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特開2023-148935木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料、並びにその製造方法、並びに木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料を用いた射出成形方法、並びにこの方法により製造された木粉成形品
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  • 特開-木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料、並びにその製造方法、並びに木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料を用いた射出成形方法、並びにこの方法により製造された木粉成形品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148935
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料、並びにその製造方法、並びに木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料を用いた射出成形方法、並びにこの方法により製造された木粉成形品
(51)【国際特許分類】
   B27N 3/02 20060101AFI20231005BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20231005BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20231005BHJP
   B27N 1/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B27N3/02 D
B29C45/00
B29C45/26
B27N1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057230
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】500066539
【氏名又は名称】株式会社コーヨー化成
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】志田 正人
(72)【発明者】
【氏名】三ツ橋 崇浩
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 修
(72)【発明者】
【氏名】高田 勝己
【テーマコード(参考)】
2B260
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
2B260AA12
2B260AA20
2B260BA15
2B260BA18
2B260CB01
2B260CD03
2B260DA01
2B260DA14
2B260DA17
2B260DB03
2B260DB04
2B260EA12
2B260EB02
2B260EB04
4F202AA01
4F202AB11
4F202AP02
4F202AP05
4F202AP14
4F202CA11
4F202CB01
4F202CN01
4F202CN21
4F206AA01
4F206AB11
4F206AR02
4F206AR06
4F206AR15
4F206JA07
4F206JF01
4F206JL02
4F206JN25
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】 射出成形に用いる材料自体を木粉を主体とし、石油由来の合成樹脂の利用を完全に排除乃至は可及的に少なくした、木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料、並びにその製造方法、並びに木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料を用いた射出成形方法、並びにこの方法により製造された木粉成形品を開発することを技術課題とした。
【解決手段】
木粉の基材に対し、粉体状の1又は複数種の要素材料から成る流動可塑支援材を混合した粉体混合材料であって、前記流動可塑支援材は、要素材料として、PLA(polylactic acid)を含み、これらが加熱環境下で混合され、冷却後、ケーキ状の混合物が粉砕処理を受けて紛粒体に加工されたものであることを特徴として成る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木粉の基材に対し、粉体状の1又は複数種の要素材料から成る流動可塑支援材を混合した粉体混合材料であって、
前記流動可塑支援材は、要素材料として、PLAを含み、これらが加熱環境下で混合され、冷却後、ケーキ状の混合物が粉砕処理を受けて紛粒体に加工されたものであることを特徴とする木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料。
【請求項2】
前記流動可塑支援材は、請求項1記載の要素材料に加えて、CNF、タルク、ロジン、ステアリン酸のいずれか一又は複数の要素材料を含むことを特徴とする請求項1記載の木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料。
【請求項3】
前記木粉の基材とPLAと他の流動可塑支援材料との混合比率は、
木粉材料が50~60%、
PLAが35~45%、
他の流動可塑支援材が2~10%であることを特徴とする請求項1または2記載の木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料。
【請求項4】
前記木粉の基材に対し混合する流動可塑支援材の要素材料として石油由来物質を混合する場合には、これを重量比2%以下とすることを特徴とする請求項1、2または3記載の木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料。
【請求項5】
木粉の基材に対し、乾燥粉体状の複数の要素材料から成る流動可塑支援材を混合した粉体混合材料を得る方法であって、
この方法は、混合容器内を加熱可能とした撹拌混合装置を用い、加熱環境とした混合容器内に木粉を投入し、
その後、混合比率10%以下の要素材料を投入して混合し、
一方、別途撹拌混合装置の混合容器内にPLAを投入して、PLAの加熱溶融を図り、
その後、加熱溶融状態のPLAと、前記木粉と要素材料との混合物とを混合し、ケーキ状の混合物を得てその後これを冷却し、
冷却後、ケーキ状の混合物を粉砕して粉粒状の混合物を得ることを特徴とする木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料の製造方法。
【請求項6】
前記混合比率10%以下の要素材料は、CNF、タルク、ロジン、ステアリン酸のいずれか一または複数であることを特徴とする請求項5記載の木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料の製造方法。
【請求項7】
木粉を基材とする射出成形可能な粉体材料を加工材料として用いた射出成形方法であって、
この方法は、材料準備工程と、
これに続く材料充填工程と
これに続く材料押出工程と、
これに続くキャビティー内成形工程とを含むものであり、
前記材料準備工程は、前記請求項1から4いずれか記載の粉体混合材料を準備するものであり、
前記材料充填工程は、粉体混合材料を加圧可能な押出チャンバーに充填すると共に、次工程の前段で粉体混合材料の流動可塑化を促す温度に粉体混合材料を加熱するものであり、
前記材料押出工程は、押出チャンバー内の粉体混合材料の流動可塑化を促す圧力下で加圧して、押出チャンバーと連通するキャビティー内に流動可塑化された粉体混合材料を押し出すものであり、
前記キャビティー内成形工程は、流動可塑化された粉体混合材料を、加熱環境として待機するキャビティー内に圧入し、所要時間経過後にキャビティー内に因んだ形状に成形するものであることを特徴とする木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料を用いた射出成形方法。
【請求項8】
前記押出工程における押出圧力は、1.5~2tであることを特徴とする請求項7記載の木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料を用いた射出成形方法。
【請求項9】
前記材料充填工程からキャビティー内成形工程に至る加熱温度は、180~230℃であることを特徴とする請求項7または8記載の木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料を用いた射出成形方法。
【請求項10】
前記請求項1から4いずれか記載の粉体混合材料を用い、前記請求項7から9いずれか記載の射出成形方法により製造されたことを特徴とする木粉成形品。
【請求項11】
前記木粉成形品の引張強度は、最大点_試験力400N以上であることを特徴とする請求項10記載の木粉成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木粉を含む乾燥粉体材料と、これを用いた射出成形製品を得るための一連の手法に関するものであって、特に木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料並びにその製造方法並びに粉体混合材料を用いた射出成形方法並びにこの射出成形方法により製造された木粉を基材に含む成形品に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近時、合成樹脂製品由来の廃棄物による海洋汚染をはじめとする環境汚染が地球規模で問題となっている。
このような問題に対しては、合成樹脂製品の利用を規制したり、合成樹脂製品を天然素材、無機質素材に代替え乃至は変更する試みがされている。
このような対応の一つとして木質素材を材料中に含み、環境負荷を低減させる試みもあるが、従来の手法は、これにより合成樹脂材料の使用量を減らすに留まり、依然として熱可塑材料として石油由来の合成樹脂に多く依存することには変わりがない(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-306325号公報
【特許文献2】特開2001-71367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような背景認識の下になされたものであって、射出成形に用いる材料自体を木粉を主体とし、石油由来の合成樹脂の利用を完全に排除乃至は可及的に少なくした、木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料、並びにその製造方法、並びに木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料を用いた射出成形方法、並びにこの方法により製造された木粉成形品を開発することを技術課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料は、木粉の基材に対し、粉体状の1又は複数種の要素材料から成る流動可塑支援材を混合した粉体混合材料であって、前記流動可塑支援材は、要素材料として、PLA(polylactic acid)を含み、これらが加熱環境下で混合され、冷却後、ケーキ状の混合物が粉砕処理を受けて紛粒体に加工されたものであることを特徴として成るものである。
【0006】
また請求項2記載の木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料は、前記要件に加え、前記流動可塑支援材は、請求項1記載の要素材料に加えて、CNF(Cellulose Nano Fiber)、タルク、ロジン、ステアリン酸のいずれか一又は複数の要素材料を含むことを特徴として成るものである。
【0007】
また請求項3記載の木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記木粉の基材とPLAと他の流動可塑支援材料との混合比率は、木粉材料が50~60%、PLAが35~45%、他の流動可塑支援材が2~10%であることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項4記載の木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料は、前記請求項1、2または3記載の要件に加え、前記木粉の基材に対し混合する流動可塑支援材の要素材料として石油由来物質を混合する場合には、これを重量比2%以下とすることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項5記載の木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料の製造方法は、木粉の基材に対し、乾燥粉体状の複数の要素材料から成る流動可塑支援材を混合した粉体混合材料を得る方法であって、この方法は、混合容器内を加熱可能とした撹拌混合装置を用い、加熱環境とした混合容器内に木粉を投入し、その後、混合比率10%以下の要素材料を投入して混合し、一方、別途撹拌混合装置の混合容器内にPLAを投入して、PLAの加熱溶融を図り、その後、加熱溶融状態のPLAと、前記木粉と要素材料との混合物とを混合し、ケーキ状の混合物を得てその後これを冷却し、冷却後、ケーキ状の混合物を粉砕して粉粒状の混合物を得ることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項6記載の木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料の製造方法は、前記請求項5記載の要件に加え、前記混合比率10%以下の要素材料は、CNF、タルク、ロジン、ステアリン酸のいずれか一または複数であることを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項7記載の木粉を基材とする射出成形可能な粉体材料を用いた射出成形方法は、木粉を基材とする射出成形可能な粉体材料を加工材料として用いた射出成形方法であって、この方法は、材料準備工程と、これに続く材料充填工程とこれに続く材料押出工程と、これに続くキャビティー内成形工程とを含むものであり、前記材料準備工程は、前記請求項1から4いずれか記載の粉体混合材料を準備するものであり、前記材料充填工程は、粉体混合材料を加圧可能な押出チャンバーに充填すると共に、次工程の前段で粉体混合材料の流動可塑化を促す温度に粉体混合材料を加熱するものであり、前記材料押出工程は、押出チャンバー内の粉体混合材料の流動可塑化を促す圧力下で加圧して、押出チャンバーと連通するキャビティー内に流動可塑化された粉体混合材料を押し出すものであり、前記キャビティー内成形工程は、流動可塑化された粉体混合材料を、加熱環境として待機するキャビティー内に圧入し、所要時間経過後にキャビティー内に因んだ形状に成形するものであることを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項8記載の木粉を基材とする射出成形可能な粉体材料を用いた射出成形方法は、前記請求項7記載の要件に加え、前記押出工程における押出圧力は、1.5~2tであることを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項9記載の木粉を基材とする射出成形可能な粉体材料を用いた射出成形方法は、前記請求項7または8記載の要件に加え、前記材料充填工程からキャビティー内成形工程に至る加熱温度は、180~230℃であることを特徴として成るものである。
【0014】
また請求項10記載の木粉成形品は、前記請求項1から4いずれか記載の粉体混合材料を用い、前記請求項7から9いずれか記載の射出成形方法により製造されたことを特徴として成るものである。
【0015】
また請求項11記載の木粉成形品は、請求項10記載の要件に加え、前記木粉成形品の引張強度は、最大点_試験力400N以上であることを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1から6記載の発明によれば木粉を基材とし、且つ石油由来材料を含まないか可及的に少なくした木粉を含む射出成形可能な粉体材料が得られる。
【0017】
また請求項7から9記載の発明によれば木粉を基材とし、且つ石油由来材料を含まないか可及的に少なくした木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料を用いた射出成形品の製造をすることができる。
【0018】
また請求項10及び11記載の発明によれば、木粉を基材とし且つ石油由来材料を含まないか可及的に少なくした木粉を含む成形品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料の製造方法の流れを示すフロー図である。
図2】本発明の木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料を用いた射出成形方法の流れを示すフロー図である。
図3】本発明の各実施例をまとめた仕様表である。
図4】本発明により製造された木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料を含む成形品の引張試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料、並びにその製造方法、並びに木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料を用いた射出成形方法、並びにこの方法により製造された木粉成形品の実施の形態は、以下述べる実施の形態を好ましい実施の形態の一例とすると共に、本発明の技術思想の中において種々の改変例をも含むものである。
【0021】
〈1.木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料〉
本発明の木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料は、木粉の基材に対し、粉体状の1又は複数種の要素材料から成る流動可塑支援材を添加した粉体混合材料であって、前記流動可塑支援材は、要素材料として、PLA(polylactic acid)を含み、これらが加熱環境下で混合され、冷却後、ケーキ状の混合物が粉砕処理を受けて紛粒体に加工されたものである。
【0022】
前記流動可塑支援材としては、極端に言えばPLA単独で用いてもよい。いずれにせよ本発明の狙いは、石油由来の合成樹脂を含まないか可及的に少なくすることを目的とするものであり、木粉に対して混合する流動可塑支援材としてPLA単独であっても当然に成立する。
もっともPLA以外の流動可塑支援材の要素材料として、CNF、タルク、ロジン、ステアリン酸のいずれか一又は複数の要素材料を含むこともできる。
【0023】
更にこれらの要素材料の混合パーセンテージとしては、前記木粉の基材とPLAと他の流動可塑支援材料との混合比率は、木粉材料が50~60%、PLA以外の流動可塑支援材(要素材料)が2~10%で適宜用いることができる。
以上述べた要素材料はすべていわゆる天然由来の素材であるが、これにごく少量の石油由来の材料を適用することもできる。即ち前記木粉の基材に対し混合する流動可塑支援材の要素材料として、石油由来物質を採用する場合、一例としてPEG11000、シリコンが考慮され、この場合には、これらの混合量を重量比2%以下とする。
【0024】
〈2.木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料の製造方法〉
次に本発明の木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料の製造方法は、図1に示すようなプロセスで実施される。
基本的には木粉の基材に対し、乾燥粉体状の複数の要素材料から成る流動可塑支援材を混合した粉体混合材料を得る方法であって、この方法は、混合容器内を加熱可能とした撹拌混合装置を用い(ステップS1)、加熱環境とした混合容器内に木粉を投入し(ステップS2)、その後、混合比率10%以下の要素材料を投入して混合する(ステップS3、S4)。
【0025】
一方、別途撹拌混合装置の混合容器内にPLAを投入して(ステップS5)、PLAの加熱溶融を図り(ステップS6)、その後、加熱溶融状態のPLAと前記木粉と要素材料との混合物とを混合し、木粉及びケーキ状の混合物を得て(ステップS7)、その後これを冷却し(ステップS8)、冷却後ケーキ状混合物を粉砕して粉粒状の混合物を得る(ステップS9)。
前記混合比率10%以下の要素材料は、CNF(Cellulose Nano Fiber)、タルク、ロジン、ステアリン酸のいずれか一または複数の要素材料である。またこれ以外にも、リグニン、油脂成分等が考慮し得る。
加えて石油由来材料としては、PEG11000、シリコン等が混合できるが、混合比率は2%以下が好ましく、より好ましくは1%以下である。
【0026】
〈3.射出成形方法〉
次に本発明の木粉を基材とする射出成形可能な粉体混合材料を用いた射出成形方法は、図2に示すようなプロセスで製造される。
この方法は、材料準備工程(ステップS10)と、これに続く材料充填工程(ステップS20)と、これに続く材料押出工程(ステップS30)と、これに続くキャビティー内成形工程(ステップS40)とを含む。
【0027】
まず材料準備工程(ステップS10)においては、請求項1から4いずれか記載の粉体混合物を準備する。
続く材料充填工程(ステップS20)は、粉体混合材料を加圧可能な押出チャンバーに充填すると共に、次工程の前段で粉体混合材料の流動可塑化を促す温度に粉体混合材料を加熱する。なお加熱温度は木粉を褐変化しない温度、即ち焦げ付かない温度とする。
続く材料押出工程(ステップS30)は、押出チャンバー内の粉体混合材料の流動可塑化を促す圧力下で加圧して、押出チャンバーと連通するキャビティー内に流動可塑化された原混合材料を押し出すものであり、流動可塑化を促す圧力とする。具体的には1.5~2t前後の圧力とされる。
【0028】
次に製品を形成することとなるキャビティー内成形工程(ステップS40)は、流動可塑化された粉体混合材料を、加熱環境として待機するキャビティー内に圧入し、所要時間経過後にキャビティー内に因んだ形状に成形する。
前記材料充填工程(ステップS20)からキャビティー内成形工程(ステップS40)に至る加熱温度は概ね同じ温度帯であり、先に述べたように木粉が褐変しない温度、即ち200℃を上回らない。
【0029】
〈4.木粉を基材に含む成形品〉
次に上記の製造方法により得られた本発明の木粉成形品は、例えばトレー状のものであり、粉体混合材料の重量を30gとしたとき135mm×50mm×3mmの成型品が得られた。
この木粉成形品の引張り強度(最大点_試験力)は、PLA混合割合によって影響されるが、概ね400N~1100Nの値を示し、実用上充分な強度が得られた。
【実施例0030】
本発明は天然素材率、即ち石油由来の材料をゼロまたは可及的に少なくしたものとすることが一つの目的であり、まず以下に示す実施例1、2のサンプル1からサンプル4については天然素材比率が100%である。
一方、実施例3におけるサンプル5、サンプル6は、石油由来の合成樹脂材料であるポリエチレングリコールであるPEG11000を1%添加したものであり、これにより天然材料比率は99%となっている。
また実施例4におけるサンプル7、サンプル8は、石油由来の合成樹脂材料であるシリコンを0.6%添加したものであり、これにより天然材料比率は99.4%となっている。
同様に実施例5におけるサンプル9、サンプル10は、石油由来の合成樹脂材料であるシリコンを1%添加したものであり、これにより天然材料比率は99%となっている。
以下、各実施例について説明するものであり、各実施例共にサンプルごとのブレ等を考慮して二つのサンプルを作成した。
なお、木粉を基材とする射出成形可能な混合粉体材料の製造方法については、各実施例の材料の混合比率等を説明した後、共通して説明する。
【実施例0031】
実施例1はサンプル1、2に示すとおりであって、基材となる木粉を54.9%と、ほぼ半分を超える量とすると共に、成形に寄与する割合の高いPLA110を39.1%混合しており、更に天然由来素材の要素材料たるCNFが1g、0.2%、タルクが10g、2%、ロジンが10g、2%、ステアリン酸が10g、2%混合されており、石油由来素材の要素材料を含まないものである。結果的に天然素材率は100%であり、木粉の混合比率は54.9%、PLA110以外の要素材料の混合比率は6.1%となっている。
【実施例0032】
次に実施例2はサンプル3、4に示すとおりであって、PLA110の混合比率を、実施例1のサンプル1、2よりも少なくしたものである。具体的には、木粉を293g、54.9%に対し、PLA110を200g、37.5%に調製した。なお天然由来素材の要素材料たるCNF、タルク、ステアリン酸の混合量は実施例1と変わらないが、総重量が534gと増しているため、混合比率については若干低下している。更にロジンは20gに増加されており、混合比率は3.7%となっている。
なお先に述べた実施例1と同様に、実施例2についても天然素材比率は100%である。またPLA110以外の要素材料の混合比率は7.7%である。
【実施例0033】
次に実施例3はサンプル5、6に示すとおりであって、石油由来素材の要素材料たるPEG11000を可及的に少なく含有するものである。具体的には、木粉を275g、54.9%に対し、PLA110を200g、39.9%に調製した。なお天然由来素材の要素材料としてCNF、タルク、ステアリン酸を含有するが、ロジンは含まれないものとした。また石油由来素材の要素材料たるPEG11000が5g、1%添加されており、これにより天然材料比率は99%となっている。またPLA110以外の要素材料の混合比率は5.2%である。
【実施例0034】
次に実施例4はサンプル7、8に示すとおりであって、石油由来素材の要素材料たるスリコンを可及的に少なく含有するものである。具体的には、木粉を275g、56.2%に対し、PLA110を200g、40.9%に調製した。なお天然由来素材の要素材料としてCNF、タルクを含有するが、ロジン、ステアリン酸は含まれないものとした。また石油由来素材の要素材料たるシリコンが3g、0.6%添加されており、これにより天然材料比率は99.4%となっている。
またPLA110以外の要素材料の混合比率は2.9%である。
【実施例0035】
次に実施例5はサンプル9、10に示すとおりであって、シリコンの添加量を5g、1.0%とする以外、他の成分の量は実施例4と同一とされている。これにより天然材料比率は99.0%となっている。
またPLA110以外の要素材料の混合比率は3.2%である。
【0036】
〔製造方法の実施例〕
これら実施例1から5のそれぞれ材料の製造方法の実施例について説明すると、次のとおりである。いずれも同様のプロセスを経るものであり、一例としてこのプロセスにおいてはPEG11000を投入した実施例である。したがってPEG11000を材料として含まない場合この工程を排除して製造が行われた。
【0037】
まずこの製造に用いる撹拌混合装置についてその概略を説明すると、このものは加熱可能な撹拌容器内に撹拌ブレードが設けられ、撹拌ブレードの回転により加工資材の粉砕を行いつつ、撹拌・混合が行われる装置である。典型的にはヘンシェルミキサー(商品名)と称される撹拌装置を用いることが好ましい。
以下、図1に示すフロ-チャートに基づいて説明すると、まず、撹拌容器そのものを加熱し、5分程度の加熱によりほぼ100℃の環境下に設定される(ステップS1)。
【0038】
次いで木粉を必要量計量し投入する(ステップS2)ものであり、木粉は一例として500メッシュのふるいをパスした粒度である。もちろん木粉自体は適宜の樹種、木質廃材等の木粉が利用可能である。木粉投入後100℃の温度環境を保持したまま10分間撹拌し、木粉の更に精細化を図った。
【0039】
その後CNF、タルク、ロジン、ステアリン酸のいずれか一又は複数を必要量投入し、100℃の温度環境を保持したまま10分間撹拌する(ステップS3、S4)。
【0040】
このようにして混合された材料を一旦、撹拌容器から取り出し、次いで空の撹拌容器を200度の温度設定で5分間保持した後、PLA110を必要量投入し、200℃の温度環境を保持したまま120分撹拌を継続し、PLA110の溶融を図る(ステップS5、S6)。
その後、既に前ステップS4で撹拌・混合されていた要素材料を全量投入して200℃の温度環境を保持したまま60分間、撹拌・混合をする(ステップS7)。
その後、撹拌混合装置のヒーターを停止し、ケーキ状となった混合材料を冷却する(ステップS8)。
【0041】
その後、ケーキ状となった混合材料を、あらためて粉粒状に粉砕し(ステップS9)、本発明の木粉を基材とする射出成形可能な混合粉体材料を得た。
前記実施例1から5として示した木粉を基材とする射出成形可能な混合粉体材料の製造は、上記のプロセスによって成された。
【0042】
〔射出成型方法の実施例〕
次に木粉を基材とする射出成形可能な混合粉体材料を用いた射出成形方法の実施例について図1に示すフロ-チャートに基づいて説明する。この射出成形手法そのものは、すべて同一条件で行われた。即ち、材料準備工程S10では前記実施例1~実施例5の木粉を基材とする射出成形可能な混合粉体材料が用意された。
材料充填工程S20では混合粉体材料を、加熱保持可能な押し出しチャンバーに充填する。なお工業的に連続加工する場合にはいわゆるエクストルーダ等を用いることができるが、本発明の実施の段階ではシリンダタイプの押出チャンバーに充填した。このとき押出チャンバーは一定の温度に材料が加熱されており、加熱温度は180~230℃に設定されている。
なおこの温度は木粉を基材としていることに因み、木粉自体が褐変しない程度、いわゆる焦げ目がつかない程度の温度に設定しておくことが肝要である。
材料押出工程S30における押出圧力は、一例として1.8tとしたが、製造に当っての経験的な試行錯誤の中では1.5~2t程度の圧力で射出成形可能な押出が図れることが確認された。
なお前記加熱温度は180~230℃であるが、これは概ねキャビティー内成形工程S40において射出装置のキャビティー内に材料を送り出すまで、この温度を維持した。
【0043】
〔成型品の実施例〕
このようにして得られた成形品は一例として縦135mm、横50mm、厚さ3ミリ程度のトレー状の部材とされた。そして、その底部平板部分を切り抜いて引張試験に供するサンプルを製造した。
このサンプルはJIS:K7168に規定するサンプルであって、縦135mm、横20mm、厚さ3mmのものを切り出し、サンプル片とした。引張試験の結果は図4に示すように実施例1のサンプル1、2及び実施例3のサンプル5、6が概ね引張強度500ニュートン以上の値を示しており、実用上充分な引張強度を呈していることが確認された。もちろん実施例2のサンプル3、4についても引張り強度400ニュートン以上の値を示し、実用上利用できる範囲であることが確認されている。
また実施例4のサンプル 並びに実施例5のサンプル では、引張強度700ニュートン以上の値を示しており、実用上、余裕がある引張強度を呈していることが確認された。
このような結果から考察すると、やはりPLAの混合割合が低下するにしたがって、引張強度の他、全体の強度も低下することが確認された。
【符号の説明】
【0044】
S1 ステップ(撹拌容器加熱)
S2 ステップ(木粉投入・撹拌)
S3 ステップ(要素材料投入)
S4 ステップ(撹拌・混合)
S5 ステップ(PLA投入)
S6 ステップ(加熱溶融)
S7 ステップ(攪拌・混合)
S8 ステップ(ケーキ冷却)
S9 ステップ(粉砕)
S10 ステップ(材料準備工程)
S20 ステップ(材料充填工程)
S30 ステップ(材料押出工程)
S40 ステップ(キャビティー内成形工程)
図1
図2
図3
図4