(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148902
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】コンピュータプログラム、情報処理装置、及び情報処理方法、並びにモデルの生成方法
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20231005BHJP
G16H 50/20 20180101ALI20231005BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20231005BHJP
A61B 5/0537 20210101ALI20231005BHJP
【FI】
A61B10/00 K
G16H50/20
A61B5/00 M
A61B5/0537 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057184
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】吉本 翔成
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦哉
【テーマコード(参考)】
4C117
4C127
5L099
【Fターム(参考)】
4C117XA05
4C117XA07
4C117XB09
4C117XD02
4C117XD21
4C117XE20
4C117XJ34
4C117XJ48
4C117XP03
4C117XQ03
4C127AA06
4C127KK03
5L099AA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】疾病の程度情報を出力可能なコンピュータプログラム、情報処理装置、情報処理方法およびモデルの生成方法を提供する。
【解決手段】コンピュータである判定装置1及びユーザ端末2がネットワークNを介して通信を行う予測システム100であって、コンピュータプログラムは、対象者の頭髪情報及び筋肉量を取得し、頭髪情報及び筋肉量を入力した場合に、心臓病の程度に関する程度情報を出力するよう学習された推定モデルに、取得した頭髪情報及び筋肉量を入力して心臓病の程度に関する程度情報を出力する処理をコンピュータに実行させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の頭髪情報及び筋肉量を取得し、
頭髪情報及び筋肉量を入力した場合に、心臓病の程度に関する程度情報を出力するよう学習された推定モデルに、取得した頭髪情報及び筋肉量を入力して心臓病の程度に関する程度情報を出力する
処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項2】
前記対象者の頭部を複数方向から撮影した画像を取得し、
頭部の画像を入力した場合に、脱毛症に関する分類を出力するよう学習された分類モデルに、取得した画像を入力して脱毛症の分類を出力し、
出力された分類を前記頭髪情報として前記推定モデルに入力する
請求項1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項3】
前記推定モデルは前記分類、前記筋肉量及び前記対象者の血圧を入力した場合に、心臓病の程度に関する第1程度情報及び糖尿病の程度に関する第2程度情報を出力するよう学習されており、
対象者の前記分類、前記筋肉量及び前記血圧を取得し、
前記推定モデルに、取得した分類、筋肉量及び血圧を入力して第1程度情報及び第2程度情報を出力する
請求項2に記載のコンピュータプログラム。
【請求項4】
前記推定モデルは、前記分類モデルによる前記分類と確率、及び、前記第1程度情報又は前記第2程度情報を出力し、
前記第1程度情報は、心臓病のリスクと確率であり、前記第2程度情報は、糖尿病のリスクと確率である、
請求項3に記載のコンピュータプログラム。
【請求項5】
前記心臓病のリスクに応じて心臓病に関する情報を出力し、前記糖尿病のリスクに応じて糖尿病に関する情報を出力する
請求項4に記載のコンピュータプログラム。
【請求項6】
前記推定モデルへ入力する血圧は、拡張期血圧及び収縮期血圧である
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項7】
前記心臓病のリスクに応じて登録されている医師の情報を出力する
請求項4から請求項6のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項8】
前記対象者の前記画像に基づき、前記対象者の頭部の3次元モデルを生成して出力する
請求項2から請求項7のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
前記推定モデルへ入力する前記頭髪情報は、診断結果に基づくAGAの分類を含む
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項10】
前記推定モデルへ入力する前記頭髪情報は、前記対象者の頭皮の毛細血管に関する情報を含む
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
前記推定モデルへ入力する前記頭髪情報は、前記対象者の頭皮の静脈血管に関する情報を含む
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項12】
前記推定モデルへ入力する前記頭髪情報は、前記対象者の頭皮の毛細血管または静脈血管画像に基づき推定した頭皮年齢に関する情報を含む
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項13】
対象者の頭髪情報及び筋肉量を取得する取得部と、
頭髪情報及び筋肉量を入力した場合に、心臓病の程度に関する程度情報を出力するよう学習された推定モデルに、取得した頭髪情報及び筋肉量を入力して心臓病の程度に関する程度情報を出力する出力部と
を備える情報処理装置。
【請求項14】
コンピュータが、
対象者の頭髪情報及び筋肉量を取得し、
頭髪情報及び筋肉量を入力した場合に、心臓病の程度に関する程度情報を出力するよう学習された推定モデルに、取得した頭髪情報及び筋肉量を入力して心臓病の程度に関する程度情報を出力する
処理を実行する情報処理方法。
【請求項15】
対象者の頭髪情報及び筋肉量と、心臓病の程度に関する程度情報とを含む訓練データを取得し、
取得した訓練データに基づき、頭髪情報及び筋肉量を入力した場合に、心臓病の程度に関する程度情報を出力する推定モデルを生成する
モデルの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾病の程度情報を出力するコンピュータプログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
医療と科学技術とを融合したMedtechが注目されている。Medtechは、「Medical(医療)」と「Technology(テクノロジー)」を組み合わせた造語である。Medtechは、IoTなどのIT技術を医療に活用し、情報技術を利用した医療やサービスを提供することをいう。
【0003】
特許文献1には、患者の症状等から最適な処方を、専門家を介することなく自動的に探索することを課題とする処方探索システムが開示されている。当該処方箋探索システムは、実際の症状が入力される入力ステップと、データベースに記憶されている各症状と、その処方との3段階以上の第1連関度を参照し、入力ステップにおいて入力された症状に基づき、1以上の処方を探索する探索ステップとを有し、データベースは、各症状と、その処方との関係を新たに取得した場合には、これを第1連関度に反映させることで更新することを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、患者は、自覚症状が出にくい疾患等を見逃さず、疾患の早期発見や早期治療を行うため、医療機関にて検査を受け、疾患の有無の診断を受けることがある。このような場合、医療機関での検査は、精密な検査が多いため、時間を要する。加えて、検査は、血液採取等の侵襲的なものが多く、身体的にも負担も掛かる。例えば、心臓病の一種である虚血性心疾患の診断では、心電図検査、超音波画像診断、血液検査、冠動脈カテーテル造影検査等があるが、いずれの診断も時間がかかるとともに、診断が難しく、低侵襲ではないものが多い。また、生活習慣病の一種である糖尿病の診断でも、血液採取等が一般的であり、患者に低侵襲な手法ではない。そのため、疾患の有無の診断方法として、医療機関での精密な検査を受ける前の段階などで、低侵襲、簡便、短時間に疾患がある否かの推定ができる簡単なスクリーニング手法が求められている。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものである。その目的は、低侵襲、簡便、短時間に疾患がある否かのスクリーニングの実現につながる、疾病の程度情報を出力可能なコンピュータプログラム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るコンピュータプログラムは、対象者の頭髪情報及び筋肉量を取得し、頭髪情報及び筋肉量を入力した場合に、心臓病の程度に関する程度情報を出力するよう学習された推定モデルに、取得した頭髪情報及び筋肉量を入力して心臓病の程度に関する程度情報を出力する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様にあっては、疾病の程度情報を出力可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】判定装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図3】ユーザ端末のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図11】生成処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図12】判定処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図14】第2訓練DBの他の例を示す説明図である。
【
図15】第2モデルの他の構成に関する説明図である。
【
図16】判定結果画面の他の例を示す説明図である。
【
図17】第2訓練DBの他の例を示す説明図である。
【
図20】頭皮年齢表示画面の例を示す説明図である。
【
図21】心臓病ポータル画面の例を示す説明図である。
【
図22】糖尿病ポータル画面の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態1)
以下実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は予測システムの構成例を示す説明図である。予測システム100は判定装置1(情報処理装置)及びユーザ端末2を含む。
図1にはユーザ端末2が2台記載されているが、それに限らず、1台でもよいし、3台以上でもよい。判定装置1とユーザ端末2とは、ネットワークNにより、互いに通信可能に接続されている。
【0011】
判定装置1はサービス提供者が運営するコンピュータである。判定装置1はサーバコンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)等で構成する。また、判定装置1を複数のコンピュータからなるマルチコンピュータ、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシン又は量子コンピュータで構成してもよい。さらに、判定装置1の機能をクラウドサービスで実現してもよい。ユーザ端末2はサービスを享受するエンドユーザ(以下、「ユーザ」と記す。)が使用する端末である。ユーザ端末2は、タブレットコンピュータ、スマートフォン、ノートパソコン等で構成する。
【0012】
予測システム100には、体組成計4、血圧計3等を含んでもよい。体組成計4はユーザの体重、筋肉量を測定する。体組成計4はユーザの身長を計測可能であってもよい。血圧計3はユーザの血圧を測定するために使用される。体組成計4、血圧計3はBluetooth(登録商標)規格等の近距離無線通信規格に従った通信により、計測した値を、ユーザ端末2等へ送信する機能を有していることが望ましい。
【0013】
(ハードウェア構成)
図2は判定装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。判定装置1は制御部11、主記憶部12、補助記憶部13、通信部15及び読み取り部16を含む。各部はバスBにより接続されている。
【0014】
制御部11は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置を有する。制御部11は、補助記憶部13に記憶された制御プログラム1P(プログラム、プログラム製品)を読み出して実行することにより、判定装置1に係る種々の情報処理、制御処理等を行い、取得部、出力部等の機能部を実現する。
【0015】
主記憶部12は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等である。主記憶部12は主として制御部11が演算処理を実行するために必要なデータを一時的に記憶する。
【0016】
補助記憶部13はハードディスク又はSSD(Solid State Drive)等であり、制御部11が処理を実行するために必要な制御プログラム1Pや各種DB(Database)を記憶する。補助記憶部13は、ユーザDB131、属性DB132、医師DB133、第1訓練DB134及び第2訓練DB135を記憶する。また、補助記憶部13は第1モデル141及び第2モデル142を記憶する。補助記憶部13は判定装置1に別体で外部接続された外部記憶装置であってもよい。補助記憶部13に記憶する各種DB等を、判定装置1とは異なるデータベースサーバやクラウドストレージに記憶してもよい。
【0017】
通信部15はネットワークNを介して、ユーザ端末2と通信を行う。また、制御部11が通信部15を用い、ネットワークN等を介して他のコンピュータから制御プログラム1Pをダウンロードし、補助記憶部13に記憶してもよい。
【0018】
読み取り部16はCD(Compact Disc)-ROM及びDVD(Digital Versatile Disc)-ROMを含む可搬型記憶媒体1aを読み取る。制御部11が読み取り部16を介して、制御プログラム1Pを可搬型記憶媒体1aより読み取り、補助記憶部13に記憶してもよい。また、半導体メモリ1bから、制御部11が制御プログラム1Pを読み込んでもよい。
【0019】
図3はユーザ端末のハードウェア構成例を示すブロック図である。ユーザ端末2は制御部21、主記憶部22、補助記憶部23、通信部24、表示パネル25及び操作部26を含む。各部はバスBで接続されている。
【0020】
制御部21は、一又は複数のCPU、MPU、GPU等の演算処理装置を有する。制御部21は、補助記憶部23に記憶された制御プログラム2P(プログラム、プログラム製品)を読み出して実行することにより、種々の機能を提供する。
【0021】
主記憶部22は、SRAM、DRAM、フラッシュメモリ等である。主記憶部22は主として制御部21が演算処理を実行するために必要なデータを一時的に記憶する。
【0022】
補助記憶部23はハードディスク又はSSD等であり、制御部21が処理を実行するために必要な各種データを記憶する。補助記憶部23はユーザ端末2と別体で、外部接続された外部記憶装置であってもよい。補助記憶部23に記憶する各種DB等を、データベースサーバやクラウドストレージに記憶してもよい。
【0023】
通信部24はネットワークNを介して、判定装置1と通信を行う。また、制御部21が通信部24を用い、ネットワークN等を介して他のコンピュータから制御プログラム2Pをダウンロードし、補助記憶部23に記憶してもよい。また、通信部24は近距離無線通信も可能であり、血圧計3や体組成計4から血圧や体重等の測定値を受信することが可能である。
【0024】
表示パネル25は、液晶パネル又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成することができる。操作部26は、例えば、表示パネル25に組み込まれたタッチパネルで構成することができ、ユーザが表示パネル25上で行う所定の操作を行うことができる。また、操作部26は、表示パネル25に表示したソフトウェアキ-ボード上の操作を行うことができる。なお、操作部26は、ハードウェアキーボード、マウスなどでもよい。
【0025】
(データベース)
図4はユーザDBの例を示す説明図である。ユーザDB131はユーザに関する基本的なデータを記憶する。ユーザDB131はユーザID列、氏名列、生年月日列、性別列、住所列及び携帯番号列を含む。ユーザID列はユーザを一意に特定可能なユーザIDを記憶する。ユーザIDは判定装置1等が付与した値でもよいし、ユーザが使用する電子メールアドレス等、他のシステムから付与された値でもよい。氏名列はユーザの氏名を記憶する。生年月日列はユーザの生年月日を記憶する。性別列はユーザの性別を記憶する。住所列はユーザの現住所を記憶する。携帯番号列はユーザの携帯電話番号を記憶する。なおユーザDB131は判定装置1が必ずしも備えていなくともよい。判定装置1はネットワークNを介して、他のコンピュータからユーザに関する情報を取得してもよい。
【0026】
図5は属性DBの例を示す説明図である。属性DB132はユーザに関する属性を記憶する。属性DB132はユーザID列、BMI列、ストレス列、喫煙列、歯周病列、HDL列、LDL列、中性脂肪列、皮膚かゆみ列、及び心臓病歴列を含む。ユーザID列はユーザIDを記憶する。BMI列はユーザのBMI(Body Mass Index、ボディマス指数、肥満指数)の値を記憶する。ストレス列はユーザのストレスの程度を記憶する。例えば、ストレスの程度は大、中、小の3段階に分けて、いずれかの値を、ストレス列は記憶する。ストレスの程度を点数化し、数値をストレス列が記憶してもよい。ストレスの程度は、複数の質問からなる診断テストへのユーザ回答に基づき決定するのが望ましい。喫煙列はユーザの喫煙習慣を記憶する。ユーザに喫煙習慣がある場合、一日あたり平均喫煙本数の値を、喫煙列は記憶していることが望ましい。歯周病列はユーザが歯周病を罹患しているか否かを記憶する。ユーザが罹患している場合、疾患の程度、例えば、軽度、中度又は重度を歯周病列は記憶していることが望ましい。HDL列はユーザのHDL(High Density Lipoprotein:高比重リポタンパク)コレステロールの検査値を記憶する。単位はmg/dLである。LDL列はユーザのLDL(Low Density Lipoprotein:低比重リポタンパク質)コレステロールの検査値を記憶する。単位はmg/dLである。中性脂肪列はユーザの中性脂肪の値を記憶する。単位はmg/dLである。皮膚かゆみ列は、皮膚のかゆみがあるか否かを記憶する。例えば、皮膚かゆみ列は、患者の問診票に皮膚のかゆみに関する質問を設け、その回答を入力する。心臓病歴列は有無列と疾患名列とを含む。有無列は心臓病疾患の有無を記憶する。疾患が完治・寛解していても有とする。心臓疾患がある場合、疾患名列は疾患名を記憶する。心臓疾患とは、狭心症、心筋梗塞、大動脈瘤、大動脈解離、弁膜症、心筋症、心房中隔欠損症、心臓腫瘍、心不全、不整脈などである。ユーザDB131に記憶する項目と、属性DB132に記憶する項目との区別は、
図4及び
図5に示したものに限らない。ユーザDB131に記憶する項目を属性DB132に記憶する項目に変更してもよいし、属性DB132に記憶する項目をユーザDB131に記憶する項目に変更してもよい。なお属性DB132は判定装置1が必ずしも備えていなくともよい。判定装置1はネットワークNを介して、他のコンピュータからユーザの属性を取得してもよい。
【0027】
図6は医師DBの例を示す説明図である。医師DB133は医師に関するデータを記憶する。医師DB133は氏名列、病院列、症例数列、専攻列、住所列、電話番号列及び診療時間列を含む。氏名列は医師の氏名を記憶する。病院列は医師が勤務している病院名を記憶する。症例数列は医師が過去に診察・治療をした患者ののべ人数を記憶する。専攻列は医師の専門領域、例えば、学会等から専攻医又は専門医として認定された診療科等を記憶する。住所列は病院の所在地住所を記憶する。電話番号列は病院の電話番号を記憶する。診療時間列は病院の外来診療の時間帯を記憶する。なお医師DB133は判定装置1が必ずしも備えていなくともよい。判定装置1はネットワークNを介して、他のコンピュータから医師に関する情報を取得してもよい。
【0028】
図7は第1訓練DBの例を示す説明図である。第1訓練DB134は第1モデル141を生成又は再学習する際に用いる訓練データを記憶する。第1訓練DB134は患者列、X:正面写真列、Y:上面写真列、Z:側面写真列及びNorwood分類列を含む。患者列は患者の識別情報を記憶する。X:正面写真列は患者の頭髪の状況を確認できる写真であって、患者の顔を正面から撮影した画像、又は、当該画像のファイル名を記憶する。Y:上面写真列は患者の頭髪の状況を確認できる写真であって、患者の頭を上方から撮影した画像、又は、当該画像のファイル名を記憶する。Z:側面写真列は患者の頭髪の状況を確認できる写真であって、患者の顔を側面から撮影した画像、又は、当該画像のファイル名を記憶する。Norwood分類列はラベル、すなわち、正解データである患者の薄毛症状に該当するNorwood分類を記憶する。Norwood分類はハミルトン・ノーウッド分類ともいい、AGA(Androgenetic Alopecia:男性型脱毛症)の進行レベルや薄毛の型を複数のパターンに分類したものである。分類は、薄毛の形状、進行状況に応じた、I型、II型、IIa型、III型、III vertex型、IIIa型、IV型、V型、IVa型、VI型、VII型、又は、Va型の12種類である。これらにII vertex型を加えた13種類とする場合もある。以下の説明では、患者の頭髪の状況を確認できる写真を、頭髪画像ともいう。
【0029】
図8は第2訓練DBの例を示す説明図である。第2訓練DB135は第2モデル142を生成又は再学習する際に用いる訓練データを記憶する。第2訓練DB135は患者列、Norwood分類列、体組成計列及び心臓病列を含む。患者列は患者の識別情報を記憶する。Norwood分類列は患者の薄毛症状に該当するNorwood分類を記憶する。体組成計列は筋肉量列、身長列及び体重列を含む。筋肉量列は患者の筋肉量を記憶する。単位はkgである。身長列は患者の身長を記憶する。単位はcmである。体重列は患者の体重を記憶する。単位はkgである。心臓病列はラベル、すなわち、正解である患者の心臓病の程度情報を記憶する。程度情報は、例えば、無、有(軽症)、有(中等)、又は、有(重症)である。
【0030】
第2訓練DB135を構築する際には、患者のカルテから得た情報や、患者が記入した問診票の情報を記憶した患者データベースの情報を用いてもよい。不足している項目がある場合は、主治医又は患者本人にヒアリングをして入手する。また、患者本人から、健康診断の結果データの提供を受けてもよい。
【0031】
(第1モデルの構成)
図9は第1モデルの構成に関する説明図である。判定装置1の制御部11は第1訓練DB134に記憶した訓練データを用いて、頭髪画像で示された薄毛症状の特徴量を学習するディープラーニングを行うことで、頭髪画像を入力とし、薄毛症状に対するNorwood分類による分類結果を出力とする第1モデル141(分類モデル)を生成する。第1モデル141はニューラルネットワーク、例えばCNN(Convolution Neural Network)である。具体的には、第1モデル141はR-CNN(Regions with CNN)であり、頭髪画像の入力を受け付ける入力層と、Norwood分類による分類結果を出力する出力層と、頭髪画像の特徴量を抽出する中間層とを有する。なお、第1モデル141に入力する画像として、後述するユーザ頭部の3次元モデルデータとしてもよい。
【0032】
入力層は、頭髪画像に含まれる各画素の画素値の入力を受け付ける複数のニューロンを有し、入力された画素値を中間層に受け渡す。中間層は複数のニューロンを有し、頭髪画像内から頭髪の領域を認識し、認識した頭髪領域の特徴量を抽出して出力層に受け渡す。中間層は、入力層から入力された各画素の画素値を畳み込むコンボリューション層と、コンボリューション層で畳み込んだ画素値をマッピングするプーリング層とが交互に連結された構成を有し、頭髪領域の画素情報を圧縮しながら最終的に画像特徴量を抽出する。出力層はSVM(Support Vector Machine)に係る識別器であり、Norwood分類を出力する一又は複数のニューロンを有し、中間層から出力された画像特徴量に基づいて、薄毛症状の分類結果を出力とする。
【0033】
なお、本実施の形態では第1モデル141がCNNであるものとして説明するが、第1モデル141はCNNに限定されず、CNN以外のニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、決定木など、他の学習アルゴリズムで構築された学習済みモデルであってよい。
【0034】
判定装置1は頭髪画像と頭髪画像から把握されるNorwood分類の正解値とが対応付けられた第1訓練データを用いて学習を行う。例えば
図9に示すように、第1訓練データは、3枚の頭髪画像に対し、Norwood分類の値がラベル付けされたデータである。
【0035】
判定装置1は第1訓練データを構成する3枚の頭髪画像を入力層に入力し、中間層での演算処理を経て、出力層からNorwood分類による分類結果を取得する。なお、出力層から出力される分類結果は連続的な確率値(例えば「0」から「1」までの範囲の値)を想定するが、離散的な値(例えば「0」又は「1」の値)であってもよい。
図9では、出力層は、各類型の確率値が出力される。3枚の頭髪画像は頭髪情報の一例である。
【0036】
判定装置1は、出力層から出力された分類結果を、入力した3枚の頭髪画像に対してラベル付けされた情報、すなわち正解と比較し、出力層において、正解に対応するノードから出力される確率値が1に近づくように、中間層での演算処理に用いるパラメータを最適化する。当該パラメータは、例えばニューロン間の重み(結合係数)、各ニューロンで用いられる活性化関数の係数などである。パラメータの最適化の方法は特に限定されないが、例えば判定装置1は誤差逆伝播法を用いて各種パラメータの最適化を行う。判定装置1は、第1訓練DB134に記憶した各レコード(各訓練データ)について上記の処理を行い、第1モデル141を生成する。
【0037】
(第2モデルの構成)
図10は第2モデルの構成に関する説明図である。判定装置1の制御部11は第2訓練DB135に記憶した訓練データを用いて、Norwood分類及び筋肉情報と、心臓病の程度情報との関連性を学習するディープラーニングを行うことで、Norwood分類、並びに、筋肉量、身長及び体重を含む筋肉情報を入力とし、心臓病の程度情報を出力とする第2モデル142(推定モデル)を生成する。第2モデル142はニューラルネットワーク、例えばCNNである。第2モデル142は、Norwood分類及び筋肉情報を受け付ける入力層と、心臓病の程度情報を出力する出力層と、Norwood分類及び筋肉情報の特徴量を抽出する中間層とを有する。
【0038】
入力層は、Norwood分類及び筋肉情報の入力を受け付ける複数のニューロンを有し、入力を中間層に受け渡す。中間層は複数のニューロンを有し、Norwood分類及び筋肉情報と、心臓病の程度情報それぞれとの関連度を求め、出力層に受け渡す。出力層はソフトマックス関数を含み、中間層が出力した程度情報毎の関連度の合計が1となるように変換する。
【0039】
なお、本実施の形態では第2モデル142がCNNであるものとして説明するが、第2モデル142はCNNに限定されず、CNN以外のニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、決定木など、他の学習アルゴリズムで構築された学習済みモデルであってよい。
【0040】
判定装置1はNorwood分類及び筋肉情報と、これに相関する心臓病の程度情報とが対応付けられた第2訓練データを用いて学習を行う。例えば
図10に示すように、第2訓練データは、Norwood分類及び筋肉情報(筋肉量、身長、体重)に対し、心臓病の程度情報がラベル付けされたデータである。
【0041】
判定装置1は第2訓練データを構成するNorwood分類及び筋肉情報を入力層に入力し、中間層での演算処理を経て、出力層から心臓病の程度情報を取得する。なお、出力層から出力される程度情報は連続的な確率値(例えば「0」から「1」までの範囲の値)を想定するが、離散的な値(例えば「0」又は「1」の値)であってもよい。
図10では、出力層は、程度情報が取りうる値毎の確率値が出力される。
【0042】
判定装置1は、出力層から出力された程度情報を、入力したNorwood分類及び筋肉情報に対してラベル付けされた情報、すなわち正解と比較し、出力層において、正解に対応するノードから出力される確率値が1に近づくように、中間層での演算処理に用いるパラメータを最適化する。当該パラメータは、例えばニューロン間の重み(結合係数)、各ニューロンで用いられる活性化関数の係数などである。パラメータの最適化の方法は特に限定されないが、例えば判定装置1は誤差逆伝播法を用いて各種パラメータの最適化を行う。判定装置1は、第2訓練DB135に記憶した各レコード(各訓練データ)について上記の処理を行い、第2モデル142を生成する。なお、第1モデル141と第2モデル142とを統合して、1つのモデルを生成してもよい。
【0043】
(生成処理)
図11は生成処理の手順例を示すフローチャートである。生成処理は第1モデル141又は第2モデル142を生成する処理である。まず、第1モデル141の生成について説明する。判定装置1の制御部11は第1訓練DB134に記憶している訓練データを選択する(ステップS1)。制御部11は第1モデル141の学習を行う(ステップS2)。具体的には、制御部11は訓練データを構成するX:正面写真画像、Y:上面写真画像、Z:側面写真画像を第1モデル141に入力する。制御部11は第1モデル141の出力と、訓練データを構成するラベル値、Norwood分類の正解値とを参照し、第1モデル141において、正解値に対応する出力ノードの出力値が1に近づくように、第1モデル141のパラメータを調整する。制御部11は未処理の訓練データがあるか否かを判定する(ステップS3)。制御部11は未処理の訓練データがあると判定した場合(ステップS3でYES)、処理をステップS1へ戻し、未処理の訓練データについての処理を行う。制御部11は未処理の訓練データがないと判定した場合(ステップS3でNO)、学習結果を記憶し(ステップS4)、処理を終了する。第1モデル141を再学習する際も、同様な処理である。
【0044】
第2モデル142の生成について説明する。判定装置1の制御部11は第2訓練DB135に記憶している訓練データを選択する(ステップS1)。制御部11は第2モデル142の学習を行う(ステップS2)。具体的には、制御部11は訓練データを構成するNorwood分類、筋肉情報(筋肉量、身長及び体重)を第2モデル142に入力する。制御部11は第2モデル142の出力と、訓練データを構成するラベル値、心臓病の程度情報の正解値とを参照し、第2モデル142において、正解値に対応する出力ノードの出力値が1に近づくように、第2モデル142のパラメータを調整する。制御部11は未処理の訓練データがあるか否かを判定する(ステップS3)。制御部11は未処理の訓練データがあると判定した場合(ステップS3でYES)、処理をステップS1へ戻し、未処理の訓練データについての処理を行う。制御部11は未処理の訓練データがないと判定した場合(ステップS3でNO)、学習結果を記憶し(ステップS4)、処理を終了する。第2モデル142を再学習する際も、同様な処理である。
【0045】
(判定処理)
図12は判定処理の手順例を示すフローチャートである。判定処理は、ユーザ(対象者)の頭髪、筋肉情報に基づき、ユーザについて心臓病の程度を判定する処理である。判定処理の事前準備として、ユーザは3枚の頭髪画像(X:正面写真画像、Y:上面写真画像、Z:側面写真画像)を取得し、ユーザ端末2の補助記憶部23に記憶させているものとする。また、ユーザは筋肉情報をユーザ端末2の補助記憶部23に記憶させているものとする。体組成計4で得た筋肉情報を近距離無線通信により、体組成計4からユーザ端末2へ送信させる。また、体組成計4で得た筋肉情報を、ユーザがユーザ端末2に入力してもよい。ユーザはユーザ端末2を操作して、判定処理を起動する。ユーザ端末2の制御部21は画像等(頭髪画像及び筋肉情報)を判定装置1へ送信する(ステップS11)。判定装置1の制御部11は画像等を受信する(ステップS12)。なお、体組成計4により計測した筋肉情報をクラウドストレージに記憶している場合、制御部21は筋肉情報を送信せずに、クラウドストレージより取得可能である旨を判定装置1へ送信してもよい。制御部11は受信した頭髪画像を第1モデル141へ入力し、ユーザの薄毛症状がNorwood分類のいずれの型に該当するかの分類判定を行う(ステップS13)。制御部11は分類判定で得たNorwood分類と、受信した筋肉情報とを、第2モデル142へ入力し、心臓病の程度判定を行う(ステップS14)。制御部11は結果画面を生成する(ステップS15)。制御部11は画面をユーザ端末2へ送信する(ステップS16)。ユーザ端末2の制御部21は画面を受信する(ステップS17)。制御部21は画面を表示パネル25に表示し(ステップS18)、処理を終了する。
【0046】
程度判定の結果より結果画面の生成について説明する。例えば、程度判定の結果(第1程度情報)として、無:0.1(10%)、有(軽症):0.2(20%)、有(中等):0.6(60%)、有(重症):0.1(10%)であったとする。この場合、結果画面には、リスク:有、程度:中等、確率:60%と表示する。なお、無の確率が最も高い場合であっても、ユーザの年齢等の属性を考慮して、リスク:無と表示するのではなく、リスク:有、程度:軽症、確率:10%のような表示としてもよい。リスクが低い段階でも、予防措置として受診を促す趣旨である。
【0047】
なお、心臓病の程度判定の結果は、無、有(軽症)、有(中等)、又は、有(重症)のいずれかとしたが、それに限らない。ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)が作成したNYHA心機能分類を用いてもよい。NYHA心機能分類は重症度をIからIVの4つに分類するので、程度情報は、無を加えた5段階となる。これに応じて、第2訓練データ、第2モデル142を実装する。
【0048】
心臓病の程度判定の結果、リスクが一定以上のユーザに対しては、結果画面に、医師DB133より取得した医師の情報を含めてもよい。取得の際、専攻が心臓疾患である医師に絞り込む。また、症例数の降順や、医師の勤務する病院とユーザの住所とが近い順にソートして表示してもよい。また、心臓病に関する情報提供サイトへのURL(Uniform Resource Locator)を、結果画面に含めてもよい。さらに、Norwood分類を結果画面に含めてもよい。
【0049】
図13は判定結果画面の例を示す説明図である。判定結果画面d01は結果領域d011及び情報領域d012を含む。結果領域d011は判定結果を表示する。情報領域d012は医師の情報を表示する。
【0050】
本実施の形態は、以下の効果を奏する。本実施の形態においては、血液検査や冠動脈カテーテル造影検査等の身体への穿刺行為を必要としない検査であるため、低侵襲な手法で心臓病の程度判定を行える。また、判定に用いる頭髪写真、筋肉情報はある時点でのデータでよいため、データの収集に長時間を掛けることなく、心臓病の程度判定を行える。また、結果画面に勤務先を含む医師の情報を表示するので、ユーザは受診する病院を探す労力を削減することが可能となる。
【0051】
本実施の形態において、第1モデル141と第2モデル142との2つのモデルを生成したが、これらの2つのモデルを統合して1つのモデルとしてもよい。
【0052】
(変形例)
ユーザが薄毛症状について、医師の診断を受けており、自らのNorwood分類を知っている場合、第1モデル141により判定は不要である。この場合、ユーザ端末2から、Norwood分類及び筋肉情報を判定装置1へ送信する(
図12のステップS11)。判定装置1は分類判定(ステップS13)をスキップして、程度判定(ステップS14)以降を実行して結果画面を送信する(ステップS16)。Norwood分類は頭髪情報の一例である。
【0053】
(実施の形態2)
本実施の形態は、糖尿病の程度判定を行う形態に関する。本実施の形態におけるシステム構成等は、実施の形態1と同様である。以下の説明では、主として、実施の形態1と異なる内容を説明する。
【0054】
図14は第2訓練DBの他の例を示す説明図である。第2訓練DB135は患者列、Norwood分類列、血圧計列、体組成計列及びデータベース列を含む。患者列及びNorwood分類列は、実施の形態1と同様であるから説明を省略する。血圧計列は更に拡張期血圧列及び収縮期血圧列を含む。拡張期血圧列は拡張期血圧を記憶する。拡張期血圧は最低血圧、下の血圧とも言われる。収縮期血圧列は収縮期血圧を記憶する。収縮期血圧は最高血圧、上の血圧とも言われる。体組成計列は更に筋肉量列、身長列及び体重列を含む。筋肉量列、身長列及び体重列は、実施の形態1と同様であるから説明を省略する。データベース列は更に糖尿病列及び心臓病列を含む。心臓病列は実施の形態1と同様であるから説明を省略する。糖尿病列は糖尿病に関するラベル、すなわち、正解である患者の糖尿病の程度情報を記憶する。程度情報は、例えば、無、有(軽症)、有(中等)、又は、有(重症)である。
【0055】
図15は第2モデルの他の構成に関する説明図である。判定装置1の制御部11は第2訓練DB135に記憶した訓練データを用いて、Norwood分類、血圧情報(拡張期血圧、収縮期血圧)及び筋肉情報と、糖尿病の程度情報及び心臓病の程度情報との関連性を学習するディープラーニングを行うことで、Norwood分類、拡張期血圧及び収縮期血圧を含む血圧情報、並びに、筋肉量、身長及び体重を含む筋肉情報を入力とし、糖尿病の程度情報及び心臓病の程度情報を出力とする第2モデル142を生成する。第2モデル142はニューラルネットワーク、例えばCNNである。第2モデル142は、Norwood分類、血圧情報及び筋肉情報を受け付ける入力層と、糖尿病の程度情報及び心臓病の程度情報を出力する出力層と、Norwood分類、血圧情報及び筋肉情報の特徴量を抽出する中間層とを有する。
【0056】
入力層は、Norwood分類、血圧情報及び筋肉情報の入力を受け付ける複数のニューロンを有し、入力を中間層に受け渡す。中間層は複数のニューロンを有し、Norwood分類、血圧情報及び筋肉情報と、糖尿病の程度情報それぞれとの関連度、並びに、Norwood分類、血圧情報及び筋肉情報と、心臓病の程度情報それぞれとの関連度を求め、出力層に受け渡す。出力層はソフトマックス関数を含み、中間層が出力した糖尿病の程度情報毎の関連度の合計が1となるように、心臓病の程度情報毎の関連度の合計が1となるように変換する。
【0057】
なお、本実施の形態では第2モデル142がCNNであるものとして説明するが、第2モデル142はCNNに限定されず、CNN以外のニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、決定木など、他の学習アルゴリズムで構築された学習済みモデルであってよい。
【0058】
判定装置1はNorwood分類、血圧情報及び筋肉情報と、これに相関する糖尿病の程度情報及び心臓病の程度情報とが対応付けられた第2訓練データを用いて学習を行う。例えば
図15に示すように、第2訓練データは、Norwood分類、血圧情報(拡張期血圧、収縮期血圧)及び筋肉情報(筋肉量、身長、体重)に対し、糖尿病の程度情報(第2程度情報)と心臓病の程度情報とがラベル付けされたデータである。
【0059】
判定装置1は第2訓練データを構成するNorwood分類、血圧情報及び筋肉情報を入力層に入力し、中間層での演算処理を経て、出力層から糖尿病の程度情報と心臓病の程度情報とを取得する。なお、出力層から出力される程度情報は連続的な確率値(例えば「0」から「1」までの範囲の値)を想定するが、離散的な値(例えば「0」又は「1」の値)であってもよい。
図10では、出力層は、程度情報が取りうる値毎の確率値が出力される。
【0060】
判定装置1は、出力層から出力された糖尿病の程度情報と心臓病の程度情報とを、入力したNorwood分類、血圧情報及び筋肉情報に対してラベル付けされた情報、すなわち正解と比較し、出力層において、正解に対応するノードから出力される確率値が1に近づくように、中間層での演算処理に用いるパラメータを最適化する。当該パラメータは、例えばニューロン間の重み(結合係数)、各ニューロンで用いられる活性化関数の係数などである。パラメータの最適化の方法は特に限定されないが、例えば判定装置1は誤差逆伝播法を用いて各種パラメータの最適化を行う。判定装置1は、第2訓練DB135に記憶した各レコード(各訓練データ)について上記の処理を行い、第2モデル142を生成する。
【0061】
図15では、糖尿病の程度情報と心臓病の程度情報とを出力する1つのモデルを示したが、糖尿病の程度情報を出力する第2-1モデルと心臓病の程度情報を出力する第2-2モデルとをそれぞれ設けてもよい。第2-1モデルはNorwood分類、血圧情報及び筋肉情報の入力を受け付け、糖尿病の程度情報を出力する。第2-2モデルはNorwood分類、血圧情報及び筋肉情報の入力を受け付け、心臓病の程度情報を出力する。
【0062】
本実施の形態において、生成処理、及び、判定処理は、実施の形態1と同様であるから、説明を省略する。判定処理において必要となる血圧情報については、筋肉情報と同様に、計測器である血圧計3で得た血圧情報を近距離無線通信により、血圧計3からユーザ端末2へ送信させるか、血圧情報を、ユーザがユーザ端末2に入力する。
【0063】
図16は判定結果画面の他の例を示す説明図である。判定結果画面d02はAGA領域d021、心臓病領域d022及び糖尿病領域d023を含む。AGA領域d021は薄毛症状に該当するNorwood分類が表示される。心臓病領域d022は心臓病についての判定結果を表示する。糖尿病領域d023は糖尿病についての判定結果を表示する。
【0064】
図16に示す判定結果画面には、医師の情報や、心臓病又は糖尿病に関する情報提供サイトへのリンク情報が示されていないが、画面をスクロールした場合に表示してもよい。表示する医師の情報は前述と同様に、専攻が心臓疾患又は糖尿病である医師に絞り込む。また、症例数の降順や、医師の勤務する病院とユーザの住所とが近い順にソートして表示してもよい。また、右又は左にスワイプ操作を行った場合に、医師の情報や、心臓病又は糖尿病に関する情報提供サイトへのリンク情報が示されている情報画面を表示してもよい。
【0065】
本実施の形態は、実施の形態1が奏する効果に加えて、以下の効果を奏する。本実施の形態においては、血液検査等の身体への穿刺行為を必要としない検査であるため、低侵襲な手法で糖尿病の程度判定を行える。また、判定に用いる頭髪写真、血圧情報、筋肉情報はある時点でのデータでよいため、データの収集に長時間を掛けることなく、糖尿病の程度判定を行える。
【0066】
(入力項目の追加)
第2モデル142に入力するデータの項目として、上述した項目以外のものを追加してもよい。例えば、ユーザDB131の生年月日列から求まる年齢、性別を入力項目として追加する。また、属性DB132のBMI列、ストレス列、喫煙列、歯周病列、HDL列、LDL列、中性脂肪列、皮膚かゆみ列、及び、心臓病歴列に記憶している項目を追加する。第2モデル142を生成又は再学習する際に用いる第2訓練データにも、これらの項目を追加する。これらの項目は、心臓病の発症と因果関係があると認識されている。
【0067】
(薄毛症状に関するデータ)
薄毛症状に関するデータとして、AGAに関する医師の診察結果として得られるAGAの重症度(軽症、中等、重症)や、頭部の表面毛細血管及び深部毛細血管に関するデータ、頭皮の血流に関するデータ、並びに、頭皮の静脈血管に関するデータを、第2訓練データ及び第2モデル142の入力データとして用いてもよい。AGAの重症度、頭部の表面毛細血管及び深部毛細血管に関するデータ、頭皮の血流に関するデータ、並びに、頭皮の静脈血管に関するデータは、薄毛症状との関連性が有ると推測されるから、頭髪情報の一例である。
【0068】
表面毛細血管に関するデータは、毛細血管の径、毛細血管の密度である。表面毛細血管に関するデータは、例えば、デジタルマイクロスコープにて取得する。深部毛細血管に関するデータは、毛細血管の径、毛細血管の密度である。深部毛細血管に関するデータは、例えば、近赤外線カメラにて取得する。頭皮の血流に関するデータは、例えば血流スコープにより取得する。頭皮の静脈血管に関するデータは、例えば、静脈可視装置により取得する。
【0069】
図17は第2訓練DBの他の例を示す説明図である。第2訓練DB135は患者列、糖尿病列、心臓病列、AGA診断列、表面毛細血管列、深部毛細血管列、年齢列、及び性別列を含む。患者列は患者の識別情報を記憶する。糖尿病列は患者の糖尿病の有無を記憶する。心臓病列は患者の心臓病の有無を記憶する。AGA診断列はAGAについての医師の診断結果を記憶する。表面毛細血管列は更に、径列及び面積比列を含む。径列は表面毛細血管の径を記憶する。径の単位はμmである。面積比列は頭皮表面画像中における表面毛細血管の面積比率を記憶する。面積比率の単位は%である。例えば、頭皮表面において1mm四方の領域に相当する観察窓を、頭皮表面画像上に設定する。観察窓内における表面毛細血管の領域が窓の全体領域に対して占める割合を求める。観察窓の位置を適宜変更し、頭皮表面画像全体にわたって割合を求める。求めた割合の平均値を百分率で表した値を面積比率とする。深部毛細血管列は更に、径列、面積比列を含む。径列は深部毛細血管の径を記憶する。径の単位はμmである。面積比列は頭皮表面写真中における深部毛細血管の面積比率を記憶する。面積比率の単位は%である。面積比率は、表面毛細血管の面積比率と同様な方法で求めることが可能である。年齢列は患者の年齢を記憶する。性別列は患者の性別を記憶する。
図17に示していないデータ項目、例えば、Norwood分類、血圧情報、又は、筋肉情報を、ここでの第2訓練DB135に含めてもよい。
【0070】
(その他機能)
ユーザから取得したデータを活用した機能について説明する。ユーザが提供した3枚の頭髪画像から3次元モデル生成し、生成したモデルと薄毛症状の判定結果とを表示する機能について説明する。
図18は分類表示画面の例を示す説明図である。分類表示画面d03は3D画像表示域d031、分類表示域d032及び確率表示域d033を含む。3D画像表示域d031は3枚の頭髪画像より生成したユーザの頭部3次元モデルを表示する。分類表示域d032は第1モデル141により判定したNorwood分類を表示する。確率表示域d033は判定した分類に該当する確率を表示する。
【0071】
分類表示画面d03を表示する機能を備え、それを広く告知することにより、3枚の頭髪画像を撮影して判定を行うことを、潜在ユーザ等に促すことに繋がる。
【0072】
次に、表面毛細血管及び頭皮の静脈血管に関するデータを利用して、頭皮年齢を判定する機能について説明する。
図19は頭皮年齢推定についての説明図である。学習モデル143は表面毛細血管画像及び頭皮静脈画像(静脈血管画像)、並びに、年齢及び性別を入力した場合、表面毛細血管の径及び密度、頭皮静脈の径及び密度、並びに、頭皮年齢及びその確率を出力するモデルである。学習モデル143は血管の有無を判定するCNNを含み、入力された表面毛細血管画像から、表面毛細血管を構成する画素を認識する。学習モデル143は認識結果から、表面毛細血管の径及び密度を判定する。同様に、学習モデル143は入力された頭皮静脈画像から静脈を構成する画素を認識、認識結果に基づいて、頭皮静脈の径及び密度を判定する。また、学習モデル143は表面毛細血管画像及び頭皮静脈画像の特徴量等と頭皮年齢との関連性を学習しており、入力された表面毛細血管画像及び頭皮静脈画像等に基づき、頭皮年齢の推定値とその確率を出力する。学習モデル143が出力した表面毛細血管の径及び密度、頭皮静脈の径及び密度、並びに、頭皮年齢と、心臓病及び糖尿病の程度情報とを対応付けて、第2訓練データとし、第2モデル142を生成してもよい。なお、表面毛細血管の径及び密度を、表面毛細血管画像から画像処理により算出してもよい。頭皮静脈の径及び密度を、頭皮静脈画像から画像処理により算出してもよい。
【0073】
図20は頭皮年齢表示画面の例を示す説明図である。頭皮年齢表示画面d04は、第1画像域d041、第2画像域d042、毛細血管域d043、頭皮静脈域d044及び頭皮年齢域d045を含む。第1画像域d041は表面毛細血管画像を表示する。第2画像域d042は頭皮静脈画像を表示する。毛細血管域d043は表面毛細血管の径及び密度を表示する。頭皮静脈域d044は頭皮静脈の径及び密度を表示する。頭皮年齢域d045は頭皮年齢及びその確率を表示する。表面毛細血管の径及び密度、頭皮静脈の径及び密度、並びに、頭皮年齢の結果に応じて、疾病情報、医師の情報、美容情報を表示したり、これらの情報を提供しているWebサイトのURLを表示してもよい。
【0074】
(情報提供)
医師や病院に関する情報以外に手技情報などを含めた疾病に関する情報を得るためのポータル画面をユーザ端末2に表示させてもよい。
図21は心臓病ポータル画面の例を示す説明図である。心臓病ポータル画面d05には、リンクd051、リンクd052及びリンクd053が含まれている。リンクd051は心臓病についての説明が掲載されたサイトへのリンクである。リンクd052は日帰り検査についての説明が掲載されたサイトへのリンクである。リンクd053は日帰り検査が可能な病院のサイトへのリンクである。
【0075】
図22は糖尿病ポータル画面の例を示す説明図である。糖尿病ポータル画面d06には、リンクd061、リンクd062、リンクd063、及びリンクd064が含まれている。リンクd061は糖尿病についての説明が掲載されたサイトへのリンクである。リンクd062は糖尿病が発症後の推移を示す画像に設定されているリンクである。リンクd062を選択すると、画像を含む糖尿病発症後の推移について解説するサイトへジャンプする。リンクd063は糖尿病を診断するための検査方法についての説明が掲載されたサイトへのリンクである。リンクd064は糖尿病を治療方法についての説明が掲載されたサイトへのリンクである。
【0076】
心臓病に関して一定以上のリスクがあるユーザに対しては、心臓病ポータル画面d05を表示することで、次の効果が期待される。ユーザは自らが心臓病を有することについて、不安や危険を感じた場合であっても、心臓病ポータル画面d05で情報収集することで、病気や検査について理解した上で、検査のために診察を受ける決断をするものと期待される。
【0077】
糖尿病に関して一定以上のリスクがあるユーザに対しては、糖尿病ポータル画面d06を表示することで、次の効果が期待される。糖尿病は初期段階においては、自覚症状が殆どないため、ユーザは判定結果を軽視してしまう可能性があるところ、糖尿病ポータル画面d06により、糖尿病についての知識を得ることで、ユーザは検査、治療を受ける決断をするものと期待される。
【0078】
各実施の形態で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0079】
100 :予測システム
1 :判定装置
11 :制御部
12 :主記憶部
13 :補助記憶部
131 :ユーザDB
132 :属性DB
133 :医師DB
134 :第1訓練DB
135 :第2訓練DB
141 :第1モデル
142 :第2モデル
143 :学習モデル
15 :通信部
16 :読み取り部
1P :制御プログラム
1a :可搬型記憶媒体
1b :半導体メモリ
2 :ユーザ端末
21 :制御部
22 :主記憶部
23 :補助記憶部
24 :通信部
25 :表示パネル
26 :操作部
2P :制御プログラム
3 :血圧計
4 :体組成計
B :バス
N :ネットワーク