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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148932
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/30 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
G01B21/30 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057227
(22)【出願日】2022-03-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発行者名 公益社団法人自動車技術会 刊行物名 自動車技術会2021年春季大会学術講演会講演予稿集セッション番号42の185 発行日 令和3年5月21日 学会名 自動車技術会2021年春季大会 開催日 令和3年5月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】山本 尚岐
【テーマコード(参考)】
2F069
【Fターム(参考)】
2F069AA43
2F069AA60
2F069AA66
2F069BB24
2F069DD16
2F069DD19
2F069GG01
2F069GG04
2F069GG07
2F069HH09
2F069HH30
2F069MM21
(57)【要約】
【課題】実効的な路面の粗さを知得できる測定方法を提供する。
【解決手段】測定方法100は、路面の任意の領域である第1領域の三次元の凹凸形状を計測する第1ステップS1と、第1領域にゴムタイヤを押し付けて、ゴムタイヤが第1領域に接触する接触形状を測定する第2ステップS2と、三次元の凹凸形状と接触形状とに基づいて、第1領域に対するゴムタイヤの接触深さを計算する第3ステップS3と、接触深さに基づいて、三次元の凹凸形状のうち、ゴムタイヤと接触する範囲の粗さを計算する第4ステップS4とを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面の粗さを測定する方法であって、
前記路面の任意の領域である第1領域の三次元の凹凸形状を計測する第1ステップと、
前記第1領域にゴムタイヤを押し付けて、前記ゴムタイヤが前記第1領域に接触する接触形状を測定する第2ステップと、
前記三次元の凹凸形状と前記接触形状とに基づいて、前記第1領域に対する前記ゴムタイヤの接触深さを計算する第3ステップと、
前記接触深さに基づいて、前記三次元の凹凸形状のうち、前記ゴムタイヤと接触する範囲の粗さを計算する第4ステップとを含む、
測定方法。
【請求項2】
前記第3ステップは、
前記路面に平行な平面で前記3次元形状を切断した断面形状を計算するステップと、
前記接触形状と前記断面形状とが一致する前記3次元形状での高さを計算するステップとを含む、請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記第4ステップは、前記接触形状から計算した接触面積と前記断面形状から計算した断面積とを比較して、前記高さを計算するステップを含む、請求項2に記載の測定方法。
【請求項4】
前記第2ステップでは、前記路面と前記タイヤとの間に配置された感圧紙が用いられる、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の測定方法。
【請求項5】
前記第2ステップでは、複数の荷重での前記接触形状が測定される、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の測定方法。
【請求項6】
前記第2ステップでは、前記ゴムタイヤに前後力が付与される、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の測定方法。
【請求項7】
前記第2ステップでは、前記ゴムタイヤに横力が付与される、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の測定方法。
【請求項8】
前記第4ステップは、任意のカットオフ値を設定するステップを含む、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、路面の粗さを測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、路面の粗さを測定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-221856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
路面の凹凸には、ゴムタイヤと接触することなく、ゴムタイヤの各種性能に影響を及ぼさない凹凸が含まれている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1開示されている技術では、このようなゴムタイヤと接触しない範囲の凹凸も評価対象の一部となることから、ゴムタイヤの各種性能と路面の粗さとの関係を正確に把握することが困難であった。
【0006】
本開示は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、実効的な路面の粗さを知得できる測定方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、路面の粗さを測定する方法であって、
前記路面の任意の領域である第1領域の三次元の凹凸形状を計測する第1ステップと、
前記第1領域にゴムタイヤを押し付けて、前記ゴムタイヤが前記第1領域に接触する接触形状を測定する第2ステップと、
前記三次元の凹凸形状と前記接触形状とに基づいて、前記第1領域に対する前記ゴムタイヤの接触深さを計算する第3ステップと、
前記接触深さに基づいて、前記三次元の凹凸形状のうち、前記ゴムタイヤと接触する範囲の粗さを計算する第4ステップとを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の測定方法によれば、前記三次元の凹凸形状のうち、前記ゴムタイヤと接触する範囲の粗さを計算できる。従って、ゴムタイヤの各種性能に影響を及ぼす実効的な路面の粗さを知得できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の測定方法の一実施形態を示すフローチャートである。
図2図1の第1ステップの要領を示す斜視図である。
図3図2の第1ステップで計測された三次元の凹凸形状を示す斜視図である。
図4図1の第2ステップの要領を示す斜視図である。
図5図4の第2ステップで測定された接触形状の一例を示す図である。
図6】凹凸形状とゴムタイヤの接触深さとの関係を示す断面図である。
図7図1の第3ステップの詳細を示すフローチャートである。
図8図4の第2ステップの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の測定方法100のフローチャートである。
【0011】
測定方法100は、路面の粗さを測定する方法である。測定方法100は、路面の三次元の凹凸形状を計測する第1ステップS1と、タイヤの接触形状を測定する第2ステップS2と、タイヤの接触深さを計算する第3ステップと、路面の粗さを計算する第4ステップとを含んでいる。
【0012】
図2は、第1ステップS1を示している。第1ステップS1では、路面Rの任意の領域である第1領域R1の三次元の凹凸形状が計測される。路面Rには、現実の路面の他、路面を模した型が適用されうる。
【0013】
凹凸形状の計測には、3DスキャナーS等の三次元形状計測器が用いられる。3DスキャナーSとは、対象物にレーザー光Lを照射して、その反射光を電気信号に変換することにより、対象物の三次元形状を計測する。第1領域R1はタイヤの接地面よりも大きくてもよく、小さくてもよい。
【0014】
図3は、3DスキャナーSにて計測された第1領域R1の三次元の凹凸形状10の一部とそのA-A断面を示している。
【0015】
図4は、第2ステップS2を示している。第2ステップS2では、第1領域R1にゴムタイヤTが押し付けられ、ゴムタイヤTが第1領域R1に接触する接触形状20が測定される。
【0016】
ゴムタイヤTには、空気入りタイヤの他エアレスタイヤが適用される。ゴムタイヤTは、所定のリムに組み込まれる。ゴムタイヤTが空気入りタイヤの場合、ゴムタイヤTは、例えば、正規リムに組み込まれ、正規内圧が充填される。
【0017】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0018】
レース用のタイヤのように、適用される規格がない場合、正規リム、正規内圧及び正規荷重には、メーカにより推奨されるリム、空気圧及び荷重が適用される。
【0019】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。タイヤが乗用車用である場合、正規内圧は、例えば、180kPaである。
【0020】
第2ステップS2において、ゴムタイヤTは、路面Rの第1領域R1に正規荷重Fzで押し付けられる。
【0021】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば"最大負荷能力"、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY"である。タイヤが乗用車用の場合、正規荷重は、例えば、上記荷重等の88%に相当する荷重である。
【0022】
ゴムタイヤTは、路面Rに対して予め定められたキャンバー角で押し付けられる。キャンバー角は、例えば、ゴムタイヤTが装着される車両のホイールアライメント等に基づいて定められる。
【0023】
接触形状20の測定には、例えば、感圧紙Pが用いられる。感圧紙Pは、路面Rの第1領域R1を含む領域の上に載置され、感圧紙Pを挟んでゴムタイヤTが第1領域R1に押し付けられる。これにより、感圧紙PにゴムタイヤTの接触形状20が転写される。感圧紙Pを用いルことにより、接触形状20が容易に測定される。
【0024】
図5は、感圧紙Pを用いて測定された接触形状20の一例である。
【0025】
第3ステップS3では、三次元の凹凸形状10と接触形状20とに基づいて、第1領域R1に対するゴムタイヤTの接触深さ30が計算される。
【0026】
図6は、凹凸形状10とゴムタイヤTの接触深さ30との関係を示している。接触深さ30は、ゴムタイヤTが路面Rの第1領域R1に食い込んだ深さである。接触深さ30の計算には、例えば、コンピューター装置が用いられる。
【0027】
第4ステップS4では、接触深さ30に基づいて、三次元の凹凸形状10のうち、ゴムタイヤTと接触する範囲11の粗さが計算される。粗さの計算には、例えば、上記コンピューター装置が用いられる。
【0028】
図6において、三次元の凹凸形状10のうち、ゴムタイヤTと接触しない範囲12の形状(粗さ)は、ゴムタイヤTとの摩擦が生じないので、ゴムタイヤTの各種性能に影響を及ぼすことがない。単に凹凸形状10の全体の粗さを計算した場合、ゴムタイヤTとの摩擦が生じない範囲12を含む粗さが計算される。
【0029】
本開示では、第3ステップS3で計算された接触深さ30に基づいて、三次元の凹凸形状10のうち、ゴムタイヤTと接触する範囲11の粗さが計算される。従って、ゴムタイヤTの各種性能に影響を及ぼす実効的な路面の粗さを知得できるようになる。
【0030】
図7は、図1の第3ステップS3の詳細を示している。本実施形態の第3ステップS3は、路面に平行な平面で3次元形状を切断した断面形状を計算するステップS31と、接触形状20と断面形状とが一致する3次元形状での高さ40を計算するステップS32とを含む。
【0031】
ステップS31では、複数の断面形状が計算される。ステップS32では、ステップS31で計算された複数の断面形状のうち、接触形状20と最も一致する断面形状が特定され、その高さ40が計算される。
【0032】
高さ40は、凹凸形状10の基準位置からの高さである。基準位置を凹凸形状10のボトム(最も低い位置)とした場合、ボトムからの高さである。一方、凹凸形状10のボトムからピーク(最も高い位置)までの高さを凹凸形状の全高さHとした場合、接触深さ30と高さ40との和が全高さHとなる。
【0033】
第4ステップS4は、接触形状20から計算した接触面積と断面形状から計算した断面積とを比較して、高さ40を計算するステップを含む、のが望ましい。この場合、ステップS31で断面形状及びその面積である断面積が計算され、ステップS32で接触形状20から計算した接触面積と上記断面積とが比較される。これにより、簡素な処理で、高さ40が計算される。
【0034】
第2ステップS2では、複数の荷重での接触形状が測定されてもよい。これにより、複数の荷重での接触深さ30が計算され、各荷重ごとにゴムタイヤTの各種性能に影響を及ぼす実効的な路面の粗さを知得できるようになる。
【0035】
図8は、第2ステップS2の変形例を示している。第2ステップS2では、ゴムタイヤTに正規荷重Fzに加え、前後力Fxが付与されてもよい。これにより、加減速時のゴムタイヤTと接触する範囲11の粗さが計算される。
【0036】
第2ステップS2では、ゴムタイヤTに正規荷重Fzに加え、横力Fyが付与されてもよい。これにより、コーナリング時のゴムタイヤTと接触する範囲11の粗さが計算される。また、ゴムタイヤTに正規荷重Fzに加え、前後力Fx及び横力Fyが付与されてもよい。
【0037】
また、第4ステップS4は、任意のカットオフ値を設定するステップを含んでいてもよい。カットオフ値を適宜設定することにより、ミクロ粗さ及びマクロ粗さが適正に算出される。
【0038】
以上、本開示の測定方法100が詳細に説明されたが、本開示は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【0039】
[付記]
本開示は以下の態様を含む。
【0040】
[本開示1]
路面の粗さを測定する方法であって、
前記路面の任意の領域である第1領域の三次元の凹凸形状を計測する第1ステップと、
前記第1領域にゴムタイヤを押し付けて、前記ゴムタイヤが前記第1領域に接触する接触形状を測定する第2ステップと、
前記三次元の凹凸形状と前記接触形状とに基づいて、前記第1領域に対する前記ゴムタイヤの接触深さを計算する第3ステップと、
前記接触深さに基づいて、前記三次元の凹凸形状のうち、前記ゴムタイヤと接触する範囲の粗さを計算する第4ステップとを含む、
測定方法。
[本開示2]
前記第3ステップは、
前記路面に平行な平面で前記3次元形状を切断した断面形状を計算するステップと、
前記接触形状と前記断面形状とが一致する前記3次元形状での高さを計算するステップとを含む、本開示1に記載の測定方法。
[本開示3]
前記第4ステップは、前記接触形状から計算した接触面積と前記断面形状から計算した断面積とを比較して、前記高さを計算するステップを含む、本開示2に記載の測定方法。
[本開示4]
前記第2ステップでは、前記路面と前記タイヤとの間に配置された感圧紙が用いられる、本開示1ないし3のいずれかに記載の測定方法。
[本開示5]
前記第2ステップでは、複数の荷重での前記接触形状が測定される、本開示1ないし4のいずれかに記載の測定方法。
[本開示6]
前記第2ステップでは、前記ゴムタイヤに前後力が付与される、本開示1ないし5のいずれかに記載の測定方法。
[本開示7]
前記第2ステップでは、前記ゴムタイヤに横力が付与される、本開示1ないし6のいずれかに記載の測定方法。
[本開示8]
前記第4ステップは、任意のカットオフ値を設定するステップを含む、本開示1ないし7のいずれかに記載の測定方法。
【符号の説明】
【0041】
10 :凹凸形状
11 :範囲
20 :接触形状
30 :接触深さ
40 :高さ
100 :測定方法
Fx :力
Fy :横力
P :感圧紙
R :路面
R1 :第1領域
S1 :第1ステップ
S2 :第2ステップ
S3 :第3ステップ
S4 :第4ステップ
T :ゴムタイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8