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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149007
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ウエアラブルデバイス
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
H04R1/10 103
H04R1/10 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057318
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】藤田 修二
(72)【発明者】
【氏名】大谷 真也
(72)【発明者】
【氏名】若菜 和仁
(72)【発明者】
【氏名】今村 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】京泉 朋希
(72)【発明者】
【氏名】高木 和貴
(72)【発明者】
【氏名】福島 哲治
(72)【発明者】
【氏名】井上 幸人
(72)【発明者】
【氏名】武井 智哉
【テーマコード(参考)】
5D005
【Fターム(参考)】
5D005BB01
5D005BD15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】締め付け度合いを電子制御で調整可能なウエアラブルデバイスを提供する。
【解決手段】ウエアラブルデバイスは、長手方向に沿って湾曲しており、且つ、その湾曲度合いが可変の枠体23及び夫々が枠体に長手方向に沿って支持され、且つ、枠体の短手方向に沿って複数本配列され、通電により第1温度以上の温度になると長さが短くなる形状記憶合金製の第1ワイヤ24を有するアクチュエータ22と、第1情報を受け取り、第1情報に基づいて第1ワイヤへの通電を制御可能であり、これにより枠体の湾曲度合いを調整可能な制御部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って湾曲しており且つその湾曲度合いが可変の枠体と、
それぞれは前記枠体に長手方向に沿って支持され且つ前記枠体の短手方向に沿って複数本配列され、通電により第1温度以上の温度になると長さが短くなる形状記憶合金製の第1ワイヤと、
第1情報を受け取り、前記第1情報に基づいて前記第1ワイヤへの通電を制御可能であり、これにより前記枠体の湾曲度合いを調整可能な制御部と、
を備えたウエアラブルデバイス。
【請求項2】
前記枠体の長手方向の一方の端部寄りに固定されたロック機構と、
前記枠体に長手方向に沿って支持され、一端側が前記ロック機構に固定された固定状態及び固定されていない非固定状態の一方に切り替え可能であり、他端側が前記枠体の長手方向の他方の端部寄りに固定された、第2ワイヤと、を備え、
前記制御部は、前記ロック機構による前記第2ワイヤの前記固定状態と前記非固定状態とを制御し、
前記制御部は、前記第2ワイヤが前記非固定状態である間に前記第1ワイヤを通電し、前記枠体の湾曲度合いの調整が終了したら前記ロック機構により前記第2ワイヤを前記非固定状態にし、前記第1ワイヤへの通電を遮断する、請求項1に記載のウエアラブルデバイス。
【請求項3】
前記枠体には、長手方向に沿って支持体が等間隔に複数設けられていて、
前記第1ワイヤは、前記枠体と前記支持体が有する円柱部材との間に通されている、請求項1に記載のウエアラブルデバイス。
【請求項4】
前記枠体は、長手方向に沿って同じ方向に湾曲した第1枠体と第2枠体とを含み、
前記第1枠体には第1支持体が等間隔に複数設けられていて、前記第2枠体には第2支持体が等間隔に複数設けられていて、
前記第1ワイヤは、前記第1支持体と前記第2支持体とにより交互に支持されている、請求項1に記載のウエアラブルデバイス。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1情報に基づいて、複数本の前記第1ワイヤのうち通電させる前記第1ワイヤの本数を決定する、請求項1に記載のウエアラブルデバイス。
【請求項6】
センサを備え、
前記第1情報は前記センサの検出結果を示す、請求項1に記載のウエアラブルデバイス。
【請求項7】
前記センサは、当該ウエアラブルデバイスの被装着者のバイタルを検出可能なバイタルセンサである、請求項6に記載のウエアラブルデバイス。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1情報に基づいて前記被装着者の快適度合いを判定し、判定した結果に基づいて、通電させる前記第1ワイヤの本数を決定する、請求項7に記載のウエアラブルデバイス。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1情報に基づいて前記被装着者の疲労度合いを判定し、判定した結果に基づいて、通電させる前記第1ワイヤの本数を決定する、請求項7に記載のウエアラブルデバイス。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1情報に基づき、前記センサの前記検出結果に対するノイズの大きさを判定し、前記ノイズの大きさに基づき、通電させる前記第1ワイヤの本数を決定する、請求項7に記載のウエアラブルデバイス。
【請求項11】
前記センサはジャイロセンサである、請求項6に記載のウエアラブルデバイス。
【請求項12】
前記センサは面圧センサである、請求項6に記載のウエアラブルデバイス。
【請求項13】
当該ウエアラブルデバイスは、頭部装着ウエアラブルデバイスである、請求項1に記載のウエアラブルデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術(本開示に係る技術)は、ウエアラブルデバイスに関し、特に、締め付け度合いが可変なウエアラブルデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一対のスピーカユニットをヘッドバンドで連結したヘッドホンにおいて、ヘッドバンドの端部の近傍に、円弧形状をなすように形状が記憶された形状記憶合金からなるスタビライザーが装着されている場合があった(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-290621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のスタビライザーは、円弧形状を維持するための板状の構造支持体として使用されていて、それ自体が駆動されている訳ではなかった。本技術は、締め付け度合いを電子制御で調整可能なウエアラブルデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本技術の一態様に係るウエアラブルデバイスは、長手方向に沿って湾曲しており且つその湾曲度合いが可変の枠体と、それぞれは上記枠体に長手方向に沿って支持され且つ上記枠体の短手方向に沿って複数本配列され、通電により第1温度以上の温度になると長さが短くなる形状記憶合金製の第1ワイヤと、第1情報を受け取り、上記第1情報に基づいて上記第1ワイヤへの通電を制御可能であり、これにより上記枠体の湾曲度合いを調整可能な制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係るヘッドホンの構成を示す正面図である。
図2】第1実施形態に係るヘッドホンが有するアクチュエータの構成を示す斜視図である。
図3】頭部側から観察した第1実施形態に係るヘッドホンが有するアクチュエータの一部の構成を拡大して示す斜視図である。
図4】第1実施形態に係るヘッドホンが有するアクチュエータの一部の構成を示す側面図である。
図5】第1実施形態に係るヘッドホンが有するロック機構の断面構成を示す縦断面である。
図6】第1実施形態に係るヘッドホンと端末との、全体的な機能構成を示す説明図である。
図7】通電された第1ワイヤの本数と生成された圧力との関係を示す図である。
図8】第1実施形態に係るヘッドホンが有する制御部の制御フローを示すフローチャートである。
図9】第2実施形態に係るヘッドホンの構成を示す正面図である。
図10】第2実施形態に係るヘッドホンの機能構成を示すブロック図である。
図11】第2実施形態に係るヘッドホンが有するイヤパッドを頭部側から観察した側面図である。
図12】第2実施形態に係るヘッドホンが有する制御部の制御フローを示すフローチャートである。
図13】第2実施形態の変形例1に係るヘッドホンが有する制御部の制御フローを示すフローチャートである。
図14】第3実施形態に係るヘッドホンが有するアクチュエータの構成を示す斜視図である。
図15】第3実施形態に係るヘッドホンが有するアクチュエータの一部の構成を示す側面図である。
図16】第4実施形態に係るヘッドホンが有するアクチュエータの第1ワイヤの構成を示す説明図である。
図17】本技術のアクチュエータをヘッドマウントディスプレイに用いた例を表す模式図である。
図18】本技術のアクチュエータをヘッドバンドに用いた例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本技術を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0008】
以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0009】
また、以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
説明は以下の順序で行う。
1.第1実施形態
2.第2実施形態
3.第3実施形態
4.第4実施形態
【0011】
[第1実施形態]
この実施形態では、頭部装着ウエアラブルデバイスに本技術を適用した一例について説明する。頭部装着ウエアラブルデバイスは、例えば、ヘッドホンやゴーグルのように被装着者の頭部に装着するデバイスである。本実施形態では、ヘッドホンを例に説明する。なお、本技術を適用できるウエアラブルデバイスは、頭部に装着されるウエアラブルデバイスには限定されず、例えば、手、手首、足、足首、腰部、及び胸部など、頭部以外の生体の一部に装着するウエアラブルデバイスにも適応することができる。
【0012】
≪ヘッドホンの全体構成≫
図1に示すように、ヘッドホン1は、ヘッドバンド2と、ヘッドバンド2の両端に支持された右耳用のヘッドホンユニット3aおよび左耳用のヘッドホンユニット3bを備える。以下、右耳用のヘッドホンユニット3aと左耳用のヘッドホンユニット3bとを特に区別しない場合には、単にヘッドホンユニット3と呼ぶこともある。
【0013】
<ヘッドホンユニット>
ヘッドホンユニット3は、ハウジング31と、ハウジング31内に収容された図示しないスピーカと、イヤパッド32と、を有している。スピーカは、振動を発生する振動子を有し、ヘッドホン1に入力される音声信号に応じて振動子を駆動することができる。ヘッドホン1は、後述の無線通信部28aを有し、外部から無線送信される音声信号を受信して再生することができる。また、ヘッドホン1は、ケーブルを差し込まれて、ケーブル経由で音声信号を受信して再生することもできる。イヤパッド32は、ヘッドホンユニット3aとヘッドホンユニット3bとで互いに対向するように、ハウジング31に設けられている。イヤパッド32は、これには限定されないが、例えば、ウレタンなどの柔軟性を有する素材とそれを被覆する合成皮革などにより構成されていて、気密性および柔軟性を有する。
【0014】
<ヘッドバンド及びアクチュエータ>
図1に示すように、ヘッドバンド2は、ケーシング21と、ケーシング21内に収容されたアクチュエータ22とを有している。アクチュエータ22は、長手方向に沿って湾曲しており、矢印Aに沿って、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する機能を有している。ヘッドバンド2の湾曲度合い(締め付け度合い)は、アクチュエータ22の湾曲度合いを変えることにより、変えることができる。図2及び図5に示すように、アクチュエータ22は、枠体23と、第1ワイヤ24と、支持体25と、ロック機構26と、第2ワイヤ27とを有している。
【0015】
<枠体>
図2に示すように、枠体23は、金属製の平板を打ち抜いて形成されている。枠体23の中央部には、長手方向に沿って長尺の開口部23aが打ち抜かれている。そして、開口部23aの長手方向の内側面には、切り欠き部23bが長手方向に沿って等間隔に複数対設けられている。開口部23aの長手方向に沿った両隣には、第1ワイヤ24及び第2ワイヤ27を引き出すための開口部23cが打ち抜かれている。枠体23のうち開口部23c周辺の部分を、端部23d及び端部23eと呼ぶ。端部23d及び端部23eは、枠体23の長手方向に沿った一方及び他方の端部である。
【0016】
枠体23は、長手方向に沿って湾曲しており且つその湾曲度合いが可変である。枠体23は湾曲方向に弾力性を有し、その湾曲度合いを第1ワイヤ24により調整することが可能である。枠体23を構成する金属としては、例えば、ステンレス及び鉄等を挙げることができる。本実施形態では、枠体23がステンレス製であるとして、説明する。
【0017】
<支持体>
図2図3図4に示すように、第1ワイヤ24は、支持体25を介して枠体23に支持されている。支持体25は、第1ワイヤ24を内側から支持する円柱部材25aと、円柱部材25aを枠体23から一定距離離れた位置に保持するスペーサ25bと、スペーサ25bを円柱部材25aに固定するネジ25cと、円柱部材25aを枠体23に固定する支持板25dと、を有している。
【0018】
円柱部材25aは、枠体23の頭部側(内周側)に設けられている。円柱部材25aは、絶縁材料製の円柱状の部材であり、その周面で第1ワイヤ24及び第2ワイヤ27を支持している。より具体的には、円柱部材25aは、周面のうち枠体23に近い部分で第1ワイヤ24及び第2ワイヤ27を支持している。円柱部材25aを構成する絶縁材料としては、例えば、ベークライト、プラスチック等の樹脂、セラミック等を挙げることができる。本実施形態では、円柱部材25aがベークライト製であるとして、説明する。
【0019】
スペーサ25bは、枠体23から離れる方向に長手方向が延在している。そして、スペーサ25bの長手方向の端部のうち、枠体23から遠い方の端部寄りの位置に、円柱部材25aの端部がネジ25cにより固定されている。一の支持体25は、スペーサ25bを2つ有し、2つのスペーサ25bは、円柱部材25aの一方及び他方の端部に固定されている。スペーサ25bにより、円柱部材25aを枠体23と間隔を空けた位置に設けることができる。それにより、第1ワイヤ24及び第2ワイヤ27が枠体23と間隔を空けた位置に支持されている。スペーサ25bは、絶縁材料製である。スペーサ25bを構成する絶縁材料としては、例えば、ベークライト等の樹脂を挙げることができる。本実施形態では、スペーサ25bがベークライト製であるとして、説明する。
【0020】
支持板25dは、円柱部材25aを枠体23に取り付けるために設けられている。支持板25dの上部は、一対の切り欠き部23bに頭部側とは反対側からはめ込まれて固定されている。支持板25dの上部の幅は、対となる切り欠き部23b同士の間の距離より大きく設けられている。円柱部材25aの周面うちの枠体23とは反対側に位置する部分は、支持板25dの下部により支持されている。円柱部材25aのこの部分は、第1ワイヤ24及び第2ワイヤ27を支持しない部分であるので、支持板25dにより覆われていても構わない。支持板25dのうち上部と下部との間に位置する中間部には、第1ワイヤ24及び第2ワイヤ27を通し且つ円柱部材25aの第1ワイヤ24及び第2ワイヤ27を支持する部分を露出させるための開口が設けられている。このような構成により、第1ワイヤ24及び第2ワイヤ27は支持板25dに接触することが抑制されている。また、支持板25dの中間部は、スペーサ25bと同様に、円柱部材25aを枠体23から一定距離離れた位置に保持する機能を有する。より具体的には、支持板25dの中間部は、円柱部材25aから枠体23に向けて延在し、この延在した部分の長さにより、円柱部材25aを枠体23から一定距離離れた位置に保持している。支持板25dは、金属製である。支持板25dを構成する金属としては、例えば、ステンレス及び鉄等を挙げることができる。本実施形態では、支持板25dがステンレス製であるとして、説明する。
【0021】
<第1ワイヤ>
図2から図4までに示すように、第1ワイヤ24は、枠体23に枠体23の長手方向に沿って支持されている。第1ワイヤ24は、枠体23に等間隔に設けられた複数の支持体25により支持されている。より具体的には、第1ワイヤ24は、枠体23と円柱部材25aとの間に通されていて、円柱部材25aのうちの枠体23側の周面により支持されている。すなわち、第1ワイヤ24は、枠体23より頭部側に配置されている。第1ワイヤ24は、複数本設けられている。複数本の第1ワイヤ24は、枠体23の短手方向に沿って、間隔を空けて配列されている。図6に示すように、本実施形態では、第1ワイヤ24a,24b,24c,24d,24eの5本の第1ワイヤを有する例について説明する。なお、第1ワイヤ24a,24b,24c,24d,24eを互いに区別しない場合、単に第1ワイヤ24と呼ぶ。また、第1ワイヤ24の本数は5本には限定されず、4本以下又は6本以上であっても良い。
【0022】
図2に示すように、第1ワイヤ24の両端は、開口部23cを通されて、枠体23の頭部側とは反対側に引き出されている。第1ワイヤ24の図2の左側の端部は枠体23の端部23d側に固定されていて、図2の右側の端部は端部23e側に固定されている。第1ワイヤ24は、端部23dと端部23eとの間において、緩んだ状態ではなく一定の張力を有した状態で固定されている。これには限定されないが、例えば、第1ワイヤ24は、その一端がコイルスプリングのような部材を介して端部23dに固定され、その他端がウォームギヤのような部材を介して端部23eに固定されていて、これらの部材により第1ワイヤ24を引っ張ることにより、上述の張力を得ても良い。
【0023】
第1ワイヤ24は、通電により第1温度以上の温度になると長さが短くなる形状記憶合金製のワイヤである。この第1温度とは、例えば、形状記憶合金を構成する材料に固有の相転移温度である。形状記憶合金としては、これには限定されないが、例えば、ニッケルチタン(NiTi)及びニッケルチタンカッパー(NiTiCu)を挙げることができる。
【0024】
本実施形態では、第1ワイヤ24は、第1温度より低い温度では第1の長さを有し、第1温度以上の温度では第1の長さより短い第2の長さを有しているとして、説明する。第1ワイヤ24は、第1温度より低い温度において、テンションを有する状態で枠体23に支持されている。この状態から、通電により第1ワイヤ24の温度を第1温度以上の温度まで上昇させると、第1ワイヤ24が第1の長さから第2の長さに変化する。そして、第1ワイヤ24が第1の長さから第2の長さに変化して枠体23の端部23dと端部23eとを近づくように引き寄せることにより、枠体23の湾曲度合いが大きくなる。これにより、図1に示す矢印Aに沿って、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力が生じる。
【0025】
また、アクチュエータ22が備えた複数本の第1ワイヤ24のうち、通電する第1ワイヤ24の本数を変えることにより、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力を変えることができる。例えば、図7に示すように、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力(片側のヘッドホンユニット3の圧力(gf))は、通電する第1ワイヤ24の本数に応じてステップ状に変化する。ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力は、通電する第1ワイヤ24の本数を増やすことにより図1の矢印Aに沿って多段階に強めることができ、通電する第1ワイヤ24の本数を減らすことにより矢印Bに沿って多段階に弱めることができる。
【0026】
備えた第1ワイヤ24の本数が多ければ多い程、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力の上限値が大きくなる。また、第1ワイヤ24の径を細くすることにより、通電が遮断された後に、第1ワイヤ24の温度が第1温度以上の温度から第1温度以下の温度に戻るまでに要する時間が短くなる。これにより、枠体23の湾曲度合いの制御の反応性を高めることができる。例えば、被装着者が圧力を上げる操作を行ったが、その圧力が強すぎたため少し圧力を下げたい場合を考える。第1ワイヤ24の径を細くすることにより、放熱して温度が下がるまでの時間を短くできるので、圧力を下げるまでに要する時間を短くすることができる。また、第1ワイヤ24の径を細くし且つより多くの本数でアレイ化することにより、ステップの一段の大きさを低くすることができ、圧力のより緻密な制御が可能となる。
【0027】
<ロック機構及び第2ワイヤ>
ロック機構26は、第1ワイヤ24へ通電し続けることなく枠体23の湾曲度合いを保つために設けられている。第1ワイヤ24は、通電により温度が上昇して第2の長さになるが、通電を遮断すると温度が下がり、第2の長さから第1の長さに戻ってしまう。そうすると、枠体23の湾曲度合いも通電前の状態に戻ってしまう。そこで、ロック機構26を用いて、通電時の枠体23の湾曲度合いが元に戻らないようにしている。ロック機構26は、第2ワイヤ27を固定状態及び非固定状態の一方に切り替えることにより、通電時の枠体23の湾曲度合いが元に戻らないようにしている。また、ロック機構26は、ネジ26h等により枠体23の端部23dに固定されている。また、ロック機構26を構成する部材のうち、第2スプリング26fに接する部材はベークライト等の導電性を有さない樹脂により構成されている。
【0028】
図5に示すように、ロック機構26として、この実施形態では、筆記具であるシャープペンシルに採用されている芯の長さを調整する公知の機構と同じ構造を用いている。具体的には、ロック機構26は、大径部26a1と、テーパ部26a2と、小径部26a3とをこの順に連結してなる本体26aを有し、本体26aの中心には全体を貫く貫通孔26a4が形成されている。貫通孔26a4内には、第2ワイヤ27が通されている。
【0029】
大径部26a1及びテーパ部26a2は、周方向に等間隔に三分割されている。テーパ部26a2は、小径部26a3に接続されている。
【0030】
小径部26a3は細長い円筒状で、その先端部には雄ねじが形成されていて、その雄ねじには二つのナット26bが嵌められている。二つのナット26bは互いに相手を押すように雄ねじに嵌められていて、これにより二つのナット26bの軸方向位置が容易に動かないようになっている。
【0031】
ナット26bの大径部26a1側の端面にはワッシャ26cが接している。テーパ部26a2のナット26b側には、小径部26a3の大径部26a1寄りの部分を包囲する円筒形の可動部26dが、第2ワイヤ27の長手方向に沿って移動可能に配設されている。
【0032】
可動部26dは、その中央部に比べて両端部が小径部となっていて、大径部26a1側の端部にはコイルスプリングである第1スプリング26eの一端側が嵌まり込み、第1スプリング26eの他端側はテーパ部26a2を包囲しつつ大径部26a1の表面に突き当たっている。
【0033】
可動部26dのナット26b側の端部には、コイルスプリングである第2スプリング26fの一端側が嵌まり込み、第2スプリング26fの他端側はワッシャ26cの表面に突き当たっている。
【0034】
第1スプリング26e及び第2スプリング26fは、いずれも無負荷状態よりも縮めた状態でそれぞれの配置箇所に設置されている。従って、可動部26dの第2ワイヤ27の長手方向に対する位置は、第1スプリング26eと第2スプリング26fとの押圧方向の弾性力が釣り合った位置となるようになっている。なお、第2スプリング26fの内側には、第2スプリング26fの形状が歪まないようにガイドする小円筒部材26gが配されている。
【0035】
第1スプリング26eは、バネ定数が一定の通常のコイルスプリングであって、例えば、ステンレス製のワイヤを利用したコイルスプリングが適用される。
【0036】
一方、第2スプリング26fは、形状記憶合金製のワイヤを利用したコイルスプリングであって、室温におけるコイル長よりも、通電されて第1温度以上になるとコイル長が短くなるように構成されている。なお、本実施形態では、第2スプリング26fを構成する材料は、上述の第1ワイヤ24を構成する材料と同じであるとして説明するが、異なる材料であっても良い。
【0037】
第2ワイヤ27は、第1ワイヤ24と同様に、支持体25を介して枠体23に支持されている。第2ワイヤ27の両端は、開口部23cを通されて、枠体23の頭部側とは反対側に引き出されている。第2ワイヤ27の図2の左側の端部(一端側)は本体26aの貫通孔26a4に通されていて、図2の右側の端部(他端側)は枠体23の端部23e側に固定されている。なお、第2ワイヤ27の図2の右側の端部(他端側)は、コイルスプリング等の部材を介して枠体23の端部23e側に固定されていても良い。第2ワイヤ27は、非固定状態において貫通孔26a4内を移動可能であり、固定状態において大径部26a1及びテーパ部26a2に挟持され、貫通孔26a4内を移動できない。第2ワイヤ27は、非固定状態において貫通孔26a4内を移動し易いように、その表面ラフネスが小さく調整されていても良い。第2ワイヤ27は、これには限定されないが、例えば、高分子樹脂(アクリル、ナイロン等)、天然素材の繊維等により構成されていても良い。第2ワイヤ27は形状記憶合金製ではないので、第1温度を境にその長さが変化したとしても僅かである。
【0038】
以下、第2ワイヤ27の固定状態及び非固定状態の切り替えについて、説明する。図5は、通電により第2スプリング26fの温度が上がり、コイル長が短くなっている状態を示している。第2スプリング26fのコイル長が短くなると、可動部26dとテーパ部26a2とが互いに離れ、可動部26dのテーパ面26d1とテーパ部26a2とが互いに離れ、大径部26a1及びテーパ部26a2による第2ワイヤ27の挟持が緩むので、第2ワイヤ27が非固定状態になる。この状態から、通電を遮断すると、第2スプリング26fの温度が下がり、コイル長が長くなる。第2スプリング26fのコイル長が長くなると、可動部26dとテーパ部26a2とが互いに近づき、可動部26dのテーパ面26d1とテーパ部26a2とが突き当たり、大径部26a1及びテーパ部26a2が第2ワイヤ27を挟持するので、第2ワイヤ27が固定状態になる。
【0039】
≪ヘッドホンの電気的構成≫
ヘッドホン1のアクチュエータ22は、電子制御されている。図6に示すように、ヘッドホン1は、制御部28と、駆動部29と、電源Vと、メモリMと、を有している。制御部28は、端末Pから第1情報を受け取る。
【0040】
<制御部>
制御部28は制御機能であり、これには限定されないが、例えば、マイコン(マイクロコントローラ)、プロセッサのようなコントローラにより実現されている。制御部28は、無線通信部28aを有している。制御部28は、無線通信部28aによる無線通信を介して端末Pから第1情報を受け取り、受け取った第1情報に基づいて第1ワイヤ24への通電を制御する機能を有し、これにより枠体23の湾曲度合いを調整する。より具体的には、制御部28は、第1情報に基づいて駆動部29を制御することにより、第1ワイヤ24への通電を制御する機能を有している。第1情報は、端末Pが受け付けた、圧力変更の目標値を示す情報である。この圧力変更の目標値を、第1圧力と呼ぶ。制御部28は、受け取った第1情報に基づいて、備えた第1ワイヤ24のうち通電すべき第1ワイヤ24の本数を決定し、決定した本数の第1ワイヤ24への通電をオンとするように、駆動部29を制御する。
【0041】
ここで、図7に示すように、通電する第1ワイヤ24の本数により、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力の値が変わる。より具体的には、通電する第1ワイヤ24の本数が増えると、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力がステップ状に高くなる。また、通電する第1ワイヤ24の本数が減ると、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力がステップ状に低くなる。図6に示すメモリMは、通電された第1ワイヤ24の本数と生成された圧力との関係を記憶している。そして、制御部28は、これには限定されないが、例えば、第1情報と、通電された第1ワイヤ24の本数と生成された圧力との関係とに基づいて、通電すべき第1ワイヤ24の本数を決定する。また、制御部28は、第2スプリング26fへの通電を制御する機能を有している。すなわち、制御部28は、ロック機構26による第2ワイヤ27の固定状態と非固定状態とを制御する。
【0042】
無線通信部28aによる無線通信は、これには限定されないが、例えば、Bluetooth(登録商標)を利用した無線通信であるが、これ以外の公知の通信技術を利用しても良い。また、制御部28は、無線通信ではなく、有線通信により第1情報を受け取る構成であっても良い。
【0043】
<端末>
端末Pは、これには限定されないが、例えば、スマートフォン、音楽プレイヤー等の端末である。また、端末Pは、これには限定されないが、例えば、携帯可能な端末である。端末Pは、例えばタッチパネルにより構成された画像表示部P1を有している。画像表示部P1には、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力を調整する圧力入力画面P2が表示されている。圧力入力画面P2はスライドバーを表示しており、スライドバーが操作されることにより、圧力変更の入力を受け付ける。なお、スライドバーの操作後の位置は、圧力変更の目標値(第1圧力)を示している。スライドバーが圧力変更の入力を受け付けると、端末Pは、第1圧力を示す情報を第1情報として無線通信により送信する。そして、制御部28は、端末Pが送信した第1情報を受け取る。なお、図6に示す圧力入力画面P2は圧力入力画面の一例であり、これ以外にも、数字で圧力を入力する構成、“+”ボタン及び“-”ボタンで圧力を入力する構成などであっても良い。または、端末Pに物理的に設けられたボタンで圧力を入力する構成であっても良い。また、端末Pの画像表示部P1には、圧力入力画面P2以外にも、楽曲選択画面P3、音量入力画面P4等が表示されていても良い。
【0044】
<駆動部>
駆動部29は、ロック機構駆動部29aと、第1ワイヤ駆動部29bとを有している。ロック機構駆動部29aは、図5に示す電源Vと第2スプリング26fとを接続する電気回路26jの一部として設けられたスイッチである。ロック機構駆動部29aは、オンすることにより電源Vと第2スプリング26fとを導通させて、第2スプリング26fを通電する。また、ロック機構駆動部29aは、オフすることにより電源Vと第2スプリング26fとの導通を切断し、第2スプリング26fへの通電を遮断する。すなわち、ロック機構駆動部29aがオンになると第2スプリング26fへの通電が開始され、フになると第2スプリング26fへの通電が遮断される。そして、図6に示すように、ロック機構駆動部29aのオン、オフは、制御部28により制御されている。
【0045】
第1ワイヤ駆動部29bは、電源Vと第1ワイヤ24とを接続する図示しない電気回路の一部として設けられたスイッチである。第1ワイヤ駆動部29bは、オンすることにより電源Vと第1ワイヤ24とを導通させて、第1ワイヤ24を通電する。また、第1ワイヤ駆動部29bは、オフすることにより電源Vと第1ワイヤ24との導通を切断し、第1ワイヤ24への通電を遮断する。すなわち、第1ワイヤ駆動部29bがオンになると第1ワイヤ24への通電が開始され、フになると第1ワイヤ24への通電が遮断される。そして、第1ワイヤ駆動部29bのオン、オフは、制御部28により制御されている。
【0046】
第1ワイヤ駆動部29bは、複数本の第1ワイヤ24a,24b,24c,24d,24eに対して、通電の開始及び遮断を独立して行うことができる。第1ワイヤ駆動部29bは、例えば、第1ワイヤ24aから第1ワイヤ24eまでのうち、1本のみに通電することができるし、例えば、3本のみに通電することができる。また、例えば、第1ワイヤ駆動部29bは、第1ワイヤ24aから第1ワイヤ24eまでの全てに通電することができ、また、全てに通電しないこともできる。このような構成は、これには限定されないが、例えば、第1ワイヤ24aから第1ワイヤ24eまでのそれぞれに対してスイッチを設けることにより、実現することができる。また、第1ワイヤ24aから第1ワイヤ24eまでのうちの何本を通電するのかは、制御部28の制御による。
【0047】
<電源>
電源Vは、例えば、バッテリ、キャパシタ等で構成されている。電源Vは、ヘッドホン1に着脱可能であっても良いし、ヘッドホン1に固定されていても良い。
【0048】
<メモリ>
メモリMは、制御部28と電気的に接続されている。メモリMは、不揮発性のメモリであり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM (Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリ等で構成された記憶回路である。
【0049】
≪制御部の制御フロー≫
以下、図8に示す制御部28の制御フローについて、説明する。本実施形態では、一例として、被装着者が装着したヘッドホン1の初期状態は、ヘッドバンド2の湾曲度合いが緩い状態であったとして説明する。被装着者は、ヘッドバンド2の湾曲度合いを強めるために、端末Pの圧力入力画面P2に示されたスライドバーを、圧力を高くする方にスライドさせる。スライドバーの操作後の位置は、圧力変更の目標値(第1圧力)を示している。端末Pは、圧力入力画面P2に示されたスライドバーへの入力を検知すると、第1圧力を示す第1情報を、送信する。
【0050】
制御部28は、ステップS1において、第1情報を受け取ったか否か、監視している。受け取っていないと判定した場合(ステップS1;No)、制御部28はステップS1の処理を繰り返す。受け取ったと判定した場合(ステップS1;Yes)、処理はステップS2に移行し、制御部28は通電すべき第1ワイヤ24の本数を決定する。例えば、制御部28は、受け取った第1情報が示す圧力の値(第1圧力)と、メモリMが記憶している通電された第1ワイヤ24の本数と生成された圧力との関係と、に基づき、通電すべき第1ワイヤ24の本数を決定する。より具体的には、制御部28は、ヘッドバンド2の湾曲度合いを初期状態より強めるために、第1情報に基づき、初期状態よりも通電させる第1ワイヤ24の本数を増やす。
【0051】
その後、処理はステップS3に移行し、制御部28は、第2スプリング26fへの通電を開始する。より具体的には、制御部28は、ロック機構駆動部29aをオンにする制御を行い、第2スプリング26fへの通電を開始する。第2スプリング26fへの通電が開始されると、第2ワイヤ27が固定状態から非固定状態に切り替えられる。これにより、ヘッドバンド2の湾曲度合いが変更可能になる。
【0052】
そして、処理はステップS4に移行し、第1ワイヤ24への通電を開始する。すなわち、第2ワイヤ27が非固定状態である間に第1ワイヤ24を通電する。より具体的には、制御部28は、アクチュエータ22が備えた複数本の第1ワイヤ24のうち、ステップS1で決定された本数の第1ワイヤ24への通電を開始にする。これにより、通電された第1ワイヤ24が第1の長さから第2の長さに変化し、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力が、強くなる。このように、ヘッドバンド2の湾曲度合いを変更する。
【0053】
次に、処理はステップS5に移行し、制御部28は、第2スプリング26fへの通電を遮断する。すなわち、枠体23の湾曲度合いの調整が終了したらロック機構26により第2ワイヤ27を非固定状態にする。より具体的には、制御部28は、ロック機構駆動部29aをオフにする制御を行い、第2スプリング26fへの通電を遮断する。第2スプリング26fへの通電が遮断されると、第2ワイヤ27が非固定状態から固定状態に切り替えられる。これにより、たとえ第1ワイヤ24の長さが第1の長さに戻ってしまった場合であっても、ヘッドバンド2の湾曲度合いが変化することを抑制でき、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力が小さくなることを抑制できる。
【0054】
その後、処理はステップS6に移行し、制御部28は、第1ワイヤ24への通電を遮断する。すなわち、第2ワイヤ27を非固定状態にした状態で、第1ワイヤ24への通電を遮断する。より具体的には、制御部28は、全ての第1ワイヤ24への通電を遮断する。ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力は、第2ワイヤ27により維持されているので、第1ワイヤ24への通電を遮断しても、圧力に変化は生じない。これにより、第1ワイヤ24の消費電力を抑制できる。
【0055】
≪第1実施形態の主な効果≫
本技術の第1実施形態に係るヘッドホン1のヘッドバンド2が有するアクチュエータ22は、長手方向に沿って湾曲しており且つその湾曲度合いが可変の枠体23と、それぞれは枠体23に長手方向に沿って支持され且つ枠体23の短手方向に沿って複数本配列され、通電により第1温度以上の温度になると長さが短くなる形状記憶合金製の第1ワイヤ24と、第1情報を受け取り、第1情報に基づいて第1ワイヤ24への通電を制御可能であり、これにより枠体23の湾曲度合いを調整可能な制御部28と、を備えている。このように、ヘッドバンド2の湾曲度合いをアクチュエータ22により電子制御しているので、被装着者がヘッドホン1を装着する場合の装着感を簡単に改善できる。
【0056】
また、本技術の第1実施形態では、通電により第1温度以上の温度になると長さが短くなる形状記憶合金製の第1ワイヤ24が複数本アレイ状に配列されているので、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力を、多段階で強めたり弱めたりする調整が可能になる。これにより、被装着者がヘッドホン1を装着する場合の装着感を多段階で調整でき、被装着者の好みに応じた装着感を細やかに実現できる。
【0057】
また、本技術の第1実施形態では、第1ワイヤ24を複数本備えたアクチュエータ22の構成は、ヘッドバンド2のケーシング21内に収容可能であり、同等の力を発生させる電磁モータより省スペースである。さらには、第1実施形態に係るアクチュエータ22は、電磁モータのようにモータが回転する音を発生しないので、静かである。そのため、本技術をヘッドホン1に適用した場合、ヘッドホンのスピーカから聞こえる音を邪魔しない。
【0058】
また、本技術の第1実施形態では、端末Pの圧力入力画面P2により圧力変更の入力を受け付ける構成であるので、例えば被装着者が、容易に圧力変更の指示を行うことができる。
【0059】
なお、第1実施形態では、制御部28は、受け取った第1情報が示す第1圧力と、メモリMが記憶している通電された第1ワイヤ24の本数と生成された圧力との関係と、に基づき、通電すべき第1ワイヤ24の本数を決定していたが、本技術はこれには限定されない。例えば、圧力入力画面P2で入力可能な最大値が、全ての第1ワイヤ24を通電させる場合に対応するとし、圧力入力画面P2で入力可能な最小値が、全ての第1ワイヤ24を通電させない場合に対応するとし、最大値と最小値との間は、アクチュエータ22が有する第1ワイヤ24の数に応じて均等割りにしても良い。
【0060】
また、第1実施形態では、第2スプリング26fはコイル状のばねであるが、板ばねであっても良い。
【0061】
また、ステップS3とステップS4とは、同時に行っても良い。
【0062】
[第2実施形態]
図9から図12までに示す本技術の第2実施形態について、以下に説明する。本第2実施形態に係るヘッドホン1が上述の第1実施形態に係るヘッドホン1と相違するのは、センサ4を有し、センサの検出値に基づいてヘッドバンド2の湾曲度合いを自動調整する点であり、それ以外のヘッドホン1の構成は、基本的に上述の第1実施形態のヘッドホン1と同様の構成になっている。なお、すでに説明した構成要素については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0063】
≪ヘッドホンの全体構成≫
図9及び図10に示すように、ヘッドホン1は、センサ4を備えている。センサ4は、これには限定されないが、例えば、面圧センサ4a、ジャイロセンサ4b、及びバイタルセンサ4c等のセンサを含む。なお、面圧センサ4a、ジャイロセンサ4b、及びバイタルセンサ4cを区別しない場合には、単にセンサ4と呼ぶ。センサ4は、センサの種類に応じて被装着者の様々な情報を検出し、その検出結果を示す情報を第1情報として出力する。図10に示すように、第1情報は有線を介して制御部28に送られる構成であるが、無線を介して送られる構成であっても良い。
【0064】
図11は、イヤパッド32を頭部側から見た図である。面圧センサ4aは、イヤパッド32の頭部側に3つ設けられている。なお、面圧センサ4aの数はこれには限定されない。面圧センサ4aは、これには限定されないが、例えば、ピエゾセンサ、エラストマを電極で挟んだ構成を有するDEA(Dielectric Elastomer Actuator)、ニューマチック式圧力センサ等である。なお、一つのイヤパッド32が複数の面圧センサ4aを有する場合、第1情報は、全ての面圧センサ4aの検出結果を含んでいても良いし、面圧センサ4aの検出結果平均値、最大値等であっても良い。
【0065】
図9に示すように、ジャイロセンサ4bは、イヤパッド32のハウジング31内に設けられている。ジャイロセンサ4bは角速度を検出するセンサであり、ヘッドホン1が被装着者の頭部に装着されている間、被装着者の頭部の回転や向きの変化を角速度として検出し、検出結果を第1情報として電気信号で出力する。角速度とは、単位時間あたりの回転角度である。
【0066】
バイタルセンサ4cは、ヘッドバンド2の頭部側に設けられている。バイタルセンサ4cは、これには限定されないが、例えば、脈拍センサ、血圧センサ、血流センサ、脳波センサ、発汗センサ、及び温度センサ等のセンサであり、被装着者のバイタルとして、脈拍、血圧、血流、脳波、発汗、温度(表面温度、深層温度)の少なくとも一つを検出する。
【0067】
制御部28は、センサが送信した第1情報を受け取る。そして、制御部28は、受け取った第1情報に基づき、被装着者の状態を判定する。より具体的には、制御部28は、ジャイロセンサ4bからの第1情報に基づいて、被装着者の運動状態を判定する。運動状態とは、これには限定されないが、例えば、静止している、座っている、走っている、階段を昇降している、下を見る、上を見る等の状態を指す。制御部28は、時系列に沿って受け取った第1情報に基づき、被装着者の運動状態が変化したか否かを判定できる。制御部28は、例えば、被装着者が走っている状態から止まったことを判定できる。
【0068】
また、制御部28は、バイタルセンサ4cからの第1情報に基づいて、被装着者の身体精神状態及びその程度を判定する。身体精神状態とは、これには限定されないが、例えば、疲労度合い、快/不快、快適度合い、不快度合い、リラックス度合い、緊張度合い等の状態である。例えば、制御部28は、被装着者の脈拍、血圧、発汗等の少なくとも1つが下がった場合、又は被装着者の血流、温度等の少なくとも1つが上がった場合に、被装着者の快適度合い(リラックス度合い)が増加した、と判定することができる。また、例えば、制御部28は、被装着者の脈拍、血圧、発汗等の少なくとも1つが下がった場合、又は被装着者の血流、温度等の少なくとも1つが上がった場合に、被装着者がリラックスしている状態、快適である状態であると判定することができる。また、例えば、制御部28は、被装着者の発汗が増えた場合に、被装着者の緊張度合いが増加したと判定することができる。また、例えば、制御部28は、被装着者の発汗が増えた場合に、被装着者が緊張していると判定することができる。また、例えば、制御部28は、被装着者の脳波に基づき、被装着者の疲労度合い、快/不快、快適度合い、不快度合い、リラックス度合い、緊張度合い等の状態及びその程度の増減を判定することができる。制御部28は、時系列に沿って受け取った第1情報に基づき、被装着者の身体精神状態が変化したか否かを判定できる。制御部28は、例えば、被装着者が疲れていない状態から疲れた状態に変化したことを判定できる。
【0069】
また、制御部28は、面圧センサ4aからの第1情報に基づき、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧するリアルタイムの圧力を得る。面圧センサ4aからの第1情報に基づき得られたリアルタイムの圧力を、検出圧力と呼ぶ。制御部28は、時系列に沿って受け取った第1情報に基づき、被装着者のリアルタイムの圧力が変化したか否かを判定できる。制御部28は、例えば、リアルタイムの圧力が減少したことにより、ヘッドホン1が被装着者から外れそうになったことを判定できる。
【0070】
そして、制御部28は、被装着者の状態及び検出圧力に基づき、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力を変更するか否か、判定する。ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力を変更すると判定した場合、制御部28は、備えた第1ワイヤ24のうち通電すべき第1ワイヤ24の本数を決定し、決定した本数の第1ワイヤ24への通電をオンとするように、駆動部29を制御する。
【0071】
制御部28は、被装着者の運動状態及び検出圧力に基づき、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力を変更するか否か、判定する。制御部28は、被装着者の運動状態の程度が大きい程、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力を高くするように第1ワイヤ24の本数を決定する。
【0072】
制御部28は、被装着者の身体精神状態及び検出圧力に基づき、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力を変更するか否か、判定する。制御部28は、被装着者の状態が良い方向へ向かうように、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力を調整する。例えば、被装着者が疲れている又は疲労度合いが高い場合には、頭部を締めつけ過ぎないように、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力を弱めるように調整する。また、例えば、被装着者が緊張している又は緊張度合いが高い場合には、緊張を解すために、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力を弱めるように調整する。また、例えば、被装着者が不快に感じている又は快適度合いが低い場合には、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力を弱めるように調整する。
【0073】
≪制御部の制御フロー≫
以下、図12に示す制御部28の制御フローについて、説明する。図12に示す制御フローでは、センサは、面圧センサ4a及びジャイロセンサ4bである。図12に示す制御フローでは、一例として、被装着者が座っている状態から歩き始めた場合の制御について、説明する。
【0074】
制御部28は、ステップS101において、面圧センサ4a及びジャイロセンサ4bのそれぞれから第1情報を受け取ったか否か、監視している。受け取っていないと判定した場合(ステップS101;No)、制御部28はステップS101の処理を繰り返す。受け取ったと判定した場合(ステップS101;Yes)、制御部28は、面圧センサ4aからの第1情報に基づき、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧するリアルタイムの圧力である検出圧力を得る。そして、制御部28は、ジャイロセンサ4bからの第1情報に基づき、被装着者の運動状態を判定する。例えば、制御部28は、被装着者の運動状態が変化した、より具体的には、被装着者が座っている状態から歩いている状態になったと判定する。この判定は、例えば、今回受け取った第1情報と時系列で過去に受け取った(例えば前回受け取った)第1情報とを比較することにより行うことができる。
【0075】
その後、処理はステップS102に移行し、制御部28は、通電すべき第1ワイヤ24の本数を決定する。より具体的には、制御部28は、被装着者が座っていた初期状態より、通電すべき第1ワイヤ24の本数を増やす。例えば、通電すべき第1ワイヤ24の本数を、座っていた時より1本増やす。歩いている時の方が座っている時より被装着者の頭部への振動が大きいので、ヘッドホンユニット3が頭部からずり落ちないように、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力を大きくしている。そして、ステップS103以降の処理を行う。ステップS103からステップS106までの処理は、図6に示すステップS3からステップS6までの処理と同じであるので、その説明を省略する。
【0076】
≪第2実施形態の主な効果≫
この第2実施形態に係るヘッドホン1であっても、上述の第1実施形態に係るヘッドホン1と同様の効果が得られる。
【0077】
また、この第2実施形態に係るヘッドホン1では、制御部28は、センサ4の検出結果を示す第1情報に基づいて、通電させる第1ワイヤ24の本数を自動的に決定するので、被装着者自身が圧力を変更する手間を省くことができる。
【0078】
また、この第2実施形態に係るヘッドホン1では、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力が自動的に調整されるので、被装着者は、快適に過ごすことができる。
【0079】
また、本技術の第2実施形態では、通電により第1温度以上の温度になると長さが短くなる形状記憶合金製の第1ワイヤ24が複数本アレイ状に配列されているので、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力を、多段階で強めたり弱めたりする調整が可能になる。これにより、被装着者がヘッドホン1を装着する場合の装着感を多段階で調整でき、被装着者の状態に応じた装着感を細やかに実現できる。
【0080】
なお、制御部28の制御フローにおいて、通電すべき第1ワイヤ24の本数を、座っていた時より1本増やしていたが、増やす本数は1本に限定されず、2本以上であっても良い。また、被装着者の運動状態に応じて、通電すべき第1ワイヤ24の本数を予め決めておいても良い。
【0081】
また、制御部28の制御フローにおいて、時系列に沿って受け取った現在及び過去の第1情報に基づき、被装着者の運動状態が変化した場合に、通電すべき第1ワイヤ24の本数を変えていたが、本技術はこれには限定されない。制御部28は、現在の第1情報のみに基づき、被装着者のリアルタイムの運動状態に相応しい本数を決定しても良い。
【0082】
また、制御部28の制御フローにおいて、通電すべき第1ワイヤ24の本数を、ジャイロセンサ4bからの第1情報と面圧センサ4aからの第1情報とのうちのジャイロセンサ4bからの第1情報のみに基づいて決めていたが、本技術はこれには限定されない。制御部28は、ジャイロセンサ4bからの第1情報と面圧センサ4aからの第1情報との両方に基づいて、通電すべき第1ワイヤ24の本数を変えても良い。例えば、被装着者の想定される運動状態毎に、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力の最適な圧力(最適圧力)を予め決めて、例えばメモリMに記憶しておき、制御部28は、ジャイロセンサ4bからの第1情報に基づいて被装着者の運動状態を検出したら、その運動状態に対応する最適圧力を得るように、通電すべき第1ワイヤ24の本数を決めても良い。その際、検出圧力が最適圧力に近づくように、フィードバック処理を行っても良い。
【0083】
また、制御部28は、通電すべき第1ワイヤ24の本数を、ジャイロセンサ4bからの第1情報と面圧センサ4aからの第1情報とのうちの、面圧センサ4aからの第1情報のみに基づいて決めても良い。制御部28は、例えば、面圧センサ4aからの第1情報に基づき、リアルタイムの圧力が減少したと判定した場合、ヘッドホン1が被装着者から外れそうになったと判定し、通電すべき第1ワイヤ24の本数を増やしても良い。
【0084】
≪第2実施形態の変形例≫
以下、第2実施形態の変形例について、説明する。
【0085】
<変形例1>
以下、図13に示す、第2実施形態の変形例1に係る制御部28の制御フローについて、説明する。本変形例では、一例として、被装着者がヘッドホン1を長い時間装着して疲労してきた場合の処理について、説明する。図13に示す制御フローでは、センサは、面圧センサ4a及びバイタルセンサ4cである。そして、バイタルセンサ4cとして、これには限定されないが、例えば、血流センサを用いた例について、説明する。
【0086】
制御部28は、ステップS201において、面圧センサ4a及びバイタルセンサ4cのそれぞれから第1情報を受け取ったか否か、監視している。受け取っていないと判定した場合(ステップS201;No)、制御部28はステップS201の処理を繰り返す。受け取ったと判定した場合(ステップS201;Yes)、制御部28は、面圧センサ4aからの第1情報に基づき、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧するリアルタイムの圧力である検出圧力を得る。そして、制御部28は、バイタルセンサ4cからの第1情報に基づき、被装着者の身体精神状態を判定する。例えば、制御部28は、被装着者の身体精神状態が変化した、より具体的には、被装着者が疲れた状態になったと判定する。この判定は、例えば、今回受け取った第1情報と時系列で過去に受け取った(例えば前回受け取った)第1情報とを比較することにより行うことができる。例えば、被装着者の血流が減少した場合に、被装着者が疲れた状態になったと判定する。
【0087】
その後、処理はステップS202に移行し、制御部28は、通電すべき第1ワイヤ24の本数を決定する。より具体的には、制御部28は、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する現状の圧力を生成可能な第1ワイヤ24の本数より、通電すべき第1ワイヤ24の本数を減らす。例えば、通電すべき第1ワイヤ24の本数を、現状の圧力を生成可能な第1ワイヤ24の本数より1本減らす。これにより、ヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力を減らす事ができ、被装着者の負担を減らすことができる。そして、ステップS203以降の処理を行う。ステップS203からステップS206までの処理は、図6に示すステップS3からステップS6までの処理と同じであるので、その説明を省略する。
【0088】
この第2実施形態の変形例1に係るヘッドホン1であっても、上述の第2実施形態に係るヘッドホン1と同様の効果が得られる。
【0089】
なお、制御部28の制御フローにおいて、通電すべき第1ワイヤ24の本数を、被装着者が疲れていなかった時より1本減らしていたが、減らす本数は1本に限定されず、2本以上であっても良い。また、被装着者の疲労度合いに応じて、通電すべき第1ワイヤ24の本数を予め決めておいても良い。
【0090】
また、制御部28の制御フローにおいて、時系列に沿って受け取った現在及び過去の第1情報に基づき、被装着者の疲労度合いが変化した場合に、通電すべき第1ワイヤ24の本数を変えていたが、本技術はこれには限定されない。制御部28は、現在の第1情報のみに基づき、被装着者のリアルタイムの疲労度合いに相応しい本数を決定しても良い。
【0091】
また、制御部28の制御フローにおいて、通電すべき第1ワイヤ24の本数を、バイタルセンサ4cからの第1情報と面圧センサ4aからの第1情報とのうちのバイタルセンサ4cからの第1情報のみに基づいて決めていたが、本技術はこれには限定されない。制御部28は、バイタルセンサ4cからの第1情報と面圧センサ4aからの第1情報との両方に基づいて、通電すべき第1ワイヤ24の本数を変えても良い。例えば、被装着者の疲労度合いに応じてヘッドホンユニット3を被装着者に対して押圧する圧力の最適な圧力(最適圧力)を予め決めて、例えばメモリMに記憶しておき、制御部28は、バイタルセンサ4cからの第1情報に基づいて被装着者の疲労度合いを検出したら、その疲労度合いに対応する最適圧力を得るように、通電すべき第1ワイヤ24の本数を決めても良い。その際、検出圧力が最適圧力に近づくように、フィードバック処理を行っても良い。
【0092】
また、制御部28の制御フローにおいて、被装着者の疲労度合いをバイタルセンサ4cからの第1情報に基づいて判定していたが、被装着者がヘッドホン1を装着している装着時間に基づいて、被装着者の疲労度合いを判定しても良い。装着時間は、これには限定されないが、例えば、センサ4から第1情報を受け取っている期間に基づいて判定されても良い。装着時間は、例えば、面圧センサ4aからの第1情報が「圧力ゼロ」を示していない期間として判定されても良い。
【0093】
また、バイタルセンサ4cは血流センサ以外の他のセンサであっても良く、身体精神状態は疲労度合い以外の他の状態であっても良い。
【0094】
また、例えば、バイタルセンサ4cとして脳波センサを用い、制御部28は、脳波センサからの第1情報に基づいて被装着者の快適度合いを判定し、判定した結果に基づいて、通電すべき第1ワイヤ24の本数を決定しても良い。より具体的には、その際、フィードバック処理を行い、被装着者が快適と感じるまで、第1ワイヤ24の本数を調整しても良い。
【0095】
また、制御部28は、第1情報に基づき、センサ4の検出結果に対するノイズの大きさを判定し、ノイズの大きさに基づき、通電させる第1ワイヤ24の本数を決定しても良い。例えば、センサ4としてバイタルセンサ4c、例えば脈拍センサを用い、制御部28は、脈拍センサからの第1情報に基づいて、脈拍センサの検出結果に対するノイズの大きさを判定しても良い。脈拍センサは、被装着者の頭部に密着すればする程その検出結果に対するノイズの大きさが小さくなる傾向がある。つまり、ヘッドホン1の頭部に対する締め付け度合いが強ければ強い程、ノイズの大きさが小さくなる。そして、制御部28は、ノイズの大きさが所定の値よりも小さい場合にヘッドホン1の頭部に対する締め付け度合いが強過ぎると判定し、締め付け度合いを緩めるために、通電すべき第1ワイヤ24の本数を減らしても良い。
【0096】
また、例えば、バイタルセンサ4cとして脳波センサを用い、被装着者が締め付け度合いを「強める」又は「弱める」と念じ、その念じた内容を第1情報として制御部28に伝えても良い。そして、制御部28は、受け取った第1情報に応じて、通電すべき第1ワイヤ24の本数を決定しても良い。
【0097】
[第3実施形態]
図14及び図15に示す本技術の第3実施形態について、以下に説明する。本第3実施形態に係るヘッドホン1が上述の第1実施形態に係るヘッドホン1と相違するのは、アクチュエータ22に代えてアクチュエータ122を有する点であり、それ以外のヘッドホン1の構成は、基本的に上述の第1実施形態のヘッドホン1と同様の構成になっている。なお、すでに説明した構成要素については、同じ符号を付してその説明を省略する。また、図14及び図15においては、第2ワイヤ27の図示を省略している。図14及び図15においては、複数本の第1ワイヤ24のうちの1本のみを例示している。
【0098】
<アクチュエータ>
アクチュエータ122は、枠体23(第1枠体)と、枠体123(第2枠体)と、第1ワイヤ24と、支持体125と、図示を省略するロック機構26及び第2ワイヤ27と、を有している。
【0099】
<枠体>
図14に示すように、アクチュエータ122は、枠体23に加えて枠体123を有している。枠体123は、金属製の平板を打ち抜いて形成されている。枠体123には、長手方向に沿って複数の開口部123aが並んで打ち抜かれている。そして、開口部123aの各々の内側面には、枠体23と同様に、支持体125を固定するための切り欠き部の対が、長手方向に沿って等間隔に複数設けられている。一の開口部123aには、支持体125を取り付けるための一対の切り欠き部が設けられている。枠体123を構成する金属としては、例えば、ステンレス及び鉄等を挙げることができる。本実施形態では、枠体123がステンレス製であるとして、説明する。
【0100】
アクチュエータ122は、枠体23と枠体123との2重構造を有している。枠体123は、ヘッドホン1が装着された場合に枠体23より頭部寄りに位置するように、設けられている。枠体23及び枠体123は、長手方向に沿って同じ方向に湾曲しており且つその湾曲度合いが可変である。枠体123は、湾曲方向の両端部において枠体23にスライド可能に接触していて、それ以外の部分は枠体23と間隔を空けて設けられている。枠体23及び枠体123は湾曲方向に弾力性を有し、その湾曲度合いを第1ワイヤ24により調整することが可能である。
【0101】
<支持体>
支持体125は、円柱部材25aと、支持板25dと、を有していて、スペーサ25bを有していない。支持体125は、枠体23と枠体123とのそれぞれに対して、取り付けられている。より具体的には、支持体125は、円柱部材25aが枠体23と枠体123との間の空間に位置するように、枠体23及び枠体123に取り付けられている。また、図15に示すように、支持体125の支持板25dは、第1実施形態の図4に示す場合より、枠体23及び枠体123に近い位置に円柱部材25aを保持している。
【0102】
図15に示すように、支持体125のうち枠体23に取り付けられた支持体を支持体125U(第1支持体)と呼び、枠体123に取り付けられた支持体を支持体125L(第2支持体)と呼ぶ。支持体125Uと支持体125Lとを区別しない場合には、単に支持体125と呼ぶ。支持体125は、2つの支持体125Uと1つの支持体125Lとで1つの組を形成していて、アクチュエータ122は、このような組を複数組有している。一つの組内において、支持体125Lは、枠体23と枠体123とが重なる方向(厚み方向)において、支持体125Uと重ならない位置に設けられている。より具体的には、一つの組内において、支持体125Lは、2つの支持体125Uの間に位置している。
【0103】
そして、第1ワイヤ24は、各組内において、支持体125U、支持体125L、支持体125Uの順番に掛け回すことで支持されている。つまり、第1ワイヤ24は、枠体23(支持体125U)と枠体123(支持体125L)とにより交互に支持されている。なお、隣接する組において、第1ワイヤ24は支持体125Uに連続して掛け回されているが、交互に支持されていることは、このような場合を含んでいても良い。このような第1ワイヤ24が第1温度以上の温度になって第1の長さより短い第2の長さになった場合に、枠体23と枠体123とを互いに引き寄せ合うように機能する。そして、これにより、枠体23及び枠体123の湾曲度合いを大きくすることができる。また、第2ワイヤ27についても、図示は省略しているが、第1ワイヤ24と同様に支持体125U及び支持体125Lにより支持されている。
【0104】
≪第3実施形態の主な効果≫
この第3実施形態に係るヘッドホン1であっても、上述の第1実施形態に係るヘッドホン1と同様の効果が得られる。
【0105】
また、この第3実施形態に係るヘッドホン1では、第1実施形態に係るヘッドホン1の場合より、ヘッドバンド2の湾曲度合いを強くするのに要する力を小さくできる。より具体的には、この第3実施形態に係るヘッドホン1では、ヘッドホンユニット3に、ある一定の圧力で被装着者を押圧させるために要する力(第1の力)を、第1実施形態に係るヘッドホン1の場合の5分の1程度に抑えることが可能となる。また、この第3実施形態に係るヘッドホン1では、第1実施形態に係るヘッドホン1の場合と同じ伸縮率の第1ワイヤ24を用いた場合であっても、第1の力を、第1実施形態に係るヘッドホン1の場合より小さく抑えることが可能となる。すでに説明したように、第1ワイヤ24は、第1温度より低い温度では第1の長さを有し、第1温度以上の温度では第1の長さより短い第2の長さを有している。伸縮率とは、ある長さの第1ワイヤ24が、第1の長さから第2の長さになる際に縮む量を%で表した比率である。
【0106】
[第4実施形態]
図16に示す本技術の第4実施形態について、以下に説明する。本第4実施形態に係るヘッドホン1が上述の第1実施形態に係るヘッドホン1と相違するのは、第1ワイヤであり、それ以外のヘッドホン1の構成は、基本的に上述の第1実施形態のヘッドホン1と同様の構成になっている。なお、すでに説明した構成要素については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0107】
<第1ワイヤ>
図16に示すように、本実施形態では、1本の第1ワイヤ124を、折り返し軸SHを返して折り返すことにより、複数本の第1ワイヤ24として機能する構成としている。枠体23の端部23d(図1参照)に折り返し軸SH2,SH4を設け、端部23e(図1参照)に折り返し軸SH1,SH3を設け、1本の第1ワイヤ124を、折り返し軸SH1から折り返し軸SH4までに沿って折り返している。そして、1本の第1ワイヤ124の一方の端部は、例えば、コイルスプリングのような部材SPを介して枠体23の端部23dに固定されていて、他方の端部はウォームギヤのような部材WGを介して端部23eに固定されている。
【0108】
また、第1ワイヤ駆動部29bから各第1ワイヤ24へ伸びた配線は、各第1ワイヤ24のうちの折り返し軸SH2,SH4寄りの位置にカシメにより接続されていて、グラウンド(基準電位)から各第1ワイヤ24へ伸びた配線は、各第1ワイヤ24のうちの折り返し軸SH1,SH3寄りの位置にカシメにより接続されている。なお、第1ワイヤ24に供給された電流は電気抵抗の差により最も近いグラウンド(基準電位)に向けて流れ易いので、他の第1ワイヤ24に電流が流れたとしても、僅かである。このような構成により、各第1ワイヤ24に対して選択的に給電を行うことができる。
【0109】
そして、各第1ワイヤ24には、温度計Tが設けられていて、各第1ワイヤ24の温度を測定することができる。温度計Tは、これには限定されないが、例えば、サーミスタである。温度計Tは配線を介して制御部28に接続されていて、制御部28は、各温度計Tが検出した温度を受け取り、その温度を監視する。制御部28は、各温度計Tが検出した温度に基づき、第1ワイヤ24の温度を第1温度に近い温度に維持する。より具体的には、制御部28は、第1ワイヤ24の温度を第1温度より僅かに低い温度に維持する。第1ワイヤ24をこのような温度に維持することにより、枠体23の湾曲度合いを強くするために通電を開始してから第1ワイヤ24の温度が第1温度を超えるまでに要する時間を短くでき、アクチュエータ22の反応速度が長くなることを抑制できる。
【0110】
≪第4実施形態の主な効果≫
この第4実施形態に係るヘッドホン1であっても、上述の第1実施形態に係るヘッドホン1と同様の効果が得られる。
【0111】
また、第4実施形態に係るヘッドホン1では、制御部28が第1ワイヤ24の温度を第1温度に近い温度、より具体的には第1温度より僅かに低い温度に維持するので、アクチュエータ22の反応速度が遅くなることを抑制できる。
【0112】
[その他の実施形態]
上記のように、本技術は第1実施形態から第4実施形態までによって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本技術を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0113】
例えば、第1実施形態から第4実施形態までにおいて説明したそれぞれの技術的思想を互いに組み合わせることも可能である。また、上述の実施形態では、本技術をヘッドホン1に適用した例について説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。本技術は、例えば図17に示したヘッドマウントディスプレイ200に適用することができる。ヘッドマウントディスプレイ200では、例えばパッド部201およびバンド部202の内面などにセンサの電極体10を設けている。そして、バンド部202には、本技術が適用されている。より具体的には、バンド部202には、本技術に係るアクチュエータ、ロック機構などが適用されている。あるいは、本技術は、例えば図18に示したヘッドバンド300に適用することができる。ヘッドバンド300では、例えば頭部と接触するバンド部301,302の内面などにセンサの電極体10を設けている。そして、バンド部301,302には、本技術が適用されている。より具体的には、バンド部301,302には、本技術に係るアクチュエータ、ロック機構、などが適用されている。なお、ヘッドマウントディスプレイ200及びヘッドバンド300に設けられたセンサは、脳波、心拍、または脈拍などの生体信号を検出する生体電位センサである。このような生体電位センサは、上述の実施形態において説明したセンサ4としての機能と、単に生体信号を検出する機能と、のうちの少なくとも一方の機能を有している。
【0114】
また、当業者であれば、上記の技術を考慮した上で、上記の例示的な実施形態において制御部28が、好適なコンピュータプログラムを用いてプログラムされた1つ又はそれ以上のプログラムされたマイコンやプロセッサ等の使用に基づいていることを理解するであろう。しかしながら、別の実施形態は、専用ハードウェア及び/又は専用プロセッサなどのハードウェア構成の均等形態を使用して実装できるので、本技術は、このような例示的な実施形態に限定されるものではない。同様に、汎用コンピュータ、マイクロプロセッサベースコンピュータ、マイクロコントローラ、光コンピュータ、アナログコンピュータ、専用コンピュータ、特定用途向け集積回路、及び/又は専用ハードワイヤードロジックを使用して、別の均等な実施形態を構成することができる。
【0115】
このように、本技術はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本技術の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に記載された発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0116】
また、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があっても良い。
【0117】
なお、本技術は、以下のような構成としてもよい。
(1)
長手方向に沿って湾曲しており且つその湾曲度合いが可変の枠体と、
それぞれは前記枠体に長手方向に沿って支持され且つ前記枠体の短手方向に沿って複数本配列され、通電により第1温度以上の温度になると長さが短くなる形状記憶合金製の第1ワイヤと、
第1情報を受け取り、前記第1情報に基づいて前記第1ワイヤへの通電を制御可能であり、これにより前記枠体の湾曲度合いを調整可能な制御部と、
を備えたウエアラブルデバイス。
(2)
前記枠体の長手方向の一方の端部寄りに固定されたロック機構と、
前記枠体に長手方向に沿って支持され、一端側が前記ロック機構に固定された固定状態及び固定されていない非固定状態の一方に切り替え可能であり、他端側が前記枠体の長手方向の他方の端部寄りに固定された、第2ワイヤと、を備え、
前記制御部は、前記ロック機構による前記第2ワイヤの前記固定状態と前記非固定状態とを制御し、
前記制御部は、前記第2ワイヤが前記非固定状態である間に前記第1ワイヤを通電し、前記枠体の湾曲度合いの調整が終了したら前記ロック機構により前記第2ワイヤを前記非固定状態にし、前記第1ワイヤへの通電を遮断する、(1)に記載のウエアラブルデバイス。
(3)
前記枠体には、長手方向に沿って支持体が等間隔に複数設けられていて、
前記第1ワイヤは、前記枠体と前記支持体が有する円柱部材との間に通されている、(1)又は(2)に記載のウエアラブルデバイス。
(4)
前記枠体は、長手方向に沿って同じ方向に湾曲した第1枠体と第2枠体とを含み、
前記第1枠体には第1支持体が等間隔に複数設けられていて、前記第2枠体には第2支持体が等間隔に複数設けられていて、
前記第1ワイヤは、前記第1支持体と前記第2支持体とにより交互に支持されている、(1)又は(2)に記載のウエアラブルデバイス。
(5)
前記制御部は、前記第1情報に基づいて、複数本の前記第1ワイヤのうち通電させる前記第1ワイヤの本数を決定する、(1)から(4)のいずれかに記載のウエアラブルデバイス。
(6)
センサを備え、
前記第1情報は前記センサの検出結果を示す、(1)から(5)のいずれかに記載のウエアラブルデバイス。
(7)
前記センサは、当該ウエアラブルデバイスの被装着者のバイタルを検出可能なバイタルセンサである、(6)に記載のウエアラブルデバイス。
(8)
前記制御部は、前記第1情報に基づいて前記被装着者の快適度合いを判定し、判定した結果に基づいて、通電させる前記第1ワイヤの本数を決定する、(7)に記載のウエアラブルデバイス。
(9)
前記制御部は、前記第1情報に基づいて前記被装着者の疲労度合いを判定し、判定した結果に基づいて、通電させる前記第1ワイヤの本数を決定する、(7)に記載のウエアラブルデバイス。
(10)
前記制御部は、前記第1情報に基づき、前記センサの前記検出結果に対するノイズの大きさを判定し、前記ノイズの大きさに基づき、通電させる前記第1ワイヤの本数を決定する、(7)に記載のウエアラブルデバイス。
(11)
前記センサはジャイロセンサである、(6)に記載のウエアラブルデバイス。
(12)
前記センサは面圧センサである、(6)に記載のウエアラブルデバイス。
(13)
当該ウエアラブルデバイスは、頭部装着ウエアラブルデバイスである、(1)から(12)のいずれかに記載のウエアラブルデバイス。
【0118】
本技術の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本技術が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本技術の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0119】
1 ヘッドホン
2 ヘッドバンド
3 ヘッドホンユニット
3a,3b ヘッドホンユニット
4 センサ
4a 面圧センサ
4b ジャイロセンサ
4c バイタルセンサ
21 ケーシング
22,122 アクチュエータ
23,123 枠体
23a 開口部
23b 切り欠き部
23c 開口部
23d,23e 端部
24,24a,24b,24c,24d,24e,124 第1ワイヤ
25,125,125L,125U 支持体
25a 円柱部材
25b スペーサ
25c ネジ
25d 支持板
26 ロック機構
26e 第1スプリング
26f 第2スプリング
27 第2ワイヤ
28 制御部
28a 無線通信部
29 駆動部
29a ロック機構駆動部
29b 第1ワイヤ駆動部
31 ハウジング
32 イヤパッド
枠体
P 端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18