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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148944
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】電子写真記録材料
(51)【国際特許分類】
   G03G 7/00 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
G03G7/00 101J
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057240
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤岩 和泉
(57)【要約】
【課題】耐水性、搬送性、および光沢性に優れた電子写真記録材料を提供する。
【解決手段】支持体上に、平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子を主体に含有する無機微粒子層と、コアシェル型アクリルウレタンエマルジョンを主体に含有する表面層をこの順に有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子を主体に含有する無機微粒子層と、コアシェル型アクリルウレタンエマルジョンを主体に含有する表面層をこの順に有する電子写真記録材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真記録材料に関する。詳しくは、耐水性、搬送性に優れ、良好な光沢性を有する電子写真記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いて印刷する用途は、端末PC用プリンター、ファックス、複写機にとどまらず、多品種小ロット印刷、可変情報印刷などを可能とする、いわゆる、オンデマンド印刷分野でも実用化が進み、技術的進展が目覚ましい。近年では印刷速度、画質の向上に伴い、印刷部数が従来オフセットやグラビアなどの印刷で行われていた領域でも利用され始めている
【0003】
電子写真方式は無版の印刷方式であるが故に可変情報を扱えるのがメリットである。一方でオフセットやグラビア印刷は可変情報を扱うことはできないものの、高品質の印刷を安価かつ大量に行うことに適している。そこで電子写真方式においても、印刷機械、トナー、記録シートの面から高画質化、高速化、省電力化、そして低コスト化へ向けた技術開発が進められている。
【0004】
電子写真方式のうち、乾式電子写真方式は事務用複写機などに代表される方式であり、顔料と合成樹脂からなる固体粉末トナーを感光体上に現われた静電画像に吸着させ、トナーを電子写真記録材料に転写、加熱する印刷が行われる。この方式では、画像部のトナー定着部分の光沢が高くなり、非画像部との光沢差が生じて、不自然な描写になる不具合があった。また、印刷された電子写真記録材料は、文書以外にもポスター、カード、ラベルなどにも使用されるようになってきており、画像部の耐水性も要求されている。
【0005】
光沢性に優れた画像が得られる電子写真記録材料としては、特開2005-43475号公報(特許文献1)では、支持体上に受像層と、ガラス転移温度(Tg)が45℃以上の水溶性ポリマーおよび水分散性ポリマーのいずれかとフッ素化合物とを含んだ離型層とをこの順に有する受像シートが記載され、特開2006-227473号公報(特許文献2)では、支持体上に平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子と変性ポリビニルアルコール樹脂を含有するトナー受像層を有するカラー電子写真用受像材料が記載されている。また、画像形成後の耐水性に優れた電子写真用紙としては、例えば特開2012-155097号公報(特許文献3)では、大豆たんぱくポリマーを含有した電子写真用紙が記載されている。しかしながら、特許文献1~3に記載される電子写真記録材料では、光沢性と耐水性を両立する観点においては更なる改善の余地があった。
【0006】
一方、電子写真方式による印刷においては電子写真記録材料に対するトナーの定着性を良好にする必要があるが、トナーの定着性を向上させると、しばしば搬送性が問題となる場合があった。このような問題に対して、例えば特開2013-160849号公報(特許文献4)には支持体上にJIS K2207で規定される針入度試験の値が3以上の顔料を含有するトナー受理層を設けた、トナーの定着性と良好な搬送性を有する電子写真記録材料が提案されている。しかしながら、耐水性と光沢性においては十分とは言えず更なる改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-43475号公報
【特許文献2】特開2006-227473号公報
【特許文献3】特開2012-155097号公報
【特許文献4】特開2013-160849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、耐水性、搬送性、および光沢性に優れた電子写真記録材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は以下の発明により達成される。
支持体上に、平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子を主体に含有する無機微粒子層と、コアシェル型アクリルウレタンエマルジョンを主体に含有する表面層をこの順に有する電子写真記録材料。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、耐水性、搬送性、および光沢性に優れた電子写真記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明における表面層が含有するコアシェル型アクリルウレタンエマルジョンとしては、詳しくはアクリル樹脂をコア部に、ウレタン樹脂をシェル部として有するエマルジョンである。このようなコアシェル型アクリルウレタンエマルジョンとしては、市販品として例えば大成ファインケミカル(株)製のアクリット(登録商標)WEM-041U、同WEM-200U、同WEM-290A、ダイセル(株)製のアクアブリッド(登録商標)AU-124、同AU-131などが挙げられる。
【0012】
高い耐水性を得るために、コアシェル型アクリルウレタンエマルジョンのコア部のガラス転移温度およびシェル部のガラス転移温度は、25℃以上90℃以下であることが好ましい。コア部のガラス転移温度およびシェル部のガラス転移温度が25℃未満の場合、皮膜化したコアシェル型アクリルウレタンエマルジョンがベタつき、搬送不良が生じる場合がある。コア部のガラス転移温度およびシェル部のガラス転移温度が90℃より高い場合は、表面層の皮膜化が進みにくいため、十分な耐水性が得られない場合がある。
【0013】
本発明の電子写真記録材料は、無機微粒子層上にコアシェル型アクリルウレタンエマルジョンを主体に含有する表面層を有するが、該表面層には塗布適正、色調あわせ、表面強度向上など必要に応じて界面活性剤、着色染料、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、バインダーとしての水溶性ポリマーや他の樹脂エマルジョン、pH調整剤などを含有することもできる。なお、本発明の表面層がコアシェル型アクリルウレタンエマルジョンを主体に含有するとは、表面層の全固形分に対する該エマルジョンの固形分比率が50質量%以上であることを意味し、より好ましくは80質量%以上、さらには95質量%以上であることが特に好ましい。なお、上限は100質量%である。50質量%未満の場合、無機微粒子層上全体に皮膜が形成されず、十分な耐水性と光沢性が得られない。
【0014】
本発明の電子写真記録材料が有する表面層の固形分塗布量は、20~2000mg/mが好ましい。20mg/mよりも少ない場合、印字部の耐水性の効果が得られない場合があり、2000mg/mよりも多い場合、搬送性が低下する場合がある。
【0015】
本発明において、無機微粒子層の上への表面層塗設は、無機微粒子層の塗布液を支持体上に塗布した後に乾燥することにより、該無機微粒子層中に十分な空隙を形成し、無機微粒子層の空隙容量以下の湿分塗布量に調整した表面層の塗布液を塗布することが好ましい。これにより、表面層塗布液が無機微粒子層中に急激に吸収され、この吸収時の吸引力により表面層塗布液が含有するコアシェル型アクリルウレタンエマルジョンが無機微粒子層表面に強く押し付けられ、無機微粒子層との間に結着力が生じる、いわゆる圧着と同様の事象が発現し、表面層が無機微粒子層上に明確な界面を保持して固定される。
【0016】
また、表面層塗布液にせん断力をかけて塗布することによって、均一な表面層を形成することができる。予め所定の塗布量を与え、せん断力を与える塗布方法として具体的には、スライドビード方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、スロットダイ方式、グラビアロール方式、エアナイフ方式、ブレードコーティング方式、ロッドバーコーティング方式等がある。表面層塗布液を無機微粒子層の空隙容量以下で塗布するには、予め所定の塗布量の塗布液を塗布することができる方式が好ましく、スライドビード方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、スロットダイ方式、グラビアロール方式等が挙げられる。特に表面層塗布液へ与えるせん断力の大きさの観点からグラビアロール方式が好ましい。
【0017】
グラビアロールを使用する塗布装置として、基材(本発明の場合には無機微粒子層が塗布された支持体)の進行方向に対して、接触するグラビアロールの面の進行方向が同一であるグラビア塗布装置と、反対方向に向いているリバースグラビア塗布装置がある。本発明において、グラビア塗布装置を用いる場合には、基材速度よりグラビアロールの周速を低下させ、せん断速度を与えるように塗布することが望ましい。リバースグラビア塗布装置は、大きなせん断速度を与えることができるため好ましい。しかしながら、これらグラビア塗布装置を用いる場合において、グラビアロールの直径が大きい場合や抱き角が大きい場合には、グラビアロールと無機微粒子層との接触時間が長くなるため、グラビアロールに接触している間に、表面層塗布液が吸収されてしまい、無機微粒子層表面に形成された表面層とグラビアロールとの物理的な接触が発生し、表面層が乱れる明らかな不均一な表面層となる場合がある。そのため塗布速度やグラビアロールの直径、線数などを最適化することが望ましい。
【0018】
好ましくは、使用するグラビアロールの直径を細くし、接触時間を出来る限り短くすることである。グラビアロールの中でも、直径が100mm以下の斜線グラビアロール(斜線の溝を有するグラビアロール)をリバース回転で使用することが特に好ましい。グラビアロールの直径のより好ましい範囲は20~80mmである。
【0019】
本発明の電子写真記録材料が有する支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ジアセテート樹脂、ポリアセテート樹脂、セロファン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンンフタレート等のフィルム、ポリオレフィン樹脂被覆紙等の非吸収性支持体、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト紙等の吸収性支持体等が挙げられる。
【0020】
支持体として、特に非吸収性支持体であるフィルムや樹脂被覆紙を使用する場合は、無機微粒子層を設ける面上にゼラチン、カイゼン等の天然高分子化合物やアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニリデン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等の合成樹脂を主体とする下塗り層を設けることが好ましい。下塗り層の乾燥固形分量は0.01~5.0g/mであることが好ましい。
【0021】
本発明において無機微粒子層が含有する無機微粒子としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化マグネシウム等が挙げられ、またこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの中でも、合成シリカ、アルミナあるいはアルミナ水和物が好ましく、これらの無機微粒子は優れた光沢性の画像が得られ、かつコスト面で有利である。本発明で更に好ましい無機微粒子は、非晶質合成シリカ、アルミナまたはアルミナ水和物である。また上記した無機微粒子の平均二次粒子径は500nm以下であり、さらに10~300nmであることが、より光沢性に優れる点で好ましい。
【0022】
非晶質合成シリカは、製造法によって湿式法シリカ、気相法シリカに大別することができる。湿式法シリカは、製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカはケイ酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の工程を経て製品化される。沈降法シリカとしては、例えば東ソー・シリカ(株)からニップシール(登録商標)として市販されている。ゲル法シリカはケイ酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子同士を結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。ゲル法シリカとしては、例えば水澤化学工業(株)からミズカシル(登録商標)として、東ソー・シリカ(株)からニップジェル(登録商標)として市販されている。ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、ケイ酸ソーダの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られ、例えば日産化学(株)からスノーテックス(登録商標)として市販されている。
【0023】
気相法シリカは乾式法シリカとも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって製造される。具体的には、四塩化珪素を水素及び酸素と共に燃焼して製造される。気相法シリカとしては、例えば日本アエロジル(株)からアエロジル(登録商標)として市販されている。
【0024】
平均二次粒子径が500nm以下の湿式法シリカあるいは気相法シリカのスラリーを製造する際に、スラリーの高濃度化や分散安定性を向上させるため、公知の種々の方法を用いてもよい。例えば、特開2002-144701号公報、特開2005-1117号公報に記載されているが如くアルカリ性化合物の存在下で分散する方法、カチオン性化合物の存在下で分散する方法、シランカップリング剤存在下で分散する方法等を挙げることができ、カチオン性化合物の存在下で分散する方法がより好ましい。
【0025】
上記したカチオン性化合物としては、カチオン性ポリマーを好ましく使用できる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59-20696号公報、特開昭59-33176号公報、特開昭59-33177号公報、特開昭59-155088号公報、特開昭60-11389号公報、特開昭60-49990号公報、特開昭60-83882号公報、特開昭60-109894号公報、特開昭62-198493号公報、特開昭63-49478号公報、特開昭63-115780号公報、特開昭63-280681号公報、特開平1-40371号公報、特開平6-234268号公報、特開平7-125411号公報、特開平10-193776号公報等に記載された1~3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特に、カチオン性ポリマーとしてジアリルアミン誘導体が好ましく用いられる。分散性及び分散液粘度の面で、これらのカチオン性ポリマーの質量平均分子量は2,000~10万が好ましく、特に2,000~3万が好ましい。
【0026】
無機微粒子層が含有することができるアルミナとしては、酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ-アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶が好ましい。γ-アルミナは一次粒子を10nm程度まで小さくすることが可能であるが、通常は数千から数万nmの二次粒子結晶を超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で平均二次粒子径を500nm以下に分散して使用することが好ましい。
【0027】
無機微粒子層が含有することができるアルミナ水和物はAl・nHO(n=1~3)の構成式で表される。アルミナ水和物は、一般にアルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。上記したアルミナ及びアルミナ水和物は、酢酸、乳酸、ぎ酸、硝酸等の公知の分散剤によって分散することで、平均二次粒子径を500nm以下に調整することができる。
【0028】
上記した無機微粒子は単独で用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。例えば、ゲル法シリカと気相法シリカとの併用等が挙げられる。
【0029】
無機微粒子層は、皮膜としての特性を維持するためバインダーを含有することが好ましい。バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、澱粉、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸エステルやそれらの誘導体が使用されるが、特に好ましいバインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上のもの、または完全ケン化したものである。平均重合度は500~5000のポリビニルアルコールが好ましい。
【0030】
ポリビニルアルコールとしては、一般的なポリビニルアルコールに加え、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール及びその他のポリビニルアルコールの誘導体も含まれる。ポリビニルアルコールは1種単体でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
本発明において無機微粒子層は、上記したバインダーと共に必要に応じ硬膜剤を含有することもできる。硬膜剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2-クロロエチル)尿素、2-ヒドロキシ-4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN-メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、米国特許第2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、ほう砂、ほう酸、ほう酸塩類の如き無機架橋剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0032】
バインダーとしてケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したポリビニルアルコールを用いる場合には、硬膜剤としてほう砂、ほう酸、ほう酸塩類が好ましく、ほう酸が特に好ましい。
【0033】
本発明において無機微粒子層が含有するバインダーの含有量は、トナー定着性の観点から、上記した無機微粒子に対して80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは60質量%以下である。バインダーが完全または部分ケン化のポリビニルアルコールである場合、無機微粒子に対して5~40質量%であることが好ましい。
【0034】
本発明において無機微粒子層は、耐水性向上等のため水溶性多価金属化合物を含有してもよい。水溶性多価金属化合物としては水溶性アルミニウム化合物が好ましく利用できる。
【0035】
水溶性アルミニウム化合物としては例えば、無機塩としては塩化アルミニウムまたはその水和物、硫酸アルミニウムまたはその水和物、アンモニウムミョウバン等が知られている。さらに、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が知られている。
【0036】
これらの水溶性アルミニウム化合物の中でも、無機微粒子層を形成する塗布液に安定に添加できるものが好ましく、塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が好ましく用いられる。この化合物は、主成分が下記の式1、式2または式3で示され、例えば[Al(OH)153+、[Al(OH)204+、[Al13(OH)345+、[Al21(OH)603+等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
【0037】
[Al(OH)Cl6-n ・・式1
[Al(OH)AlCl ・・式2
Al(OH)Cl(3n-m) 0<m<3n ・・式3
【0038】
これらのものは、多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として、浅田化学工業(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名で、また他のメーカーからも同様の目的を持って市販されており、各種グレードのものが容易に入手できる。本発明ではこれらの市販品をそのままでも使用できる。
【0039】
上記した水溶性多価金属化合物の含有量は、無機微粒子層が含有する無機微粒子に対して0.1~10質量%の範囲が好ましい。
【0040】
無機微粒子層には、さらに着色染料、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0041】
本発明において、無機微粒子層の塗布方法は、特に限定されず、公知の塗布方法を用いることができる。例えば、スライドビート方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ロッドバーコーティング方式等がある。本発明における無機微粒子層の乾燥塗布量は、0.1~50g/mの範囲であることが好ましい。
【実施例0042】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。なお、部及び%は質量基準である。
【0043】
(実施例1)
<ポリオレフィン樹脂被覆紙の作製>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)の1:1混合物をカナディアン スタンダード フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5%添加し、水で希釈して0.2%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/mになるように抄造し、乾燥調湿してポリオレフィン樹脂被覆紙の基紙とした。抄造した基紙に、密度0.918g/cmの低密度ポリエチレンの樹脂に対して、10%のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、厚さ35μmになるように押出コーティングし、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆し表面(無機微粒子層塗設面)とした。もう一方の面には密度0.962g/cmの高密度ポリエチレン樹脂70部と密度0.918g/cmの低密度ポリエチレン樹脂30部のブレンド樹脂組成物を同様に320℃で溶融し、厚さ30μmになるように押出コーティングし、粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆し裏面とした。
【0044】
上記ポリオレフィン樹脂被覆紙の表面に高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成の下引き層をゼラチンが50mg/mとなるように塗布乾燥して非吸収性支持体を作製した。
【0045】
<下引き層>
石灰処理ゼラチン 100質量部
スルフォコハク酸-2-エチルヘキシルエステル塩 2質量部
クロム明ばん 10質量部
【0046】
上記の非吸収性支持体の下引き層上に、下記組成の無機微粒子層塗布液を、スライドビート塗布装置を用いて塗布し、塗布後10℃で20秒間冷却後、30~55℃の加熱空気を吹き付けて乾燥した。無機微粒子層塗布液の乾燥塗布量は8g/mであった。更に下記組成の表面層塗布液1を、斜線グラビアロールを用いた塗布装置にて塗布を行い、45℃の温風を吹き付けて乾燥し、実施例1の電子写真記録材料を得た。ここで用いた斜線グラビアロールは、直径60mm、斜線角度45度、線数90線/インチ、溝深さ110μmのグラビアロールであり、リバース回転で用いた。表面層塗布液の湿分塗布量は、斜線グラビアロールの回転数を調整し20g/m(固形分塗布量100mg/m)に設定した。なお、該湿分塗布量は塗布中における単位時間当たりの塗布液減少量から求めた。
【0047】
<シリカ分散液の作製>
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(質量平均分子量9000)3質量部と気相法シリカ(平均一次粒径7nm、BET法による比表面積300m/g)100質量部を添加し予備分散液を作製した後、高圧ホモジナイザー処理して、固形分濃度20質量%の気相法シリカ分散液を作製した。気相法シリカの平均二次粒子径は130nmであった。
【0048】
<無機微粒子層塗布液の作製>
シリカ分散液 (シリカ固形分として)100質量部
ほう酸 4質量部
ポリビニルアルコール 23質量部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
固形分濃度が13質量%になるように水で調節した。
【0049】
<表面層塗布液1の作製>
コアシェル型アクリルウレタンエマルジョン(大成ファインケミカル(株)製アクリットWEM-041U、固形分濃度39%、コア部ガラス転移温度:76℃、シェル部ガラス転移温度:50℃)を水で希釈し、固形分濃度0.5%の表面層塗布液1とした。
【0050】
(実施例2)
実施例1の表面層塗布液1を下記組成の表面層塗布液2に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の電子写真記録材料を作製した。
【0051】
<表面層塗布液2の作製>
コアシェル型アクリルウレタンエマルジョン(大成ファインケミカル(株)製アクリットWEM-200U、固形分濃度38%、コア部ガラス転移温度:27℃、シェル部ガラス転移温度:35℃)を水で希釈し、固形分濃度0.5%の表面層塗布液2とした。
【0052】
(実施例3)
実施例1の表面層塗布液1を下記組成の表面層塗布液3に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の電子写真記録材料を作製した。
【0053】
<表面層塗布液3の作製>
コアシェル型アクリルウレタンエマルジョン(大成ファインケミカル(株)製アクリットWEM-290A、固形分濃度32%、コア部ガラス転移温度:85℃、シェル部ガラス転移温度50℃)を水で希釈し、固形分濃度0.5%の表面層塗布液3とした。
【0054】
(比較例1)
表面層塗布液1を塗布しない以外は、実施例1と同様にして比較例1の電子写真記録材料を作製した。
【0055】
得られた各々の電子写真記録材料について下記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0056】
<耐水性>
コニカミノルタ(株)製bizhubPRESS-C7000にて、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのベタ印字を行った。印字部を水に5分間浸し、乾燥後、印字部のトナー剥離の発生を下記の基準で評価した。
○:トナー剥離の発生なし。
△:端部に若干のトナー剥離が発生したが、実用上は問題ない。
×:全体にトナー剥離が発生し、実用不可。
【0057】
<搬送性>
コニカミノルタ(株)製bizhubPRESS-C7000の給紙トレイにセットし、5枚連続で印字した。下記の基準で評価した。
○:印字後の表面層のべたつきがなく、問題なく5枚連続印字が可能。
△:印字後の表面層のべたつきが若干あるが、5枚連続印字は可能。
×:印字後の表面層のべたつきが酷く、5枚連続印刷は不可。
【0058】
<光沢性>
印字部と白紙の光沢差を目視観察し、下記基準で評価した。
○:光沢差に違和感がない。
△:光沢差にわずかに違和感があるが、実用上は問題ない。
×:光沢差に違和感があり、実用不可。
【0059】
【表1】
【0060】
表1の結果から、本発明よって耐水性、搬送性、および光沢性に優れた電子写真記録材料が得られることが判る。