(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148989
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】伝熱部材、伝熱部材の製造方法およびプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20231005BHJP
H05H 1/46 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H05H1/46 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057297
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】庄司 美穂
(72)【発明者】
【氏名】厨子 敏博
(72)【発明者】
【氏名】平野 耕生
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084BB21
2G084BB23
2G084CC12
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD23
2G084DD37
2G084FF15
2G084FF31
2G084FF32
2G084FF38
5F004AA16
5F004BA04
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB28
5F004BB29
(57)【要約】
【課題】耐プラズマ性が高く、各種部材との密着性を高い状態で長期間にわたって維持できる伝熱部材とその製造方法、および、チャンバ内が真空状態であってもチャンバ内の各部品の温度が安定しやすいプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】伝熱部材は、フッ素系樹脂又はフッ素系エラストマーを含む成形物の焼成体からなる伝熱部材であって、JIS K 6253-3:2012に準拠したタイプAMデュロメータを用いて測定した硬度が、前記成形物と比較して7以上低い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素系樹脂又はフッ素系エラストマーを含む成形物の焼成体からなる伝熱部材であって、
JIS K 6253-3:2012に準拠したタイプAMデュロメータを用いて測定した硬度が、前記成形物と比較して7以上低い伝熱部材。
【請求項2】
前記成形物がフィラーを含む請求項1に記載の伝熱部材。
【請求項3】
前記フィラーがアルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、シリコンからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機物である請求項2に記載の伝熱部材。
【請求項4】
フッ素系樹脂又はフッ素系エラストマーを含む成形体からなる伝熱部材であって、
JIS K 6253-3:2012に準拠したタイプAMデュロメータを用いて測定した硬度の、250℃で25時間加熱した後の加熱前からの変化量が±5の範囲内にある伝熱部材。
【請求項5】
前記成形体がフィラーを含む請求項4に記載の伝熱部材。
【請求項6】
前記フィラーがアルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、シリコンからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機物である請求項5に記載の伝熱部材。
【請求項7】
フッ素系樹脂又はフッ素系エラストマーを含む伝熱部材の製造方法であって、
前記フッ素系樹脂又は前記フッ素系エラストマーを含む材料を加熱成形して成形物を作製する成形工程と、
前記成形物を焼成して、JIS K 6253-3:2012に準拠したタイプAMデュロメータを用いて測定した前記成形物の硬度と比較して、硬度が7以上低い軟化焼成体を作製する焼成工程と、を含み、
前記伝熱部材が前記軟化焼成体からなることを特徴とする伝熱部材の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の伝熱部材の製造方法であって、
前記成形物を、温度および時間の一方又は両方が異なる複数の条件で焼成して複数の焼成体を得て、得られた複数の前記焼成体の硬度をJIS K 6253-3:2012に準拠したタイプAMデュロメータを用いて測定し、前記成形物の硬度と、複数の前記焼成体の硬度とを比較することによって、前記焼成体の硬度が、前記成形物の硬度と比較して7以上低い前記軟化焼成体が得られる焼成温度と焼成時間を求める予備工程を含み、
前記焼成工程で、前記成形物を、前記予備工程で求められた前記焼成温度と前記焼成時間で焼成して、前記軟化焼成体を作製することを特徴とする伝熱部材の製造方法。
【請求項9】
プラズマ生成用のガスを通過させる通気孔を有するプラズマ処理装置用電極と、冷却板とを備えるプラズマ処理装置であって、
前記プラズマ処理装置用電極と前記冷却板との間の少なくとも一部に、請求項1から6のいずれか一項に記載の伝熱部材が配置されているプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記プラズマ処理装置用電極と、前記伝熱部材とが直接接合されていることを特徴とする請求項9に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
フォーカスリングと、フォーカスリングを支持する支持台とを備えるプラズマ処理装置であって、
前記フォーカスリングと前記支持台との間の少なくとも一部に、請求項1から6のいずれか一項に記載の伝熱部材が配置されている、プラズマ処理装置。
【請求項12】
前記フォーカスリングと、前記伝熱部材とが直接接合されていることを特徴とする請求項11に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱部材、伝熱部材の製造方法およびプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置のプラズマ処理時は、チャンバ内が真空状態に保持される。このため、チャンバ内の部品は相互間の伝熱性が低く、各部品の温度が安定するまでに時間を要するという課題がある。そこで、チャンバ内の部品間に伝熱部材を配置することが多く検討されている。
【0003】
例えば、プラズマ処理装置用電極と冷却板との間やプラズマ処理装置のチャンバ内のフォーカスリングとその支持台との間に伝熱部材を配置することが検討されている(特許文献1、2)。伝熱部材として柔軟性を有する伝熱シートを用いることが検討されている(特許文献1)。特許文献1には、柔軟性を有する伝熱シートとして、耐熱シリコーンゴムが記載されている。また、特許文献2には、伝熱部材としてフッ素系樹脂やフッ素系エラストマーを用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5619486号公報
【特許文献2】特開2021-141314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラズマ処理装置のチャンバ内における各部品間の熱伝導性を向上させるために、伝熱部材の柔軟性を高めて、各部品と伝熱部材との密着性を高めることは有効である。しかしながら、柔軟性を有する伝熱部材として、従来より用いられているシリコーンゴムは、耐プラズマ性が低いという問題がある。耐プラズマ性が低い伝熱部材は、プラズマ処理装置のチャンバ内の部品に使用した場合、経時的に変質して部品との密着性が低下するおそれがある。一方、フッ素系樹脂やフッ素系エラストマーは、耐プラズマ性は高いが、伝熱特性を高めるために、各種部材との密着性をより向上することが求められている。
【0006】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、耐プラズマ性が高く、各種部材との密着性を高い状態で長期間にわたって維持できる伝熱部材とその製造方法、および、チャンバ内が真空状態であってもチャンバ内の各部品の温度が安定しやすいプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の伝熱部材は、フッ素系樹脂又はフッ素系エラストマーを含む成形物の焼成体からなる伝熱部材であって、JIS K 6253-3:2012に準拠したタイプAMデュロメータを用いて測定した硬度が、前記成形物と比較して7以上低い構成とされている。
【0008】
このような構成とされた本発明の伝熱部材によれば、フッ素系樹脂又はフッ素系エラストマーを含むので、耐プラズマ性が高い。また、本発明の伝熱部材は、焼成体であって、硬度AMが、焼成前の成形物の硬度AMと比較して7以上低い値とされていて、硬度が低く、柔軟性が高くなる。このため、本発明の伝熱部材によれば、種々の部品に対する伝熱部材の密着性が向上する。
【0009】
ここで、本発明の伝熱部材においては、前記成形物がフィラーを含む構成であってもよい。
この場合、フィラーはフッ素系樹脂およびフッ素系エラストマーと比較して熱伝導性が高いので、伝熱部材の熱伝導性がより向上する。
【0010】
また、本発明の伝熱部材においては、前記フィラーがアルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、シリコンからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機物である構成であってもよい。
この場合、フィラーが上記の無機物であるので、伝熱部材の熱伝導性が更に向上する。
【0011】
また、本発明の伝熱部材は、フッ素系樹脂又はフッ素系エラストマーを含む成形体からなる伝熱部材であって、JIS K 6253-3:2012に準拠したタイプAMデュロメータを用いて測定した硬度の、250℃で25時間加熱した後の加熱前からの変化量が±5の範囲内にある構成とされている。
【0012】
このような構成とされた本発明の伝熱部材は、フッ素系樹脂又はフッ素系エラストマーを含むので、耐プラズマ性が高い。また、本発明の伝熱部材は、250℃で25時間加熱した後の上記硬度の変化量が±5の範囲内とされていて、熱的な安定性が高く、柔軟性が高くなる。このため、本発明の伝熱部材によれば、種々の部品に対する伝熱部材の密着性が向上する。また、本発明の伝熱部材は、熱的な安定性が高いので、プラズマ処理装置のチャンバ内のような高温環境下においても、各種部材との密着性を高い状態で長期間にわたって維持できる。
【0013】
ここで、本発明の伝熱部材においては、前記成形体がフィラーを含む構成であってもよい。
この場合、フィラーはフッ素系樹脂およびフッ素系エラストマーと比較して熱伝導性が高いので、伝熱部材の熱伝導性がより向上する。
【0014】
また、本発明の伝熱部材においては、前記フィラーがアルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、シリコンからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機物である構成であってもよい。
この場合、フィラーが上記の無機物であるので、伝熱部材の熱伝導性が更に向上する。
【0015】
本発明の伝熱部材の製造方法は、フッ素系樹脂又はフッ素系エラストマーを含む伝熱部材の製造方法であって、前記フッ素系樹脂又は前記フッ素系エラストマーを含む材料を加熱成形して成形物を作製する成形工程と、前記成形物を焼成して、JIS K 6253-3:2012に準拠したタイプAMデュロメータを用いて測定した前記成形物の硬度と比較して、硬度が7以上低い軟化焼成体を作製する焼成工程と、を含み、前記伝熱部材が前記軟化焼成体からなることを特徴とする構成とされている。
【0016】
このような構成とされた本発明実施形態の伝熱部材の製造方法によれば、成形工程で得られた成形物を、焼成工程で上記の条件で焼成するので、耐プラズマ性が高く、各種部材との密着性を高い状態で長期間にわたって維持できる伝熱部材を工業的に有利に製造することができる。
【0017】
ここで、本発明の伝熱部材の製造方法においては、前記成形物を、温度および時間の一方又は両方が異なる複数の条件で焼成して複数の焼成体を得て、得られた複数の前記焼成体の硬度をJIS K 6253-3:2012に準拠したタイプAMデュロメータを用いて測定し、前記成形物の硬度と、複数の前記焼成体の硬度とを比較することによって、前記焼成体の硬度が、前記成形物の硬度と比較して7以上低い前記軟化焼成体が得られる焼成温度と焼成時間を求める予備工程を含み、前記焼成工程で、前記成形物を、前記予備工程で求められた前記焼成温度と前記焼成時間で焼成して、前記軟化焼成体を作製する構成とされていてもよい。
この場合、予備工程において求められた焼成温度と焼成時間を用いて、焼成工程で成形物を焼成するので、成形物の硬度と比較して、硬度が7以上低い伝熱部材を、高い確率で長期間にわたって安定して製造することができる。
【0018】
本発明のプラズマ処理装置は、プラズマ生成用のガスを通過させる通気孔を有するプラズマ処理装置用電極と、冷却板とを備えるプラズマ処理装置であって、前記プラズマ処理装置用電極と前記冷却板との間の少なくとも一部に、上記本発明の伝熱部材が配置されている構成とされている。
このような構成とされた本発明のプラズマエッチング装置によれば、プラズマ処理装置用電極と冷却板との間の少なくとも一部に、伝熱部材が配置されているので、プラズマによって加熱されたプラズマ処理装置用電極の熱を高い効率で冷却板に伝えることができる。このため、プラズマ処理装置用電極の均熱性を長期間にわたって確保しやすくなる。
【0019】
ここで、上記本発明のプラズマ処理装置においては、前記プラズマ処理装置用電極と、前記伝熱部材とが直接接合されている構成とされていてもよい。
この場合、プラズマ処理装置用電極と伝熱部材とを直接接合することによってプラズマ処理装置用電極の熱をより高い効率で冷却板に伝えることができる。
【0020】
また、本発明のプラズマ処理装置は、フォーカスリングと、フォーカスリングを支持する支持台とを備えるプラズマ処理装置であって、前記フォーカスリングと前記支持台との間の少なくとも一部に、上記本発明の伝熱部材が配置されている構成とされている。
このような構成とされた本発明のプラズマエッチング装置によれば、フォーカスリングと支持台との間の少なくとも一部に、伝熱部材が配置されているので、プラズマによって加熱されたフォーカスリングの熱を高い効率で支持台に伝えることができる。このため、被処理体に対するプラズマ処理が長期間にわたって安定しやすくなる。
【0021】
ここで、上記本発明のプラズマ処理装置においては、前記フォーカスリングと、前記伝熱部材とが直接接合されている構成とされていてもよい。
この場合、フォーカスリングと伝熱部材とを直接接合することによってフォーカスリングの熱をより高い効率で冷却板に伝えることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、耐プラズマ性が高く、各種部材との密着性を高い状態で長期間にわたって維持できる伝熱部材とその製造方法、および、チャンバ内が真空状態であってもチャンバ内の各部品の温度が安定しやすいプラズマ処理装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る伝熱部材の製造方法を示すフロー図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るプラズマエッチング装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施形態である伝熱部材とその製造方法およびプラズマ処理装置について添付した図面を適宜参照して説明する。
本実施形態に係るプラズマ処理装置は、例えば、半導体デバイス製造プロセスに使用されるプラズマエッチング装置やプラズマCVD装置等のプラズマ処理装置である。本実施形態に係る伝熱部材は、例えば、プラズマ生成用のガスを通過させる通気孔を有するプラズマ処理装置用電極と冷却板との間に配置されて、プラズマ処理装置用電極の熱を冷却板に伝える伝熱部材、フォーカスリングとフォーカスリングを支持する支持台との間に配置されて、フォーカスリングの熱を冷却板に伝える伝熱部材として利用される。ただし、実施形態に係る伝熱部材の用途はこれらに限定されるものではない。
【0025】
<伝熱部材>
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る伝熱部材は、フッ素系樹脂又はフッ素系エラストマーを含む成形物の焼成体からなる。成形物は、伝熱部材として使用できる形状に成形されたものである。本実施形態の成形物は、上記の成形物を焼成することによって得られた焼成体である。成形物の製造方法および成形物の焼成方法は後述する。
【0026】
伝熱部材(焼成体)は、JIS K 6253-3(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ):2012に準拠したタイプAMデュロメータを用いて測定した硬度(以下、本明細書において「硬度AM」という)が、上記の成形物の硬度AMと比較して7以上低い値とされている。すなわち、第1実施形態に係る伝熱部材は、成形物と比較して硬度が低く、柔軟性が高くなる。このため、第1実施形態に係る伝熱部材は、種々の部品の表面形状に合わせて変形することができる。
【0027】
伝熱部材の硬度AMは、20以上70以下の範囲内にあることが好ましい。伝熱部材の硬度AMは、他の部品との密着性の観点からは小さい方が好ましいため、50以下が好ましく、30以下が更に好ましい。
【0028】
伝熱部材は、フッ素系樹脂又はフッ素系エラストマーを単独で含んでいてもよいし、フッ素系樹脂とフッ素系エラストマーとの混合物として含んでいてもよい。伝熱部材は、フィラーを含むことが好ましい。伝熱部材は、有機成分であるフッ素系樹脂及びフッ素系エラストマーの少なくとも一方をマトリックスバインダーとし、このマトリックスバインダー中にフィラー成分が分散された構成であることが好ましい。
【0029】
フッ素系樹脂は、フッ素含有基を主鎖に有するものであることが好ましい。フッ素系樹脂は、三次元架橋構造を有するゲル状樹脂であってもよい。フッ素系エラストマーは、フッ素含有基と三次元架橋構造を有するフッ素含有三次元架橋性化合物であることが好ましい。フッ素含有基としては、パーフルオロアルキレン基-(CF2)x-(xは1以上の整数)及びパーフルオロポリエーテル基を挙げることができる。パーフルオロポリエーテル基としては、例えば、-(CF2CF2O)m(CF2O)n-(m、nは1以上の整数)、-(CF2CF2CF2O)p-(pは1以上の整数)、-(CF2CF(CF3)O)q-(qは1以上の整数)などを挙げることができる。三次元架橋構造としては、ケイ素と炭素の結合を有する有機ケイ素構造、シロキサン結合を有するシリコーン構造、エポキシ結合を有するエポキシ構造、ウレタン結合を有するウレタン構造などを挙げることができる。フッ素含有三次元架橋性化合物は一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。フッ素系エラストマーは、パーフルオロポリエーテル骨格からなり、シロキサン結合を有するシリコーン構造の化合物であることが好ましい。
【0030】
フィラーの材料としては、アルミナ(Al2O3)、アルミナ水和物、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)、シリコン(Si)、シリカ(SiO2)、炭化珪素(SiC)、酸化チタン(TiO2)などを用いることができる。これらの材料の中では、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、シリコンが好ましい。フィラーは一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。また、二種以上のフィラーは、材料が異なる二種以上のフィラーであっていてもよいし、材料は同一で平均粒径(d50)などの物性が二種以上のフィラーであってもよい。平均粒径が異なる二種以上のフィラーを用いることで、伝熱部材にフィラーをより高密度で充填することができる。平均粒径が異なる二種以上のフィラーを用いる場合、平均粒径が相対的に大きい方のフィラー(大粒径フィラー)の平均粒径は、平均粒径が相対的に小さい方のフィラー(小粒径フィラー)の平均粒径に対して1.5倍以上10倍以下の範囲内にあることが好ましい。
【0031】
伝熱部材のフィラー成分の含有量は、30体積%以上90体積%以下の範囲内にあることが好ましく、60体積%以上90体積%以下の範囲内にあることがより好ましい。フィラー成分の含有量が30体積%以上であると伝熱部材の熱伝導性が向上し、フィラー成分の含有量が90体積%以下であると、伝熱部材の形状安定性が向上する。
【0032】
伝熱部材の形状は、使用する部品によって異なるが、厚さは、例えば、20μm以上1mm以下の範囲内にあってもよく、20μm以上500μm以下の範囲内にあってもよい。
【0033】
以上のような構成とされた本実施形態の伝熱部材は、フッ素系樹脂又はフッ素系エラストマーを含むので、耐プラズマ性が高い。また、本実施形態の伝熱部材は焼成体であって、硬度AMが、焼成前の成形物の硬度AMと比較して7以上低い値とされていて、硬度が低く、柔軟性が高くなる。このため、本実施形態の伝熱部材によれば、種々の部品に対する伝熱部材の密着性が向上する。
【0034】
本実施形態の伝熱部材において、成形物がフィラーを含む場合は、伝熱部材の熱伝導性がより向上する。フィラーがアルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、シリコンからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機物である場合は、伝熱部材の熱伝導性がさらに向上する。
【0035】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る伝熱部材は、フッ素系樹脂又はフッ素系エラストマーを含む成形体からなる。成形体は、フッ素系樹脂又はフッ素系エラストマーを含む成形物の焼成体であってもよい。この場合、第1実施形態の伝熱部材と同様に、焼成体の硬度AMは、成形物の硬度AMと比較して7以上低くてもよい。
【0036】
第2実施形態の伝熱部材は、250℃で25時間加熱した後の硬度AMの変化量、すなわち250℃で25時間加熱した後の硬度AMから加熱前の硬度AMを減じた値が±5の範囲内とされていて、熱的な安定性が高く、十分に軟化している。熱的な安定性が高く、十分に軟化しているので、プラズマ処理装置のチャンバ内のような高温環境下においても、各種部材との密着性を高い状態で長期間にわたって維持できる。250℃で25時間加熱した後の硬度AMの変化量は、±3の範囲内にあることが好ましい。
【0037】
伝熱部材の硬度AMは、25以上70以下の範囲内にあることが好ましい。また、伝熱部材は、フッ素系樹脂又はフッ素系エラストマーを単独で含んでいてもよいし、フッ素系樹脂とフッ素系エラストマーとの混合物として含んでいてもよい。伝熱部材は、フィラーを含むことが好ましい。伝熱部材は、有機成分であるフッ素系樹脂及びフッ素系エラストマーの少なくとも一方をマトリックスバインダーとし、このマトリックスバインダー中にフィラー成分が分散された構成であることが好ましい。フッ素系樹脂、フッ素系エラストマーおよびフィラーの材料、伝熱部材のフィラー成分の含有量および伝熱部材の形状は、第1実施形態の場合と同じである。
【0038】
以上のような構成とされた本実施形態の伝熱部材は、フッ素系樹脂又はフッ素系エラストマーを含むので、耐プラズマ性が高い。また、本実施形態の伝熱部材は、250℃で25時間加熱した後の硬度AMの変化量が±5の範囲内とされていて、熱的な安定性が高く、柔軟性が高くなる。このため、本実施形態の伝熱部材によれば、種々の部品に対する伝熱部材の密着性が向上する。さらに、本実施形態の伝熱部材は、熱的な安定性が高いので、プラズマ処理装置のチャンバ内のような高温環境下においても、各種部材との密着性を高い状態で長期間にわたって維持できる。
【0039】
本実施形態の伝熱部材において、成形物がフィラーを含む場合は、伝熱部材の熱伝導性がより向上する。フィラーがアルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、シリコンからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機物である場合は、伝熱部材の熱伝導性がさらに向上する。
【0040】
<伝熱部材の製造方法>
次に、本実施形態の伝熱部材の製造方法について説明する。
図1は、本実施形態に係る伝熱部材の製造方法を示すフロー図である。本実施形態の伝熱部材の製造方法は、
図1に示すように、成形工程S01と焼成工程S02とを有する。
【0041】
成形工程S01は、原料組成物を加熱成形して成形物を作製する工程である。原料組成物は、フッ素系樹脂又はフッ素系エラストマーを含む材料からなり、必要に応じてフィラーを含む。フッ素系樹脂又はフッ素系エラストマーを含む材料は、加熱によって架橋する熱架橋性を有することが好ましい。熱架橋性を有するフッ素系樹脂およびフッ素系エラストマーとしては市販品を用いることができる。フッ素系樹脂、および、フッ素系エラストマーの市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製のSHIN-ETSU SIFEL(登録商標)シリーズ等を用いることができる。
【0042】
原料組成物の加熱成形は、例えば、原料組成物を金型に入れて熱プレス機を用いて加圧しながら加熱することにより行うことができる。この熱プレス機を用いた加熱を一次加硫とし、二次加硫を行ってもよい。二次加硫は、例えば、一次加硫によって得られた一次加硫物を金型から取り出して、一次加硫時の加熱温度よりも高い温度で加熱することにより行ってもよい。一次加硫での加熱温度は、原料組成物に含まれるフッ素系樹脂およびフッ素系エラストマーの種類や量によって異なるが、例えば、120℃以上200℃以下の範囲内にある。一次加硫での加圧圧力は、例えば150MPaである。二次加硫での加熱温度は、一次加硫での加熱温度よりも高い温度で、かつ一次加硫物の熱分解温度以下の温度である。二次加硫の加熱温度は、例えば、一次加硫での加熱温度よりも10℃以上50℃以下の範囲内で高い温度とすることができる。
【0043】
焼成工程S02は、成形工程S01で得られた成形物を焼成して、成形物の硬度AMと比較して硬度AMが7以上低い軟化焼成体を作製する工程である。焼成工程S02での加熱温度は、二次加硫での加熱温度よりも高い温度で、かつ成形物の熱分解温度以下の温度である。焼成工程S02での加熱温度は、二次加硫での加熱温度よりも10℃以上150℃以下の範囲内で高い温度とすることができる。焼成工程S02での加熱温度は、例えば、200℃以上であり、好ましくは250℃以上、より好ましく300℃以上である。
【0044】
焼成工程S02における焼成温度および焼成時間を決定するために、予備工程を行ってもよい。
予備工程では、成形工程S01で得られた成形物を、温度および時間の一方又は両方が異なる複数の条件で焼成して複数の焼成体を得る。次いで、得られた複数の焼成体の硬度AMを測定する。そして、成形物の硬度AMと複数の焼成体の硬度AMとを比較することによって、焼成体の硬度AMが、成形物の硬度AMと比較して7以上低い軟化焼成体が得られる焼成温度と焼成時間を求める。
【0045】
焼成工程S02では、成形物を予備工程で求められた焼成温度と焼成時間で焼成して、軟化焼成体を作製する。予備工程で得られた焼成温度と焼成時間で、成形物を焼成することによって、所定の硬度AMを有する軟化焼成体を高い確率で得ることができる。
【0046】
予備工程では、さらに、250℃で25時間加熱した後の加熱前からの変化量が±5となる軟化焼成体が得られる焼成温度と焼成時間を求めることが好ましい。この焼成温度と焼成時間で、成形物を焼成することによって、所定の硬度AMを有し、さらに硬度AMの熱的な安定性が高い軟化焼成体を得ることができる。
【0047】
以上のような構成とされた本実施形態の伝熱部材の製造方法によれば、成形工程S01で得られた成形物を、焼成工程S02で上記の条件にて焼成するので、成形物の硬度AMと比較して、硬度AMが7以上低い伝熱部材を工業的に有利に製造することができる。
【0048】
本実施形態の伝熱部材の製造方法においては、上記の予備工程において求められた焼成温度と焼成時間とを用いて、焼成工程S02で成形物を焼成することによって、成形物の硬度AMと比較して、硬度AMが7以上低い伝熱部材を、より高い確率で長期間にわたった安定して製造することができる。
【0049】
本実施形態の伝熱部材の製造方法では、成形工程S01において原料組成物を金型に入れて加熱成形しているが、成形物の作製方法はこれに限定されるものではない。例えば、伝熱部材を介在させる一対の部品の一方に原料組成物を塗布し、得られた塗布膜を加熱して、成形物を作製してもよい。なお、塗布膜の加熱は、塗布膜を加圧しながら行ってもよい。また、一次加硫物を、伝熱部材を介在させる一対の部品の一方に配置し、一次加硫物をその部品に押し付けながら二次加硫を行ってもよい。さらに、焼成工程S02を、成形物を、伝熱部材を介在させる対の部品の一方に配置し、成形物を押し付けながら行ってもよい。
【0050】
<プラズマ処理装置>
次に、本実施形態の伝熱部材を用いたプラズマ処理装置について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係るプラズマエッチング装置の一例を示す概略構成図である。
【0051】
図2に示すプラズマエッチング装置100は、チャンバ3と、チャンバ3内の上側に備えられたエッチングガス導入部1と、チャンバ3内の下側に備えられた被処理体支持部2とを有する。
エッチングガス導入部1は、プラズマ処理装置用電極12と、プラズマ処理装置用電極12を冷却するための冷却板15とを備える。プラズマ処理装置用電極12と冷却板15の間の少なくとも一部に、上述の伝熱部材13が配置されている。伝熱部材13は、プラズマ処理装置用電極12と冷却板15とが対向する対向部分の80%以上の領域に配置されていることが好ましく、対向部分の全体に配置されていることがより好ましい。また、プラズマ処理装置用電極12と伝熱部材13とは、直接接合されていることが好ましい。プラズマ処理装置用電極12と伝熱部材13を直接接合させる方法としては、例えば、プラズマ処理装置用電極12と伝熱部材13とを接触させた状態で加熱する方法を用いることができる。なお、プラズマ処理装置用電極12と伝熱部材13との加熱は、加圧しながら行ってもよい。
プラズマ処理装置用電極12は、プラズマ生成用のガスを通過させる通気孔11を有する。冷却板15には、プラズマ処理装置用電極12の通気孔11に連通するように、通気孔11と同じピッチで貫通孔16が形成されている。冷却板15は、絶縁体14によりチャンバ3に絶縁状態で支持されている。プラズマ処理装置用電極12は、チャンバ3を介して高周波電源50と接続し、電極部として機能する。
【0052】
被処理体支持部2は、支持台21と、支持台21の中央に配置された静電チャック22と、静電チャック22の周囲に配置されたフォーカスリング23とを備える。支持台21とフォーカスリング23と支持台21との間の少なくとも一部に、上述の伝熱部材24が配置されている。伝熱部材24は、支持台21とフォーカスリング23とが対向する対向部分の80%以上の領域に配置されていることが好ましく、対向部分の全体に配置されていることがより好ましい。また、フォーカスリング23と伝熱部材24とは、直接接合されていることが好ましい。フォーカスリング23と伝熱部材24とを直接接合させる方法としては、例えば、フォーカスリング23と伝熱部材24とを接触させた状態で加熱する方法を用いることができる。なお、フォーカスリング23と伝熱部材24との加熱は、加圧しながら行ってもよい。
支持台21と静電チャック22と間には抜熱板25が配置されている。ウェハ(被処理基板)40は、静電チャック22上にフォーカスリング23により周縁部を支持した状態で載置される。また、支持台21とフォーカスリング23との間には、Oリング26が配置されている。支持台21は、内部に冷媒流路27を有し、冷却部としても機能する。また、支持台21は、アース28と接続し、電極部としても機能する。
【0053】
チャンバ3の上側には、エッチングガス供給管31が配置されている。チャンバ3の側部には、排気口33が配置されている。
エッチングガス供給管31から送られてきたエッチングガスは、拡散部材32を経由した後、プラズマ処理装置用電極12の通気孔11からウェハ40に向かって供給される。プラズマ処理装置用電極12と支持台21との間に高周波(RF)の電圧を印加することによって、ウェハ40に向かって供給されたエッチングガスはプラズマ状態となって、ウェハ40をエッチング処理する。
【0054】
以上のような構成とされた本実施形態のプラズマエッチング装置100によれば、プラズマ処理装置用電極12と冷却板15との間の少なくとも一部に、伝熱部材13が配置されているので、プラズマによって加熱されたプラズマ処理装置用電極12の熱を高い効率で冷却板15に伝えることができる。このため、プラズマ処理装置用電極12の均熱性を長期間にわたって確保しやすくなる。また、プラズマ処理装置用電極12と伝熱部材13とを直接接合することによってプラズマ処理装置用電極12の熱をより高い効率で冷却板15に伝えることができる。
【0055】
また、本実施形態のプラズマエッチング装置100によれば、フォーカスリング23と支持台21との間の少なくとも一部に、伝熱部材24が配置されているので、プラズマによって加熱されたフォーカスリング23の熱を高い効率で支持台21に伝えることができる。このため、被処理体に対するプラズマ処理が長期間にわたって安定しやすくなる。また、フォーカスリング23と伝熱部材24とを直接接合することによってフォーカスリング23の熱をより高い効率で抜熱板25に伝えることができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例0057】
[本発明例1]
(1)原料組成物の作製
有機成分として、パーフルオロポリエーテル基を有し、熱架橋性を有する液状フッ素系エラストマー(X-71-358-4、信越化学工業株式会社製)を用意した。また、第1フィラーとして、大粒径アルミナフィラー(AA-18、住友化学株式会社製、平均粒径(d50):18μm)を、第2フィラーとして、小粒径アルミナフィラー(AA-3、住友化学株式会社製、平均粒径(d50):3μm)を用意した。
有機成分を10質量部(有機成分の量として40体積部)と、第1フィラーを19.5質量部(36体積部)と、第2フィラーを13質量部(24体積部)の割合で混合した。得られた混合物を、自転・公転真空ミキサー(あわとり練太郎ARV-310、株式会社シンキー社製)を用いて、脱泡しながら混練して原料組成物を作製した。
【0058】
(2)成形物の作製
上記(1)で得られた原料組成物を金型に入れ、熱プレス機を用いて150℃、10分の条件で一次加硫を行って、シート状の一次加硫物を得た。一次加硫物の厚さは200μmとした。次いで、得られた一次加硫物を金型から取り出して、200℃、4時間の条件で二次加硫を行った。こうして、成形物を得た。
【0059】
(3)焼成体の作製
上記(2)で得られた成形物を、300℃、5時間の条件で焼成して、焼成体を得た。
【0060】
[本発明例2~3、5~7、比較例1~2]
上記(1)原料組成物の作製において、有機成分として、下記の表1に示す種類の材料を用いたこと、フィラー成分中の第1フィラーの含有量と、原料組成物のフィラー成分の含有量を、下記の表1に示す量としたこと以外は、本発明例1と同様にして原料組成物を作製した。なお、本発明例2~3、5のフッ素系エラストマーは、本発明例1と同じものを用いた。本発明例6のフッ素系エラストマーは、信越化学工業株式会社製のX-71-359を用いた。本発明例7のフッ素系樹脂は、信越化学工業株式会社製のX-71-6053-6AとX-71-6053-6Bとをそれぞれ等質量部ずつ配合したものを用いた。比較例2のシリコーンゴムは、信越化学工業株式会社製のKE-1950-10AとKE-1950-10Bとをそれぞれ等質量部ずつ配合したものを用いた。
上記(2)成形物の作製において、一次加硫及び二次加硫の温度を時間と下記の表1に示す温度と時間としたこと以外は、本発明例1と同様にして成形物を作製した。なお、本発明例6は、二次加硫を行わなかった。
上記(3)焼成体の作製において、加熱温度と加熱時間とを下記の表1に示す温度と時間としたこと以外は、本発明例1と同様にして焼成体を作製した。得られた焼成体の厚さは約200μmであった。
【0061】
[本発明例4]
上記(1)原料組成物の作製において、第1フィラーの割合を42体積部、第2フィラーの割合を18体積部としたこと以外は本発明例1と同様にして原料組成物を作製した。上記(2)成形物の作製において、得られた原料組成物を用いたこと以外は本発明例1と同様にして成形物を得た。得られた成形物とシリコンウェハとを重ね合わせて、350℃、1時間の条件で焼成して、成形物の焼成体を生成させて、焼成体付きシリコンウェハを作製した。
【0062】
[本発明例8]
シリコンウェハの表面に、液状フッ素系エラストマー(X-71-358-4、信越化学工業株式会社製)を塗布して、厚さ50μmの塗布膜を形成した。次いで、塗布膜付きシリコンウェハを150℃、10分間の条件で一次加硫を行った後、200℃、4時間の条件で二次加硫を行って、塗布膜を成形物とした。次いで、成形物付きシリコンウェハを300℃、5時間の条件で焼成して、成形物の焼成体を生成させて、焼成体付きシリコンウェハを作製した。
【0063】
【0064】
[評価]
得られた成形物と焼成体について、硬度AMと熱抵抗値を下記の方法により測定した。また、焼成体については、250℃で25時間加熱後の硬度AMを下記のようにして測定した。その結果を、表2に示す。
【0065】
(硬度AMの測定方法)
JIS K 6253-3:2012に準拠した方法で、タイプAMデュロメータの押針を装着したゴム硬度計を用いて測定した。
【0066】
(熱抵抗値の測定方法)
JIS H7903:2008およびASTM D5470-1準拠した定常法により測定した。チャンバ内に上部が加熱部に接している上部アルミナブロック、下部が冷却部に接している下部アルミナブロックを設置し、上部と下部のそれぞれのアルミナブロックに熱電対を6mm間隔で5点取り付けた。また、上からシリコンウェハ、試料(成形物、焼成体)、片面アルマイト処理済みアルミニウム板の順に積層した積層体を作製した。上部アルミナブロックと下部アルミナブロックの対向している面に伝熱グリースを塗布し、その間に上記の積層体を設置した。試料に16kPaの荷重がかかるように、上部アルミナブロックの上部に錘を設置し、チャンバ内の圧力を5Paに設定して、熱抵抗値を測定した。
【0067】
(250℃で25時間加熱後の硬度AMの測定方法)
試料の焼成体を、電気炉に入れて、大気中、250℃で25時間加熱した。室温まで放冷した後、硬度AMを測定した。
【0068】
【0069】
表2の結果から、成形体に対して硬度AMが7以上低減している本発明例1~8の焼成体を用いた積層体は熱抵抗値が大きく低減することがわかる。これは、焼成体の硬度AMが低減したことによって、シリコンウェハと片面アルマイト処理済みアルミニウム板との密着性が向上したためであると考えられる。この結果から、本発明例1~8の焼成体は伝熱部材として有用であることが確認された。特に、原料組成物のフィラー成分の含有量が60体積%以上である本発明例1、3、4、6、7で得られた焼成体の熱抵抗値は10cm2K/W以下であった。さらに、焼成体の作製時の加熱温度が300℃以上である本発明例1、4、6、7で得られた焼成体の熱抵抗値は8cm2K/W以下であった。一方、成形体に対する硬度AMの低減量が少ない比較例1の焼成体を用いた積層体は、成形体を用いた積層体と熱抵抗値がほぼ同じであった。さらに、シリコーンゴムを用いた比較例2では焼成によって、硬度AMが上昇した。