積層コイル部品1を切断して得られた断面について、複数箇所(例えば5箇所)の領域(例えば130μm×100μm)をSEMで撮影し、このSEM画像を画像解析ソフト(例えば、旭化成エンジニアリング株式会社製、A像くん(登録商標))用いて解析して、500個以上の金属粒子について円相当径を求め、その平均を算出することにより得ることができる。
【0020】
上記金属磁性体粒子は、好ましくは、酸化被膜を有する。
【0021】
上記酸化被膜は、金属磁性体粒子を構成する金属の酸化被膜、即ち、即ち自己生成酸化膜であり得る。
【0022】
上記酸化被膜の厚みは、特に限定されないが、好ましくは1nm以上100nm以下、より好ましくは3nm以上50nm以下、さらに好ましくは5nm以上30nm以下、例えば10nm以上30nm以下又は5nm以上20nm以下であり得る。酸化被膜の厚みをより大きくすることにより、磁性体層の比抵抗が向上する。また、酸化被膜の厚みをより小さくすることにより、磁性体層中の金属磁性体粒子の量をより多くすることができ、磁性体層の磁気的特性が向上し、また、磁性体層の小型化を図ることが容易になる。
【0023】
上記金属磁性体粒子は、上記酸化被膜により結合している。
【0024】
上記金属磁性体粒子は、絶縁性被膜により絶縁コートされていてもよい。上記絶縁性被膜は、上記酸化被膜以外の膜であり得る。
【0025】
上記絶縁性被膜は、好ましくは金属酸化物を含む被膜であり、より好ましくはSiの酸化物の被膜である。
【0026】
上記絶縁性被膜を形成する方法としては、例えば、メカノケミカル法、ゾルゲル法等が挙げられる。特に、Siの酸化物の被膜を形成する場合には、ゾルゲル法が好ましい。ゾルゲル法でSiの酸化物を含む被膜を形成する場合、Siアルコキシドを含むゾルゲルコート剤と有機鎖含有シランカップリング剤とを混合し、この混合液を金属磁性体粒子の表面に付着させ、加熱処理によって脱水結合させた後、所定の温度で乾燥することで形成できる。
【0027】
上記絶縁性被膜は、金属磁性体粒子の表面の一部だけを覆っていてもよく、全面を覆っていてもよい。また、絶縁性被膜の形状は、特に限定されず、網目状であっても、層状であってもよい。好ましい態様において、上記金属磁性体粒子は、その表面の50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは100%の領域が絶縁性被膜により覆われている。金属粒子の表面を絶縁性被膜で覆うことにより、磁性体層内部の比抵抗を高くすることができる。
【0028】
上記絶縁性被膜の厚みは、特に限定されないが、好ましくは1nm以上100nm以下、より好ましくは3nm以上50nm以下、さらに好ましくは5nm以上30nm以下、例えば10nm以上30nm以下又は5nm以上20nm以下であり得る。絶縁性被膜の厚みをより大きくすることにより、磁性体層内部の比抵抗を高くすることができる。また、絶縁性被膜の厚みをより小さくすることにより、磁性体層中の金属磁性体粒子の量をより多くすることができ、磁性体層の磁気的特性が向上し、また、磁性体層の小型化を図ることが容易になる。
【0029】
素体2は、上記磁性体層に加え、非磁性体層を有していてもよい。
【0030】
非磁性体層は、好ましくは、内部電極層の間に設けられる。
【0031】
非磁性体層を設けることにより、積層コイル部品の直流重畳特性が向上し、また、内部電極間の絶縁性が向上する。
【0032】
上記非磁性体層は、好ましくは、主成分として、少なくともFe、Cu、及びZnを含む焼結非磁性材料から構成される。
【0033】
上記焼結非磁性材料において、Fe含有量は、Feに換算して、好ましくは40.0モル%以上49.5モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは45.0モル%以上49.5モル%以下であり得る。
【0034】
上記焼結非磁性材料において、Cu含有量は、CuOに換算して、好ましくは4.0モル%以上12.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは6.0モル%以上10.0モル%以下である。
【0035】
上記焼結非磁性材料において、Zn含有量は、特に限定されず、上記した他の主成分であるFe及びCuの残部とし得、ZnOに換算して、好ましくは39.5モル%以上56.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは40.5モル%以上49.0モル%以下であり得る。
【0036】
Fe、Cu、及びZnの含有量を、上記の範囲とすることにより、優れた電気特性を得ることができる。
【0037】
本開示において、上記焼結非磁性材料は、さらに添加成分を含んでいてもよい。焼結非磁性材料における添加成分としては、例えばMn、Co、Sn、Bi、Si等が挙げられるが、これに限定されるものではない。Mn、Co、Sn、Bi及びSiの含有量(添加量)は、主成分(Fe(Fe換算)、Zn(ZnO換算)、Cu(CuO換算)及びNi(NiO換算))の合計100質量部に対して、それぞれ、Mn、Co、SnO、Bi、及びSiOに換算して、0.1質量部以上1質量部以下であることが好ましい。また、上記焼結非磁性材料は、さらに製造上不可避な不純物を含んでいてもよい。
【0038】
非磁性体層の厚さは、好ましくは5μm以上180μm以下、より好ましくは10μm以上100μm以下、さらに好ましくは30μm以上100μm以下であり得る。
【0039】
コイル3は、複数の内部電極層3a~3eがビア導体3p~3sにより接続されて形成されている。
【0040】
上記内部電極層は、導電性材料を含む。当該導電性材料としては、銀、銅、又は金、あるいはこれらの合金を含む。上記内部電極層は、好ましくは、導電性材料として銀を含み、より好ましくは銀のみを含む。
【0041】
上記内部電極層の厚さは、特に限定されないが、好ましくは15μm以上150μm以下であり、より好ましくは20μm以上40μm以下である。
【0042】
引出部4a,4bは、コイル3の端と、底面電極5a,5bとを電気的に接続する。本実施形態において、引出部4aは、コイル下端の内部電極層3aと底面電極5aを接続し、引出部4bは、コイル上端の内部電極層3eと底面電極5bを接続する。引出部4bは、引出部4aよりも長い。
【0043】
引出部4a,4bは、好ましくは内部電極層と同じ導電性材料を含む。当該導電性材料としては、銀、銅、又は金、あるいはこれらの合金を含む。引出部4a,4bは、好ましくは、導電性材料として銀を含み、より好ましくは銀のみを含む。
【0044】
絶縁層7は、素体2の底面に設けられる。
【0045】
積層コイル部品1において、絶縁層7は、底面にのみ設けられる。換言すれば、絶縁層7は、素体2の上面及び側面には存在しない。なお、本開示のコイル部品は、かかる態様が好ましいが、これに限定されずない。例えば、絶縁層は、底面に加え、側面にも、又は側面及び上面にも設けられていてもよい。
【0046】
絶縁層7は、開口部9a,9bを有する。
【0047】
開口部9a,9bは、底面電極5a,5bが露出するように設けられる。開口部において、好ましくは、底面電極のみが露出し、素体2は露出しない。換言すれば、素体2の底面側からの平面視において、開口部9a,9bの面積は、底面電極5a,5bの面積以下であり、開口部9a,9bは、底面電極5a,5bの内側に位置する。開口部を、素体2が露出しないように設けることにより、めっき層を形成するめっき工程において、めっき液が素体2に触れてめっき伸びが生じることを抑制することができる。
【0048】
絶縁層7は、素体2の材料よりも絶縁抵抗が大きい樹脂材料で構成される。
【0049】
上記樹脂材料としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド等の電気絶縁性が高い樹脂材料が挙げられる。なお樹脂材料に絶縁材料からなるフィラーを含有してもよい。
【0050】
外部電極8a,8bは、積層コイル部品1の底面に設けられる。外部電極8a,8bは、底面電極5a,5bと、底面電極5a,5b上に設けられためっき層6a,6bを含む。底面電極5a,5bは、素体2内に設けられ、めっき層6a,6bは、開口部9a,9b内に設けられる
【0051】
積層コイル部品1において、底面電極5a,5bは、素体2に一の主面が露出した状態で埋設されている。なお、本開示のコイル部品は、かかる態様に限定されず、例えば、底面電極は、一部のみが素体の底面に埋設されていてもよく、また、素体の底面上に設けられていてもよい。
【0052】
積層コイル部品1において、底面電極5a,5bは、素体2の底面において、引出部4a,4bから素体2のW方向の略中央部まで延在する。なお、本開示のコイル部品は、かかる態様に限定されず、例えば、底面電極は、引出部と同じ位置に設けられていてもよい。
【0053】
底面電極5a,5bは、好ましくは内部電極層と同じ導電性材料を含む。当該導電性材料としては、銀、銅、又は金、あるいはこれらの合金を含む。底面電極5a,5bは、好ましくは、導電性材料として銀を含み、より好ましくは銀のみを含む。
【0054】
めっき層6a,6bは、開口部9a,9b内において、底面電極5a,5b上に設けられる。めっき層は、好ましくは、素体2の底面側からの平面視において、開口部全体に設けられる。
【0055】
積層コイル部品1において、めっき層6a,6bの厚さ(T方向の長さ)は、開口部9a,9bの高さ(T方向の長さ)よりも小さい。即ち、めっき層6a,6bは、絶縁層7の底面から凹んでいる。換言すれば、積層コイル部品1は、底面に、開口部の側面とめっき層により規定される凹部を有する。なお、本開示のコイル部品は、かかる態様に限定されず、例えば、めっき層は、開口部を完全に埋めていてもよい。一の態様において、めっき層は、絶縁層と面一となるように設けられていてもよい。別の態様において、めっき層は、絶縁層から突出するように設けられていてもよい。
【0056】
めっき層6a,6bは、単層であっても、多層であってもよい。
【0057】
めっき層6a,6bは、好ましくは、Cuを含むめっき層、Niを含むめっき層、Snを含むめっき層、Auめっき層を含み得る。
【0058】
一の態様において、めっき層6a,6bは、底面電極上のCuめっき層、Ni-Snめっき層、Ni-Auめっき層、Ni-Cuめっき層、又はCu-Ni-Auめっき層であり得る。
【0059】
以上、本開示の積層コイル部品を実施形態を挙げて説明したが、本開示の積層コイル部品は上記の実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。
【0060】
次に、本開示の積層コイル部品の製造方法について説明する。
【0061】
本開示の積層コイル部品は、磁性ペーストと、非磁性ペーストと、内部導体ペーストとを積層し、これを熱処理することにより得ることができる。
【0062】
詳細には、積層コイル部品1は、以下のようにして製造することができる。
【0063】
磁性ペーストとして、金属磁性体粒子を含む磁性ペーストを準備する。金属磁性体粒子を、結合剤としてセルロース、ポリビニルブチラール等を、溶剤としてターピネオール、ブチルジグリコールアセテート等の混合物と混合し、混錬することにより磁性ペーストを得る。
【0064】
非磁性ペーストとして、フェライト材料を含む非磁性ペーストを準備する。フェライト材料として、Fe、ZnO、CuOおよび必要に応じて添加成分を所定の組成になるように秤量し、ボールミルに、秤量物を、純水、分散剤、PSZメディアとともに入れ、混合および粉砕する。得られたスラリーを乾燥し、700~800℃の温度で2~3時間の条件で仮焼する。得られた非磁性フェライト材料(仮焼粉末)に、所定量の溶剤(ケトン系溶剤など)、樹脂(ポリビニルアセタールなど)、および可塑剤(アルキド系可塑剤など)を入れ、プラネタリーミキサーで混錬した後、さらに3本ロールミルで分散することで非磁性フェライトペーストを作製する。
【0065】
導体ペーストとして、導体ペースト、例えば銀ペーストを準備する。導体粉末を、所定量の溶剤、樹脂、分散剤等と混合することで導体ペーストを得る。
【0066】
次に、上記のペーストの積層体を作製する。
【0067】
金属プレートの上に熱剥離シートおよびポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを積み重ねた基板(図示していない)を準備し、その上に磁性ペーストを所定回数スクリーン印刷し、磁性ペースト層21を形成する。得られた磁性ペースト層21は、コイル部品の外層となる。(図7(a))
【0068】
次に、上記磁性ペースト層21上に、コイル導体となる導体ペースト層31を形成する。さらに、導体ペースト層31が形成されていない領域に磁性ペースト層22を形成する。(図7(b))
【0069】
次に、導体ペースト層31の上で、次に印刷するコイル導体と接続する領域、および引出導体と接続する領域以外の領域に非磁性フェライトペースト層81を形成する。次に、非磁性フェライトペースト層81以外の領域に磁性ペースト層23を形成する。(図7(c))
【0070】
次に、ビア導体(次に印刷するコイル導体と接続させる導体)となる導体ペースト層32、及び引出導体となる導体ペースト層41を形成する。(図7(d))
【0071】
次に、コイル導体となる導体ペースト層33と、引出導体となる導体ペースト層42を形成する。さらに、導体ペースト層33,42が形成されていない領域に磁性ペースト層24を形成する。(図7(e))
【0072】
次に、導体ペースト層33の上で、次に印刷するコイル導体と接続する領域以外の領域に非磁性フェライトペースト層82を形成する。また、次に印刷するコイル導体と接続する領域にビア導体となる導体ペースト層34を、また引出導体となる導体ペースト層43を形成する。さらに、これらの領域以外の領域に磁性ペースト層25を形成する。(図7(f))
【0073】
上記図7(e)及び(f)の工程を所定回数繰り返し、磁性ペースト層26、導体ペースト層35、導体ペースト層44が形成された積層体を得る。(図7(g))
【0074】
次に、引出導体となる箇所に導体ペースト層45,46を印刷し、それ以外の領域に磁性ペースト層27を印刷する(図7(h))。これを所定回数繰り返し、磁性ペースト層28、導体ペースト層47,48が形成された積層体を得る。(図7(i))
【0075】
次に、外部電極の底面電極となる領域に導体ペースト層51,52を形成し、導体ペースト層51,52が形成されていない領域に磁性ペースト層29を形成する。(図7(j))
【0076】
最後に、金属プレートから剥離し、PETフィルムを除去して積層体のブロックを作製する。
【0077】
得られた積層体ブロックを、加圧処理、例えば温間静水圧プレス(WIP)処理する。
【0078】
加圧処理した積層体ブロックを、脱脂し、焼成炉に入れ、焼成する。
【0079】
上記焼成の温度は、好ましくは600℃以上800℃以下、より好ましくは650℃以上750℃以下である。
【0080】
上記焼成の時間は、好ましくは30分以上90分以下、より好ましくは40分以上80分以下である。
【0081】
上記焼成は、好ましくは大気中で行われる。
【0082】
焼成後の積層体ブロックを樹脂に含浸し、熱硬化する。樹脂としては、好ましくはエポキシ樹脂が用いられる。
【0083】
樹脂含侵を行った積層体ブロックについて、底面電極が露出した面(下面)に感光性を有するレジスト樹脂をスクリーン印刷により全面に塗布した後に乾燥させ、絶縁層7を得る。(図8(a))
【0084】
底面電極の形状にそってパターン露光をおこなった後、現像液に浸し底面電極上の絶縁層を除去する。(図8(b))
【0085】
次に、無電解めっきをおこない、底面電極上にめっき層を形成する。(図8(c))
【0086】
次に、積層体ブロックをダイサー等で切断して個片化又はアレイ化する。
【0087】
上記のようにして、積層コイル部品1を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の積層コイル部品は、インダクタなどとして幅広く様々な用途に使用され得る。
【符号の説明】
【0089】
1…積層コイル部品;2…素体;3…コイル;3a,b,c,d,e…内部電極層;
3p,q,r,s…ビア導体;4a,b…引出部;5a,b…底面電極;
6a,b…めっき層;7…絶縁層;8a,b…外部電極;9a,b…開口部;
21…磁性ペースト層;22…磁性ペースト層;23…磁性ペースト層;
24…磁性ペースト層;25…磁性ペースト層;26…磁性ペースト層;
27…磁性ペースト層;28…磁性ペースト層;29…磁性ペースト層;
31…導体ペースト層;32…導体ペースト層;33…導体ペースト層;
34…導体ペースト層;35…導体ペースト層;41…導体ペースト層;
42…導体ペースト層;43…導体ペースト層;44…導体ペースト層;
45…導体ペースト層;46…導体ペースト層;47…導体ペースト層;
48…導体ペースト層;51…導体ペースト層;52…導体ペースト層;
81…非磁性フェライトペースト層;82…非磁性フェライトペースト層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8