(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148988
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】特装車の積載重量推定システム、特装車の積載重量推定方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G01G 19/10 20060101AFI20231005BHJP
G01G 23/01 20060101ALI20231005BHJP
G01G 23/42 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01G19/10 B
G01G23/01 B
G01G23/42 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057296
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】堀 崇展
(72)【発明者】
【氏名】上田 成宏
(72)【発明者】
【氏名】村下 善朗
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 典明
(57)【要約】
【課題】特装車の積載重量推定システム、特装車の積載重量推定方法、及びコンピュータプログラムの提供。
【解決手段】荷箱を昇降させるための油圧アクチュエータを備える特装車に関して、油圧アクチュエータに作用する油圧の大きさを計測する圧力計から、油圧の大きさに関する第1データを取得する第1取得部と、特装車の傾斜角を計測する傾斜計から、傾斜角に関する第2データを取得する第2取得部と、積載物の重量及び積載位置を変化させた場合の傾斜角と油圧の大きさとの間の関係を、積載物の重量に関連付けて複数記憶する記憶部と、第1データ及び第2データを取得した場合、記憶部に記憶されている関係を参照して、荷箱における積載重量を推定する推定部とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷箱を昇降させるための油圧アクチュエータを備える特装車に関して、前記油圧アクチュエータに作用する油圧の大きさを計測する圧力計から、前記油圧の大きさに関する第1データを取得する第1取得部と、
前記特装車の傾斜角を計測する傾斜計から、前記傾斜角に関する第2データを取得する第2取得部と、
積載物の重量及び積載位置を変化させた場合の前記傾斜角と前記油圧の大きさとの間の関係を、前記積載物の重量に関連付けて複数記憶する記憶部と、
前記第1データ及び前記第2データを取得した場合、前記記憶部に記憶されている関係を参照して、前記荷箱における積載重量を推定する推定部と
を備える特装車の積載重量推定システム。
【請求項2】
前記推定部は、前記関係を2次元座標平面上にプロットした場合の近似曲線と、前記第1データ及び前記第2データが示す計測結果を前記2次元座標平面上にプロットした場合の計測点との間の距離に基づき、前記積載重量を推定する
請求項1に記載の積載重量推定システム。
【請求項3】
前記推定部は、前記計測点に最も近い近似曲線を特定することにより、前記積載重量を推定する
請求項2に記載の積載重量推定システム。
【請求項4】
前記推定部は、前記計測点を間に挟む2つの近似曲線を特定し、前記計測点から特定した2つの近似曲線までの距離の比に応じて、前記積載重量を推定する
請求項2に記載の積載重量推定システム。
【請求項5】
前記推定部は、前記計測点から前記2つの近似曲線まで垂線を下ろした場合の各垂線の長さの比を算出し、算出した比に応じて前記積載重量を推定する
請求項4に記載の積載重量推定システム。
【請求項6】
前記推定部は、前記計測点を通り、前記2つの近似曲線を最短で結ぶ線分を特定し、特定した線分と各近似曲線との交点を求め、前記計測点から各交点までの距離の比を算出し、算出した比に応じて前記積載重量を推定する
請求項4に記載の積載重量推定システム。
【請求項7】
荷箱を昇降させるための油圧アクチュエータを備える特装車に関して、前記油圧アクチュエータに作用する油圧の大きさを計測する圧力計から、前記油圧の大きさに関する第1データを取得し、
前記特装車の傾斜角を計測する傾斜計から、前記傾斜角に関する第2データを取得し、
前記第1データ及び前記第2データを取得した場合、積載物の重量及び積載位置を変化させた場合の前記傾斜角と前記油圧の大きさとの間の関係を、前記積載物の重量に関連付けて複数記憶する記憶部を参照して、前記荷箱における積載重量を推定する
処理をコンピュータにより実行する特装車の積載重量推定方法。
【請求項8】
コンピュータに、
荷箱を昇降させるための油圧アクチュエータを備える特装車に関して、前記油圧アクチュエータに作用する油圧の大きさを計測する圧力計から、前記油圧の大きさに関する第1データを取得し、
前記特装車の傾斜角を計測する傾斜計から、前記傾斜角に関する第2データを取得し、
前記第1データ及び前記第2データを取得した場合、積載物の重量及び積載位置を変化させた場合の前記傾斜角と前記油圧の大きさとの間の関係を、前記積載物の重量に関連付けて複数記憶する記憶部を参照して、前記荷箱における積載重量を推定する
処理を実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特装車の積載重量推定システム、特装車の積載重量推定方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トラック等の大型車両において、自重(積載重量)を計測する自重計が搭載されたものが知られている。
【0003】
従来の自重計では、フロント及びリアの車軸両端部に取り付けられた荷重センサを用いて、前後左右の各タイヤに掛かる荷重を計測し、各荷重センサの出力の合計から積載重量を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の自重計では、各荷重センサの出力の合計を積載重量に換算する方式が取られているので、車両が傾斜地に存在する場合、荷台上の積み荷のバランスが均等でない場合等において、正しい積載重量を計測できないことがある。
【0006】
本発明は、荷台上の積み荷のバランスが均等でない場合であっても、精度良く積載重量を推定できる特装車の積載重量推定システム、特装車の積載重量推定方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る特装車の積載重量推定システムは、荷箱を昇降させるための油圧アクチュエータを備える特装車に関して、前記油圧アクチュエータに作用する油圧の大きさを計測する圧力計から、前記油圧の大きさに関する第1データを取得する第1取得部と、前記特装車の傾斜角を計測する傾斜計から、前記傾斜角に関する第2データを取得する第2取得部と、積載物の重量及び積載位置を変化させた場合の前記傾斜角と前記油圧の大きさとの間の関係を、前記積載物の重量に関連付けて複数記憶する記憶部と、前記第1データ及び前記第2データを取得した場合、前記記憶部に記憶されている関係を参照して、前記荷箱における積載重量を推定する推定部とを備える。
【0008】
本発明の一態様に係る特装車の積載重量推定方法は、荷箱を昇降させるための油圧アクチュエータを備える特装車に関して、前記油圧アクチュエータに作用する油圧の大きさを計測する圧力計から、前記油圧の大きさに関する第1データを取得し、前記特装車の傾斜角を計測する傾斜計から、前記傾斜角に関する第2データを取得し、前記第1データ及び前記第2データを取得した場合、積載物の重量及び積載位置を変化させた場合の前記傾斜角と前記油圧の大きさとの間の関係を、前記積載物の重量に関連付けて複数記憶する記憶部を参照して、前記荷箱における積載重量を推定する処理をコンピュータにより実行する。
【0009】
本発明の一態様に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、荷箱を昇降させるための油圧アクチュエータを備える特装車に関して、前記油圧アクチュエータに作用する油圧の大きさを計測する圧力計から、前記油圧の大きさに関する第1データを取得し、前記特装車の傾斜角を計測する傾斜計から、前記傾斜角に関する第2データを取得し、前記第1データ及び前記第2データを取得した場合、積載物の重量及び積載位置を変化させた場合の前記傾斜角と前記油圧の大きさとの間の関係を、前記積載物の重量に関連付けて複数記憶する記憶部を参照して、前記荷箱における積載重量を推定する処理を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本願によれば、荷台上の積み荷のバランスが均等でない場合であっても、精度良く積載重量を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係る特装車の全体構成を示す側面図である。
【
図2】実施の形態1に係る特装車の全体構成を示す平面図である。
【
図4】積載重量推定システムの構成を説明するブロック図である。
【
図5】積載物を含む荷箱の重心位置とピッチ角度の変化との関係を示すグラフである。
【
図6】積載重量及び積載位置を変化させた場合の油圧値とピッチ角度との関係を示すグラフである。
【
図8】実施の形態1における積載重量の推定方法を説明する説明図である。
【
図9】実施の形態1における積載重量の推定手順を説明するフローチャートである。
【
図11】実施の形態2における積載重量の推定方法を説明する説明図である。
【
図12】実施の形態3における積載重量推定システムの構成を説明するブロック図である。
【
図13】実施の形態3における積載重量の推定手順を説明するフローチャートである。
【
図14】実施の形態4における積載重量推定システムの構成を説明するブロック図である。
【
図15】実施の形態4における積載重量の推定手順を説明するフローチャートである。
【
図16】実施の形態5における積載重量推定システムの構成を説明するブロック図である。
【
図17】実施の形態5における積載重量の推定手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1に係る特装車1の全体構成を示す側面図、
図2はその平面図、
図3は荷箱を起立させた状態の側面図である。
図1~
図3に例示する特装車1は、走行部であるトラックシャシ2と、走行部に搭載される架装装置の一例であるダンプ装置3とを備えるダンプトラックである。以下の説明において、前後、左右、上下の各方向は、トラックシャシ2の運転席に座った運転手から見た前後、左右、上下の各方向を表すものとする。なお、
図2では、説明のために、ダンプ装置3を取り除いた状態を示している。
【0013】
トラックシャシ2は、運転席が設けられるキャブ20と、キャブ20を支持するシャシフレーム21とを備える。シャシフレーム21は、前後方向に延びる左右一対のメインフレーム(縦根太)21A,21Aと、左右一対のメインフレーム21A,21Aを連結する複数のクロスメンバ(横根太)21B,…,21Bとにより構成される(
図2を参照)。トラックシャシ2の前輪22F及び後輪22R,22Rは不図示の懸架装置を介してメインフレーム21A,21Aに回転可能に取り付けられる。トラックシャシ2は、エンジン70(原動機)と、このエンジン70にクラッチを介して連結される変速機とを備えており、駆動輪(例えば前輪22F)の駆動系にエンジン70の駆動力を変速機を介して伝達することによって、走行するように構成されている。
【0014】
ダンプ装置3は、シャシフレーム21上に固定されるサブフレーム30と、サブフレーム30によって支持され、土砂などの荷が積載される荷箱4とを備える。荷箱4は、サブフレーム30の後端部にて左右方向に延びるヒンジ軸31の回りに回動可能に支持されている。荷箱4は、上方が開放された箱体であり、矩形状の底部40を囲むように配置されたフロントパネル41、左右一対のサイドパネル42、及びリアパネル(後アオリ)43を備える。リアパネル43は開閉可能に構成されている。
【0015】
ダンプ装置3は、荷箱4を傾斜させるためのホイスト機構5を備える。ホイスト機構5は、例えば、リフトアーム51、油圧シリンダ52、テンションリンク53を備える。ホイスト機構5の油圧シリンダ52を伸長させると、荷箱4は、その前部が持ち上げられ、傾斜角度が大きくなる方向に回動する。傾斜角度が大きくなる方向への荷箱4の回動を、本実施の形態では荷箱4の上昇ともいう。一方、ホイスト機構5の油圧シリンダ52を短縮させると、荷箱4は、その前部が下げられ、傾斜角度が小さくなる方向に回動する。傾斜角度が小さくなる方向への荷箱4の回動を、本実施の形態では荷箱4の下降ともいう。
【0016】
油圧シリンダ52を伸縮させる油圧機構は、油圧ポンプ61、作動油タンク62、制御弁63などを備える。油圧供給源である油圧ポンプ61は、PTO71(Power Take-Off)を介して伝達されるエンジン70の動力によって駆動されることにより、油圧配管64を通じて作動油タンク62内の作動油を汲み上げ、吐出口に接続された主管65を通じて油圧シリンダ52に作動油(圧油)を供給する。なお、エンジン70の動力伝達の断接は、キャブ20内に設けられるPTOスイッチ72により切り替えられる。
【0017】
油圧ポンプ61から吐出される作動油の供給方向は、手動式の操作レバー67によって操作される制御弁63により切り替えられる。例えば、操作レバー67の操作により制御弁63が中立位置にあると、油圧ポンプ61から油圧シリンダ52に作動油は供給されず、荷箱4の傾動動作は行われない。操作レバー67が上昇位置に操作されると、制御弁63が切り替えられ、油圧ポンプ61から油圧シリンダ52に作動油(圧油)が供給される。油圧シリンダ52は、作動油が供給されることによって伸長し、荷箱4を上昇させる。一方、操作レバー67が下降位置に操作されると、制御弁63が切り替えられ、油圧シリンダ52に供給された作動油は作動油タンク62に還流する。これに伴い、油圧シリンダ52は短縮し、荷箱4を下降させる。
【0018】
油圧機構には、油圧シリンダ52に作用する油圧の大きさを計測するための圧力計81が設けられている。また、特装車1には、トラックシャシ2の傾斜(ピッチ及びロール)を計測するための傾斜計82と、荷箱4の傾斜(ピッチ及びロール)を計測するための傾斜計83が設けられている。
【0019】
圧力計81は、油圧シリンダ52のシリンダ圧(油圧)を時系列的に計測し、計測したシリンダ圧に係る計測データを出力する。傾斜計82は、シャシフレーム21の適宜箇所(例えば前後方向及び左右方向の中央付近)に取り付けられる。傾斜計82は、重力方向(鉛直方向)を基準としたトラックシャシ2の前後方向の傾斜(ピッチ)及び左右方向の傾斜(ロール)を時系列的に計測し、計測した傾斜に係る計測データを出力する。傾斜計82より得られるトラックシャシ2の傾斜角に関するデータは、車両全体、すなわち特装車1の傾斜角のデータとして考えることができる。傾斜計83は、荷箱4の適宜箇所に取り付けられ、重力方向(鉛直方向)を基準とした荷箱4の前後方向(ピッチ)及び左右方向の傾斜(ロール)を時系列的に計測し、計測した傾斜に係る計測データを出力する。傾斜計83の計測値と傾斜計82の計測値との差分をとることによって、トラックシャシ2に対する荷箱4のダンプ角度が算出される。
【0020】
特装車1は、圧力計81及び傾斜計82により得られるデータに基づき、積載物の重量(積載重量)を推定する推定装置100を備える。本実施の形態において、積載重量は、荷箱4に積載されている積載物の重量を表し、特装車1に乗車している乗員、特装車1に積まれている燃料、特装車1を構成する走行部及び架装装置などの重量は入らないものとする。なお、荷を積んでいないときの走行部や架装装置の重量は既知であるとする。推定装置100の内部構成、及び推定装置100が実行する処理の内容については後に詳述することとするが、本実施の形態では、圧力計81より得られる油圧の大きさに関するデータ(第1データ)、傾斜計82より得られる傾斜角に関するデータ(第2データ)、及び積載重量を含むデータ間の関係を利用して、特装車1の積載重量を推定する。推定装置100は、例えばキャブ20の内部に設けられる。代替的に、推定装置100はシャシフレーム21に取り付けられてもよい。
【0021】
本実施の形態では、特装車1の一例としてダンプ装置3を備えたダンプトラックについて説明するが、特装車1は、ダンプトラックに限らず、ダンプ排出式吸引車やダンプ排出式塵芥収集車など、油圧シリンダを有するダンプ装置を備えた任意の特装車であってもよい。
【0022】
以下、本実施の形態に係る積載重量推定システムの構成について説明する。
図4は積載重量推定システムの構成を説明するブロック図である。積載重量表示システムは、圧力計81より得られる油圧の大きさに関するデータと、傾斜計82より得られる傾斜角に関するデータとに基づき、特装車1の積載重量を推定する推定装置100と、推定装置100が推定した積載重量に関する情報を報知するための表示装置120とを備える。
【0023】
推定装置100は、専用又は汎用のコンピュータであり、制御部101、記憶部102、操作部103、入力部104、出力部105、及び通信部106を備える。
【0024】
制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備える。制御部101が備えるROMには、推定装置100が備えるハードウェア各部の動作を制御する制御プログラム等が記憶される。制御部101内のCPUは、ROMに記憶された制御プログラムや後述する記憶部102に記憶された各種コンピュータプログラムを実行し、ハードウェア各部の動作を制御することによって、本実施の形態における推定装置100としての機能を実現する。制御部101が備えるRAMには、演算の実行中に利用されるデータ等が一時的に記憶される。
【0025】
制御部101は、日時情報を出力するクロック、計測開始指示を与えてから計測終了指示を与えるまでの経過時間を計測するタイマ、数をカウントするカウンタ等の機能を搭載するものであってもよい。
【0026】
記憶部102は、ハードディスク、フラッシュメモリなどを用いた記憶装置を備える。記憶部102には、制御部101によって実行されるコンピュータプログラム、外部から取得した各種データ、推定装置100の内部にて生成した各種データ等が記憶される。
【0027】
記憶部102に記憶されるコンピュータプログラムは、第1データ、第2データ、及び積載重量を含むデータ間の関係を参照して、特装車1の積載重量を推定するための推定プログラムPG1などを含む。
【0028】
記憶部102に記憶されるコンピュータプログラムは、例えば、コンピュータプログラムを読み取り可能に記録した非一時的な記録媒体RM1により提供される。記録媒体RM1は、例えば、CD-ROM、USBメモリ、SD(Secure Digital)カードなどの可搬型メモリである。制御部101は、図に示していない読取装置を用いて、記録媒体RM1から各種プログラムを読み取り、読み取った各種プログラムを記憶部102に記憶させる。また、記憶部102に記憶されるコンピュータプログラムは、通信により提供されてもよい。この場合、制御部101は、所定のサーバから必要なコンピュータプログラムをダウンロードし、ダウンロードしたコンピュータプログラムを記憶部102に記憶させる。
【0029】
また、記憶部102は、積載物の重量及び積載位置を変化させた場合の、特装車1の傾斜角と油圧の大きさとの関係を、積載物の重量に関連付けて記憶する関係テーブルTB1を備える。関係テーブルTB1の構成については後に詳述する。
【0030】
操作部103は、スイッチやボタンなどにより構成されており、各種の操作を受付ける。制御部101は、操作部103を通じて受付けた操作に基づき、適宜の処理を実行する。なお、本実施の形態では、推定装置100が操作部103を備える構成としたが、操作部103は必須ではなく、外部に接続された機器や通信部106を介して操作を受付ける構成であってもよい。
【0031】
入力部104は、各種センサを接続するためのインタフェースを備え、圧力計81、傾斜計82,83などのセンサが接続される。入力部104には、これらのセンサが有線によって接続されてもよく、無線によって接続されてもよい。入力部104には、圧力計81より出力される油圧シリンダ52のシリンダ圧に係る計測データ、傾斜計82より出力される特装車1の傾斜に係る計測データ、傾斜計83より出力される荷箱4の傾斜に係る計測データ等が適宜入力される。
【0032】
出力部105は、液晶モニタなどの表示装置120を接続するための出力インタフェースを備える。表示装置120は、例えばキャブ20の運転席近傍に設けられる。代替的に、表示装置120は、フロントパネル41の後面側に設けられてもよい。出力部105が備える出力インタフェースは、アナログ形式の映像信号を出力する出力インタフェースであってもよく、DVI(Digital Visual Interface)やHDMI(High-Definition Multimedia Interface、登録商標)などのデジタル形式の映像信号を出力する出力インタフェースであってもよい。出力部105は、例えば、積載重量の推定結果を表示装置120に表示させるべく、表示データを表示装置120へ出力する。
【0033】
本実施の形態では、推定装置100の外部に表示装置120を接続する構成としたが、推定装置100が表示装置120を搭載するものであってもよい。
【0034】
通信部106は、外部機器との間で各種のデータを送受信する通信インタフェースを備える。推定装置100が通信部106を介して通信する相手先の一例は、特装車1に搭載される各種ECU(Electronic Controller Unit)やPLC(Programmable Logic Controller)である。この場合、通信部106は、特装車1に搭載される各種ECUやPLCと通信するために、例えばRS-485に準拠した通信ポートを備えてもよく、CAN(Controller Area Network)などの車内通信用の通信規格に準拠した通信インタフェースを備えてもよい。推定装置100が通信部106を介して通信する相手先の他の例は、特装車1の外部に設置されるサーバ装置やユーザが所持する携帯端末などである。この場合、通信部106は、外部のサーバ装置などと通信するために、WiFi(登録商標)、3G、4G、5G、LTE(Long Term Evolution)等の無線通信の通信規格に準じた通信インタフェースを備えてもよい。
【0035】
本願発明者らは、荷箱4に積載する積載物の重量及び積載位置が油圧の大きさ(油圧シリンダ52のシリンダ圧)や特装車1の傾斜角に及ぼす影響を詳細に検討した。特装車1の特性を考えると、車両(ダンプ)は、前輪22F、後輪22R、及び図に示していないリーフサスペンションという「バネ」に支えられているとみなすことができる。このため、荷箱4に積載物を積載した場合、積載物の重量にって「バネ」がたわみ、車両に傾きが生じる。すなわち、積載物の重量、積載位置、車両の傾きには何らかの関係があることが予想される。
【0036】
図5は積載物を含む荷箱4の重心位置とピッチ角度の変化との関係を示すグラフである。本実施の形態では、重量が既知の積載物を荷箱4に積み込むことにより、均等積載の状態と現実的に発生し得る最大偏積載の状態とを作り出し、それぞれの状態において、積載物を含む荷箱4の重心位置と、トラックシャシ2のピッチ角度の変化とを求め、グラフ上にプロットした。ここで、積載物を含む荷箱4の重心位置は、例えば、CAD(Computer-Assisted design)データを用いて算出される。ピッチ角度の変化は、積載物を積み込む前のトラックシャシ2のピッチ角度と、積み込んだ後のトラックシャシ2のピッチ角度との差を表しており、傾斜計82より取得したデータに基づき計算することができる。代替的に、ピッチ角の変化は、CAE(Computer-Aided Engineering)解析により計算されてもよい。
【0037】
積載物が荷箱4の前後方向に均等に配置された均等積載の状態を基準にとり、ピッチ角度の変化を表す。すなわち、均等積載の状態では、ピッチ角度の変化をゼロとする。このとき、ピッチ角度は、積載物が荷箱4の前方に偏って配置された最大偏積載の状態では、例えばマイナス側に大きく変化し、積載物が荷箱4の後方に偏って配置された最大偏積載の状態では、例えばプラス側に大きく変化する。
図5のグラフに示されている通り、トラックシャシ2の傾きと、積載物を含む荷箱4の重心位置との間には、概ね比例関係があることが分かる。
【0038】
図6は積載重量及び積載位置を変化させた場合の油圧値とピッチ角度との関係を示すグラフである。グラフの横軸は、傾斜計82より得られるトラックシャシ2のピッチ角度を表し、縦軸は、圧力計81より得られる油圧の大きさ(油圧シリンダ52のシリンダ圧)を表す。本実施の形態では、重量が既知の積載物を荷箱4に積み込むことにより、均等積載の状態と、その重量での最大偏積載の状態とを作り出し、それぞれの状態において、トラックシャシ2のピッチ角度と、油圧の大きさとを計測し、グラフ上にプロットした。
【0039】
具体的には、10トンの積載物を荷箱4の前後均等積載位置、前端位置、後端位置にそれぞれ順に配置して、それぞれの位置でピッチ角度及び油圧の大きさを計測し、対応する計測点をグラフ上にプロットした。その結果、
図6のグラフにおいて黒丸で示す3つの計測点が得られた。荷箱4の前端位置及び後端位置に積載物を配置した状態は最大偏積載に該当する。
【0040】
同様に、9トンの積載物を各位置に積載した場合、8トンの積載物を各位置に積載した場合、…、1トンの積載物を各位置に積載した場合のそれぞれにおいて、ピッチ角度及び油圧の大きさを計測し、対応する計測点をグラフ上にプロットした。その結果、積載重量毎に3つの計測点が得られた。なお、積載重量が5トン、3トン、2トン、1トンの積載物については、荷箱4の前後均等積載位置に積載物を配置した場合の計測点のみを取得したが、他の積載重量と同様に、前端位置及び後端位置に積載物を配置した場合の計測点を併せて取得してもよい。
【0041】
図6のグラフ中に示す破線は、所定の積載重量毎の3つの計測点を近似する近似直線を示している。グラフの横軸をx軸、縦軸をy軸、積載重量をWトンとした場合、近似直線は、a
w x+b
w y+c
w =0のように表される。ここで、xはトラックシャシ2のピッチ角度、yは油圧値、a
w ,b
w ,c
w は係数である。積載重量Wトンの場合の計測結果(
図6の例では3つの計測点)が得られた場合、最小二乗法などの近似手法を用いて、係数a
w ,b
w ,c
w を決定することにより、近似直線を導出することができる。
【0042】
本実施の形態では、均等積載の状態、及び前後両端の最大偏積載の状態で得られる3つの計測点を用いて近似直線を導出する構成としたが、他の偏積載の状態での計測点を追加し、4つ以上の計測点から近似直線を導出してもよい。また、本実施の形態では、計測点を直線により近似する構成としたが、2次曲線や3次曲線等の任意の曲線により近似する構成としてもよい。
【0043】
また、特装車1の最大積載量(例えば10トン)付近で積載重量をより精密に推定するために、最大積載量を積んだ状態での計測点の数を増やし、より正確な近似曲線を導出してもよく、最大積載量付近の近似曲線(例えば、9.8トン、9.9トン、10.1トン、10.2トンの近似曲線)を導出してもよい。
【0044】
推定装置100は、積載重量及び積載位置を変化させた場合のトラックシャシ2のピッチ角度と油圧の大きさとの間の関係を、積載重量に関連付けて記憶する関係テーブルTB1を備える。
図7は関係テーブルTB1の一例を示す概念図である。関係テーブルTB1では、上述した係数a
w ,b
w ,c
w を積載重量毎に記憶することにより、積載重量及び積載位置を変化させた場合のトラックシャシ2のピッチ角度と油圧の大きさとの間の関係を記憶する。例えば、積載重量が10トンの近似直線は、a
10x+b
10y+c
10=0と表せるので、この直線の方程式から、トラックシャシ2のピッチ角度と油圧の大きさとの間の関係が得られる。他の積載重量における関係についても同様である。本実施の形態では、運用が開始される前の事前解析により、積載重量毎の係数a
w ,b
w ,c
w が予め決定されているものとする。なお、各係数a
w ,b
w ,c
w は、実際の計測値を用いて決定されてもよく、CAE解析の結果を用いて決定されてもよい。
【0045】
本実施の形態では、積載重量毎に係数aw ,bw ,cw を記憶する構成としたが、近似直線を表す方程式(a10x+b10y+c10=0)を記憶部102に記憶させる構成としてもよい。また、関係テーブルTB1は、トラックシャシ2のピッチ角度と油圧の大きさとの間の関係を規定するものとして説明したが、トラックシャシ2のロール角と油圧の大きさとの関係を規定するものであってもよい。
【0046】
推定装置100は、入力部104を通じて、圧力計81より得られる油圧の大きさに関するデータ(第1データ)、及び傾斜計82より得られる特装車1の傾斜角に関するデータ(第2データ)を取得した場合、関係テーブルTB1に記憶されている関係を参照して、荷箱4における積載重量を推定する。
【0047】
図8は実施の形態1における積載重量の推定方法を説明する説明図である。推定装置100の制御部101は、関係テーブルTB1に記憶されている関係を2次元座標平面上にプロットした場合の近似直線と、第1データ及び第2データが示す計測結果を同じ2次元座標平面上にプロットした場合の計測点との間の距離に基づき、荷箱4における積載重量を推定する。
【0048】
積載重量Wにおける近似直線をaw x+bw y+cw =0とし、計測点の座標を(X,Y)とした場合、近似直線と計測点との間の距離は、計測点から近似直線に垂線を下ろしたときの垂線の長さに等しく、|aw X+bw Y+cw |/(aw
2+bw
2)1/2 により算出される。
【0049】
制御部101は、第1データ及び第2データを取得した場合、計測点を表す座標を特定し、上記演算式に代入することによって、各近似直線と計測点との間の距離を算出する。制御部101は、算出した距離に基づき、荷箱4における積載重量を推定する。例えば、
図8に示すように、積載重量W1の近似直線と積載重量W2の近似直線との間に計測点が存在する場合について説明する。計測点から積載重量W1の近似直線までの距離をL1、計測点から積載重量W2の近似直線までの距離をL2と算出された場合、制御部101は、例えば、W1×L2/(L1+L2)+W2×L1/(L1+L2)のように距離の比で配分することにより、計測点における積載重量を推定することができる。
【0050】
なお、積載重量を細かく推定する必要がない場合等において、制御部101は、計測点に最も近い近似直線を特定して、積載重量を推定してもよい。例えば、
図8の例では、計測点は、積載重量W1の近似直線に最も近いので、計測点における積載重量をW1と推定してもよい。
【0051】
以下、積載重量の推定手順について説明する。
図9は実施の形態1における積載重量の推定手順を説明するフローチャートである。推定装置100の制御部101は、トラックシャシ2に対して荷箱4を所定のダンプ角度(例えば1.0度)にした状態において、記憶部102から推定プログラムPG1を読み出して実行することにより、以下の処理を実行する。
【0052】
制御部101は、圧力計81からの出力に基づき、油圧の大きさに関する第1データを取得する(ステップS101)。具体的には、制御部101は、入力部104を通じて、圧力計81から出力される計測データ(油圧シリンダ52の油圧値)を取得することにより、第1データを取得する。
【0053】
制御部101は、傾斜計82からの出力に基づき、特装車1の傾斜角に関する第2データを取得する(ステップS102)。具体的には、制御部101は、入力部104を通じて、傾斜計82から出力される計測データ(特装車1のピッチ角及びロール角)を取得することにより、第2データを取得する。
【0054】
制御部101は、取得した第1データ及び第2データに基づき、2次元座標平面上の計測点の座標を特定する(ステップS103)。第1データが示す油圧の大きさをX、第2データが示すピッチ角度をYとした場合、計測点の座標は(X,Y)のように表される。
【0055】
制御部101は、ステップS103で特定した計測点を間に挟む2つの近似直線を特定する(ステップS104)。制御部101は、例えば、ピッチ角度がXである場合の油圧の大きさを各近似直線から求め、計測点における油圧の大きさYと近似直線から求めた油圧の大きさとの差分を調べることにより、計測点を間に挟む2つの近似直線を特定することができる。
【0056】
制御部101は、計測点と特定した2つ近似直線との距離を算出する(ステップS105)。制御部101は、関係テーブルTB1から各近似直線を規定する係数aw ,bw ,cw を読み出し、ステップS103で特定した座標(X,Y)と、各近似直線を規定する係数aw ,bw ,cw とを上述の演算式に代入することにより、計測点と各近似直線との間の距離を算出することができる。
【0057】
制御部101は、計測点から各近似直線までの距離の比に基づき、積載重量を推定する(ステップS106)。例えば、計測点の下側に位置する近似直線が積載重量W1の近似直線であり、その近似直線までの距離がL1であったとする。また、計測点の上側に位置する近似直線が積載重量W2の近似直線であり、その近似直線までの距離がL2であったとする。この場合、制御部101は、例えば、W1×L2/(L1+L2)+W2×L1/(L1+L2)を算出することにより、積載重量を推定することができる。
【0058】
制御部101は、推定した積載重量を報知する(ステップS107)。このとき、制御部101は、推定した積載重量の情報を出力部105より出力し、表示装置120に表示させる。
図10は積載重量の表示例を示す模式図である。
図10では、積載重量の推定値、積載率、及び推定日時の情報を文字情報として表示装置120に表示させた例を示している。ここで、積載重量の推定値は、関係テーブルTB1を参照して推定した積載重量の値である。積載率は、上限値に対する積載重量(推定値)の割合として算出される値である。推定日時は、積載重量を推定した日時であり、例えば制御部101の内蔵クロックから得られる情報である。制御部101は、関係テーブルTB1を参照して推定した積載重量の推定値、上限値に対する割合として算出される積載率、内蔵クロックから得られる日時の情報に基づき、表示画面のデータを生成し、生成した表示画面のデータを表示装置120へ出力することにより、
図10に示すような画面を表示装置120に表示させることができる。
【0059】
以上のように、実施の形態1では、特装車1の傾斜角と油圧の大きさとが得られた場合、積載重量との関係を規定した関係テーブルTB1を参照して積載重量を推定するので、特装車1の傾斜の有無に関わらず、積載重量を精度良く推定し、推定した積載重量を報知することができる。
【0060】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2における積載重量の推定方法について説明する。
図11は実施の形態2における積載重量の推定方法を説明する説明図である。推定装置100の制御部101は、関係テーブルTB1に記憶されている関係を2次元座標平面上にプロットした場合の近似直線と、第1データ及び第2データが示す計測結果を同じ2次元座標平面上にプロットした場合の計測点との間の距離に基づき、荷箱4における積載重量を推定する。
【0061】
実施の形態2では、計測点から各近似直線に下ろした垂線の長さを用いる代わりに、計測点を通る直線を利用する。具体的には、制御部101は、計測点を間に挟む2つの近似直線を特定し、計測点を通り、特定した2つの近似直線を最短で結ぶ線分を特定する。そして、制御部101は、特定した線分と近似直線との交点を求め、計測点から各交点までの距離の比に応じて積載重量を推定する。
【0062】
図11に示すように、積載重量W1の近似直線と積載重量W2の近似直線との間に計測点が存在する場合について説明する。制御部101は、計測点を通る直線と各近似直線との交点を求め、交点間の距離を算出して、交点間の距離が最小となる線分を特定する。積載重量W1の近似曲線との交点をP1、積載重量W2の近似曲線との交点をP2とする。計測点から交点P1までの距離がL1、計測点から交点P2までの距離がL2であった場合、制御部101は、例えば、W1×L2/(L1+L2)+W2×L1/(L1+L2)のように距離の比で配分することにより、計測点における積載重量を推定することができる。
【0063】
(実施の形態3)
実施の形態3では、荷箱4を上昇させた後に停止させた状態と、荷箱4を下降させた後に停止させた状態とを区別して、積載重量を推定する構成について説明する。
【0064】
本願発明者らは、トラックシャシ2のピッチ角と油圧値との関係を詳細に調べたところ、荷箱4を上昇させた後に停止させた場合の油圧値と、荷箱4を下降させた後に停止させた場合の油圧値との間に差異が生じることを見出した。そこで、実施の形態3における積載重量推定システムでは、荷箱4を上昇後に停止させた状態と、荷箱4を下降後に停止させた状態とを区別し、両者で異なる関係テーブルを用いて積載重量の推定を行う。
【0065】
図12は実施の形態3における積載重量推定システムの構成を説明するブロック図である。推定装置100は、制御部101、記憶部102、操作部103、入力部104、出力部105、及び通信部106を備える。これらハードウェア各部の構成は実施の形態1において説明したものと同様であるため、その説明を省略する。
【0066】
記憶部102は、上昇停止用の関係テーブルTB10と、下降停止用の関係テーブルTB20とを備える。上昇停止用の関係テーブルTB10は、荷箱4が上昇後に停止した状態にて取得した特装車1の傾斜角及び油圧の大きさのデータに基づき、所定の積載重量毎の近似直線を定め、各近似直線の係数を積載重量に関連付けて記憶したテーブルである。同様に、下降停止用の関係テーブルTB20は、荷箱4が下降後に停止した状態にて取得した特装車1の傾斜角及び油圧の大きさのデータに基づき、所定の積載重量毎の近似直線を定め、各近似直線の係数を積載重量に関連付けて記憶したテーブルである。
【0067】
図13は実施の形態3における積載重量の推定手順を説明するフローチャートである。推定装置100の制御部101は、入力部104を通じて入力される信号を監視することにより、計量スイッチ89がオンされたか否かを判断する(ステップS301)。オンされていない場合(S301:NO)、制御部101は、計量スイッチ89がオンされるまで待機する。
【0068】
計量スイッチ89がオンされた場合(S301:YES)、制御部101は積載重量の推定処理を開始する。推定処理を開始する際、ダンプ角度を所定角度に調整するようユーザに指示を与えてもよい。所定角度は、例えば0.5度より大きく、1.5度より小さい範囲の角度である。制御部101は、表示装置120に文字情報などを表示することにより指示を与えてもよく、図に示していないスピーカより音声を出力することにより指示を与えてもよい。実施の形態3において、ダンプ角度は操作レバー67を用いて手動により調整される。
【0069】
制御部101は、入力部104を通じて、傾斜計82,83にて時系列的に計測される傾斜角度の計測データを順次取得し、取得した計測データに基づき、現在のダンプ角度を検出する(ステップS302)。制御部101は、傾斜計83の計測値として得られる荷箱4の傾斜角度から傾斜計82の計測値として得られるトラックシャシ2の傾斜角度を差し引くことにより、ダンプ角度を求めることができる。制御部101は、検出したダンプ角度を時系列的に記憶部102に記憶させる。
【0070】
制御部101は、ステップS302で検出したダンプ角度が最小角度θ1より大きいか否かを判断する(ステップS303)。最小角度θ1は、荷箱4の積載重量を計測するのに適した角度範囲の最小値として設定される値である。最小角度θ1の一例は0.5度である。
【0071】
現在のダンプ角度が最小角度θ1以下であると判断した場合(S303:NO)、制御部101は、ユーザに対して荷箱4の上昇を指示する(ステップS304)。制御部101は、荷箱4を上昇させるべき旨の文字情報を表示装置120に表示させることにより、ユーザへの指示を行う。代替的に、制御部101は、荷箱4を上昇させるべき旨の音声を図に示していないスピーカから出力させることにより、ユーザへの指示を行ってもよい。指示を受けたユーザは、操作レバー67を操作して、荷箱4を適宜の角度だけ上昇させ停止させる。制御部101は、ユーザへの指示を行った後、処理をステップS302へ戻す。
【0072】
現在のダンプ角度が最小角度θ1より大きいと判断した場合(S303:YES)、制御部101は、現在のダンプ角度が最大角度θ2より小さいか否かを判断する(ステップS305)。最大角度θ2は、荷箱4の積載重量を計測するのに適した角度範囲の最大値として設定される値である。最大角度θ2の一例は1.5度である。
【0073】
現在のダンプ角度が最大角度θ2以上であると判断した場合(S305:NO)、制御部101は、ユーザに対して荷箱4の下降を指示する(ステップS306)。制御部101は、例えば、荷箱4を下降させるべき旨の文字情報を表示装置120に表示させてユーザへの指示を行う。代替的に、制御部101は、荷箱4を下降させるべき旨の音声を図に示していないスピーカから出力させてユーザへの指示を行ってもよい。指示を受けたユーザは、操作レバー67を操作して、荷箱4を適宜の角度だけ下降させ停止させる。制御部101は、ユーザへの指示を行った後、処理をステップS302へ戻す。
【0074】
現在のダンプ角度が最大角度θ2より小さいと判断した場合(S305:YES)、制御部101は、内蔵タイマの出力を参照して、ダンプ角度が設定された角度範囲に入ってから所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS307)。所定時間が経過していない場合(S307:NO)、制御部101は、所定時間が経過するまで待機する。
【0075】
所定時間が経過したと判断した場合(S307:YES)、制御部101は、所定時間が経過するまでの間、荷箱4が停止状態であったか否かを判断する(ステップS308)。制御部101は、記憶部102に記憶させたダンプ角度の履歴データから変化の有無を判断することにより、荷箱4が停止状態であったか否かを判断することができる。停止状態でなかった場合(S308:NO)、制御部101は、処理をステップS302へ戻す。
【0076】
所定時間が経過するまでの間、荷箱4が停止状態であった場合(S308:YES)、制御部101は、積載重量の計量の準備ができた旨をユーザに報知する(ステップS309)。制御部101は、例えば、積載重量の計量の準備ができた旨の文字情報を表示装置120に表示させる。代替的に、制御部101は、積載重量の計量の準備ができた旨の音声を図に示していないスピーカから出力させてもよい。
【0077】
次いで、制御部101は、荷箱4は上昇後に停止したか否かを判断する(ステップS310)。制御部101は、記憶部102に記憶させたダンプ角度の履歴データから、荷箱4が上昇後に停止したか否かを判断することができる。
【0078】
制御部101は、荷箱4が上昇後に停止したと判断した場合(S310:YES)、積載重量の推定の際に参照するテーブルとして、上昇停止用の関係テーブルTB10を選択する(ステップS311)。一方、制御部101は、荷箱4が下降後に停止したと判断した場合(S310:NO)、積載重量の際に参照するテーブルとして、下降停止用の関係テーブルTB20を選択する(ステップS312)。
【0079】
制御部101は、圧力計81の計測結果に基づく第1データ(油圧の大きさに関するデータ)と、傾斜計82の計測結果に基づく第2データ(特装車1の傾斜に関するデータ)とを取得し、ステップS311で選択した上昇停止用の関係テーブルTB10、又はステップS312で選択した下降停止用の関係テーブルTB20を参照することにより、荷箱4における積載重量を推定する(ステップS313)。
【0080】
積載重量の推定方法には、実施の形態1や実施の形態2で説明した手法を用いることができる。すなわち、制御部101は、第1データ及び第2データが示す計測点と、この計測点を間に挟む2つの近似直線との間の距離を算出し、算出した距離の比に応じて、積載重量を推定することができる。
【0081】
次いで、制御部101は、推定した積載重量を報知する(ステップS314)。このとき、制御部101は、推定した積載重量の情報を出力部105より出力し、表示装置120に表示させる。制御部101は、積載重量の情報を文字情報として表示装置120に表示させてもよく、グラフ表示やメータ表示などの模式的な表示方法を用いてもよい。また、制御部101は、推定した積載重量の情報を図に示していないスピーカから音声として出力させる構成としてもよい。これらの一連の処理が終了した後、ユーザは、操作レバー67を操作して、荷箱4をダンプ角度が0度となるまで下降させる。その後、計量スイッチ89がオフされることにより、計量が終了する。
【0082】
実施の形態3では、荷箱4を上昇後に停止させた状態と、荷箱4を下降後に停止させた状態とを区別し、両者で異なる関係テーブルを用いて積載重量の推定を行うので、両者で共通のテーブルを用いて推定する場合と比較して、推定精度の低下を抑えることができる。
【0083】
(実施の形態4)
実施の形態4では、上昇停止動作を自動的に行う構成について説明する。
【0084】
図14は実施の形態4における積載重量推定システムの構成を説明するブロック図である。実施の形態4に係る積載重量推定システムは、推定装置100と、推定装置100に接続される昇降制御装置200とを備える。推定装置100は、実施の形態3において説明したものと同様であり、制御部101、記憶部102、操作部103、入力部104、出力部105、及び通信部106を備える。なお、実施の形態4では、上昇停止用の関係テーブルTB10のみを用いるので、下降停止用の関係テーブルTB20は記憶部102に記憶されていなくてもよい。
【0085】
昇降制御装置200は、入力部201、制御部202、及び出力部203を備えており、特装車1が備える油圧機構の動作を制御することにより、荷箱4の昇降を制御する。入力部201は入力インタフェースを備える。入力部201には、推定装置100から出力される情報、操作レバー67の操作情報、PTOスイッチ72の操作情報などが入力される。入力部201に入力された情報は制御部202に出力される。
【0086】
制御部202は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)により構成される。制御部202は、プログラムされたロジックに従って、入力部201を通じて入力された情報に基づき荷箱4を昇降制御するための制御信号を生成する。制御部202は、生成した制御信号を出力部203より制御弁63へ出力する。出力部203は、出力インタフェースを備えており、制御弁63や推定装置100などが接続されている。なお、実施の形態4における制御弁63は、電気的に制御可能な電磁制御弁として構成されているものとする。
【0087】
本実施の形態では、積載重量推定システムが推定装置100と昇降制御装置200とを別体として備える構成としたが、両者が一体の構成であってもよい。
【0088】
図15は実施の形態4における積載重量の推定手順を説明するフローチャートである。推定装置100の制御部101は、入力部104を通じて入力される信号を監視することにより、計量スイッチ89がオンされたか否かを判断する(ステップS401)。オンされていない場合(S401:NO)、制御部101は、計量スイッチ89がオンされるまで待機する。
【0089】
計量スイッチ89がオンされた場合(S401:YES)、制御部101は、PTOスイッチ72がオンであるか否かを判断する(ステップS402)。PTOスイッチ72がオンでない場合(S402:NO)、制御部101は、ユーザに対してPTOスイッチ72をオンするように指示し(ステップS403)、エンジン70の動力伝達先を油圧ポンプ61に切り替えさせる。ユーザへの指示は、表示装置120に文字情報を表示することにより行ってもよく、図に示していないスピーカより音声として出力することにより行ってもよい。
【0090】
PTOスイッチ72がオンである場合(S402:YES)、制御部101は、ダンプ角度を調整する旨をユーザに報知する(ステップS404)。制御部101は、例えば、ダンプ角度を調整する旨の文字情報を表示装置120に表示させる。代替的に、制御部101は、ダンプ角度を調整する旨の音声を図に示していないスピーカから出力させてもよい。
【0091】
次いで、制御部101は、荷箱4の上昇を昇降制御装置200に指示する(ステップS405)。具体的には、制御部101は、荷箱4の上昇を指示する制御信号を生成し、生成した制御信号を出力部105より昇降制御装置200へ出力することにより、昇降制御装置200への指示を行う。昇降制御装置200の制御部202は、推定装置100からの指示に応じて、荷箱4を上昇させるための制御信号を制御弁63へ出力することにより、荷箱4を上昇させる。
【0092】
制御部101は、入力部104を通じて、傾斜計82,83にて時系列的に計測される傾斜角度の計測データを順次取得し、取得した計測データに基づき、現在のダンプ角度を検出する(ステップS406)。
【0093】
制御部101は、ステップS406で検出したダンプ角度が最小角度θ1より大きいか否かを判断する(ステップS407)。最小角度θ1は、荷箱4の積載重量を計測するのに適した角度範囲の最小値として設定される値である。最小角度θ1の一例は0.5度である。
【0094】
現在のダンプ角度が最小角度θ1以下であると判断した場合(S407:NO)、制御部101は、処理をステップS405へ戻し、荷箱4の上昇制御を継続させる。
【0095】
現在のダンプ角度が最小角度θ1より大きいと判断した場合(S407:YES)、制御部101は、現在のダンプ角度が最大角度θ2より小さいか否かを判断する(ステップS408)。最大角度θ2は、荷箱4の積載重量を計測するのに適した角度範囲の最大値として設定される値である。最大角度θ2の一例は1.5度である。
【0096】
現在のダンプ角度が最大角度θ2以上であると判断した場合(S408:NO)、制御部101は、荷箱4の傾斜角度が積載重量を計測するのに適した角度範囲から外れているため、エラーを報知し(ステップS409)、本フローチャートによる処理を終了する。エラーを報知した後、制御部101は、荷箱4の下降を昇降制御装置200に指示してもよい。
【0097】
現在のダンプ角度が最大角度θ2より小さいと判断した場合(S408:YES)、制御部101は、荷箱4の上昇後の停止を指示する(ステップS410)。具体的には、制御部101は、荷箱4の停止を指示する制御信号を生成し、生成した制御信号を出力部105より昇降制御装置200へ出力することにより、昇降制御装置200への指示を行う。昇降制御装置200の制御部202は、推定装置100からの指示に応じて、荷箱4を停止させるための制御信号を制御弁63へ出力することにより、荷箱4を停止させる。
【0098】
次いで、制御部101は、積載重量の計量の準備ができた旨をユーザに報知する(ステップS411)。制御部101は、例えば、積載重量の計量の準備ができた旨の文字情報を表示装置120に表示させる。代替的に、制御部101は、積載重量の計量の準備ができた旨の音声情報を図に示していないスピーカから出力させてもよい。
【0099】
次いで、制御部101は、積載重量の推定の際に参照するテーブルとして、上昇停止用の関係テーブルTB10を設定する(ステップS412)。制御部101は、圧力計81の計測結果に基づく第1データ(油圧の大きさに関するデータ)と、傾斜計82の計測結果に基づく第2データ(特装車1の傾斜に関するデータ)とを取得し、ステップS412で設定した上昇停止用の関係テーブルTB10を参照することにより、荷箱4における積載重量を推定する(ステップS413)。
【0100】
積載重量の推定方法には、実施の形態1や実施の形態2で説明した手法を用いることができる。すなわち、制御部101は、第1データ及び第2データが示す計測点と、この計測点を間に挟む2つの近似直線との間の距離を算出し、算出した距離の比に応じて、積載重量を推定することができる。
【0101】
次いで、制御部101は、推定した積載重量を報知する(ステップS414)。このとき、制御部101は、推定した積載重量の情報を出力部105より出力し、表示装置120に表示させる。制御部101は、積載重量の情報を文字情報として表示装置120に表示させてもよく、グラフ表示やメータ表示などの模式的な表示方法を用いてもよい。また、制御部101は、推定した積載重量の情報を図に示していないスピーカから音声情報として出力させる構成としてもよい。
【0102】
制御部101は、積載重量を推定し、ユーザに報知した後、荷箱4を下降させる指示を昇降制御装置200に与えてもよい。昇降制御装置200の制御部202は、推定装置100からの指示に応じて、荷箱4を下降させるための制御信号を制御弁63へ出力することにより、荷箱4を下降させればよい。
【0103】
積載重量を手動計測する場合、ダンプ角度を所定角度(例えば1.0度)に合わせる必要があるため、ユーザに操作の煩わしさを感じさせる場合がある。これに対し、本実施の形態では、計量スイッチ89の操作によって自動的に積載重量を計測することができるので、操作の煩わしさを軽減できる。
【0104】
(実施の形態5)
実施の形態5では、荷箱4を上昇させた後に停止させた場合と、荷箱4を下降させた後に停止させた場合とで共通の関係テーブルTB30を用いて積載重量を推定する構成について説明する。
【0105】
図16は実施の形態5における積載重量推定システムの構成を説明するブロック図である。推定装置100は、制御部101、記憶部102、操作部103、入力部104、出力部105、及び通信部106を備える。これらハードウェア各部の構成は実施の形態1において説明したものと同様であるため、その説明を省略する。
【0106】
記憶部102は、荷箱4を上昇させた後に停止させた場合と、荷箱4を下降させた後に停止させた場合とで共通の関係テーブルTB30を備える。関係テーブルTB30の構成は、実施の形態1で説明した関係テーブルTB1と同様であり、積載物の重量及び積載位置を変化させた場合の、特装車1の傾斜角と油圧の大きさとの関係を、積載物の重量に関連付けて記憶する。
【0107】
実施の形態5では、荷箱4の上昇停止後に計測された油圧値と、荷箱4の下降停止後に計測された油圧値との関係を事前に把握しているものとする。例えば、計測条件が同じである場合、荷箱4の上昇停止後に計測された油圧値PV1と、荷箱4の下降停止後に計測された油圧値PV2との間には、PV1=PV2+ΔPVなる関係があるものとする。ΔPVはPV1とPV2との差圧であり、実施の形態5では既知であるとする。この関係を示す関係式は記憶部102に記憶される。
【0108】
制御部101は、上昇停止後に計測された油圧値(=PV1)及び傾斜角を取得した場合、取得した油圧値及び傾斜角を基に関係テーブルTB30を参照して積載重量を推定する。一方、制御部101は、下降停止後に計測された油圧値(=PV2)及び傾斜角を取得した場合、記憶部102に記憶されている関係式に従って油圧値PV2を補正する。すなわち、制御部101は、取得した油圧値PV2に差分ΔPVを加算する補正を行う。制御部101は、補正後の油圧値(=PV2+ΔPV)及び傾斜角を基に関係テーブルTB30を参照して積載重量を推定する。
【0109】
図17は実施の形態5における積載重量の推定手順を説明するフローチャートである。推定装置100の制御部101は、
図13に示すフローチャートのS301~S309と同様の手順により、計量準備を完了させ、積載重量の計量の準備ができた旨をユーザに報知する(ステップS501~S509)。計量準備の完了後、積載作業が実行される。制御部101は、圧力計81の計測結果に基づく第1データ(油圧値)と、傾斜計82の計測結果に基づく第2データ(特装車1の傾斜角)とを随時取得する。
【0110】
積載重量の計量の準備ができた旨をユーザに報知した後、制御部101は、S501からS508の処理で、荷箱4は上昇後に停止したか否かを判断する(ステップS510)。制御部101は、荷箱4が上昇後に停止したと判断した場合(S510:YES)、取得した油圧値及び傾斜角を基に関係テーブルTB30を参照して積載重量を推定する(ステップS511)。関係テーブルTB30を用いた積載重量の推定方法は、実施の形態1と同様である。
【0111】
一方、制御部101は、荷箱4が下降後に停止したと判断した場合(S510:NO)、下降停止後の油圧値P2に差圧ΔPVを加算する(ステップS512)。その後、制御部101は、ステップS511に進み、差圧が加算された油圧値(=PV2+ΔPV)と傾斜角とに基づき、関係テーブルTB30を参照して積載重量を推定する(ステップS511)。関係テーブルTB30を用いた積載重量の推定方法は、実施の形態1と同様である。
【0112】
次いで、制御部101は、推定した積載重量を報知する(ステップS513)。このとき、制御部101は、推定した積載重量の情報を出力部105より出力し、表示装置120に表示させる。制御部101は、積載重量の情報を文字情報として表示装置120に表示させてもよく、グラフ表示やメータ表示などの模式的な表示方法を用いてもよい。また、制御部101は、推定した積載重量の情報を図に示していないスピーカから音声として出力させる構成としてもよい。これらの一連の処理が終了した後、ユーザは、操作レバー67を操作して、荷箱4をダンプ角度が0度となるまで下降させる。その後、計量スイッチ89がオフされることにより、計量が終了する。
【0113】
以上のように、実施の形態5では、上昇停止後に計測された油圧値と、下降停止後に計測された油圧値との関係を把握しているので、例えば、下降停止後に計測された油圧値を、同じ条件で計測された上昇停止後の油圧値と同等の油圧値に補正することができる。このため、油圧値から積載重量を推定するために2種類の関係テーブル(上昇停止用の関係テーブル及び下降停止用の関係テーブル)を用意する必要がなくなり、記憶部102の記憶容量が比較的少ない推定装置100であっても積載重量の推定が可能となる。
【0114】
なお、本実施の形態では、下降停止後に得られた油圧値に対して差圧を加算する構成としたが、上昇停止後に得られた油圧値から差圧を減算する構成としてもよい。また、差圧の加算(又は減算)に限らず、任意の関係式を用いて、何れか一方の油圧値を補正してもよい。
【0115】
(実施の形態6)
実施の形態6では、学習モデルを用いて積載重量を推定する構成について説明する。
【0116】
図18は学習モデルLM1の構成例を示す模式図である。本実施の形態における学習モデルLM1は、例えばサポートベクタ回帰モデルであり、各種データが入力される入力層と、入力層に入力されたデータに基づき所定の演算を行うカーネルを含む中間層と、中間層からの出力を結合し、演算結果を出力する出力層とを備える。
【0117】
学習モデルLM1の入力層、中間層、及び出力層には、1つまたは複数のノードが存在し、各層のノードは前後の層に存在するノードと一方向に結合荷重で結合されている。なお、カーネルトリックを用いて非線形に拡張したサポートベクタマシンでは、中間層から出力層への結合荷重が学習により適応的に決定される。一方、入力層から中間層への結合荷重は固定であり、訓練データから機械的に求められる。
【0118】
学習モデルLM1の入力層には第1データ(油圧の大きさに関するデータ)及び第2データ(特装車1の傾斜に関するデータ)が入力される。入力層に入力されたデータは、訓練データを用いて決定された結合荷重により重み付けされて中間層へ出力される。中間層は、入力層から入力されたデータに基づきカーネルを用いた演算を実行する。中間層の各カーネルにおいて演算されたデータは、学習によって決定された結合荷重により重み付けされて出力層へ出力される。出力層は、中間層から入力されたデータを結合することにより、積載重量に関する演算結果を出力する。
【0119】
ここで、出力層が出力する演算結果は、積載重量の推定値であってもよく、ある積載重量に該当する確率であってもよい。後者の場合、出力層は、複数のノードにより構成され、第1ノードからは積載重量が1トンである確率、第2ノードからは積載重量が2トンである確率、…、第Nノード(Nは2以上の整数)からは積載重量がNトンである確率といったように、ある積載重量である確率を出力すればよい。
【0120】
学習モデルLM1は、推定装置100が備える記憶部102に用意されてもよく、推定装置100と通信可能に接続される外部のサーバ装置に用意されてもよい。
【0121】
推定装置100は、積載作業時に得られるデータを学習モデルLM1に入力し、学習モデルLM1による演算結果を取得することにより、積載重量を推定することができる。
【0122】
今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0123】
例えば、本実施の形態では、特装車1として、積載重量を推定する推定装置100と、推定装置100が推定した積載重量に関する情報を報知する表示装置120と、ダンプ装置3とを備えるダンプトラックを例に挙げて説明したが、本発明はダンプトラックに限らず、油圧シリンダを有するダンプ装置を備えた種々の特装車に適用可能である。例えば、ダンプ排出式吸引車やダンプ排出式塵芥収集車、荷役アームを備えたコンテナ脱着車等の特装車に適用できる。
【符号の説明】
【0124】
1 特装車
2 トラックシャシ
3 ダンプ装置
4 荷箱
5 ホイスト機構
20 キャブ
21 シャシフレーム
22F 前輪
22R 後輪
23F,23R 車軸
30 サブフレーム
81 圧力計
82 傾斜計(シャシ)
83 傾斜計(荷箱)
100 推定装置
101 制御部
102 記憶部
103 操作部
104 入力部
105 出力部
106 通信部
PG1 推定プログラム
TB1 関係テーブル