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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148981
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】空気調和機及びウイルス低減方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20231005BHJP
   F24F 8/192 20210101ALI20231005BHJP
   F24F 8/108 20210101ALI20231005BHJP
   F24F 3/14 20060101ALI20231005BHJP
   F24F 3/16 20210101ALI20231005BHJP
   F24F 7/04 20060101ALI20231005BHJP
   B03C 3/02 20060101ALI20231005BHJP
   B03C 3/155 20060101ALI20231005BHJP
   B03C 3/68 20060101ALI20231005BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20231005BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20231005BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20231005BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20231005BHJP
   F24F 110/70 20180101ALN20231005BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F8/192
F24F8/108 100
F24F3/14
F24F3/16
F24F7/04 Z
B03C3/02 Z
B03C3/155 A
B03C3/68 Z
A61L9/16 F
A61L9/16 Z
F24F11/64
F24F110:10
F24F110:20
F24F110:70
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057289
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 祐二
(72)【発明者】
【氏名】田中 大輔
(72)【発明者】
【氏名】藤里 淳史
(72)【発明者】
【氏名】喜多村 文
(72)【発明者】
【氏名】武内 幸生
【テーマコード(参考)】
3L053
3L056
3L058
3L260
4C180
4D054
【Fターム(参考)】
3L053BC01
3L053BC05
3L053BD02
3L056BD02
3L056BD03
3L058BC07
3L260AB11
3L260AB18
3L260BA09
3L260BA38
3L260BA42
3L260CA12
3L260CA13
3L260CA35
3L260EA22
3L260FB61
3L260FC22
3L260FC23
4C180AA07
4C180AA16
4C180DD08
4C180DD09
4C180DD11
4C180KK01
4C180KK03
4C180KK04
4C180LL01
4C180LL15
4D054AA11
4D054BA01
4D054CA11
4D054CA12
4D054CA13
4D054CA14
4D054CA20
4D054EA22
4D054EA24
4D054EA30
(57)【要約】
【課題】調和させる対象の領域の状態に応じて、ウイルスを低減できる。
【解決手段】対象領域の空気を給気し、給気した空気を対象領域に排出する配管と、配管に配置され、通過する空気に含まれるウイルスを低減するウイルス低減手段と、対象領域の状態を検出する状態検出手段と、状態検出手段の検出結果に基づいてウイルス低減手段の稼働を制御する演算装置と、を含み、演算装置は、判定基準を記憶する記憶部と、判定基準と状態検出手段とに基づいて、ウイルス低減手段を稼働させるか停止させるかを判断する制御部と、を含み、判定基準は、対象領域のウイルスの感染性を判断する基準である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象領域の空気を給気し、給気した空気を対象領域に排出する配管と、
前記配管に配置され、通過する空気に含まれるウイルスを低減するウイルス低減手段と、
前記対象領域の状態を検出する状態検出手段と、
前記状態検出手段の検出結果に基づいて前記ウイルス低減手段の稼働を制御する演算装置と、を含み、
前記演算装置は、判定基準を記憶する記憶部と、前記判定基準と前記状態検出手段とに基づいて、前記ウイルス低減手段を稼働させるか停止させるかを判断する制御部と、を含み、
前記判定基準は、前記対象領域の前記ウイルスの感染性を判断する基準である空気調和機。
【請求項2】
前記判断基準は、前記対象領域の感染性を判断する基準が、前記ウイルスに関する情報を機械学習して算出される請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記ウイルスに関する情報は、前記ウイルスの感染者の数、増加率、前記ウイルスに対するワクチンの接種人数を含む請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記状態検出手段は、温度センサ、湿度センサ、COセンサ及び埃センサの少なくとも1つを含み、
前記判断基準は、前記状態検出手段で検出した、前記対象領域の温度、湿度及びCO濃度、埃の量の少なくとも1つを含む請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記状態検出手段は、前記配管を通過するウイルスを検出するウイルス検出部を含む請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記状態検出手段は、通信を介して情報を取得する外部情報取得部を備え、
前記判断基準は、前記外部情報取得部が取得したインターネットのソーシャルネットワークサイトに記載されたウイルスに関する情報を含む請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の空気調和機。
【請求項7】
前記ウイルス低減手段は、前記配管の所定領域に電界を形成する電極を有し、前記空気に含まれるウイルスを前記電極で捕集する電気集塵機を含む請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の空気調和機。
【請求項8】
前記ウイルス低減手段は、前記配管に配置されたフィルタを有する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の空気調和機。
【請求項9】
前記ウイルス低減手段は、前記配管を流れる空気を加熱する加熱部、前記配管を流れる空気を除湿する除湿器の少なくとも一方を含む請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の空気調和機。
【請求項10】
対象領域の空気を給気し、給気した空気を対象領域に排出する配管に配置され、通過する空気に含まれるウイルスを低減するウイルス低減手段を稼働させるウイルス低減方法であって、
前記対象領域の状態を検出する状態検出ステップと、
判定基準と、前記判定基準と前記状態検出ステップの検出結果とに基づいて、前記ウイルス低減手段を稼働させるか停止させるかを判断するステップと、
判断結果に基づいて、前記ウイルス低減手段の稼働を制御するステップと、を含み、
前記判定基準は、前記対象領域の前記ウイルスの感染性を判断する基準であるウイルス低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和機及びウイルス低減方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家屋やビルディング、航空機、車両その他の内部空間における空気の温度や湿度を適切に調整する空気調和機がある。空気調和機には、埃や花粉といった粒子を捕集する機構を備えるものがある。特許文献1に記載の空気調和機は、埃や花粉を捕集するフィルタと電気集塵機を備える。特許文献2に記載の空気調和機は、埃センサを備え、出力値に重みづけを行い、運転する。また、特許文献3に記載の空気清浄機は、会話の音声やソーシャルネットワークサービス(SNS Social Network Service)の情報等を統合し、感染に関する情報を音声出力やディスプレイ表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-32132号公報
【特許文献2】特開2019-158162号公報
【特許文献3】国際公開第2020/031599号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウイルスは、埃よりも小さいため埃のセンサ等では検出の精度を高くすることが難しい。また、ウイルスを抑制するための運転を常時行うと空気調和機が制御する空間の快適さが低下すること、電力消費が増大することがある。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、調和させる対象の領域の状態に応じて、ウイルスを低減できる空気調和機及びウイルス低減方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の空気調和機は、対象領域の空気を給気し、給気した空気を対象領域に排出する配管と、前記配管に配置され、通過する空気に含まれるウイルスを低減するウイルス低減手段と、前記対象領域の状態を検出する状態検出手段と、前記状態検出手段の検出結果に基づいて前記ウイルス低減手段の稼働を制御する演算装置と、を含み、前記演算装置は、判定基準を記憶する記憶部と、前記判定基準と前記状態検出手段とに基づいて、前記ウイルス低減手段を稼働させるか停止させるかを判断する制御部と、を含み、前記判定基準は、前記対象領域の前記ウイルスの感染性を判断する基準である。
【0007】
上記の目的を達成するための本開示のウイルス低減方法は、対象領域の空気を給気し、給気した空気を対象領域に排出する配管に配置され、通過する空気に含まれるウイルスを低減するウイルス低減手段を稼働させるウイルス低減方法であって、前記対象領域の状態を検出する状態検出ステップと、判定基準と、前記判定基準と前記状態検出ステップの検出結果とに基づいて、前記ウイルス低減手段を稼働させるか停止させるかを判断するステップと、判断結果に基づいて、前記ウイルス低減手段の稼働を制御するステップと、を含み、前記判定基準は、前記対象領域の前記ウイルスの感染性を判断する基準である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、調和させる対象の領域の状態に応じて、ウイルスを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の空気調和機の一例の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、演算装置と判定基準作成装置の一例の概略構成を示すブロック図である。
図3図3は、判定基準作成装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、判定基準の一例を示す説明図である。
図5図5は、演算装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、ウイルスの温度特性の一例を示すグラフである。
図7図7は、ウイルスの湿度特性の一例を示すグラフである。
図8図8は、空気調和機が配置された施設の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定するものではない。また、以下の実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した実施形態における構成要素は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0011】
図1は、本実施形態の空気調和機の一例の概略構成を示す模式図である。図1に示す空気調和機10は、壁4で室外6から分離された部屋である室内8の雰囲気を調和する。空気調和機10は、いわゆるエアーコンディショナーである。本実施形態の空気調和機10は、室内8の温度を調整する場合として説明するが、湿度を調整してもよい。
【0012】
空気調和機10は、室内機12と室外機14とを含む。室内機12と室外機14とは、冷媒配管19で接続される。空気調和機10は、冷媒配管19を介して、室内機12と室外機14とに冷媒が循環される。冷媒は、室外機14で放熱して、冷却され、室内機12を通過する空気と熱交換して、室内機12の空気を冷却する。室外機14は、室外6の空気との間で熱交換を行い、冷媒を冷却する。例えば、室外機14は、冷媒を圧縮し、流通する管路に送風して冷媒を冷却し、その後、冷媒を膨張させることで、冷媒を冷却させる。
【0013】
室内機12は、配管15と、ウイルス低減手段16と、熱交換器18と、ウイルス検出部32と、温度計測部34と、湿度計測部36と、埃検出部38と、演算装置40と、を備える。配管15は、一方の端部が給気口15a、他方の端部が排気口15bとなる。配管15は、ファン等の送風機が配置され、給気口15aから室内8の空気を吸引し、排気口15bから空気を排出する。図1では、配管15を直管で示しているが、折れ曲がっていてもよく、給気口15a、排気口15bが複数あってもよい。また、室内機12は、排気口15bに可動式のルーバー等の送風方向を調整できる機構を備えることが好ましい。配管15には、ウイルス低減手段16と熱交換器18が配置される。
【0014】
ウイルス低減手段16は、配管15を通過するウイルスを低減、ウイルスの増殖力を低減、ウイルスの感染力を低減する。ウイルス低減手段16は、フィルタ22と、電気集塵機24と、除湿器26と、加熱器28と、を備える。本実施形態のウイルス低減手段16は、フィルタ22と、電気集塵機24と、除湿器26と、加熱器28と、を備えるが、ウイルス低減手段16の組み合わせは特に限定されず、フィルタ22と、電気集塵機24と、除湿器26と、加熱器28の少なくとも1つを備えていてればよい。また、室内機12は、配管15に分岐経路を設け、分岐経路にウイルス低減手段16を配置し、ウイルス低減手段16を通過する経路と、ウイルス低減手段16を通過しない経路を切り替え可能としてもよい。また、ウイルス低減手段16は、空気調和機10が稼働している状態で常時動作する機構と、ウイルスを低減するモードの場合のみ動作する機構とを分けてもよい。例えば、フィルタ22を常時稼働させ、ウイルスを低減するモードの場合のみ電気集塵機24を動作するようにしてもよい。
【0015】
フィルタ22は、配管15に配置され、配管15を通過する空気に含まれる塵埃を捕集する。フィルタ22は、塵埃ともにウイルスを捕集することもできる。フィルタ22としては、例えばHEPAフィルタを用いることができる。
【0016】
電気集塵機24は、フィルタ22を通過した空気に含まれるウイルス等の異物を捕集する。電気集塵機24は、配管15の空気が通過する領域に配置された複数の平板電極に電圧を印加して、電界を形成し、電極の表面に異物を移動させることで、空気に含まれる異物を捕集する。
【0017】
除湿器26は、配管15を流れる空気に含まれる水分を捕集し、空気の湿度を低減させる。加熱器28は、配管15を流れる空気を加熱する。除湿器26,加熱器28は、空気調和機10の通常モードでの運転時に空調機能として動作してもよい。また、ウイルス低減手段16は、空気を加湿する加湿器、空気を冷却する冷却器を備えていてもよい。
【0018】
熱交換器18は、配管15を通過する空気の温度を調整する。熱交換器18は、冷媒配管19を流れ、室外機14で冷却された冷媒で、配管15を通過する空気を冷却する。熱交換器18は、さらに空気を加熱するヒータを備えていてもよい。
【0019】
ウイルス検出部32は、検出対象のウイルスを検出する。例えば、ウイルスに結合するDNAアプタマーを、測定領域に供給し、ウイルスにDNAアプタマーを結合させ、テラヘルツ波を用いて、ウイルスに結合したDNAアプタマーを検出することで、空気中のウイルスを検出する。また、ウイルス検出部32は、抗原抗体法を用いて、対象のウイルスを捕集して、検出してもよい。また、ウイルス検出部32は、嗅覚細胞を再現した機器を用い、ウイルスを臭いで識別してもよい。
【0020】
温度計測部34は、室内8の温度を計測する。湿度計測部36は、室内8の湿度を計測する。埃検出部38は、室内8の埃の量を計測する。ウイルス検出部32、温度計測部34、湿度計測部36、埃検出部38は、検出した結果を演算装置40に送る。
【0021】
演算装置40は、ウイルス検出部32、温度計測部34、湿度計測部36、埃検出部38や、ネットワーク52を介して取得した情報に基づいて、ウイルス低減手段16の動作を制御する。また、演算装置40は、熱交換器18の動作も制御する。演算装置40は、ネットワーク52を介して判定基準作成装置52と接続している。ネットワーク52は、インターネット通信網等の公衆通信網である。
【0022】
次に、図2を用いて、演算装置40と判定基準作成装置50の構成を説明する。図2は、演算装置と判定基準作成装置の一例の概略構成を示すブロック図である。演算装置40は、通信部50と、演算部62と、記憶部64を有する。
【0023】
通信部50は、ネットワーク52を介して、他の機器とデータの授受を行う。通信部50は、室内8にあり、ユーザが操作を行うコントローラとも通信を行う。通信部50は、有線の回線で外部機器と接続しても、無線の通信回線で外部機器と接続してもよい。
【0024】
演算部52は、CPUやGPU(Graphics Processing Unit)等の集積回路(プロセッサ)と、作業領域となるメモリとを含み、これらのハードウェア資源を用いて各種プログラムを実行することによって各種処理を実行する。具体的に演算部40は、記憶部54に記憶されているプログラムを読み出してメモリに展開し、メモリに展開されたプログラムに含まれる命令をプロセッサに実行させることで、各種処理を実行する。演算部52は、空調制御部70と、情報取得部72と、判定部74と、ウイルス制御部(ウイルス低減手段制御部)76と、を含む。
【0025】
記憶部54は、磁気記憶装置や半導体記憶装置等の不揮発性を有する記憶装置からなり、各種のプログラム及びデータを記憶する。記憶部54は、空調プログラム78と、ウイルス制御プログラム80と、判定基準データ82と、を有する。空調プログラム78は、空調制御部70による制御を実現するプログラムである。ウイルス制御プログラム80は、ウイルス制御部76による制御を実現するプログラムである。ウイルス制御プログラム80は、プログラムの一部に機械学習で学習モデルを学習した結果の学習済みプログラムを含んでいてもよい。判定基準データ82は、ウイルス制御部76の動作判定、具体的には、ウイルス制御部76でウイルス低減手段16を稼働させるウイルス低減モードの動作を行うか、ウイルス制御部76でウイルス低減手段16を稼働させない、通常モードの動作を行うかの判定基準のデータである。判定基準に用いるパラメータ、基準の作成方法については後述する。なお、判定基準データ82は、ウイルス低減モードを複数の段階で設定可能とし、それぞれの段階の判定基準を設定することもできる。
【0026】
空調制御部70は、空調プログラム78を処理することで動作を実行する。温度計測部34の計測結果と、設定温度に基づいて、熱交換器18の動作を制御し、室内8の温度を調和させる。
【0027】
情報取得部72と、判定部74と、ウイルス制御部(ウイルス低減手段制御部)76とは、ウイルス制御プログラム80を処理することで動作を実行する。情報取得部72は、ウイルス検出部32、温度計測部34、湿度計測部36、埃検出部38の検出結果また通信部60を介して外部の機器から各種データを取得する。判定部74は、情報取得部72で取得したデータに基づいて、ウイルス制御部76で実行する動作を決定する。本実施形態のウイルス制御部76の各部を稼働させるか、停止させるかを判定する。ウイルス制御部(ウイルス低減手段制御部)76は、判定部74の判定結果に基づいて、ウイルス低減手段16の動作を制御する。
【0028】
次に、判定基準作成装置50は、空気調和機10の演算装置40で処理を実行する際の判定基準を作成する。なお、本実施形態では、判定基準作成装置50で判定基準を作成したが、演算装置40で処理を実行して判定基準を作成してもよい。
【0029】
判定基準作成装置50は、通信部102と、入力部104と、出力部106と、演算部108と、記憶部110と、を含む。通信部104は、ネットワーク52を介して、他の機器とデータの授受を行う。通信部104は、ネットワーク52を介して、演算装置40に判定基準のデータを送る。通信部102は、有線の回線で外部機器と接続しても、無線の通信回線で外部機器と接続してもよい。
【0030】
入力部104は、キーボード及びマウス、タッチパネル等の入力装置を含み、判定基準作成装置50のオペレータが入力装置に対して行う操作を検出する。出力部1046は、ディスプレイ等の表示装置、スピーカ等の音声出力装置を含み、判定基準作成装置50のオペレータに各種情報を出力する。
【0031】
演算部108は、CPUやGPU(Graphics Processing Unit)等の集積回路(プロセッサ)と、作業領域となるメモリとを含み、これらのハードウェア資源を用いて各種プログラムを実行することによって各種処理を実行する。具体的に演算部018は、記憶部110に記憶されているプログラムを読み出してメモリに展開し、メモリに展開されたプログラムに含まれる命令をプロセッサに実行させることで、各種処理を実行する。演算部108は、情報取得部120と、判定基準作成部122と、機械学習部124と、を含む。
【0032】
記憶部110は、磁気記憶装置や半導体記憶装置等の不揮発性を有する記憶装置からなり、各種のプログラム及びデータを記憶する。記憶部110は、基準作成プログラム132と、学習モデル134と、データセット136と、を有する。基準作成プログラム132は、判定基準を作成するプログラムである。基準作成プログラム132は、情報取得部120、判定基準作成部122、機械学習部124の動作を実行する。基準作成プログラム132は、機械学習を行う機能を備える。学習モデル134は、機械学習のモデル、例えばCNN(Convolutional neural network)モデルである。学習モデル134は、入力のパタメータ、つまり入力する検出データ、取得データの組み合わせ毎に異なる学習モデル134を作成する。データセット136は、判断基準を作成に用いるデータである。データセット136は、学習モデル134での学習に用いるデータ(教師データ)は、判定に用いるパラメータの数値を入力とし、判断結果を出力としたデータが、パラメータが異なる組み合わせ毎に複数用意される。データセット136は、判定基準を用いるための統計データであってもよい。
【0033】
情報取得部120は、判定に用いるデータ、つまり、ウイルス検出部32、温度計測部34、湿度計測部36、埃検出部38の検出結果また通信部60を介して外部の機器から各種データを取得する。また、情報取得部120は、各種データとウイルス低減の効果の情報や、対象のウイルスの特性の情報、ウイルスの低減の目標値の情報等を取得する。
【0034】
判定基準作成部122は、情報取得部120で取得したデータに基づいて、判定基準を作成する。判定基準作成部122は、機械学習を用いて判定基準を作成する場合、機械学習部124で機械学習を実行する。
【0035】
機械学習部124は、学習モデル134を用いて機械学習を実行する。機械学習部124は、判定基準作成部122で作成されたデータセット136の教師データを学習モデル134に入力して、学習済みモデルを作成する。
【0036】
次に、図3を用いて、判定基準作成装置50の動作である、判定基準の作成方法の一例を説明する。図3は、判定基準作成装置の処理の一例を示すフローチャートである。判定基準作成部50は、演算部108の判定基準作成部122で各部の処理を実行することで、図3の処理を実行する。
【0037】
判定基準作成部122は、情報取得部120を用いて、ウイルスに関するデータを取得する(ステップS12)。ウイルスに関するデータは、空気調和機10で取得したデータや、外部の機器で取得したデータ等を含む。
【0038】
判定基準作成部122は、取得したデータを用いてデータセットを作成する(ステップS14)。判定基準作成部122は、判定基準を作成するために、各種検出値と、ウイルスの低減に関する情報との相関を示すデータを作成する。
【0039】
判定基準作成部122は、データセットを用いて機械学習部124で、学習モデル134の機械学習を実行する(ステップS16)。判定基準に用いるパラメータの値が入力データとなり、ウイルス低減手段をどうさせせた場合のウイルスの状態に関する情報を出力データとしたデータセットを教師データとして、学習を行う。
【0040】
判定基準作成部122は、機械学習の結果を用いて、判定基準を決定する(ステップS18)。判定基準作成部122は、学習済みモデルで取得した出力のデータをそのまま判定基準として用いても、学習済みモデルで取得した出力のデータを判定基準の1つとし、さらに処理をした結果を判定基準としてもよい。判定基準作成部122は、作成した判定基準を演算装置40に送る。
【0041】
図4は、判定基準の一例を示す説明図である。図4に示す判定基準は、一例であり、これに限定されない。図4に示す判定基準は、発症者数、基本再生産数(R0)または実行再生産数(Rt)、ウイルス放出量、実在人員数、ワクチン接種者比率、換気回数、粒子数、湿度(RHセンサ)、温度(温度センサ)、CO2濃度、ウイルス量(ウイルスセンサ)が含まれる。図4に示す実測値は、検出データの結果を評価して無次元の点数とした値の一例である。図4に示す判定基準は、重み付け係数、つぶやき係数が設定される。重み付け係数は、各パラメータの評価値とウイルス低減に対する影響度に基づいて設定される値である。つぶやき係数は、各パラメータに対する情報が評価対象のソーシャルネットワーク上で記載されている回数に基づいて設定される値である。
【0042】
発症者数は、例えば、1人でも発症すれば5点とし、発症しなければ0点とする。基本再生産数(R0)又は実行再生産数(Rt)は、評価対象のウイルスに感染した人、発祥した人の増減を評価する値である。基本再生産数(R0)又は実行再生産数(Rt)は、例えば、値が1以上であれば5点とする。基本再生産数(R0)又は実行再生産数(Rt)は、ネットワーク52の他の機器から取得することができる。また、基本再生産数(R0)又は実行再生産数(Rt)は、全体の値を用いても、空気調和機10が設置されている地域の値を用いてもよい。ウイルス放出量は、1回の咳が10pfu以上である場合5点とする。ウイルス放出量は、ウイルスの特性として、ネットワーク52の他の機器から取得することができる。
【0043】
実在人員数は、室内8にいて、所定の条件を満たす人数である。実在人数は、室内8にいる人間同士が2m以上離れていたら0点、室内8に複数の人間がいて、2m離れていなければ5点である。実在人数数は、オペレータが入力したり、室内8の状態を人感センサで検出した結果を取得したりすることができる。ワクチン接種者比率は、ウイルスに対しるワクチンを接種している人間の比率である。ワクチン接種者比率が100%で0点、0%で5点とし、100%と0%との間を20%刻みで、0点から5点を遷移させる。ワクチン接種者比率は、ネットワーク52の他の機器から取得することができる。
【0044】
換気回数は、単位時間当たりに室内8の空気が入れ替えられる回数である。空気調和機10の空調可能と設定されている空間の大きさと、空気調和機10で単位時間に循環させる空気の量に基づいて算出する。室内8の広さに応じて室内8を全て清浄した時を1回とする。所定の回数以上循環させる場合、0点とする。粒子数は、埃検出部38で検出した値である。埃検出部38で検出した値が閾値以上である場合、1点とする。
【0045】
湿度は、湿度計測部36で検出した値である。湿度は、0%で5点、100%で0点とし、100%と0%との間を20%刻みで、0点から5点を遷移させる。温度は、温度計測部34で検出した値である。50℃で0点、0℃以下で5点とし、50℃と、0℃どの間を10℃刻みで、0点から5点を遷移させる。例えば、温度は20℃は、3点となる。
【0046】
CO濃度は、1000ppm以上を5点、500ppmを0点とし、100ppmごどに1点ずつ繊維させる。CO濃度は、計測器で室内8の値を検出してもよいが、一定値としてもよい。ウイルス量は、ウイルス検出部32で検出した値であり、閾値以下の場合を0とし、閾値より多い場合、量に応じて、点数を増加する設定とする。
【0047】
次に、図5を用いて演算装置の処理の一例を説明する。図5は、演算装置の処理の一例を示すフローチャートである。演算装置40は、演算部62で各種処理を実行することで、空気調和機10の動作を制御する。演算部62は、判定基準データを取得する(ステップS20)。演算部62は、判定基準作成装置50で作成し、判定基準データ82に保存されている判定基準のデータを取得する。
【0048】
演算部62は、判定に用いるデータを取得する(ステップS24)。演算部62は、情報取得部70を用いて、ウイルス検出部32、温度計測部34、湿度計測部36、埃検出部38の検出結果また通信部60を介して外部の機器で取得した各種データのうち、判定に用いるデータ、判定基準のパラメータに対応するデータを取得する。
【0049】
演算部62は、判定処理を実行する(ステップS26)。演算部62は、ステップS24で取得したデータ(判定処理時に取得した空調対象の空間とウイルスのデータ)と基準のデータとの比較処理を実行する。
【0050】
演算部62は、判定した結果、基準条件を満たすかを判定する(ステップS28)。演算部62は、基準条件を満たす(ステップS28でYes)と判定した場合、ウイルス低減手段16を稼働させる(ステップS30)。演算部62は、基準条件を満たさない(ステップS28でNo)と判定した場合、ウイルス低減手段16を停止させる(ステップS32)。
【0051】
空気調和機10は、判定基準に基づいて、ウイルスの状況を判断し、基準条件を満足する場合、ウイルス低減手段16を稼働させる。これにより、空気調和機10は、必要な場合にウイルス低減減手段16を稼働できるため、室内8の感染の可能性を低減できる。また、不要と判断した場合、ウイルス低減手段16を停止させる(稼働させない)ことで、、常時ウイルス除去手段16を稼働させた場合よりも電力消費を抑制できる。また、不要と判断した場合、ウイルス低減手段16を稼働させることで、配管15を流れる空気の温度や湿度は変化することを抑制でき、室内8をより快適な状態とすることができる。
【0052】
また、本実施形態では、機械学習で判定基準を設定したが、図4に示す条件を、オペレータが設定してもよい。
【0053】
次に、空気調和機10が用いる判定基準について説明する。図6は、ウイルスの温度特性の一例を示すグラフである。図6は、縦軸がウイルス感染価、横軸が温度である。図6に示すウイルスは、温度が上昇するとウイルス感染価は下がる。このような、ウイルスには、温度が上昇した場合、失活する特性を備えている場合がある。一例として、例えば、22℃の場合は、7日間存在しているが、70℃の場合には5分以内に失活するウイルスがある。空気調和機10は、上記のようなウイルスの特性を取得している場合、室内8の温度に基づいて、ウイルス低減モードの稼働、停止を切り替えることで、ウイルスの低減が必要かを適切に判断することができる。また、ウイルスの特性に基づいて、加熱部28で一時的に加熱する温度を設定してもよい。
【0054】
図7は、ウイルスの湿度特性の一例を示すグラフである。図7は、縦軸をウイルス感染価とし、横軸を湿度とした。図7に示すように、相対湿度が低くなることで、ウイルスは、一定湿度以下の場合、ウイルス感染価が低くなる。また、線分140に示すように、一定湿度以上になると湿度が高くなるほど感染価が高くなる場合や、線分142に示すように、一定湿度以上になると湿度が高くなっても感染価が低下する場合がある。このような各ウイルスの湿度とウイルスの感染価の情報を記憶部に格納しておくことで、空気調和機10は、湿度とウイルスの感染価の情報に基づいて、検出した湿度を評価して、ウイルス低減モードの稼働、停止を切り替えることで、ウイルスの低減が必要かを適切に判断することができる。例えば、線分142に示す湿度特性を備えるウイルスのように、一定湿度以上になると湿度が高くなるにつれてウイルス感染価が高くなり、特定の変曲点となる湿度より高くなると、湿度が高くなるにつれて感染価が低下する場合、空気調和機10は、変曲点を境にウイルス感染価を下げるように湿度の高低を制御する。つまり、空気調和機10は、湿度が高くなるにつれてウイルス感染価が高くなる場合は、湿度を下げるように制御し、湿度が高くなるにつれてウイルス感染価が低くなる場合は、湿度を上げるように制御する。
【0055】
また、空気調和機10は、埃の量を検出し、埃の量に基づいて運転を制御することで、埃とともに移動するウイルスを適切に低減することができる。
【0056】
空気調和機10は、ウイルス検知部32を用いて、室内8のウイルスの量に基づいて、ウイルス低減手段16の動作を制御することで、室内8のウイルスの状況に応じた制御を行うことができる。
【0057】
また、空気調和機10は、判定基準として、発症者数、基本再生産数(R0)または実行再生産数(Rt)、ウイルス放出量、実在人員数、ワクチン接種者比率等の情報を、ネットワーク等を介して取得し、判定基準に用いることで、ウイルスの特性の情報に基づいてウイルス低減手段16を適切に稼働させることができる。これにより、ウイルスの感染のしやすさや、ウイルスの脅威に応じた制御が可能となり、必要な場合に選択的にウイルス低減手段16を稼働させることができる。
【0058】
また、判定基準に複数のパラメータを用い、重みづけを行うことで、パラメータの影響度を考慮した判定基準とすることができる。
【0059】
また、機械学習を用いて判定基準を設定することで多数のパラメータが複雑に影響する状況を適切に解析でき、適切な判定基準を設定することができる。
【0060】
また、判定基準にソーシャルネットワークで投稿された情報を判断基準に用いることで、特定地域、施設等の狭い範囲での感染者情報を知ることができる。これにより、地域や、時期に応じて空気調和機10を適切に制御することができる。
【0061】
図8は、空気調和機が配置された施設の一例を示す模式図である。図8に示す施設は、例えば、航空機、車両、バス等の座席に座った複数の利用者を搬送する機器である。なお、映画館や飲食店、オフィスにも適用できる。また、図8は、一例であり、対象は限定されない。
【0062】
図8に示す施設200は、客室202の空気を調和する。客室202は、複数の座席204が配置される。また、客室202には、加湿器220が配置される。施設200は、配管206が客室202に接続される。配管206は、一方の端部が給気口210となり、他方の端部が、複数の分岐管208となり、それぞれの分岐管208が、排気口(送風口)212で客室202と接続される。空気調和機10の室内機12が配管206に配置される。施設200は、客室202の雰囲気の検出結果や、ウイルスの情報に基づいて、室内機12の稼働を制御する。
【0063】
このように、空気調和機10は、客室202内の空気を調和する装置として用いることができ、必要な場合に選択的にウイルス低減手段を稼働させることができる。
【0064】
また、上記実施形態では、ウイルス低減手段として、フィルタ22、電気集塵機24、除湿器26、加熱器28を設けたが、これに限定されない。上記実施形態では、フィルタ22が通常運転時、ウイルス低減手段16稼働時で同じ動作となるが、気集塵機24、除湿器26、加熱器28の2つ以下の要素を通常運転時、ウイルス低減手段16稼働時で同じ動作としてもよい。また、上述したように、フィルタ22を通過する経路と通過しない経路を設け、ウイルス低減手段16の稼働停止に合わせて経路を切り替えることで、フィルタ22をウイルス低減手段16の稼働時のみ動作するようにしてもよい。ウイルス低減手段は、フィルタ22、電気集塵機24、除湿器26、加熱器28の少なくとも1つの稼働停止を切り替えることができればよい。
【符号の説明】
【0065】
4 境界
6 室外
8 室内
10 空気調和機
12 室内機
14 室外機
15 配管
15a 給気口
15b 排気口
16 ウイルス低減手段
18 熱交換器
19 冷媒配管
22 フィルタ
24 電気集塵機
26 除湿器
28 加熱器
32 ウイルス検出部
34 温度計測部
36 湿度計測部
38 埃検出部
40 演算装置
50 判定基準作成装置
52 ネットワーク
60、102 通信部
62、108 演算部
64、110 記憶部
70 空調制御部
72 情報取得部
74 判定部
76 ウイルス制御部
78 空調プログラム
80 ウイルス制御プログラム
82 判定基準データ
104 入力部
106 出力部
120 情報取得部
122 判定基準作成部
124 機械学習部
132 基準作成プログラム
134 学習モデル
136 データセット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8