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特開2023-148976災害情報取得装置及び災害情報取得システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148976
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】災害情報取得装置及び災害情報取得システム
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/00 20060101AFI20231005BHJP
   G01H 1/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01V1/00 D
G01H1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057284
(22)【出願日】2022-03-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2019年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「IoT社会実現のための革新的センシング技術開発/革新的センシング技術開発/次世代公共インフラ実現へ向けた高密度センサ配置による微小量信号計測技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000221546
【氏名又は名称】東電設計株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501331544
【氏名又は名称】東電タウンプランニング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501138231
【氏名又は名称】国立研究開発法人防災科学技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 雄一
(72)【発明者】
【氏名】北爪 貴史
(72)【発明者】
【氏名】栗田 哲史
(72)【発明者】
【氏名】金田一 智彦
(72)【発明者】
【氏名】関 正
(72)【発明者】
【氏名】酒井 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山野辺 慎一
【テーマコード(参考)】
2G064
2G105
【Fターム(参考)】
2G064AB19
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC02
2G064CC41
2G064CC42
2G064CC43
2G064DD02
2G105AA03
2G105BB01
2G105MM01
2G105NN02
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で複数の災害情報を取得することが可能な災害情報取得装置及び災害情報取得システムを提供すること。
【解決手段】本開示の災害情報取得装置は、設置位置の振動を検出可能な振動計と、前記振動計の出力結果から前記設置位置の災害情報を取得するためのデータ処理部と、を含み、前記データ処理部は、前記振動計の出力結果から前記設置位置の風速の推定値を算出する風速算出部と、前記振動計の出力結果から前記設置位置の降雨強度の推定値を算出する降雨強度算出部と、前記振動計の出力結果から前記設置位置及び前記設置位置周辺における土砂災害の発生を検出する土砂災害検出部と、のうちの2つ以上を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置位置の振動を検出可能な振動計と、
前記振動計の出力結果から前記設置位置の災害情報を取得するためのデータ処理部と、を備え、
前記データ処理部は、前記振動計の出力結果から前記設置位置の風速の推定値を算出する風速算出部と、前記振動計の出力結果から前記設置位置の降雨強度の推定値を算出する降雨強度算出部と、前記振動計の出力結果から前記設置位置及び前記設置位置周辺における土砂災害の発生を検出する土砂災害検出部と、のうちの2つ以上を備える、
災害情報取得装置。
【請求項2】
前記データ処理部は、前記振動計の出力結果から前記設置位置における地震を検出する地震検出部をさらに備える、
請求項1に記載の災害情報取得装置。
【請求項3】
前記振動計は、空気流体中に配設された構造物に設置された第1の振動計を備え、
前記風速算出部は、前記第1の振動計が検出した出力結果を説明変数とする下記式(1)に示す回帰モデルを用いて、前記設置位置の風速の推定値を算出する、
請求項1又は請求項2に記載の災害情報取得装置。
【数1】

ここで、xは風速、yは前記第1の振動計の出力結果、a、b、c、α及びβは任意の定数である。
【請求項4】
前記振動計は、空気流体中に配設された構造物に設置された第1の振動計を備え、
前記風速算出部は、前記第1の振動計が検出した出力結果をフーリエ変換して得られるフーリエスペクトルの所定の周波数領域における振幅の値から前記設置位置の風速の推定値を算出する、
請求項1又は請求項2に記載の災害情報取得装置。
【請求項5】
前記振動計は、地盤に設置された第2の振動計をさらに備え、
前記風速算出部は、前記第1の振動計の出力結果をフーリエ変換して得られるフーリエスペクトルの振幅の値と前記第2の振動計の出力結果をフーリエ変換して得られるフーリエスペクトルの振幅の値とを比較し、その差が第1の閾値以上であるか否かを検出する第1の振動判定部を備え、前記第1の振動判定部において第1の閾値以上の差を検出したときの前記第1の振動計の出力結果から前記設置位置の風速の推定値の算出を行う、
請求項3又は請求項4に記載の災害情報取得装置。
【請求項6】
前記風速算出部は、前記第1の振動計が検出した振動の継続時間が第2の閾値以上であるか否かを検出する第2の振動判定部を備え、前記第2の振動判定部において第2の閾値以上の継続時間を検出したときの前記第1の振動計の出力結果から前記設置位置の風速の推定値の算出を行う、
請求項3又は請求項4に記載の災害情報取得装置。
【請求項7】
前記第2の振動判定部は、Trifunacの累積パワー法及びJenningsの包絡関数法の少なくともいずれか一方を用いて前記継続時間を特定する、
請求項6に記載の災害情報取得装置。
【請求項8】
前記降雨強度算出部は、前記振動計が検出した出力結果の時刻歴の振幅から前記設置位置の降雨強度の推定値を算出する、
請求項1又は請求項2に記載の災害情報取得装置。
【請求項9】
前記降雨強度算出部は、前記振動計が検出した出力結果をフーリエ変換して得られるフーリエスペクトルの所定の周波数領域における振幅の値から前記設置位置の降雨強度の推定値を算出する、
請求項1又は請求項2に記載の災害情報取得装置。
【請求項10】
前記土砂災害検出部は、前記振動計が検出した出力結果が単位時間内に第3の閾値を超えた回数から前記設置位置及び前記設置位置周辺における土砂災害の発生を検出する、
請求項1又は請求項2に記載の災害情報取得装置。
【請求項11】
前記土砂災害検出部は、前記振動計が検出した出力結果のうち所定の周波数以上の周波数の振動成分を抽出するハイパスフィルタを備え、前記ハイパスフィルタで抽出された振動成分から前記設置位置及び前記設置位置周辺における土砂災害の発生を検出する、
請求項1、2及び10のいずれか1項に記載の災害情報取得装置。
【請求項12】
前記土砂災害検出部は、前記振動計の出力結果をフーリエ変換して得られるフーリエスペクトルにガウス関数で示される曲線をフィッティングさせ、その差分を検出するフィッティング部を備え、前記差分に基づいて前記設置位置及び前記設置位置周辺における土砂災害の発生を検出する、
請求項1、2、10及び11のいずれか1項に記載の災害情報取得装置。
【請求項13】
通信ネットワークに接続された、設置位置の振動を検出可能な振動計と、
前記通信ネットワークを介して前記振動計の出力結果を取得可能であって、前記振動計の出力結果から前記設置位置の災害情報を取得するためのデータ処理部と、を備え、
前記データ処理部は、前記振動計の出力結果から前記設置位置の風速の推定値を算出する風速算出部と、前記振動計の出力結果から前記設置位置の降雨強度の推定値を算出する降雨強度算出部と、前記振動計の出力結果から前記設置位置及び前記設置位置周辺における土砂災害の発生を検出する土砂災害検出部と、のうちの2つ以上を備える、
災害情報取得システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は災害情報取得装置及び災害情報取得システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地域の災害(ハザード)情報は、一般に、その種類ごとに異なるセンサを用いて計測が行われるものである。日本国内で言えば、例えば、地震に関する情報は気象庁の震度計測網や防災科学技術研究所の強震観測網(K-NET、KiK-net)、強風や大雨に関する情報は気象庁の地域気象観測システム(Automated Meteorological Data Acquisition System、アメダス)、土砂災害の発生に関する情報は、国交省や自治体が設置・管轄するワイヤーセンサ等によって計測され、二次災害の防止や災害発生時の避難のための情報として利用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のように災害の種別ごとに異なる箇所で個々に計測が行われると、その対策も個別に行われる傾向があり、複合災害が発生した場合において包括的な対応ができない場合があった。また、検出したい災害毎に異なるタイプの計測手段を用いて計測を行っており、その計測網は担当省庁や自治体等が個別に所有しているため、設置費用及び維持管理費用が高くなる傾向がある。
【0004】
また、従来の計測手段を用いたものはその所有者がそれぞれ異なることや計測手段に関連する装置の構造が複雑であること、それに伴って装置が高価であること等から、装置の新設や配置変更等が容易でない。したがって、例えば比較的狭い地域の種々の災害情報をピンポイントで取得するといった対応が難しかった。
【0005】
本開示は、簡単な構造で複数の災害情報を取得することが可能な災害情報取得装置及び災害情報取得システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様に係る災害情報取得装置は、設置位置の振動を検出可能な振動計と、前記振動計の出力結果から前記設置位置の災害情報を取得するためのデータ処理部と、を含み、前記データ処理部は、前記振動計の出力結果から前記設置位置の風速の推定値を算出する風速算出部と、前記振動計の出力結果から前記設置位置の降雨強度の推定値を算出する降雨強度算出部と、前記振動計の出力結果から前記設置位置及び前記設置位置周辺における土砂災害の発生を検出する土砂災害検出部と、のうちの2つ以上を含むものである。
【0007】
上記のような災害情報取得装置においては、強風に関する情報、大雨に関する情報及び土砂災害の発生に関する情報の2つ以上の災害情報を、単一の装置で取得することができる。これにより、複合災害が発生した場合にも包括的な対応が行いやすくなる。
【0008】
本開示の第2の態様に係る災害情報取得装置は、上記本開示の第1の態様に係る災害情報取得装置において、前記データ処理部は、前記振動計の出力結果から前記設置位置における地震を検出する地震検出部をさらに含む。
【0009】
上記のような災害情報取得装置においては、強風に関する情報、大雨に関する情報及び土砂災害の発生に関する情報の2つ以上に加えて、さらに地震に関する情報をも単一の装置で取得することができるようになる。
【0010】
本開示の第3の態様に係る災害情報取得装置は、上記本開示の第1又は第2の態様に係る災害情報取得装置において、前記振動計は、空気流体中に配設された構造物に設置された第1の振動計を含み、前記風速算出部は、前記第1の振動計が検出した出力結果を説明変数とする下記式(1)に示す回帰モデルを用いて、前記設置位置の風速の推定値を算出する。
【数1】

ここで、xは風速、yは前記第1の振動計の出力結果、a、b、c、α及びβは任意の定数である。
【0011】
上記のような災害情報取得装置においては、専用の計測手段を用いることなく、振動計の出力結果から風速を検出することができる。
【0012】
本開示の第4の態様に係る災害情報取得装置は、上記本開示の第1又は第2の態様に係る災害情報取得装置において、前記風速算出部は、前記振動計が検出した出力結果をフーリエ変換して得られるフーリエスペクトルの所定の周波数領域における振幅の値から前記設置位置の風速の推定値を算出する。
【0013】
上記のような災害情報取得装置においては、専用の計測手段を用いることなく、振動計の出力結果から風速を検出することができる。
【0014】
本開示の第5の態様に係る災害情報取得装置は、上記本開示の第3又は第4の態様に係る災害情報取得装置において、前記振動計は、地盤に設置された第2の振動計をさらに含み、前記風速算出部は、前記第1の振動計の出力結果をフーリエ変換して得られるフーリエスペクトルの振幅の値と前記第2の振動計の出力結果をフーリエ変換して得られるフーリエスペクトルの振幅の値とを比較し、その差が第1の閾値以上であるか否かを検出する第1の振動判定部を備え、前記第1の振動判定部において第1の閾値以上の差を検出したときの前記第1の振動計の出力結果から前記設置位置の風速の推定値の算出を行う。
【0015】
上記のような災害情報取得装置においては、風に起因する振動を精度良く判別することができる。
【0016】
本開示の第6の態様に係る災害情報取得装置は、上記本開示の第3又は第4の態様に係る災害情報取得装置において、前記風速算出部は、前記第1の振動計が検出した振動の継続時間が第2の閾値以上であるか否かを検出する第2の振動判定部を備え、前記第2の振動判定部において第2の閾値以上の継続時間を検出したときの前記第1の振動計の出力結果から前記設置位置の風速の推定値の算出を行う。
【0017】
上記のような災害情報取得装置においては、風に起因する振動を精度良く判別することができる。
【0018】
本開示の第7の態様に係る災害情報取得装置は、上記本開示の第6の態様に係る災害情報取得装置において、前記第2の振動判定部は、Trifunacの累積パワー法及びJenningsの包絡関数法の少なくともいずれか一方を用いて前記継続時間を特定する。
【0019】
上記のような災害情報取得装置においては、振動の継続時間を正確に特定できる。
【0020】
本開示の第8の態様に係る災害情報取得装置は、上記本開示の第1又は第2の態様に係る災害情報取得装置において、前記降雨強度算出部は、前記振動計が検出した出力結果の時刻歴の振幅から前記設置位置の降雨強度の推定値を算出する。
【0021】
上記のような災害情報取得装置においては、専用の計測手段を用いることなく、振動計の出力結果から降雨強度を検出することができる。
【0022】
本開示の第9の態様に係る災害情報取得装置は、上記本開示の第1又は第2の態様に係る災害情報取得装置において、前記降雨強度算出部は、前記振動計が検出した出力結果をフーリエ変換して得られるフーリエスペクトルの所定の周波数領域における振幅の値から前記設置位置の降雨強度の推定値を算出する。
【0023】
上記のような災害情報取得装置においては、専用の計測手段を用いることなく、振動計の出力結果から降雨強度を検出することができる。
【0024】
本開示の第10の態様に係る災害情報取得装置は、上記本開示の第1又は第2の態様に係る災害情報取得装置において、前記土砂災害検出部は、前記振動計が検出した出力結果が単位時間内に第3の閾値を超えた回数から前記設置位置及び前記設置位置周辺における土砂災害の発生を検出する。
【0025】
上記のような災害情報取得装置においては、専用の計測手段を用いることなく、振動計の出力結果から土砂災害の発生を検出することができる。
【0026】
本開示の第11の態様に係る災害情報取得装置は、上記本開示の第1、第2及び第10のいずれかの態様に係る災害情報取得装置において、前記土砂災害検出部は、前記振動計が検出した出力結果のうち所定の周波数以上の周波数の振動成分を抽出するハイパスフィルタを備え、前記ハイパスフィルタで抽出された振動成分から前記設置位置及び前記設置位置周辺における土砂災害の発生を検出する。
【0027】
上記のような災害情報取得装置においては、土砂災害の発生に起因する振動を精度良く判別することができる。
【0028】
本開示の第12の態様に係る災害情報取得装置は、上記本開示の第1、第2、第10及び第11の態様のいずれかに係る災害情報取得装置において、前記土砂災害検出部は、前記振動計の出力結果をフーリエ変換して得られるフーリエスペクトルにガウス関数で示される曲線をフィッティングさせ、その差分を検出するフィッティング部を備え、前記差分に基づいて前記設置位置及び前記設置位置周辺における土砂災害の発生を検出する。
【0029】
上記のような災害情報取得装置においては、専用の計測手段を用いることなく、振動計の出力結果から土砂災害の発生を検出することができる。また、振動計の設置位置から離れた位置で発生した土砂災害をも検出することができる。
【0030】
本開示の第13の態様に係る災害情報取得システムは、通信ネットワークに接続された、設置位置の振動を検出可能な振動計と、前記通信ネットワークを介して前記振動計の出力結果を取得可能であって、前記振動計の出力結果から前記設置位置の災害情報を取得するためのデータ処理部と、を含み、前記データ処理部は、前記振動計の出力結果から前記設置位置の風速の推定値を算出する風速算出部と、前記振動計の出力結果から前記設置位置の降雨強度の推定値を算出する降雨強度算出部と、前記振動計の出力結果から前記設置位置及び前記設置位置周辺における土砂災害の発生を検出する土砂災害検出部と、のうちの2つ以上を含むものである。
【0031】
上記のような災害情報取得システムにおいては、強風に関する情報、大雨に関する情報及び土砂災害の発生に関する情報の2つ以上の災害情報を、単一のシステムで取得することができる。これにより、複合災害が発生した場合にも包括的な対応が行いやすくなる。
【発明の効果】
【0032】
本開示の災害情報取得装置及び災害情報取得システムによれば、計測手段を複数準備する必要がなく、簡単な構造で複数の災害情報を取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本開示の一実施の形態に係る災害情報取得装置の一例を示した機能ブロック図である。
図2図1に示す第1の振動計が検出した最大加速度と風速との関係を示したグラフである。
図3図1に示す第1の振動計が検出したRMS加速度と風速との関係を示したグラフである。
図4図1に示す第1及び第2の振動計が検出した出力結果をフーリエ変換したフーリエスペクトルを3つの方向成分ごとに示したグラフである。
図5】Trifunacの累積パワー法を用いて地震による振動の継続時間と風による振動の継続時間を測定した結果を示すグラフである。
図6】Jenningsの包絡関数法を用いて地震による振動の継続時間と風による振動の継続時間を測定した結果を示すグラフである。
図7図1に示す第2の振動計が検出した加速度と降雨強度との関係を示したグラフである。
図8】降雨強度を変えて観測した図1に示す第2の振動計の出力結果をフーリエ変換して得られたフーリエスペクトルを示したグラフである。
図9図1に示す第2の振動計が検出した出力結果をフーリエ変換したフーリエスペクトルの振幅の値と降雨強度との関係を示したグラフである。
図10図1に示す振動計が検出した加速度波形の一例を示したグラフである。
図11図1に示す振動計が検出した加速度波形の他の一例とそのパルス密度の関係を示したグラフである。
図12図11(C)に示したパルス密度の時系列の推移と、地震による加速度波形のパルス密度の時系列の推移とを並べて示したグラフである。
図13】振動計が検出した加速度波形及び地震による加速度波形にハイパスフィルタを適用した後、図12と同様のグラフを生成したものである。
図14】2つの異なる振動計が土砂災害の発生に起因する振動を検出した結果のフーリエスペクトルを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本開示を実施するための各実施の形態について説明する。なお、以下では本開示の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本開示の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0035】
<装置の全体構成>
図1は、本開示の一実施の形態に係る災害情報取得装置の一例を示した機能ブロック図である。本実施の形態に係る災害情報取得装置1は、図1に示すように、特定の設置位置における振動を検出可能な振動計10と、振動計10の出力結果からその設置位置の災害情報を取得するためのデータ処理部20と、を少なくとも含むものである。
【0036】
振動計10は、災害情報を取得したい任意の設置位置に設置することができ、この設置位置に生じる3次元方向(例えば図1中のX、Y及びZ方向)の振動を計測可能な手段で構成することができる。この振動計10としては、例えば圧電型、サーボ型、電磁式、あるいは半導体型の振動センサ(加速度センサ、速度センサ)やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動センサ(加速度センサ、速度センサ)を採用することができる。本実施の形態に係る振動計10は、2つの振動計、すなわち、周囲を流れる風が当たるように空気流体中に配設された構造物2に設置された第1の振動計11と、地盤(地面)3に設置された第2の振動計12とを含むものが例示されている。なお、振動計10の数や配置はこれに限定されるものではなく、取得したい災害情報等を考慮して適宜変更することができる。
【0037】
第1の振動計11が設置された構造物2は、風が当たる位置に設置された、例えば地盤3から上方に立設した柱状の部材で構成することができる。構造物2としては、風に当たることで振動し得るものであれば、その形状や大きさは特に限定されない。また、この構造物2として、電柱や街灯といった既設構造物を流用することもできる。他方、第2の振動計12が設置された「地盤」は、風が当たった場合でも振動しないものであれば地盤3だけでなく地盤3に設置された構造物等も含まれると解されるべきである。
【0038】
データ処理部20は、振動計10の出力結果に基づいて所望の災害情報を取得するための部材であってよい。このデータ処理部20は、図示しない電源に接続された、例えばシーケンサ(Programmable Logic Controller、PLC)や周知のコンピュータによって実現することができる。したがって、データ処理部20内で実施される各種の演算は、データ処理部20内の図示しないプロセッサ等によって実施され得る。本実施の形態に係るデータ処理部20としては、振動計10の出力結果を収集するデータ収集部21と、データ収集部21で収集された振動計10の出力結果から設置位置の風速の推定値を算出する風速算出部22と、データ収集部21で収集された振動計10の出力結果から設置位置の降雨強度の推定値を算出する降雨強度算出部23と、データ収集部21で収集された振動計10の出力結果から設置位置及び設置位置周辺における土砂災害の発生を検出する土砂災害検出部24と、データ収集部21で収集された振動計10の出力結果から設置位置における地震を検出する地震検出部25と、各種データを記憶可能なメモリ26と、通信インタフェース27とを含むものを例示する。なお、データ処理部20は上述した各構成要素の全てを有している必要はなく、適宜選択して採用することができる。
【0039】
データ収集部21は、振動計10に有線又は無線通信を介して電気的に接続され、振動計10が検知した出力結果を収集することが可能なものであってよい。振動計10の出力結果は、検出した加速度(振動)の計時変化を示すデータ(具体的には加速度波形あるいは振動波形)、あるいはそれに対応する情報が、電気信号の形式でデータ収集部21に送信されるものであってよい。そして、データ収集部21は、受信したデータをメモリ26に少なくとも一時的に格納させるよう機能し得る。
【0040】
風速算出部22、降雨強度算出部23、土砂災害検出部24及び地震検出部25は、データ収集部21で収集された振動計10の出力結果から、所望の災害情報、具体的には強風の有無に関する情報、大雨の有無に関する情報、土砂災害の発生の有無に関する情報及び地震の有無に関する情報を算出あるいは検出するための構成要素であってよい。本実施の形態においては、風速算出部22、降雨強度算出部23、土砂災害検出部24及び地震検出部25をデータ処理部20内に設けている。これにより、災害情報取得装置1内で災害情報のデータを生成することができるため、通信インタフェース27を介して送信されるデータ量を振動計10の出力結果を送信する場合に比べて大幅に削減でき、通信トラフィックの増大を抑制することができる。各構成要素による具体的な算出方法あるいは検出方法については後に詳述する。
【0041】
メモリ26は、周知の揮発性あるいは不揮発性の記録媒体で構成することができ、データ収集部21で収集されたデータや、各種の災害情報を算出あるいは検出する際に用いられる情報が格納され得る。また、通信インタフェース27は、データ処理部20内で算出あるいは検出された各種の災害情報を送受信するためのものであってよい。この通信インタフェース27により、例えば有線又は無線通信を介して接続された通信ネットワークNWを介して管理サーバ4やクライアント端末5に所定の災害情報を送信したり、災害情報の算出あるいは検出を実行するために管理サーバ4あるいはクライアント端末5から送信される制御信号を受信したりすることができる。この通信インタフェース27は、有線又は無線通信を介して通信ネットワークNWに接続されるものを例示しているが、管理サーバ4あるいはクライアント端末5にローカルに接続するためのものであってもよい。
【0042】
上述した構成を備える本実施の形態に係る災害情報取得装置1は、計測手段としての振動計10の出力結果から、複数種類の災害情報を特定することが可能である。そこで、以下には風速算出部22、降雨強度算出部23、土砂災害検出部24及び地震検出部25による災害情報の取得方法について順に説明を行う。
【0043】
<風速の推定値算出方法>
風速を測定する場合には、風車型風向風速計といった風速を測定する専用の計測手段を用いるのが一般的である。これに対し、本実施の形態に係る災害情報取得装置1の風速算出部22では、振動計10の出力結果を用いて風速の測定、厳密には風速の推定値の算出を行う。
【0044】
本実施の形態に係る風速算出部22は、データ収集部21で収集された、振動計10、特に第1の振動計11が検出した出力結果に基づいて、風速の推定値を算出するものとすることができる。すなわち、この風速算出部22は、第1の振動計11及びこの第1の振動計11が設置された構造物2が、風を受けて振動した際に検出される振動波形を利用して、風速の推定値を算出するものであってよい。
【0045】
第1の振動計11の出力結果と第1の振動計11の周囲に生じた風の風速との相関関係を特定するために、第1の振動計11に任意の風速の風を当てた際の出力結果を図2及び図3に示す。ここで、図2は、図1に示す災害情報取得装置の第1の振動計が検出した最大加速度と風速との関係を示したグラフであって、図2(A)はグラフ中に実際に第1の振動計11で観測した最大加速度を観測点としてプロットしたものであり、図2(B)は図2(A)に示した観測点をモデル化した関数を示したものである。また、図3は、図1に示す災害情報取得装置の第1の振動計が検出したRMS(root mean square、二乗平均平方根、「実効値」ともいう)加速度と風速との関係を示したグラフであって、図3(A)はグラフ中に実際に第1の振動計11で複数回観測したRMS加速度を観測点としてプロットしたものであり、図3(B)は図3(A)に示した観測点をモデル化した関数を示したものである。ちなみに、図2図3とを比較するとわかる通り、最大加速度よりもRMS加速度の方が観測点のバラツキが小さくなる傾向が確認できる。
【0046】
図2及び図3中に点で示したものが観測点である。これらの観測点から、風に当たった第1の振動計11及び構造物2は、いわゆるガスト応答(あるいはバフェッティング)によって強制振動していることが分かる。ここで、ガスト応答による強制振動は、図2(A)及び図3(A)に点線で囲ったA部分及びC部分に示したように、指数関数を用いてモデル化することができる。
【0047】
他方、第1の振動計11及び構造物2は、風が当たった際その下流側にカルマン渦を放出することに起因して渦励振(あるいはギャロッピング)が生じ得る。この渦励振に起因する特定の風速時における加速度の上昇(図2(A)及び図3(A)で矢印B及びDで示した部分)は、ガウス関数を用いてモデル化することができる。
【0048】
上述した事項から、風速算出部22は、例えば下記式(1)に示す回帰モデルを用い、第1の振動計11が検出した出力結果、例えばRMS加速度から、第1の振動計11が設置された設置位置の風速の推定値を算出することができる。
【数1】

ここで、xは風速、yは第1の振動計の出力結果、a、b、c、α及びβは任意の定数である。
【0049】
風速算出部22による風速の算出方法は、上述した式(1)を用いた方法に限定されない。具体的には、第1の振動計11が検出した出力結果をフーリエ変換したフーリエスペクトルから設置位置の風速の推定値を算出することもできる。第1の振動計11が検出した出力結果をフーリエ変換したフーリエスペクトルのスペクトル強度(所定の周波数領域におけるフーリエ振幅の平均値)と風速との間には、正の相関が認められる。したがって、各方向のスペクトル強度は、回帰分析を用いて上記式(1)で示した回帰モデルにモデル化することができる。
【0050】
したがって、上述したモデル化された回帰式(1)を用いることで、第1の振動計11の出力結果から、第1の振動計11が設置された設置位置の風速の推定値xを算出することができる。
【0051】
ところで、第1の振動計11が検出する振動は、風に起因するものに限られない。例えば第1の振動計11が設置された設置位置に地震が発生した際には、地震による振動(地震動)も検出され得る。そのため、精度よく風速の推定値を算出するためには、第1の振動計11が検出した振動の要因を特定する必要がある。そこで、以下には第1の振動計11が検出した出力結果から風速の推定値を算出するための一方法として、風に起因する振動とそれ以外の要因による振動とを区別する方法について説明する。
【0052】
第1の振動計11が検出した振動が風に起因するものであるか、他の要因、特に地震に起因するものであるのかを区別するために、本実施の形態に係る災害情報取得装置1は、振動計10として第1の振動計11に加えて上述した第2の振動計12を含むものを例示する。第2の振動計12は、地盤3、特に構造物2に比較的隣接した地盤3に設置するとよい。ここでいう隣接とは、仮に地震が発生した際に、第1の振動計11により検出される地震動と、第2の振動計12により検出される地震動とが、概ね同一となる程度の位置関係を指すものとする。したがって、第1の振動計11及び第2の振動計12の位置は、図1に示すように厳密に隣接している必要はなく、一定の距離だけ離れていてもよい。
【0053】
加えて、風速算出部22は、図1に示すように、第1の振動計11の出力結果と第2の振動計12の出力結果とを比較した差分から、第1の振動計11の出力結果が風に起因する振動成分を含むか否かを判定する第1の振動判定部31を含んでいてよい。具体的には、この第1の振動判定部31は、第1の振動計11の出力結果をフーリエ変換して得られるフーリエスペクトルの振幅の値と、第2の振動計12の出力結果をフーリエ変換して得られるフーリエスペクトルの振幅の値とを比較し、その差が第1の閾値以上であるか否かを検出することで、第1の振動計11の出力結果が風に起因するものを含むか否かを判定することができるものであってよい。
【0054】
図4は、第1及び第2の振動計が検出した出力結果をフーリエ変換したフーリエスペクトルをX、Y及びZの3つの方向成分ごとに示したグラフであって、図4(A)乃至図4(C)は、第1の振動計が検出した出力結果のX、Y及びZ方向成分のフーリエスペクトルをそれぞれ示したものであり、図4(D)乃至図4(F)は、第2の振動計が検出した出力結果のX、Y及びZ方向成分のフーリエスペクトルをそれぞれ示したものである。なお、図4(A)乃至図4(F)には、異なる風速(0.4m/s、3.1m/s及び6.2m/s)の風を各振動計に当てたときの出力結果のフーリエスペクトルが併記されている。
【0055】
図4から分かるように、地盤3に設置された第2の振動計12の出力結果に対応するフーリエスペクトルの振幅(フーリエ振幅)は、風速が変化してもほとんど変化しない。他方、構造物2に設置された第1の振動計11の出力結果に対応するフーリエスペクトルの振幅は、風速に比例して大きく変化している。このことから、第1の振動判定部31は、第1の振動計11の出力結果のうち、第2の振動計12が検出できない振動成分を風による振動成分であると判断することで、風速算出部22が風に起因する振動以外の振動成分を風によるものと誤認することを抑制することができる。
【0056】
第1の振動判定部31による判定手法は、例えば第1及び第2の振動計11、12の出力結果のフーリエスペクトルの振幅の値を比較し、その差が第1の閾値以上であるか否かに基づいて判定するものとすることができる。第1の閾値は、実験等に基づいて予め設定しておけばよい。そして、風速算出部22は、第1の閾値以上の差分が検出されたときの第1の振動計11の出力結果から風速の推定値の算出を行うことで、風による振動成分に基づいた風速の推定値の算出を実現できる。
【0057】
加えて、上述した風速算出部22による風速の推定値の算出と共に、第1の閾値以上の差分が検出されたときの第2の振動計11の出力結果から、後述する地震検出部25を用いて地震の検出を行ってもよい。風速算出部22による風速の推定値の算出と地震の検知を並行して行えば、風速算出部22による風速の推定値の算出の際、地震による振動成分を考慮した算出結果を得ることができる。したがって、地震と強風との複合災害が発生した場合であっても、両方の災害情報を精度良くユーザに提供することができる。
【0058】
第1の振動計11の出力結果が風による振動成分を含むか否かを判定する他の方法として、振動の継続時間を利用することもできる。これに関連して、本実施の形態に係る風速算出部22は、上述した第1の振動判定部31に代えて、あるいは第1の振動判定部31に加えて、第2の振動判定部32を含むことができる。
【0059】
第2の振動判定部32は、第1の振動計11が検出した振動の継続時間が第2の閾値以上であるか否かを検出するものであってよい。第2の振動判定部32による振動の継続時間の測定方法は特に限定されないが、例えばTrifunacの累積パワー法及びJenningsの包絡関数法の少なくともいずれか一方を用いることができる。ここで、Trifunacの累積パワー法とは、振動計測記録の初めから終わりまでの時刻歴の振幅二乗値を時間積分したものを累積パワーとして、この累積パワーの時間軸上の一定区間を継続時間と定義するものである。一般的には累積パワーが5%~95%の区間とする場合が多い。また、Jenningsの包絡関数法とは、地震波の時刻歴波形の経時特性を模擬するために考えられた方法であり、包絡関数は初動部、主要動部、コーダ部(coda wave)からなっている。振動計測記録をこの包絡関数にあてはめ、初動部の開始時間からコーダ部の終了時間までを継続時間とするものである。
【0060】
図5は、振動計で検出される振動の継続時間を、Trifunacの累積パワー法を用いて測定した結果を示したグラフであって、図5(A)は過去に発生したいくつかの地震により生じた振動の継続時間を示したものであり、図5(B)は3つの時点における風により生じた振動の継続時間を示したものである。また、図6は、振動計で検出される振動の継続時間を、Jenningsの包絡関数法を用いて測定した結果を示したグラフであって、図6(A)は過去に発生したいくつかの地震により生じた振動の継続時間を示したものであり、図6(B)は3つの時点における風により生じた振動の継続時間を示したものである。図5及び図6から分かるように、いずれの測定手法においても、地震により生じた振動は100秒未満の比較的短い継続時間であったのに対し、風により生じた振動は1500秒を超える比較的長い継続時間であった。したがって、第2の振動判定部32は、第2の閾値を100秒以上1500秒未満の範囲内の任意の値(例えば200秒)に設定することで、振動計で検出される振動が風による振動成分を含むか否かを精度良く判定することができる。
【0061】
以上説明した通り、本実施の形態に係る災害情報取得装置1の風速の推定値算出方法によれば、風速算出部22により、振動計10が検出した出力結果から風速の推定値を算出することができる。したがって、風車型風向風速計のような専用の計測手段を用いることなく、強風に関する災害情報を取得することができる。なお、上述した算出方法は、専用の計測手段を用いた方法に比べてその精度が相対的に低くなる傾向がある。しかしながら、本実施の形態に係る災害情報取得装置1においては、例えば風速10m/sを超えるような強風が発生しているか否かが特定できれば、災害情報としては十分に利用できる。したがって、上述した算出方法であっても、利用可能な精度の災害情報を取得できるものであるといえる。
【0062】
また、上述した方法によれば、風速の計測手段として振動計10を用いているため、振動計10の出力結果を地震等の風速以外の災害情報の取得に利用することができる。よって、複数の災害情報を一括して取得することを可能とし、以て包括的な災害対策が可能となる。
【0063】
<降雨強度の推定値算出方法>
降雨強度を測定する場合には、実際に降った雨を収集して測定する転倒ます型雨量計やレーザー光により測定するディストロメーターのような専用の計測手段を用いるのが一般的である。他方、本実施の形態に係る災害情報取得装置1の降雨強度算出部23においては、風速の場合と同様に、データ収集部21で収集された振動計10の出力結果を用いて降雨強度の測定、厳密には降雨強度の推定値の算出を行う。
【0064】
本実施の形態に係る災害情報取得装置1の降雨強度算出部23は、振動計10、例えば第2の振動計12が検出した出力結果に基づいて降雨強度の推定値を算出するものとすることができる。換言すれば、この降雨強度算出部23は、第2の振動計12上、あるいは第2の振動計12の近傍に落下した雨粒に起因する振動波形を利用して降雨強度の推定値を算出するものであってよい。なお、降雨強度算出部23における降雨強度の推定値の算出に際し、第1の振動計11が検出した出力結果を利用することもできる。しかし、第1の振動計11は上述した通り風による振動を含み得るため、実質的に風による振動を含むことがない第2の振動計12の出力結果を用いる方が簡単に高い精度の算出結果が得られることが期待できる。
【0065】
第2の振動計12の出力結果と降雨強度との相関関係を特定するために、第2の振動計12上に人工的に降雨を生じさせた際の出力結果を図7に示す。ここで、図7は、図1に示す第2の振動計が検出した加速度と降雨強度との関係を示したグラフであって、図7(A)乃至図7(C)は第2の振動計12が検出した出力結果のX、Y及びZ方向の各成分の加速度、特にRMS加速度を観測点としてそれぞれプロットしたものである。
【0066】
図7から分かる通り、各方向の降雨強度毎のRMS加速度の観測結果は、3つの方向成分それぞれについて、回帰分析を用いて例えば図7中の点線及び下記式(2)で示した線形の回帰モデルにモデル化することができる。
【数2】

ここで、xはRMS加速度、yは降雨強度、a及びbは任意の定数である。
【0067】
したがって、上述したモデル化された回帰式(2)を用いることで、第2の振動計12の出力結果の時刻歴の振幅(具体的には、加速度あるいは速度)から、第2の振動計12が設置された設置位置の降雨強度の推定値yを算出することができる。
【0068】
図8は、降雨強度を変えて観測した図1に示す第2の振動計の出力結果をフーリエ変換して得られたフーリエスペクトルを示したグラフであって、図8(A)乃至図8(C)は第2の振動計が検出した出力結果のX、Y及びZ方向の各成分のフーリエスペクトルをそれぞれ示したものである。また、図8(A)乃至図8(C)内のR0で示したものが降雨強度ゼロの場合のフーリエスペクトルを示し、それ以外のものは降雨有(具体的な降雨強度は、それぞれ15mm/h、75mm/h、135mm/h及び300mm/hに設定されている)の場合のフーリエスペクトルを示したものである。図8から、第2の振動計12のフーリエスペクトルの振幅の値は、比較的高い周波数領域において降雨強度に比例して高くなるよう推移する傾向が認められる。この点を踏まえ、上記フーリエスペクトルのスペクトル強度(所定の高周波数域帯におけるフーリエ振幅の平均値)の値と降雨強度との関係を図9に示す。
【0069】
図9は、図1に示す第2の振動計が検出した出力結果をフーリエ変換したフーリエスペクトルの特定の周波数領域におけるスペクトル強度の値と降雨強度との関係を示したグラフであって、図9(A)乃至図9(C)は、第2の振動計12が検出した出力結果のX、Y及びZ方向の各成分のフーリエスペクトルのスペクトル強度の値を観測点としてそれぞれプロットしたものである。ここで、上述した特定の周波数領域は、比較的高い周波数領域の範囲内で適宜設定可能なものである。図9から分かる通り、各方向の降雨強度毎のスペクトル強度の特定の周波数領域における観測結果は、図7に示したものと同様に、3つの方向成分それぞれについて、回帰分析を用いて例えば図9中の点線及び下記式(3)で示した線形の回帰モデルにモデル化することができる。
【数3】

ここで、xはスペクトル強度、yは降雨強度、a及びbは任意の定数である。
【0070】
したがって、上述したモデル化された回帰式(3)を用いることで、第2の振動計12の出力結果から、第2の振動計12が設置された設置位置の降雨強度の推定値yを算出することができる。
【0071】
以上説明した通り、本実施の形態に係る災害情報取得装置1の降雨強度の推定値算出方法によれば、降雨強度算出部23により、振動計10が検出した出力結果から降雨強度の推定値を算出することができる。したがって、転倒ます型雨量計やレーザー光により測定するディストロメーターのような専用の計測手段を用いることなく、大雨に関する災害情報を取得することができる。なお、上述した算出方法は、推定値を算出するものであるため、上記専用の計測手段のように降雨を実測するものに比べるとその精度が相対的に低くなる傾向がある。しかしながら、本実施の形態に係る災害情報取得装置1においては、おおよその降雨強度(例えば二桁オーダーの精度の降雨強度)が特定できれば、災害情報としては十分に利用できる。したがって、上述した算出方法であっても、利用可能な精度の災害情報を取得できるものであるといえる。
【0072】
また、上述した方法によれば、降雨強度の計測手段として振動計10を用いているため、振動計10の出力結果を地震等の降雨強度以外の災害情報の取得に利用することができる。よって、複数の災害情報を一括して取得することを可能とし、以て包括的な災害対策が可能となる。
【0073】
<土砂災害発生検出方法>
がけ崩れや地滑り、土石流といった土砂災害は、土砂災害が発生する可能性の高い場所に予め設置されたワイヤーセンサのような専用の計測手段を用いるのが一般的である。他方、本実施の形態に係る災害情報取得装置1の土砂災害検出部24においては、データ収集部21で収集された振動計10の出力結果を用いて、土砂災害の発生の検出を行う。
【0074】
本実施の形態に係る土砂災害検出部24は、データ収集部21で収集された振動計10が検出した出力結果に基づいて、土砂災害の発生を検出するものとすることができる。換言すると、この土砂災害検出部24は、第1及び第2の振動計11、12の少なくともいずれかが検出した振動が土砂崩れの発生によるものであるか否かを検出することができるものであってよい。なお、土砂災害検出部24による土砂災害の検出は、第1及び第2の振動計11、12のいずれの出力結果を利用してもよい。
【0075】
土砂災害の発生を検出する具体的な一方法として、土砂災害検出部24は、振動計10が検出した振動波形のうち、第3の閾値を超えたパルスのピークの数(すなわち、振動波形が第3の閾値を超えた回数)に基づいて、土砂災害の発生を検出する方法を採用することができる。なお、当該方法で土砂災害の発生を高精度に検出するために、振動計10は土砂災害が発生する可能性の高い場所、あるいはその近傍に配設しておくとよい。
【0076】
図10は、図1に示す振動計が検出した加速度波形の一例を示したグラフである。なお、図10に示した加速度波形は、振動計10が検出した出力結果のうち、Z方向成分の加速度波形を例示的に示したものである。本実施の形態に係る土砂災害検出部24では、図10に示すように、第3の閾値が±100cm/sに設定されている。そして、土砂災害検出部24は、この第3の閾値を超えたパルスのピーク(図10中に矢印Pを付した部分)を検出し、検出されたパルスの単位時間(例えば1秒)当たりの数(すなわちパルス密度)に基づいて、土砂災害の発生を検出することができる。なお、第3の閾値の具体的な値は上記のものに限定されず、その検出精度を考慮して適宜変更することができる。
【0077】
図11は、図1に示す振動計が検出した土砂移動に起因する加速度波形の他の一例とそのパルス密度の関係を示したグラフであって、図11(A)は、加速度波形を示したものであり、図11(B)は、図11(A)の加速度波形のうち第3の閾値を超えたパルスのピークを検出した結果を時系列で示したものであり、図11(C)は、図11(B)で検出されたパルスのピークの数(パルス密度)の変化を時系列で示したものである。図11(A)に示す加速度波形のうち、±100cm/sに設定された第3の閾値を超えるパルスのピークは、図11(B)に図示されたタイミングで出現しており、その出現頻度は、図11(C)に示したものとなる。ここで、土砂災害による振動であると判断するパルス密度を、例えば40回/秒に設定していた場合、土砂災害検出部24は、図11(C)より、振動計10が加速度波形を検出してから12秒後に土砂災害が発生したと特定することができる。なお、土砂災害に起因する振動であると判断するパルス密度をどの程度とするかについては、適宜調整することができる。
【0078】
ところで、振動計10が検出する振動は、土砂災害に起因するものに限られるものではなく、他の災害、例えば地震に起因する振動をも検出し得る。図12は、図11(C)に示したパルス密度の時系列の推移と、地震による加速度波形のパルス密度の時系列の推移とを並べて示したグラフであって、図12(A)は図11(C)に対応するものであり、図12(B)及び図12(C)は過去に発生した2つの地震による地震動を振動計で検出した結果を、図11(C)と同様の手法で処理して得られるパルス密度を時系列で示したものである。この図12から分かる通り、地震が発生した際に振動計10が検出し得る加速度波形から導かれるパルス密度は、土砂災害が発生した際に振動計10が検出し得る加速度波形から導かれるパルス密度と一見すると類似している。このことから、特に、振動計10の設置位置に地震が発生した際には、地震による振動(地震動)を土砂災害による振動と誤認する可能性がある。そこで、以下には、土砂災害検出部24が、振動計10の出力結果から土砂災害の発生に起因する振動を確実に検出するための一方法として、土砂災害に起因する振動と地震に起因する振動とを区別するための方法について説明する。
【0079】
地震による振動と土砂災害の発生による振動とを分析したところ、地震による振動は、土砂災害の発生による振動に比べて低い周波数領域の振動がほとんどであることが分かった。そこで、本実施の形態に係る土砂災害検出部24としては、振動計10が検出した出力結果のうち所定の周波数以上の周波数の振動成分を抽出するハイパスフィルタ41を利用することで、振動計10が検出した振動が土砂災害の発生に起因するものであるのか地震動に起因するものであるのかを特定するものを以下に例示する。
【0080】
ハイパスフィルタ41は、振動計10が検出した出力結果のうち、比較的低い周波数領域の振動成分を遮断し、それ以外の周波数領域の振動成分を通過させるものであってよい。このハイパスフィルタ41の閾値は、地震に起因する振動成分を遮断可能な周波数に設定されていればよい。図12に示した土砂災害に起因する振動を検出したグラフと、地震に起因した振動を検出したグラフに、上述のハイパスフィルタ41を適用した結果を図13に示す。図13から分かるように、ハイパスフィルタ41を適用すると、土砂災害に起因する振動のパルス密度には殆ど変化がない(図13(A)参照)のに対し、地震に起因する振動は実質的に全ての成分がハイパスフィルタ41を通過できないために、第3の閾値を超えるパルスのピークが検出されなくなる(図13(B)及び図13(C)参照)。
【0081】
したがって、土砂災害検出部24は、ハイパスフィルタ41を通過した後の振動成分を分析することにより、地震に起因する振動を土砂災害の発生による振動と誤認することがなくなり、精度よく土砂災害の発生を検出することができる。
【0082】
振動計10の近くで発生した土砂災害の検出については、上述した方法で高精度な検出が実現できる。しかしながら、振動計10の設置位置から離れた位置で土砂災害が生じた場合には、その土砂災害に起因して生じた振動成分のうち比較的高い周波数領域の成分(振幅が大きいパルス)は、振動計10の設置位置に到達する過程で減衰してしまう。したがって、上述のパルス密度を用いた土砂災害の検出手法のみでは、振動計10の設置位置から離れた位置で発生した土砂災害については正確に検出できない場合があり得る。そこで、本実施の形態に係る土砂災害検出部24は、上述したハイパスフィルタ41に加えて、振動計10の設置位置から離れた位置で発生した土砂災害を検出するためのフィッティング部42をさらに含むことができる。本実施の形態に係るフィッティング部42は、振動計10が検出した出力結果をフーリエ変換して得られるフーリエスペクトルに任意の曲線をフィッティングするものであってよい。
【0083】
図14は、2つの異なる振動計が土砂災害の発生に起因する振動を検出した結果のフーリエスペクトルを示したグラフであって、図14(A)乃至図14(C)は一の振動計が検出した出力結果のX、Y及びZ方向成分のフーリエスペクトルをそれぞれ示したものであり、図14(D)乃至図14(F)は他の振動計が検出した出力結果のX、Y及びZ方向成分のフーリエスペクトルをそれぞれ示したものである。図14には、各フーリエスペクトルに任意の曲線をフィッティングした結果得られる近似曲線も示されている。また、上述した一の振動計及び他の振動計は、いずれも第2の振動計12と同様に地盤に設置された振動計で構成することができるが、その設置位置はそれぞれ異なっていてよい。図14中に示された観測記録から、土砂災害によって発生した振動のフーリエスペクトルは、安定して単峰の凸形状となるといえる。したがって、土砂災害によって発生した振動のフーリエスペクトルは、例えば下記式(4)に示すガウス関数にモデル化することができるといえる。
【数4】

ここで、cはスペクトルピークの振幅(cm/s・s)、αはスペクトルピークの周波数(Hz)、βはスペクトル峰の幅(Hz)である。なお、本実施の形態においては、振動計の出力結果が加速度記録を含むものを例示しているため、上記cに対応するスペクトルピーク振幅の単位は(cm/s・s)となっているが、振動計の出力結果が速度記録、を含むものである場合には、上記cに対応するスペクトルピーク振幅の単位は(cm/s・s)となる。
【0084】
上述した事項を考慮すると、土砂災害検出部24は、フィッティング部42において、前記振動計10の出力結果のフーリエスペクトルに対して式(4)に示すガウス関数で示される曲線をフィッティングさせ、両者、すなわちフーリエスペクトルとガウス関数の差分に基づいて、振動計10で検出された振動が土砂災害の発生に起因するものであると特定することができる。当該特定に際しては、例えば上述した差分と予め設定した第4の閾値とを比較すればよい。また、上記差分には、例えば残差二乗和や正規化したRMSE(二乗平均平方根誤差)等を指標として利用することができる。
【0085】
したがって、土砂災害検出部24は、フィッティング部42において、振動計10の検出結果からガウス関数で表される近似曲線を連続的に作成し、計測された振動のフーリエスペクトルと比較することで、振動計10から離れた位置で発生した土砂災害をも検出することができるようになる。
【0086】
以上説明した通り、本実施の形態に係る災害情報取得装置1の土砂災害発生検出方法によれば、土砂災害検出部24により、振動計10が検出した出力結果から、振動計10の設置位置に近い位置で発生した土砂災害のみならず、振動計10の設置位置から離れた位置で発生した土砂災害をも検出することができる。したがって、ワイヤーセンサのような専用の計測手段を用いることなく、土砂災害に関する災害情報を取得することができる。また、上述した土砂災害発生検出方法によれば、振動計10の設置位置から離れた位置で発生した土砂災害をも検出できるため、ワイヤーセンサを設置するよりも簡単に広範囲の土砂災害の検出が可能となる。なお、土砂災害の発生の検出精度をさらに向上させるために、別途周知のジオフォン(受振器)等を補完的に採用してもよい。
【0087】
また、上述した方法によれば、土砂災害の計測手段として振動計10を用いているため、振動計10の出力結果を地震等の土砂災害以外の災害情報の取得に利用することができる。よって、複数の災害情報を一括して取得することを可能とし、以て包括的な災害対策が可能となる。
【0088】
<地震検出方法>
最後に、本実施の形態に係る災害情報取得装置1を用いて地震を検出する場合について簡単に説明する。本実施の形態に係る災害情報取得装置1は、振動計10の出力結果から振動計10の設置位置における地震を検出する地震検出部25を含むことができる。地震検出部25において、振動計10が検出した加速度波形から地震の震度を検出する際は、従来周知の換算手法を採用すればよい。具体的には、振動計で検出されたX、Y及びZ方向成分の加速度を、フーリエ変換、フィルタ処理、逆フーリエ変換の順で処理し、得られた値からベクトル波形を合成する。そして得られたベクトル波形の合成値Aを用いてI=2logA+0.94を計算し、計測震度Iを求めることで、地震の震度を検出すればよい。また、地震の検出精度をさらに向上させるために、周知の磁気センサ等を別途採用してもよい。
【0089】
上述した地震検出方法によって取得される災害情報は、本実施の形態に係る災害情報取得装置1において算出あるいは検出される他の災害情報の取得を妨げない。具体的には、風速算出部22による風速の推定値の算出と地震検出部25による地震の検出とを同時に行う場合には、例えば、風速の推定値の算出には第1の振動計11が検出した出力結果を利用し、地震の検出には第2の振動計12が検出した出力結果を利用すればよい。あるいは、上述した通り、風による振動は地震の振動に比べてその継続時間が長いことを考慮し、風速算出部22において、第1の振動計11で検出したデータのうち、地震が検知された時間以外の時間のデータに基づいて風速の推定値の算出を行うことによっても、地震と風速のいずれをも精度よく算出及び検出できる。
【0090】
また、降雨強度算出部23による降雨強度の推定値の算出と地震検出部25による地震の検出とを同時に行う場合には、振動計が検出した振動の周波数特性に基づいて当該振動が降雨に起因するものであるのか地震に起因するものであるのかを判別すればよい。具体的には、降雨のある期間に地震の検出を行いたい場合には、比較的低い周波数のみを通過させるローパスフィルタを用いて振動計が検出した出力結果から所望の周波数特性の成分を抽出した後、地震検出部25にて地震の検出を行えばよい。さらに、土砂災害検出部24による土砂災害の発生の検出と地震検出部25による地震の検出とを同時に行う場合には、例えば振動計10が検出した振動の周波数領域を参酌することで両者を区別して検出すればよい。
【0091】
以上説明した通り、本実施の形態に係る災害情報取得装置1の地震検出方法によれば、地震検出部25により、振動計10が検出した出力結果から、振動計10の設置位置で発生した地震を、他の災害情報の検出を妨げることなく検出することができる。したがって、災害情報取得装置1で複数の災害情報を取得することができるようになる。
【0092】
加えて、本実施の形態に係る災害情報取得装置1においては、地震以外の災害情報についても、互いの取得を妨げることなく、並行して算出あるいは検出を行うことができる。具体的にいえば、例えば風速の推定値の算出と降雨強度の推定値の算出とは、異なる振動計の出力結果を用いてそれぞれ算出を行うことで、両者を別々に算出することができる。また、降雨強度の推定値の算出と土砂災害の発生の検出とは、その振動成分の大きさが全く異なるため、振動成分の大きさに基づいて両者を区別して算出及び検出を行えばよい。さらに、風速の推定値の算出と土砂災害の発生の検出とは、風速の推定値の算出と降雨強度の推定値の算出の場合と同様に、異なる振動計の出力結果を用いて算出及び検出を行うことで、両者を別々に算出及び検出することができる。
【0093】
また、上述した一実施の形態に係る災害情報取得装置1は、振動計10とデータ処理部20とがローカルに接続された一装置であるとして説明を行ったが、この災害情報取得装置1を、振動計10とデータ処理部20とが別体で存在するシステムの態様に変更することもできる。具体的には、振動計10とは離れた位置に設置された情報端末(例えば図1に示すサーバ4等)をデータ処理部20として機能させる、災害情報取得システムとすることもできる。この場合は、データ処理部20として機能する情報端末と振動計10とを通信ネットワークを介して接続し、振動計10の出力結果を当該情報端末に送信可能とすることで、情報端末にて振動計10が設置された設置位置の災害情報を取得することができるようになる。
【0094】
さらに、上述した本実施の形態において例示したいくつかの算出方法あるいは検出方法で用いられた回帰式は、他の回帰分析によるものを代替的に採用することができる。すなわち、上述した以外のパラメトリック回帰式を代替的に採用することもできるし、ノンパラメトリック回帰を用いて同様の結果を得るようにしてもよい。
【0095】
本開示は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本開示の技術思想に含まれるものである。
【符号の説明】
【0096】
1 災害情報取得装置
2 構造物
3 地盤
10 振動計
11 第1の振動計
12 第2の振動計
20 データ処理部
21 データ収集部
22 風速算出部
23 降雨強度算出部
24 土砂災害検出部
25 地震検出部
26 メモリ
27 通信インタフェース
31 第1の振動判定部
32 第2の振動判定部
41 ハイパスフィルタ
42 フィッティング部
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