IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイキン工業株式会社の特許一覧

特開2023-149002学習モデル生成装置、故障診断システム、学習モデル生成方法及びプログラム
<>
  • 特開-学習モデル生成装置、故障診断システム、学習モデル生成方法及びプログラム 図1
  • 特開-学習モデル生成装置、故障診断システム、学習モデル生成方法及びプログラム 図2
  • 特開-学習モデル生成装置、故障診断システム、学習モデル生成方法及びプログラム 図3
  • 特開-学習モデル生成装置、故障診断システム、学習モデル生成方法及びプログラム 図4
  • 特開-学習モデル生成装置、故障診断システム、学習モデル生成方法及びプログラム 図5
  • 特開-学習モデル生成装置、故障診断システム、学習モデル生成方法及びプログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149002
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】学習モデル生成装置、故障診断システム、学習モデル生成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
G05B23/02 302S
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057313
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 高志
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA21
3C223FF16
3C223FF22
3C223FF45
3C223GG03
3C223HH02
(57)【要約】
【課題】学習モデルに関する情報の管理を容易にする。
【解決手段】学習モデル生成装置は、学習モデルまたは前記学習モデルの付帯情報を格納するための記憶領域を有する記憶部と、制御部とを有する学習モデル生成装置であって、制御部は、学習モデルを生成し、学習モデルの生成に失敗したとき、記憶領域に付帯情報を格納する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習モデル又は前記学習モデルの付帯情報を格納するための記憶領域を有する記憶部と、制御部とを有する学習モデル生成装置であって、
前記制御部は、
前記学習モデルを生成し、
前記学習モデルの生成に失敗したとき、前記記憶領域に前記付帯情報を格納する、
学習モデル生成装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記学習モデルの生成に失敗したとき、学習途中の前記学習モデルを前記記憶領域に格納する、
請求項1に記載の学習モデル生成装置。
【請求項3】
前記付帯情報は、前記学習モデルの生成に失敗した要因に関する情報を含む、
請求項1に記載の学習モデル生成装置。
【請求項4】
前記要因は、学習データの不足又は前記学習モデルの精度不足を含む、
請求項3に記載の学習モデル生成装置。
【請求項5】
前記学習モデルは、機器の故障を診断する診断モデルであり、
前記要因は、前記機器が診断ロジックの対象外であることを含む、
請求項3に記載の学習モデル生成装置。
【請求項6】
前記付帯情報は、学習条件に関する情報、前記学習モデルの出力値の有効な範囲に関する情報、前記学習モデルを代替するモデルのアクセス先を示す情報、又は前記学習モデルを利用するユーザに関する情報を含む、
請求項1に記載の学習モデル生成装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記学習モデルの生成に失敗した後、前記学習モデルを再度生成し、
前記学習モデルの生成に成功したとき、前記記憶領域に格納されている前記学習モデルを生成された前記学習モデルに置き換える、
請求項1に記載の学習モデル生成装置。
【請求項8】
機器の故障を診断する診断モデルを格納するための記憶領域を有する記憶部と、制御部と有する学習モデル生成装置を含む故障診断システムであって、
前記制御部は、
前記診断モデルを生成し、
前記診断モデルの生成に失敗したとき、前記記憶領域に付帯情報を格納する、
故障診断システム。
【請求項9】
前記制御部は、
物件に設置された機器ごとの運転データを取得し、
前記運転データを用いて前記診断モデルを学習する、
請求項8に記載の故障診断システム。
【請求項10】
前記制御部は、
前記機器の故障診断を要求されたとき、当該機器に対応する前記診断モデルを前記記憶領域から取得する、
請求項8に記載の故障診断システム。
【請求項11】
前記制御部は、
前記診断モデルを取得した前記記憶領域に前記付帯情報が格納されているとき、前記付帯情報を出力する、
請求項10に記載の故障診断システム。
【請求項12】
前記制御部は、
前記診断モデルを取得した前記記憶領域に前記付帯情報が格納されていないとき、前記診断モデルによる診断結果を出力する、
請求項10に記載の故障診断システム。
【請求項13】
学習モデル生成装置が有する制御部が、
学習モデルを生成する手順と、
前記学習モデルの生成に失敗したとき、前記学習モデル又は前記学習モデルの付帯情報を格納するための記憶領域に前記付帯情報を格納する手順と、
を実行する学習モデル生成方法。
【請求項14】
学習モデル生成装置が有する制御部に、
学習モデルを生成する手順と、
前記学習モデルの生成に失敗したとき、前記学習モデル又は前記学習モデルの付帯情報を格納するための記憶領域に前記付帯情報を格納する手順と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、学習モデル生成装置、故障診断システム、学習モデル生成方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
機器の運転データと予め計算されたパラメータとを用いて、機器の異常を判定する故障診断システムがある。故障診断システムにおいて、故障診断に用いるパラメータは、機種ごとではなく、個々の機器ごとにチューニングされたパラメータを用いる場合がある。このようなモデル及びシステム構成は「マルチモデル」と呼ばれる。
【0003】
マルチモデルを用いた故障診断システムでは、様々な理由でモデルの生成に失敗する場合がある。この場合、機器に対する診断を要求された際に、その機器に対応するモデルが存在しないことが判明する。特許文献1には、モデル学習に失敗したとき、モデル学習の失敗原因を表すエラー情報をデータベースに記憶する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-170644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、モデル学習の失敗原因を記憶したデータベースの管理が煩雑であるという課題がある。例えば、診断を要求された機器に対応するモデルが存在しない場合、改めてデータベースにアクセスし、その機器に関するエラー情報を検索する必要がある。また、例えば、モデルとデータベースとが別々に管理されるため、モデルの有無とモデル学習の失敗原因との同期を取る必要がある。
【0006】
本開示は、学習モデルに関する情報の管理を容易にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様に係る学習モデル生成装置は、学習モデル又は前記学習モデルの付帯情報を格納するための記憶領域を有する記憶部と、制御部とを有する学習モデル生成装置であって、前記制御部は、前記学習モデルを生成し、前記学習モデルの生成に失敗したとき、前記記憶領域に前記付帯情報を格納する。
【0008】
本開示の第1の態様によれば、学習モデルに関する情報の管理が容易になる。
【0009】
本開示の第2の態様は、第1の態様に係る学習モデル生成装置であって、前記制御部は、前記学習モデルの生成に失敗したとき、学習途中の前記学習モデルを前記記憶領域に格納する。
【0010】
本開示の第3の態様は、第1の態様に係る学習モデル生成装置であって、前記付帯情報は、前記学習モデルの生成に失敗した要因に関する情報を含む。
【0011】
本開示の第4の態様は、第3態様に係る学習モデル生成装置であって、前記要因は、学習データの不足又は前記学習モデルの精度不足を含む。
【0012】
本開示の第5の態様は、第3態様に係る学習モデル生成装置であって、前記学習モデルは、機器の故障を診断する診断モデルであり、前記要因は、前記機器が診断ロジックの対象外であることを含む。
【0013】
本開示の第6の態様は、第1の態様に係る学習モデル生成装置であって、前記付帯情報は、学習条件に関する情報、前記学習モデルの出力値の有効な範囲に関する情報、前記学習モデルを代替するモデルのアクセス先を示す情報、又は前記学習モデルを利用するユーザに関する情報を含む。
【0014】
本開示の第7の態様は、第1の態様に係る学習モデル生成装置であって、前記制御部は、前記学習モデルの生成に失敗した後、前記学習モデルを再度生成し、前記学習モデルの生成に成功したとき、進捗情報又はエラー情報を保持する前記学習モデルを前記記憶領域に格納する。
【0015】
本開示の第8の態様に係る故障診断システムは、機器の故障を診断する診断モデルを格納するための記憶領域を有する記憶部と、制御部と有する学習モデル生成装置を含む故障診断システムであって、前記制御部は、前記診断モデルを生成し、前記診断モデルの生成に失敗したとき、前記記憶領域に付帯情報を格納する。
【0016】
本開示の第8の態様によれば、機器の故障を診断する故障診断システムにおいて、診断モデルに関する情報の管理が容易になる。
【0017】
本開示の第9の態様は、第8の態様に係る故障診断システムであって、前記制御部は、物件に設置された機器ごとの運転データを取得し、前記運転データを用いて前記診断モデルを学習する。
【0018】
本開示の第10の態様は、第8の態様に係る故障診断システムであって、前記制御部は、前記機器の故障診断を要求されたとき、当該機器に対応する前記診断モデルを前記記憶領域から取得する。
【0019】
本開示の第11の態様は、第11の態様に係る故障診断システムであって、前記制御部は、前記診断モデルを取得した前記記憶領域に前記付帯情報が格納されているとき、前記付帯情報を出力する。
【0020】
本開示の第12の態様は、第10の態様に係る故障診断システムであって、前記制御部は、前記診断モデルを取得した前記記憶領域に前記付帯情報が格納されていないとき、前記診断モデルによる診断結果を出力する。
【0021】
本開示の第13の態様に係る学習モデル生成方法は、学習モデル生成装置が有する制御部が、前記学習モデルを生成する手順と、前記学習モデルの生成に失敗したとき、前記学習モデル又は前記学習モデルの付帯情報を格納するための記憶領域に前記付帯情報を格納する手順と、を実行する。
【0022】
本開示の第14の態様に係るプログラムは、学習モデル生成装置が有する制御部に、前記学習モデルを生成する手順と、前記学習モデルの生成に失敗したとき、前記学習モデル又は前記学習モデルの付帯情報を格納するための記憶領域に前記付帯情報を格納する手順と、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】故障診断システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
図2】診断装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3】診断装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4】モデル生成処理の処理手順を示すフローチャートである。
図5】故障診断処理の処理手順を示すフローチャートである。
図6】学習モデル生成装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、各実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0025】
[実施形態]
<システム構成>
図1は、本実施形態における故障診断システムのシステム構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、故障診断システム1は、1台以上の機器10、診断装置20及びユーザ端末30を含む。
【0026】
以下、機器10が複数台ある場合に、個々を区別するときには、「機器10-1」、「機器10-2」等と枝番を用いて記載する。
【0027】
機器10は、故障診断システム1の診断対象として登録されている機器である。機器10の一例は、空調機である。機器10には、診断に用いる運転データを取得するための各種のセンサが設置されている。各センサは、機器10の運転中、定期的に運転データを生成する。機器10が生成する運転データは、診断装置20が実行する診断ロジックに応じて設定される。
【0028】
診断装置20は、ユーザ端末30からの要求に応じて、機器10の診断を行うPC(Personal Computer)、ワークステーション又はサーバ等の情報処理装置である。診断装置20は、モデル生成処理及び故障診断処理を実行する。
【0029】
モデル生成処理では、診断装置20は、診断対象として予め登録された機器10について診断モデルの生成を行う。診断装置20は、生成した診断モデル及び診断モデルに関する付帯情報の少なくとも一方を、各機器10に対応する記憶領域に格納する。
【0030】
モデル生成処理は、故障診断システム1の起動時に、診断対象として登録されているすべての機器10について実行される。モデル生成処理は、診断モデルが生成されていない機器10がある場合、所定の時間が経過するたび、又はユーザ端末30からの要求に応じて、当該機器10について実行される。
【0031】
故障診断処理では、診断装置20は、ユーザ端末30からの要求に応じて、診断を要求された機器10に異常があるか否かを診断する。診断装置20は、まず、機器10に対応する記憶領域から診断モデルを取得する。次に、診断装置20は、機器10から収集した運転データを診断モデルに入力することで、機器10の診断を行う。
【0032】
ユーザ端末30は、ユーザが利用するPC(Personal Computer)、タブレット端末又はスマートフォン等の情報処理端末である。ユーザ端末30は、ユーザの操作に応じて、診断対象とする機器10の登録、診断又は設定等の各種操作を診断装置20に要求し、その結果を表示する。
【0033】
<ハードウェア構成>
図2は、本実施形態における診断装置20のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、診断装置20は、プロセッサ101、メモリ102、補助記憶装置103、操作装置104、表示装置105、通信装置106、ドライブ装置107を有する。なお、診断装置20の各ハードウェアは、バス108を介して相互に接続されている。
【0034】
プロセッサ101は、CPU(Central Processing Unit)等の各種演算デバイスを有する。プロセッサ101は、補助記憶装置103にインストールされている各種プログラムをメモリ102上に読み出して実行する。
【0035】
メモリ102は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の主記憶デバイスを有する。プロセッサ101とメモリ102とは、いわゆるコンピュータ(以下、「制御部」ともいう)を形成し、プロセッサ101が、メモリ102上に読み出した各種プログラムを実行することで、当該コンピュータは各種機能を実現する。
【0036】
補助記憶装置103は、各種プログラムや、各種プログラムがプロセッサ101によって実行される際に用いられる各種データを格納する。
【0037】
操作装置104は、診断装置20のユーザが各種操作を行うための操作デバイスである。表示装置105は、診断装置20により実行される各種処理の処理結果を表示する表示デバイスである。
【0038】
通信装置106は、不図示のネットワークを介して外部装置と通信を行うための通信デバイスである。
【0039】
ドライブ装置107は、記憶媒体109をセットするためのデバイスである。ここでいう記憶媒体109には、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記憶する媒体が含まれる。また、記憶媒体109には、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記憶する半導体メモリ等が含まれていてもよい。
【0040】
なお、補助記憶装置103にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記憶媒体109がドライブ装置107にセットされ、記憶媒体109に記憶された各種プログラムがドライブ装置107により読み出されることでインストールされる。あるいは、補助記憶装置103にインストールされる各種プログラムは、通信装置106を介してネットワークからダウンロードされることで、インストールされてもよい。
【0041】
<機能構成>
図3は、本実施形態における診断装置の機能構成の一例を示すブロック図である。図3に示されているように、本実施形態における診断装置20は、記憶部110、収集部120、学習部130及び診断部140を備える。
【0042】
記憶部110は、図2に示されている補助記憶装置103によって実現される。収集部120、学習部130及び診断部140は、プロセッサ101がメモリ102上に読み出した各種のプログラムを実行することで実現される。
【0043】
記憶部110は、機器10から収集した運転データ111、及び機器10に対応する記憶領域112を有する。記憶領域112には、機器10を診断するための診断モデル113、及び診断モデル113に関する付帯情報114の少なくとも一方が格納される。運転データ111及び記憶領域112は、機器10と同じ数だけ記憶部110に記憶されている。
【0044】
収集部120は、機器10-i(i=1,2,…)から運転データ111-iを収集し、記憶部110に記憶する。例えば、収集部120は、機器10-iが定期的に送信する運転データ111-iを受信することで、運転データ111-iを収集すればよい。また、例えば、収集部120は、定期的に機器10-iに運転データ111-iを要求することで、運転データ111-iを収集してもよい。
【0045】
学習部130は、上記のモデル生成処理を実行する。具体的には、学習部130は、機器10-iの運転データ111-iを用いて、機器10-iに対応する診断モデル113-iを生成する。診断モデル113-iの生成に成功した場合、学習部130は、診断モデル113-iを、機器10-iに対応する記憶領域112-iに格納する。
【0046】
一方、診断モデル113-iの生成に失敗した場合、学習部130は、診断モデル113-iに関する付帯情報114-iを記憶領域112-iに格納する。学習部130は、診断モデル113-iの生成に失敗した場合、学習途中の診断モデル113-iを付帯情報114-iと共に記憶領域112-iに格納してもよい。
【0047】
診断部140は、上記の故障診断処理を実行する。具体的には、診断部140は、ユーザ端末30からの診断要求に応じて、診断対象とする機器10-iに対応する記憶領域112-iから診断モデル113-iを取得する。診断モデル113-iを取得できた場合、診断部140は、機器10-iの運転データ111-iを、診断モデル113-iに入力することで、機器10-iの診断結果を得る。診断部140は、機器10-iの診断結果をユーザ端末30に送信する。
【0048】
一方、診断モデル113-iを取得できなかった場合、診断部140は、記憶領域112-iから診断モデル113-iに関する付帯情報114-iを取得する。診断部140は、診断モデル113-iに関する付帯情報114-iをユーザ端末30に送信する。
【0049】
<モデル生成処理の流れ>
図4は、本実施形態におけるモデル生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。図4に示したモデル生成処理は、診断モデルの生成対象とする各機器10について、繰り返し実行される。
【0050】
ステップS11において、学習部130は、機器10-iの運転データ111-iを記憶部110から取得する。
【0051】
ステップS12において、学習部130は、ステップS11で取得した運転データ111-iを用いて、機器10-iに対応する診断モデル113-iを生成する。
【0052】
ステップS13において、学習部130は、診断モデル113-iの生成に成功したか否かを判定する。診断モデル113-iの生成に成功した場合(YES)、学習部130は、ステップS14に処理を進める。診断モデル113-iの生成に失敗した場合(NO)、学習部130は、ステップS15に処理を進める。
【0053】
ステップS14において、学習部130は、ステップS13で生成された学習済みの診断モデル113-iを機器10-iに対応する記憶領域112-iに格納する。
【0054】
ステップS15において、学習部130は、ステップS13で生成された学習途中の診断モデル113-iを、機器10-iに対応する記憶領域112-iに格納する。なお、学習部130は、ステップS15を省略し、学習途中の診断モデル113-iを記憶領域112-iに格納しなくてもよい。
【0055】
ステップS16において、学習部130は、診断モデル113-iに関する付帯情報114-iを、機器10-iに対応する記憶領域112-iに格納する。付帯情報114-iには、診断モデル113-iの生成に失敗した要因を表すエラー情報が含まれる。診断モデル113-iの生成に失敗する要因は、例えば以下が挙げられる。
【0056】
第1の要因は、運転データの不足である。診断モデル113-iの生成に、一定期間(例えば、1年間)の運転データが必要とされる場合、十分な運転データが蓄積されていない機器10-iについては、診断モデル113-iの生成に失敗する。
【0057】
第2の要因は、生成した診断モデル113-iの精度不足である。学習部130は、診断モデル113-iを生成した後、診断モデル113-iの精度を評価する。例えば、学習部130は、運転データ111-iの一部を用いて診断モデル113-iを生成する。学習部130は、診断モデル113-iを生成した後、生成に用いなかった運転データ111-iの他の一部を診断モデル113-iに入力して診断結果を得る。
【0058】
学習部130は、診断モデル113-iが出力した診断結果と、運転データ111-iから得られる正解値とを比較して、診断モデル113-iの精度を計算する。学習部130は、診断結果の精度が所定の閾値に満たない場合、診断モデル113-iの生成に失敗したものとして扱う。
【0059】
第3の要因は、機器10-iの機種が診断ロジックの対象外である場合である。診断モデル113-iは、各種の診断ロジックを実行するように構成されている。機器10-iが、診断モデル113-iの診断ロジックに対応していない場合、診断モデル113-iの生成に失敗する。
【0060】
学習部130は、エラー情報に加えて、診断モデル113-iに関する追加情報を付帯情報114-iに含めて、機器10-iに対応する記憶領域112-iに格納してもよい。追加情報は、例えば、以下が挙げられる。
【0061】
第1の追加情報は、学習条件に関する情報である。学習条件は、例えば、学習時に用いたパラメータである。学習条件に関する情報は、診断モデル113-iの生成に失敗した原因を分析する際に有効な情報となる。
【0062】
第2の追加情報は、出力値の有効な範囲に関する情報である。出力値の有効な範囲とは、診断モデル113-iの出力値に対して、有効性を保証する値の範囲である。例えば、機器10-iが空調機であるとき、診断モデル113-iが空調機内の温度を推定する診断ロジックを実行する場合、センサの設置箇所が物理的にとり得る温度の範囲を記録する。診断モデル113-iが推定した温度が、出力値の有効な範囲から外れる場合、診断モデル113-iの生成に失敗したものとして扱う。
【0063】
第3の追加情報は、診断モデル113-iを代替するモデルのアクセス先を示す情報である。例えば、診断装置20を多重化することにより、一方の診断装置20において診断モデル113-iの取得に失敗した場合、他の診断装置20から診断モデル113-iを取得するように構成することができる。このように構成するとき、診断モデル113-iの追加情報として、他の診断装置20のアクセス先を付帯情報114-iに含めておく。
【0064】
第4の追加情報は、ユーザのグレードである。診断装置20は、診断を要求したユーザのグレードに応じて、レスポンスの量や計算時間を変更する機能を有するように構成することができる。このように構成するとき、ユーザのグレードとそれらの条件を対応させて追加情報として付帯情報114-iに含めておく。
【0065】
<故障診断処理の流れ>
図5は、本実施形態における故障診断処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0066】
ステップS21において、ユーザ端末30は、ユーザによる診断を要求するための操作に応じて、診断要求を診断装置20に送信する。
【0067】
診断を要求するための操作は、診断を行う機器10を特定して行われる。例えば、診断装置20からユーザ端末30に提供された操作画面において、ユーザが所望の機器10を選択して診断要求ボタンを押下すること等により、当該操作が行われる。選択可能な機器10は、複数であってもよい。
【0068】
なお、診断装置20がユーザ端末30に提供する操作画面は、ウェブアプリケーションにより実装され、ユーザ端末30にインストールされているウェブブラウザに表示される。ただし、診断装置20とユーザ端末30とのインターフェースはこれに限定されず、例えば、ユーザ端末30にインストールされた専用のアプリケーションにより、操作画面が実装されていてもよい。
【0069】
診断装置20は、ユーザ端末30から診断要求を受信する。当該診断要求には、診断を要求された機器10を識別する情報が含まれる。
【0070】
ステップS22において、診断部140は、ユーザ端末30から受信した診断要求に基づいて、診断を行う機器10を特定する。ここでは、機器10-iが特定されたものとする。次に、診断部140は、機器10-iに対応する記憶領域112-iから診断モデル113-iを取得する。
【0071】
ステップS23において、診断部140は、診断モデル113-iの取得に成功したか否かを判定する。診断モデル113-iの取得に成功した場合(YES)、診断部140は、ステップS24に処理を進める。診断モデル113-iの取得に失敗した場合(NO)、診断部140は、ステップS26に処理を進める。
【0072】
ステップS24において、診断部140は、記憶部110から機器10-iの運転データ111-iを取得する。次に、診断部140は、運転データ111-iを診断モデル113-iに入力することで、機器10-iの診断結果を得る。
【0073】
ステップS25において、診断部140は、ステップS24で得た機器10-iの診断結果をユーザ端末30に送信する。ユーザ端末30は、診断装置20から機器10-iの診断結果を受信する。次に、ユーザ端末30は、受信した機器10-iの診断結果を操作画面等に表示する。
【0074】
ステップS26において、診断部140は、機器10-iに対応する記憶領域112-iから診断モデル113-iに関する付帯情報114-iを取得する。
【0075】
ステップS27において、診断部140は、ステップS26で得た付帯情報114-iをユーザ端末30に送信する。ユーザ端末30は、診断装置20から診断モデル113-iに関する付帯情報114-iを受信する。次に、ユーザ端末30は、受信した診断モデル113-iに関する付帯情報114-iに基づいて、エラーメッセージを操作画面等に表示する。
【0076】
例えば、付帯情報114-iに含まれるエラー情報が、学習データの不足により生成に失敗したことを示す場合、ユーザ端末30は、「診断モデルを作成するためのデータが不足しています。故障診断は運転開始の1年後から行うことができます。」等のメッセージを表示する。
【0077】
また、例えば、付帯情報114-iに含まれるエラー情報が、モデルの精度不足により生成に失敗したことを示す場合、ユーザ端末30は、「モデルを作成しましたが十分な精度が得られませんでした。」等のメッセージを表示する。
【0078】
また、例えば、付帯情報114-iに含まれるエラー情報が、診断ロジックの対象外であることを示す場合、ユーザ端末30は、「指定された機種はサーミスタ故障診断に対応していません。」等のメッセージを表示する。
【0079】
[その他の実施形態]
上記実施形態では、空調機等の機器の故障を診断する故障診断システムについて説明した。故障診断システムでは、診断装置が、診断対象とする機器に対応する診断モデルを生成した。ここで、診断モデルに限定されない種々の学習モデルを生成する学習モデル生成装置を構成してもよい。
【0080】
<機能構成>
図6は、他の実施形態における学習モデル生成装置の機能構成の一例を示すブロック図である。図6に示されているように、学習モデル生成装置40は、記憶部210、学習部230及び予測部240を備える。
【0081】
記憶部210は、図2に示されている補助記憶装置103によって実現される。学習部230及び予測部240は、プロセッサ101がメモリ102上に読み出した各種のプログラムを実行することで実現される。
【0082】
記憶部210は、学習データ211及び記憶領域212を有する。記憶領域212には、学習モデル213、及び学習モデル213に関する付帯情報214の少なくとも一方が格納される。
【0083】
学習部230は、モデル生成処理を実行する。具体的には、学習部230は、学習データ211を用いて、学習モデル213を生成する。学習モデル213の生成に成功した場合、学習部230は、学習モデル213を記憶領域212に格納する。
【0084】
一方、学習モデル213の生成に失敗した場合、学習部230は、学習モデル213に関する付帯情報214を記憶領域212に格納する。学習部230は、学習モデル213の学習に失敗した場合、学習途中の学習モデル213を付帯情報214と共に記憶領域212に格納してもよい。
【0085】
予測部240は、予測処理を実行する。具体的には、予測部240は、記憶領域212から学習モデル213を取得する。学習モデル213を取得できた場合、予測部240は、予測対象とする特徴データを、学習モデル213に入力することで、特徴データに対する予測結果を得る。そして、予測部240は、特徴データに対する予測結果を出力する。
【0086】
一方、学習モデル213を取得できなかった場合、予測部240は、記憶領域212から学習モデル213に関する付帯情報214を取得する。そして、予測部240は、学習モデル213に関する付帯情報214を出力する。
【0087】
<まとめ>
以上、本開示の各実施形態によれば、学習モデルに関する情報の管理が容易になる。例えば、特許文献1に開示された従来技術では、モデル学習の失敗原因を表すエラー情報をデータベースに記憶する。そのため、モデルを使用する際にモデルの取得に失敗すると、改めてデータベースにアクセスし、エラー情報を検索する必要がある。また、特許文献1に開示された従来技術では、モデルの有無とモデル学習の失敗原因との同期を取る必要がある。このように、従来技術では、学習モデルに関する情報の管理が煩雑であるという問題がある。
【0088】
一方、本開示の一実施形態における学習モデル生成装置は、記憶部に学習モデル又は学習モデルに関する付帯情報を格納するための記憶領域を用意する。学習モデル生成装置は、学習モデルの取得に失敗した場合、当該学習モデルを格納するための記憶領域から当該学習モデルに関する付帯情報を取得することができる。したがって、本開示によれば、学習モデルに関する情報の管理が容易になる。
【0089】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0090】
1 故障診断システム
10 機器
20 診断装置
110 記憶部
120 収集部
130 学習部
140 診断部
30 ユーザ端末
40 学習モデル生成装置
210 記憶部
230 学習部
240 予測部
図1
図2
図3
図4
図5
図6