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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148994
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】載置台及び表面処理装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/08 20060101AFI20231005BHJP
   C25D 17/00 20060101ALI20231005BHJP
   C25D 17/10 20060101ALI20231005BHJP
   C25D 17/12 20060101ALI20231005BHJP
   C25D 21/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C25D17/08 M
C25D17/00 K
C25D17/08 R
C25D17/10 A
C25D17/12 H
C25D21/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057303
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】391020665
【氏名又は名称】ミカドテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 豊樹
(72)【発明者】
【氏名】寺山 孝男
(57)【要約】
【課題】表面処理に要する処理時間を短くし、表面処理の精度を向上できる載置台及び表面処理装置。
【解決手段】被処理物の表面処理に使用する載置台であって、非導電性の台座部と、導電性の通電部とを備え、前記台座部は、前記被処理物を載置可能な載置面を含み、前記通電部は、前記被処理物に対して電気的に接続されるよう、前記台座部に取り付けられている。前記通電部は、前記載置面から前記載置面の対向面に延在している。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物の表面処理に使用する載置台であって、
非導電性の台座部と、
導電性の通電部と
を備え、
前記台座部は、前記被処理物を載置可能な載置面を含み、
前記通電部は、前記被処理物に対して電気的に接続されるよう、前記台座部に取り付けられている
ことを特徴とする載置台。
【請求項2】
前記通電部は、前記載置面から前記載置面の対向面に延在している
ことを特徴とする請求項1に記載の載置台。
【請求項3】
導電性の通電補助部を更に備え、
前記通電補助部は、前記載置面の前記被処理物の載置領域を覆うように前記載置面に載置可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の載置台。
【請求項4】
前記載置面に載置可能な非導電性の載置補助部を更に備え、
前記載置補助部は、前記載置面の前記被処理物の載置領域を区画して各領域を画定する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の載置台。
【請求項5】
前記被処理物の非処理部分を保護するための被覆部を更に備え、
前記被覆部は、前記載置面に載置された前記被処理物上に載置可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の載置台。
【請求項6】
絶縁層と導体層を含む箔状部材を更に備え、
前記絶縁層は、前記被処理物の非処理部分を保護可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の載置台。
【請求項7】
前記箔状部材は、前記導体層が前記被処理物の表面と前記通電部に通電するように配置されている
ことを特徴とする請求項6に記載の載置台。
【請求項8】
前記台座部は、前記載置面に位置決め部材を更に含み、
前記位置決め部材は、前記被覆部又は前記箔状部材を位置決めすることが可能に構成されている
ことを特徴とする請求項5~7のいずれか1項に記載の載置台。
【請求項9】
前記位置決め部材は、前記載置面から突出した突出状態と、前記載置面内に埋没した埋没状態との間において変位可能に構成されている
ことを特徴とする請求項8に記載の載置台。
【請求項10】
前記台座部は、前記被処理物を位置決めすることが可能な被処理物位置決め部材を更に含み、
前記被処理物位置決め部材は、前記載置面から突出した突出状態と、前記載置面内に埋没した埋没状態との間において変位可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の載置台。
【請求項11】
前記台座部は、前記載置面から前記載置面の対向面に貫通する貫通孔を更に含み、
前記通電部は、前記載置面から前記貫通孔を通じて前記載置面の前記対向面に延在している
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の載置台。
【請求項12】
前記貫通孔に挿通可能な突き出し部材を更に備え、
前記突き出し部材は、前記載置面から突出した突出状態と、前記載置面内に埋没した埋没状態との間において変位可能に構成されている
ことを特徴とする請求項11に記載の載置台。
【請求項13】
前記突き出し部材は、導電性であり、前記通電部としての機能を有する
ことを特徴とする請求項12に記載の載置台。
【請求項14】
前記突き出し部材は、前記被処理物を前記載置面に載置する際に、前記被処理物を位置決めすることが可能に構成されている
ことを特徴とする請求項12又は13に記載の載置台。
【請求項15】
前記台座部は、前記載置面の前記対向面から前記貫通孔を介して前記載置面側を減圧可能に構成されている
ことを特徴とする請求項11~14のいずれか1項に記載の載置台。
【請求項16】
トレイと、
前記トレイを載置可能な載置基台と
を備え、
前記トレイは、前記台座部と前記通電部を含み、
前記載置基台に対して着脱可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1~15のいずれか1項に記載の載置台。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の載置台と、
前記載置台に対して対向配置され、内部に液室を形成可能なハウジングと、
前記ハウジング内に配された電極と、
前記液室と前記被処理物との間に配置されたイオン伝導膜と、
前記電極と前記通電部との間に電圧を印加する電源部と
を備え、
前記イオン伝導膜を前記被処理物の表面に接触させて、前記電極と前記通電部との間に電圧を印加し、前記イオン伝導膜を介した電気分解により前記被処理物の表面を処理するよう構成されている
ことを特徴とする表面処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、載置台及び表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製の陽極と、陽極及び陰極となる導体パターン層の間に配置された固体電解質膜と、陽極及び導体パターン層の間に電圧を印加する電源部とを備え、固相電析法により樹脂基材の導体パターン層へめっき形成をする成膜装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この成膜装置は、樹脂基材を載置する金属台座を備えており、金属台座は、電源部の負極に電気的に接続されており、電源部の正極は、陽極に電気的に接続されている。さらに、成膜装置は、電源部の負極と、樹脂基材の導体パターン層とを導通するよう、金属被膜の成膜時に、導体パターン層の一部に接触する導電部材を備えている。これにより、成膜時には、導体パターン層が、金属台座及び導電部材を介して、電源部の負極に導通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6176234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固相電析法によるめっき形成では、表面処理の温度条件が重要であり、被処理物となる樹脂基材の温度が安定していることが求められる。しかしながら、金属台座は、熱伝導率が高いため、樹脂基材よりも金属台座の温度が低い場合、樹脂基材の熱が金属台座に吸熱及び放熱され、樹脂基材の温度が下がってしまう。樹脂基材の温度が低下することを防ぐためには、金属台座を加温する必要があり、めっき処理に要する時間がかかってしまうという問題がある。また、金属台座の加温が不十分な場合、めっき処理の精度が低下するおそれがある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、表面処理に要する処理時間を短くし、表面処理の精度を向上できる載置台及び表面処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る載置台は、被処理物の表面処理に使用する載置台であって、非導電性の台座部と、導電性の通電部とを備え、前記台座部は、前記被処理物を載置可能な載置面を含み、前記通電部は、前記被処理物に対して電気的に接続されるよう、前記台座部に取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る載置台において、前記通電部は、前記載置面から前記載置面の対向面に延在してもよい。
【0009】
本発明に係る載置台は、導電性の通電補助部を更に備え、前記通電補助部は、前記載置面の前記被処理物の載置領域を覆うように前記載置面に載置可能に構成されてもよい。
【0010】
本発明に係る載置台は、前記載置面に載置可能な非導電性の載置補助部を更に備え、前記載置補助部は、前記載置面の前記被処理物の載置領域を区画して各領域を画定してもよい。
【0011】
本発明に係る載置台は、前記被処理物の非処理部分を保護するための被覆部を更に備え、前記被覆部は、前記載置面に載置された前記被処理物上に載置可能に構成されてもよい。
【0012】
本発明に係る載置台は、絶縁層と導体層を含む箔状部材を更に備え、前記絶縁層は、前記被処理物の非処理部分を保護可能に構成されてもよい。
【0013】
本発明に係る載置台において、前記箔状部材は、前記導体層が前記被処理物の表面と前記通電部に通電するように配置されてもよい。
【0014】
本発明に係る載置台において、前記台座部は、前記載置面に位置決め部材を更に含み、前記位置決め部材は、前記被覆部又は前記箔状部材を位置決めすることが可能に構成されてもよい。
【0015】
本発明に係る載置台において、前記位置決め部材は、前記載置面から突出した突出状態と、前記載置面内に埋没した埋没状態との間において変位可能に構成されてもよい。
【0016】
本発明に係る載置台において、前記台座部は、前記被処理物を位置決めすることが可能な被処理物位置決め部材を更に含み、前記被処理物位置決め部材は、前記載置面から突出した突出状態と、前記載置面内に埋没した埋没状態との間において変位可能に構成されてもよい。
【0017】
本発明に係る載置台において、前記台座部は、前記載置面から前記載置面の対向面に貫通する貫通孔を更に含み、前記通電部は、前記載置面から前記貫通孔を通じて前記載置面の前記対向面に延在してもよい。
【0018】
本発明に係る載置台は、前記貫通孔に挿通可能な突き出し部材を更に備え、前記突き出し部材は、前記載置面から突出した突出状態と、前記載置面内に埋没した埋没状態との間において変位可能に構成されてもよい。
【0019】
本発明に係る載置台において、前記突き出し部材は、導電性であり、前記通電部としての機能を有してもよい。
【0020】
本発明に係る載置台において、前記突き出し部材は、前記被処理物を前記載置面に載置する際に、前記被処理物を位置決めすることが可能に構成されてもよい。
【0021】
本発明に係る載置台において、台座部は、前記載置面の前記対向面から前記貫通孔を介して前記載置面側を減圧可能に構成されてもよい。
【0022】
本発明に係る載置台は、トレイと、前記トレイを載置可能な載置基台とを備え、前記トレイは、前記台座部と前記通電部を含み、前記載置基台に対して着脱可能に構成されてもよい。
【0023】
本発明に係る表面処理装置は、上述した載置台と、前記載置台に対して対向配置され、内部に液室を形成可能なハウジングと、前記ハウジング内に配された電極と、前記液室と前記被処理物との間に配置されたイオン伝導膜と、前記電極と前記通電部との間に電圧を印加する電源部とを備え、前記イオン伝導膜を前記被処理物の表面に接触させて、前記電極と前記通電部との間に電圧を印加し、前記イオン伝導膜を介した電気分解により前記被処理物の表面を処理するよう構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、表面処理の精度を向上できる載置台及び表面処理装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】本発明の実施形態に係る表面処理装置の型開き状態を示す概略図である。
図1B】本実施形態に係る表面処理装置の型閉じ状態を示す概略図である。
図1C】本実施形態に係る表面処理装置の型閉じ状態を示す概略図である。
図2】本実施形態に係るトレイを示す概略図である。
図3】本実施形態に係るトレイの載置面を示す概略図である
図4】本実施形態に係るトレイの対向面を示す概略図である。
図5】本実施形態に係るトレイの断面図である。
図6】本実施形態に係る通電補助部を載置したトレイの載置面を示す概略図である。
図7】本実施形態に係る通電補助部を載置したトレイの載置面を示す断面図である。
図8】本実施形態に係る載置補助部を取り付けたトレイの載置面を示す概略図である。
図9】本実施形態に係る箔状部材を載置したトレイの載置面を示す概略図である。
図10】本実施形態に係る箔状部材を載置したトレイの断面図である。
図11】本実施形態に係る表面処理装置の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0027】
[本実施形態に係る表面処理装置の全体構成]
まず、図1A図1Cを参照して、本発明の本実施形態に係る表面処理装置1を概説する。図1A図1Cに示すように、本実施形態に係る表面処理装置1は、例えば、金属イオンを還元することで金属を析出させて、金属からなる被膜を被処理物Cの表面Eに形成するめっき処理装置として用いられ得る。ただし、表面処理装置1は、これに限定されるものではなく、被処理物Cの表面Eを処理することができる装置であれば、種々のものに適用可能である。
【0028】
なお、本実施形態において、被処理物Cは、金属材料などの導体であるものとして説明するが、これに限定されない。例えば、被処理物Cが、樹脂基材上に導体層が形成されている材料の場合、表面処理装置1は、導体層の表面を処理することもできる。また、本実施形態において、溶液は、電解液であるものとして説明するが、これに限定されない。
【0029】
表面処理装置1は、概略的には、載置台100と、載置台100に対して対向配置され、内部に液室3を形成可能なハウジング4と、ハウジング4内に配された電極20と、液室3と被処理物Cとの間に配置されたイオン伝導膜6と、電極20と後述する通電部130との間に電圧を印加する電源部7とを備える。
【0030】
また、表面処理装置1は、載置台100及びハウジング4の少なくとも一方を他方に対して相対移動させる移動機構5と、液室3内に電解液を供給又は排出する溶液供給部(図示せず)と、イオン伝導膜6を保持する保持治具35とを更に備えている。保持治具35は、内枠膜治具36と、内枠膜治具36に係合する外枠膜治具37とを含む。
【0031】
本実施形態において、電解液は、例えば、被処理物Cの表面Eに析出される金属をイオンの状態で含有している液体であり、含有される金属は、例えば、銅、金、銀、ニッケル等が挙げられる。電解液は、これらの金属をイオン化したものであり、公知の各種の電解液を用いることができる。なお、電解液は、ここに例示したものに限定されるものではない。
【0032】
載置台100は、図1Aに示すように、トレイ102と、トレイ102を載置可能な載置基台104とを備える。図2に示すように、トレイ102は、非導電性の台座部120と導電性の通電部130を含み、載置基台104に対して着脱可能に構成されている。台座部120は、被処理物Cを載置可能な載置面PSを含み、通電部130は、被処理物Cに対して電気的に接続されるよう、台座部120に取り付けられている。
【0033】
なお、載置基台104は、図1Aに示すように、トレイ102を嵌合可能な窪みを備えてもよいし、窪みを備えずにトレイ102を載置してもよい。
【0034】
載置基台104は、図1Aに示すように、支持基台8とハウジング4との間に配置されている。載置基台104は、トレイ102を取り付ける面に、トレイ102の後述するトレイ位置決め部材142を挿入可能なトレイ固定孔(図示せず)が形成されている。
【0035】
また、載置基台104は、トレイ102を載置した際に、トレイ102の通電部130に接続する電極部(図示せず)を有する。載置基台104の電極部、トレイ102の通電部130、ひいては、被処理物Cは、電源部7の負極(-極)に接続されている。これにより、被処理物Cは、表面処理装置1における陰極を構成する。
【0036】
ハウジング4は、図1Aに示すように、載置基台104の鉛直方向の上方に配置されており、内部上面と内部側面とを有する液室3を構成する有底筒状(有底円筒状、有底角筒状等)に形成されている。有底筒状の開口部には、矩形状のイオン伝導膜6が取り付けられている。ハウジング4は、ハウジング4の壁面を貫通して形成され、液室3内の気体を排出可能な排出流路31と、液室3に対して電解液を供給可能な供給流路41と、ハウジング4を載置基台104に嵌合させるためのクランプ部39とを含む。
【0037】
また、ハウジング4は、排出流路31の外壁面にハウジング4の側面から突出するように加圧機構30が設けられている。さらに、ハウジング4には、供給流路41を開閉させる流路開閉弁40が設けられている。流路開閉弁40は、給排ポートを有する。ハウジング4は、上記のように載置基台104と対向配置されると共に、例えば、移動機構5によって載置基台104側へ移動された状態のときに、載置基台104との間に閉鎖空間となる液室3を形成可能に構成されている。
【0038】
加圧機構30は、排出流路31に接続されており、排出流路31を開閉する開閉弁を有する。加圧機構30は、排出流路31を開閉可能に構成されると共に、液室3内に供給された電解液を加圧可能に構成されている。加圧機構30は、載置基台104とハウジング4との間において開閉弁が閉じられたときに形成される液室3の閉鎖空間の容積を減少させ、閉鎖空間内ひいては電解液を加圧する。
【0039】
クランプ部39は、クランプ部39と載置基台104とが嵌合した状態において、載置基台104とイオン伝導膜6との間の下方空間の空気を排気(好適には真空排気)するための排気手段が設けられている。排気手段は、上記の下方空間を減圧するために開閉される開閉弁47を有する。開閉弁47は、上記の下方空間に開口すると共にクランプ部39の下方に連通する減圧流路48の外側に配置されるように設けられている。
【0040】
減圧流路48は、液室3(イオン伝導膜6の上方空間)に連通する減圧流路、流路開閉弁及びバイパス流路(いずれも図示せず)を介して接続されている。バイパス流路は、減圧用の真空ポンプ等を有する減圧ユニット(図示せず)が接続されている。このような減圧系の回路は、加圧機構30や流路開閉弁40等の溶液供給系の回路とは別回路で設けられている。
【0041】
電極20は、金属板であり、任意の金属材料(例えば、銅等)で構成されている。電極20は、ハウジング4の内部上面から吊り下げられており、電極20の底部23がイオン伝導膜6の直上に位置するように液室3内に配置されている。
【0042】
電極20は、ハウジング4を介して、電源部7の正極(+極)に接続されている。このような構成を備えることにより、電極20は、表面処理装置1における陽極を構成する。なお、電極20は、金属板に限定されず、液室3内の電解液に浸かる位置に配置され得るものであれば、種々の構成(例えば、任意形状の金属が入っている籠状部材等)、配置態様を採用可能である。
【0043】
電源部7は、陽極となる電極20と陰極となる被処理物Cとの間に電圧を印加する。電源部7は、種々の公知の構成を採用可能である。
【0044】
移動機構5は、図1Cに示すように、載置基台104及びハウジング4の少なくとも一方を他方に対して接近又は離間する方向に相対移動させる。具体的には、移動機構5は、直動ロッド51を有し、直動ロッド51によってハウジング4を昇降させることにより、ハウジング4を載置基台104に対して離間又は接近させるように構成されている。
【0045】
また、移動機構5は、ハウジング4が載置基台104に対して最も離間された上昇端位置(原位置:図1A参照)と、ハウジング4及び載置基台104の間に液室3を形成すると共に、該液室3及びイオン伝導膜6の下部に載置基台104とクランプ部39とが嵌合して形成される下方空間の減圧を実行する減圧位置と、該減圧位置よりも更にハウジング4を載置基台104に接近させて表面処理を実行する処理位置(図1B参照)との少なくとも3か所において、ハウジング4を停止させることが可能に構成されている。
【0046】
なお、本実施形態において、移動機構5は、ハウジング4を載置基台104に対して接近又は離間させるが、これに限定されない。また、移動機構5は、上述した直動ロッド51を備える構成に限定されず、ハウジング4を載置基台104に対して接近又は離間させることが可能な構成であれば、任意の構成を採用することが可能である。
【0047】
イオン伝導膜6は、数μm~数百μm(例えば、5~450μm)の膜厚で形成された枚葉状の薄膜部材である。イオン伝導膜6は、例えば、多孔質膜、固体電解質膜等が挙げられ、ポリエチレンや、ポリプロピレン、炭化水素系樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂を用いることができる。なお、イオン伝導膜6は、液室3内に供給された電解液に接触することで、電解液中の金属イオンを含浸し、電源部7により電圧を印加した際に金属イオン由来の金属を被処理物Cの表面Eに析出可能なものであれば、これらに限定されない。
【0048】
イオン伝導膜6は、保持治具35の内枠膜治具36及び外枠膜治具37の間に挟持されている。イオン伝導膜6は、内枠膜治具36及び外枠膜治具37で挟持することにより、均一に張られた状態で保持されている。内枠膜治具36及び外枠膜治具37は、ハウジング4の下部に取り付けられており、イオン伝導膜6は、液室3内に配置された電極20の直下に配置されている。
【0049】
台座部120は、図2及び図3に示すように、載置面PSに被処理物Cの載置領域としての載置部122と、載置部122の周囲から垂直方向に延在する周縁部124を有し、非導電性の塩化ビニール樹脂で構成されている。また、台座部120は、載置部122の中央に載置面PSから載置面PSの対向面BSに貫通する貫通孔126を更に含む。さらに、台座部120は、載置面PSの対向面BSから貫通孔126を介して載置面PS側を減圧可能に構成されている。本実施形態において、貫通孔126は、平行な2本の直線と、それらの直線をつなぐ2つの曲線とで構成された角丸長方形の形状を有しているが、これに限定されず、種々の任意の形状を採用可能である。また、貫通孔126の数及び配置は、上述した構成に限定されず、種々の任意の数及び配置を採用可能である。
【0050】
載置部122は、方形に形成されており、載置部122の端部に沿って例えば、Oリング127等のシール部材が埋め込まれている。本実施形態において、載置部122及び載置面PSの対向面BSは、平滑に形成されているが、これに限定されず、通電部130の後述する裏面接続部132を嵌め込むことが可能な堀込部を有してもよい。このような構成を備えることにより、通電部130と載置部122の及び載置面PSの対向面BSの表面の段差がなくなり、陽極と陰極の極間距離を均一にすることができる。
【0051】
本実施形態において、載置部122は、周縁部124から掘り込まれて一段低くなっているが、これに限定されない。台座部120は、図11に示すように、被処理物Cを位置決めすることが可能な被処理物位置決め部材170を更に含み、載置部122は、周縁部124と平滑に(面一に)構成されてもよい。被処理物位置決め部材170は、載置面PSから突出した突出状態と、載置面PS内に埋没した埋没状態との間において変位可能に構成されている。
【0052】
本実施形態において、被処理物位置決め部材170は、円筒形状のピンであり、載置部122の各角に2つずつ配置されているが、これに限定されず、被処理物Cを位置決め可能な構成であれば、種々の任意の構成を採用可能である。例えば、被処理物位置決め部材170は、L字型の部材で載置部122の各角に1つずつ配置されてもよいし、載置部122を囲うように設けられるロの字型の部材であってもよい。また、被処理物Cに位置決め用の穴が設けられており、被処理物位置決め部材170は、被処理物Cの位置決め用の穴と嵌合可能に構成されてもよい。
【0053】
周縁部124の被処理物位置決め部材170が配置された位置には、被処理物位置決め部材170を収容可能な窪みが設けられている。被処理物位置決め部材170は、外周部にOリング(図示せず)が取り付けられており、周縁部124の窪みと摺接している。被処理物位置決め部材170は、突出状態において、被処理物Cを位置決めする。また、被処理物位置決め部材170は、突出状態においてイオン伝導膜6や後述する被覆部によって該被処理物位置決め部材170の先端(ピンの先端)が押されることで、埋没状態に受動的に変位する。
【0054】
なお、被処理物位置決め部材170は、変位可能な構成であれば、上述した構成に限定されない。例えば、被処理物位置決め部材170は、周縁部124の窪みの底面からバネによって支持されていてもよい。また、被処理物位置決め部材170は、アクチュエータによって能動的に変位可能に構成されてもよい。
【0055】
また、載置部122は、載置面PSから載置面PSの対向面BSに貫通する被処理物取り出し用貫通孔128が設けられている。被処理物取り出し用貫通孔128は、後述する突き出し部材(図示せず)を挿通可能な径を有する。トレイ102は、被処理物取り出し用貫通孔128から載置面PS側に突き出し部材が突出することで、載置部122上に載置された被処理物Cを容易に取り外すことができる。
【0056】
なお、本実施形態において、被処理物取り出し用貫通孔128は、載置部122の四隅であってOリング127の内側にそれぞれ1つずつ設けられているが、これに限定されず、種々の任意の数及び配置を採用可能である。
【0057】
本実施形態に係る載置台100は、通電部130として、被処理物Cに裏側から接続する裏面接続部132と、被処理物Cに表側から接続する表面接続部134とを備える。裏面接続部132は、図3及び図4に示すように、載置面PSから載置面PSの対向面BSに延在している。具体的には、裏面接続部132は、図5に示すように、コの字型に形成された板材であり、載置面PSから貫通孔126を通じて載置面PSの対向面BSに延在している。本実施形態において、載置台100は、裏面接続部132を2つ有するが、これに限定されない。また、裏面接続部132の横幅及び板厚は、裏面接続部132に印加される電流に応じて決定される。
【0058】
なお、裏面接続部132は、上述した構成に限定されず、種々の任意の構成を採用可能である。例えば、裏面接続部132は、載置面PSから載置面PSの対向面BSに延在するように埋め込まれたピン形状の部材やブロック形状の部材でもよいし、弾性を有するプローブのような部材でもよい。
【0059】
表面接続部134は、図3及び図4に示すように、載置面PSから対向面BSに延在する導電性の段付き円柱部材であり、周縁部124の各辺に2箇所ずつ等間隔で配置されている。裏面接続部132及び表面接続部134の載置面PSの対向面BSに延在している部分は、載置基台104にトレイ102を載置した際に、載置基台104の電極部と電気的に接続されるよう構成されている。
【0060】
なお、表面接続部134の形状は段付き円柱部材に限定されず、周縁部124から抜け落ちない構成であれば、種々の任意の構成を採用可能である。例えば、圧入された円柱部材や、角柱等の種々の任意の構成を採用可能である。また、表面接続部134の数及び配置は、上述した構成に限定されるものではない。
【0061】
本実施形態において、通電部130は、ステンレス、クロム、チタン等の不動態被膜を形成する金属材料により構成されているが、これに限定されない。通電部130は、不動態被膜を形成する金属材料で構成されている場合、耐薬品性があり、電解液によって腐食されにくいという利点がある。
【0062】
周縁部124は、図2に示すように、可動式の位置決め部材140を更に含む。位置決め部材140は、周縁部124の互いに対向している一対の辺上に設けられており、後述する被覆部又は箔状部材160を位置決めすることが可能に構成されている。本実施形態において、位置決め部材140は、円筒形状のピンであるが、これに限定されず、例えば、ガイド部材等の種々の任意の構成を採用可能である。
【0063】
周縁部124の位置決め部材140が配置された位置には、位置決め部材140を収容可能な窪みが設けられている。位置決め部材140は、外周部にOリング(図示せず)が取り付けられており、周縁部124の窪みと摺接している。
【0064】
位置決め部材140は、このような構成を備えることにより、載置面PSから突出した突出状態と、載置面PS内に埋没した埋没状態との間において変位可能に構成されている。位置決め部材140は、突出状態において、イオン伝導膜6や後述する被覆部によってピンの先端が押されることで、埋没状態に受動的に変位する。
【0065】
なお、位置決め部材140は、変位可能な構成であれば、上述した構成に限定されない。例えば、位置決め部材140は、周縁部124の窪みの底面からバネによって支持されていてもよい。また、位置決め部材140は、アクチュエータによって能動的に変位可能に構成されてもよい。
【0066】
対向面BSは、図4に示すように、トレイ位置決め部材142を有し、載置面PSの載置部122と同様にOリング127が埋め込まれている。本実施形態において、トレイ位置決め部材142は、通電部130の裏面接続部132の長手方向と平行な端部にそれぞれ2つずつ設けられているがこれに限定されず、種々の任意の数及び配置を採用可能である。
【0067】
トレイ位置決め部材142は、載置基台104の表面に形成されたトレイ固定孔に挿入可能に構成されている。トレイ102は、トレイ固定孔にトレイ位置決め部材142を挿入することで載置基台104に固定される。
【0068】
また、本実施形態において、対向面BSは、トレイ位置決め部材142が設けられていない端部に切り欠き144が設けられているが、これに限定されず、切り欠き144が設けられていなくてもよい。トレイ102は、対向面BSに切り欠き144が設けられていることにより、載置基台104からトレイ102を取り外しやすくなるという利点を有する。
【0069】
載置台100は、図6及び図7に示すように、導電性の通電補助部136を更に備えている。通電補助部136は、載置面PSの被処理物Cの載置領域を覆うように載置面PSに載置可能に構成されている。具体的には、通電補助部136は、通電部130と同様に、不動態被膜を形成する金属材料で構成されており、載置部122と同形同大に形成された薄板状の部材である。また、通電補助部136は、金属材料又は被処理物Cの外周部にシール部材(図示せず)を取り付けてもよい。なお、通電補助部136は、載置部122と同形同大のものに限定されず、被処理物Cの表面処理をしたい部分に合わせた形状等、状況に応じて複数種類の通電補助部136を使用可能である。
【0070】
載置台100は、このような構成を備えることにより、通電部130よりも電気抵抗の大きい被処理物Cを表面処理する際に、被処理物Cの裏面全体に通電補助部136を介して電気的に接続することで等電位にすることでき、表面Eを均一にめっき処理することができる。
【0071】
載置台100は、図8に示すように、載置面PSに載置可能な非導電性の載置補助部150を更に備える。載置補助部150は、載置部122を区画して各領域を画定する。具体的には、載置補助部150は、耐薬品性を有する樹脂材料で構成されており、格子状の隔壁部152と、隔壁部152の周囲を囲う枠体154とを有する。また、載置補助部150は、枠体154と、被処理物C及び載置面PSの少なくとも一方との接触部分にシール部材を備えてもよい。
【0072】
載置補助部150は、載置部122に嵌合可能に構成されており、隔壁部152は、載置部122を複数の領域に区画して各領域を画定するよう構成されている。載置台100は、被処理物Cの大きさによって区画する領域の異なる複数の載置補助部150を使用できる。隔壁部152の高さは、被処理物Cの厚みと同程度であることが好ましいが、これに限定されない。
【0073】
なお、載置補助部150は、上述した構成に限定されず、種々の任意の形状及び構造を採用可能である。例えば、被処理物Cが円形の場合、隔壁部152によって画定される領域が円形であってもよい。また、載置部122は、様々な種類の載置補助部150を着脱可能である。また、本実施形態において、載置補助部150は、隔壁部152の周囲が枠体154によって囲われているが、これに限定されず、枠体154を有さなくてもよい。
【0074】
載置台100は、トレイ102の貫通孔126及び被処理物取り出し用貫通孔128に挿通可能な突き出し部材を更に備え、突き出し部材は、載置面PSから突出した突出状態と、載置面PS内に埋没した埋没状態との間において変位可能に構成されている。突き出し部材は、導電性であり、通電部130としての機能を有する。突き出し部材は、被処理物Cを載置面PSに載置する際に、被処理物Cを位置決めすることが可能に構成されている。また、台座部120が上述した被処理物位置決め部材170を更に含む場合、該被処理物位置決め部材170と協働して被処理物Cを位置決めしてもよい。本実施形態において、突き出し部材は、円筒形状のピンであるが、これに限定されず、L字型のガイドや多角形のブロック等種々の任意の構成を採用可能である。また、被処理物Cに位置決め用の穴が設けられており、突き出し部材は、被処理物Cの位置決め用の穴と嵌合可能に構成されてもよい。
【0075】
載置台100は、図9及び図10に示すように、絶縁層162と導体層164を含み、被覆部として機能する箔状部材160を更に備える。箔状部材160は、載置面PSに載置された被処理物C上に載置可能に構成されている。また、箔状部材160は、導体層164が被処理物Cの表面Eと通電部130の表面接続部134に通電するよう構成されている。具体的には、箔状部材160は、導体層164を載置面PSの表面接続部134と電気的に接続させるためのコネクタ部166を備えており、導体層164が、コネクタ部166を介して表面接続部134と被処理物Cとを導通するように、導体層164の一部に接触可能に配置される。
【0076】
絶縁層162は、被処理物Cの非処理部分を保護可能に構成されている。絶縁層162は、例えば、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオレフィン(PO)、ガラス織布入りエポキシ樹脂等の絶縁性及び耐薬品性を有する樹脂材料により構成されている。絶縁層162は、被処理物Cの表面Eの処理部分の形状に応じた形状の貫通孔162aを有し、この貫通孔162aが処理部分上に配置されるように構成される。
【0077】
導体層164は、銅、金、銀等の導電性を有する金属材料により構成されており、絶縁層162の裏面からコネクタ部166の裏面に延在している。導体層164は、絶縁層162の貫通孔162aよりも僅かに大きな貫通孔164aを有するように形成される。なお、導体層164の貫通孔164aは、絶縁層162の貫通孔162aと同じ大きさであってもよい。
【0078】
コネクタ部166は、載置面PSの周縁部124の位置決め部材140に取付可能に構成されている。具体的には、コネクタ部166は、位置決め部材140であるピンを挿通可能な径の孔を有する。
【0079】
このような構成を備える箔状部材160は、表面処理時に、コネクタ部166を介して導体層164を被処理物Cの表面Eに接触させて陰極とすることができると共に、絶縁層162の貫通孔162aを除く部分が被処理物Cの表面Eの非処理部分上を覆い、被処理物Cの表面Eの処理部分にのみイオン伝導膜6を接触させるマスク材とすることができる。
【0080】
また、箔状部材160は、絶縁層162及び導体層164を交互に複数積層(接着又は非接着のいずれでもよい)してなるものでもよく、より好適には、絶縁層162上に導体層164が形成された可撓性プリント基板(例えば、FPC(フレキシブルプリント基板:Flexible printed circuits))、或いは多層構造の絶縁層162及び導体層164を有する多層可撓性プリント基板(例えば、多層フレキシブルプリント基板)により構成されていてもよい。
【0081】
以上の構成を備える表面処理装置1は、イオン伝導膜6を被処理物Cの表面Eに接触させて、電極20と通電部130との間に電圧を印加し、イオン伝導膜6を介した電気分解により被処理物Cの表面Eを処理するよう構成されている。
【0082】
[本実施形態に係る載置台及び表面処理装置の利点]
以上説明したように、本実施形態に係る載置台100は、被処理物Cの表面処理に使用する載置台であって、非導電性の台座部120と、導電性の通電部130とを備え、台座部120は、被処理物Cを載置可能な載置面PSを含み、通電部130は、被処理物Cに対して電気的に接続されるよう、台座部120に取り付けられている。
【0083】
そして、本実施形態に係る載置台100は、このような構成を備えることにより、台座部120の熱伝導率が低いため、被処理物Cの表面Eの温度が安定し、高精度な表面処理を短時間で実施することができるという利点を有している。また、台座部120が非導電性であるため、載置台100が表面処理されることを軽減でき、被処理物Cの成膜効率を上げることができるという利点を有している。
【0084】
また、本実施形態に係る載置台100において、通電部130は、載置面PSから載置面PSの対向面BSに延在している。このような構成を備えることにより、載置面PSに載置された被処理物Cに対向面BSから電気的に接続することができるという利点がある。また、載置台100が表面処理されることを軽減でき、被処理物Cの成膜効率を上げることができるという利点を有している。
【0085】
さらに、本実施形態に係る載置台100は、導電性の通電補助部136を更に備え、通電補助部136は、載置面PSの被処理物Cの載置領域を覆うように載置面PSに載置可能に構成されている。このような構成を備えることにより、通電部130よりも大きい被処理物Cを表面処理する際に、被処理物Cの裏面全体に通電補助部136を介して電気的に接続することが可能となり、成膜品質が向上するという利点を有している。
【0086】
またさらに、本実施形態に係る載置台100は、載置面PSに載置可能な非導電性の載置補助部150を更に備え、載置補助部150は、載置面PSの被処理物Cの載置領域を区画して各領域を画定する。このような構成を備えることにより、載置補助部150によって画定された各領域に被処理物Cを載置することで、複数の被処理物Cを同時に表面処理することができるという利点を有している。
【0087】
また、本実施形態に係る載置台100は、被処理物Cの非処理部分を保護するための被覆部(箔状部材160)を更に備え、被覆部(箔状部材160)は、載置面PSに載置された被処理物C上に載置可能に構成されている。このような構成を備えることにより、被処理物Cの表面Eの処理部分だけを選択的に表面処理することができるという利点を有している。
【0088】
さらに、本実施形態に係る載置台100は、絶縁層162と導体層164を含む箔状部材160を更に備え、絶縁層162は、被処理物Cの非処理部分を保護可能に構成されている。このような構成を備えることにより、被処理物Cの表面Eの処理部分だけを選択的に表面処理することができるという利点を有している。
【0089】
またさらに、本実施形態に係る載置台100において、箔状部材160は、導体層164が被処理物Cの表面Eと通電部130に通電するように配置されている。このような構成を備えることにより、裏面から電気的に接続できない被処理物C、例えば、樹脂基材上に導体層が形成されている材料等であっても、表面Eから電気的に接続することで表面処理することができるという利点を有している。
【0090】
また、本実施形態に係る載置台100において、台座部120は、載置面PSに位置決め部材140を更に含み、位置決め部材140は、被覆部又は箔状部材160を位置決めすることが可能に構成されている。このような構成を備えることにより、被処理物Cの表面Eと箔状部材160の絶縁層162の貫通孔162aとの位置合わせが容易になると共に、箔状部材160の位置を固定できるという利点を有している。
【0091】
さらに、本実施形態に係る載置台100において、位置決め部材140は、載置面PSから突出した突出状態と、載置面PS内に埋没した埋没状態との間において変位可能に構成されている。このような構成を備えることにより、イオン伝導膜6を被処理物Cの表面Eに当接させる際に、位置決め部材140がイオン伝導膜6を破損させることを防止できるという利点を有している。
【0092】
またさらに、本実施形態に係る載置台100において、台座部120は、被処理物Cを位置決めすることが可能な被処理物位置決め部材170を更に含み、被処理物位置決め部材170は、載置面PSから突出した突出状態と、載置面PS内に埋没した埋没状態との間において変位可能に構成されている。このような構成を備えることにより、厚みが薄い被処理物であっても、容易かつ確実に位置決めをすることが可能になるという利点を有している。
【0093】
また、本実施形態に係る載置台100において、台座部120は、載置面PSから載置面PSの対向面BSに貫通する貫通孔126を更に含み、通電部130は、載置面PSから貫通孔126を通じて載置面PSの対向面BSに延在している。このような構成を備えることにより、通電部130の配置場所の自由度が高くなるという利点を有している。
【0094】
さらに、本実施形態に係る載置台100において、貫通孔126に挿通可能な突き出し部材を更に備え、突き出し部材は、載置面PSから突出した突出状態と、載置面PS内に埋没した埋没状態との間において変位可能に構成されている。このような構成を備えることにより、載置面PSに載置された被処理物Cが載置面PSに密着している場合であっても、被処理物Cの取外しを容易に行えるという利点を有している。また、イオン伝導膜6を被処理物Cの表面Eに当接させる際に、突き出し部材がイオン伝導膜6を破損させることを防止できるという利点を有している。
【0095】
またさらに、本実施形態に係る載置台100において、突き出し部材は、導電性であり、通電部130としての機能を有する。このような構成を備えることにより、通電部130に突き出し機能を付与することができるという利点を有している。
【0096】
また、本実施形態に係る載置台100において、突き出し部材は、被処理物Cを載置面PSに載置する際に、被処理物Cを位置決めすることが可能に構成されている。このような構成を備えることにより、突き出し部材のみで被処理物Cの位置決めと突き出しの両方を行うことができるという利点を有している。
【0097】
さらに、本実施形態に係る載置台100において、台座部120は、載置面PSの対向面BSから貫通孔126を介して載置面PS側を減圧可能に構成されている。このような構成を備えることにより、載置面PSに被処理物Cを密着させることが可能であり、被処理物Cの位置が載置面PS上ずれることを防止できると共に、イオン伝導膜6から染み出た電解液が貫通孔126から液漏れすることを防止できるという利点を有している。
【0098】
またさらに、本実施形態に係る載置台100は、トレイ102と、トレイ102を載置可能な載置基台104とを備え、トレイ102は、台座部120と通電部130を含み、載置基台104に対して着脱可能に構成されている。このような構成を備えることにより、載置面PSが摩耗又は汚損してもトレイ102だけを交換することで対応できるという利点を有している。また、製品毎にトレイ102を準備することができ、いろいろな形状や仕様の製品への対応が容易になるという利点を有している。さらに、複数の成膜工程が必要な製品への対応も容易となるという利点を有している。
【0099】
[変形例]
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上述した実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0100】
例えば、上述した実施形態において、通電部130は、載置面PSから載置面PSの対向面BSに延在しているものとして説明したが、これに限定されない。通電部130は、載置面PSから載置面PSの対向面BSに延在していなくてもよく、被処理物Cと電源部7を電気的に接続可能な構成であれば、種々の任意の構成を採用可能である。
【0101】
上述した実施形態において、載置台100は、導電性の通電補助部136を更に備え、通電補助部136は、載置面PSの被処理物Cの載置領域を覆うように載置面PSに載置可能に構成されているものとして説明したが、これに限定されず、載置台100は、通電補助部136を備えなくてもよい。また、通電補助部136は、被処理物Cの表面Eの処理部分に形状を合わせてもよい。
【0102】
上述した実施形態において、載置台100は、載置面PSに載置可能な非導電性の載置補助部150を更に備え、載置補助部150は、載置面PSの被処理物Cの載置領域を区画して各領域を画定するものとして説明したが、これに限定されず、載置台100は、載置補助部150を備えなくてもよい。
【0103】
上述した実施形態において、載置台100は、被処理物Cの非処理部分を保護するための被覆部(箔状部材160)を更に備え、被覆部(箔状部材160)は、載置面PSに載置された被処理物C上に載置可能に構成されているものとして説明したが、これに限定されず、載置台100は、被覆部(箔状部材160)を備えなくてもよい。
【0104】
上述した実施形態において、載置台100は、絶縁層162と導体層164を含む箔状部材160を更に備え、絶縁層162は、被処理物Cの非処理部分を保護可能に構成されているものとして説明したが、これに限定されず、載置台100は、箔状部材160を備えなくてもよい。
【0105】
上述した実施形態において、箔状部材160は、導体層164が被処理物Cの表面Eと通電部130に通電するように配置されているものとして説明したが、これに限定されず、箔状部材160は、導体層164が被処理物Cの表面Eと通電部130に通電するよう配置されなくてもよい。
【0106】
上述した実施形態において、台座部120は、載置面PSに位置決め部材140を更に含み、位置決め部材140は、被覆部又は箔状部材160を位置決めすることが可能に構成されているものとして説明したが、これに限定されず、台座部120は、位置決め部材140を含まなくてもよい。
【0107】
上述した実施形態において、位置決め部材140は、載置面PSから突出した突出状態と、載置面PS内に埋没した埋没状態との間において変位可能に構成されているものとして説明したが、これに限定されず、位置決め部材140は、位置決め部材140がイオン伝導膜6を破損させない構成であれば、種々の任意の構成を採用可能である。例えば、位置決め部材140は、弾性変形可能に構成されており、イオン伝導膜6を被処理物Cの表面Eに当接させる際に、位置決め部材140が潰れることでイオン伝導膜6の破損を防止してもよい。
【0108】
上述した実施形態において、台座部120は、被処理物Cを位置決めすることが可能な被処理物位置決め部材170を更に含み、被処理物位置決め部材170は、載置面PSから突出した突出状態と、載置面PS内に埋没した埋没状態との間において変位可能に構成されているものとして説明したが、これに限定されず、台座部120は被処理物位置決め部材170を含まなくてもよい。
【0109】
上述した実施形態において、台座部120は、載置面PSから載置面PSの対向面BSに貫通する貫通孔126を更に含み、通電部130は、載置面PSから貫通孔126を通じて載置面PSの対向面BSに延在しているものとして説明したが、これに限定されず、台座部120は、貫通孔126を含まなくてもよい。
【0110】
上述した実施形態において、貫通孔126に挿通可能な突き出し部材を更に備え、突き出し部材は、載置面PSから突出した突出状態と、載置面PS内に埋没した埋没状態との間において変位可能に構成されているものとして説明したが、これに限定されず、突き出し部材を備えなくてもよい。
【0111】
上述した実施形態において、突き出し部材は、導電性であり、通電部130としての機能を有するものとして説明したが、これに限定されず、突き出し部材は、絶縁性であってもよい。
【0112】
上述した実施形態において、突き出し部材は、被処理物Cを載置面PSに載置する際に、被処理物Cを位置決めすることが可能に構成されているものとして説明したが、これに限定されず、突き出し部材は、被処理物Cを位置決めすることが可能に構成されていなくてもよい。
【0113】
上述した実施形態において、台座部120は、載置面PSの対向面BSから貫通孔126を介して載置面PS側を減圧可能に構成されているものとして説明したが、これに限定されず、台座部120は、載置面PSの対向面BSから貫通孔126を介して載置面PS側を減圧可能に構成されていなくてもよい。
【0114】
上述した実施形態において、載置台100は、トレイ102と、トレイ102を載置可能な載置基台104とを備え、トレイ102は、台座部120と通電部130を含み、載置基台104に対して着脱可能に構成されているものとして説明したが、これに限定されない。載置台100は、トレイ102と載置基台104が一体となっている構成であってもよい。また、載置台100は、トレイ102のみであってもよい。換言すれば、本明細書において、「載置台」には、トレイ単体の構成も含まれる。
【0115】
上述した実施形態において、イオン伝導膜6は、矩形状であるものとして説明したが、これに限定されず、ハウジング4の開口部を覆う構成であれば、種々の任意の構成を採用可能である。例えば、イオン伝導膜6は、円形状等であってもよい。
【0116】
上述した実施形態において、台座部120は、塩化ビニール樹脂で構成されているものとして説明したが、これに限定されず、非導電性で部材であって、PEEK樹脂等の耐薬品性、耐熱性及び絶縁性を有する部材であれば、種々の任意の構成を採用可能である。
【0117】
上述した実施形態において、被覆部は、箔状部材160であるものとして説明したが、これに限定されず、被処理物Cの非処理部分を保護可能な構成であれば、種々の任意の構成を採用可能である。例えば、被覆部は、スクリーンマスク、メタルマスク、フィルムマスク等であってもよい。この場合において、被覆部の導電性を有する部分に絶縁処理をしてもよいし、絶縁層を設けてもよい。さらに、被覆部の絶縁処理した部分又は絶縁層に導体層を設けてもよい。例えば、被覆部がスクリーンマスクである場合、被処理物Cの表面Eと接触するスクリーンマスクの絶縁部分に金属箔を取り付けてもよい。
【0118】
上述した実施形態において、載置基台104はトレイ固定孔が形成されており、トレイ102の対向面BSは、トレイ位置決め部材142を有し、トレイ位置決め部材142は、載置基台104のトレイ固定孔に挿入可能に構成されているものとして説明したが、これに限定されない。載置基台104は、トレイ位置決め部材を有し、トレイ102の対向面BSに載置基台104のトレイ位置決め部材を挿入可能な固定孔が形成されていてもよい。
【0119】
上述した実施形態において、載置部122は、方形に形成されているものとして説明したが、これに限定されず、載置部122は、円形等の載置する被処理物に合わせた種々の任意の形状であってもよい。
【0120】
上述した実施形態において、載置台100は、1つのトレイ102と、該1つのトレイ102を載置可能な載置基台104を備えることを前提として説明したが、これに限定されず、トレイ102と載置基台104とは1対N(Nは2以上の整数)の関係であってもよい。例えば、載置台100は、1つの載置基台104上に複数のトレイ102が載置された構成であってもよい。この場合において、複数のトレイ102は、互いに結合されていてもよいし、互いに分離していてもよい。
【符号の説明】
【0121】
1 表面処理装置
3 液室
4 ハウジング
5 移動機構
6 イオン伝導膜
7 電源部
8 支持基台
20 電極
23 底部
30 加圧機構
31 排出流路
35 保持治具
36 内枠膜治具
37 外枠膜治具
39 クランプ部
40 流路開閉弁
41 供給流路
47 開閉弁
48 減圧流路
51 直動ロッド
100 載置台
102 トレイ
104 載置基台
120 台座部
122 載置部
124 周縁部
126 貫通孔
127 Oリング
128 被処理物取り出し用貫通孔
130 通電部
132 裏面接続部
134 表面接続部
136 通電補助部
140 位置決め部材
142 トレイ位置決め部材
144 切り欠き
150 載置補助部
152 隔壁部
154 枠体
160 箔状部材
162 絶縁層
162a 貫通孔
164 導体層
164a 貫通孔
166 コネクタ部
170 被処理物位置決め部材
BS 載置面の対向面
C 被処理物
E 表面
PS 載置面
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
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図11