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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148965
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】スピーカ装置及び音響システム
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/04 20060101AFI20231005BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20231005BHJP
   H04R 9/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H04R3/04
H04R1/02 101B
H04R9/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057269
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 洸
【テーマコード(参考)】
5D012
5D017
5D220
【Fターム(参考)】
5D012DA00
5D017AD12
5D220AB04
(57)【要約】
【課題】本発明は、簡易な構成で、薄型化が可能なスピーカ装置及び音響システムを提供することを目的とする。
【解決手段】スピーカ装置は、入力された音源信号の信号帯域を制限する制限部と、振動板を含むスピーカユニットと、前記スピーカユニットを収納する収納部と、信号帯域が制限された音源信号に基づいて、前記スピーカユニットの振動板を振動させる制御信号を出力する駆動回路と、を含み、前記制限部は、前記音源信号について、前記スピーカユニット及び前記収納部の形状に応じたスピーカユニットの振幅量の周波数特性のピーク周波数を含む周波数帯域を制限する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された音源信号の信号帯域を制限する制限部と、
振動板を含むスピーカユニットと、
前記スピーカユニットを収納する収納部と、
信号帯域が制限された音源信号に基づいて、前記スピーカユニットの振動板を振動させる制御信号を出力する駆動回路と、
を含み、
前記制限部は、
前記音源信号について、前記スピーカユニット及び前記収納部の形状に応じたスピーカユニットの振幅量の周波数特性のピーク周波数を含む周波数帯域を制限するスピーカ装置。
【請求項2】
前記収納部は、共振構造を含む、
請求項1記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記収納部は、バスレフ型のエンクロージャであり、
前記共振構造は、ダクトである請求項2記載のスピーカ装置。
【請求項4】
前記制限部は、低域側の周波数帯域を制限する請求項1~請求項3の何れか1項記載のスピーカ装置。
【請求項5】
前記収納部は、共振構造を含み、
前記共振構造は、制限する周波数帯域の上限に対応するシステム共振周波数となるように調整する共振周波数を有する請求項4記載のスピーカ装置。
【請求項6】
前記スピーカユニットの部品間のクリアランスが、前記スピーカユニットの最大振幅に応じて定まるクリアランスとなるように構成する請求項1~請求項5の何れか1項記載のスピーカ装置。
【請求項7】
前記スピーカユニットは、ダンパ、ボイスコイル、ヨーク、及びプレートを更に含み、
前記ダンパと前記振動板との間のクリアランス、前記ボイスコイルと前記ヨークとの間のクリアランス、又は前記ダンパと前記プレートとの間のクリアランスが、前記最大振幅に応じて定まるクリアランスとなるように前記スピーカユニットを構成する請求項6記載のスピーカ装置。
【請求項8】
前記スピーカ装置と、前記スピーカ装置に対応して配置される部品とのクリアランスが、前記最大振幅に応じて定まるクリアランスとなるように前記スピーカユニットを構成する請求項6又は7記載のスピーカ装置。
【請求項9】
前記スピーカユニットは、カウンタードライブ方式のスピーカユニットである請求項1~請求項8の何れか1項記載のスピーカ装置。
【請求項10】
請求項1~請求項9の何れか1項記載のスピーカ装置と、
前記音源信号を受け付ける信号入力部と、
前記受け付けた音源信号を前記スピーカ装置へ出力するアンプと、
を含む音響システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ装置及び音響システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、薄型化が可能なスピーカ装置が知られている(例えば、特許文献1)。このスピーカ装置は、音波が放射される放射面及び該放射面と反対側にある背面を具備するスピーカユニットが複数個キャビネット中に設置されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-63078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、簡易な構成で、薄型化したスピーカ装置を実現するのに改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮して、簡易な構成で、薄型化が可能なスピーカ装置及び音響システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るスピーカ装置は、入力された音源信号の信号帯域を制限する制限部と、振動板を含むスピーカユニットと、前記スピーカユニットを収納する収納部と、信号帯域が制限された音源信号に基づいて、前記スピーカユニットの振動板を振動させる制御信号を出力する駆動回路と、を含み、前記制限部は、前記音源信号について、前記スピーカユニット及び前記収納部の形状に応じたスピーカユニットの振幅量の周波数特性のピーク周波数を含む周波数帯域を制限する。
【0007】
本発明によれば、前記制限部は、前記音源信号について、前記スピーカユニット及び前記収納部の形状に応じたスピーカユニットの振幅量の周波数特性のピーク周波数を含む周波数帯域を制限する。そして、駆動回路が、信号帯域が制限された音源信号に基づいて、前記スピーカユニットの振動板を振動させる制御信号を出力する。「収納部」とは、スピーカのエンクロージャ、スピーカの後面開放型エンクロージャ、車載の内装部品(トリム、ピラー、インパネ、ヘッドライニング、ラゲッジ、トランクルーム等)、板部品等である。また、「ピーク周波数」とは、極大点、又は振幅最大値をとる周波数である。
【0008】
このように、音源信号について、前記スピーカユニット及び前記収納部の形状に応じたスピーカユニットの振幅量の周波数特性のピーク周波数を含む周波数帯域を制限し、駆動回路が、信号帯域が制限された音源信号に基づいて、前記スピーカユニットの振動板を振動させる。これにより、簡易な構成で、薄型化が可能なスピーカ装置を提供することができる。
【0009】
本発明に係る前記収納部は、共振構造を含むことができる。
【0010】
本発明に係る前記収納部は、バスレフ型のエンクロージャであり、前記共振構造は、ダクトである。
【0011】
本発明に係る前記制限部は、低域側の周波数帯域を制限することができる。
【0012】
本発明に係る前記収納部は、共振構造を含み、前記共振構造は、制限する周波数帯域の上限に対応するシステム共振周波数となるように調整する共振周波数を有することができる。
【0013】
本発明に係る前記スピーカユニットの部品間のクリアランスが、前記スピーカユニットの最大振幅に応じて定まるクリアランスとなるように構成することができる。
【0014】
本発明に係る前記スピーカユニットは、ダンパ、ボイスコイル、ヨーク、及びプレートを更に含み、前記ダンパと前記振動板との間のクリアランス、前記ボイスコイルと前記ヨークとの間のクリアランス、又は前記ダンパと前記プレートとの間のクリアランスが、前記最大振幅に応じて定まるクリアランスとなるように前記スピーカユニットを構成することができる。
【0015】
本発明に係る前記スピーカ装置と、前記スピーカ装置に対応して配置される部品とのクリアランスが、前記最大振幅に応じて定まるクリアランスとなるように前記スピーカユニットを構成することができる。
【0016】
本発明に係る前記スピーカユニットを、カウンタードライブ方式のスピーカユニットとすることができる。
【0017】
本発明に係る音響システムは、上記のスピーカ装置と、前記音源信号を受け付ける信号入力部と、前記受け付けた音源信号を前記スピーカ装置へ出力するアンプと、を含んで構成されている。
【0018】
本発明によれば、信号入力部が、前記音源信号を受け付ける。そして、アンプが、前記受け付けた音源信号を前記スピーカ装置へ出力する。そして、スピーカ装置において、音源信号について、前記スピーカユニット及び前記収納部の形状に応じたスピーカユニットの振幅量の周波数特性のピーク周波数を含む周波数帯域を制限し、駆動回路が、信号帯域が制限された音源信号に基づいて、前記スピーカユニットの振動板を振動させる。これにより、簡易な構成で、薄型化が可能な音響システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、簡易な構成で、薄型化が可能なスピーカ装置及び音響システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】スピーカユニットから直接出力される音圧の周波数特性を示すグラフである。
図1B】ダクトから出力される音圧の周波数特性を示すグラフである。
図1C】スピーカユニットから直接出力される音圧と、ダクトから出力される音圧とを合成した周波数特性を示すグラフである。
図2】音響システム全体から出力される音圧特性及びスピーカユニットの振幅特性を示すグラフである。
図3】本発明の第1、第2、第3の実施の形態に係る音響システムの概略図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係るスピーカ装置の構成を示す断面図である。
図5】本発明の第1の実施の形態に係るスピーカ装置のスピーカユニットの構成を示す断面図である。
図6】本発明の第2の実施の形態に係るスピーカ装置の構成を示す断面図である。
図7】本発明の第3の実施の形態に係るスピーカ装置のスピーカユニットの構成を示す断面図である。
図8】実施例における音響システム全体の音圧の周波数特性を示すグラフである。
図9】実施例におけるスピーカユニットの振幅特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
<本発明の実施の形態の概要>
スピーカ装置のスピーカユニットの構造として、可動部品と固定部品が存在する。動作時にこれらの部品が衝突しないよう部品間のクリアランスを設定する必要がある。
【0023】
また、スピーカ装置のスピーカユニットの全高は、各構成部品の寸法、及び必要なストローク量を確保した、固定部品と可動部品との間のクリアランス寸法から決定される。また、スピーカユニットの構成部品の振幅量は、同一周波数のもとで出力音圧に比例する。
【0024】
そこで、本発明の実施の形態では、エンクロージャへ共振構造を設けることで、振幅量と出力音圧特性をコントロールする。
【0025】
例えば、バスレフ型エンクロージャを用いた音響システムでは、スピーカユニットから直接出力される音圧特性(図1A)と、ダクトから出力される音圧特性(図1B)とを合成することにより、スピーカ装置全体の音圧の周波数特性が定められる(図1C)。図1Cでは、実線が、スピーカユニットから直接出力される音圧特性を示しており、破線が、ダクトから出力される音圧特性を示しており、一点鎖線が、スピーカ装置全体の音圧の周波数特性を示している。
【0026】
従って、ダクトの共振周波数を調整することにより、スピーカユニットの振幅特性を調整する、すわなち、スピーカユニットの最大振幅量を調整することができる(図2参照)。図2の上段は、音響システム全体から出力される音圧特性を示すグラフであり、図2の下段は、スピーカユニットの振幅特性を示すグラフである。
【0027】
また、上記図2に示すように、スピーカユニットへの入力信号の帯域を制限する。図2では、振幅最大ピーク部を避けるように、点線が示す周波数より低域側の周波数帯域(例えば、25Hz以下の周波数帯域)を制限することにより、スピーカユニットの振幅量が低減するため、可動部品間のクリアランスをより小さく設定することができる。
【0028】
また、可動部品間のクリアランス寸法を削減できるため、スピーカユニットの薄型化が可能となり、エンクロージャの薄型化が可能となる。
【0029】
また、バスレフ型のエンクロージャの採用により、従来構造に対して音響出力は大きくは損なわれない。
【0030】
[第1の実施の形態]
<本発明の第1の実施の形態の音響システムの構成>
図3は、本発明の実施の形態に係る音響システム10の概略図を示している。
【0031】
図3に示すように、音響システム10は、音源入力部12と、アンプ14と、スピーカ装置16とを備えている。
【0032】
音源入力部12は、音源信号を受け付ける。
【0033】
アンプ14は、受け付けた音源信号をスピーカ装置16へ出力する。
【0034】
図4に示すように、スピーカ装置16は、スピーカユニット20と、スピーカユニット20を収納するエンクロージャ22とを備えている。本実施の形態では、エンクロージャ22は、直方体状の筐体であり、バスレフ型のエンクロージャである。エンクロージャ22は、ダクト24を有している。
【0035】
また、スピーカ装置16は、音源信号が入力されるハイパスフィルタ28と、ハイパスフィルタ28の出力に基づいてスピーカユニット20の振動板40(図5参照)を振動させる制御信号を出力する駆動回路30と、スピーカユニット20とを備えている。
【0036】
図5に示されるように、スピーカユニット20は、振動板40を有する。振動板40は、正面視で環状に形成され、前面が中央部側に向けて凹んだコーン形状を有する。振動板40は、一例としてコーン紙(パルプ繊維等を含む材料から成るコーン)で構成されている。振動板40の前面中央部側にはセンターキャップ42が配置されている。センターキャップ42は、一例としてドーム形状に形成され、その中央部が前方側に膨出するように配置されている。
【0037】
センターキャップ42の外周部は、全周に亘ってフランジ状に形成され、振動板40の前面に接合されている。振動板40の外周部には、ゴム等の弾性材料で形成されたエッジ44が全周に亘って接合されている。エッジ44は、正面視で環状に形成され、全周に亘ってフレーム52に接合されている。
【0038】
振動板40の中央部には円孔が貫通形成され、円孔の縁部はボイスコイルボビン46の外周面の前部に接合されている。ボイスコイルボビン46は、フィルムを円筒状にしたものとされる。図中では、振動板40、センターキャップ42、エッジ44、ボイスコイルボビン46、ボイスコイル48、ダンパ50、及びフレーム52の断面は便宜上太線で示している。ボイスコイルボビン46の後部外周側には、線状の導体である電線(一例として銅線)で構成されたボイスコイル48が巻回されている。なお、ボイスコイル48の断面は簡略化して図示している。
【0039】
ボイスコイルボビン46の外周面には、振動板40の円孔よりも後方側の部位にダンパ50の内周部が接合されている。ダンパ50は、正面視で環状に形成されると共に波紋状のコルゲーション部が形成された可撓性の薄板部材である。ボイスコイルボビン46は、ダンパ50等を介してフレーム52に接続されており、このダンパ50等により、フレーム52に対してボイスコイルボビン46の筒軸方向に沿って振動可能な状態で支持されている。また、振動板40は、エッジ44を介してフレーム52に接続されており、このエッジ44により、フレーム52に対してボイスコイルボビン46の筒軸方向に沿って振動可能な状態で支持されている。そして、前述した振動板40は、ボイスコイルボビン46と一体に振動するようになっている。
【0040】
スピーカユニット20の後部には、外磁型の磁気回路56が設けられている。磁気回路56は、プレート58、マグネット60、及びヨーク62によって構成されている。プレート58は、強磁性体であって環状に形成されており、ボイスコイル48の外周側に配置されてフレーム52の底壁部の後面に固定されている。マグネット60は、環状に形成され、ボイスコイル48の外周側に配置されてプレート58の後面に固定されている。マグネット60の後面には、ヨーク62が固定されている。
【0041】
ヨーク62は、強磁性体で形成され、ヨーク62の後端部を構成する円板状のベース部と、ベース部の中心部から前方側に突出された円柱状のポール部とを備えている。
【0042】
ポール部の一部は、ボイスコイルボビン46の後部における内周側の空間に配置されている。ボイスコイル48は、ボイスコイルボビン46と共に、プレート58の内周面とヨーク62のポール部との間の磁気空隙に挿入された状態で配置されている。
【0043】
ボイスコイル48は、端子(図示省略)を介して外部電源に接続されている。
【0044】
駆動回路30は、入力された音源信号からハイパスフィルタ28を介して得られた制御信号をボイスコイル48に出力し、磁気回路56によりスピーカユニット20の振動板40を振動させる。
【0045】
ハイパスフィルタ28は、入力された音源信号の低域側の信号帯域を制限する。
【0046】
具体的には、ハイパスフィルタ28は、音源信号について、エンクロージャ22の形状に応じて出力される音圧の周波数特性のピーク周波数を含む低域側の周波数帯域(上記図2の点線より左側の周波数帯域)を制限する。
【0047】
ここで、エンクロージャ22は、共振構造としてのダクト24を有し、ダクト24は、システム共振周波数を調整するように定められた共振周波数となる形状を有する。例えば、ダクト24は、制限する周波数帯域の上限(例えば、上記図2の点線が示す25Hz)に対応するシステム共振周波数となるように調整するダクト共振周波数を有する。システム共振周波数は、すなわち音響システム全体の共振周波数を指す。またシステム共振周波数は、音響システムの音圧特性や振幅量等を最適にする周波数であるとよい。
【0048】
より具体的には、ダクト24の形状を長くしたり、又は細くすることにより、ダクト共振周波数を下げ、これに応じて反共振周波数もしくは、ヘルムホルツ共鳴周波数を従来より下げてシステム共振周波数を、低く設定する。上記図2の例では、従来の設計では、システム共振周波数が45Hzであるのに対し、これよりも、システム共振周波数を、40Hz、35Hz、30Hz、25Hz、又は20Hzに低くする例を示している。ここで反共振周波数とは、音響システム全体を見た場合、振動板およびダクトから放射されるそれぞれの音圧について、位相反転の生じる周波数のことである。反共振周波数以下の帯域では逆位相(音圧を減じあう)関係となり、反共振周波数以上の帯域では同位相(音圧を強めあう)の関係となる。スピーカユニットにおいては、反共振周波数付近で振幅特性が極小となる。
【0049】
上記図2の例に示すように、制限される低域側の周波数帯域より高域側でのスピーカユニット20の最大振幅を抑えることができる。
【0050】
従って、本実施の形態では、スピーカユニット20の部品間のクリアランスが、この最大振幅に応じて定まるクリアランスとなるようにスピーカユニット20を構成する。具体的には、ボイスコイル48とヨーク62との間のクリアランスC1、ダンパ50とプレート58との間のクリアランスC2、ダンパ50と振動板40との間のクリアランスC3、及び前面部品(例えば、グリルカバー)と振動板40との間のクリアランスC4が、最大振幅と所定の余裕度を加算したクリアランスとなるように構成されている。
【0051】
<本発明の第1の実施の形態の音響システムの動作>
音源入力部12が、オーディオプレーヤ等から音源信号の入力を受け付ける。
【0052】
そして、アンプ14は、受け付けた音源信号をスピーカ装置16へ出力する。
【0053】
そして、スピーカ装置16のハイパスフィルタ28は、音源信号に対し、低域側の信号帯域を制限して、駆動回路30へ出力する。
【0054】
駆動回路30は、低域側の信号帯域が制限された音源信号に基づいて制御信号をスピーカユニット20へ出力し、スピーカユニット20の振動板40を振動させる。
【0055】
ここで、ハイパスフィルタ28は、音源信号について、エンクロージャ22の形状に応じて出力される音圧の周波数特性のピーク周波数を含む低域側の周波数帯域(上記図2の点線より低域側の周波数帯域)を制限する。また、エンクロージャ22のダクト24は、制限する周波数帯域の上限に対応するシステム共振周波数となるように調整するダクト共振周波数を有する。
【0056】
これにより、制限される低域側の周波数帯域より高域側でのスピーカユニット20の最大振幅を抑えることができる。
【0057】
スピーカユニット20の部品間のクリアランスが、この最大振幅に応じて定まるクリアランスとなるように構成されているため、スピーカユニット20の薄型化が可能となる。
【0058】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態に係る音響システムによれば、音源信号について、エンクロージャの形状に応じて出力される音圧の周波数特性のピーク周波数を含む低域側の周波数帯域を制限し、駆動回路が、信号帯域が制限された音源信号に基づいて、スピーカユニットの振動板を振動させることにより、簡易な構成で、薄型化が可能なスピーカ装置を提供することができる。
【0059】
また、エンクロージャの形状に応じて出力される音圧の周波数特性のピーク周波数を含む低域側の周波数帯域を制限しない場合と比較して、スピーカユニットの振幅量が低減するため、可動部品間のクリアランスをより小さく設定することができ、薄型化が可能となる。また、バスレフ型のエンクロージャを用いることにより、音響出力は大きくは損なわれない。
【0060】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係る音響システムについて説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0061】
第2の実施の形態では、パッシブラジエータを用いている点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0062】
上記図3に示すように、音響システム210は、音源入力部12と、アンプ14と、スピーカ装置216とを備えている。
【0063】
スピーカ装置216は、図6に示すように、スピーカユニット20と、スピーカユニット20を収納するエンクロージャ222とを備えている。本実施の形態では、エンクロージャ222は、直方体状の筐体であり、パッシブラジエータ型のエンクロージャである。エンクロージャ222は、パッシブラジエータ224を有している。
【0064】
ここで、エンクロージャ222は、共振構造としてのパッシブラジエータ224を有し、パッシブラジエータ224は、システム共振周波数を調整するように定められた共振周波数となる振動板226及びエッジ228を有する。例えば、パッシブラジエータ224は、制限する周波数帯域の上限に対応するシステム共振周波数となるように調整するパッシブラジエータ共振周波数を有する。
【0065】
より具体的には、振動板226の重量、及びエッジ228のバネの大小を調整することにより、パッシブラジエータ共振周波数を従来よりも下げ、これに応じて、システム共振周波数を、低く設定する。
【0066】
なお、第2の実施の形態に係る音響システム210の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0067】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態に係る音響システムについて説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0068】
第3の実施の形態では、カウンタードライブ型のスピーカユニットを用いている点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0069】
上記図3に示すように、音響システム10は、音源入力部12と、アンプ14と、スピーカ装置316とを備えている。
【0070】
また、スピーカ装置316は、ハイパスフィルタ28と、駆動回路30と、スピーカユニット320とを備えている。
【0071】
図7に示されるように、スピーカユニット320は、振動板340を有する。振動板340は、正面視で環状に形成され、前面が中央部側に向けて凸となるコーン形状を有する。振動板340の前面中央部側にはセンターキャップ342が配置されている。振動板340の外周部には、ゴム等の弾性材料で形成されたエッジ344が全周に亘って接合されている。エッジ344は、正面視で環状に形成され、全周に亘ってフレーム352に接合されている。
【0072】
振動板340の中央部には円孔が貫通形成され、円孔の縁部はボイスコイルボビン346の外周面の前部に接合されている。図中では、振動板340、センターキャップ342、エッジ344、ボイスコイルボビン346、ボイスコイル348、ダンパ350、及びフレーム352の断面は便宜上太線で示している。ボイスコイルボビン346の後部外周側には、ボイスコイル348が巻回されている。なお、ボイスコイル348の断面は簡略化して図示している。
【0073】
ボイスコイルボビン346の外周面には、振動板340の円孔よりも前方側の部位にダンパ350の内周部が接合されている。ダンパ350は、正面視で環状に形成されると共に波紋状のコルゲーション部が形成された可撓性の薄板部材である。ボイスコイルボビン346は、ダンパ350等を介してフレーム352に接続されており、このダンパ350等により、フレーム352に対してボイスコイルボビン346の筒軸方向に沿って振動可能な状態で支持されている。また、振動板340は、エッジ344を介してフレーム352に接続されており、このエッジ344により、フレーム352に対してボイスコイルボビン346の筒軸方向に沿って振動可能な状態で支持されている。そして、前述した振動板340は、ボイスコイルボビン346と一体に振動するようになっている。
【0074】
スピーカユニット320の後部には、外磁型の磁気回路356が設けられている。磁気回路356は、プレート358、マグネット360、及びヨーク362によって構成されている。
【0075】
駆動回路30は、入力された音源信号からハイパスフィルタ28を介して得られた制御信号をボイスコイル348に出力し、磁気回路356によりスピーカユニット320の振動板340を振動させる。
【0076】
また、上記の第1の実施の形態と同様に、制限される低域側の周波数帯域より高域側でのスピーカユニット320の最大振幅を抑えることができる。
【0077】
従って、本実施の形態では、スピーカユニット320の部品間のクリアランスが、この最大振幅に応じて定まるクリアランスとなるように構成する。具体的には、ボイスコイル348とヨーク362との間のクリアランスC1、振動板340とヨーク362との間のクリアランスC2、ダンパ350と振動板340との間のクリアランスC3、及び前面部品(例えば、グリルカバー)とボイスコイルボビン346との間のクリアランスC4が、最大振幅と所定の余裕度を加算したクリアランスとなるようにスピーカユニット320が構成されている。
【0078】
なお、第3の実施の形態に係る音響システム310の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0079】
[実施例]
上記第1の実施の形態で説明した音響システムの実施例について説明する。実施例では、エンクロージャの容量を10Lとし、従来のバスレフ型の設計より反共振周波数、もしくはヘルムホルツ共鳴周波数が低くなるように調整した。
【0080】
上記第1の実施の形態のエンクロージャと同等容量を持つ密閉型のエンクロージャを用いた音響システム、および背面に無限空間容積を持つ音響システムを比較例とする。
【0081】
図8は、上記第1の実施の形態で説明した音響システムと、比較例とにおける、音響システム全体の音圧の周波数特性を示すグラフである。また、図9は、上記第1の実施の形態で説明した音響システムと、比較例とにおける、スピーカユニットの振幅特性を示すグラフである。
【0082】
上記図8図9から、上記第1の実施の形態で説明した音響システムでは、スピーカユニットの振幅量を低減させつつも、同等以上のエンクロージャ体積を持つ比較例の音響システム以上の音圧を達成できることが分かった。
【0083】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0084】
例えば、上記の実施の形態では、バスレフ型のエンクロージャやパッシブラジエータ型のエンクロージャを用いた場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。ダクトやパッシブラジエータ以外の共振構造を有するエンクロージャであってもよい。
【符号の説明】
【0085】
10、210、310 音響システム
12 音源入力部
14 アンプ
16、216、316 スピーカ装置
20、320 スピーカユニット
22、222 エンクロージャ
24 ダクト
28 ハイパスフィルタ
30 駆動回路
40、226、340 振動板
48、348 ボイスコイル
56、356 磁気回路
224 パッシブラジエータ
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9