(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148995
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】染毛用組成物及び染毛方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/60 20060101AFI20231005BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20231005BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A61K8/60
A61Q5/10
A61K8/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057304
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(72)【発明者】
【氏名】菅原 達郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴田 和之
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC791
4C083AC792
4C083AD531
4C083AD532
4C083BB21
4C083CC36
4C083EE26
(57)【要約】
【課題】濃染性が向上した染毛用組成物の提供、及び当該染毛用組成物を用いた染毛方法の提供。
【解決手段】(A)直接染料、及び(B)トリテルペノイド又はその塩が配合された染毛用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)直接染料、及び
(B)トリテルペノイド又はその塩
が配合された染毛用組成物。
【請求項2】
前記(A)成分として酸性染料が配合された請求項1に記載の染毛用組成物。
【請求項3】
前記(A)成分として、青色系染料、紫色系染料、及び黒色系染料から選ばれた一種又は二種以上が配合された請求項1又は2に記載の染毛用組成物。
【請求項4】
前記(B)成分として環構造を有するトリテルペノイド、環構造を有するトリテルペノイドの塩、環構造を有するトリテルペノイド配糖体、及び環構造を有するトリテルペノイド配糖体の塩から選ばれた一種又は二種以上が配合された請求項1~3のいずれか1項に記載の染毛用組成物。
【請求項5】
前記(B)成分としてグリチルリチン酸又はその塩が配合された請求項4に記載の染毛用組成物。
【請求項6】
前記(B)成分を含む植物エキスが配合された請求項1~5のいずれか1項に記載の染毛用組成物。
【請求項7】
化学処理履歴を有する毛髪に用いられる請求項1~6のいずれか1項に記載の染毛用組成物。
【請求項8】
前記化学処理履歴が、ブリーチ処理履歴及び/又は酸化染毛処理履歴を含む請求項7に記載の染毛用組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の染毛用組成物を用いた染毛方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染毛用組成物及び染毛方法に関する。
【背景技術】
【0002】
染毛用組成物としては、酸化染料が配合された酸化染毛剤や、酸性染料、塩基性染料、ニトロ染料等の直接染料が配合された半永久染毛料がある。このうち、直接染料が配合された染毛用組成物は、酸化反応によらない染毛であるから、酸化反応による毛髪損傷や頭皮等の皮膚刺激を抑えた染毛が可能となる。
【0003】
この直接染料が配合された染毛用組成物は、直接染料の毛髪への吸着や毛髪への浸透により染毛効果を得るものであるが、当該吸着や浸透が不十分となることで所望する染毛効果が得られない場合があることが問題であった。
【0004】
これに対して、特許文献1では、直接染料とポリアミド-8又はポリアミド-3を併用することで、染毛性を向上させた染毛用組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
直接染料を用いた染毛用組成物において、ポリアミド-8又はポリアミド-3の配合有無によらず、毛髪を濃く染毛することが求められる。
本発明の目的は、濃染性を向上させることが可能な染毛用組成物の提供、及び当該染毛用組成物を用いた染毛方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が鋭意検討を行った結果、直接染料が配合された染毛用組成物において、更にトリテルペノイド又はその塩を配合させることで、直接染料による濃染性が向上することを見出した。また、当該染毛用組成物を用いた染毛方法によれば、濃染性が向上することを見出した。更に、これら濃染性の向上は、彩度も向上させる知見を得ている。
【0008】
すなわち、本発明の染毛用組成物では、(A)直接染料、及び(B)トリテルペノイド又はその塩が配合される。
【0009】
なお、上記染毛用組成物において、(A)成分として酸性染料が配合されると、直接染料の毛髪への吸着性が高まり、濃染性に優れる。
【0010】
また、上記染毛用組成物は、(A)成分として、青色系染料、紫色系染料、及び黒色系染料から選ばれた一種又は二種以上が配合されたものが良い。当該染料は、ブリーチ処理や酸化染毛処理における酸化剤によるメラニン色素の分解等で高まった毛髪の黄色味を抑える傾向がある。
【0011】
また、上記染毛用組成物において、(B)成分として、環構造を有するトリテルペノイド、環構造を有するトリテルペノイドの塩、環構造を有するトリテルペノイド配糖体、環構造を有するトリテルペノイド配糖体の塩から選ばれた一種又は二種以上が配合されていると、濃染性に優れる。
【0012】
また、上記染毛用組成物は、濃染性に優れる観点から、(B)成分としてグリチルリチン酸又はその塩が配合されたものであることが好ましい。
【0013】
また、上記染毛用組成物において、(B)成分を含む植物エキスが配合されていれば、濃染性に優れる。
【0014】
また、上記染毛用組成物は、ブリーチ処理、酸化染毛処理、縮毛矯正処理、パーマネントウェーブ処理等の化学処理履歴を有する毛髪に用いられることが好ましい。化学処理による損傷を受けた毛髪では褪色が進行しやすいが、その褪色の進行を抑制することが可能となる。その化学処理履歴として、ブリーチ処理履歴、酸化染毛処理履歴、又は、ブリーチ処理履歴及び酸化染毛処理履歴が含まれていれば、メラニン色素の分解で毛髪の黄色味が高まるが、上記の通り、(A)成分として青色系染料、紫色系染料、及び黒色系染料から選ばれた一種又は二種以上が配合されていると、その黄色味の抑制が可能となる。
【0015】
本発明の染毛方法では、上記染毛用組成物が用いられる。当該染毛方法によれば、濃染性が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る染毛用組成物によれば、濃染性を向上する。また、本発明に係る染毛方法によれば、濃染性を向上する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の各実施形態に係る染毛用組成物及び染毛方法について例に挙げて説明するが、これらは特に発明を限定するものではない。
【0018】
(染毛用組成物)
本実施形態の染毛用組成物は、(A)直接染料、及び(B)トリテルペノイド又はその塩が配合されたものである。当該染毛用組成物によれば、直接染料による毛髪の濃染性が向上する。
【0019】
(直接染料)
本実施形態の染毛用組成物は、(A)成分として直接染料が配合される。直接染料は、一種又は二種以上を用いることができる。染毛用組成物に配合された直接染料は、毛髪に吸着及び/又は浸透することで、毛髪が染毛される。
直接染料としては、酸性染料、塩基性染料、ニトロ染料等が挙げられる。
【0020】
酸性染料は、染毛用組成物中において陰イオンとして存在しやすく、当該イオンが毛髪に吸着することにより染毛が実現される。直接染料として酸性染料を用いる場合には、他の直接染料と比べて濃染性に優れ、毛髪への吸着力が強く、色味の持続力に優れる点で好ましい。
【0021】
酸性染料としては、例えば、赤色2号(Amaranth)、赤色3号(Erythrosine)、赤色102号(New Coccine)、赤色104号の(1)(Phloxine B)、赤色105号の(1)(Rose Bengal)、赤色106号(Acid Red)、赤色201号(Lithol Rubine B)、赤色227号(Fast Acid Magenta)、赤色230号の(1)(Eosine YS)、赤色230号の(2)(Eosine YSK)、赤色231号(Phloxine BK)、赤色232号(Rose Bengal K)、赤色401号(Violamine R)、赤色502号(Ponceau 3R)、赤色503号(Ponceau R)、赤色504号(Ponceau SX)、赤色506号(Fast Red S)、黄色4号(Tartrazine)、黄色5号(Sunset Yellow FCF)、黄色202号の(1)(Uranine)、黄色202号の(2)(Uranine K)、黄色203号(Quinoline Yellow WS)、黄色402号(Polar Yellow 5G)、黄色403号の(1)(Naphthol Yellow S)、黄色406号(Metanil Yellow)、黄色407号(Fast Light Yellow 3G)、橙色205号(Orange II)、橙色207号(Erythrosine Yellowish NA)、橙色402号(Orange I)、酸性橙3(INCI名:Acid Orange 3)、緑色3号(Fast Green FCF)、緑色204号(Pyranine Conc)、緑色205号(Light Green SF Yellowish)、緑色401号(Naphthol Green B)、緑色402号(Guinea Green B)、紫色401号(Alizurol Purple)、青色1号(Brilliant Blue FCF)、青色2号(Indigo Carmine)、青色202号(Patent Blue NA)、青色203号(Patent Blue CA)、青色205号(Alphazurine FG)、酸性青3、褐色201号(Rezorich Brown)、黒色401号(Naphthol Blue Black)等が挙げられる。
【0022】
なお、青色の色彩が含まれた染料の一種又は二種以上の配合は、ブリーチ処理又は酸化染毛処理でのメラニン色素の分解による毛髪処理の黄色味を抑制する補色となるので好ましい。当該染料としては、例えば、青色1号、青色2号、青色202号、青色203号、青色205号、酸性青3等の青色系染料;紫色401号等の紫色系染料;黒色401号等の黒色系染料;が挙げられる。
染毛用組成物における酸性染料の配合量は、所望される色味に応じて選択することができ、特に限定されないが、例えば、0.001質量%以上3.0質量%以下であり、0.01質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。
【0023】
塩基性染料は、染毛用組成物中において陽イオンとして存在しやすく、当該イオンが毛髪に吸着することにより染毛が実現される。
塩基性染料としては、例えば、塩基性黄40、塩基性黄57、塩基性黄87、塩基性紫1、塩基性紫2、塩基性紫3、塩基性紫4、塩基性紫14、塩基性紫16、塩基性青3、塩基性青7、塩基性青9、塩基性青26、塩基性青75、塩基性青99、塩基性青124、塩基性赤2、塩基性赤22、塩基性赤46、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性茶16、塩基性茶17、塩基性緑1、塩基性緑4、塩基性橙31等が挙げられる。
【0024】
染毛用組成物における塩基性染料の配合量は、所望される色味に応じて選択することができ、特に限定されないが、例えば、0.001質量%以上3.0質量%以下であり、0.01質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。
【0025】
ニトロ染料は、分子内にニトロ基を有する直接染料(酸性染料及び塩基性染料に該当するものを除く。)であり、毛髪への吸着又は浸透により染毛が実現される。
【0026】
ニトロ染料としては、例えば、HC黄2、HC黄4、HC黄5、HC黄9、HC黄11、HC黄13、HC紫1、HC紫2、HC青2、HC青12、HC赤1、HC赤3、HC赤7、HC赤10、HC赤11、HC赤13、HC橙1、HC橙2、2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、2-アミノ-3-ニトロフェノール、4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノール、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、2-ニトロ-5-グリセリルメチルアニリン、3-ニトロ-p-ヒドロキシエチルアミノフェノール、3-メチルアミノ-4-ニトロフェノキシエタノール等が挙げられる。
【0027】
染毛用組成物におけるニトロ染料の配合量は、所望される色味に応じて選択することができ、特に限定されないが、例えば、0.001質量%以上3.0質量%以下であり、0.01質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。
【0028】
(トリテルペノイド又はその塩)
本実施形態の染毛用組成物は、(B)成分としてトリテルペノイド又はその塩が配合される。本実施形態におけるトリテルペノイドとは、2,3-オキシドスクアレンに由来する炭素骨格を有するものであり、環化、酸化、配糖化等の化学修飾を受けて生じる化学構造のものも該当する。本実施形態の染毛用組成物は、(B)成分として、トリテルペノイド又はその塩が配合され、トリテルペノイド及びその塩から選ばれた一種又は二種以上が配合されたものであってよい。
【0029】
上記トリテルペノイド又はその塩を配合する場合、濃染性に優れる観点から、環構造を有するトリテルペノイド、環構造を有するトリテルペノイドの塩、環構造を有するトリテルペノイド配糖体、及び環構造を有するトリテルペノイド配糖体の塩から選ばれた一種又は二種以上を配合すると良い。当該環構造としては、例えば、四環式、五環式、六環式が挙げられ、当該配糖体を形成する糖としては、例えばグルコース、アラビノース、キシロース、グルクロン酸が挙げられる。
【0030】
環構造を有するトリテルペノイドとしては、例えば、リモニン等のリモノイド、オレアノール酸、ウルソール酸、ベツリン酸、アザジラクチンが挙げられる。
環構造を有するトリテルペノイド配糖体としては、例えば、ジンセノサイドRg1等のジンセノサイド類、サピンドサイドB等のサピンドサイド類、リモニングリコシド、グリチルリチン酸、キラヤサポニンが挙げられる。
【0031】
なお、(B)成分を含む植物エキスが知られており、このような植物エキスは、例えば、オタネニンジン根エキス(環構造を有するトリテルペノイド配糖体であるジンセノサイドRg1を含有)、メリアアザジラクタ葉エキス(環構造を有するトリテルペノイドであるアザジラクチン、環構造を有するトリテルペノイド配糖体である2α,4α-dihydroxy-pregn-5-en-16-one-3α-O-d-glucopyranosideを含有)、センブリエキス(環構造を有するトリテルペノイド配糖体であるグリチルリチン酸を含有)、ウメ果実エキス(環構造を有するトリテルペノイドであるオレアノール酸、環構造を有するトリテルペノイド配糖体であるオレアノール酸の配糖体を含有)、カンゾウ根エキス(環構造を有するトリテルペノイド配糖体であるグリチルリチン酸を含有)、サボンソウ葉エキス(環構造を有するトリテルペノイド配糖体であるキラヤサポニンを含有)、オレンジ果汁(環構造を有するトリテルペノイド配糖体であるリモニングリコシドを含有)、レモン果実エキス(環構造を有するトリテルペノイド配糖体であるリモニングリコシドを含有)、ブドウ葉エキス(環構造を有するトリテルペノイドであるオレアノール酸、環構造を有するトリテルペノイド配糖体であるオレアノール酸の配糖体を含有)、オリーブ葉エキス(環構造を有するトリテルペノイドであるオレアノール酸、環構造を有するトリテルペノイド配糖体であるオレアノール酸の配糖体を含有)、及びムクロジ果皮エキス(環構造を有するトリテルペノイド配糖体であるサピンドサイドBを含有)が挙げられる。
【0032】
(B)成分の配合量の下限は、特に限定されないが、例えば、0.001質量%であることが好ましい。また、(B)成分の配合量の上限は、例えば、1.0質量%であることが好ましく、0.1質量%であることが好ましい。
【0033】
(任意成分)
本実施形態の染毛用組成物に配合される任意成分は、公知の染毛用組成物に配合される成分の中から、本実施形態の染毛用組成物の剤型、用途に応じて適宜に選定される。
任意成分としては、酸、アルカリ、浸透促進剤、高分子化合物、水、界面活性剤(アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤)、多価アルコール、糖類、エステル、油脂、脂肪酸、ロウ、高級アルコール、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、粉体、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤等である。
【0034】
本実施形態の染毛用組成物の使用時の剤型は、特に限定されないが、例えば、液状、乳液状、ゲル状、クリーム状、泡状、霧状が挙げられる。また、本実施形態の染毛用組成物はエマルジョンであっても良く、当該エマルジョンの形態としては、例えばO/W型エマルジョン、W/O型エマルジョン、W/O/W型エマルジョンが挙げられる。
【0035】
また、本実施形態の染毛用組成物の用途は、例えば、カラートリートメント、カラーリンス、カラーシャンプー、ヘアマニキュア等の非酸化型の染毛料が挙げられる。
【0036】
なお、ブリーチ処理、酸化染毛処理、縮毛矯正処理、パーマネントウェーブ処理等の酸化反応又は還元反応を伴う化学処理履歴を有する毛髪は、当該処理で受けた損傷のために褪色の進行が顕著である傾向があることから、濃染性に優れる本実施形態の染毛用組成物は、上記カラーリンス、カラートリートメント、カラーシャンプー、ヘアマニキュア用途に好適である。
【0037】
本実施形態の染毛用組成物を、使用時の剤型が泡状又はクリーム状のカラートリートメント用途に使用する場合、配合される任意成分としては、例えば高級アルコールとカチオン界面活性剤である。この配合における高級アルコールは炭素数12以上22以下のものが良く、当該高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の直鎖状飽和アルコール;ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、テトラデシルオクタデカノール等の分岐状飽和アルコール;が挙げられ、高級アルコールの配合量は、特に限定されないが、例えば1質量%以上10質量%以下である。また、上記カチオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アミドアミン塩、アーコベル型3級アミン塩、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩、モノアルキルエーテル型4級アンモニウム塩が挙げられ(なお、上記「長鎖アルキル」は、炭素数12以上22以下のアルキル基であると良い。)、カチオン界面活性剤の配合量は、特に限定されないが、例えば1質量%以上5質量%以下である。
【0038】
(pH)
本実施形態の染毛用組成物のpHは、特に限定されない。
なお、本実施形態の染毛用組成物における直接染料として、酸性染料の一種以上が配合された場合、酸性染料による濃染性をより向上させる観点から、クエン酸等の酸及び/又はその塩を適宜配合し、pHを調整する。そして、染毛用組成物の25℃でのpHの上限値は、例えば、8.0であり、7.0が好ましく、6.0がより好ましい。また、その場合、本実施形態の染毛用組成物の25℃でのpHの下限値は、例えば、1である。
【0039】
(染毛方法)
本実施形態の染毛方法は、上述の染毛用組成物を用いて毛髪を染毛する方法である。当該染毛用組成物を用いた染毛方法によれば、直接染料による毛髪の濃染性が向上する。
本実施形態の染毛方法としては、用途に応じて、公知の染毛用組成物による染毛方法を採用することができる。本実施形態の染毛方法の一例としては、濡れた毛髪に本実施形態の染毛用組成物を毛髪に塗布し、塗布後に室温又は加温して1~30分間放置し、放置後毛髪を水で洗い流して、毛髪を乾燥させる方法がある。
【実施例0040】
以下、本発明の実施例を例に挙げて詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0041】
(染毛用組成物の調製)
表1~2に示す成分を混合することにより、実施例1~15、比較例1~4の染毛用組成物を調製した。
具体的には、まず、pH5.5、50mMのMES緩衝液(2-モルホリノエタンスルホン酸が配合された緩衝液)を調製した。次に、最終成分濃度が表1、表2の各数値となるように、50mL遠沈管に植物エキスと酸性染料を秤量した。そして、それぞれ合計が50mLになるように調整済みのMES緩衝液でメスアップすることで、各染毛用組成物を調製した。なお、得られた各染毛用組成物のpHは、いずれも8.0以下であった。
【0042】
(実施例1~15、比較例1~4の評価)
調製した実施例1~15、比較例1~4の染毛用組成物を用いて、次に示す「濃染性」の評価を行った。
【0043】
乾燥したビューラックス社製のヤク毛束BM-YK-Aを、調製した実施例1~15、比較例1~4の各染毛用組成物に30分間浸漬した。染毛後の各毛束を流水で約30秒間洗い流して、タオルドライした後、ドライヤーで乾燥させた。
【0044】
染毛後の乾燥した各毛束に対して、分光測色計(コニカミノルタ社製のSPECTROPHOTOMETER CM-5)を用いて、測定タイプ:反射測定、視野:10°、主光源:D65、測定径φ8mm、SCE方式(正反射光除去)の測定条件で、1毛束当たり3箇所を各3回ずつ測定し、明度を示すL*値の平均値、色相と彩度を示すa*値とb*値の平均値をそれぞれ求めた。更に、得られた各L*値の平均値、色相と彩度を示すa*値とb*値の平均値を用いて、次の計算式からΔa、Δb、ΔCの各値を求めた。
Δa=[(実施例1~15、又は比較例1~4のa*値の平均値)-(未処理毛のa*値の平均値)]
Δb=[(実施例1~15、又は比較例1~4のb*値の平均値)-(未処理毛のb*値の平均値)]
ΔC=[(実施例1~15、又は比較例1~4のC*値の平均値)-(未処理毛のC*値の平均値)]
ここで、C*は、彩度を示す値であり、a*とb*を用いた次の計算式から求めた。
C*=√[(a*)2+(b*)2]
なお、Δa値、Δb値の絶対値が大きい方が、濃く染毛され、濃染性に優れることを示す。
なお、ΔC値の絶対値が大きい方が、鮮やかに染毛されていることを示す。
【0045】
下記表1及び表2に、配合した成分と共に、実施例1~15、比較例1~4の染毛用組成物の評価結果を示す。なお、表における各成分の数値は質量%を表す。
【0046】
【0047】
【0048】
上記表1に示す評価結果によれば、(B)成分が配合されていない比較例1と比べて、実施例1~12では、Δa値とΔb値の各絶対値が高まっており、より濃く染まっていることが分かる。また、(B)成分が配合されていない比較例1と比べて、実施例1~12では、ΔC値の絶対値が高まっており、より鮮やかに染まっていることが分かる。
【0049】
上記表2に示す評価結果によれば、(B)成分が配合されていない比較例2と比べて、実施例13では、Δa値とΔb値とΔC値の各絶対値が高まっており、より濃く、より鮮やかに染まっていることが分かる。また、(B)成分が配合されていない比較例3と比べて、実施例14では、Δa値とΔb値とΔC値の各絶対値が高まっており、より濃く、より鮮やかに染まっていることが分かる。更に、(B)成分が配合されていない比較例4と比べて、実施例15では、Δa値とΔb値とΔC値の各絶対値が高まっており、より濃く、より鮮やかに染まっていることが分かる。