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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148968
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】注入プラグおよび補修方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
E04G23/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057275
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】淺野 良治
(72)【発明者】
【氏名】菅原 宏
(72)【発明者】
【氏名】黒田 健夫
(72)【発明者】
【氏名】茅野 己矢和
(72)【発明者】
【氏名】田中 和巳
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176BB05
(57)【要約】
【課題】コンクリート構造物の空隙内における位置を定め、空隙の内壁に対する貼り付け力を管理することが可能な注入プラグを提供すること。
【解決手段】注入プラグ1では、軸部11には、第2端22から第1端21に亘って樹脂が流れる流路11aが形成されている。リング止め管12は、軸部11に固定されている。ナット17は、リング止め管12の第2端22側において軸部11の外周と螺合し、回転によって軸部11に対して相対的に移動する。ワッシャ16は、軸部11に挿通されてナット17のリング止め管12側に配置され、コンクリート構造物100の壁面103に当接される。ゴム部材13は、軸部11に挿通されてリング止め管12とワッシャ16の間に配置され、ナット17の軸部11に対する第1端11への相対的な移動に伴って圧縮される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物に樹脂を注入する注入プラグであって、
前記コンクリート構造物に挿し込まれる側の第1端と、前記第1端と反対側の第2端を有し、前記第2端から前記第1端に亘って樹脂が流れる流路が形成された軸部と、
前記軸部に固定された固定部と、
前記固定部の前記第2端側において前記軸部の外周と螺合し、回転によって前記軸部に対して相対的に移動する回転部と、
前記軸部に挿通されて前記回転部の前記固定部側に配置され、前記コンクリート構造物の壁面に当接される当接部と、
前記軸部に挿通されて前記固定部と前記当接部の間に配置され、前記回転部の前記第1端側への前記軸部に対する相対的な移動に伴って圧縮される弾性部と、を備えた、注入プラグ。
【請求項2】
前記軸部に挿通されて前記弾性部と前記回転部の間に配置され、前記回転部の前記第1端側への前記軸部に対する相対的な移動に伴って前記弾性部を押圧する押圧部を更に備えた、請求項1に記載の注入プラグ。
【請求項3】
前記固定部は、前記軸部の前記第1端の外側に着脱可能に固定され、
前記固定部には、前記軸部に装着された状態において前記流路と連通する先端流路が形成されている、
請求項1に記載の注入プラグ。
【請求項4】
前記軸部の周囲に配置されていない状態において、前記弾性部の内径は、一端から他端に向かって徐々に縮径しており、
前記軸部の周囲に配置された状態において、前記弾性部は、前記他端が前記軸部の前記第2端側に配置される、
請求項1に記載の注入プラグ。
【請求項5】
前記弾性部の外径は、前記第1端側から前記第2端側に向かって徐々に拡径している、
請求項1に記載の注入プラグ。
【請求項6】
前記弾性部は、オレフィン系エラストマで形成されている、
請求項1に記載の注入プラグ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の注入プラグを用いてコンクリート構造物に樹脂を注入する補修方法であって、
前記注入プラグを前記コンクリート構造物に挿入する挿入工程と、
前記コンクリート構造物の壁面に前記当接部を当接させた状態で、前記軸部が前記回転部から所定の長さ突出するまで前記回転部を回転して前記注入プラグを前記コンクリート構造物に固定する固定工程と、
前記注入プラグを介して前記コンクリート構造物に、前記樹脂を注入する注入工程と、を備えた、
補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の打ち継ぎ又はひび割れによる空隙に樹脂を注入する注入プラグおよび補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート構造物の打ち継ぎ又はひび割れによって発生する空隙に補修材(樹脂)を注入することにより補修が行われていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1では、コンクリート構造物に注入プラグを差し込み、注入プラグを介して樹脂吐出装置から補修材をコンクリート構造物の空隙に注入していた。
【0004】
図11(a)は、特許文献1に示す注入パイプ1000がコンクリート構造物2000の注入穴2100に挿入された状態を示す図である。図示していないが、注入穴2100はひび割れ等に繋がっている。
【0005】
注入パイプ1000は、ネジパイプ1100と、ナット1200と、ゴム管1300と、ワッシャ1400と、移動部材1500と、接続部1600と、を備える。ネジパイプ1100の先端にナット1200が固定されている。ネジパイプ1100の他端に移動部材1500が螺合している。ゴム管1300はネジパイプ1100の周囲に配置されている。ワッシャ1400は、ネジパイプ1100の外側であってゴム管1300と移動部材1500の間に配置されている。接続部1600は、移動部材1500のネジパイプ1100とは反対側に固定されている。
【0006】
注入パイプ1000をコンクリート構造物2000の注入穴2100に挿し込んだ後、移動部材1500を回転させることによって、移動部材1500はネジパイプ1100に対してナット1200側に移動し、図11(b)に示すように、ゴム管1300が圧縮されて外側に広がる。
【0007】
ゴム管1300が外側に広がると、ゴム管1300が注入穴2100の内壁2100aに圧接し、注入パイプ1000は注入穴2100の内壁に固定される。この状態で、接続部1600に樹脂吐出装置が接続されて、注入パイプ1000を通して注入穴2100内に樹脂が注入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-056291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、注入パイプ1000を注入穴2100の内壁に固定するために移動部材1500を回転すると、注入パイプ1000全体が回転するため、注入パイプ1000が注入穴2100内で固定される位置が定まらない。例えば、図11(c)に示すように、注入穴2100の入口近傍でゴム管1300が固定される場合もある。
【0010】
また、注入パイプ1000の注入穴2100の内壁への固定は、移動部材1500をトルクレンチで締め付けることによって管理しているが、締付力を確認しているだけであるため、ゴム管1300の注入穴2100の内壁2100aに対する貼り付け力を管理できない。
【0011】
本発明は、コンクリート構造物に形成された穴における固定位置を定め、穴の内壁に対する貼り付け力を管理することが可能な注入パイプおよび補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の第1の態様にかかる注入プラグは、コンクリート構造物に樹脂を注入する注入プラグであって、軸部と、固定部と、回転部と、当接部と、弾性部と、を備える。軸部は、コンクリート構造物に挿し込まれる側の第1端と、第1端と反対側の第2端を有し、第2端から第1端に亘って樹脂が流れる流路が形成されている。固定部は、軸部に固定されている。回転部は、固定部の第2端側において軸部の外周と螺合し、回転によって軸部に対して相対的に移動する。当接部は、軸部に挿通されて回転部の固定部側に配置され、コンクリート構造物の壁面に当接される。弾性部は、軸部に挿通されて固定部と当接部の間に配置され、回転部の第1端側への軸部に対する相対的な移動に伴って圧縮される。
【0013】
注入プラグをコンクリート構造部に形成された穴の内壁に固定する際には、当接部がコンクリート構造物の壁面に当接するまで注入プラグが穴内に挿入される。そして、当接部を壁面に当接し、回転部との供回りを防止するために軸部の回転を規制した状態で回転部を軸部に対して相対的に第1端側に移動するように回転すると、弾性部は圧縮されて外側に広がり、穴の内壁に圧接される。
【0014】
これにより、注入プラグを固定することができる。当接部を壁面に当接させた状態で弾性部を外側に広げているため、穴の入口から所定位置の内壁に弾性部を圧接することができる。このため、コンクリート構造物の穴内における注入プラグの位置を定めることができる。
【0015】
また、回転部を回転することによってコンクリート構造物とは反対側に向かって回転部から軸部が突出してくる。軸部の突出量に応じて弾性部は圧縮するため、軸部の突出量を計測することによって、弾性部の内壁に対する貼り付け力を管理することができる。
【0016】
本開示の第2の態様にかかる注入プラグは、第1の態様にかかる注入プラグであって、押圧部を更に備える。押圧部は、軸部に挿通されて弾性部と回転部の間に配置され、回転部の第1端側への軸部に対する相対的な移動に伴って弾性部を押圧する。
【0017】
これにより、回転部の移動によって押圧部を移動させて弾性部を圧縮することができる。
【0018】
本開示の第3の態様にかかる注入プラグは、第1の態様にかかる注入プラグであって、固定部は、軸部の第1端の外側に着脱可能に固定される。固定部には、軸部に装着された状態において流路と連通する先端流路が形成されている。
【0019】
これにより、長さの異なる固定部を用いることによって、コンクリート構造物に形成された穴の深さに応じた固定部を軸部に取り付けることができる。
【0020】
本開示の第4の態様にかかる注入プラグは、第1の態様にかかる注入プラグであって、軸部の周囲に配置されていない状態において、弾性部の内径は、一端から他端に向かって徐々に縮径している。軸部の周囲に配置された状態において、弾性部は、他端が軸部の第2端側に配置される。
【0021】
例えば、他端における内径を軸部の径よりも小さくすることによって、弾性部の軸部との密着性を向上でき、また弾性部の軸部からの脱落を防止することができる。また、射出成形の際の抜き勾配として利用できるため、成形によって製造しやすい。
【0022】
本開示の第5の態様にかかる注入プラグは、第1の態様にかかる注入プラグであって、弾性部の外径は、第1端側から第2端側に向かって徐々に拡径している。
【0023】
第2端側が穴の内壁に引っ掛かる場合には、注入プラグを穴の内壁に仮固定することができるため、作業を行い易い。
【0024】
本開示の第6の態様にかかる注入プラグは、第1の態様にかかる注入プラグであって、弾性部は、オレフィン系エラストマで形成されている。
【0025】
これにより、耐久性を向上することができる。
【0026】
本開示の第7の態様にかかる補修方法は、第1~第6のいずれかの態様にかかる注入プラグを用いてコンクリート構造物に樹脂を注入する補修方法であって、挿入工程と、固定工程と、注入工程と、を備える。挿入工程は、注入プラグをコンクリート構造物に挿入する。固定工程は、コンクリート構造物の壁面に当接部を当接させた状態で、軸部が回転部から所定の長さ突出するまで回転部を回転して注入プラグをコンクリート構造物に固定する。注入工程は、注入プラグを介してコンクリート構造物に、樹脂を注入する。
【0027】
当接部を壁面に当接させた状態で弾性部を外側に広げているため、コンクリート構造部に形成された穴の入口から所定位置の内壁に弾性部を圧接することができる。このため、コンクリート構造物の穴内における注入プラグの位置を定めることができる。
【0028】
また、回転部を回転することによってコンクリート構造物とは反対側に向かって回転部から軸部が突出してくる。軸部の突出量に応じて弾性部は圧縮するため、軸部の突出量を計測することによって、弾性部の内壁に対する貼り付け力を管理することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、コンクリート構造物に形成された穴における固定位置を定め、穴の内壁に対する貼り付け力を管理することが可能な注入パイプおよび補修方法を提供することが可能な注入プラグおよび補修方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本実施形態の注入プラグを示す斜視図。
図2】本実施形態の注入プラグを示す正面図。
図3】本実施形態の注入プラグの正断面図。
図4図2からリング止め管を取り除いた状態を示す正面図。
図5】(a)ゴム部材の断面を模式的に示した図、(b)ゴム部材と圧受けリングと押さえリングとの配置関係を示した図。
図6】コンクリート構造物に注入プラグを差し込んだ状態を示す断面図。
図7】コンクリート構造物に注入プラグを固定した状態を示す断面図。
図8】本実施形態の注入プラグを用いて樹脂を注入している状態を示す図。
図9】本実施形態の補修方法を示すフロー図。
図10】コンクリート構造物に注入プラグを固定した他の状態を示す断面図。
図11】従来の注入プラグのコンクリート構造物への固定を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る実施形態の注入プラグおよび補修方法について図面を参照しながら説明する。
【0032】
(注入プラグ1の構成)
注入プラグ1は、コンクリート構造物の打ち継ぎ又はひび割れによる隙間に樹脂を注入するために、コンクリート構造物に挿入されて用いられる。
【0033】
図1は、本実施形態の注入プラグ1を示す斜視図である。図2は、本実施形態の注入プラグ1を示す正面図である。図3は、本実施形態の注入プラグ1の正断面図である。
【0034】
注入プラグ1は、図1図3に示すように、軸部11と、リング止め管12(固定部の一例)と、ゴム部材13(弾性部の一例)と、圧受けリング14と、押さえリング15(押圧部の一例)と、ワッシャ16(当接部の一例)と、ナット17(回転部の一例)と、を備える。
【0035】
軸部11は円筒状の部材である。軸部11は、例えば金属製である。軸部11は、図3に示すように、第1端21と、第2端22と、を有する。第1端21は、後述する図6に示すように、コンクリート構造物100の注入穴102に挿し込まれる。第2端22は、軸部11の両端のうち第1端21と反対側の端である。第2端22は、コンクリート構造物100の外側に配置される。
【0036】
軸部11の内側には樹脂が流れる流路11aが形成されている。図3には、軸部11の中心軸Oが示されている。流路11aは、第2端22から第1端21に亘って中心軸Oに沿って形成されている。軸部11の第2端22には、樹脂吐出装置が接続される。流路11aは、第2端22側の端部分11eを除いて、中心軸Oに対して垂直な断面が円形状に形成されている。図1に示すように、流路11aの端部分11eは、中心軸Oに対して垂直な断面が六角形状に形成されている。このように端部分11eの内周面を六角形状に形成することによって、注入プラグ1をコンクリート構造物100に固定するとき、または注入プラグ1をコンクリート構造物100から除去するときに、六角レンチ等を端部分11eに挿入して作業を行うことができる。
【0037】
軸部11の外周面11sの一部には、雄ネジ形状が形成されている。具体的には、図3に示すように、第1端21の近傍の外周面に雄ネジ形状部11bが形成され、第2端22から長手方向の中央付近までの外周面に雄ネジ形状部11cが形成されている。雄ネジ形状部11bと雄ネジ形状部11cの間には、ネジ形状が形成されていない非ネジ形状部11dが配置されている。
【0038】
リング止め管12は、軸部11の第1端21に配置されている。リング止め管12は、金属製である。リング止め管12は、円筒状である。リング止め管12は、内側には樹脂が流れる流路12a(先端流路の一例)が形成されている。リング止め管12の内周面には、雌ネジ形状が形成されている。リング止め管12の内側の雌ネジ形状は、軸部11の外周面の雄ネジ形状部11bと螺合している。
【0039】
これにより、リング止め管12は、軸部11の第1端21に装着されている。リング止め管12が軸部11に装着された状態において、軸部11の流路11aとリング止め管12の流路12aは連通する。
【0040】
後述する図6に示すように、注入プラグ1を注入穴102に挿し込んだ状態において、リング止め管12は、注入穴102内に配置される。軸部11の流路11aを通った樹脂は、リング止め管12の流路12aを通って、リング止め管12の先端から注入穴102内に吐出される。
【0041】
なお、図4の正面図に示すように、軸部11に対してリング止め管12を回転させることによって、リング止め管12を軸部11から取り外すことができる。例えば、ひび割れ等の空隙の深さに合わせて形成する注入穴102が深い場合には、長いリング止め管12を軸部11に装着することによって、注入穴102の奥まで樹脂を充填し易くなる。このように、注入穴102の大きさに応じた長さのリング止め管12を軸部11に装着することによって、注入穴102に効率よく樹脂を充填することができる。
【0042】
ゴム部材13は、軸部11の周囲に配置されている。ゴム部材13は、円筒状である。図3に示すように、ゴム部材13の内側に、軸部11が挿入されている。ゴム部材13は、リング止め管12の第2端22側に配置されている。ゴム部材13は、軸部11の雄ネジ形状部11bよりも第2端22側に配置されている。ゴム部材13は、図3に示すように、主に非ネジ形状部11dを覆うように配置されており、ゴム部材13の第2端22側の端部13eは、雄ネジ形状部11cを覆っている。
【0043】
注入プラグ1を注入穴102に挿し込んだ状態において、後述する図6に示すように、ゴム部材13は、注入穴102の内側に配置される。ゴム部材13は、後述するように押さえリング15の押圧によって外側に広がり、注入穴102の内壁102aに圧接される。ゴム部材13の材料としては特に限定されるものではないが、ゴム部材13は、例えば、耐久性の観点からオレフィン系エラストマを材料として射出成形で作成することが好ましい。
【0044】
図5(a)は、ゴム部材13の断面を模式的に示した図である。図5(a)は、軸部11が挿入される前のゴム部材13の形状を模式的に示す。上述したようにゴム部材13は円筒状である。ゴム部材13には、軸部11が挿入される貫通孔13aが形成されている。
【0045】
ゴム部材13の内径d1は、中心軸Oに沿って両端において第1端31(一端の一例)から第2端32(他端の一例)に向かって徐々に小さくなっている。図5(a)に示すように、ゴム部材13の貫通孔13aの内周面13bは、第1端31から第2端32に向かうに従って中心軸Oに近くなるようにテーパ形状に形成されている。
【0046】
また、ゴム部材13の外径d2は、第1端31から第2端32に向かって徐々に大きくなっている。ゴム部材13の外周面13cは、第1端31から第2端32に向かうに従って中心軸Oから遠ざかるようにテーパ形状に形成されている。
【0047】
ゴム部材13が軸部11に配置される際には、ゴム部材13の第1端31が軸部11の第1端21側に配置され、ゴム部材13の第2端32が軸部11の第2端22側に配置される。図5(b)は、ゴム部材13の両側に配置される部材を示す模式図である。図5(b)の二点鎖線に示すように、ゴム部材13の第1端31は、圧受けリング14側に配置され、第2端32は、押さえリング15側に配置される。なお、図5(a)および図5(b)では、分かり易くするためにテーパ形状を急に示している。なお、後述する注入穴102の内壁102aに引っ掛かり易くするために、ゴム部材13の外周面13cに、中心軸Oに沿った凸形状を周方向に複数形成してもよい。また、ゴム部材13の外周面13cに、螺旋状の凸形状を形成してもよい。
【0048】
圧受けリング14は、図3に示すように、軸部11の外側に配置されている。圧受けリング14は、リング止め管12とゴム部材13の間に配置されている。圧受けリング14は、金属製である。圧受けリング14は、軸部11に挿通されている。圧受けリング14は、図3に示すように、軸部11の非ネジ形状部11dに配置されている。圧受けリング14は、軸部11に固定されておらず、相対移動可能である。
【0049】
押さえリング15は、軸部11に配置されている。押さえリング15は、円筒状である。押さえリング15は、金属製である。押さえリング15は、軸部11に挿通されている。押さえリング15は、軸部11に対して相対的に移動可能に配置されている。また、押さえリング15は、軸部11に対して相対的に回転可能である。押さえリング15が軸部11の第1端21側に移動することによって、ゴム部材13が中心軸Oに沿った方向において圧縮され、径方向外側に広がる。
【0050】
ワッシャ16は、図3に示すように、軸部11に配置されている。ワッシャ16は、押さえリング15の第2端22側に配置されている。ワッシャ16は、金属製である。ワッシャ16は、軸部11に挿通されている。ワッシャ16は、軸部11に固定されておらず、軸部11に沿って相対移動可能である。また、ワッシャ16は、軸部11に対して相対回転可能である。ワッシャ16の外径は、押さえリング15の外径よりも大きく形成されている。ワッシャ16は、コンクリート構造物100の壁面103に当接する。ワッシャ16の第1端21側の面16aが、壁面103に当接する。
【0051】
ナット17は、図3に示すように、軸部11に配置されている。ナット17は、ワッシャ16の第2端22側に配置されている。ナット17は、金属製である。
【0052】
ナット17は、内周面に雌ネジ形状が形成されている。ナット17の内周面の雌ネジ形状と軸部11の雄ネジ形状部11cが螺合している。
【0053】
ナット17を軸部11に対して相対的に回転させることによって、ナット17に押されて、ワッシャ16および押さえリング15は、軸部11上を中心軸Oに沿って軸部11に対して相対的に移動する。
【0054】
図6は、コンクリート構造物100に注入プラグ1を挿し込んだ状態を示す図である。図6に示すように、コンクリート構造物100には、ひび割れ101による空隙101aに樹脂を注入するために注入プラグ1を挿し込む注入穴102が形成される。注入プラグ1は、ワッシャ16の面16aが、コンクリート構造物100の壁面103に当接するまで、リング止め管12側から注入穴102に挿し込まれる。
【0055】
そして、ナット17を軸部11の第1端21側に移動するように軸部11に対して相対的に回転させる(矢印A参照)。このとき、ナット17とともに軸部11が回転しないように、軸部11の回転は規制される。例えば、六角レンチを軸部11の端部分11eに挿し込み、六角レンチを把持することで軸部11の回転を規制することができる。また、軸部11の第2端22をペンチ等で把持することで軸部11の回転を規制することができる。ワッシャ16が壁面103に当接しているため、ナット17を軸部11に対して相対的に回転してもワッシャ16に干渉してナット17は注入穴102に向かって移動できず、軸部11が注入穴102の外側に向かって移動する(矢印B参照)。また、軸部11の第1端21にはリング止め管12が接続されているため、リング止め管12もナット17側に移動する(矢印B参照)。
【0056】
リング止め管12がナット17側へ移動すると、圧受けリング14もナット17側に移動し、圧受けリング14と押さえリング15によって、ゴム部材13は中心軸O方向に圧縮される。圧縮されたゴム部材13は、中心軸Oから離れる径方向外側(矢印C参照)に向かって広がる。
【0057】
径方向外側に広がったゴム部材13は、図7に示すように、注入穴102の内壁102aに圧接する。これによって、注入プラグ1を注入穴102の内壁102aに固定することができる。なお、軸部11の移動量に応じてゴム部材13の圧縮量が変わるため、ナット17からの第2端22までの軸部11の突出量Lを計測することによって、圧縮量を管理することができる。
【0058】
(補修方法)
次に、本実施形態のコンクリート構造物の補修方法について説明する。図8は、樹脂を供給している状態を示す図である。図9は、本実施の形態の補修方法を説明するフロー図である。
【0059】
はじめに、ステップS10において、図6に示すように、コンクリート壁面103から、ひび割れ101の空隙101aに沿って注入穴102が形成される。
【0060】
次に、ステップS20において、図6に示すように、注入穴102に注入プラグ1が挿入される。ステップS20は、挿入工程の一例に相当する。
【0061】
次に、ステップS30において、図6および図7に示すように、挿入後、ワッシャ16を壁面103に押し当て、軸部11の回転を規制した状態でナット17をスパナで回す。軸部11の回転を規制することによって、軸部11がナット17と供回りすることを防ぐ。
【0062】
これにより、軸部11とともにリング止め管12が外側に移動し、ゴム部材13が圧縮される。ゴム部材13は圧縮によって径方向外側に広がり、注入プラグ1は注入穴102の内壁102aに固定される。ステップS30は、固定工程の一例に相当する。
【0063】
次に、ステップS40において、図8に示すように供給装置5の注入ガン51の先端が注入プラグ1の軸部11の第2端22に接続される。
【0064】
次に、ステップS50において、供給装置5から補修材としての樹脂が注入プラグ1を介して注入穴102および空隙101aに供給される(矢印D参照)。ステップS50は、注入工程の一例に相当する。
【0065】
次に、ステップS60において、樹脂が硬化するまで放置する。
【0066】
なお、注入プラグ1は、コンクリート構造物100に放置してもよい。また、壁面103から突出している部分を石頭ハンマー等で叩き折ってもよく、この場合、注入プラグ1がコンクリート構造物100の内部で折れ、折れた部分にシール材を塗布し、注入穴102が塞がれる。また、注入プラグ1の軸部11の端部分11eに六角レンチを挿し込み、ナット17にレンチを嵌合して、軸部11およびナット17の一方を他方に対して相対的に回転させることによってゴム部材13の圧縮を解除して、コンクリート構造物100から注入プラグ1を除去してもよい。
【0067】
以上の動作によって、コンクリート構造物100に生じたひび割れ101による空隙101aに樹脂を注入して、ひび割れ101を補修することが出来る。
【0068】
上記実施形態では、注入プラグ1をコンクリート構造物100の注入穴102(空隙の一例)の内壁102aに固定する際には、ワッシャ16がコンクリート構造物100の壁面103に当接するまで注入プラグ1が注入穴102に挿入される。そして、ワッシャ16を壁面103に当接し軸部11の回転を規制した状態で、ナット17を軸部11に対して第1端21側に相対的に移動するように回転すると、ゴム部材13は圧縮されて外側に広がり、注入穴102の内壁102aに圧接される。
【0069】
これにより、注入プラグ1を注入穴102に固定することができる。ワッシャ16を壁面103に当接させた状態でゴム部材13を外側に広げているため、注入穴102の入口から押さえリング15の長さ分奥に進んだ内壁102aの位置にゴム部材13を圧接することができる。
【0070】
このため、コンクリート構造物100の注入穴102内における注入プラグ1の位置を定めることができる。また、ナット17を回転することによってコンクリート構造物100とは反対側に向かってナット17から軸部11が突出してくる。軸部11の突出量に応じてゴム部材13は圧縮するため、軸部11の突出量Lを計測することによって、ゴム部材13の内壁102aに対する貼り付け力を管理することができる。
【0071】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、本明細書で説明する実施形態は、任意に組み合わせることができる。
【0072】
(A)
上記実施形態では、弾性部の一例としてゴム部材13が用いられているが、これに限らなくてもよく、圧縮によって外側に広がって注入プラグ1を注入穴102の内壁102aに固定可能な部材であればよい。
【0073】
(B)
上記実施形態では、ワッシャ16が設けられていなくてもよく、ナット17のゴム部材13側の面が壁面103に当接する当接部として機能してもよい。
【0074】
(C)
上記実施形態での注入プラグ1では、ゴム部材13とワッシャ16の間に押さえリング15が配置されているが、押さえリング15が設けられていなくてもよい。
【0075】
(D)
上記実施形態では、コンクリート構造物100のひび割れについての補修について説明したが、ひび割れに限らなくても良く、例えば、コンクリート構造物の打ち継ぎによる空隙の補修が行われてもよい。
【0076】
(E)
上記実施形態では、コンクリート構造物100に注入穴102を形成しているが、ひび割れ101の空隙101aに注入プラグ1を挿入可能であれば注入穴102を形成しなくてもよい。
【0077】
(F)
上記実施形態では、流路11aの端部分11eは、断面形状が六角形状になるように形成されているが、端部分11eが六角形状に形成されておらず、流路11aの全体が円形状に形成されていてもよい。
【0078】
(G)
上記実施形態では、ひび割れ101に沿うように注入穴102を形成しているが、これに限らなくてもよく、注入穴102の先端がひび割れ101の空隙101aに届けばよい。例えば、図10に示すように、コンクリート構造物100の壁面103から、ひび割れ101に向かって斜め方向に注入穴102が形成される。
【0079】
なお、コンクリート構造物100の壁面103には、ひび割れ101を覆うようにシール材200が配置されている。この場合、斜めにはなるが、ワッシャ16が壁面103に当接する。
【産業上の利用可能性】
【0080】
コンクリート構造物の空隙内における位置を定め、空隙の内壁に対する貼り付け力を管理することが可能な注入プラグおよび補修方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0081】
1: 注入プラグ
11: 軸部
12: リング止め管
13: ゴム部材
16: ワッシャ
17: ナット
21: 第1端
22: 第2端
100: コンクリート構造物
103: 壁面
図1
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図11