IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東ソー・ファインケム株式会社の特許一覧

特開2023-148903新規組成物及び当該組成物を使用したトリアルキルアルミニウムの製造方法
<>
  • 特開-新規組成物及び当該組成物を使用したトリアルキルアルミニウムの製造方法 図1
  • 特開-新規組成物及び当該組成物を使用したトリアルキルアルミニウムの製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148903
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】新規組成物及び当該組成物を使用したトリアルキルアルミニウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/06 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
C07F5/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057185
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】橋元 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 翔太
(72)【発明者】
【氏名】渡部 雄太
(72)【発明者】
【氏名】松添 哲
【テーマコード(参考)】
4H048
【Fターム(参考)】
4H048AA01
4H048AA02
4H048AB80
4H048VA80
4H048VB10
4H048VB20
(57)【要約】
【課題】新規組成物及び当該組成物を使用したトリアルキルアルミニウムの新規な製造方法を提供する。
の提供。
【解決手段】本発明は、トリアルキルアルミニウムに金属マグネシウムを溶解せしめてなる組成物を提供する。さらに、本発明は当該組成物に、対応するアルキルアルミニウムハロゲン化物を接触させ、トリアルキルアルミニウムに変換することを含む、トリアルキルアルミニウムの製造方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアルキルアルミニウムに金属マグネシウムを溶解せしめてなる組成物。
【請求項2】
トリアルキルアルミニウムと金属マグネシウムの配合比が、モル換算で1:10~50:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
トリアルキルアルミニウムがトリメチルアルミニウムである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
アルキルアルミニウムハロゲン化物のトリアルキルアルミニウムへの変換に使用される、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
トリアルキルアルミニウムに金属マグネシウムを溶解せしめてなる組成物に、対応するアルキルアルミニウムハロゲン化物を接触させ、トリアルキルアルミニウムに変換することを含む、トリアルキルアルミニウムの製造方法。
【請求項6】
前記溶解の工程が20~200℃の温度で2~48時間実施される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アルキルアルミニウムハロゲン化物と接触させる工程が0~50℃で実施される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
トリアルキルアルミニウムと金属マグネシウムの配合比が、モル換算で1:10~50:1である、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記還元剤に含窒素有機化合物がさらに配合された、請求項5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記含窒素有機化合物が、窒素原子を少なくとも1個含み、かつ5員環及び/または6員環骨格を有する共役複素環化合物である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記共役複素環化合物が、ピリジン、2-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、2,6-ジエチルピリジン、2,6-ジイソプロピルピリジン、キノリン、イソキノリン、2,2-ビピリジン、1-メチルイミダゾールから成る群から選ばれる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記共役複素環化合物が2,6-ジメチルピリジンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物の金属マグネシウムがトリアルキルアルミニウムと有機溶媒との混合溶液に溶解された、請求項5~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記有機溶媒が炭化水素溶媒である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記炭化水素溶媒が炭素数4~18の飽和炭化水素溶媒及び炭素数6~12の芳香族炭化水素溶媒から成る群から選ばれる少なくとも1種である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記炭化水素溶媒がn―ドデカンである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
トリアルキルアルミニウムがトリメチルアルミニウムである、請求項5~16のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規組成物及び当該組成物を使用したトリアルキルアルミニウムの新規な製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
トリアルキルアルミニウム、例えばトリメチルアルミニウム(TMAL)はポリオレフィン合成の重合助触媒の原料として用いられており、近年では化合物半導体の原料としても注目を集めている。TMALの製造方法はこれまでに多数の報告例がある。例えば,i)メチルアルミニウムセスキハライドと金属Naを反応させる製法(米国特許2954389号(特許文献1))、ii)ジメチルアルミニウムクロリド(DMAC)を金属マグネシウムで還元させる製法(米国特許5380898号(特許文献2));またはiii)Al‐Mg合金とハロゲン化メチルを反応させて得る製法(米国特許2744127号(特許文献3))、などが挙げられる。一般的に、TMALはメチルアルミニウムハロゲン化物とアルミニウムよりイオン化傾向の高い金属と反応させ、脱ハロゲン化することで得ることができる。
【0003】
従前のトリアルキルアルミニウムの製造方法は、安全面だけでなく、コストや工程数の面でも解決すべき課題を抱えていた。たとえば、トリアルキルアルミニウムの製造において、金属Naを使用してDMACを還元反応する場合、反応温度は150~200℃の高温条件で実施する必要があり、収率は85%程度である。また、溶融したNa中にメチルアルミニウムハロゲン化物を直接滴下するため、急激な発熱が生じやすく、冷却等の温度コントロールが必要であった。マグネシウム粉末でDMACを還元する場合、最大径75μm以下の粉末を使用し、固体反応装置という専用装置で、かつ反応温度140~180℃といった高温条件で3~6時間以上反応させる必要がある(特許文献2)。同様にAl-Mg合金粉末で還元するには、さらに細かい微粒(平均粒径 D50=10μm以下)を用い、かつ反応温度が130℃で24時間以上といった長時間を要する(特開2018-135300号公報(特許文献4))。
【0004】
従って、従前知られている方法に比べ、温和な条件で、安全かつ効率的にトリアルキルアルミニウムを製造する方法の出現が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許2954389号
【特許文献2】米国特許5380898号
【特許文献3】米国特許2744127号
【特許文献4】特開2018-135300号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】O. Michel. et al, Organometallics. 2009, 28, 4783-4790.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、新規組成物及び当該組成物を使用したトリアルキルアルミニウムの新規な製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らはトリアルキルアルミニウムの製造方法について鋭意検討したところ、金属マグネシウムがトリアルキルアルミニウムに溶解することを見出し、そして驚くべきことに、このトリアルキルアルミニウムに金属マグネシウムを溶解させた組成物が、アルキルアルミニウムハロゲン化物をトリアルキルアルミニウムに極めて効率よく変換させるのに有効であるという知見を得た。
【0009】
従って、本願は以下の発明を包含する。
(1)トリアルキルアルミニウムに金属マグネシウムを溶解せしめてなる組成物。
(2)トリアルキルアルミニウムと金属マグネシウムの配合比が、モル換算で1:10~50:1である、(1)に記載の組成物。
(3)トリアルキルアルミニウムがトリメチルアルミニウムである、(1)又は(2)に記載の組成物。
(4)アルキルアルミニウムハロゲン化物のトリアルキルアルミニウムへの変換に使用される、(1)~(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)トリアルキルアルミニウムに金属マグネシウムを溶解せしめてなる組成物に、対応するアルキルアルミニウムハロゲン化物を接触させ、トリアルキルアルミニウムに変換することを含む、トリアルキルアルミニウムの製造方法。
(6)前記溶解の工程が20~200℃の温度で2~48時間実施される、(5)に記載の方法。
(7)前記アルキルアルミニウムハロゲン化物と接触させる工程が0~50℃で実施される、(5)又は(6)に記載の方法。
(8)トリアルキルアルミニウムと金属マグネシウムの配合比が、モル換算で1:10~50:1である、(5)~(7)のいずれかに記載の方法。
(9)前記還元剤に含窒素有機化合物がさらに配合された、(5)~(8)のいずれかに記載の方法。
(10)前記含窒素有機化合物が、窒素原子を少なくとも1個含み、かつ5員環及び/または6員環骨格を有する共役複素環化合物である、(9)に記載の方法。
(11)前記共役複素環化合物が、ピリジン、2-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、2,6-ジエチルピリジン、2,6-ジイソプロピルピリジン、キノリン、イソキノリン、2,2-ビピリジン、1-メチルイミダゾールから成る群から選ばれる、(10)に記載の方法。
(12)前記共役複素環化合物が2,6-ジメチルピリジンである、(11)に記載の方法。
(13)前記組成物の金属マグネシウムがトリアルキルアルミニウムと有機溶媒との混合溶液に溶解された、(5)~(12)のいずれかに記載の方法。
(14)前記有機溶媒が炭化水素溶媒である、(13)に記載の方法。
(15)前記炭化水素溶媒が炭素数4~18の飽和炭化水素溶媒及び炭素数6~12の芳香族炭化水素溶媒から成る群から選ばれる少なくとも1種である、(14)に記載の方法。
(16)前記炭化水素溶媒がn―ドデカンである(15)に記載の方法。
(17)トリアルキルアルミニウムがトリメチルアルミニウムであり、アルキルアルミニウムハロゲン化物がジメチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、メチルアルミニウムジクロリドから成る群から選ばれる(5)~(16)のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
従前のトリアルキルアルミニウムの製造方法は、安全面だけでなく、コストや工程数の面でも解決すべき課題を抱えていた。トリアルキルアルミニウムに金属マグネシウムを溶解させた組成物は、アルキルアルミニウムハロゲン化物をトリアルキルアルミニウムに極めて効率よく変換させるのに還元剤として有効であるという知見を得た。本発明により、従前知られている方法に比べ、より安全かつ効率的にトリアルキルアルミニウムを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】TMALに金属マグネシウムを溶解させることで進行する反応のNMRスペクトル図。
図2】DMACを本発明の組成物で還元した際に進行する反応のNMRスペクトル図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1)トリアルキルアルミニウムに金属マグネシウムを溶解せしめてなる組成物
本発明は、トリアルキルアルミニウムに金属マグネシウムを溶解せしめてなる組成物を提供する。トリアルキルアルミニウムには、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等が含まれ、特に好ましいのはトリメチルアルミニウムである。
【0013】
本発明の組成物において、トリアルキルアルミニウムに対する金属マグネシウムの配合比は、例えばモル換算で1:10~50:1、好ましくは1:10~40:1、1:10~30:1、1:10~20:1、1:10~10:1、1:10~1:1、1:10~1:2、1:10~1:3、1:10~1:4、1:10~1:5であり、又は例えば1:5~25:1、好ましくは1:5~20:1,1:5~10:1、1:5~1:1、1:5~1:2、1:5~1:3、1:5~1:4である。
【0014】
上記組成物は、トリアルキルアルミニウムに金属マグネシウムを溶解させることで調製できる。溶解させる金属マグネシウムの形状や粒径などは特に限定されるものではないが、トリアルキルアルミウムへの溶解を促進するため、粒径は細かいほど良い。しかし、細かい粒子を得るには、粉砕する必要があり、多量のエネルギーが必要となる。粉末を使用する場合、粒径は例えばメジアン径で10μm~1000μm程度であることが好ましく、20~500μmがさらに好ましく、30~300μmがもっとも好ましく、金属箔状の場合、その最大の厚みが1μm~150μm程度であることが好ましく、10~100μmがさらに好ましく、5~50μmがもっとも好ましい。金属マグネシウムの粉砕処理については、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル等の従来から知られている一般的な粉砕処理の方法で粉砕すればよい。
【0015】
トリアルキルアルミニウムへの金属マグネシウムの溶解工程は、トリアルキルアルミニウムに金属マグネシウムを投入し、室温にて、又は好ましくは加温して、必要に応じ適宜攪拌しながら溶解させる。溶解の温度は溶解が進行する温度であれば何度でも構わないが、20℃~200℃が好ましく、50℃~170℃がさらに好ましく、例えば1~48時間、好ましくは1~24時間かけて溶解させる。
【0016】
溶解工程の反応方式は、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよく、特に制限なく実施することができる。溶解装置としては、縦型または横型の反応容器を用いることができる。例えば、撹拌器付オートクレーブを用いることができる。用いる撹拌翼としては、一般に知られているどのようなものでも良い。例えばプロペラ、タービン、パドル(ピッチドパドル)、大型翼等が挙げられる。
【0017】
トリアルキルアルミニウムへの金属マグネシウムの溶解は、含窒素有機化合物を添加することで促進することができる。含窒素有機化合物を使用する場合、その量は特に限定されないが、1molの金属マグネシウムに対して、例えば、0.01mol以上、100mol以下の範囲とすることができ、0.01mol以上、10mol以下の範囲であることが好ましい。本発明において有効な含窒素有機化合物は窒素原子を一つ以上含有している化合物をいい、特に限定されるものではないが、含窒素有機化合物としてアミン化合物や窒素原子を含む複素環式化合物が挙げられる。
【0018】
アミン化合物としては、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、を挙げることができる。脂肪族アミン化合物は、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、イソアミルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミン、スペルミジン、スペルミン、アマンタジンのような第1級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジアミルアミン、ジシクロヘキシルアミンのような第2級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリエタノールアミン、トリシクロヘキシルアミン、N,N‐ジイソプロピルエチルアミンのような第3級アミンを挙げることができる。芳香族アミン化合物は、アニリン、N,N‐ジメチルアニリン、フェネチルアミン、トルイジン、カテコールアミン、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン等が挙げられる。
【0019】
窒素原子を含む複素環式化合物としては、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、キヌクリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2.]オクタン、のような飽和複素環式化合物、及びピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、4-ジメチルアミノピリジン、インドール、キノリン、イソキノリン、プリン、1-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、1-ブチルイミダゾールのような不飽和複素環式化合物が挙げられる。
【0020】
本発明において特に好ましい含窒素有機化合物は、窒素原子を少なくとも1個含み、かつ5員環及び/または6員環骨格を有する共役複素環化合物である。特に好ましい共役複素環化合物は、ピリジン、2-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、2,6-ジエチルピリジン、2,6-ジイソプロピルピリジン、キノリン、イソキノリン、2,2-ビピリジン、1-メチルイミダゾール等であるが、それらに限定されるものではない。最も好ましいは2,6-ジメチルピリジン(ルチジン)である。
【0021】
トリアルキルアルミニウムへの金属マグネシウムの溶解は、有機溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒を使用する場合、その量は特に限定されないが、1molのトリアルキルアルミニウムに対して、例えば、0.1mol以上、100mol以下の範囲とすることができ、0.5mol以上、10mol以下の範囲であることが好ましい。使用できる有機溶媒の種類に関して特に制限はないが、例えば、炭化水素溶媒を用いることができる。炭化水素溶媒は、疎水性かつ反応性の乏しい炭化水素溶媒であることが好ましく、そのような有機溶媒としては、例えば炭素数4~18の飽和炭化水素溶媒や炭素数6~12の芳香族炭化水素溶媒が使用できる。例えば、飽和炭化水素溶媒及び芳香族炭化水素溶媒から成る群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0022】
炭素数4~18の飽和炭化水素溶媒の具体例としては、n-ブタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、n-トリデカン、n-テトラデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、o-メンタン、m-メンタン、p-メンタン、デカヒドロナフタレン、パラフィン類Cn2n+2、イソパラフィン類Cn2n+2などが例示できる。特にn-ドデカンが好ましい。
【0023】
炭素数6~12の芳香族炭化水素溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン等が例示できる。芳香族炭化水素は、無置換であるか、または炭素数1から8のアルキル基、炭素数3から8のシクロアルキル基及び炭素数2から8のアルキレン基からなる群から選ばれる置換基を有してもよい。芳香族炭化水素の置換基である炭素数1から8のアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、ネオヘキシル、tert-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、ネオヘプチル、tert-ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、ネオオクチル、tert‐オクチル基が挙げられる。芳香族炭化水素の置換基である炭素数3から8のシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル基が挙げられる。芳香族炭化水素の置換基である炭素数2から8のアルキレン基としては、エチレン、プロピレン、ブチレン基が挙げられる。
【0024】
上記芳香族炭化水素の具体例としては、クメン、o-クメン、m-クメン、p-クメン、プロピルベンゼン、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、1-フェニルペンタン、1-フェニルヘプタン、1-フェニルオクタン、1,2-ジエチルベンゼン、1,4-ジエチルベンゼン、メシチレン、1,3-ジ-tert-ブチルベンゼン、1,4-ジ-tert-ブチルベンゼン、ジ-n-ペンチルベンゼン、トリ-tert-ブチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、インダン、テトラリンが挙げられる。
【0025】
2)トリアルキルアルミニウムの製造方法
上述のとおり、本発明者らはトリアルキルアルミニウムに金属マグネシウムを溶解させた組成物が、アルキルアルミニウムハロゲン化物をトリアルキルアルミニウムへと極めて効率よく還元させるのに有効であるという知見を得た。例えば、アルキルアルミニウムハロゲン化物のトリアルキルアルミニウムへの還元は、0~50℃にて数時間、例えば1~3時間程度で完了する。従って、本願はかかる組成物を利用した、従来にはない新たなトリアルキルアルミニウムの製造方法を提供する。詳しくは、本願はトリアルキルアルミニウムに金属マグネシウムを溶解せしめてなる組成物に、対応するアルキルアルミニウムハロゲン化物を接触させ、トリアルキルアルミニウムに変換することを含む、トリアルキルアルミニウムの製造方法を提供する。
【0026】
トリアルキルアルミニウムには、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等が含まれ、工業的に特に有用なのはトリメチルアルミニウムである。
【0027】
出発材料としてのアルキルアルミニウムハロゲン化物としては、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジプロピルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、メチルエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、プロピルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、イソブチルアルミニウムセスキクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムフロリド、ジエチルアルミニウムフロリド、ジプロピルアルミニウムフロリド、ジイソプロピルアルミニウムフロリド、ジブチルアルミニウムフロリド、ジイソブチルアルミニウムフロリド、メチルエチルアルミニウムフロリド、メチルアルミニウムセスキフロリド、エチルアルミニウムセスキフロリド、プロピルアルミニウムセスキフロリド、イソプロピルアルミニウムセスキフロリド、ブチルアルミニウムセスキフロリド、イソブチルアルミニウムセスキフロリド、メチルアルミニウムジフロリド、エチルアルミニウムジフロリド、プロピルアルミニウムジフロリド、イソプロピルアルミニウムジフロリド、ブチルアルミニウムジフロリド、イソブチルアルミニウムジフロリド、ジメチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジプロピルアルミニウムブロミド、ジイソプロピルアルミニウムブロミド、ジブチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムブロミド、メチルエチルアルミニウムブロミド、メチルアルミニウムセスキブロミド、エチルアルミニウムセスキブロミド、プロピルアルミニウムセスキブロミド、イソプロピルアルミニウムセスキブロミド、ブチルアルミニウムセスキブロミド、イソブチルアルミニウムセスキブロミド、メチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジブロミド、プロピルアルミニウムジブロミド、イソプロピルアルミニウムジブロミド、ブチルアルミニウムジブロミド、イソブチルアルミニウムジブロミド、ジメチルアルミニウムヨージド、ジエチルアルミニウムヨージド、ジプロピルアルミニウムヨージド、ジイソプロピルアルミニウムヨージド、ジブチルアルミニウムヨージド、ジイソブチルアルミニウムヨージド、メチルエチルアルミニウムヨージド、メチルアルミニウムセスキヨージド、エチルアルミニウムセスキヨージド、プロピルアルミニウムセスキヨージド、イソプロピルアルミニウムセスキヨージド、ブチルアルミニウムセスキヨージド、イソブチルアルミニウムセスキヨージド、メチルアルミニウムジヨージド、エチルアルミニウムジヨージド、プロピルアルミニウムジヨージド、イソプロピルアルミニウムジヨージド、ブチルアルミニウムジヨージド、イソブチルアルミニウムジヨージド、等が挙げられるがそれらに限定されるものではない。本発明で特に好ましいのはジメチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリドである。
【0028】
還元すべきアルキルアルミニウムハロゲン化物のアルキル基は、還元剤として使用する金属マグネシウムの溶解に使用するトリアルキルアルミニウムのアルキル基と一致する、即ち対応することが好ましい。例えば、還元すべき出発アルキルアルミニウムハロゲン化物としてジメチルアルミニウムクロリドを使用した場合、トリメチルアルミニウムに金属マグネシウムを溶解した組成物を還元剤として使用することで、ジメチルアルミニウムクロリドをトリメチルアルミニウムへと還元することができる。従って、例えばアルキルアルミニウムハロゲン化物がメチルアルミニウムハロゲン化物、例えばジメチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、メチルアルミニウムジクロリド等の場合、対応のトリアルキルアルミニウムはトリメチルアルミニウムである。
【0029】
本発明のトリアルキルアルミニウムの製造方法は、予めトリアルキルアルミニウムに金属マグネシウムを溶解させた組成物を調製し、それにアルキルアルミニウムハロゲン化物を投入することで接触反応させることで実施される。本発明の組成物とアルキルアルミニウムハロゲン化物との接触は0~50℃で行ってよい。驚くべきことに、本発明によるトリアルキルアルミニムの製造方法は室温付近でも極めて効率よく達成される。反応時間は出発材料の仕込み量や温度に応じ左右されるが、0~50℃、好ましく20~40℃にて10分~5時間、好ましくは1~3時間にて反応は完了する。
【0030】
トリアルキルアルミニウムへの金属マグネシウムの溶解は、上述の通り、含窒素有機化合物を添加することで促進することができる。従って、本発明のトリアルキルアルミニウムの製造方法は、含窒素有機化合物の存在下で行ってよい。含窒素有機化合物を使用する場合、その量は特に限定されないが、1molの金属マグネシウムに対して、例えば、0.01mol以上、100mol以下の範囲とすることができ、0.01mol以上、10mol以下の範囲であることが好ましい。本発明において有効な含窒素有機化合物は窒素原子を一つ以上含有している化合物をいい、特に限定されるものではないが、含窒素有機化合物および窒素原子を含む複素環式化合物が挙げられる。
【0031】
アミン化合物としては、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、を挙げることができる。脂肪族アミン化合物は、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、イソアミルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミン、スペルミジン、スペルミン、アマンタジンのような第1級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジアミルアミン、ジシクロヘキシルアミンのような第2級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリエタノールアミン、トリシクロヘキシルアミン、N,N‐ジイソプロピルエチルアミンのような第3級アミンを挙げることができる。芳香族アミン化合物は、アニリン、N,N‐ジメチルアニリン、フェネチルアミン、トルイジン、カテコールアミン、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン等が挙げられる。
【0032】
窒素原子を含む複素環式化合物としては、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、キヌクリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2.]オクタン、のような飽和複素環式化合物、及びピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、4-ジメチルアミノピリジン、インドール、キノリン、イソキノリン、プリン、1-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、1-ブチルイミダゾールのような不飽和複素環式化合物が挙げられる。
【0033】
本発明において特に好ましい含窒素有機化合物は、窒素原子を少なくとも1個含み、かつ5員環及び/または6員環骨格を有する共役複素環化合物である。特に好ましい共役複素環化合物は、ピリジン、2-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、2,6-ジエチルピリジン、2,6-ジイソプロピルピリジン、キノリン、イソキノリン、2,2-ビピリジン、1-メチルイミダゾール等であるが、それらに限定されるものではない。最も好ましいは2,6-ジメチルピリジン(ルチジン)である。
【0034】
上述の通り、トリアルキルアルミニウムへの金属マグネシウムの溶解は、有機溶媒の存在下で行ってもよい。従って、本発明のトリルキルアルミニウムの製造方法は、有機溶媒の存在下で行ってよい。溶媒を使用する場合、その量は特に限定されないが、1molのトリアルキルアルミニウムに対して、例えば、0.1mol以上、100mol以下の範囲とすることができ、0.5mol以上、10mol以下の範囲であることが好ましい。使用できる有機溶媒の種類に関して特に制限はないが、例えば、炭化水素溶媒を用いることができる。炭化水素溶媒は、疎水性かつ反応性の乏しい炭化水素溶媒であることが好ましく、そのような有機溶媒としては、例えば炭素数4~18の飽和炭化水素溶媒や炭素数6~12の芳香族炭化水素溶媒が使用できる。例えば、飽和炭化水素溶媒及び芳香族炭化水素溶媒から成る群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0035】
炭素数4~18の飽和炭化水素溶媒の具体例としては、n-ブタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、n-トリデカン、n-テトラデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、o-メンタン、m-メンタン、p-メンタン、デカヒドロナフタレン、パラフィン類CnH2n+2、イソパラフィン類CnH2n+2などが例示できる。特にn-ドデカンが好ましい。
【0036】
炭素数6~12の芳香族炭化水素溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン等が例示できる。芳香族炭化水素は、無置換であるか、または炭素数1から8のアルキル基、炭素数3から8のシクロアルキル基及び炭素数2から8のアルキレン基からなる群から選ばれる置換基を有してもよい。芳香族炭化水素の置換基である炭素数1から8のアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、ネオヘキシル、tert-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、ネオヘプチル、tert-ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、ネオオクチル、tert‐オクチル基が挙げられる。芳香族炭化水素の置換基である炭素数3から8のシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル基が挙げられる。芳香族炭化水素の置換基である炭素数2から8のアルキレン基としては、エチレン、プロピレン、ブチレン基が挙げられる。
【0037】
上記芳香族炭化水素の具体例としては、クメン、o-クメン、m-クメン、p-クメン、プロピルベンゼン、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、1-フェニルペンタン、1-フェニルヘプタン、1-フェニルオクタン、1,2-ジエチルベンゼン、1,4-ジエチルベンゼン、メシチレン、1,3-ジ-tert-ブチルベンゼン、1,4-ジ-tert-ブチルベンゼン、ジ-n-ペンチルベンゼン、トリ-tert-ブチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、インダン、テトラリンが挙げられる。
【0038】
本発明のトリアルキルアルミニウムの製造方法において、トリアルキルアルミニウムに金属マグネシウムを溶解させた組成物に対するアルキルアルミニウムハロゲン化物の添加量は、当該組成物に溶解した金属マグネシウム1molに対して、0.1~10molの範囲が好ましく、0.5~5molの範囲がさらに好ましい。
【0039】
本発明のトリアルキルアルミニウムの製造方法において、アルキルアルミニウムハロゲン化物の反応方式は、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよく、特に制限なく実施することができる。反応装置としては、縦型または横型の反応容器を用いることができる。例えば、撹拌器付オートクレーブを用いることができる。用いる撹拌翼としては、一般に知られているどのようなものでも良い。例えばプロペラ、タービン、パドル(ピッチドパドル)大型翼等が挙げられる。
【0040】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
【0041】
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
【実施例0042】
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0043】
<金属Mgの溶解反応について>
<実施例1>
窒素置換を行った1.5 Lのオートクレーブに、メジアン径102 μmのMg粉末9.9 g (0.41 mol)、TMAL 91.0 g (1.26 mol、TMAL:Mg(モル比)=3:1)、 n-ドデカン 126.0 g、2,6-ジメチルピリジン1.0 g(9.33mmol、Mg粉末1molに対して0.02mol)を投入し、130℃で12時間加熱攪拌した。加熱攪拌後の溶液を室温に冷却した後、溶液中のMg濃度をICP分析により定量した。結果、溶存Mg濃度は1.9重量%、溶存Mg量は4.2g、Mg転化率は43%であった。結果を表1に示す。
【0044】
<実施例2>
実験条件は表1の通りで、実施例1とほぼ同様の条件で行った。実施例1との違いは、2,6-ジメチルピリジンを添加していない、反応時間を18時間にしたことである。結果、溶存Mg濃度は1.3重量%、溶存Mg量は2.9g、Mg転化率は30%であった。
【0045】
<実施例3>
実験条件は表1の通りであり、実験操作は実施例1とほぼ同様の条件で行った。窒素置換を行った50mLのオートクレーブに、メジアン径102 μmのMg粉末1.0 g (0.04 mol)、TMAL 15.2 g (0.21 mol、TMAL:Mg(モル比)=5:1)、130℃で18時間加熱攪拌した。加熱攪拌後の溶液を室温に冷却した後、溶液中のMg濃度をICP分析により定量した。結果、溶存Mg濃度は3.2重量%、溶存Mg量は0.5g、Mg転化率は50%であった。結果を表1に示す。
【表1】
【0046】
[実験結果]
表1の結果が示すように、2,6-ジメチルピリジンを添加した場合(実施例1)、添加しない場合(実施例2)よりも溶解量(溶存Mg濃度)が1.5倍に増加した。また、TMAL濃度を高めることでMg転化率も増加することがわかった(実施例3)。
【0047】
<溶解組成物とDMACとの反応について>
<実施例4>
窒素置換を行った1.5 Lオートクレーブで反応を実施した。実施例1の方法で溶解したMg 4.1g (0.17 mol)を含むTMAL/n-ドデカン溶液(TMAL 190.8 g (2.6 mol)、n-ドデカン 193.6 g、TMAL:Mg(モル比)=15:1)にDMACを22.0 g (0.24 mol)を投入し、20℃で攪拌した。DMAC投入後すぐに温度が約10℃上昇し、反応は発熱が終了した2時間後を終点とした。反応1Hおよび27Al―NMR分析を行い、DMACが完全に消費されたことを確認した。その結果を図2に示す。また、反応前のMg溶解液のMg濃度は1.2重量%であったのに対して、反応後のMg濃度は0.06重量%まで減少し、反応系外にMgが排出されたことを確認した。
【0048】
<考察1>
<Mgの溶解反応について>
トリメチルアルミニウム(TMAL)に金属Mgが溶解することが分かった。これは従前には全く知られていない新しい知見であり、下記のような反応が進行しているものと推測する。
[化1]
[反応式1]
8TMAL + 3Mg → 3Mg(AlMe42 + 2Al
このMg溶解液にTHFを添加すると、白色固体が析出することを確認した。それを単離しNMR測定を行うと、1H-NMR分析では-1,4ppm付近にブロードなシグナル、27Al-NMR分析では160ppm付近にシャープなシグナルを与えた。この白色固体は配位したTHFとメチル基のシグナル強度より、Mg(AlMe42にTHFが配位した化合物と推測した(O. Michel. et al, Organometallics. 2009, 28, 4783-4790(非特許文献1))。この結果より、Mgの溶解指標にNMR分析を用いることができ、その結果を図2に示す。
【0049】
<考察2>
<溶解組成物とDMACとの反応について>
以上の通り、TMALにMgを溶解させた状態に、DMAC溶液を添加すると、室温で速やかに反応し(発熱を伴いながら)、TMALと塩化マグネシウムが生成した。この反応の経時変化をNMR分析で確認し、その経時変化を図2に示す。この反応は、以下に示すDMAC還元反応が進行しているものと推測する。
[化2]
[反応式2]
Mg(AlMe4)2 + 2Me2AlCl → 4Me3Al + MgCl2
【0050】
このように、MgをTMALに溶解させた溶液は、驚くべきことに、DMACのTMALへの還元反応を室温で数時間といった穏やかな反応で行うのに利用できることがわかる。
図1
図2