(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148901
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】情報処理方法、プログラムおよび情報処理装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/12 20060101AFI20231005BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20231005BHJP
A61B 1/313 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A61B8/12
A61B1/00 526
A61B1/313 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057183
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】井口 陽
(72)【発明者】
【氏名】坂口 雄紀
【テーマコード(参考)】
4C161
4C601
【Fターム(参考)】
4C161AA22
4C161BB08
4C161MM10
4C161RR18
4C161WW16
4C601BB03
4C601BB14
4C601BB24
4C601DD14
4C601EE11
4C601FE04
4C601FF11
4C601JC06
4C601JC11
4C601JC15
4C601LL33
(57)【要約】
【課題】断層像の回転を自動的に修正する情報処理方法等を提供すること。
【解決手段】情報処理方法は、管腔器官に挿入された画像取得用カテーテルを用いて取得された第1断層像411と、前記第1断層像よりも後に取得された第2断層像412との間における、前記管腔器官の特徴点に関する第1回転量、または、前記画像取得用カテーテルと共に使用された器具に関する第2回転量が所定の第1閾値以上であるか否かを判定し、第1閾値以上であると判定した場合、前記第1回転量と前記第2回転量との差が所定の第2閾値未満であるか否かを判定し、第2閾値未満であると判定した場合、前記第2断層像412以降に取得された断層像41を、前記第1回転量を打ち消すように回転させる処理をコンピュータが実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管腔器官に挿入された画像取得用カテーテルを用いて取得された第1断層像と、前記第1断層像よりも後に取得された第2断層像との間における、前記管腔器官の特徴点に関する第1回転量、または、前記画像取得用カテーテルと共に使用された器具に関する第2回転量が所定の第1閾値以上であるか否かを判定し、
第1閾値以上であると判定した場合、前記第1回転量と前記第2回転量との差が所定の第2閾値未満であるか否かを判定し、
第2閾値未満であると判定した場合、前記第2断層像以降に取得された断層像を、前記第1回転量を打ち消すように回転させる
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項2】
前記管腔器官は血管であり、前記特徴点は、外弾性板の重心である
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記特徴点は、前記画像取得用カテーテルが挿入された内腔領域の重心である
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記特徴点は、前記画像取得用カテーテルが挿入された内腔領域の凸形状部である
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記管腔器官は血管であり、前記特徴点は、外弾性板の重心と、前記画像取得用カテーテルが挿入された内腔領域の特徴点と、前記外弾性板と前記内腔領域との間に存在する石灰化領域の特徴点との重心である
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項6】
断層像を入力した場合に前記断層像のそれぞれの領域を所定の領域に分類した分類データを出力する学習済モデルに、前記第1断層像および前記第2断層像をそれぞれ入力して、取得した第1分類データおよび第2分類データに基づいて前記第1回転量を算出する
請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記学習済モデルは、前記画像取得用カテーテルと共に使用された器具に関する器具領域を出力し、
前記第1分類データに含まれる器具領域、および、前記第2分類データに含まれる器具領域に基づいて前記第2回転量を算出する
請求項6に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記第1断層像および前記第2断層像から、それぞれパターンマッチングにより外弾性板を抽出する
請求項3に記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記管腔器官の三次元構造に基づいて判定された、前記画像取得用カテーテルを用いて取得された断層像に回転が生じやすい領域を取得し、
前記第2断層像が前記領域の中で取得された場合に、前記第2断層像が前記領域の外で取得された場合に比べて小さい値に前記第1閾値を設定する
請求項1から請求項8のいずれか一つに記載の情報処理方法。
【請求項10】
前記第2断層像における、前記画像取得用カテーテルが挿入された内腔領域の面積を算出し、
前記面積が所定の閾値未満である場合に、前記面積が所定の閾値以上である場合に比べて小さい値に前記第1閾値を設定する
請求項1から請求項9のいずれか一つに記載の情報処理方法。
【請求項11】
前記画像取得用カテーテルは、走査面を軸方向に移動させながらラジアル走査を行なう三次元走査用の画像取得用カテーテルである
請求項1から請求項10のいずれか一つに記載の情報処理方法。
【請求項12】
管腔器官に挿入された画像取得用カテーテルを用いて取得された第1断層像と、前記第1断層像よりも後に取得された第2断層像との間における、前記管腔器官に関する特徴点の第1回転量、または、前記画像取得用カテーテルと共に使用された器具に関する第2回転量が所定の第1閾値以上であるか否かを判定し、
第1閾値以上であると判定した場合、前記第1回転量と前記第2回転量との差が所定の第2閾値未満であるか否かを判定し、
第2閾値未満であると判定した場合、前記第2断層像以降に取得された断層像を、前記第1回転量を打ち消すように回転させる
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項13】
制御部を備える情報処理装置であって、
前記制御部は、
管腔器官に挿入された画像取得用カテーテルを用いて取得された第1断層像と、前記第1断層像よりも後に取得された第2断層像との間における、前記管腔器官に関する特徴点の第1回転量、または、前記画像取得用カテーテルと共に使用された器具に関する第2回転量が所定の第1閾値以上であるか否かを判定し、
第1閾値以上であると判定した場合、前記第1回転量と前記第2回転量との差が所定の第2閾値未満であるか否かを判定し、
第2閾値未満であると判定した場合、前記第2断層像以降に取得された断層像を、前記第1回転量を打ち消すように回転させる
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、プログラムおよび情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血管等の管腔器官に画像診断用カテーテルを挿入して、断層像を撮影するカテーテルシステムが使用されている(特許文献1)。特許文献1に開示された画像診断用カテーテルはシースの内部でセンサを回転させて、機械式のラジアル走査を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、管腔器官が屈曲または狭窄している部位においては、センサの回転が一時的に阻害された後に解放されることにより、断層像が瞬時に大きく回転する現象が発生する場合がある。このような大きな回転が生じた場合、断層像と、実際の臓器等との位置関係との把握が困難になる。
【0005】
一つの側面では、断層像の回転を自動的に修正する情報処理方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
情報処理方法は、管腔器官に挿入された画像取得用カテーテルを用いて取得された第1断層像と、前記第1断層像よりも後に取得された第2断層像との間における、前記管腔器官の特徴点に関する第1回転量、または、前記画像取得用カテーテルと共に使用された器具に関する第2回転量が所定の第1閾値以上であるか否かを判定し、第1閾値以上であると判定した場合、前記第1回転量と前記第2回転量との差が所定の第2閾値未満であるか否かを判定し、第2閾値未満であると判定した場合、前記第2断層像以降に取得された断層像を、前記第1回転量を打ち消すように回転させる処理をコンピュータが実行する。
【発明の効果】
【0007】
一つの側面では、断層像の回転を自動的に修正する情報処理方法等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】回転補正処理の概要を説明する説明図である。
【
図2】カテーテルシステムの構成を説明する説明図である。
【
図3】回転検出処理の概要を説明する説明図である。
【
図4】回転検出処理の概要を説明する説明図である。
【
図5】回転検出処理の概要を説明する説明図である。
【
図6】回転検出処理の概要を説明する説明図である。
【
図7】回転修正処理の概要を説明する説明図である。
【
図9】プログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図10】特徴点判定のサブルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図12】回転位置推定モデルを説明する説明図である。
【
図13】回転位置訓練データDBのレコードレイアウトを説明する説明図である。
【
図15】実施の形態2のプログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図16】狭窄位置と回転発生位置との関係を説明する説明図である。
【
図17】実施の形態3のプログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図18】閾値算出のサブルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図19】情報処理装置の構成を説明する説明図である。
【
図20】第1断層像DBのレコードレイアウトを説明する説明図である。
【
図21】第2断層像DBのレコードレイアウトを説明する説明図である。
【
図22】実施の形態4のプログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図23】実施の形態5の情報処理装置の構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態1]
図1は、回転補正処理の概要を説明する説明図である。ラジアル走査型の画像取得用カテーテル28(
図2参照)を用いて、複数の断層像41が時系列的に取得される。
図1の中央部には、取得された順番に沿って左から右に断層像41を並べた模式図を示す。各断層像41は、同一の場所における断層像41であっても、異なる場所における断層像41であってもよい。
【0010】
破線Aで囲む「回転なし」の部分について説明する。複数の断層像41から、1枚の第1断層像411と、1枚の第2断層像412とを選択して説明する。第2断層像412は、第1断層像411から1枚から5枚程度後に取得された断層像41である。
図1においては、第1断層像411の3枚後に取得された断層像41を第2断層像412に使用する場合を例に図示する。
【0011】
それぞれの断層像41において、中心部の円は画像取得用カテーテル28自体を示す。第1断層像411と第2断層像412の双方で、黒点で示すガイドワイヤ像48が3時方向に描出されている。描出されている画像の形状もほぼ同一であり、第1断層像411と第2断層像412との間で、断層像41の回転は発生していない。
【0012】
破線Bで囲む「回転あり」の部分について説明する。「回転なし」に関する説明と同様に、複数の断層像41から、1枚の第1断層像411と、1枚の第2断層像412とを選択して説明する。
【0013】
第1断層像411においては、ガイドワイヤ像48が3時方向に描出されている。第2断層像412においては、ガイドワイヤ像48が12時方向に描出されている。断層像41自体もガイドワイヤ像48と同様に反時計回りに約60度回転している。第1断層像411と第2断層像412との間で、反時計回りに約60度の回転が発生している。
【0014】
この回転は、生体の実際の構造を反映したものではなく、いわゆるアーティファクトの一種である。このようなアーティファクトが発生した場合、第2断層像412を時計回りに約60度回転させる修正を行なうことにより、アーティファクトを除去できる。
【0015】
図2は、カテーテルシステム10の構成を説明する説明図である。カテーテルシステム10は、画像処理装置210と、カテーテル制御装置27とMDU(Motor Driving Unit)289と、画像取得用カテーテル28とを備える。画像取得用カテーテル28は、MDU289およびカテーテル制御装置27を介して画像処理装置210に接続されている。
【0016】
画像処理装置210は、制御部211、主記憶装置212、補助記憶装置213、通信部214、表示部215、入力部216およびバスを備える。制御部211は、本実施の形態のプログラムを実行する演算制御装置である。制御部211には、一または複数のCPU、GPU、またはマルチコアCPU等が使用される。制御部211は、バスを介して画像処理装置210を構成するハードウェア各部と接続されている。
【0017】
主記憶装置212は、SRAM、DRAM、フラッシュメモリ等の記憶装置である。主記憶装置212には、制御部211が行なう処理の途中で必要な情報、および、制御部211で実行中のプログラムが一時的に保存される。
【0018】
補助記憶装置213は、SRAM、フラッシュメモリ、ハードディスクまたは磁気テープ等の記憶装置である。補助記憶装置213には、分類モデル62、制御部211に実行させるプログラム、およびプログラムの実行に必要な各種データが保存される。分類モデル62は、画像処理装置210に接続された外部の大容量記憶装置等に記憶されていてもよい。通信部214は、画像処理装置210とネットワークとの間の通信を行なうインターフェースである。
【0019】
表示部215は、たとえば液晶表示パネルまたは有機ELパネル等である。入力部216は、たとえばキーボードおよびマウス等である。表示部215に入力部216が積層されてタッチパネルを構成していてもよい。表示部215は、画像処理装置210に接続された表示装置であってもよい。
【0020】
画像処理装置210は、汎用のパソコン、タブレット、大型計算機、または、大型計算機上で動作する仮想マシンである。画像処理装置210は、分散処理を行なう複数のパソコン、または大型計算機等のハードウェアにより構成されても良い。画像処理装置210は、クラウドコンピューティングシステムにより構成されても良い。画像処理装置210とカテーテル制御装置27とは、一体のハードウェアを構成していてもよい。
【0021】
画像取得用カテーテル28は、シース281と、シース281の内部に挿通されたシャフト283と、シャフト283の先端に配置されたセンサ282とを有する。MDU289は、シース281の内部でシャフト283およびセンサ282を回転および進退させる。
【0022】
センサ282は、たとえば超音波の送受信を行なう超音波トランスデューサ、または、近赤外光の照射と反射光の受光とを行なうOCT(Optical Coherence Tomography)用の送受信部である。以後の説明では、画像取得用カテーテル28は循環器の内側から超音波断層像を撮影する際に用いられるIVUS(Intravascular Ultrasound)用カテーテルである場合を例にして説明する。
【0023】
カテーテル制御装置27は、センサ282の一回転ごとに1枚の断層像41を作成する。MDU289がセンサ282を引っ張りながら、または押し込みながら回転させる操作により、カテーテル制御装置27はシース281に略垂直な複数枚の断層像41を連続的に作成する。制御部211は、カテーテル制御装置27から断層像41を逐次取得する。以上により、いわゆる三次元走査が行なわれる。
【0024】
センサ282の進退操作には、画像取得用カテーテル28全体を進退させる操作と、シース281の内部でセンサ282を進退させる操作との両方を含む。進退操作は、MDU289により所定の速度で自動的に行なわれても、ユーザにより手動で行なわれても良い。
【0025】
MDU289は、センサ282を進退させずに、一定の位置で回転させてもよい。ユーザは、画像取得用カテーテル28を管腔器官に挿入しながら、または管腔器官から抜去しながら断層像41を観察できる。ユーザは画像取得用カテーテル28を静置した状態で、所望の位置の断層像41を連続的に観察してもよい。
【0026】
カテーテルシステム10は、たとえばPCI(Percutaneous Coronary Intervention:経皮的冠動脈形成術)等のIVR(Interventional Radiology:画像下治療)を行なう際に使用される。X線透視装置等の画像診断装置を用いて透視を行ないながら、種々の臓器の治療を行なうIVRにおいて、治療対象部位の近傍に配置したセンサ282を用いて取得した断層像41をリアルタイムで参照することにより、医師は適切な治療手技を正確に行なえる。
【0027】
断層像41の回転が発生する理由について説明する。管腔器官の屈曲部および狭窄部を超えて画像取得用カテーテル28が挿入された場合、シャフト283の円滑な回転が阻害されて、MDU289の回転がセンサ282に十分に伝達されなくなる場合がある。しかしながらカテーテル制御装置27は、MDU289の回転を基準にして断層像41を生成する。
【0028】
たとえばMDU289が1回転、すなわち360度回転する間に、センサ282が359度だけ回転した場合、画像取得用カテーテル28は359度分の音線データを360度分の音線データであると解釈して、断層像41を生成する。このような現象が連続して発生した場合、断層像41は1枚につき1度ずつ回転する。
【0029】
このような、断層像41の僅かな回転が連続して発生した場合であっても、断層像41を観察中のユーザが管腔器官の構造を把握する上での支障は発生しない。しかしながら、MDU289の回転と、センサ282の回転とのズレが蓄積した場合、なんらかのきっかけでシャフト283の回転阻害が解放されて、センサ282が瞬時に大きく回転する場合がある。
【0030】
このようなセンサ282の大きな回転が発生した場合であっても、カテーテル制御装置27は、MDU289の回転を基準にして断層像41を生成しつづける。したがって、断層像41が突然大きく回転してしまう。
【0031】
断層像41を観察中の医師等は、それまで頭の中で把握していたX線透視装置等の画像と、断層像41との関係を、断層像41の回転に応じて修正する必要がある。しかし、新しい断層像41の向きを把握して、X線透視装置等の画像との位置関係を構築しなおすには時間がかかるため、治療手技の進行に悪影響が生じるおそれがある。
【0032】
検査技師または看護師等のスタッフが、断層像41を手動で回転させて元の向きと合わせる作業を行なう場合がある。しかし、断層像41を読影して、正しく回転させる作業には専門知識が必要である上、時間を要する。いずれの場合であっても、回転が発生してからしばらくの間は、医師はスムーズな診断および治療手技を行なえない。
【0033】
本実施の形態のカテーテルシステム10は、制御部211が大きな回転の発生を自動的に検出して、速やかに修正することにより、スムーズな診断および治療手技を支援できる。
【0034】
前述のとおり、画像取得用カテーテル28は、走査面を軸方向に移動させながら画像を取得する三次元走査にも利用できる。しかし、三次元走査の途中で、断層像41の大きな回転が発生した場合、適切な三次元画像の構築は行なえない。本実施の形態により適切に回転させた断層像41を使用することで、三次元走査の途中で断層像41の大きな回転が発生した場合であっても、三次元画像を適切に構築可能なカテーテルシステム10を提供できる。
【0035】
図3から
図6は、回転検出処理の概要を説明する説明図である。
図3は、断層像41の回転が発生した例を示す。
図3を使用して、第1断層像411と第2断層像412の2枚の断層像41の処理を説明する。なお、断層像41の中心は、画像取得用カテーテル28の中心を示す。
【0036】
制御部211は、第1断層像411に基づいて、第1ガイドワイヤ領域581および第1外弾性板領域521をそれぞれ抽出した第1分類データ511を作成する。第1分類データ511の詳細については、後述する。
【0037】
図3においては、画像取得用カテーテル28およびガイドワイヤが挿入されている管腔器官の内部である内腔領域55を左下がりのハッチングで、外弾性板領域52を太線で、内腔領域55の内面と外弾性板領域52との間の生体組織領域56を右下がりのハッチングで、外弾性板領域52の外側の外側領域を横線のハッチングで示す。
【0038】
中央の円の内側は、画像取得用カテーテル28自体を示すカテーテル領域54である。本実施の形態においては、内腔領域55と生体組織領域56とを区別して抽出する必要はないが、説明のため内腔領域55と生体組織領域56との境界線を図示する。
【0039】
制御部211は、第1外弾性板領域521の重心である第1外弾性板重心531を算出する。重心の算出方法は公知であるため、詳細については説明を省略する。
【0040】
制御部211は、第2断層像412に基づいて、第2ガイドワイヤ領域582および第2外弾性板領域522を抽出した第2分類データ512を作成する。制御部211は、第2外弾性板領域522の重心である第2外弾性板重心532を算出する。
【0041】
以下の説明において、「第1」と「第2」とを特に区別する必要がない場合には、ガイドワイヤ領域58、外弾性板領域52、分類データ51および外弾性板重心53のように記載する場合がある。ガイドワイヤ領域58は、画像取得用カテーテル28と共に使用された器具が描出されている器具領域の例示である。器具は、たとえばバルーンカテーテルまたはブロッケンブロー針等の、画像取得用カテーテル28と略平行に配置されている任意の器具であってもよい。器具は、患者の体表に取り付けられたマーカ等であってもよい。
【0042】
制御部211は、画像取得用カテーテル28の中心を基準として、ガイドワイヤ領域58が移動した角度θG、および、外弾性板重心53が移動した角度θBを算出する。θBは、管腔器官の特徴点に関する第1回転量の例示である。θGは、画像取得用カテーテル28と共に使用された器具に関する第2回転量の例示である。
【0043】
断層像41に描出されている管腔器官の構造に変化がなく、断層像41の回転が発生していない場合、第1断層像411と第2断層像412との間の変化は少なく、θGおよびθBはほぼゼロである。このように、θBおよびθGのいずれも所定の第1閾値未満である場合、制御部211は断層像41の回転は発生していないと判定する。
【0044】
しかしながら、
図3においては断層像41の回転が発生しているため、θGとθBとは第1閾値以上である。さらに
図3においては、θGとθBとは略同一の値である。θGとθBとの差が所定の第2閾値未満である場合、制御部211は断層像41の回転が発生していると判定する。制御部211は、断層像41全体を-θB回転させて、回転の影響を除去する。
【0045】
図4は、内腔領域55内でガイドワイヤの位置が変化した例を示す。第1断層像411と第2断層像412とで、外弾性板領域52には殆ど変化がないが、ガイドワイヤ領域58は3時方向から5時方向に移動している。このような現象は、たとえば医師がガイドワイヤを押し引きした場合に発生する。
【0046】
第1断層像411と第2断層像412とを比較した場合、θGは大きいが、θBは小さい。θGが第1閾値以上であり、θGとθBとの差が所定の第2閾値以上である場合、制御部211は断層像41の回転が発生していないと判定する。
【0047】
図5は、第1断層像411と第2断層像412との間でセンサ282が長手方向に移動して、異なる断面を描出している例を示す。第1断層像411と第2断層像412との間で、外弾性板領域52および外弾性板重心53の位置は変化しているが、ガイドワイヤ領域58の位置はほとんど変化していない。
【0048】
第1断層像411と第2断層像412とを比較した場合、θGは小さいが、θBは大きい。θBが第1閾値以上であり、θGとθBとの差が第2閾値以上である場合、制御部211は断層像41の回転が発生していないと判定する。
【0049】
図6は、内腔領域55内で画像取得用カテーテル28とガイドワイヤとが断層像41における下方向に平行移動した例を示す。断層像41は画像取得用カテーテル28を基準に描出されるため、第2断層像412においては内腔領域55と外弾性板領域52とが上向きに移動した状態に描出されている。
【0050】
第1断層像411と第2断層像412とを比較した場合、θGとθBのいずれもゼロではなく、一致もしていない。θGおよびθBの一方または両方が第1閾値以上であり、θGとθBとの差が第2閾値以上である場合、制御部211は断層像41の回転が発生していないと判定する。
【0051】
図7は、回転修正処理の概要を説明する説明図である。
図7の上側は、回転修正処理を行なわない場合を模式的に示す。カテーテル制御装置27により生成された複数の断層像41により、断層像セット43が構成されている。
【0052】
左から6枚目に示す断層像41Fにおいて角度θ1の回転が検出され、左から14枚目に示す断層像41Nにおいて角度θ2の回転が検出された場合を例にして説明する。41Fを左下がりのハッチングで、断層像41Nを右下がりのハッチングでそれぞれ示す。
【0053】
図7の下側は、回転修正処理を行なった場合を模式的に示す。回転修正処理後の断層像41により、修正後断層像セット44が構成されている。制御部211は、断層像41F以降に取得された断層像41をθ1回転させる。θ1回転済の断層像41を左下がりのハッチングで示す。制御部211は断層像41N以降に取得された断層像41を(θ1+θ2)回転させる。(θ1+θ2)回転済の断層像41を右下がりのハッチングで示す。
【0054】
図7に示すように、大きな回転を検出するたびに、断層像41の回転角度を累積させることにより、断層像41同士の連続性が保たれる。
【0055】
なお、外弾性板重心53は画像取得用カテーテル28を用いて描出する管腔器官に関する特徴点の例示である。外弾性板重心53の代わりに、たとえば内腔領域55の重心を使用してもよい。そのほか管腔器官の長手方向に延在する任意の目印を特徴点に使用できる。
【0056】
同様に、ガイドワイヤ領域58は、画像取得用カテーテル28とともに使用された器具に関する特徴点の例示である。なお、断層像41においてガイドワイヤ領域58が比較的大きなサイズで描出されている場合、制御部211はガイドワイヤ領域58についても重心を算出して特徴点に使用する。制御部211は、ガイドワイヤ領域58のうち最も高輝度な画素を特徴点に使用してもよい。
【0057】
制御部211は、ユーザによる回転角度の修正指示を受け付けてもよい。たとえば制御部211は、修正後断層像セット44に基づく画像を表示部215に表示した後に、ユーザによる修正指示を受け付ける。前述のとおりユーザによる回転角度の修正は従来から行なわれているため、詳細については説明を省略する。
【0058】
図8は、分類モデル62を説明する説明図である。分類モデル62は、断層像41を受け付けて、断層像41を構成する各画素を、外弾性板領域52を含む複数の領域に分類し、画素の位置と、分類結果を示すラベルとを関連づけたデータを出力する。
【0059】
分類モデル62は、たとえば断層像41に対してセマンテックセグメンテーションを行なう学習済モデルである。分類モデル62は、断層像41と、医師等の専門家が断層像41を外弾性板領域52を含む複数の領域に塗り分けた正解データとの組を多数組記録した訓練データを使用して、機械学習により生成されたモデルである。セマンテックセグメンテーションを行なう学習済モデルの生成は従来から行なわれているため、詳細については説明を省略する。
【0060】
図8においては、XY形式の断層像41を受け付けて、XY形式の分類データ51を出力する分類モデル62を模式的に図示する。分類モデル62はRT形式の断層像41を受け付けて、RT形式の分類データ51を出力するように訓練された学習済モデルであってもよい。XY形式とRT形式との間の変換方法は公知であるため、説明を省略する。
【0061】
断層像41においてそれぞれのラベルに対応する画素を、ラベルごとに色分けすることにより、分類画像を作成できる。
図3から
図6および
図8においては、分類データ51を分類画像により模式的に示す。
【0062】
図8の分類データ51は例示である。分類モデル62は、断層像41を構成する各画素を、外弾性板領域52と、ガイドワイヤ領域58と、それ以外の領域とに分類するモデルであってもよい。分類モデル62は、断層像41を構成する各画素を、外弾性板領域52とそれ以外の領域とに分類するモデルであってもよい。分類モデル62がガイドワイヤ領域58の分類を行なわない場合、制御部211は分類モデル62を使わずにガイドワイヤ領域58を抽出する。具体例については、後述する。
【0063】
断層像41を構成する各画素を外弾性板領域52とそれ以外の領域とに分類するモデルと、断層像41を構成する各画素をガイドワイヤ領域58とそれ以外の領域とに分類するモデルとの2つの分類モデル62が使用されてもよい。分類モデル62は、断層像41を構成する各画素を、外弾性板領域52およびガイドワイヤ領域58に加えて、石灰化領域57(
図11参照)、プラーク領域、または心外膜領域等の任意の領域に分類してもよい。
【0064】
分類モデル62は、パターンマッチングを用いて外弾性板領域52とそれ以外の領域とに分類するモデルであってもよい。たとえば断層像41が超音波画像である場合、画像取得用カテーテル28を囲む低輝度の閉曲線を抽出することで、外弾性板領域52を抽出できる。同様に分類モデル62はパターンパッチングを用いてガイドワイヤ領域58とそれ以外の領域とに分類するモデルであってもよい。たとえば断層像41が超音波画像である場合、所定の寸法の高輝度領域を抽出することにより、ガイドワイヤ領域58を抽出できる。
【0065】
分類モデル62は、ルールベースの分類器であってもよい。たとえば断層像41が超音波画像である場合、各画素を輝度に基づいて各領域に分類できる。
【0066】
図9は、プログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。
図9を使用して説明するプログラムは、画像取得用カテーテル28を使用して断層像41を取得している間、リアルタイムで実行される。
【0067】
制御部211は、変数「回転角度」を初期値である0度に設定する(ステップS501)。制御部211は、カテーテル制御装置27から1枚の断層像41を取得する(ステップS502)。制御部211は、特徴点判定のサブルーチンを起動する(ステップS503)。特徴点判定のサブルーチンは、管腔器官に関する特徴点および画像取得用カテーテル28と共に使用された器具に関する特徴点を判定するサブルーチンである。特徴点判定のサブルーチンの処理の流れは後述する。
【0068】
制御部211は、断層像41の回転有無の判定を行なうか否かを判定する(ステップS504)。具体的には、第1断層像411のn枚後に取得された断層像41を第2断層像412に使用する場合、ステップS502で取得された断層像41がn枚目までである場合、および、後述するステップS509で変数「回転角度」を更新した断層像41から数えてn枚目までである場合、制御部211は回転有無の判定を行なわないと判定する。
【0069】
回転有無の判定を行なうと判定した場合(ステップS504でYES)、制御部211は管腔器官の回転角度θBを算出する(ステップS505)。具体的には、制御部211は第1断層像411における管腔器官の特徴点と、第2断層像412における管腔器官の特徴点との間の回転角度θBを算出する。
【0070】
制御部211はガイドワイヤの回転角度θGを算出する(ステップS506)。具体的には、制御部211は第1断層像411におけるガイドワイヤの特徴点と、第2断層像412におけるガイドワイヤの特徴点との間の回転角度θGを算出する。
【0071】
制御部211は、回転角度θBまたは回転角度θGが所定の第1閾値以上であるか否かを判定する(ステップS507)。第1閾値は、断層像41の回転を実質的に無視できる範囲であり、たとえば10度程度である。
【0072】
回転角度θBまたは回転角度θGの一方または両方が第1閾値以上であると判定した場合(ステップS507でYES)、制御部211は回転角度θBと回転角度θGとが同等の値であるか否かを判定する(ステップS508)。具体的には、回転角度θBと回転角度θGとの差が第2閾値未満である場合、制御部211は回転角度θBと回転角度θGとが同等であると判定する。第2閾値は、たとえば第1閾値と同じ10度である。
【0073】
制御部211は、回転角度θBと回転角度θGとの比率に基づいて、両者が同等であるか否かを判定してもよい。たとえば、θB/θGが0.9以上1.1未満の場合に、制御部211は両者が同等であると判定する。
【0074】
ユーザが、第1閾値および第2閾値を適宜設定できてもよい。使用する画像取得用カテーテル28の機種ごとに、第1閾値および第2閾値が設定されていてもよい。画像取得用カテーテル28を使用する術式ごとに、第1閾値および第2閾値が設定されていてもよい。
【0075】
同等であると判定した場合(ステップS508でYES)、制御部211はステップS505で算出したθBを加算することにより、変数「回転角度」を更新する(ステップS509)。回転有無の判定を行なわないと判定した場合(ステップS504でNO)、第1閾値未満であると判定した場合(ステップS507でNO)、回転角度が同等の値ではないと判定した場合(ステップS508でNO)、または、ステップS509の終了後、制御部211は、ステップS502で取得した断層像41を、変数「回転角度」に対応する回転を打ち消す様に回転させる(ステップS510)。
【0076】
制御部211は、断層像41を表示部215に表示する(ステップS511)。制御部211は、断層像41の取得が終了したか否かを判定する(ステップS512)。終了していないと判定した場合(ステップS512でNO)、制御部211はステップS502に戻る。終了したと判定した場合(ステップS512でYES)、制御部211は処理を終了する。
【0077】
図10は、特徴点判定のサブルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。特徴点判定のサブルーチンは、管腔器官に関する特徴点および画像取得用カテーテル28と共に使用された器具に関する特徴点を判定するサブルーチンである。
【0078】
制御部211は、
図8を使用して説明した分類モデル62に断層像41を入力して、分類データ51を取得する(ステップS521)。制御部211は、管腔器官に関する特徴点の算出に用いる判定領域を抽出する(ステップS522)。たとえば
図3から
図6を使用して説明したように、外弾性板領域52の重心を特徴点に使用する場合には、ステップS522で抽出する判定領域は外弾性板領域52である。制御部211は、判定領域の重心を算出する(ステップS523)。以上により、管腔器官の特徴点が算出される。
【0079】
制御部211は、ガイドワイヤ領域58を抽出する(ステップS524)。制御部211は、ガイドワイヤ領域58の重心を算出する(ステップS525)。以上により、画像取得用カテーテル28と共に使用された器具に関する特徴点が算出される。その後、制御部211は処理を終了する。
【0080】
本実施の形態によると、断層像41の大きな回転を自動的に修正するカテーテルシステム10を提供できる。したがって、スムーズな診断および治療手技を支援するカテーテルシステム10を提供できる。
【0081】
本実施の形態によると、手技中に断層像41が回転した場合に、手動で断層像41を回転させるスタッフを配置する必要がないカテーテルシステム10を提供できる。少ない数のスタッフで適切な診断および治療を行なえる。
【0082】
本実施の形態によると、三次元画像の構築に適した状態に断層像41の向きを修正するカテーテルシステム10を提供できる。
【0083】
断層像41は、心室または心房の内部から取得されてもよい。心室または心房の内部から取得された断層像41に関しては、略直線状に描出される心外膜領域の中央部を管腔器官に関する特徴点に使用できる。
【0084】
画像取得用カテーテル28が下肢の血管に挿入されている場合、画像取得用カテーテル28が挿入されている血管に並走する他の血管に基づいて管腔器官に関する特徴点が定められてもよい。
【0085】
本実施の形態によると、患者の拍動または体動等により発生する断層像41のわずかな回転を無視するように第1閾値を設定することにより、従来の装置に慣れた医師等に対して違和感を与えにくいカテーテルシステム10を提供できる。
【0086】
[変形例]
図11は、変形例の特徴点を説明する説明図である。変形例においては、断層像41中の複数の領域に基づいて管腔器官に関する特徴点を算出する。
【0087】
制御部211は、断層像41に基づいて、分類データ51を作成する。
図11においては、分類データ51は前述の外弾性板領域52、内腔領域55、ガイドワイヤ領域58に加えて細い右下がりのハッチングで示す石灰化領域57を含む。
【0088】
制御部211は、外弾性板領域52の重心である外弾性板重心53に加えて、内腔領域55が突出した凸形状部の頂点である内腔領域凸部558と、石灰化領域57の重心である石灰化領域重心579とを算出する。
図11においては、外弾性板重心53を黒三角形で、内腔領域凸部558を黒四角形で、石灰化領域重心579を白三角形でそれぞれ図示する。
【0089】
制御部211は、外弾性板重心53と、内腔領域凸部558と石灰化領域重心579との重心を算出する。
図11においては、3点の重心を黒星で示す。制御部211は算出した重心を管腔器官に関する特徴点に使用する。重心は、特徴点を定める定義の例示である。制御部211は、その他任意の定義に基づいて管腔器官の特徴点を算出してもよい。
【0090】
[実施の形態2]
本実施の形態は、三次元CT(Computed Tomography)またはMRI(Magnetic Resonance Imaging)等の体外式画像診断装置を使用して、画像の回転が生じやすい場所を予測し、予測に基づいて第1閾値を調整するカテーテルシステム10に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0091】
図12は、回転位置推定モデル65を説明する説明図である。回転位置推定モデル65は、体外式画像診断装置を用いて構築された三次元構造データ71を受け付けて、断層像41に大きな回転が生じやすい位置を示す回転予想位置データ72を出力するモデルである。ここで三次元構造データ71は管腔器官等の三次元構造を表わすデータである。
図12に示す回転予想位置データ72においては、ハッチングで示す部分が断層像41の回転が生じやすい部分を示す。
【0092】
一般的に、術前に三次元構造データ71の構築が行なわれて、施術の必要性の判断、および、術式の決定等に利用されている。回転位置推定モデル65を使用した回転予想位置データ72の作成は、体外式画像診断装置またはHIS(Hospital Information Systems))に接続されたサーバコンピュータ等で行なわれる。回転予想位置データ72の作成は、画像処理装置210で行なわれてもよい。
【0093】
図13は、回転位置訓練データDB33のレコードレイアウトを説明する説明図である。回転位置訓練データDB33は、機械学習による回転位置推定モデル65の生成に使用されるデータである。
【0094】
回転位置訓練データDB33には、三次元構造データ71に、断層像41の回転が生じた断層像41の位置を記録したデータが複数記録されている。回転位置推定モデル65は、三次元構造データ71を入力した場合に、管腔器官の各位置において断層像41の回転が生じる確率を出力するように、回転位置訓練データDB33を使用して訓練されている。
【0095】
なお、機械学習により生成された回転位置推定モデル65を使用する代わりに、患者ごとに作成された三次元構造データ71を使用したシミュレーションにより、断層像41の回転が生じやすい位置が算出されて、回転予想位置データ72が作成されてもよい。
【0096】
図14は、参照画像74を説明する説明図である。IVRの施術中は、原則として血管撮影装置(Angiography system)を用いて施術位置が撮影される。以下の説明では血管撮影装置により撮影された画像を、アンギオ画像と記載する。参照画像74は、アンギオ画像をシミュレートした画像である。参照画像74は、血管撮影装置の撮影方向に合わせて、三次元の回転予想位置データ72を平面に投影することで作成される。
【0097】
図14に示す参照画像74においても、ハッチングで示す部分が断層像41の回転が生じやすい部分を示す。参照画像74も、体外式診断装置またはHISに接続されたサーバコンピュータで生成される。参照画像74の生成は、画像処理装置210で行なわれてもよい。参照画像74は、術前に生成されて、補助記憶装置213または外部の大容量記憶装置に記憶されている。
【0098】
図15は、実施の形態2のプログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。制御部211は、参照画像74を取得する(ステップS531)。制御部211は、変数「回転角度」を初期値である0度に設定する(ステップS501)。
【0099】
制御部211は、カテーテル制御装置27から1枚の断層像41を取得する(ステップS502)。以後の処理は、
図9を使用して説明した実施の形態1のプログラムの処理の流れと同一であるため、説明を省略する。
【0100】
ステップS502からステップS512までの処理と並行して、制御部211はリアルタイムのアンギオ画像を取得する(ステップS541)。
【0101】
制御部211は、アンギオ画像中のセンサ282の位置を判定する(ステップS542)。判定はたとえばパターンマッチングにより行なわれる。制御部211は、参照画像74におけるセンサ282の位置に基づいて、第1閾値を算出する(ステップS543)。その後、制御部211はステップS541に戻る。
【0102】
具体的には、
図14においてハッチングで示した、断層像41の回転が生じやすい位置にセンサ282が存在する場合には、制御部211は第1閾値を実施の形態1よりも小さい値に変更する。それ以外の位置にセンサ282が存在する場合には、制御部211は第1閾値を実施の形態1の値に戻す。制御部211は、回転の生じやすさの大小に基づいて、第1閾値を連続的に変化させてもよい。
【0103】
ステップS507において、制御部211はステップS543で算出された最新の第1閾値を判定に使用する。なお、ステップS541からステップS543の処理は、たとえば血管撮影装置またはHISに接続されたサーバコンピュータで実行されてもよい。
【0104】
本実施の形態によると、術前に作成された三次元画像に基づいて判定された、断層像41の回転が生じやすい場所においては、第1閾値を小さい値に設定することにより、回転が生じた場合に速やかに修正するカテーテルシステム10を提供できる。
【0105】
[実施の形態3]
本実施の形態は、内腔領域55の大きさに基づいて断層像41の回転の生じやすさを判定するカテーテルシステム10に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0106】
図16は、狭窄位置と回転発生位置との関係を説明する説明図である。
図16の縦軸は、画像取得用カテーテル28の長手方向に沿った断層像41の位置である。
図16の縦軸はそれぞれの断層像41における平均内腔径である。ここで平均内腔径は、内腔領域55と同じ面積を有する円の直径を示す。
【0107】
破線で示す領域Cは、平均内腔径が他の領域より小さくなっている、狭窄領域を示す。実線で示す領域Dは、断層像41に回転が生じやすい領域を示す。種々の実験またはシミュレーションを行なうことにより、
図16に例示するように平均内腔径と、断層像41の回転の生じやすさとの関係を求めることができる。
【0108】
図17は、実施の形態3のプログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。ステップS501からステップS506までの処理の流れは、
図9を使用して説明した実施の形態1のプログラムの処理の流れと同一であるため、説明を省略する。
【0109】
制御部211は、閾値算出のサブルーチンを起動する(ステップS551)。閾値算出のサブルーチンは、処理中の断層像41に関する第1閾値を算出するサブルーチンである。閾値算出のサブルーチンの処理の流れは後述する。
【0110】
制御部211は、回転角度θBまたは回転角度θGが第1閾値以上であるか否かを判定する(ステップS507)。以後の処理は、
図9を使用して説明した実施の形態1のプログラムの処理の流れと同一であるため、説明を省略する。
【0111】
図18は、閾値算出のサブルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。閾値算出のサブルーチンは、処理中の断層像41に関する第1閾値を算出するサブルーチンである。
【0112】
制御部211は、分類データ51に基づいて内腔領域55の面積を算出する(ステップS561)。なお、断層像41に基づいて抽出された、内腔領域55を含む分類データ51が主記憶装置212または補助記憶装置213に記録されていない場合、制御部211は内腔領域55を抽出可能な分類モデル62に断層像41を入力して、分類データ51を取得する。
【0113】
制御部211は、(1)式に基づいて平均内腔径を算出する(ステップS562)。
【0114】
【0115】
制御部211は、
図16を使用して説明した平均内腔径と断層像41の回転が発生しやすい領域との関係に基づいて、第1閾値を決定する(ステップS563)。
【0116】
具体的には処理中の断層像41が、
図16において領域Dで示す、断層像41の回転が生じやすい領域に含まれる場合には、制御部211は第1閾値を実施の形態1よりも小さい値に変更する。それ以外の断層像41が処理中である場合には、制御部211は第1閾値を実施の形態1の値に戻す。
【0117】
さらに具体的には、制御部211はステップS561で算出した内腔領域55の面積、または、ステップS562で算出した平均内腔径が所定の閾値未満である場合に、第1閾値を小さい値に変更し、所定の閾値以上である場合に実施の形態1の値に戻す。制御部211は、回転の生じやすさの大小に基づいて、第1閾値を連続的に変化させてもよい。
【0118】
本実施の形態によると、体外式画像診断装置により取得されたデータを使用することなく、回転が生じた場合に速やかに修正するカテーテルシステム10を提供できる。
【0119】
[実施の形態4]
本実施の形態は、三次元走査用の画像取得用カテーテル28を使用して記録された断層像セット43を処理して、修正後断層像セット44を作成する情報処理装置200に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0120】
図19は、情報処理装置200の構成を説明する説明図である。情報処理装置200は、制御部201、主記憶装置202、補助記憶装置203、通信部204、表示部205、入力部206およびバスを備える。制御部201は、本実施の形態のプログラムを実行する演算制御装置である。制御部201には、一または複数のCPU、GPU、またはマルチコアCPU等が使用される。制御部201は、バスを介して情報処理装置200を構成するハードウェア各部と接続されている。
【0121】
主記憶装置202は、SRAM、DRAM、フラッシュメモリ等の記憶装置である。主記憶装置202には、制御部201が行なう処理の途中で必要な情報、および、制御部201で実行中のプログラムが一時的に保存される。
【0122】
補助記憶装置203は、SRAM、フラッシュメモリ、ハードディスクまたは磁気テープ等の記憶装置である。補助記憶装置203には、分類モデル62、第1断層像DB31、第2断層像DB32、制御部201に実行させるプログラム、およびプログラムの実行に必要な各種データが保存される。通信部204は、情報処理装置200とネットワークとの間の通信を行なうインターフェースである。分類モデル62、第1断層像DB31および第2断層像DB32は、情報処理装置200に接続された外部の大容量記憶装置等に記憶されていてもよい。
【0123】
表示部205は、たとえば液晶表示パネルまたは有機ELパネル等である。入力部206は、たとえばキーボードおよびマウス等である。表示部205に入力部206が積層されてタッチパネルを構成していてもよい。表示部205は、情報処理装置200に接続された表示装置であってもよい。
【0124】
情報処理装置200は、汎用のパソコン、タブレット、大型計算機、または、大型計算機上で動作する仮想マシンである。情報処理装置200は、分散処理を行なう複数のパソコン、または大型計算機等のハードウェアにより構成されても良い。情報処理装置200は、クラウドコンピューティングシステムにより構成されても良い。
【0125】
図20は、第1断層像DB31のレコードレイアウトを説明する説明図である。第1断層像DB31は、3D走査IDフィールド、断層番号フィールドおよび断層像フィールドを有する。
【0126】
3D走査IDフィールドには、一回の三次元走査で得られた断層像セット43ごとに付与される3D走査IDが記録されている。断層番号フィールドには、断層像セット43における断層像41の順番を示す番号が記録されている。断層像フィールドには、カテーテル制御装置27から取得された断層像41が記録されている。第1断層像DB31は、1枚の断層像41について、1つのレコードを有する。第1断層像DB31には、事前に行なわれた三次元走査によって得られた断層像セット43が記録されている。
【0127】
図21は、第2断層像DB32のレコードレイアウトを説明する説明図である。第2断層像DB32は、第1断層像DB31に基づいて本実施の形態の情報処理装置200が生成するデータベースである。第2断層像DB32は、3D走査IDフィールド、断層番号フィールド、修正前断層像フィールド、回転角度フィールドおよび修正後断層像フィールドを有する。
【0128】
3D走査IDフィールドには、3D走査IDが記録されている。断層番号フィールドには、断層像セット43における断層像41の順番を示す番号が記録されている。修正前断層像フィールドには、回転を修正する前の断層像41が記録されている。回転角度フィールドには、断層像41の回転角度が記録されている。修正後断層像フィールドには、角度を修正した断層像41が記録されている。第2断層像DB32は1枚の断層像41について1つのレコードを有する。
【0129】
図22は、実施の形態4のプログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。制御部201は、変数「回転角度」を初期値である0度に設定する(ステップS601)。制御部201は、第1断層像DB31から断層番号の小さい順に一つのレコードを抽出して、断層像フィールドから断層像41を取得する(ステップS602)。第1断層像DB31から取得される断層像41は、回転の修正を行なう前の断層像41である。
【0130】
制御部201は、特徴点判定のサブルーチンを起動する(ステップS603)。特徴点判定のサブルーチンは、管腔器官に関する特徴点および画像取得用カテーテル28と共に使用された器具に関する特徴点を判定するサブルーチンである。特徴点判定のサブルーチンの処理の流れは、
図10を使用して説明したサブルーチンの処理の流れと同様である。
【0131】
制御部201は、ステップS602で取得した断層像41の回転有無の判定を行なうか否かを判定する(ステップS604)。回転有無の判定を行なうと判定した場合(ステップS604でYES)、制御部201は管腔器官の回転角度θBを算出する(ステップS605)。制御部201はガイドワイヤの回転角度θGを算出する(ステップS606)。
【0132】
制御部201は、回転角度θBまたは回転角度θGが所定の第1閾値以上であるか否かを判定する(ステップS607)。回転角度θBまたは回転角度θGの一方または両方が第1閾値以上であると判定した場合(ステップS607でYES)、制御部201は回転角度θBと回転角度θGとが同等の値であるか否かを判定する(ステップS608)。
【0133】
同等であると判定した場合(ステップS608でYES)、制御部201はステップS605で算出したθBを加算することにより、変数「回転角度」を更新する(ステップS609)。回転有無の判定を行なわないと判定した場合(ステップS604でNO)、第1閾値未満であると判定した場合(ステップS607でNO)、回転角度が同等の値ではないと判定した場合(ステップS608でNO)、または、ステップS609の終了後、制御部201は、ステップS502で取得した断層像41を、変数「回転角度」に対応する回転を打ち消す様に回転させて、修正後断層像を生成する(ステップS610)。
【0134】
制御部201は、第2断層像DB32に新規レコードを作成し、断層番号フィールドに断層番号を、修正前断層像フィールドにステップS602で取得した断層像41を、回転角度フィールドに変数「回転角度」を、修正後断層像フィールドにステップS610で生成した修正後断層像をそれぞれ記録する(ステップS611)。制御部201は、一つの断層像セット43に含まれる断層像41の処理が終了したか否かを判定する(ステップS612)。
【0135】
終了していないと判定した場合(ステップS612でNO)、制御部201はステップS602に戻る。終了したと判定した場合(ステップS612でYES)、制御部201は処理を終了する。
【0136】
本実施の形態によると、三次元走査により記録された断層像セット43を修正して、適切な三次元構築を行なえるデータを生成する情報処理装置200を提供できる。
【0137】
図2を使用して説明した制御部211により、断層像41の取得と並行してリアルタイムで第2断層像DB32の生成が行なわれてもよい。リアルタイムで第2断層像DB32が生成される場合、第1断層像DB31の記録は行なわず、ステップS602において制御部211が断層像41をカテーテル制御装置27から直接取得してもよい。
【0138】
[実施の形態5]
図23は、実施の形態5の情報処理装置200の構成を説明する説明図である。本実施の形態は、汎用のコンピュータ90と、プログラム97とを組み合わせて動作させることにより、本実施の形態の情報処理装置200を実現する形態に関する。実施の形態3と共通する部分については、説明を省略する。
【0139】
コンピュータ90は、前述の制御部201、主記憶装置202、補助記憶装置203、通信部204、表示部205、入力部206およびバスに加えて読取部209を備える。
【0140】
プログラム97は、可搬型記録媒体96に記録されている。制御部201は、読取部209を介してプログラム97を読み込み、補助記憶装置203に保存する。また制御部201は、コンピュータ90内に実装されたフラッシュメモリ等の半導体メモリ98に記憶されたプログラム97を読出してもよい。さらに、制御部201は、通信部204および図示しないネットワークを介して接続される図示しない他のサーバコンピュータからプログラム97をダウンロードして補助記憶装置203に保存してもよい。
【0141】
プログラム97は、コンピュータ90の制御プログラムとしてインストールされ、主記憶装置202にロードして実行される。以上により、実施の形態3で説明した情報処理装置200が実現される。本実施の形態のプログラム97は、プログラム製品の例示である。
【0142】
各実施例で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組合せ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0143】
10 カテーテルシステム
200 情報処理装置
201 制御部
202 主記憶装置
203 補助記憶装置
204 通信部
205 表示部
206 入力部
209 読取部
210 画像処理装置
211 制御部
212 主記憶装置
213 補助記憶装置
214 通信部
215 表示部
216 入力部
27 カテーテル制御装置
28 画像取得用カテーテル
281 シース
282 センサ
283 シャフト
289 MDU
31 第1断層像DB
32 第2断層像DB
33 回転位置訓練データDB
41 断層像
411 第1断層像
412 第2断層像
43 断層像セット
44 修正後断層像セット
48 ガイドワイヤ像
51 分類データ
511 第1分類データ
512 第2分類データ
52 外弾性板領域
521 第1外弾性板領域
522 第2外弾性板領域
53 外弾性板重心
531 第1外弾性板重心
532 第2外弾性板重心
54 カテーテル領域
55 内腔領域
558 内腔領域凸部
56 生体組織領域
57 石灰化領域
579 石灰化領域重心
58 ガイドワイヤ領域
581 第1ガイドワイヤ領域
582 第2ガイドワイヤ領域
62 分類モデル
65 回転位置推定モデル
71 三次元構造データ
72 回転予想位置データ
74 参照画像
90 コンピュータ
96 可搬型記録媒体
97 プログラム
98 半導体メモリ