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特開2023-149003被面接者の心理に合わせた面接スクリプトを生成する装置、システム、プログラム及び方法
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  • 特開-被面接者の心理に合わせた面接スクリプトを生成する装置、システム、プログラム及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149003
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】被面接者の心理に合わせた面接スクリプトを生成する装置、システム、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20231005BHJP
   G06Q 10/06 20230101ALI20231005BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057314
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100141313
【弁理士】
【氏名又は名称】辰巳 富彦
(72)【発明者】
【氏名】徐 文臻
(72)【発明者】
【氏名】多屋 優人
(72)【発明者】
【氏名】南川 敦宣
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA08
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】被面接者の心理も考慮した動機づけ面接を可能にする面接スクリプトを生成する装置を提供する。
【解決手段】本面接スクリプト生成装置は、面接スクリプトデータベースから取得された面接スクリプトにおける一連の対話単位からキーワードを抽出して、このキーワードに基づき、面接された者の心理種別毎に、各発話段階における対話単位の発話内容を発話段階の進展に沿って関連付けた発話段階進展ツリーを生成する手段と、面接スクリプトデータベースから検索された面接した者の発話群であって、心理種別毎に区分けされた面接した者の発話群から、取得された被面接者の心理種別情報に対応しており、抽出されたキーワードが自ら属する対話単位に含まれている面接した者の発話を選択する手段と、選択された面接した者の発話を面接者の発話として、生成された発話段階進展ツリーと合わせて、動機づけ面接に用いる面接スクリプトを生成する手段とを有する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動機づけ面接に用いる面接スクリプトを生成する面接スクリプト生成装置であって、
面接された者の心理種別情報が紐づけられた既存の面接スクリプトを保存する面接スクリプトデータベースから当該既存の面接スクリプトを取得し、当該既存の面接スクリプトの一連の対話単位から、予め設定された複数の発話段階の各々に予め紐づけられたキーワードを抽出して、抽出されたキーワードに基づき、当該面接された者の心理種別毎に、当該発話段階の各々における当該対話単位の発話内容を当該発話段階の進展に沿って関連付けた発話段階進展ツリーを生成する発話段階進展ツリー生成手段と、
前記面接スクリプトデータベースから検索された面接した者の発話群であって、心理種別毎に区分けされた当該面接した者の発話群から、取得された被面接者の心理種別情報に対応しており、抽出されたキーワードが自ら属する対話単位に含まれている当該面接した者の発話を選択する面接者発話選択手段と、
選択された当該面接した者の発話を面接者の発話として、生成された発話段階進展ツリーと合わせて、当該被面接者との動機づけ面接に用いる面接スクリプトを生成するスクリプト生成手段と
を有することを特徴とする面接スクリプト生成装置。
【請求項2】
前記面接スクリプトデータベースが保存する当該既存の面接スクリプトは、用いられた面接戦略に係る種別情報が当該面接した者の発話に紐づけられた面接スクリプトとなっており、
前記スクリプト生成装置は、各心理種別に複数の面接戦略のうちの1つを予め対応付けたテーブルを用いて、取得された当該被面接者の心理種別情報から、面接に使用する面接戦略を決定する面接戦略決定手段を更に有し、
前記面接者発話選択手段は、前記面接スクリプトデータベースから検索された当該面接した者の発話群であって、各心理種別について面接戦略の種別毎に区分けされた当該面接した者の発話群から、抽出されたキーワードが自ら属する対話単位に含まれており、当該被面接者の心理種別情報及び決定した面接戦略に対応する当該面接した者の発話を選択する
ことを特徴とする請求項1に記載の面接スクリプト生成装置。
【請求項3】
前記面接スクリプトデータベースに保存された当該既存の面接スクリプトから、自然言語処理モデルのエンコーダを用いて特徴量を抽出し、過去の動機づけ面接において用いられた面接戦略とその成果とを含む学習データを用いて訓練された面接戦略推定モデルに対し当該特徴量を入力して、該面接戦略推定モデルの出力から、付与すべき面接戦略の種別情報を決定し、決定した面接戦略の種別情報を当該既存の面接スクリプトに付与する面接戦略ラベリング手段を更に有することを特徴とする請求項2に記載の面接スクリプト生成装置。
【請求項4】
当該複数の面接戦略は、質問、是認、聞き返し、及び要約の動機づけ戦略のうちの1つと、権威、コミットメント、社会的証明、好意、返報性、及び希少性の説得戦略のうちの1つとの組合せで表される戦略であることを特徴とする請求項2又は3に記載の面接スクリプト生成装置。
【請求項5】
当該心理種別情報は、予め設定された複数の静的心理種別のいずれに該当するかに係る心理特性情報と、予め設定された複数の動的心理種別のいずれに該当するかに係る面接時の心理状態情報とを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の面接スクリプト生成装置。
【請求項6】
当該発話段階は、変化への希望に係る発話の段階、変化する能力や見通しに係る発話の段階、変化することの利点に係る発話の段階、変化しないことへの心配や懸念に係る発話の段階、及び変化への具体的な計画や考えに係る発話の段階からなるチェンジトーク段階に係る段階であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の面接スクリプト生成装置。
【請求項7】
動機づけ面接に用いる面接スクリプトを生成する面接スクリプト生成システムであって、
面接された者の心理種別情報が紐づけられた既存の面接スクリプトを保存する面接スクリプトデータベースから当該既存の面接スクリプトを取得し、当該既存の面接スクリプトの一連の対話単位から、予め設定された複数の発話段階の各々に予め紐づけられたキーワードを抽出して、抽出されたキーワードに基づき、当該面接された者の心理種別毎に、当該発話段階の各々における当該対話単位の発話内容を当該発話段階の進展に沿って関連付けた発話段階進展ツリーを生成する発話段階進展ツリー生成手段と、
前記面接スクリプトデータベースから検索された面接した者の発話群であって、心理種別毎に区分けされた当該面接した者の発話群から、取得された被面接者の心理種別情報に対応しており、抽出されたキーワードが自ら属する対話単位に含まれている当該面接した者の発話を選択する面接者発話選択手段と、
選択された当該面接した者の発話を面接者の発話として、生成された発話段階進展ツリーと合わせて、当該被面接者との動機づけ面接に用いる面接スクリプトを生成するスクリプト生成手段と
を有することを特徴とする面接スクリプト生成システム。
【請求項8】
動機づけ面接に用いる面接スクリプトを生成するコンピュータを機能させる面接スクリプト生成プログラムであって、
面接された者の心理種別情報が紐づけられた既存の面接スクリプトを保存する面接スクリプトデータベースから当該既存の面接スクリプトを取得し、当該既存の面接スクリプトの一連の対話単位から、予め設定された複数の発話段階の各々に予め紐づけられたキーワードを抽出して、抽出されたキーワードに基づき、当該面接された者の心理種別毎に、当該発話段階の各々における当該対話単位の発話内容を当該発話段階の進展に沿って関連付けた発話段階進展ツリーを生成する発話段階進展ツリー生成手段と、
前記面接スクリプトデータベースから検索された面接した者の発話群であって、心理種別毎に区分けされた当該面接した者の発話群から、取得された被面接者の心理種別情報に対応しており、抽出されたキーワードが自ら属する対話単位に含まれている当該面接した者の発話を選択する面接者発話選択手段と、
選択された当該面接した者の発話を面接者の発話として、生成された発話段階進展ツリーと合わせて、当該被面接者との動機づけ面接に用いる面接スクリプトを生成するスクリプト生成手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする面接スクリプト生成プログラム。
【請求項9】
動機づけ面接に用いる面接スクリプトを生成するコンピュータによって実施される面接スクリプト生成方法であって、
面接された者の心理種別情報が紐づけられた既存の面接スクリプトを保存する面接スクリプトデータベースから当該既存の面接スクリプトを取得し、当該既存の面接スクリプトの一連の対話単位から、予め設定された複数の発話段階の各々に予め紐づけられたキーワードを抽出して、抽出されたキーワードに基づき、当該面接された者の心理種別毎に、当該発話段階の各々における当該対話単位の発話内容を当該発話段階の進展に沿って関連付けた発話段階進展ツリーを生成するステップと、
前記面接スクリプトデータベースから検索された面接した者の発話群であって、心理種別毎に区分けされた当該面接した者の発話群から、取得された被面接者の心理種別情報に対応しており、抽出されたキーワードが自ら属する対話単位に含まれている当該面接した者の発話を選択するステップと、
選択された当該面接した者の発話を面接者の発話として、生成された発話段階進展ツリーと合わせて、当該被面接者との動機づけ面接に用いる面接スクリプトを生成するステップと
を有することを特徴とする面接スクリプト生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面接スクリプトを生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床心理学の分野で、動機づけ面接(motivational interviewing)に大きな注目が集まっている。動機づけ面接は、被面接者(クライエント)から動機づけや意欲を呼び覚まし、被面接者が自ら行動を変えるように促す、被面接者中心のカウンセリングアプローチである。
【0003】
現在、AI(Artificial Intelligence)を活用して、動機づけを行うことの可能なコミュニケーションを実施する研究が進んでいる。例えば非特許文献1は、AIを用いたチャットボットが人間に働きかけ、この人間の身体活動や食事行動等に影響を与える技術に関する研究をレビューしている。同文献では、チャットボットによるリマインド(投げかけ)、ナッジ(nudge,誘導)や、フィードバック(返答)は、ユーザの身体活動の向上や食事活動の改善に有意な影響のあることが示唆されている。
【0004】
また、非特許文献2は、AIを用いたチャットボットが人間の内面的状態(メンタルヘルス、ウェルビーイングや、モチベーション)に影響を与える技術に関する実証研究の論文計12本をレビューしている。またその中で特に、チャットボットによる簡易なインタラクション、例えばボットが自発的にユーザに声をかけたりユーザが話しているときにうなずいたりする動作が、運動を行うモチベーションの向上や不安感情の低減につながったとの成果を紹介している。
【0005】
さらに、特許文献1には、人間とコミュニケーションするチャットボットであって、コミュニケーション時における感情的論争(affective argumentation)の状態を検知し、コンフリクトを解消することを支援するチャットボットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0410166号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Jingwen Zhang, Yoo Jung Oh, Patrick Lange, Zhou Yu, & Yoshimi Fukuoka 4, “Artificial intelligence Chatbot behavior change model for designing artificial intelligence Chatbots to promote physical activity and a healthy diet: Viewpoint”. Journal of medical Internet research, 22(9), e22845, 2020年
【非特許文献2】Arielle Aj Scoglio, Erin D Reilly, Jay A Gorman, & Charles E Drebing, “Use of Social Robots in Mental Health and Well-Being Research: Systematic Review”, Journal of medical Internet research, 21(7), e13322, 2019年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したようなAIを活用した従来技術を用いても、適切な動機づけ面接を行うには依然、大きな課題が残っている。
【0009】
例えば、非特許文献1には、動機づけ面接を補助する簡易な(実験段階の)AIチャットボットも紹介されているが、このボットは自らの働きかけにおけるユーザ(被面接者)の内面的状態への影響は何ら考慮しておらず、それ故このボットは、簡単な発話を行ったり、うなずく等の簡単な非言語コミュニケーションを行ったりすることしかできない。
【0010】
また、内面的状態への影響を検討している非特許文献2に開示された技術や、感情的論争の状態を検知する特許文献1に開示された技術においても、ユーザ(被面接者)の内面的状態を把握した上でユーザの内面をサポートし、動機づけを行うまでには至っていない。
【0011】
そこで、本発明は、被面接者の心理も考慮した動機づけ面接を可能にする面接スクリプトを生成する面接スクリプト生成装置、システム、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、動機づけ面接に用いる面接スクリプトを生成する面接スクリプト生成装置であって、
面接された者の心理種別情報が紐づけられた既存の面接スクリプトを保存する面接スクリプトデータベースから当該既存の面接スクリプトを取得し、当該既存の面接スクリプトの一連の対話単位から、予め設定された複数の発話段階の各々に予め紐づけられたキーワードを抽出して、抽出されたキーワードに基づき、当該面接された者の心理種別毎に、当該発話段階の各々における当該対話単位の発話内容を当該発話段階の進展に沿って関連付けた発話段階進展ツリーを生成する発話段階進展ツリー生成手段と、
面接スクリプトデータベースから検索された面接した者の発話群であって、心理種別毎に区分けされた当該面接した者の発話群から、取得された被面接者の心理種別情報に対応しており、抽出されたキーワードが自ら属する対話単位に含まれている当該面接した者の発話を選択する面接者発話選択手段と、
選択された当該面接した者の発話を面接者の発話として、生成された発話段階進展ツリーと合わせて、当該被面接者との動機づけ面接に用いる面接スクリプトを生成するスクリプト生成手段と
を有する面接スクリプト生成装置が提供される。
【0013】
また、本発明による面接スクリプト生成装置の一実施形態として、面接スクリプトデータベースが保存する当該既存の面接スクリプトは、用いられた面接戦略に係る種別情報が当該面接した者の発話に紐づけられた面接スクリプトとなっており、
本スクリプト生成装置は、各心理種別に複数の面接戦略のうちの1つを予め対応付けたテーブルを用いて、取得された当該被面接者の心理種別情報から、面接に使用する面接戦略を決定する面接戦略決定手段を更に有し、
面接者発話選択手段は、面接スクリプトデータベースから検索された当該面接した者の発話群であって、各心理種別について面接戦略の種別毎に区分けされた当該面接した者の発話群から、抽出されたキーワードが自ら属する対話単位に含まれており、当該被面接者の心理種別情報及び決定した面接戦略に対応する当該面接した者の発話を選択することも好ましい。
【0014】
さらに、本発明による面接スクリプト生成装置は、
面接スクリプトデータベースに保存された当該既存の面接スクリプトから、自然言語処理モデルのエンコーダを用いて特徴量を抽出し、過去の動機づけ面接において用いられた面接戦略とその成果とを含む学習データを用いて訓練された面接戦略推定モデルに対し当該特徴量を入力して、該面接戦略推定モデルの出力から、付与すべき面接戦略の種別情報を決定し、決定した面接戦略の種別情報を当該既存の面接スクリプトに付与する面接戦略ラベリング手段
を更に有することも好ましい。
【0015】
また、本発明に係る当該複数の面接戦略は、質問、是認、聞き返し、及び要約の動機づけ戦略のうちの1つと、権威、コミットメント、社会的証明、好意、返報性、及び希少性の説得戦略のうちの1つとの組合せで表される戦略であることも好ましい。
【0016】
さらに、本発明に係る当該心理種別情報は、予め設定された複数の静的心理種別のいずれに該当するかに係る心理特性情報と、予め設定された複数の動的心理種別のいずれに該当するかに係る面接時の心理状態情報とを含むことも好ましい。
【0017】
またさらに、本発明に係る当該発話段階は、変化への希望に係る発話の段階、変化する能力や見通しに係る発話の段階、変化することの利点に係る発話の段階、変化しないことへの心配や懸念に係る発話の段階、及び変化への具体的な計画や考えに係る発話の段階からなるチェンジトーク段階に係る段階であることも好ましい。
【0018】
本発明によれば、また、動機づけ面接に用いる面接スクリプトを生成する面接スクリプト生成システムであって、
面接された者の心理種別情報が紐づけられた既存の面接スクリプトを保存する面接スクリプトデータベースから当該既存の面接スクリプトを取得し、当該既存の面接スクリプトの一連の対話単位から、予め設定された複数の発話段階の各々に予め紐づけられたキーワードを抽出して、抽出されたキーワードに基づき、当該面接された者の心理種別毎に、当該発話段階の各々における当該対話単位の発話内容を当該発話段階の進展に沿って関連付けた発話段階進展ツリーを生成する発話段階進展ツリー生成手段と、
面接スクリプトデータベースから検索された面接した者の発話群であって、心理種別毎に区分けされた当該面接した者の発話群から、取得された被面接者の心理種別情報に対応しており、抽出されたキーワードが自ら属する対話単位に含まれている当該面接した者の発話を選択する面接者発話選択手段と、
選択された当該面接した者の発話を面接者の発話として、生成された発話段階進展ツリーと合わせて、当該被面接者との動機づけ面接に用いる面接スクリプトを生成するスクリプト生成手段と
を有する面接スクリプト生成システムが提供される。
【0019】
本発明によれば、さらに、動機づけ面接に用いる面接スクリプトを生成するコンピュータを機能させる面接スクリプト生成プログラムであって、
面接された者の心理種別情報が紐づけられた既存の面接スクリプトを保存する面接スクリプトデータベースから当該既存の面接スクリプトを取得し、当該既存の面接スクリプトの一連の対話単位から、予め設定された複数の発話段階の各々に予め紐づけられたキーワードを抽出して、抽出されたキーワードに基づき、当該面接された者の心理種別毎に、当該発話段階の各々における当該対話単位の発話内容を当該発話段階の進展に沿って関連付けた発話段階進展ツリーを生成する発話段階進展ツリー生成手段と、
面接スクリプトデータベースから検索された面接した者の発話群であって、心理種別毎に区分けされた当該面接した者の発話群から、取得された被面接者の心理種別情報に対応しており、抽出されたキーワードが自ら属する対話単位に含まれている当該面接した者の発話を選択する面接者発話選択手段と、
選択された当該面接した者の発話を面接者の発話として、生成された発話段階進展ツリーと合わせて、当該被面接者との動機づけ面接に用いる面接スクリプトを生成するスクリプト生成手段と
してコンピュータを機能させる面接スクリプト生成プログラムが提供される。
【0020】
本発明によれば、さらにまた、動機づけ面接に用いる面接スクリプトを生成するコンピュータによって実施される面接スクリプト生成方法であって、
面接された者の心理種別情報が紐づけられた既存の面接スクリプトを保存する面接スクリプトデータベースから当該既存の面接スクリプトを取得し、当該既存の面接スクリプトの一連の対話単位から、予め設定された複数の発話段階の各々に予め紐づけられたキーワードを抽出して、抽出されたキーワードに基づき、当該面接された者の心理種別毎に、当該発話段階の各々における当該対話単位の発話内容を当該発話段階の進展に沿って関連付けた発話段階進展ツリーを生成するステップと、
面接スクリプトデータベースから検索された面接した者の発話群であって、心理種別毎に区分けされた当該面接した者の発話群から、取得された被面接者の心理種別情報に対応しており、抽出されたキーワードが自ら属する対話単位に含まれている当該面接した者の発話を選択するステップと、
選択された当該面接した者の発話を面接者の発話として、生成された発話段階進展ツリーと合わせて、当該被面接者との動機づけ面接に用いる面接スクリプトを生成するステップと
を有する面接スクリプト生成方法が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の面接スクリプト生成装置、システム、プログラム及び方法によれば、被面接者の心理も考慮した動機づけ面接を可能にする面接スクリプトを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による面接スクリプト生成装置の一実施形態における機能構成を示す機能ブロック図である。
図2】本発明に係る発話段階進展ツリーの一具体例を示す模式図である。
図3】本発明に係る面接スクリプトの一具体例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
[面接スクリプト生成装置]
図1は、本発明による面接スクリプト生成装置の一実施形態における機能構成を示す機能ブロック図である。
【0025】
図1に示した面接スクリプト生成装置1は、本発明による面接スクリプト生成装置の一実施形態であって、既存の面接スクリプト群を保存・管理する面接スクリプトデータベース(DB)2から取得した面接スクリプトを用い、被面接者の心理特性や心理状態に係る情報も取り入れて、被面接者の心理も考慮した動機づけ面接を可能にする「面接スクリプト」(面接者の発話と被面接者の発話との複数の組を面接の進展に沿ってまとめたデータ)を作成する装置となっている。
【0026】
ここで、生成される面接スクリプトは、例えば動機づけ面接を行うチャットボット用に使用されてもよく(この場合、「面接者」はチャットボットとすることができる)、または、人間の面接者が、被面接者と対面で若しくはウェブ(Web)等による遠隔で動機づけ面接を行う際の補助・支援手段として利用されてもよい。
【0027】
いずれにしてもこのような面接スクリプトを生成すべく、面接スクリプト生成装置1は具体的に、
(A)面接された者の「心理種別情報」が紐づけられた既存の面接スクリプトを保存する面接スクリプトDB2から既存の面接スクリプトを取得し、取得した面接スクリプトの一連の対話単位から、予め設定された複数の「発話段階」の各々に予め紐づけられたキーワードを抽出して、抽出されたキーワードに基づき、面接された者の心理種別毎に、「発話段階」の各々における対話単位の発話内容を「発話段階」の進展に沿って関連付けた「発話段階進展ツリー」を生成する発話段階進展ツリー生成部111と、
(B)面接スクリプトDB2から検索された「面接した者の発話」群であって、心理種別毎に区分けされた「面接した者の発話」群から、取得された被面接者の「心理種別情報」に対応しており、抽出されたキーワードが自ら属する対話単位に含まれている「面接した者の発話」を選択する面接者発話選択部114と、
(C)選択された「面接した者の発話」を面接者の発話として、生成された「発話段階進展ツリー」と合わせて、面接者と被面接者との動機づけ面接に用いる「面接スクリプト」を生成するスクリプト生成部115と
を有することを特徴としている。
【0028】
ここで、上記(A)の「発話段階」としては、臨床心理学的知見に基づくものであれば種々様々なものが利用可能であるが、本実施形態ではチェンジトーク(DARN-C)段階、すなわち、
(a)変化への希望に係る発話の段階(Desire段階):「~できるようになりたい」等の発話を行う段階、
(b)変化する能力や見通しに係る発話の段階(Ability段階):「~する自信がある」や過去の成功体験談等の発話を行う段階、
(c)変化することの利点に係る発話の段階(Reason段階):変化することでポジティブな結果が伴う理由を挙げる発話を行う段階、
(d)変化しないことへの心配や懸念に係る発話の段階(Need段階):「このままでは~になってしまう」等のネガティブな理由を挙げる発話を行う段階、及び
(e)変化への具体的な計画や考えに係る発話の段階(Commitment段階)
が採用されている。
【0029】
ちなみにチェンジトーク(DARN-C)は、動機づけ面接において、被面接者(クライエント)から引き出すべき発言であり、自己動機づけ発言とも言われている。すなわち、動機づけ面接においては、上記(a)~(e)に係る発話(チェンジトーク)を被面接者から適宜引き出し、被面接者が自身の考え方や行動の仕方を自ら変えていくことを促すことが重要となるのである。
【0030】
上記(A)の「発話段階進展ツリー」は、このような「発話段階」の進展に沿って且つ心理種別毎に、発話内容を関連付けた情報となっている。また、このツリーに合わせて「面接スクリプト」を生成する重要要素である上記(B)の「面接した者の発話」も、被面接者の「心理種別情報」に対応するものが選択されている。このように、面接スクリプト生成装置1は、被面接者の心理種別も考慮した動機づけ面接を可能にする「面接スクリプト」を、臨床心理学的知見に基づいて生成することができるのである。
【0031】
[装置機能構成,面接スクリプト生成システム・プログラム・方法]
同じく図1の機能ブロック図によれば、本実施形態の面接スクリプト生成装置1は、通信インタフェース部101と、面接スクリプト保存部102と、心理特性情報保存部103と、端末ログ情報保存部104と、生理的情報保存部105と、ユーザインタフェース部106と、プロセッサ・メモリ(メモリ機能を備えた演算処理系)とを有する。
【0032】
ここで、このプロセッサ・メモリは、本発明による面接スクリプト生成プログラムの一実施形態を保存しており、またコンピュータ機能を有していて、この面接スクリプト生成プログラムを実行することによって、面接スクリプト生成処理を実施する。このことから、面接スクリプト生成装置1は、面接スクリプト生成処理専用の装置であってもよいが、本発明による面接スクリプト生成プログラムを搭載した、クラウドサーバ、非クラウドサーバ、パーソナル・コンピュータ(PC)や、ノート型若しくはタブレット型コンピュータ、さらにはスマートフォン等の携帯端末とすることもできる。
【0033】
さらに、上記のプロセッサ・メモリは、キーワード抽出部111aを含む発話段階進展ツリー生成部111と、心理特性・状態推定部112と、面接戦略決定部113と、面接者発話選択部114と、面接スクリプト生成部115と、面接戦略ラベリング部116と、通信制御部121と、入出力制御部122とを有する。ここで以上に述べた機能構成部は、プロセッサ・メモリに保存された面接スクリプト生成プログラムの実行によって具現する機能と捉えることができる。また、図1における面接スクリプト生成装置1の機能構成部間を矢印で接続して示した処理の流れは、本発明による面接スクリプト生成方法の一実施形態としても理解される。
【0034】
ちなみに、発話段階進展ツリー生成部111、心理特性・状態推定部112、面接戦略決定部113、面接者発話選択部114、面接スクリプト生成部115、及び面接戦略ラベリング部116のうちの少なくとも1つは、別の装置の機能構成部となっていて、複数の装置(例えば複数のサーバ)全体で本面接スクリプト生成機能を果たすものとすることもできる。この場合、これら複数の装置全体が、本発明による面接スクリプト生成システムを構成する。また、このうち面接戦略ラベリング部116は、本面接スクリプト生成装置・システムとは別の装置で担われていて、本面接スクリプト生成装置・システムは、この別の装置から、面接戦略のラベリング処理が実施された面接スクリプト群を取得するものであってもよい。
【0035】
同じく図1の機能ブロック図において、面接スクリプト保存部102は、面接スクリプトDB2から取り寄せた既存の面接スクリプト群を保存・管理している、面接スクリプトのデータベースである。ここで本実施形態において、
(a)保存された個々の面接スクリプトには、面接された者(当時の被面接者)の「心理特性」及び「心理状態」の種別情報が紐づけられており、また、
(b)保存された個々の面接スクリプトにおける面接した者(当時の面接者)の発話に対し、(当時)用いられた「面接戦略」に係る種別情報が紐づけられている。
【0036】
ここで上記(a)の「心理特性」及び「心理状態」については後に詳細に説明する。一方、上記(b)の「面接戦略」は、臨床心理学的知見に基づくものであれば種々様々なものが適用可能であるが、本実施形態では、
(b1)「質問」、「是認」、「聞き返し」及び「要約」の動機づけ戦略のうちの1つと、
(b2)「権威」、「コミットメント」、「社会的証明」、「好意」、「返報性」及び「希少性」の説得戦略のうちの1つと
の組合せで表される戦略となっている。
【0037】
このうち上記(b1)の動機づけ戦略は、動機づけ面接において面接者が如何なる発話を行うかの方略となっている。ここで「質問」は、「どんな気持ちですか」、「どのように考えていますか」や、「どんなことがしたいですか」等、被面接者がそれに対し様々な応答ができるような発話を行うことを指す。また「是認」は、被面接者の発話の中で認められるものや、使えるもの等に対し、聞き返して確認する発話を行うことを指す。さらに「聞き返し」は、被面接者の発話をそのまま聞き返したり,示唆された思いを聞き返したり、被面接者の発話を極端な内容にして聞き返したり,裏の意味を取って聞き返したりする発話を行うことを指す。また、「要約」は、被面接者の発話の中から認められるものや、使えるもの等を拾い上げていく発話を行うことを指す。一方、上記(b2)の説得戦略は、行動変容の分野で広く用いられているチャルディーニの説得戦略となっている。
【0038】
なお、既存の面接スクリプト群に対する(上記(b)の)面接戦略の種別情報の紐づけは勿論、人手によって行うことも可能であるが、本実施形態では、面接戦略ラベリング部116によって自動的に実施可能となっている。具体的に、面接戦略ラベリング部116は、
(a)面接スクリプト保存部102(又は面接スクリプトDB2)に保存された既存の面接スクリプトから、自然言語処理モデルのエンコーダを用いて特徴量を抽出し、
(b)過去の動機づけ面接において用いられた面接戦略とその成果とを含む学習データを用いて訓練された(例えばニューラルネットワーク(Neural Network)で構築された)面接戦略推定モデルに対し当該特徴量を入力し、
(c)この面接戦略推定モデルの出力から、付与すべき面接戦略の種別情報を決定し、決定した面接戦略の種別情報を当該既存の面接スクリプトに付与した上で、当該既存の面接スクリプトを面接スクリプト保存部102(又は面接スクリプトDB2)へ返す
ことができる。
【0039】
同じく図1の機能ブロック図において、心理特性情報保存部103は、心理特性情報管理サーバ3から通信インタフェース部101及び通信制御部121を介して、各被面接者の「心理特性情報」を取得し、保存・管理している。ここで「心理特性情報」は、予め設定された複数の静的心理種別のいずれに該当するかに係る情報となっている。
【0040】
なおこのような「心理特性情報」が取得される状況としては、例えばある会社が、被面接者となり得る全社員を対象にパーソナリティ調査紙調査、モチベーションサーベイや、ワークエンゲージメントサーベイ等を行っており、そこから各社員(被面接者)についての
(a)Big Five理論に基づくパーソナリティ情報(例えば、開放性、誠実性、外向性、協調性及び神経症的傾向に係るスコア)、
(b)自己制御理論(Self-Regulation Theory)における(Self-enhancement的な)動機づけの特徴の情報、及び
(c)(目標を達成する動機の焦点にはポジティブな結果を目指す促進焦点とネガティブな結果の回避を目指す予防焦点との2つがあるとの)制御焦点理論(Regulatory Focus Theory)における動機焦点の種別情報
のうちの少なくとも1つである「心理特性情報」を取得し、心理特性情報管理サーバ3に保存・管理している場合が挙げられる。
【0041】
例えば、社員Aさんに関し「無口で少し神経質であってストレスがたまるとやる気が出なくなる(神経症傾向が高い:Big five理論)。また、叱られるより褒められる方がやる気が出やすい(自己制御理論)。さらに、報酬を得るより損失を回避するための意思決定を行うことが多い(リスク回避的意思決定傾向:制御焦点理論)」といったような内容の心理特性情報が保存・管理されているのである。
【0042】
同じく図1の機能ブロック図において、端末ログ情報保存部104は本実施形態において、各被面接者におけるPCやスマートフォン等の使用ログ、例えば各社員の業務用PCの使用ログ(例えば特定のソフトウェアの利用状況や、勤怠情報等)を、(例えば会社の管理する)端末ログ管理サーバ4から通信インタフェース部101及び通信制御部121を介して取得し、保存・管理している。
【0043】
また、生理的情報保存部105は、各被面接者の生理的情報、例えば健康管理のためにウェアラブル端末を装着している各社員における(当該端末による測定結果としての)過去の所定期間における心拍波形、心拍数、歩数や、酸素飽和度(SpO2)等の情報を、(例えば会社の管理する)生理的情報管理サーバ5から通信インタフェース部101及び通信制御部121を介して取得し、保存・管理している。
【0044】
<心理特性・状態推定手段>
同じく図1の機能ブロック図において、心理特性・状態推定部112は、被面接者の心理種別情報を推定し決定する。ここで心理種別情報は本実施形態において、
(ア)予め設定された複数の静的心理種別のいずれに該当するかに係る「心理特性情報」と、
(イ)予め設定された複数の動的心理種別のいずれに該当するかに係る(面接前の所定時間区間を含む意味での)面接時の「心理状態情報」と
を含む情報となっている。
【0045】
このうち上記(ア)の「心理特性情報」については、上述したように心理特性情報保存部103に保存されている被面接者についての(a)パーソナリティ情報(例えば、Big Fiveスコア)、(b)動機づけの特徴の情報、及び(c)動機焦点の種別情報に係る情報のうちの少なくとも1つを取り出し、用いることができる。
【0046】
また、心理特性・状態推定部112は、端末ログ情報保存部104に保存されている被面接者におけるPCやスマートフォン等の使用ログを取り出し、これから「心理特性情報」を推定してもよい。例えば、正解の心理特性情報が紐づけられた(ラベルされた)使用ログを学習データとして訓練された(例えばニューラルネットワークで構築された)心理特性推定モデルに対し、被面接者の(過去所定期間の)使用ログを入力し、この心理特性推定モデルの出力から被面接者の「心理特性情報」を推定・決定することができる。
【0047】
一方、上記(イ)の(被面接者における面接時の)「心理状態情報」は本実施形態において、
(d)社会的認知理論の一概念である(動的)自己効力感(Self-Efficacy)に係る情報、
(e)認知神経心理学の一概念である自己主体感(Self-Agency)に係る情報、及び
(f)ストレスの程度に係る情報
のうちの少なくとも1つとなっている。
【0048】
ここで心理特性・状態推定部112は本実施形態において、端末ログ情報保存部104に保存されている被面接者におけるPCやスマートフォン等の使用ログや、生理的情報保存部105に保存されている被面接者の生理的情報を取り出し、これから「心理状態情報」を推定する。具体的には、正解の心理状態情報が紐づけられた(ラベルされた)使用ログ及び/又は生理的情報を学習データとして訓練された(例えばニューラルネットワークで構築された)心理状態推定モデルに対し、被面接者の(面接前の所定時間区間を含む意味での)面接時の使用ログ及び/又は生理的情報を入力し、この心理状態推定モデルの出力から被面接者の「心理状態情報」を推定・決定することができる。
【0049】
<発話段階進展ツリー生成手段>
同じく図1の機能ブロック図において、発話段階進展ツリー生成部111は、
(a)面接スクリプト保存部102から、心理特性及び心理状態の種別情報が紐づけられた)既存の面接スクリプト群を取得し、
(b)取得された既存の面接スクリプト群における一連の対話単位(例えば、面接者の発話とそれに対する被面接者の発話の組)から、予め設定された複数の発話段階、本実施形態ではチェンジトーク段階の各々に予め紐づけられたキーワードを抽出し、
(c)抽出されたキーワードに基づき、面接された者(当時の被面接者)の心理種別毎に、チェンジトーク段階(発話段階)の各々における対話単位の発話内容を、チェンジトーク段階(発話段階)の進展に沿って関連付けた「発話段階進展ツリー」を生成する。
【0050】
ここで本実施形態において、上記(a)の既存の面接スクリプト群は、各心理特性及び心理状態の種別について区分けして取得され、この後、心理種別(心理特性及び心理状態の種別)毎の既存の面接スクリプト群に対しキーワード抽出が実施される。その結果、心理種別(心理特性及び心理状態の種別)毎の「発話段階進展ツリー」を生成することができるのである。
【0051】
また上記(b)の抽出されるキーワードは、本実施形態において、D(Desire)段階、A(Ability)段階、R(Reason)段階、N(Need)段階、及びC(Commitment)段階(チェンジトーク段階)の各段階において、被面接者(クライエント)が面接者からの質問に対し発する可能性の高い単語として予め設定されたキーワード群の中のものとなる。具体的には、公知の(自然言語処理の)テキストマイニングの手法を用い、各対話単位の発話の中から最も出現頻度の高い単語(名詞、動詞、形容詞、形容動詞等)であって、予め設定されたキーワード群に含まれる単語を抽出し、これをキーワードとしてもよい。また本実施形態においては、抽出された各キーワードに対し「適切度」が算出される。この「適切度」は、抽出元である既存の面接スクリプト群における当該キーワードの出現率となっている。
【0052】
図2は、本発明に係る発話段階進展ツリーの一具体例を示す模式図である。
【0053】
本具体例において、図2(A)には、心理種別:「パーソナリティ:***,自己効力感:高」における発話段階進展ツリーが示されている。また図2(B)には、心理種別:「パーソナリティ:***,自己効力感:低」における発話段階進展ツリーが示されている。
【0054】
いずれの発話段階進展ツリーにおいても、一連の対話単位について抽出されたキーワードが示す「面接者の発話の概要」が、対応する(紐づけられた)発話段階(D、A、R、N及びCの各段階)に配置されている。またさらに、各発話段階に配置された「面接者の発話の概要」(に係るキーワード)は、適切度(出現率)pを添えた有向矢印で結ばれている。ここで、1つの発話段階の「面接者の発話の概要」(に係るキーワード)と有向矢印で結ばれている次の発話段階の「面接者の発話の概要」(に係るキーワード)は、矢印元の「面接者の発話の概要」が生じた後、当該矢印に付された適切度(出現率)pをもって生じるものとなっている。
【0055】
具体的に、図2(A)の発話段階進展ツリーによれば、「パーソナリティ:***,自己効力感:高」である被面接者については、「やる気がでない」状態から出発して、D段階:「改善したい」→A段階:「自力で改善する」→R段階:「生産性を向上させたい」→N段階:「生産性が落ちてしまう」→C段階:「直ちに改善する」といったように動機づけ面接の進展していく可能性が最も高く、またこれに沿った面接を行うことが、無理なくC段階:「直ちに改善する」に至るやり方として好適となっているのである。
【0056】
一方、図2(B)の発話段階進展ツリーによれば、「パーソナリティ:***,自己効力感:低」である被面接者については、同じく「やる気がでない」状態から出発して、D段階:「どうすればよいかわからない」→A段階:「助けがほしい」→R段階:「評価されたい」→N段階:「収入が減ってしまう」→C段階:「直ちに改善する」といったように動機づけ面接の進展していく可能性が最も高く、またこれに沿った面接を行うことが、無理なくC段階:「直ちに改善する」に至るやり方として好適となっているのである。
【0057】
<面接戦略決定手段>
図1の機能ブロック図に戻って、面接戦略決定部113は、「心理種別・面接戦略対応テーブル」を用いて、取得された被面接者の心理種別情報(本実施形態では心理特性情報及び心理状態情報)から、面接に使用する面接戦略(本実施形態では、動機づけ戦略及び説得戦略)を決定する。ちなみに、このように決定される面接戦略をプライム面接戦略と呼ぶこともある。
【0058】
ここで「心理種別・面接戦略対応テーブル」は、各心理種別(心理特性及び心理状態の種別)に複数の面接戦略(動機づけ戦略及び説得戦略)のうちの少なくとも1つを予め対応付けた対応表となっている。この対応付け作業は、臨床心理学の知見や現場での経験に基づき行ってもよい。また、過去の動機づけ面接の成果情報、すなわち各心理種別の被面接者に対し奏功した面接戦略の種別に係る情報(例えば心理種別と奏功した面接戦略種別との相関関係情報)を利用して、心理種別・面接戦略対応テーブルを作成することもできる。
【0059】
面接戦略決定部113は、このような心理種別・面接戦略対応テーブルを用い、例えば(あくまで例であるが)外向性が高く且つ自己効力感が高い被面接者に対し、「是認」の動機づけ戦略及び「社会的証明」の説得戦略を提示することになるのである。なお、面接戦略(動機づけ戦略及び説得戦略)は、被面接者の1つの心理種別情報(心理特性情報及び心理状態情報)に対し、各発話段階(DARN-Cの各段階)について個別に決定されることも好ましい。
【0060】
<面接者発話選択手段>
同じく図1の機能ブロック図において、面接者発話選択部114は、面接スクリプト保存部102から検索された「面接した者(当時の面接者)の発話」群であって、各心理種別(心理特性及び心理状態の種別)について面接戦略(動機づけ戦略及び説得戦略)の種別毎に区分けされた「面接した者の発話」群から、
(a)キーワード抽出部111aで抽出されたキーワードが、自ら属する対話単位に含まれており(勿論、キーワードを自ら含んでいるものも該当する)、且つ
(b)被面接者について決定された心理種別情報(心理特性情報及び心理状態情報)、及び決定された面接戦略(動機づけ戦略及び説得戦略)に対応する
との条件を満たす「面接した者の発話」を選択する。なお、面接戦略(動機づけ戦略及び説得戦略)が各発話段階(DARN-Cの各段階)について個別に決定されている場合、発話段階毎に、対応する「面接した者の発話」を選択することも好ましい。
【0061】
ここで上述したように、面接スクリプト保存部102に保存された個々の面接スクリプトには、面接された者(当時の被面接者)の心理種別情報(心理特性情報及び心理状態情報)が紐づけられており、また、保存された個々の面接スクリプトにおける面接した者(当時の面接者)の発話に対し、(当時)用いられた面接戦略(動機づけ戦略及び説得戦略)に係る種別情報が紐づけられている。これにより、面接者発話選択部114は、上述したような選択処理によって「面接した者の発話」のサブデータベースを作成することができるのである。
【0062】
<面接スクリプト生成手段>
同じく図1の機能ブロック図において、面接スクリプト生成部115は、
(a)面接者発話選択部114で選択された「面接した者の発話」を「面接者の発話」とし、
(b)発話段階進展ツリー生成部111で生成された発話段階進展ツリーのうち、被面接者の心理種別情報(心理特性情報及び心理状態情報)に対応したものを選択し、
(c)上記(a)の「面接者の発話」を、上記(b)の選択された発話段階進展ツリーと合わせ、面接者と被面接者との動機づけ面接に用いる(この被面接者に特化された又はパーソナライズされた)「面接スクリプト」を生成する。
【0063】
ここで「面接者の発話」(面接した者の発話)は、各発話段階(DARN-Cの各段階)について個別に決定されており、上記(c)において、選択された発話段階進展ツリーにおける、対応する発話段階に配置されることも好ましい。
【0064】
図3は、本発明に係る面接スクリプトの一具体例を示す模式図である。なお本具体例において、被面接者の心理種別情報は「パーソナリティ:***,自己効力感:高」であって、これにより、使用された発話段階進展ツリーは図2(A)に示されたものとなっている。
【0065】
図3によれば、被面接者におけるA段階での「自力で改善する」旨の発話に対し、
・「立派ですね(是認)。実はあなたと同じ悩みを抱く方が結構多いですよ(社会的証明)。どうして改善したいのですか?(ここはR段階に向けて予め用意されたテンプレートであってもよい)」
との面接者の発話が紐づけられている。この面接者の発話により、被面接者における次のR段階での「生産性を向上させたい」旨の発話を引き出せる可能性が高まるのである。
【0066】
また、被面接者におけるR段階での「生産性を向上させたい」旨の発話に対しては、
・「生産性向上って、具体的に何を指しますか(聞き返し)?変化を求めるのはいろいろ大変だろうと思いますが(好意)、逆にいまのままだと不自由がありますか?(ここはN段階に向けて予め用意されたテンプレートであってもよい)」
との面接者の発話が紐づけられている。この面接者の発話により、被面接者における次のN段階での「生産性が落ちてしまう」旨の発話を引き出せる可能性が高まるのである。
【0067】
さらに、被面接者におけるN段階での「生産性が落ちてしまう」旨の発話に対し、
・「やはり生産性のことが気になるんですね(是認)。実は改善するためのコツがありますよ。多くの方が有効だといってますよ(社会的証明)。試してみませんか?(ここはC段階に向けて予め用意されたテンプレートであってもよい)」
との面接者の発話が紐づけられている。この面接者の発話により、最終的に被面接者における最後のC段階での「直ちに改善する」旨の発話を引き出せる可能性が高まるのである。
【0068】
以上説明したように、図3に示した面接スクリプト(面接者の発話と被面接者の発話(の概要)との複数の組)は、動機づけ面接を行うに当たり、上記の心理種別を有する被面接者にとって好適なものとなっているのである。ちなみに、このような面接スクリプトによって、動機づけ面接の効果の向上(被面接者の動機付け水準の向上や心身の健康の向上等)が期待されるだけでなく、面接者の負担を軽減することも可能となるのである。
【0069】
図1の機能ブロック図に戻って、面接スクリプト生成部115で生成された面接スクリプトは、通信制御部121及び通信インタフェース部101を介して外部の情報処理装置へ送信され、そこで利用されてもよい。例えば動機づけ面接を行うチャットボット用に使用されてもよく、または、人間の面接者が、被面接者と対面で若しくはウェブ等による遠隔で動機づけ面接を行う際の補助・支援手段として利用することも可能である。また、この生成された面接スクリプトは、入出力制御部122を介してユーザインタフェース部106に送られ、ユーザインタフェース部106の表示部に表示され、装置1のユーザによって使用されてもよい。
【0070】
以上詳細に説明したように、本発明において、発話段階進展ツリーは、発話段階の進展に沿って且つ心理種別毎に、発話内容を関連付けた情報となっており、また、このツリーに合わせて選択された「面接した者の発話」も、被面接者の心理種別情報に対応するものが選択される。このように本発明によれば、被面接者の心理種別も考慮した動機づけ面接を可能にする面接スクリプトを、臨床心理学的知見に基づいて生成することができるのである。
【0071】
また、例えば世界中の子供達に対し質の高い優れた教育を提供するに当たり、子供達に対する勉強への動機づけが非常に重要となるが、このような動機づけは、個々の性格に合ったやり方で行わねばならない。この点、本発明により子供達に対する面接スクリプトを生成し活用することによって、子供達が自発的にやる気を出し、その結果、質の高い優れた教育を享受することも可能となる。すなわち本発明によれば、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標4「すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」に貢献することも可能となるのである。
【0072】
さらに、世界中の大人達に対しディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を提供するに当たり、大人達に対する仕事への動機づけを如何に行うかも非常に重要な課題となっている。この点、本発明により大人達に対する面接スクリプトを生成し活用することによって、大人達が自発的にやる気を出し、その結果、自らに合ったディーセント・ワークを獲得することも可能となる。すなわち本発明によれば、国連が主導するSDGsの目標8「すべての人々のための包摂的かつ持続可能な経済成長、雇用およびディーセント・ワークを推進する」に貢献することも可能となるのである。
【0073】
上述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。上述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0074】
1 面接スクリプト生成装置
101 通信インタフェース部
102 面接スクリプト保存部
103 心理特性情報保存部
104 端末ログ情報保存部
105 生理的情報保存部
106 ユーザインタフェース部
111 発話段階進展ツリー生成部
111a キーワード抽出部
112 心理特性・状態推定部
113 面接戦略決定部
114 面接者発話選択部
115 面接スクリプト生成部
116 面接戦略ラベリング部
121 通信制御部
122 入出力制御部
図1
図2
図3