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  • 特開-サンドブラスト用感光性フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148940
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】サンドブラスト用感光性フィルム
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
G03F7/004 512
G03F7/004 504
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057235
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 優子
(72)【発明者】
【氏名】入澤 宗利
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 邦人
【テーマコード(参考)】
2H225
【Fターム(参考)】
2H225AC37
2H225AD14
2H225AD24
2H225AM04P
2H225AM23P
2H225AM32P
2H225BA32P
2H225CA11
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、支持体を感光性樹脂層から容易に剥離することが可能であり、かつ、カバーフィルムの剥離時に支持体と剥離層の間で剥離が進むことなくカバーフィルムのみを感光性樹脂層上から剥離できるサンドブラスト用感光性フィルムを提供することである。
【解決手段】支持体、剥離層、感光性樹脂層、カバーフィルムをこの順に有するサンドブラスト用感光性フィルムにおいて、該感光性樹脂層が(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)ウレタン(メタ)アクリレート、および(D)フッ素系界面活性剤を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、剥離層、感光性樹脂層、カバーフィルムをこの順に有するサンドブラスト用感光性フィルムにおいて、該感光性樹脂層が(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)ウレタン(メタ)アクリレート、および(D)フッ素系界面活性剤を含むことを特徴とするサンドブラスト用感光性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンドブラスト用感光性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス、石材、金属、プラスチック、セラミック等を切削し、レリーフ形成するに際しては、サンドブラスト処理による加工が行われている。サンドブラスト処理とは、被処理体上にマスク材としてフォトリソグラフィー法等によりパターニングされた感光性樹脂層を設けた後、研磨剤を吹き付けて非マスク部を選択的に切削する処理である。
【0003】
このサンドブラスト処理用のマスク材となる感光性樹脂層を設けるために用いられるサンドブラスト用感光性フィルムは、支持体、感光性樹脂層、カバーフィルムをこの順に有していることが一般的である。また、感光性樹脂層としては、アルカリ可溶性樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート、および光重合開始剤を含有し、該アルカリ可溶性樹脂としては、セルロース誘導体またはカルボキシ基含有アクリル樹脂などが知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0004】
このような感光性樹脂層には、塗工時の消泡性とレベリング性の向上、および感光性樹脂層の帯電防止性向上のために、界面活性剤を配合させることが一般的に実施されている。特許文献4では、サンドブラスト処理用のマスク材となる感光性樹脂層に、フッ素系界面活性剤を添加する具体例が記載されている。
【0005】
一方でサンドブラスト処理用の感光性樹脂層の耐サンドブラスト性を高くするためには、硬化後の被膜の弾性を高くする必要があり、そのためには、ウレタン(メタ)アクリレートの配合量をできるだけ多くする必要があった。しかしながら、ウレタン(メタ)アクリレートの配合量を多くすると、硬化前の段階で感光性樹脂層の粘着力が増してしまうため、支持体を感光性樹脂層から剥離することができず、感光性樹脂層を被処理体に転写することが困難であった。そこで、耐サンドブラスト性を犠牲にして、ウレタン(メタ)アクリレートの配合量を低くする必要があった。
【0006】
この問題を解決するため、支持体と感光性樹脂層の間に、例えばポリビニルアルコールまたは部分けん化ポリ酢酸ビニルや、それにエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等を添加した水溶性樹脂層を剥離層として設けること(例えば、特許文献5、6)や、感光性樹脂層と支持体の間に感光性樹脂層が含むアルカリ可溶性樹脂と類似のアルカリ可溶性樹脂を含む剥離層を設けること(例えば、特許文献7)が一般的に実施されている。これによって、支持体を感光性樹脂層から剥離することが可能となる。
【0007】
しかしながら、上記した水溶性樹脂層を剥離層として用いた場合、剥離層上に感光性樹脂層を塗工する際にはじきが発生しやすいという問題があるほか、剥離層が含有する水溶性樹脂の種類によっては、支持体を剥離する際に剥離層を60℃以上の温度で暖めないと感光性樹脂層から支持体が剥離できず、加熱の工程が1工程増えてしまう欠点があった。また、感光性樹脂層と剥離層が類似のアルカリ可溶性樹脂を含む場合、支持体を剥離する際の加熱は不要であり、はじきの発生は抑制できるものの、感光性樹脂層とカバーフィルムの粘着力は維持されるため、カバーフィルムの剥離時に支持体と剥離層の間で剥離が起こり、サンドブラスト用感光性フィルムを使用できなくなるリスクが高まるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8-54734号公報
【特許文献2】特開平10-239840号公報
【特許文献3】特開平10-69851号公報
【特許文献4】特開2006-065000号公報
【特許文献5】特開昭59-137948号公報
【特許文献6】特開平6-161098号公報
【特許文献7】特開2012-27357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、支持体を感光性樹脂層から容易に剥離することが可能であり、かつ、カバーフィルムの剥離時に支持体と剥離層の間で剥離が進むことなくカバーフィルムのみを感光性樹脂層上から剥離できるサンドブラスト用感光性フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、支持体、剥離層、感光性樹脂層、およびカバーフィルムをこの順に有するサンドブラスト用感光性フィルムにおいて、該感光性樹脂層が(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)ウレタン(メタ)アクリレート、および(D)フッ素系界面活性剤を含むことを特徴とするサンドブラスト用感光性フィルムによって上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0011】
支持体を感光性樹脂層から容易に剥離することが可能であり、かつ、カバーフィルムの剥離時に支持体と剥離層の間で剥離が進むことなくカバーフィルムのみを感光性樹脂層上から剥離できるサンドブラスト用感光性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のサンドブラスト用感光性フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のサンドブラスト用感光性フィルムについて詳細に説明する。
【0014】
本発明のサンドブラスト用感光性フィルムは、図1に示すように、支持体1、剥離層2、感光性樹脂層3、およびカバーフィルム4が積層した構造となっている。使用方法は、まずカバーフィルム4を剥離し、次に、被処理体上に感光性樹脂層3が接触するようにしてラミネータ等を利用して貼り付ける。次に、支持体1側からレリーフ画像にあったマスクフィルムを介して露光した後に支持体1を剥離層2と支持体1の界面から剥離する。もしくは、解像性を要求する場合は、光の屈折を少なくするため、支持体1を剥離したのち、剥離層2側からレリーフ画像にあったマスクフィルムを介して露光する。感光性樹脂層3の露光部分は硬化される。この際、剥離層2は非感光性であるため、硬化は起こらない。次に、剥離層2および非露光部をアルカリ現像液によって洗い流し、その後水洗を実施する。次に、サンドブラスト処理を施し、被処理体を加工する。
【0015】
支持体としては、活性光線を透過させる透明フィルムが好ましい。該透明フィルムのヘーズ値は10%以下であることが好ましい。厚みについては、薄い方が光の屈折が少ないので好ましく、厚い方が塗工安定性に優れるため、10~100μmが好ましい。このような透明フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等のフィルムが挙げられる。
【0016】
カバーフィルムとしては、未硬化または硬化した感光性樹脂層を剥離できればよく、離型性の高い樹脂が用いられる。例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のフィルムが挙げられる。また、これらのフィルムにシリコーン等の離型剤が塗工されたフィルムが挙げられる。
【0017】
感光性樹脂層は、少なくとも(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)ウレタン(メタ)アクリレート化合物、および(D)フッ素系界面活性剤を含有する。なお、本明細書において、これらの成分は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)と表記する、あるいは単に(A)、(B)、(C)、(D)等と表記することがある。
【0018】
(A)アルカリ可溶性樹脂としては、以下に記載するアルカリ可溶性セルロース誘導体、カルボキシ基含有アクリル樹脂等が挙げられる。
【0019】
アルカリ可溶性セルロース誘導体としては、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート等が挙げられる。
【0020】
カルボキシ基含有アクリル樹脂としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類に、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸類を共重合させたアクリル系重合体が挙げられる。また、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸や、それらの無水物やハーフエステル、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等のその他の共重合可能なエチレン性不飽和基を有する単量体を共重合させた重合体も含まれる。
【0021】
上記(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
上記エチレン性不飽和カルボン酸として、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸が好適に用いられ、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸や、それらの無水物やハーフエステルを用いることもできる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が特に好ましい。
【0023】
上記その他の共重合可能なエチレン性不飽和基を有する単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-エトキシスチレン、p-クロロスチレン、p-ブロモスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ビニルトルエン、酢酸ビニル、ビニル-n-ブチルエーテル等が挙げられる。
【0024】
(A)アルカリ可溶性樹脂の酸価は、30~500mgKOH/gであることが好ましく、100~300mgKOH/gであることがより好ましい。この酸価が、30mgKOH/g未満ではアルカリ現像の時間が長くなる傾向があり、一方、500mgKOH/gを超えると、耐サンドブラスト性が低下する場合がある。
【0025】
また、(A)アルカリ可溶性樹脂の質量平均分子量は、10,000~200,000であることが好ましく、10,000~150,000であることがより好ましい。質量平均分子量が、10,000未満では本発明における感光性樹脂層を形成することが困難になる場合があり、一方、200,000を超えるとアルカリ現像液に対する溶解性が悪化する傾向がある。
【0026】
本発明における感光性樹脂層は(B)光重合開始剤を含有する。(B)光重合開始剤としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等の芳香族ケトン;2-エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ベンズアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントラキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等のアルキルフェノン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(o-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ビス(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9′-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N-フェニルグリシン、N-フェニルグリシン誘導体;クマリン系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4′-メチルジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4′-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物が挙げられる。上記2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体における2つの2,4,5-トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は、同一であって対称な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて使用される。
【0027】
本発明における感光性樹脂層は(C)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有する。(C)ウレタン(メタ)アクリレート化合物とは、多価ヒドロキシ基を有する化合物と多価イソシアネート化合物とが反応した末端イソシアネート基を有する化合物と、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物との反応生成物をいう。前記多価ヒドロキシ基を有する化合物としては、末端にヒドロキシ基を有するポリエステル類、ポリエーテル類等が挙げられるが、ポリエステル類としては、ラクトン類が開環重合したポリエステル類、ポリカーボネート類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレングリコールと、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸等のジカルボン酸との縮合反応で得られたポリエステル類が挙げられる。前記ラクトン類としては、具体的にはδ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、β-プロピオラクトン、α-メチル-β-プロピオラクトン、β-メチル-β-プロピオラクトン、α,α-ジメチル-β-プロピオラクトン、β,β-ジメチル-β-プロピオラクトン等が挙げられる。また、前記ポリカーボネート類としては、具体的にはビスフェノールA、ヒドロキノン、ジヒドロキシシクロヘキサノン等のジオールと、ジフェニルカーボネート、ホスゲン、無水コハク酸等のカルボニル化合物との反応生成物が挙げられる。また、前記ポリエーテル類としては、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリペンタメチレングリコール等を挙げることができる。
【0028】
上記多価ヒドロキシ基を有する化合物と反応する多価イソシアネート化合物としては、具体的にはジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、2,2-ジメチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,5-ジメチルヘキサン-1,6-ジイソシアネート、2,2,4-トリメチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族または脂環式のジイソシアネート化合物を挙げることができ、その化合物の単独または2種類以上の混合物が使用できる。
【0029】
さらに、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、具体的には2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、またそれら1molに対してε-カプロラクトンを1~10mol付加した化合物、を挙げることができ、その単独または2種類以上が混合して使用できる。
【0030】
成分(C)は、カルボキシ基を含有していてもよい。カルボキシ基を含有することで、アルカリ現像液に対する溶解性が向上する傾向にある。カルボキシ基を含有する成分(C)は、最初に、ジイソシアネート化合物と、カルボキシ基を有するジオール化合物とを両末端にイソシアネート基が残るように反応させ次いでこの反応物の末端イソシアネート基に、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物を反応させることによって得ることができる。
【0031】
本発明における感光性樹脂層は(D)フッ素系界面活性剤を含有する。(D)フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基を有するアルコールのポリアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等)付加物、パーフルオロポリエーテルのポリアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等)付加物等が含まれる。なお、フッ素系界面活性剤は、分子構造の一部(例えば、末端基)に、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、アミノ基、チオール基等を有してもよい。
【0032】
フッ素系界面活性剤としては、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、メガファック(登録商標)F114、F142D、F172、F173、F183、F251、F253、F281、F444、F445、F470、F475、F477、F478、F479、F486、F-553、F-555、F556、F559、F562、RS-75、TF-2066、TF-2067、TF-2068、ペンタデカエチレングリコールモノ1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルエーテル(以上、DIC(株)製)、フロラードFC-430、FC-431(以上、スリーエムジャパン(株)製)、サーフロン(登録商標)S-382(AGC(株)製)、EFTOP EF-122A、122B、122C、EF-121、EF-126、EF-127、MF-100(以上、三菱マテリアル電子化成(株)製)、PF-636、PF-6320、PF-656、PF-6520(以上、OMNOVA Solutions Inc.製)、ユニダイン(登録商標)DS-401、DS-403、DS-451(以上、ダイキン工業(株)製)、フタージェント(登録商標)250、251、222F、208G(以上、(株)ネオス製)等が挙げられる。
【0033】
感光性樹脂層には、必要に応じて、上記成分(A)~(D)以外の成分を含有させてもよい。このような成分としては、光重合性単量体、溶剤、熱重合禁止剤、可塑剤、着色剤(染料、顔料)、光発色剤、光減色材、熱発色防止剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、熱硬化剤、撥水剤および撥油剤等が挙げられ、各々上記成分(A)~(C)の合計量に対して0.01~20質量%程度含有することができる。これらの成分は1種を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
上記光重合性単量体とは、成分(C)ウレタン(メタ)アクリレート以外の、分子内に少なくとも1個の重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物である。例えば、多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物;グリシジル基含有化合物にα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート;γ-クロロ-β-ヒドロキシプロピル-β′-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、β-ヒドロキシアルキル-β′-(メタ)アクリロイルオキシアルキル-o-フタレート等のフタル酸系化合物;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、EO変性および/またはPO変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、EOおよびPOは、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを示し、エチレンオキサイドのブロック構造および/またはプロピレンオキサイドのブロック構造を有するノニルフェニル(メタ)アクリレートである。これらの光重合性単量体は単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
本発明において剥離層は、感光性樹脂層と同じ化合物の(A)アルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。加えて、前記剥離層は、前記した感光性樹脂層を塗設する際に生じるはじきの低減のために(C)ウレタン(メタ)アクリレートを含有していてもよい。また、必要により可塑剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、界面活性剤、滑剤、溶剤等を含んでいてもよい。
【0036】
剥離層の厚みは、0.5~15μmであることが好ましく、1~10μmであることがより好ましい。剥離層の厚みが大きすぎると、解像性の低下、コスト高となる傾向がある。逆に薄すぎると、剥離性の低下が発生する傾向にある。また、前記した感光性樹脂層の厚みは、10~150μmであることが好ましく、30~120μmであることがより好ましい。感光性樹脂層の厚みが大きすぎると、解像性の低下、コスト高、エッジフュージョン等の問題が発生しやすくなる。逆に薄すぎると、耐サンドブラスト性が低下する傾向にある。
【0037】
本発明の剥離層の塗布方法としては、例えば、ドクターブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ロールコーティング法、スクリーンコーティング法、スピナーコーティング法、インクジェットコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、グラビアコーティング法、カーテンコーティング法、およびダイコーティング法が挙げられる。剥離層の塗布液の乾燥条件に特に制限はないが、乾燥温度は、55℃~130℃であることが好ましく、乾燥時間は、30秒~30分であることが好ましい。
【0038】
また、前記した光重合性単量体としては、分子内に3個以上の重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物を使用してもよい。分子内に3個以上の重合可能なエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらを単独で、あるいは2種以上で用いることができる。
【0039】
本発明における感光性樹脂層において、(A)の含有量は、(A)、(B)、(C)、および(D)の総量に対して20~50質量%であることが好ましく、25~35質量%であることがより好ましい。(A)の含有量が20質量%未満では、皮膜性が悪くなる場合や、現像性が低下する場合がある。(A)の含有量が50質量%を超えると、レジストパターンの解像性が低下する場合がある。
【0040】
(B)の含有量は、(A)、(B)、(C)、および(D)の総量に対して0.1~10質量%であることが好ましく、0.2~5質量%であることがより好ましい。(B)の含有量が0.1質量%未満では、光重合性が不十分となる場合がある。一方、10質量%を超えると、露光の際に感光性樹脂層の表面で吸収が増大して、感光性樹脂層内部の光架橋が不十分となる場合がある。
【0041】
(C)の含有量は、(A)、(B)、(C)、および(D)の総量に対して40~75質量%であることが好ましく、55~70質量%であることがより好ましい。(C)の含有量が40質量%未満では、架橋性の低下、また、光感度が不十分となる場合がある。一方、75質量%を超えると、感光性樹脂層3の膜表面の粘着性が増加する場合がある。
【0042】
(D)の含有量は、(A)、(B)、(C)、および(D)の総量に対して0.03~0.15質量%であることが好ましく、0.04~0.1質量%であることがより好ましい。(D)の含有量が0.03質量%未満では、感光性樹脂層3のカバーフィルム4への粘着力が十分に下がらず、サンドブラスト用感光性フィルムからカバーフィルム4を剥離する際に、支持体1と剥離層2の間で剥離が進行しやすく、サンドブラスト用感光性フィルムが使用できなくなる場合がある。一方、0.15質量%を超えると、塗工による感光性樹脂層の形成において、はじきによる塗膜面の荒れや、サンドブラスト用感光性フィルム使用時に感光性樹脂層と被処理体との密着の阻害を引き起こす場合がある。
【実施例0043】
以下実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1~10、比較例1~4)
表1に示す各成分を混合し、剥離層用の塗工液を得た。なお、表1における各成分配合量の単位は、質量部を表す。得られた塗工液を、ワイヤーバーを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(25μm厚、ヘーズ値3.7%)上に塗工し、80℃で4分間乾燥し、溶剤成分を飛ばし、PETフィルムの片面上に剥離層1~4(乾燥膜厚:4μm)を得た。
【0045】
【表1】
【0046】
次に、表2に示す各成分を混合し、感光性樹脂層用の塗工液1~13を得た。なお、表2における各成分配合量の単位は、質量部を表す。次に、表3に示した剥離層用塗工液と感光性樹脂層用塗工液の組み合わせで、アプリケーターを用いて、剥離層上に感光性樹脂層用の塗工液を塗工し、80℃で8分間乾燥し、溶剤成分を飛ばし、剥離層上に感光性樹脂層1~13(乾燥膜厚:70μm)を得た。乾燥後、該感光性樹脂層の上にカバーフィルムとしてポリエチレンフィルム(30μm厚)を積層して、実施例1~10および比較例1~4のサンドブラスト用感光性フィルムを得た。
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
表1および表2において、各成分は以下の通りである。
(A-1);セルロースアセテートフタレート(質量平均分子量61000、酸価200mgKOH/g)
(A-2);ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(信越化学工業(株)製、質量平均分子量45000、酸価120mgKOH/g)
(A-3);メチルメタクリレート/n-ブチルアクリレート/メタクリル酸を質量比58/15/27で共重合させた共重合樹脂(質量平均分子量30000、酸価176mgKOH/g)
(B-1)2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体
(B-2)4,4′-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
(C-1)紫光(登録商標)UV-3000B(三菱ケミカル(株)製ウレタンアクリレート)
(C-2)DURA-167(共栄社化学(株)製カルボキシ基含有ウレタンアクリレート)(固形分比率53%)
(D-1);界面活性剤“メガファック”F-556(DIC(株)製))
(D-2);界面活性剤“メガファック”F-559(DIC(株)製))
(D-3);界面活性剤“メガファック”F-251(DIC(株)製))
【0050】
次に、実施例1~10および比較例1~4のサンドブラスト用感光性フィルムのカバーフィルムにOPP粘着テープ(日東電工CSシステム(株)製、商品名「EA-3925」)を貼り付け、カバーフィルムの剥離を試みた。結果、実施例1、実施例3~10、および比較例4は容易にカバーフィルムのみを剥離することができたが、比較例1~3はカバーフィルムが感光性樹脂層から剥離される前に、支持体であるPETフィルムと剥離層の間で剥離が進行し、感光性フィルムを以降の工程に使用できなくなった。実施例2については、カバーフィルムへの感光性樹脂層への粘着力が他の実施例に比べて高く、10回に2回の割合で、カバーフィルムの剥離時にOPP粘着テープを貼り付けた周辺の感光性樹脂層と剥離層が支持体から浮き上がる部分が生じたものの、それ以外の部分については問題なくカバーフィルムを剥離することができた。結果を表4に示す。なお、評価基準は、問題なくカバーフィルムを剥離できるものを〇、一部剥離層の浮きが見られる場合があるが実用上問題ないものを△、実用上問題あるものを×として評価した。
【0051】
【表4】
【0052】
カバーフィルムを剥離した実施例1~10、比較例4のサンドブラスト用感光性フィルムの感光性樹脂層面を3mm厚のガラス板に貼り合せ、ラミネータを用いて温度100℃、圧力0.2MPaで積層した。続いて、ガラス板に貼り合せたサンドブラスト用感光性フィルムに対して直径300μm、および直径250μmの円形パターンを16点有するフォトマスクを介して高圧水銀灯(85mJ/cm)で露光した。次に、室温でサンドブラスト用感光性フィルムのPETフィルムを剥離した。実施例1~10、および比較例4は、手で容易に剥離することが可能であった。0.2%炭酸ナトリウム水溶液にてアルカリ現像を実施し、剥離層および非露光部の感光性樹脂層を除去した。この時、実施例2~5、7~10については、硬化した感光性樹脂層の、直径250μm、直径300μmの円形パターンが16点すべてガラス板上に残存していた。一方で実施例1および実施例6は、直径300μmの円形パターンは16点すべてガラス板上に残存していたものの、直接250μmの円形パターンは半数が現像でガラス上から剥離しており、また比較例4については、直径250μm、直径300μmの円形パターンともに、現像後ガラス板上に残っている円形パターンが確認できなかった。結果を表4に示す。なお、評価基準は、円形パターンが全て残存したものを〇、半数以上が残存したものを△、半数以上が剥離したものを×として評価した。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の感光性フィルムは、広くサンドブラスト用の感光性フィルムに適用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 支持体
2 剥離層
3 感光性樹脂層
4 カバーフィルム
図1