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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148939
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】スリットダイ
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/02 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B05C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057234
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前田 和紀
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 敦
【テーマコード(参考)】
4F041
【Fターム(参考)】
4F041AA12
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA10
4F041BA13
4F041CA03
4F041CA13
4F041CA16
(57)【要約】
【課題】幅方向にストライプ状に形成した塗膜の幅方向における形状を従来よりも均一にすることができるスリットダイを提供することを目的としている。
【解決手段】塗布液を基材に塗布するスリットダイであって、基材の幅方向に長く形成され、塗布液を溜める空間であるマニホールドと、前記幅方向に配列されるよう前記マニホールドに複数設けられ、前記マニホールドに塗布液を供給する供給口と、前記マニホールドに繋がった前記幅方向に長いスリットと、前記マニホールドから前記スリットを経由して塗布液を吐出する吐出口と、前記幅方向において前記スリットを複数の空間に仕切り、小スリットを形成するシムと、前記幅方向において前記マニホールドを複数の空間に仕切り、小マニホールドを形成する仕切部と、を備えており、前記仕切部は、各々の小マニホールドに少なくとも1つの前記供給口が位置する、かつ1つの前記小スリットに対して1つの前記小マニホールドが繋がるように前記マニホールドを仕切る位置に配置される構成とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液を基材に塗布するスリットダイであって、
基材の幅方向に長く形成され、塗布液を溜める空間であるマニホールドと、
前記幅方向に配列されるよう前記マニホールドに複数設けられ、前記マニホールドに塗布液を供給する供給口と、
前記マニホールドに繋がった前記幅方向に長いスリットと、
前記マニホールドから前記スリットを経由して塗布液を吐出する吐出口と、
前記幅方向において前記スリットを複数の空間に仕切り、小スリットを形成するシムと、
前記幅方向において前記マニホールドを複数の空間に仕切り、小マニホールドを形成する仕切部と、を備えており、
前記仕切部は、各々の小マニホールドに少なくとも1つの前記供給口が位置する、かつ1つの前記小スリットに対して1つの前記小マニホールドが繋がるように前記マニホールドを仕切る位置に配置されることを特徴とするスリットダイ。
【請求項2】
前記仕切部は、隣接する各々の前記小マニホールド間を前記幅方向において繋ぐ連通部を形成するように形成されており、
前記連通部は、前記供給口から各々の前記小マニホールドに供給された塗布液が、前記小マニホールドから前記小スリットを経由して前記吐出口に向かうまでの圧力損失よりも前記小マニホールドから前記連通部を経由して隣接する前記小マニホールドに向かうまでの圧力損失の方が大きくなるよう形成されることを特徴とする請求項1に記載のスリットダイ。
【請求項3】
前記小マニホールドの少なくとも1つに、前記マニホールドに存在するエアを排気する排気手段を設けることを特徴とする請求項2に記載のスリットダイ。
【請求項4】
前記マニホールドは、前記仕切部を取り付ける仕切部取り付け部を複数備えており、
前記仕切部は、各々の前記仕切部取り付け部に対して着脱可能に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のスリットダイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に塗布液を塗布するスリットダイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電池用極板は、アルミ箔や銅箔などの基材の表面に活物質、バインダー、導電助剤を溶媒により混合させたスラリー(以下、塗布液と呼ぶ)を塗布・乾燥させることで製造されている。
【0003】
この製造過程における塗布装置は、基材をロールツーロール方式で連続搬送させながら、スリットダイにより塗布液を吐出させることによって、基材に塗布液を塗布して塗膜を形成している(たとえば、特許文献1)。そして、塗布形態として基材の幅方向にわたって幅広で塗布液を塗布する1条塗布や、基材の幅方向にストライプ状に塗布液を塗布する多条塗布(以下、ストライプ塗布と呼ぶ)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-041501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のスリットダイでは、幅方向にストライプ状に形成した塗膜の幅方向における形状が均一にならない場合がある。
【0006】
従来のスリットダイは、図4(a)および図4(b)に示すように基材960(図5を参照)の幅方向(以下、幅方向と呼ぶ)に長く形成され、塗布液を溜める空間であるマニホールド910と、幅方向に配列されるようマニホールド910に複数設けられ、マニホールド910に塗布液を供給する供給口950と、マニホールド910に繋がった幅方向に長いスリット920と、マニホールド910からスリット920を経由して塗布液を吐出する吐出口930と、を有している。このスリットダイ900によりストライプ塗布を行うために一般的には、図4(a)および図4(b)に示すように幅方向においてスリット920を複数の空間に仕切るシム940をスリット920に設けて、シム940により幅方向においてスリット920を仕切ることによって、基材960に幅方向にストライプ状の塗布液を塗布している。
【0007】
このようなスリットダイ900では、複数の供給口950のそれぞれからマニホールド910に供給された塗布液が、シム940により仕切られたスリット920の各々の空間に流入し、吐出口930から吐出される。ここで、図4(b)に示すように複数の供給口950のうちシム940の近傍に位置する供給口950から供給された塗布液は、シム940がある部分を避けるようにして幅方向に向かって流れる。この塗布液と、別の供給口950から供給されてスリット920の隣接する各々の空間に向かって流れる塗布液がマニホールド910内で衝突する。これにより、各々の供給口950から供給されてマニホールド910を介してスリット920に向かって流れる塗布液の流れる方向が変化し、シム940により仕切られたスリット920の各々の空間に流入する塗布液の量にばらつきが生じる。
【0008】
その結果、シム940により仕切られたスリット920の各々の空間に流入した塗布液が、吐出口930から吐出されて基材960に塗膜970を形成すると、図5に示すように塗膜970の幅方向における形状にばらつきが生じてしまう。
【0009】
本発明は、上記問題を鑑みてされたものであり、幅方向にストライプ状に形成した塗膜の幅方向における形状を従来よりも均一にすることができるスリットダイを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明のスリットダイは、塗布液を基材に塗布するスリットダイであって、基材の幅方向に長く形成され、塗布液を溜める空間であるマニホールドと、前記幅方向に配列されるよう前記マニホールドに複数設けられ、前記マニホールドに塗布液を供給する供給口と、前記マニホールドに繋がった前記幅方向に長いスリットと、前記マニホールドから前記スリットを経由して塗布液を吐出する吐出口と、前記幅方向において前記スリットを複数の空間に仕切り、小スリットを形成するシムと、前記幅方向において前記マニホールドを複数の空間に仕切り、小マニホールドを形成する仕切部と、を備えており、前記仕切部は、各々の小マニホールドに少なくとも1つの前記供給口が位置する、かつ1つの前記小スリットに対して1つの前記小マニホールドが繋がるように前記マニホールドを仕切る位置に配置されることを特徴としている。
【0011】
上記スリットダイによれば、仕切部を有し、この仕切部が、1つの小スリットに対して1つの小マニホールドが繋がるように基材の幅方向においてマニホールドを仕切ることによって、塗布液が隣接する小マニホールド間を移動することを防ぐため、マニホールド内で塗布液が衝突することを抑制することができる。そのため、塗布液が基材の幅方向において均一になるよう各々の小マニホールドから各々の小スリットに流入し、吐出口から吐出される。これにより、各々の小スリットを介して吐出口から吐出される塗布液の基材の幅方向におけるばらつきを抑制することができる。したがって、幅方向にストライプ状に形成した塗膜の幅方向における形状を従来よりも均一にすることができる。
【0012】
また、前記仕切部は、隣接する各々の前記小マニホールド間を前記幅方向において繋ぐ連通部を形成するように形成されており、前記連通部は、前記供給口から各々の前記小マニホールドに供給された塗布液が、前記小マニホールドから前記小スリットを経由して前記吐出口に向かうまでの圧力損失よりも前記小マニホールドから前記連通部を経由して隣接する前記小マニホールドに向かうまでの圧力損失の方が大きくなるよう形成される構成としてもよい。
【0013】
また、前記小マニホールドの少なくとも1つに、前記マニホールドに存在するエアを排気する排気手段を設ける構成としてもよい。
【0014】
これら構成によれば、塗布液が隣接するマニホールド間を移動することを抑制しつつ、仕切部により形成された連通部を介して各々の小マニホールドからエアを排気させることができる。
【0015】
また、前記マニホールドは、前記仕切部を取り付ける仕切部取り付け部を複数備えており、前記仕切部は、各々の前記仕切部取り付け部に対して着脱可能に形成されている構成としてもよい。
【0016】
この構成によれば、基材に形成する塗膜の幅の調節など、塗布条件に応じた塗布液の塗布が可能となるよう、仕切部の位置を適宜変更することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のスリットダイによれば、幅方向にストライプ状に形成した塗膜の幅方向における形状を均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態におけるスリットダイを備える塗布装置を概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態におけるスリットダイを説明するための図である。
図3】本発明の一実施形態におけるスリットダイにより形成された塗膜を示す図である。
図4】従来のスリットダイを説明するための図である。
図5】従来のスリットダイにより形成された塗膜を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態における塗布装置について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、水平方向をX軸方向、Y軸方向と表現し、XY平面と垂直な方向(つまり、鉛直方向)をZ軸方向と表現する。
【0020】
図1は、本実施形態におけるスリットダイ2を備える塗布装置100を概略的に示す図である。図2は、本実施形態におけるスリットダイ2を説明するための図であり、図2(a)は図1のa矢視の断面図、図2(b)は図1のb矢視の断面図である。図3は、本実施形態におけるスリットダイ2により形成された塗膜Mを示す図である。
【0021】
本実施形態における塗布装置100は、図1に示すように基材Wを搬送する搬送手段1と、基材Wに塗布液を塗布するスリットダイ2と、スリットダイ2に塗布液を供給する供給手段3と、を備えている。
【0022】
本実施形態における塗布装置100は、搬送手段1により搬送される基材Wの所定面にスリットダイ2により塗布液を塗布し、塗膜M(図3を参照)を形成する。
【0023】
本実施形態における基材Wは、リチウムイオン電池などの電池の電池用極板となる金属箔であり、正極を構成する場合はアルミニウム箔などが用いられ、負極を構成する場合は銅箔などが用いられる。この基材Wは、一方向に長い帯状のシートであり、搬送手段1により搬送される。
【0024】
本実施形態における塗布液は、たとえば、活物質、バインダー、導電助剤、および溶媒を含むスラリーのことであり、リチウムイオン電池などの電池の電池用極板の材料(所謂、電極材料)として用いられる。この塗布液を基材Wに塗布することで、基材W上に塗膜Mが形成される。
【0025】
本実施形態における搬送手段1は、基材Wを搬送するためのものであり、複数のロールが回転することにより基材Wを搬送するロールツーロール方式を採用している。この搬送手段1による基材Wの搬送速度は、図示しない制御部により制御される。この制御部はたとえば、汎用のコンピューターである。なお、本実施形態では、塗布液を塗布する場所に基材Wを案内する塗布ロール11のみを図1に示している。
【0026】
また、塗布ロール11は、スリットダイ2と対向し、スリットダイ2による塗布液の塗布時に後述する吐出口23と所定の間隔を空けるよう配置される。そのため、スリットダイ2と一定の間隔を保ちながら基材Wを搬送することができる。
【0027】
本実施形態におけるスリットダイ2は、搬送される基材Wに塗布液を塗布して塗膜Mを形成するためのものである。スリットダイ2は、基材Wの幅方向(図1におけるY軸方向)に沿って長く形成されている。ここで、前述した塗布ロール11が、塗布部2に対して、塗布ロール11の回転軸方向と、塗布部2の幅方向とが平行になるよう所定の間隔を空けて配置される。なお、以下の説明では、基材Wの幅方向を幅方向と呼ぶ。
【0028】
また、本実施形態におけるスリットダイ2は、図1に示すように先細り形状である第1のリップ24aを有する第1の分割体24と、先細り形状である第2のリップ25aを有する第2の分割体25とを、これらの間にシム板26を挟んで組み合わせた構成からなる。
【0029】
そして、スリットダイ2の内部には、幅方向に長く塗布液を溜める空間からなるマニホールド21と、このマニホールド21と繋がった幅方向に広いスリット22が形成され、第1のリップ24aと第2のリップ25aとの間には、スリット22の開放端である吐出口23が形成されている。すなわち、第1のマニホールド21と吐出口23とは、スリット22を経由して繋がっている。
【0030】
本実施形態におけるマニホールド21は、図1および図2(a)に示すように幅方向に延びる略円筒形状に形成されている。このマニホールド21に後述する供給手段3により塗布液が供給される。
【0031】
また、マニホールド21と繋がったスリット22の寸法は、シム板26の内寸L(図2(b)を参照)によって決定される。そして、スリットダイ2はスリット22の寸法と略同一の幅方向寸法の塗布液を基材W上に塗布する。なお、シム板26の厚みを変更することにより、マニホールド21内部の圧力を調節することができ、この調節によって様々な厚みを有する塗膜Mを基材W上に形成することができる
【0032】
また、吐出口23は、塗布ロール11と基材Wを挟んで対向している。すなわち、吐出口23は基材Wの表面側で基材Wと対向している。これらの構成により、スリットダイ2は、吐出口23と基材Wとの間隔を一定に保った状態で、マニホールド21に溜められた塗布液をスリット22を経由して吐出口23から基材Wに吐出する。
【0033】
本実施形態における供給手段3は、スリットダイ2に塗布液を供給するためのものである。供給手段3は、図1および図2(a)に示すように塗布液を貯留するタンク31と、タンク31とスリットダイ2を接続する供給路32と、スリットダイ2の外部から供給路32をマニホールド21へ繋ぐ供給口33と、塗布液を送液する図示しないポンプと、を有している。
【0034】
本実施形態における供給口33は、図2(a)および図2(b)に示すように幅方向に配列するようマニホールド21の底部に複数形成されている。これら各々の供給口33に供給路32が接続されている。すなわち、供給手段3は、複数箇所からマニホールド21に塗布液を供給する。なお、各々の供給口33に接続される供給路32は、各々の供給口33に対して1つずつ設けてもよいし、1つの供給路32がタンク31から各々の供給口33に向かうまでの間に分岐したものであってもよい。
【0035】
また、ポンプは、タンク31から供給路32を介して供給口33に送液する塗布液の流量を調節可能になっている。このポンプは、本実施形態では、タンク31から各々の供給口33へ送液する塗布液の流量を調節できるように、各々の供給口33に接続された供給路32のそれぞれに設けられている。これにより、マニホールド21に供給する塗布液の流量を幅方向にわたって調節することができる。
【0036】
また、本実施形態におけるスリットダイ2は、幅方向にストライプ状の塗膜Mを形成する。ここでいう、幅方向にストライプ状の塗膜Mを形成するとは、図3に示すように塗膜Mが形成された複数の塗布領域Tと、複数の塗布領域Tの間に塗膜Mが形成されていない不塗布領域Nを基材Wが有するよう、基材Wの幅方向(図3におけるY軸方向)に塗膜Mを形成することである。
【0037】
これを実現するために本実施形態におけるスリットダイ2は、図2(a)および図2(b)に示すように幅方向においてスリット22を複数の空間に仕切るシム4を備えている。
【0038】
本実施形態におけるシム4は、図2(b)に示すようにマニホールド21とスリット22の境目であるスリット22の始端から解放端まで延びるブロックであり、図2(a)に示すように前述したシム板26と高さ方向において同一の厚みを有している。本実施形態では、シム4を2つ用いる例について説明する。これら2つのシム4が幅方向に配列するよう第1の分割体24と第2の分割体25とで挟み込むことで、幅方向においてスリット22を複数の空間に仕切った状態で固定される。
【0039】
これにより、図2(a)および図2(b)に示すように幅方向においてスリット22の空間が小スリット41a、小スリット41b、および小スリット41cに仕切られる。
【0040】
このような状態で、供給手段3によりマニホールド21に塗布液を供給すると、小スリット41a、小スリット41b、および小スリット41cのそれぞれに塗布液が流入し、各々の開放端である吐出口23から塗布液が塗布される。すなわち、シム4がない部分から塗布液が塗布され、シム4がある部分からは塗布液が塗布されない。そのため、基材W上に幅方向にストライプ状の塗膜Mを形成することができる。
【0041】
なお、幅方向におけるシム4の寸法を変更することで、塗膜Mの幅を調節することができる。すなわち、基材Wの幅方向における塗布領域Tと不塗布領域Nの幅を調節することができる。また、シム4を固定する位置を変更する、すなわち、シム4を第1の分割体24と第2の分割体25とで挟み込む位置を変更することによって、塗膜Mの幅を調節することができる。すなわち、基材Wの幅方向における塗布領域Tと不塗布領域Nの幅を調節することができる。
【0042】
これら構成により、スリットダイ2は、幅方向にストライプ状の塗膜Mを基材W上に形成することができる。
【0043】
また、本実施形態におけるスリットダイ2は、図2(a)および図2(b)に示すように幅方向においてマニホールド21を複数の空間に仕切る仕切部5を備えている。
【0044】
本実施形態における仕切部5は、マニホールド21の形状に合わせて形成されたブロックである。なお、本実施形態におけるマニホールド21は、前述したように幅方向に延びる略円筒形状に形成されている。この略円筒状のマニホールド21を幅方向において複数の空間に仕切るために仕切部5は、略円柱状に形成され、図2(a)および図2(b)に示すようにこの円柱の外周面とマニホールド21の内周面とが対向するよう配置される。なお、仕切部5の幅方向の寸法は、前述したシム4の幅方向の寸法よりも小さい寸法、または同一の寸法になるよう形成されている。
【0045】
仕切部5を配置する数と配置する位置は、シム4の配置する数と配置する位置に連動している。本実施形態では、仕切部5をマニホールド21に2つ配置する。これら2つの仕切部5を図2(a)および図2(b)に示すようにマニホールド21の幅方向に配列するよう配置することによって、幅方向においてマニホールド21の空間が小マニホールド51a、小マニホールド51b、および小マニホールド51cに仕切られる。
【0046】
なお、本実施形態では、図2(a)および図2(b)に示すように1つの小スリット41に対して1つの小マニホールド51が繋がるよう、仕切部5を配置してマニホールド21を仕切っている。すなわち、仕切部5は、マニホールド21から吐出口23に塗布液が向かって流れる方向(図2(a)におけるX軸方向)で、シム4と対向するよう配置される。なお、吐出口23の方向から見て、シム4により仕切部5が隠れるように仕切部5を配置することが好ましい。これにより、本実施形態では、小スリット41aと小マニホールド51a、小スリット41bと小マニホールド51b、小スリット41cと小マニホールド51cが繋がる。また、仕切部5は、各々の小マニホールド51に少なくとも1つの供給口33が位置するよう配置する。
【0047】
また、本実施形態における仕切部5は、図2(a)および図2(b)に示すように隣接する小マニホールド51間を幅方向において繋ぐ連通部52を形成するように形成されている。本実施形態における連通部52は、隙間であり、以下の説明では隙間部52と呼ぶ。具体的には、仕切部5が、前述したマニホールド21の内周面と仕切部5の外周面の一部が所定の間隔を空けて対向するような形状に形成される。これにより、マニホールド21の内周面と仕切部5の外周面の一部に隙間部52が形成され、隣接する小マニホールド51間、すなわち、小マニホールド51a、小マニホールド51b、および小マニホールド51cが隙間部52を介して繋がる。ここで、供給手段3が有するポンプによって、タンク31から各々の供給口33に供給する塗布液の流量を各々の小マニホールド51で均等になるよう調節する。すなわち、各々の小マニホールド51における塗布液の量が均一になる。
【0048】
ここで、隙間部52は、供給口33から各々の小マニホールド51に供給された塗布液が、小マニホールド51から小スリット41を経由して吐出口23に向かうまでの圧力損失よりも、小マニホールド51から隙間部52を経由して隣接する小マニホールド51に向かうまでの圧力損失の方が大きくなるよう形成される。
【0049】
具体的には、少なくとも隙間部52を形成するマニホールド21の内周面と仕切部5の外周面の隙間の断面積が小スリット41の断面積よりも小さく形成される。これにより、隙間部52に塗布液が流入しにくくなり、隣接する小マニホールド51間で塗布液が移動することを抑制できる。
【0050】
なお、隙間部52の寸法、すなわちマニホールド21の内周面と仕切部5の外周面との間隔は、小さくなるほどよく、好ましくは隣接する小マニホールド51間の塗布液の移動を最小限に抑制、かつエアの移動を可能にする程度の寸法であるとよい。より好ましくは、前述した隙間部52の寸法が0.5~1.0mm程度の寸法であるとよい。なお、ここでいうエアは、空気のことであり、タンク31からマニホールド21に塗布液が到達するまでに、図示しない供給路32の継手やポンプの図示しない摺動部材から供給路32に侵入してマニホールド21に混入する。
【0051】
このように隙間部52が形成されることで、仕切部5は隣接する小マニホールド51間を完全に仕切っていないが、上記の構成により隣接する小マニホールド51間の塗布液の移動を抑制することができる。そのため、本実施形態では、隙間部52が形成された状態であっても仕切部5により幅方向においてマニホールド21を複数の小マニホールド51に仕切っているものとする。
【0052】
また、本実施形態におけるスリットダイ2は、図1および図2(a)に示すようにマニホールド21に存在するエアを排気する排気手段6を備えている。この排気手段6は、図2(a)に示すようにマニホールド21の上面に少なくとも1つ設けられ、マニホールド21に存在するエアを外部に排気する排気孔61を有している。なお、排気孔61は、仕切部5により仕切られた複数の小マニホールド51のいずれか1つと連通するよう設けられている。
【0053】
この排気孔61が、マニホールド21の上面に設けられることによって、浮力によりマニホールド21の上面に移動したエアを外部に排気する。
【0054】
ここで、前述した隙間部52により隣接する各々の小マニホールド51間が繋がっているため、各々の小マニホールド51に存在するエアが隣接する小マニホールド51間を移動して排気孔61から排気される。また、本実施形態では、隙間部52をマニホールド21の上面の近傍に形成するよう仕切部5を形成している。これにより、浮力により各々の小マニホールド51の上面に移動するエアを隙間部52を介して排気孔61から排気しやすくなる。
【0055】
また、本実施形態におけるスリットダイ2は、図2(b)に示すように仕切部5を取り付けるための仕切部取り付け部53を備えている。本実施形態における仕切部取り付け部53は、幅方向においてマニホールド21の底面に配列するように設けられた溝である。
【0056】
ここで、仕切部5の外周面には、図2(a)および図2(b)に示すように仕切部取り付け部53に篏合する突起部54が形成されている。この突起部54を仕切部取り付け部53に篏合することで、仕切部5を仕切り部取り付け部53に取り付けることができる。すなわち、仕切り部35は着脱可能になっている。
【0057】
そして、第1の分割体24と第2の分割体25とで、シム板26およびシム4を挟み込むときに、シム4の配置に合わせて、複数の仕切部取り付け部53のいずれかに突起部54を篏合させて仕切部5を取り付ける。これにより、仕切部5をシム4の配置に合わせてマニホールド21に取り付けることができる。
【0058】
このように上記実施形態におけるスリットダイ2によれば、幅方向にストライプ状に形成した塗膜Mの幅方向における形状を従来よりも均一にすることができる。
【0059】
具体的に説明する。従来のように幅方向においてマニホールド21を仕切ることなく基材W上に幅方向にストライプ状の塗膜を形成する場合、図4(a)および図4(b)に示すように複数の供給口950のそれぞれからマニホールド910に供給された塗布液が、シム940により分割されたスリット920の各々の空間に流入し、吐出口930から吐出される。ここで、図4(b)に示すように複数の供給口950のうちシム940の近傍に位置する供給口950から供給された塗布液は、シム940がある部分を避けるように幅方向に向かって流れる。
【0060】
この幅方向に向かって流れる塗布液と、別の供給口950から供給されて分割されたスリットの各々の空間に向って流れる塗布液がマニホールド910内で衝突する。そのため、各々の供給口950から供給された塗布液の流れる方向がマニホールド910からスリット920に流入するまでの間に変化する。これにより、シム940により分割されたスリット920の各々の空間に流入する塗布液の量にばらつきが生じる。
【0061】
その結果、シム940により分割されたスリット920の各々の空間に流入した塗布液が、吐出口930から吐出されて基材960上に塗膜970を形成すると、図5に示すように塗膜970の幅方向における形状にばらつきが生じてしまう。
【0062】
これに対して本実施形態におけるスリットダイ2は、仕切部5を有し、この仕切部5が、シム4によりスリット22が幅方向に仕切られた1つの小スリット41に対して1つの小マニホールド51が繋がるように幅方向においてマニホールド21を仕切っている。そのため、各々の供給口33から供給された塗布液が隣接する小マニホールド51間を移動することを抑制することができるため、従来のようにシム4の近傍に位置する供給口33から供給された塗布液がシム4を避けて、別の供給口33から供給されて各々の小スリット22に向かって流れる塗布液と衝突することを防ぐことができる。
【0063】
これにより、従来のスリットダイ900と比較して、各々の供給口35から供給された塗布液の流れる方向がマニホールド21から各々の小スリット41に流入するまでの間に変化することを抑制することができる。そして、塗布液が基材Wの幅方向において均一になるよう各々の小マニホールド51から各々の小スリット41に流入するため、各々の小スリット41を介して吐出口23から吐出される塗布液の幅方向におけるばらつきを抑制することができる。したがって、図3に示すように幅方向にストライプ状に形成した塗膜の幅方向における形状を従来よりも均一にすることができる。
【0064】
また、本実施形態における仕切部5は、隣接する各々の小マニホールド51間を幅方向において繋ぐ隙間部52を形成するように形成されている。そして、この隙間部52は、供給口33から各々の小マニホールド51に供給された塗布液が、小マニホールド51から小スリット41を経由して吐出口23に向かうまでの圧力損失よりも小マニホールド51から隙間部52を経由して隣接する小マニホールド51に向かうまでの圧力損失の方が大きくなるよう形成されている。
【0065】
これにより、排気手段6によりマニホールド21に存在するエアを外部に排気しやすくなる。具体的には、各々の小マニホールド51に存在するエアを隙間部52を介して隣接する小マニホールド51間を移動させることができる。そのため、複数の小マニホールド51のいずれか1つに排気手段6が有する排気孔61を1つ設けると各々の小マニホールド51に存在するエアをまとめて外部に排気することができる。
【0066】
また、本実施形態では、隙間部52がマニホールド21の上面の近傍に位置するように形成するよう仕切部5を形成し、排気孔61をマニホールド21の上面に設けている。そのため、浮力により各々の小マニホールド51の上面に移動するエアを隙間部52を介して移動させやすくなるため、各々の小マニホールド51に存在するエアを排気孔61から外部に排気しやすくなる。
【0067】
また、本実施形態におけるスリットダイ2は、マニホールドの幅方向に配列するように仕切部取り付け部53を複数備え、この仕切部取り付け部53に篏合する突起部54を仕切部5に形成している。そのため、仕切部5をマニホールド21から着脱することが可能となり、仕切部5を取り付ける位置をシム4の位置に合わせて変更することができる。これにより、基材Wに形成する塗膜Mの幅の調節など、塗布条件に応じた塗布液の塗布が可能となるよう、仕切部5の位置を適宜変更することが可能となる。
【0068】
そして、隙間部52を形成するように仕切部5が形成されているため、隙間部52がない場合よりも容易に仕切部5をマニホールド21から着脱することができる。
【0069】
また、上記実施形態では、各々の供給口33に接続された各々の供給路32にポンプを設けているため、仕切部5により仕切られた各々の小マニホールド51に配置された供給口33の数に差があったとしても、各々の小マニホールド51に供給する塗布液の流量が適量になるよう調節することができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳述したが、各実施形態における構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の追加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。たとえば、上記実施形態では、2つのシム4によりスリット22を仕切る例について説明したが、これに限られない。なお、仕切部5はシム4と同数となるようにマニホールド21に配置する。
【0071】
また、上記実施形態では、隙間部52を形成するよう仕切部5が形成されていたが、隙間部52を形成しないように仕切部5を形成してもよい。すなわち、仕切部5の外周面とマニホールド21の内周面とが密着していてもよい。この場合、排気孔61を仕切部5により仕切られた各々の小マニホールド51に1つずつ設けるとよい。
【0072】
また、上記実施形態では、マニホールド21の内周面と仕切部5の外周面との間隔である隙間部52の寸法が、0.5~1.0mm程度の寸法であることについて記載したが、これに限定されず、少なくとも小マニホールド51間でエアの移動を可能にする程度の寸法であるとよい。すなわち、隙間部52の寸法は、エアが抜けられる寸法であればよい。
【0073】
また、上記実施形態では、連通部52が隙間部52である例について説明したが、これに限られない。たとえば、仕切部5の一部に幅方向に貫通するよう形成した貫通孔であってもよい。この場合、貫通孔の断面積は、スリット22の断面積よりも小さくなるよう形成する。すなわち、貫通孔は、供給口33から各々の小マニホールド51に供給された塗布液が、小マニホールド51から小スリット41を経由して吐出口23に向かうまでの圧力損失よりも、小マニホールド51から貫通孔を経由して隣接する小マニホールド51に向かうまでの圧力損失の方が大きくなるよう形成される。また、この貫通孔は、マニホールド21の上面の近傍に形成されるとよい。
【符号の説明】
【0074】
100 塗布装置
1 搬送手段
11 塗布ロール
2 スリットダイ
21 マニホールド
22 スリット
23 吐出口
24 第1の分割体
24a 第1のリップ部
25 第2の分割体
25a 第2のリップ部
26 シム体
3 供給手段
31 タンク
32 供給路
33 供給口
4 シム
41 小スリット
41a 小スリット
41b 小スリット
41c 小スリット
5 仕切部
51 小マニホールド
51a 小マニホールド
51b 小マニホールド
51c 小マニホールド
52 連通部(隙間部)
53 仕切部取り付け部
54 突起部
6 排気手段
61 排気孔
W 基材
M 塗膜
T 塗布領域
N 不塗布領域
図1
図2
図3
図4
図5