(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149012
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】個人認証装置、個人認証方法および個人認証プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 21/32 20130101AFI20231005BHJP
A61B 5/117 20160101ALI20231005BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231005BHJP
【FI】
G06F21/32
A61B5/117 100
G06T7/00 350B
G06T7/00 510A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057327
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】TOPPANエッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 隼一
(72)【発明者】
【氏名】丹野 有
(72)【発明者】
【氏名】徳永 大輝
【テーマコード(参考)】
4C038
5B043
5L096
【Fターム(参考)】
4C038VA07
4C038VB15
4C038VC20
5B043AA09
5B043DA07
5B043EA05
5B043GA02
5L096EA11
5L096FA59
5L096GA19
5L096HA02
5L096HA07
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】より少ないデータ量で高精度な個人認証を実現すること。
【解決手段】本開示に係る個人認証装置は、被検者の足裏に掛かる圧力の分布を示す足圧分布が、被検者の歩行に応じて測定された測定結果である足圧分布データを取得する取得部と、足圧分布データに基づいて、圧力に関する複数の異なるパラメータごとに、当該パラメータの経時変化であって、歩行に応じた経時変化を示す経時データを抽出する抽出部と、パラメータごとに抽出された経時データと、当該経時データの元となる足圧分布データが得られた被検者を示す被検者データとの組み合せを学習データとして用いて、各パラメータに対して個別に対応するパラメータごとの識別モデルを生成する生成部とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の足裏に掛かる圧力の分布を示す足圧分布が、前記被検者の歩行に応じて測定された測定結果である足圧分布データを取得する取得部と、
前記足圧分布データに基づいて、前記圧力に関する複数の異なるパラメータごとに、当該パラメータの経時変化であって、歩行に応じた経時変化を示す経時データを抽出する抽出部と、
前記パラメータごとに抽出された経時データと、当該経時データの元となる前記足圧分布データが得られた被検者を示す被検者データとの組み合せを学習データとして用いて、対象者が前記被検者のうちのいずれの人物であるかを識別する識別モデルであって、各パラメータに対して個別に対応するパラメータごとの識別モデルを生成する生成部と
を有することを特徴とする個人認証装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記被検者の足裏を複数の領域に分割した場合における各領域に掛かる圧力の分布を示す足圧分布が、前記被検者の歩行に応じて測定された測定結果である足圧分布データを取得し、
前記抽出部は、前記経時データとして、前記足裏の複数の領域それぞれに掛けられる圧力の値に基づき、前記複数の領域の中から抽出された抽出領域の面積を示す加圧面積の経時変化であって、歩行に応じた経時変化を示す第1の経時データと、前記抽出領域に含まれる領域それぞれでの前記圧力の値の総和を示す圧力総和の経時変化であって、歩行に応じた経時変化を示す第2の経時データとを前記被検者ごとに抽出し、
前記生成部は、前記第1の経時データと、当該第1の経時データの元となる前記足圧分布データが得られた被検者を示す被検者データとの組み合せを第1の学習データとして用いて、前記対象者が前記被検者のうちのいずれの人物であるかを識別する第1の識別モデルを生成するとともに、前記第2の経時データと、当該第2の経時データの元となる前記足圧分布データが得られた被検者を示す被検者データとの組み合せを第2の学習データとして用いて、前記対象者が前記被検者のうちのいずれの人物であるかを識別する第2の識別モデルを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の個人認証装置。
【請求項3】
前記識別モデルを生成するための前処理として、前記経時データを規格化する前処理部をさらに有し、
前記生成部は、規格化された後の経時データを用いて、前記識別モデルを生成する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の個人認証装置。
【請求項4】
前記対象者に対応する第1の経時データを入力として第1の識別モデルによって出力された結果である第1の識別結果と、前記対象者に対応する第2の経時データを入力として第2の識別モデルによって出力された結果である第2の識別結果とに基づいて、前記対象者が前記被検者のうちのいずれの人物であるかを識別する識別部をさらに有する
ことを特徴とする請求項2に記載の個人認証装置。
【請求項5】
コンピュータが実行する個人認証方法であって、
被検者の足裏に掛かる圧力の分布を示す足圧分布が、前記被検者の歩行に応じて測定された測定結果である足圧分布データを取得する取得工程と、
前記足圧分布データに基づいて、前記圧力に関する複数の異なるパラメータごとに、当該パラメータの経時変化であって、歩行に応じた経時変化を示す経時データを抽出する抽出工程と、
前記パラメータごとに抽出された経時データと、当該経時データの元となる前記足圧分布データが得られた被検者を示す被検者データとの組み合せを学習データとして用いて、対象者が前記被検者のうちのいずれの人物であるかを識別する識別モデルであって、各パラメータに対して個別に対応するパラメータごとの識別モデルを生成する生成工程と
を含むことを特徴とする個人認証方法。
【請求項6】
被検者の足裏に掛かる圧力の分布を示す足圧分布が、前記被検者の歩行に応じて測定された測定結果である足圧分布データを取得する取得手順と、
前記足圧分布データに基づいて、前記圧力に関する複数の異なるパラメータごとに、当該パラメータの経時変化であって、歩行に応じた経時変化を示す経時データを抽出する抽出手順と、
前記パラメータごとに抽出された経時データと、当該経時データの元となる前記足圧分布データが得られた被検者を示す被検者データとの組み合せを学習データとして用いて、対象者が前記被検者のうちのいずれの人物であるかを識別する識別モデルであって、各パラメータに対して個別に対応するパラメータごとの識別モデルを生成する生成手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする個人認証プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、個人認証装置、個人認証方法および個人認証プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行パターンによる認証が提案されている。例えば、足裏に加わる荷重の推移に基づいて、対象人物を認証する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、より少ないデータ量で高精度な個人認証を実現する点で改善の余地がある。
【0005】
例えば、上記の従来技術は、足裏に加わる荷重の時間的推移を示す荷重情報を学習データとして用いて、個人認証のためのニューラルネットワークモデルを生成しているが、係る手法では、認証の高精度化において莫大な学習データが必要になると考えられる。すなわち、上記の従来技術には、高精度な個人認証を実現するうえで煩雑さが残されているといえる。
【0006】
そこで、本開示では、より少ないデータ量で高精度な個人認証を実現することができる個人認証装置、個人認証方法および個人認証プログラムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示に係る個人認証装置は、被検者の足裏に掛かる圧力の分布を示す足圧分布が、前記被検者の歩行に応じて測定された測定結果である足圧分布データを取得する取得部と、前記足圧分布データに基づいて、前記圧力に関する複数の異なるパラメータごとに、当該パラメータの経時変化であって、歩行に応じた経時変化を示す経時データを抽出する抽出部と、前記パラメータごとに抽出された経時データと、当該経時データの元となる前記足圧分布データが得られた被検者を示す被検者データとの組み合せを学習データとして用いて、対象者が前記被検者のうちのいずれの人物であるかを識別する識別モデルであって、各パラメータに対して個別に対応するパラメータごとの識別モデルを生成する生成部とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、より少ないデータ量で高精度な個人認証を実現することができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る認証システムの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る識別処理の全体像を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る個人認証装置の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、検証に用いられるデータの構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る識別処理の具体例を説明する説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る識別処理の結果を示す図である。
【
図7】
図7は、一歩の動作に対応する足圧分布データの具体例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る抽出手法を説明する説明図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る第1の経時データの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る第2の経時データの一例を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る規格化手法を説明する説明図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る学習処理手順を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、実施形態に係る識別処理手順を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、個人認証装置100の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、個人認証装置、個人認証方法および個人認証プログラムを実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)の一例について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により個人認証装置、個人認証方法および個人認証プログラムが限定されるものではない。また、以下の実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
[実施形態]
〔1.システム構成〕
まず、
図1を用いて、実施形態に係る認証システムの構成を説明する。
図1は、実施形態に係る認証システムの一例を示す図である。
図1には、実施形態に係る認証システムの一例として、認証システム1が示される。
【0012】
図1に示すように、認証システム1は、測定マット10と、端末装置30と、個人認証装置100とを含む。また、測定マット10と、端末装置30と、個人認証装置100とは、ネットワークNを介して、有線または無線により通信可能に接続される。
【0013】
測定マット10は、歩行に応じて足裏にどのように圧力が掛かるか、足裏における圧力分布を測定するための装置である。例えば、測定マット10は、その上を人物が歩けるようにマット型に設計されたセンサであり、床面等に敷設して使用される。
【0014】
また、測定マット10によれば、足裏に掛かる圧力の分布を示す足圧分布が、例えば、1/72秒ごとに測定されることで、測定結果を示す足圧分布データが画像(フレーム)として出力される。すなわち、測定マット10によれば、1/72秒ごとにフレームが出力され、出力されたフレームには、このタイミングでの足圧分布データが示される。
【0015】
端末装置30は、測定マット10による測定で得られた足圧分布データが出力される先の情報処理端末であり、測定マット10と接続される。端末装置30は、例えば、スマートフォンや、タブレット型端末や、ノート型PC(Personal Computer)や、デスクトップPCや、携帯電話機や、PDA(Personal Digital Assistant)等であってよい。
【0016】
例えば、端末装置30は、測定マット10によって足圧分布が測定されるたびに、測定マット10から出力された足圧分布データ(より具体的には、足圧分布データが示されるフレーム)を取得する。また、端末装置30は、例えば、利用者の操作に応じて、足圧分布データを個人認証装置100に送信する。
【0017】
例えば、端末装置30は、複数の被検者(例えば、ユニークな情報(氏名等)が判明している人物)それぞれについて、複数歩分の足圧分布データが蓄積された場合には、被検者データと紐付けられた複数歩分の足圧分布データを個人認証装置100に送信してよい。また、端末装置30は、認証対象者の足圧分布データが得られた場合には、この足圧分布データを未知な人物のデータとして個人認証装置100に送信してよい。
【0018】
個人認証装置100は、実施形態に係る識別処理を行う中心的な装置である。具体的には、個人認証装置100は、被検者から得られた足圧分布データに基づいて、圧力に関する複数の異なるパラメータごとに、当該パラメータの経時変化であって、歩行に応じた経時変化を示す経時データを抽出する。そして、個人認証装置100は、経時データと被検者データとの組み合わせを学習データとして用いて、認証対象者が被検者のうちのいずれの人物であるかを識別するための識別モデルを生成する。具体的には、個人認証装置100は、複数の異なるパラメータそれぞれに対応する識別モデルを生成する。より具体的には、個人認証装置100は、複数の異なるパラメータごとに、当該パラメータに対応する識別モデルを生成する。すなわち、個人認証装置100は、各パラメータに対して個別に対応するパラメータごとの識別モデルを生成する。
【0019】
〔2.識別処理の全体像〕
次に、
図2を用いて、実施形態に係る識別処理の全体的な流れを説明する。
図2は、実施形態に係る識別処理の全体像を示す図である。
図2には、それぞれ名前が判明している複数の被検者(「被検者TUx」と表記する)から得られた足圧分布データから識別モデルを生成し、このモデルを用いて、1人の認証対象者(「対象者AU1」と表記する)が、被検者TUxのうちのいずれの人物であるかを識別する場面が示される。
【0020】
なお、
図2において、ステップS11~S16の処理は、識別モデルを生成するための学習フェーズに対応する。一方、
図2において、ステップS21~S26の処理は、識別モデルを用いた識別フェーズに対応する。
【0021】
まず、学習フェーズについて説明する。測定マット10は、被検者TUxがマット上を歩行することに応じて被検者TUxの足裏にどのように圧力が掛かるか、足裏における圧力の分布を示す足圧分布を測定する(ステップS11)。そして、測定マット10は、被検者TUxの歩行に応じて足圧分布が測定された測定結果である足圧分布データを端末装置30に出力する(ステップS12)。
【0022】
端末装置30は、測定マット10から足圧分布データを取得すると、取得した足圧分布データを個人認証装置100に送信する(ステップS13)。
【0023】
個人認証装置100は、足圧分布データに基づいて、圧力に関する複数の異なるパラメータごとに、当該パラメータの経時変化であって、歩行に応じた経時変化を示す経時データを抽出する(ステップS14)。例えば、個人認証装置100は、足裏に対応する領域において一定以上の圧力が掛かる領域の面積である加圧面積が、歩行に応じた経時変化に伴いどのように変化するかを示す第1の経時データを、被検者TUxごとに当該被検者TUxの足圧分布データから抽出する。また、個人認証装置100は、この一定以上の圧力が掛かる領域での圧力の総和である圧力総和が、歩行に応じた経時変化に伴いどのように変化するかを示す第2の経時データを、被検者TUxごとに当該被検者TUxの足圧分布データから抽出する。
【0024】
ここで、加圧面積は、複数の異なるパラメータの1つの例である。また、圧力総和は、複数の異なるパラメータのもう1つの例である。
【0025】
次に、個人認証装置100は、ステップS14で抽出した経時データに基づいて、学習データを取得する(ステップS15)。例えば、個人認証装置100は、第1の経時データと、当該第1の経時データの元となる足圧分布データが得られた被検者TUxを示す被検者データ(例えば、名前)との組み合せを第1の学習データとして、これを被検者TUxごとに調整する。また、個人認証装置100は、第2の経時データと、当該第2の経時データの元となる足圧分布データが得られた被検者TUxを示す被検者データ(例えば、名前)との組み合せを第2の学習データとして、これを被検者TUxごとに調整する。
【0026】
そして、個人認証装置100は、ステップS15で取得した学習データに基づいて、識別モデルを生成する(ステップS16)。例えば、個人認証装置100は、被検者TUxごとに得られている第1の学習データ群に基づいて、加圧面積に対応する識別モデルである第1の識別モデルを生成する。また、個人認証装置100は、被検者TUxごとに得られている第2の学習データ群に基づいて、圧力総和に対応する識別モデルである第2の識別モデルを生成する。
【0027】
一例として、個人認証装置100は、第1の経時データ(第2の経時データも同様)を波形と見做して、ピーク数、最大値、最小値、平均値、ピーク高さ、微積分(傾き、面積)、前後のデータ間での差分の統計量等を特徴量として、被検者TUxごとに特徴量の傾向をモデルに学習させるというモデル生成を行う場合がある。また、個人認証装置100は、モデル生成のための機械学習アルゴリズムとして、ランダムフォレストあるいはXGBoost等の決定木手法を用いてよい。
【0028】
続いて、識別フェーズについて説明する。測定マット10は、対象者AU1がマット上を歩行することに応じて対象者AU1の足裏にどのように圧力が掛かるか、足裏における圧力の分布を示す足圧分布を測定する(ステップS21)。そして、測定マット10は、対象者AU1の歩行に応じて足圧分布が測定された測定結果である足圧分布データを端末装置30に出力する(ステップS22)。
【0029】
端末装置30は、測定マット10から足圧分布データを取得すると、取得した足圧分布データを個人認証装置100に送信する(ステップS23)。ここで、
図2では不図示であるが、個人認証装置100は、ステップS14と同様の手法で識別用データを抽出する。具体的には、個人認証装置100は、ステップS14と同様の手法で対象者AU1の足圧分布データからも第1の経時データを抽出し、これを第1の識別用データとする。また、個人認証装置100は、ステップS14と同様の手法で対象者AU1の足圧分布データから第2の経時データも抽出し、これを第2の識別用のデータとする。
【0030】
そして、個人認証装置100は、識別用データを識別モデルに入力する(ステップS24)。具体的には、個人認証装置100は、加圧面積に対応する第1の識別モデルには、加圧面積の経時変化を示す第1の識別用データを入力する。また、個人認証装置100は、圧力総和に対応する第2の識別モデルには、圧力総和の経時変化を示す第2の識別用データを入力する。
【0031】
続いて、個人認証装置100は、ステップS24の入力に応じて識別モデルから出力された識別結果を取得する(ステップS25)。例えば、第1の識別モデルは、第1の識別用データを入力とする第1の識別結果として、被検者TUxが対象者AU1であることの確率を示す分類確率を被検者TUxごとに出力する。また、第2の識別モデルは、第2の識別用データを入力とする第2の識別結果として、被検者TUxが対象者AU1であることの確率を示す分類確率を被検者TUxごとに出力する。したがって、個人認証装置100は、第1の識別モデルに対応する分類確率であって被検者TUxごとの分類確率を取得する。また、個人認証装置100は、第2の識別モデルに対応する分類確率であって被検者TUxごとの分類確率を取得する。
【0032】
最後に、個人認証装置100は、ステップS25で取得した識別結果に基づいて、対象者AU1を被検者TUxのいずれかに分類する(ステップS26)。例えば、個人認証装置100は、第1の識別モデルに対応する分類確率のうち、最も高い分類確率である第1の分類確率と、第2の識別モデルに対応する分類確率のうち、最も高い分類確率である第2の分類確率とを比較する。そして、個人認証装置100は、第1の分類確率、第2の分類確率のうち、確率値の高い方に対応する1人の被検者TUxと、対象者AU1とが同一人物であると認証する。
【0033】
ここまで、
図2を用いて、実施形態に係る識別処理の全体像を説明した。係る識別処理によれば、1種のデータ(圧力分布データ)から、2種のパラメータ(加圧面積、圧力総和)それぞれに対応する2種の経時データが抽出され、そして経時データそれぞれに対応する2種の学習データが調整される。また、この結果、2種のパラメータ(加圧面積、圧力総和)それぞれに対応する2種の識別モデルが決定木アルゴリズムによって生成される。そして、実施形態に係る識別処理によれば、2種の識別モデルそれぞれから出力された識別結果を統合することで、最終的な識別結果が得られる。このような識別処理によれば、より少ないデータ量で高精度な個人認証が実現される。
【0034】
以下では、このような効果を立証するための検証実験を例に挙げて、実施形態に係る識別処理をより具体的に説明する。
【0035】
〔3.個人認証装置の構成〕
次に、
図3を用いて、実施形態に係る個人認証装置100について説明する。
図3は、実施形態に係る個人認証装置100の構成例を示す図である。
図3に示すように、個人認証装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを有する。
【0036】
(通信部110について)
通信部110は、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。そして、通信部110は、ネットワークと有線または無線で接続され、例えば、測定マット10や端末装置30との間で情報の送受信を行う。
【0037】
(記憶部120について)
記憶部120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子またはハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部120は、測定データ記憶部121と、第1の経時データ記憶部122と、第2の経時データ記憶部123と、第1の学習データ記憶部124と、第2の学習データ記憶部を125と、モデルデータ記憶部126とを有する。
【0038】
(制御部130について)
制御部130は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、個人認証装置100内部の記憶装置に記憶されている各種プログラム(例えば、実施形態に係る個人認証プログラム)がRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部130は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。
【0039】
図3に示すように、制御部130は、取得部131と、抽出部132と、前処理部133と、生成部134と、受付部135と、識別部136とを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。なお、制御部130の内部構成は、
図3に示した構成に限られず、後述する情報処理を行う構成であれば他の構成であってもよい。また、制御部130が有する各処理部の接続関係は、
図3に示した接続関係に限られず、他の接続関係であってもよい。
【0040】
(取得部131について)
取得部131は、被検者の足裏に掛かる圧力の分布を示す足圧分布が、被検者の歩行に応じて測定された測定結果である足圧分布データを取得する。例えば、取得部131は、被検者の足裏を複数の領域に分割した場合における各領域に掛かる圧力の分布を示す足圧分布が、被検者の歩行に応じて測定された測定結果である足圧分布データを取得する。例えば、取得部131は、足圧分布データとして、被検者が一方の足の足裏を地面に着けたことが検出されてから、当該足の足裏を地面から離したことが検出されるまでの動作である一歩の動作の間での足圧分布データを取得する。足圧分布データの詳細については、
図7で説明する。
【0041】
(抽出部132について)
抽出部132は、足圧分布データに基づいて、圧力に関する複数の異なるパラメータごとに、当該パラメータの経時変化であって、歩行に応じた経時変化を示す経時データを抽出する。
【0042】
複数の異なるパラメータの一方は、足裏の複数の領域それぞれに掛けられる圧力の値に基づき、複数の領域の中から抽出された抽出領域の面積である加圧面積であり、複数の異なるパラメータのもう一方は、この抽出領域に含まれる領域それぞれでの圧力の値の総和である圧力総和であってよい。また、係る例では、抽出部132は、足圧分布データに基づいて、経時データとして、加圧面積の経時変化であって、歩行に応じた経時変化を示す第1の経時データと、圧力総和の経時変化であって、歩行に応じた経時変化を示す第2の経時データとを被検者ごとに抽出する。第1の経時データおよび第2の経時データの抽出手法の詳細については、
図8~
図10で説明する。
【0043】
(前処理部133について)
前処理部133は、識別モデルを生成するための前処理として、経時データを規格化する。具体的には、前処理部133は、一定の速度で歩行されたと見做すように、経時データを規格化する。規格化手法の詳細については、
図11で説明する。
【0044】
(生成部134について)
生成部134は、パラメータごとに抽出された経時データと、当該経時データの元となる足圧分布データが得られた被検者を示す被検者データとの組み合せを学習データとして用いて、対象者が被検者のうちのいずれの人物であるかを識別する識別モデルであって、複数の異なるパラメータそれぞれに対応する識別モデルを生成する。具体的には、生成部134は、複数の異なるパラメータごとに、当該パラメータに対応するモデルを生成する。すなわち、生成部134は、各パラメータに対して個別に対応するパラメータごとの識別モデルを生成する。例えば、生成部134は、パラメータに関する特徴量を変数としてモデルに学習させることで、パラメータごとに存在する複数の識別モデルを生成してよい。
【0045】
例えば、生成部134は、第1の経時データと、当該第1の経時データの元となる足圧分布データが得られた被検者を示す被検者データとの組み合せを第1の学習データとして用いて、対象者が被検者のうちのいずれの人物であるかを識別する第1の識別モデルを生成する。また、生成部134は、第2の経時データと、当該第2の経時データの元となる足圧分布データが得られた被検者を示す被検者データとの組み合せを第2の学習データとして用いて、対象者が前記被検者のうちのいずれの人物であるかを識別する第2の識別モデルを生成する。
【0046】
また、生成部134は、複数歩を歩行されることに応じて抽出された複数歩分の経時データであって、複数の異なるパラメータごとに抽出された経時データと、当該経時データの元となる足圧分布データが得られた被検者を示す被検者データとの組み合わせを学習データとして、識別モデルを生成してよい。
【0047】
また、生成部134は、機械学習アルゴリズムとして、決定木を用いて、識別モデルを生成してよい。
【0048】
(受付部135について)
受付部135は、認証の対象者に対応する足圧分布データを受け付ける。具体的には、受付部135は、対象者の足裏に掛かる圧力の分布を示す足圧分布が、対象者の歩行に応じて測定された測定結果である足圧分布データを受け付ける。
【0049】
また、抽出部132は、受付部135により対象者に対応する足圧分布データが受け付けられた場合には、被検者に対応する足圧分布データの場合と同様に、対象者の足圧分布データからも経時データを抽出する。例えば、抽出部132は対象者の足圧分布データからも、第1の経時データおよび第2の経時データを抽出する。
【0050】
また、抽出部132は、第1の経時データを、識別モデルに入力される第1の識別用データとして識別部136に出力してよい。また、抽出部132は、第2の経時データを、識別モデルに入力される第2の識別用データとして識別部136に出力してよい。
【0051】
(識別部136について)
識別部136は、対象者に対応する第1の経時データ(第1の識別用データ)を入力として第1の識別モデルによって出力された結果である第1の識別結果と、対象者に対応する第2の経時データ(第2の識別用データ)を入力として第2の識別モデルによって出力された結果である第2の識別結果とに基づいて、対象者が被検者のうちのいずれの人物であるかを識別する。
【0052】
具体的には、識別部136は、第1の識別結果として被検者ごとに出力された分類確率のうち、最も高い分類確率である第1の分類確率、および、第2の識別結果として被検者ごとに出力された分類確率のうち、最も高い分類確率である第2の分類確率のうち、より高い確率に対応する被検者と、対象者とが同一人物であると認証する。
【0053】
〔4.検証に用いるデータの構成〕
本開示における効果を立証するための検証実験を例に挙げて、実施形態に係る識別処理を説明するが、それに先立って、まず、検証に用いるデータの構成を説明する。
図4は、検証に用いられるデータの構成例を示す図である。
【0054】
まず、データ構成の概要について説明する。検証実験では、被検者TU1、被検者TU2,・・・,TU10という「10人」の被検者それぞれについて、1人あたり「20回」の測定が行われた。なお、TU1、TU2・・・等は、各被検者の名前であるものとする。
【0055】
また、このような測定で得られた測定データ(20回分/人)を2分割し、学習用の測定データ(10回分/人)と、識別用の測定データ(10回分/人)が用意された。
【0056】
また、このような状態で、学習用の測定データ(10回分/人)については、第1の学習データの調整、および、第2の学習データの調整の双方に用いることにした。識別用の測定データ(10回分/人)についてはそのまま認証に用いることにした。
【0057】
続いて、データ構成についてより詳細に説明する。
図4では、被検者TU1にフォーカスして説明するが、その他の9人の被検者についても同様にしてテストデータが調整される。
【0058】
まず、測定データについて説明する。例えば、被検者TU1が右足の足裏を測定マット10に着けたことが検出されてから、この右足を測定マット10から離したことが検出されるまでの一連の動作を一歩の動作と定義して、この一歩の動作の間において1/72秒ごとに得られたフレーム(例えば、フレームFL11、FL12、FL13等の集まり)のフレーム群FLx(足圧分布データ群FLxともいえる)が、1回の測定に対応する測定データ(1回/人)に相当する。
【0059】
すなわち、1回の測定に対応する測定データとは、一歩の動作が開始されてから(例えば、踵の一部が測定マット10に着いてから)、この一歩の動作が終了するまで(例えば、つま先が測定マット10から離れるまで)の間での足圧分布の測定で得られたフレーム群FLxである。このようなことから、20回の測定に対応する測定データ(20回/人)とは、右足のみに着目し、被検者TU1が20歩を歩行することによるフレーム群FLxの20歩分に相当する。
【0060】
以下では、20歩を歩行されることによる足圧分布の測定(測定回数20回)で得られた測定データを「測定データDA1(20回/人)」として説明する。なお、被検者TU1を例に説明したが、その他の9人の被検者についても同様に20回の測定が行われることで、各被検者の測定データDA1(20回/人)が得られる。また、右足を例に説明したが、左足でもよい。
【0061】
引き続き、被検者TU1を例に説明する。上記のようにして得られた測定データDA1(20回/人)が、
図4に示すように、測定回数を基準に2分割されることで、学習用の測定データ(10回分/人)と、識別用の測定データ(10回分/人)が用意された。
【0062】
以下では、学習用の測定データ(10回分/人)を「測定データDA11(10回分/人)」、識別用の測定データ(10回分/人)を「測定データDA12(10回分/人)」として説明する。もちろん、その他の9人の被検者についても同様に、測定データDA11(10回分/人)」と、測定データDA12(10回分/人)とが用意される。
【0063】
そして、
図4に示すように、測定データDA11(10回分/人)は、経時データ抽出ステップにおいて、第1の経時データおよび第2の経時データを抽出し、最終的に第1の学習データおよび第2の学習データを得るために活用される。
【0064】
一方、測定データDA12(10回分/人)は、
図4に示すように、識別用データとして活用される。例えば、測定データDA12(10回分/人)は、第1の識別用データおよび第2の識別用データを得るために活用される。
【0065】
〔5.識別処理の具体例〕
引き続き、
図5を用いて、実施形態に係る識別処理の具体例を説明する。
図5には、検証実験の場面を用いて、実施形態に係る識別処理の具体的が示される。
【0066】
また、
図5では、被検者TU1、被検者TU2,・・・,TU10という「10人」の被検者それぞれについて、「20回」の測定が行われたことで、各被検者について、測定データDA11(10回分/人)、および、測定データDA12(10回分/人)が準備されているものとして識別処理を説明する。データの準備については、
図4で説明した通りである。
【0067】
図5に示すように、実施形態に係る識別処理は、経時データ抽出ステップ(S40)、データ調整ステップ(S41)、識別モデル生成ステップ(S42)、識別ステップ(S43)の順に進んでよい。各ステップについて具体的に説明する。
【0068】
まず、経時データ抽出ステップ(S40)について説明する。抽出部132は、測定データDA11(10回分/人)に含まれるフレーム群FLx(足圧分布データ群FLx)に基づいて、被検者TU1~TU10それぞれに対応する第1の経時データ(加圧面積の経時変化を示すデータ)と、被検者TU1~TU10それぞれに対応する第2の経時データ(圧力総和の経時変化を示すデータ)とを抽出する(ステップS4011)。
【0069】
また、抽出部132は、測定データDA12(10回分/人)に含まれるフレーム群FLx(足圧分布データ群FLx)に基づいて、対象者AU1~AU10それぞれに対応する第1の経時データ(加圧面積の経時変化を示すデータ)、および、対象者AU1~AU10それぞれに対応する第2の経時データ(圧力総和の経時変化を示すデータ)も抽出する(ステップS4021)。
【0070】
なお、ここでいう対象者AU1は、被検者TU1に対応する人物であるが、検証実験のため、便宜上、名称等のユニークな情報が未知の人物と仮定されている。その他の9人の対象者についても同様である。
【0071】
例えば、抽出部132は、ステップS4011では、測定データDA11(10回分/人)に含まれる一歩の動作に対応するフレーム群FLxごとに、この一歩の動作に対応する第1の経時データを抽出することで、測定10回分(10歩分)の第1の経時データを抽出する。また、抽出部132は、ステップS4011では、測定データDA11(10回分/人)に含まれる一歩の動作に対応するフレーム群FLxごとに、この一歩の動作に対応する第2の経時データを抽出することで、測定10回分(10歩分)の第2の経時データを抽出する。また、抽出部132は、この動作を被検者TU1~TU10それぞれについて行う。
【0072】
一方、抽出部132は、ステップS4021では、測定データDA12(10回分/人)に含まれる一歩の動作に対応するフレーム群FLxごとに、この一歩の動作に対応する第1の経時データを抽出することで、測定10回分(10歩分)の第1の経時データを抽出する。また、抽出部132は、ステップS4021では、測定データDA12(10回分/人)に含まれる一歩の動作に対応するフレーム群FLxごとに、この一歩の動作に対応する第2の経時データを抽出することで、測定10回分(10歩分)の第2の経時データを抽出する。また、抽出部132は、この動作を対象者AU1~AU10それぞれについて行う。
【0073】
以下では、人物(被検者TU1~TU10、対象者AU1~AU10)ごとに抽出された測定10回分(10歩分)の第1の経時データを「第1の経時データACTx(10回分/人)」と表記する。また、人物(被検者TU1~TU10、対象者AU1~AU10)ごとに抽出された測定10回分(10歩分)の第1の経時データを「第2の経時データPCTx(10回分/人)」と表記する。
【0074】
次に、前処理部133は、ステップS4011で抽出された第1の経時データACTx(10回分/人)、および、第2の経時データPCTx(10回分/人)に対して、データの不均一性を整えるための前処理を実行する(ステップS4012)。具体的には、前処理部133は、ステップS4011で抽出された第1の経時データACTx(10回分/人)、および、第2の経時データPCTx(10回分/人)に対して、歩行速度の違いによるデータの不均一性を整えるための規格化処理を実行する。
【0075】
また、前処理部133は、ステップS4021で抽出された第1の経時データACTx(10回分/人)、および、第2の経時データPCTx(10回分/人)に対しても同様に、歩行速度の違いによるデータの不均一性を整えるための規格化処理を実行する(ステップS4022)。
【0076】
次に、データ調整ステップ(S41)について説明する。生成部134は、ステップS4012で規格化された後の第1の経時データACTx(10回分/人)から第1の学習データを調整し、ステップS4012で規格化された後の第2の経時データPCTx(10回分/人)からは第2の学習データを調整する(ステップS4111)。
【0077】
具体的には、生成部134は、第1の経時データACTx(10回分/人)と、このデータの元となる測定データDA11(10回分/人)が得られた被検者TUxを示す被検者データ(例えば、被検者TUxの氏名)との組み合わせを第1の学習データとして調整する。より具体的には、生成部134は、被検者TU1を示す被検者データが紐付けられた第1の経時データACTx(10回分/人)を、被検者TU1に対応する第1の学習データセットとして調整する。また、生成部134は、被検者TU2を示す被検者データが紐付けられた第1の経時データACTx(10回分/人)を、被検者TU2に対応する第1の学習データセットとして調整する。このようにして、生成部134は、被検者TU1~TU10それぞれに対応する第1の学習データセットを調整する。
【0078】
また、生成部134は、第2の経時データPCTx(10回分/人)と、このデータの元となる測定データDA11(10回分/人)が得られた被検者TUxを示す被検者データ(例えば、被検者TUxの氏名)との組み合わせを第2の学習データとして調整する。より具体的には、生成部134は、被検者TU1を示す被検者データが紐付けられた第2の経時データPCTx(10回分/人)を、被検者TU1に対応する第2の学習データセットとして調整する。また、生成部134は、被検者TU2を示す被検者データが紐付けられた第2の経時データPCTx(10回分/人)を、被検者TU2に対応する第1の学習データセットとして調整する。このようにして、生成部134は、被検者TU1~TU10それぞれに対応する第2の学習データセットを調整する。
【0079】
一方、生成部134は、ステップS4022で規格化された後の第1の経時データACTx(10回分/人)から第1の識別用データを調整し、ステップS4022で規格化された後の第2の経時データPCTx(10回分/人)からは第2の識別用データを調整する(ステップS4121)。
【0080】
具体的には、生成部134は、被検者TU1の測定データDA12から抽出された第1の経時データACTx(10回分/人)を、未知の対象者AU1に対応する第1の識別用データとして調整する。また、生成部134は、被検者TU2の測定データDA12から抽出された第1の経時データACTx(10回分/人)を、未知の対象者AU2に対応する第1の識別用データとして調整する。このようにして、生成部134は、被検者TU1~TU10それぞれに対応する第1の識別用データであって、測定回数10回分のデータを調整する。
【0081】
また、生成部134は、被検者TU1の測定データDA12から抽出された第2の経時データPCTx(10回分/人)を、未知の対象者AU1に対応する第2の識別用データとして調整する。また、生成部134は、被検者TU2の測定データDA12から抽出された第2の経時データPCTx(10回分/人)を、未知の対象者AU2に対応する第12識別用データとして調整する。このようにして、生成部134は、被検者TU1~TU10それぞれに対応する第2の識別用データであって、測定回数10回分のデータを調整する。
【0082】
次に、識別モデル生成ステップ(S42)について説明する。生成部134は、ステップS4111で調整した第1の学習データセットに基づき、加圧面積に対応する第1の識別モデルMD1を生成し、ステップS4111で調整した第2の学習データセットに基づき、圧力総和に対応する第2の識別モデルMD2を生成する。
【0083】
例えば、生成部134は、第1の経時データACTx(10回分/人)を波形と見做す。そして、生成部134は、ピーク数、最大値、最小値、平均値、ピーク高さ、微積分(傾き、面積)、前後のデータ間での差分の統計量等を特徴量として、被検者TU1~TU10それぞれについて、特徴量の傾向をモデルMD1に学習させるというモデル生成を行ってよい。
【0084】
また、生成部134は、第2の経時データPCTx(10回分/人)を波形と見做す。そして、生成部134は、ピーク数、最大値、最小値、平均値、ピーク高さ、微積分(傾き、面積)、前後のデータ間での差分の統計量等を特徴量として、被検者TU1~TU10それぞれについて、特徴量の傾向をモデルMD2に学習させるというモデル生成を行ってよい。
【0085】
また、生成部134は、モデル生成のための機械学習アルゴリズムとして、ランダムフォレストあるいはXGBoost等の決定木手法を用いてよい。
【0086】
次に、識別ステップ(S43)について説明する。識別部136は、ステップS4121で調整された第1の識別用データを第1の識別モデルMD1に入力し、ステップS4121で調整された第2の識別用データを第2の識別モデルMD2に入力する。
【0087】
図5の例では、第1の識別モデルMD1は、第1の識別用データを入力とする第1の識別結果として、対象者AU1(TU1)が被検者TU1~TU10であることの確率を示す分類確率を出力する。また、第1の識別モデルMD1は、第1の識別用データを入力とする第1の識別結果として、対象者AU2(TU2)が被検者TU1~TU10であることの確率を示す分類確率を出力する。このようにして、第1の識別モデルMD1は、対象者AU1~AU10の全てについて、被検者TU1~TU10であることの確率を示す分類確率を出力する。
【0088】
また、
図5の例では、第2の識別モデルMD2は、第2の識別用データを入力とする第2の識別結果として、対象者AU1(TU1)が被検者TU1~TU10であることの確率を示す分類確率を出力する。また、第2の識別モデルMD2は、第2の識別用データを入力とする第2の識別結果として、対象者AU2(TU2)が被検者TU1~TU10であることの確率を示す分類確率を出力する。このようにして、第2の識別モデルMD2は、対象者AU1~AU10の全てについて、被検者TU1~TU10であることの確率を示す分類確率を出力する。
【0089】
ここで、今回の検証実験で実際に得られた分類結果と、実施形態に係る識別処理による識別精度とを
図6に示す。
図6は、実施形態に係る識別処理の結果を示す図である。
図6には、分類結果が示される一覧テーブルTB1と、識別精度が示される一覧テーブルTB2とが含まれる。
【0090】
まず、一覧テーブルTB1について説明する。一覧テーブルTB1には、第1の識別モデルMD1が、対象者AU1(TU1)の第1の識別用データを入力として、被検者TU1~TU10それぞれについて出力した分類確率が一覧されている。より具体的には、一覧テーブルTB1には、10回分の測定データDA12のうち、ある1回分の測定データから調整された対象者AU1の第1の識別用データを入力として、被検者TU1~TU10それぞれについて出力した分類確率が一覧されている。
【0091】
また、一覧テーブルTB1には、第2の識別モデルMD2が、対象者AU1(TU1)の第2の識別用データを入力として、被検者TU1~TU10それぞれについて出力した分類確率が一覧されている。より具体的には、一覧テーブルTB1には、10回分の測定データDA12のうち、ある1回分の測定データから調整された対象者AU1の第2の識別用データを入力として、被検者TU1~TU10それぞれについて出力した分類確率が一覧されている。
【0092】
図6の例によれば、第1の識別モデルMD1は、10回分の測定データDA12のうち、ある1回分(1/10)の測定データから調整された第1の識別用データを入力として、対象者AU1が被検者TU1であることの確率「30%」、対象者AU1が被検者TU2であることの確率「0%」等を出力している。また、
図6の例では、第1の識別モデルMD1は、対象者AU1が被検者TU8であることの確率「31%」を出力しており、被検者TU1~TU10の中でこの確率値が最も高い。したがって、
図6の例では、被検者TU8に対応する分類確率「31%」が第1の分類確率に相当する。
【0093】
また、
図6の例によれば、第2の識別モデルMD2は、10回分の測定データDA12のうち、同様のある1回分(1/10)の測定データから調整された第2の識別用データを入力として、対象者AU1が被検者TU1であることの確率「60%」、対象者AU1が被検者TU2であることの確率「0%」等を出力している。また、
図6の例では、対象者AU1が被検者TU1であることの確率「60%」が最も高く、被検者TU1に対応するこの分類確率「60%」が第2の分類確率に相当する。
【0094】
係る例によれば、識別部136は、第1の分類確率「31%」(TU8)と、第2の分類確率「60%」(TU1)とを統合する統合処理によって、被検者TU8および被検者TU1のうち確率値がより高い方、すなわち被検者TU1と、対象者AU1とが同一人物であると認証する。
【0095】
また、
図6の例によれば、第1の識別モデルMD1は、10回分の測定データDA12のうち、別の1回分(2/10)の測定データから調整された第1の識別用データを入力として、対象者AU1が被検者TU1であることの確率「54%」、対象者AU1が被検者TU2であることの確率「1%」等を出力している。また、
図6の例では、対象者AU1が被検者TU1であることの確率「54%」が最も高く、被検者TU1に対応するこの分類確率「54%」が第1の分類確率に相当する。
【0096】
一方、
図6の例によれば、第2の識別モデルMD2は、10回分の測定データDA12のうち、同様の別の1回分(2/10)の測定データから調整された第2の識別用データを入力として、対象者AU1が被検者TU1であることの確率「76%」、対象者AU1が被検者TU2であることの確率「0%」等を出力している。また、
図6の例では、対象者AU1が被検者TU1であることの確率「76%」が最も高く、被検者TU1に対応するこの分類確率「76%」が第2の分類確率に相当する。
【0097】
係る例によれば、識別部136は、第1の分類確率「54%」(TU1)と、第2の分類確率「76%」(TU1)とを統合する統合処理によって、被検者TU1と、対象者AU1とが同一人物であると認証する。
【0098】
ここで、一覧テーブルTB1には、対象者AU1にフォーカスし、かつ、2回分の測定データに対応する結果のみ記されているが、実際には、対象者AU1~AU10の全てについて10回分の測定データを用いて認証が行われた。そこで、一覧テーブルTB2には、10回分の最終結果の正誤に基づき、どれだけの認証精度であったかが、被検者ごとに示されている。一覧テーブルTB2によれば、ほぼ100%に近い認証精度が得られている。また、このようなことから、実施形態に係る識別処理では、より少ないデータ量で高精度な個人認証が実現可能なことが立証された。具体的には、実施形態に係る識別処理では、例えば、10回程度の測定でも高精度な認証を実現可能なことが立証された。
【0099】
〔6.足圧分布データの具体例〕
次に、
図7を用いて、
図4で説明した一歩の動作に対応するフレーム群FLxの点から、一歩の動作に対応する足圧分布データについて具体的に説明する。
図7は、一歩の動作に対応する足圧分布データの具体例を示す図である。
図7では、ある人物が特定の一歩の動作を行う間での1/72秒ごとの測定によって得られたフレーム群FL1(フレーム群FLxの一例)のうち、一部のフレームがピックアップされている。
【0100】
例えば、フレームFL11は、測定開始から経過した経過時間N1(S)の時点で実行された足圧測定の測定結果である足圧分布データが画像として出力されたものに相当する。また、フレームFL12は、経過時間N2(S)の時点で実行された足圧測定の測定結果である足圧分布データが画像として出力されたものであり、フレームFL11から8フレーム先のデータに相当する。また、フレームFL13は、経過時間N3(S)の時点で実行された足圧測定の測定結果である足圧分布データが画像として出力されたものであり、フレームFL1から35フレーム先のデータに相当する。
【0101】
ここで、
図8には、フレームFL12がピックサップされているが、係る例によれば、フレームFL11、フレームFL12、フレームFL13等をはじめとする各フレームは、48マス×48マスで構成されている。係るマス構成により足裏を複数の領域に分割することができる。このようなことから、測定マット10のセンサは、足裏に対応する領域ごとに、当該領域に対応する足裏部分に掛かった圧力を検出する。そして、例えば、圧力が検出された領域に対応するマスの中には、この圧力の値が入力された状態のフレームが出力される。
図7に示すフレームFL11、フレームFL12、フレームFL13において、圧力が検出された足裏領域に対応するマスの中には、この圧力の値が表示されている。
【0102】
また、
図7や
図8の例によれば、圧力が検出された足裏領域に対応するマスが、圧力の値の大小関係に応じてヒートマップ表示されている。ここで、上述したように、一歩の動作は、足裏を測定マット10に着け始めて、そして踏み込んで、最後には測定マット10から完全に離すという一連の動作として定義することができる。このようなことから、フレームFL11においてヒートマップ表示されている1つの領域は、例えば、一歩の動作が開始されたことに応じて踵の一部が測定マット10に着いた結果、踵に対応する足裏領域に圧力が掛かったことを示している。
【0103】
また、フレームFL12においてヒートマップ表示されている特長的な2つの領域は、一歩の動作が進んだことに応じて、足裏全体(例えば、踵や母指球等)で測定マット10が踏み込まれた結果、全体部分に対応する足裏領域に圧力が掛かったことを示している。
【0104】
また、フレームFL13においてヒートマップ表示されている特長的な1つの領域は、一歩の動作がさらに進んだことに応じて、最後につま先部分のみ測定マット10に着いていることで、つま先に対応する足裏領域には未だ圧力が掛かったことを示している。
【0105】
図7で説明したように、本実施形態では、人物が歩行することに応じて、歩数に応じた分のフレーム群FLxが得られる。そして、一歩の動作に対応するフレーム群FLxは、各測定タイミングでの足裏の着面状態に応じた圧力の値の分布がマス中に示されたフレームで構成される。
【0106】
〔7.抽出手法〕
続いて、
図8を用いて、第1の経時データおよび第2の経時データの抽出手法について具体的に説明する。
図8は、実施形態に係る抽出手法を説明する説明図である。上述したように、
図8には、
図7のフレームFL11、FL12およびFL13のうち、フレームFL12がピックアップされている。
【0107】
また、
図8の例では、フレームFL12においてヒートマップ表示されている特長的な2つの領域のうち、踵に対応する足裏領域が拡大表示されている。
図8では、この拡大図を用いて、第1の経時データおよび第2の経時データの抽出手法を説明する。
【0108】
まず、第1の経時データの抽出手法について説明する。例えば、抽出部132は、「6」より低い圧力の値についてはノイズと判断し、圧力の値「6」以上が入力されているマスを抽出する。
図8に示す拡大図によれば、抽出部132は、ヒートマップとして示されているマスを抽出してよい。なお、ノイズか否か判断する基準の値は「6」に限定されない。
【0109】
そして、抽出部132は、抽出したマスで構成される抽出領域(点線で示される領域)の面積を算出し、算出した面積をフレームFL12に対応する測定タイミングでの加圧面積と定める。なお、ここでいう加圧面積とは、より具体的には、圧力の値「6」以上が入力されているマスそれぞれの面積を足し合わせた面積総和に相当する。
図8には、抽出部132が、経過時間N2(S)の時点で実行された足圧測定の測定結果である足圧分布データ(フレームFL12)から加圧面積A12を算出した例が示される。
【0110】
なお、
図8では、踵に対応する足裏領域だけに着目して加圧面積A12が算出された例を示したが、抽出部132は、実際には、もう一方の特徴的な領域も含めて、圧力の値「6」以上が入力されているマスを抽出することで、経過時間N2(S)の時点での加圧面積を算出する。
【0111】
また、
図8には、経過時間N2(S)では加圧面積A12が算出された例が示されるが、抽出部132は、経過時間N1(S)や、経過時間N3(S)等、1/72秒おきに得られる圧力分布データそれぞれから加圧面積を算出することで、加圧面積の経時変化を示す第1の経時データを抽出する。
【0112】
続いて、第2の経時データの抽出手法について説明する。例えば、抽出部132は、加圧面積のために抽出した抽出領域(点線で示される領域)に含まれるマスそれぞれに入力されている圧力の値を足し合わせたものを、フレームFL12に対応する測定タイミングでの圧力総和と定める。
図8には、抽出部132が、経過時間N2(S)の時点で実行された足圧測定の測定結果である足圧分布データ(フレームFL12)から圧力総和P12を算出した例が示される。
【0113】
また、
図8には、経過時間N2(S)では圧力総和P12が算出された例が示されるが、抽出部132は、経過時間N1(S)や、経過時間N3(S)等、1/72秒おきに得られる圧力分布データそれぞれから圧力総和を算出することで、圧力総和の経時変化を示す第2の経時データを抽出する。
【0114】
〔8.第1の経時データについて〕
続いて、
図9を用いて、
図5のステップS4011において、対象者AU1~AU10それぞれについて抽出された第1の経時データの一例を示す。
図9は、実施形態に係る第1の経時データの一例を示す図である。
図9には、特定の歩数目に対応する一歩の動作の間において、特定のタイミングごと(例えば、1/72秒ごと)の測定によって得られた各フレームから加圧面積が算出され、算出された加圧面積がグラフ化された様子が示される。
【0115】
より具体的には、
図9(a)には、一歩の動作が開始されたことが検出されたことに応じて、特定のタイミングごとに足圧分布が測定されたことで、特定のタイミングごとに得られた各フレームから算出された加圧面積の一覧が示される。また、
図9(b)には、
図9(a)に示される加圧面積の一覧が被検者TU1~TU10ごとにグラフ化された様子が示される。
【0116】
なお、
図9でいう特定のタイミングとは、一歩の動作が開始されたことが検出されたことに応じて足圧分布の測定が開始されてからの経過時間「0.000(S)」、経過時間「0.014(S)」、経過時間「0.028(S)」、経過時間「0.042(S)」、経過時間「0.056(S)」等の測定タイミングである。
【0117】
まず、
図9(a)について、被検者TU1の例を用いて説明する。
図9(a)の例によれば、抽出部132は、経過時間「0.000(S)」での測定結果として得られた1つのフレーム(足圧分布データ)からは、加圧面積「55」を算出している。また、抽出部132は、経過時間「0.014(S)」での測定結果として得られた1つのフレーム(足圧分布データ)からは、加圧面積「72」を算出している。また、抽出部132は、経過時間「0.028(S)」での測定結果として得られた1つのフレーム(足圧分布データ)からは、加圧面積「83」を算出している。また、抽出部132は、経過時間「0.042(S)」での測定結果として得られた1つのフレーム(足圧分布データ)からは、加圧面積「116」を算出している。また、抽出部132は、経過時間「0.056(S)」での測定結果として得られた1つのフレーム(足圧分布データ)からは、加圧面積「133」を算出している。なお、係る例に倣って、
図9(a)に示される他の被検者についても説明可能なため、他の被検者については説明を省略する。また、加圧面積の算出手法については
図8で説明した通りである。
【0118】
また、
図9(a)に示される被検者ごとの加圧面積群は、これまでの例によれば、測定データDA11(10回分/人)を構成する各フレーム群FLxのうち、一歩の動作に対応するフレーム群FLxに含まれるフレームそれぞれから算出された加圧面積の経時変化を示す第1の経時データといえる。
【0119】
次に、
図9(b)について説明する。
図9(b)では、経過時間「0.000(S)」、経過時間「0.014(S)」、経過時間「0.028(S)」、経過時間「0.042(S)」、経過時間「0.056(S)」等の各測定タイミングに対して、このタイミングで得られたフレームに基づき算出された加圧面積をプロットすることで生成されたグラフである。説明の便宜上、
図9(b)には、被検者TU1~TU10のうち、被検者TU1~TU4の4人のグラフのみ示されている。
【0120】
例えば、第1の経時データACT1(1回分/人)は、
図5で説明した被検者TU1に対応する第1の経時データACTx(10回分/人)のうち、被検者TU1による特定の一歩の動作に対応するフレーム群FLxから算出された1回分の第1の経時データに対応する。また、第1の経時データACT2(1回分/人)は、被検者TU2に対応する第1の経時データACTx(10回分/人)のうち、被検者TU2による特定の一歩の動作に対応するフレーム群FLxから算出された1回分の第1の経時データに対応する。
【0121】
また、第1の経時データACT3(1回分/人)は、被検者TU3に対応する第1の経時データACTx(10回分/人)のうち、被検者TU3による特定の一歩の動作に対応するフレーム群FLxから算出された1回分の第1の経時データに対応する。また、第1の経時データACT4(1回分/人)は、被検者TU4に対応する第1の経時データACTx(10回分/人)のうち、被検者TU4による特定の一歩の動作に対応するフレーム群FLxから算出された1回分の第1の経時データに対応する。
【0122】
また、
図9(b)の例によれば、第1の経時データは、波形を示し、その形状は被検者ごとに様々である。つまり、加圧面積の経時変化には、被検者の歩き方の特徴が反映されていると解することができる。このように、第1の経時データは、歩き方に応じて特徴的な形状を示すため(特徴量波形)、被検者を識別するユニークな情報といえる。したがって、第1の経時データは、学習データとして有効な情報になり得ることが
図9から示唆される。
【0123】
〔9.第2の経時データについて〕
ここからは、
図10を用いて、
図5のステップS4011において、対象者AU1~AU10それぞれについて抽出された第2の経時データの一例を示す。
図10は、実施形態に係る第2の経時データの一例を示す図である。
図10には、特定の歩数目に対応する一歩の動作の間において、特定のタイミングごと(例えば、1/72秒ごと)の測定によって得られた各フレームから圧力総和が算出され、算出された圧力総和がグラフ化された様子が示される。
【0124】
より具体的には、
図10(a)には、一歩の動作が開始されたことが検出されたことに応じて、特定のタイミングごとに足圧分布が測定されたことで、特定のタイミングごとに得られた各フレームから算出された圧力総和の一覧が示される。また、
図10(b)には、
図10(a)に示される圧力総和の一覧が被検者TU1~TU10ごとにグラフ化された様子が示される。なお、
図10に示す圧力総和は、
図9と同様のフレームを用いて算出されたものである。
【0125】
まず、
図10(a)について、被検者TU1の例を用いて説明する。
図10(a)の例によれば、抽出部132は、経過時間「0.000(S)」での測定結果として得られた1つのフレーム(足圧分布データ)からは、圧力総和「1772.6」を算出している。また、抽出部132は、経過時間「0.014(S)」での測定結果として得られた1つのフレーム(足圧分布データ)からは、圧力総和「2308.6」を算出している。また、抽出部132は、経過時間「0.028(S)」での測定結果として得られた1つのフレーム(足圧分布データ)からは、圧力総和「2777.6」を算出している。また、抽出部132は、経過時間「0.042(S)」での測定結果として得られた1つのフレーム(足圧分布データ)からは、圧力総和「3560.1」を算出している。また、抽出部132は、経過時間「0.056(S)」での測定結果として得られた1つのフレーム(足圧分布データ)からは、圧力総和「4018.2」を算出している。なお、係る例に倣って、
図9(a)に示される他の被検者についても説明可能なため、他の被検者については説明を省略する。また、圧力総和の算出手法については
図8で説明した通りである。
【0126】
また、
図10(a)に示される被検者ごとの圧力総和群は、これまでの例によれば、測定データDA11(10回分/人)を構成する各フレーム群FLxのうち、一歩の動作に対応するフレーム群FLxに含まれるフレームそれぞれから算出された圧力総和の経時変化を示す第2の経時データといえる。
【0127】
次に、
図10(b)について説明する。
図10(b)では、経過時間「0.000(S)」、経過時間「0.014(S)」、経過時間「0.028(S)」、経過時間「0.042(S)」、経過時間「0.056(S)」等の各測定タイミングに対して、このタイミングで得られたフレームに基づき算出された圧力総和をプロットすることで生成されたグラフである。説明の便宜上、
図10(b)でも、被検者TU1~TU10のうち、被検者TU1~TU4の4人のグラフのみ示されている。
【0128】
例えば、第2の経時データPCT1(1回分/人)は、
図5で説明した被検者TU1に対応する第2の経時データPCTx(10回分/人)のうち、被検者TU1による特定の一歩の動作に対応するフレーム群FLxから算出された1回分の第2の経時データに対応する。また、第2の経時データPCT2(1回分/人)は、被検者TU2に対応する第2の経時データPCTx(10回分/人)のうち、被検者TU2による特定の一歩の動作に対応するフレーム群FLxから算出された1回分の第2の経時データに対応する。
【0129】
また、第2の経時データPCT3(1回分/人)は、被検者TU3に対応する第2の経時データPCTx(10回分/人)のうち、被検者TU3による特定の一歩の動作に対応するフレーム群FLxから算出された1回分の第2の経時データに対応する。また、第2の経時データPCT4(1回分/人)は、被検者TU4に対応する第2の経時データPCTx(10回分/人)のうち、被検者TU4による特定の一歩の動作に対応するフレーム群FLxから算出された1回分の第2の経時データに対応する。
【0130】
また、
図10(b)の例によれば、第2の経時データも同様に波形を示し、その形状は被検者ごとに様々である。つまり、圧力総和の経時変化には、被検者の歩き方の特徴が反映されていると解することができる。このように、第2の経時データは、歩き方に応じて特徴的な形状を示すため(特徴量波形)、被検者を識別するユニークな情報といえる。したがって、第2の経時データは、学習データとして有効な情報になり得ることが
図10から示唆される。
【0131】
〔10.規格化手法〕
続いて、
図11を用いて、第1の経時データおよび第2の経時データに対して行われる規格化の手法について説明する。
図11は、実施形態に係る規格化手法を説明する説明図である。
図11では、被検者TU1に対応する第1の経時データACTx(10回分/人)の例を用いて、規格化手法を説明する。
【0132】
図11(a)には、被検者TU1について10回の測定が行われたことで、一歩の動作に対応する第1の経時データ(特徴量波形)が、例えば10歩分(例えば、右足10歩分)記されている。
【0133】
ここで、
図11(a)の例によれば、第1の経時データそれぞれに対応する波形データの終端にズレが生じている。具体的には、一歩の動作の計測が開始されたタイミングは、いずれの動作の間でも経過時間「0.000(S)」で共通している一方で、加圧面積がゼロになるタイミング(一歩の動作の計測が終了されたタイミング)には、歩行動作の間でバラつきが生じしまっている。このようなバラつきの原因として、被検者TU1の歩行速度が一定でなかったことが考えられる。
【0134】
このように、人物は、意識していても一定速度で歩行することは困難であるため、第1の経時データおよび第2の経時データには不均一性が生じてしまう。そして、不均一なままの生データを使用して識別モデルが生成された場合、その精度は必ずしも高いものとはいえない場合がある。このようなことから、歩行速度の違いによるデータの不均一性を整えるための処理として、実施形態に係る規格化処理が実行される。
【0135】
例えば、前処理部133は、識別モデルが生成されるための前処理として、複数歩分の第1の経時データを規格化する規格化処理を行う。具体的には、前処理部133は、一定の速度で複数歩を歩行されたと見做すように、複数歩分の第1の経時データを規格化してよい。例えば、
図11(a)では、第1の経時データの間で、加圧面積がゼロになるタイミングにバラつきが生じてしまっているところを、前処理部133は、
図11(b)に示すように、加圧面積がゼロになるタイミングを「1(S)」で揃えるという規格化を行ってよい。この結果、第1の経時データ間での不均一性が抑制されるため、個人認証装置100は、第1の識別モデルMD1の識別精度を向上させることができるようになる。
【0136】
また、
図11では、第1の経時データを例に説明したが、第2の経時データについても同様のことがいえる。
【0137】
例えば、一歩の動作の計測が開始されたタイミングは、いずれの動作の間でも経過時間「0.000(S)」で共通している一方で、圧力総和がゼロになるタイミング(一歩の動作の計測が終了されたタイミング)には、歩行動作の間でバラつきが生じてしまう。このようなバラつきの原因も同様に、歩行速度が一定でないことが考えられる。
【0138】
そこで、前処理部133は、識別モデルが生成されるための前処理として、複数歩分の第2の経時データを規格化する規格化処理を行う。具体的には、前処理部133は、一定の速度で複数歩を歩行されたと見做すように、複数歩分の第1の経時データを規格化してよい。例えば、第2の経時データの間で、圧力総和がゼロになるタイミングにバラつきが生じてしまっているところを、前処理部133は、加圧面積がゼロになるタイミングを「1(S)」で揃えるという規格化を行ってよい。この結果、第2の経時データ間での不均一性が抑制されるため、個人認証装置100は、第2の識別モデルMD2の識別精度を向上させることができるようになる。
【0139】
なお、前処理部133は、対象者の圧力分布データから抽出された第1の経時データ、および、第2経時データについても同様の手法で規格化を行うことで、規格化後のデータを識別用データとして識別モデルに入力させてよい。
【0140】
〔11.処理手順(1)〕
ここからは、
図12を用いて、実施形態に係る認証システム1において、個人認証装置100が実行する学習処理の手順について説明する。
図12は、実施形態に係る学習処理手順を示すフローチャートである。
【0141】
まず、取得部131は、被検者を複数歩歩かせることに応じて、特定のタイミングごとに足圧分布が測定された結果として、n歩分の足圧分布データすなわち足圧分布データ(n回分/人)を取得する(ステップS1201)。例えば、このような足圧分布データが測定マット10から端末装置30へと出力されている場合には、取得部131は、端末装置30にアクセスすることで、これまでに蓄積されている足圧分布データ(n回分/人)を取得してよい。
【0142】
次に、抽出部132は、足圧分布データ(n回分/人)を一歩の動作単位で分割する(ステップS1202)。
【0143】
そして、抽出部132は、ステップS1202で得られた足圧分布データすなわち足圧分布データ(1回分/人)に基づいて、加圧面積の経時変化を示す第1の経時データ(n回分/人)と、圧力総和の経時変化を示す第2経過データ(n回分/人)とを抽出する(ステップS1203)。
【0144】
例えば、抽出部132は、足圧分布データ(1回分/人)に対応するフレーム群であるフレーム群FLxに含まれるフレームごとに加圧面積を算出する。例えば、抽出部132は、フレームを構成するマスそれぞれに入力されている圧力値に基づいて、フレームごとに加圧面積を算出する。そして、抽出部132は、フレームが得られた測定タイミングと、このフレームから算出した加圧面積とを用いて、測定タイミングの経過に応じた加圧面積の推移を示す第1の経時データ(1回分/人)を抽出する。抽出部132は、n回分の足圧分布データそれぞれに対してこの処理を行うことで、最終的に第1の経時データ(n回分/人)を抽出する。
【0145】
また、抽出部132は、足圧分布データ(1回分/人)に対応するフレーム群FLxに含まれるフレームごとに圧力総和を算出する。例えば、抽出部132は、フレームを構成するマスそれぞれに入力されている圧力値に基づいて、フレームごとに圧力総和を算出する。そして、抽出部132は、フレームが得られた測定タイミングと、このフレームから算出した圧力総和とを用いて、測定タイミングの経過に応じた圧力総和の推移を示す第2の経時データ(1回分/人)を抽出する。抽出部132は、n回分の足圧分布データそれぞれに対してこの処理を行うことで、最終的に第2の経時データ(n回分/人)を抽出する。
【0146】
次に、前処理部133は、ステップS1203で抽出された第1の経時データ(n回分/人)、および、第2経過データ(n回分/人)に対して、歩行速度の違いによるデータの不均一性を一定に整えるための規格化処理を前処理として実行する(ステップS1204)。
【0147】
次に、生成部134は、ステップS1204で規格化された後の第1の経時データ(n回分/人)に基づき第1の学習データ(n回分/人)を調整し、また、ステップS1204で規格化された後の第2の経時データ(n回分/人)に基づき第2の学習データ(n回分/人)を調整する(ステップS1205)。
【0148】
例えば、生成部134は、規格化後の第1の経時データ(1回分/人)と、このデータに対応する人物を示す被検者データとの組み合わせを第1の学習データ(1回分/人)として調整する。生成部134は、規格化後におけるn回分の第1の経時データそれぞれに対してこの処理を行うことで、最終的に第1の学習データ(n回分/人)を調整する。
【0149】
また、生成部134は、規格化後の第2の経時データ(1回分/人)と、このデータに対応する人物を示す被検者データとの組み合わせを第2の学習データ(1回分/人)として調整する。生成部134は、規格化後におけるn回分の第2の経時データそれぞれに対してこの処理を行うことで、最終的に第2の学習データ(n回分/人)を調整する。
【0150】
次に、生成部134は、ステップS1205で調整した第1の学習データ(n回分/人)に基づき第1の識別モデルMD1を生成し、ステップS1205で調整した第2の学習データ(n回分/人)に基づき第2の識別モデルMD2を生成する(ステップS1206)。
【0151】
例えば、生成部134は、第1の学習データ(n回分/人)から特徴量を抽出し、第1の学習データ(n回分/人)に対応する人物におけるこの特徴量の傾向を決定木モデルに学習させることで、第1の識別モデルMD1を生成してよい。また、生成部134は、第2の学習データ(n回分/人)から特徴量を抽出し、第2の学習データ(n回分/人)に対応する人物におけるこの特徴量の傾向を決定木モデルに学習させることで、第2の識別モデルMD2を生成してよい。
【0152】
〔12.処理手順(2)〕
続いて、
図13を用いて、実施形態に係る認証システム1において、個人認証装置100が実行する識別処理の手順について説明する。
図13は、実施形態に係る識別処理手順を示すフローチャートである。
【0153】
まず、受付部135は、認証対象者に対応する足圧分布データを受け付けたか否かを判定する(ステップS1301)。
【0154】
なお。ここでいう足圧分布データは、足圧分布を測定される人物が認証対象者という違いがあるだけで、被検者の足圧分布を測定する際と同様の手法で測定されてよいものである。ただし必ずしもn回測定される必要はない。
【0155】
次に、抽出部132と、前処理部133とによって識別用データが調整される(ステップS1302)。例えば、抽出部132は、
図12のステップS1202およびS1203と同様の手法を用いて、認証対象者に対応する足圧分布データから第1の経時データと、第2の経時データとを抽出してよい。
【0156】
また、前処理部133は、
図12のステップS1204と同様の手法を用いて、認証対象者の足圧分布データから抽出された第1の経時データ、および、第2経過データに対して、規格化処理を施してよい。そして、前処理部133は、規格化した後の第1の経時データを第1の識別用データとして識別部136に出力し、規格化した後の第2の経時データを第3の識別用データとして識別部136に出力する。
【0157】
次に、識別部136は、ステップS1302で調整された識別用データと、
図12で説明した手順で生成済みの識別モデルとに基づいて、認証対象者が識別モデルの生成に関与した被検者のうちのいずれの人物であるかを識別する処理を実行する(ステップS1303)。
【0158】
例えば、識別部136は、第1の識別用データを第1の識別モデルMD1に入力し、第2の識別用データを第2の識別モデルMD2に入力する。
【0159】
例えば、第1の識別モデルMD1は、第1の識別用データを入力とする第1の識別結果として、今回の対象者が被検者であることの確率を示す分類確率を出力する。例えば、第1の識別モデルMD1は、被検者が複数存在する場合には、被検者ごとに、今回の対象者が当該被検者であることを示す分類確率を出力する。
【0160】
また、第2の識別モデルMD2は、第2の識別用データを入力とする第2の識別結果として、今回の対象者が被検者であることの確率を示す分類確率を出力する。例えば、第2の識別モデルMD2は、被検者が複数存在する場合には、被検者ごとに、今回の対象者が当該被検者であることを示す分類確率を出力する。
【0161】
識別部136は、上記のように出力された各分類確率に基づいて、最終的な識別を行う。具体的には、識別部136は、第1の識別モデルに対応する分類確率のうち、最も高い分類確率である第1の分類確率と、第2の識別モデルに対応する分類確率のうち、最も高い分類確率である第2の分類確率とを統合する統合処理を行う。例えば、識別部136は、第1の分類確率と、第2の分類確率とを比較し、第1の分類確率、第2の分類確率のうち、確率値の高い方に対応する1人の被検者と、今回の認証対象者とが同一人物であると認証する。第1の分類確率、第2の分類確率の双方で確率値が同一であることにより、確率値の最も高い被検者が双方で交通する場合には、識別部136は、この被検者と、今回の認証対象者とが同一人物であると認証してよい。
【0162】
〔13.限定解除〕
上記実施形態では、個人認証装置100が、加圧面積(パラメータの1種)の経時変化を示す第1の経時データからは第1の識別モデルを生成し、圧力総和(パラメータのもう1種)の経時変化を示す第2の経時データからは第2の識別モデルを生成する例を示した。すなわち、個人認証装置100が、2種のパラメータ(加圧面積、圧力総和)それぞれに対応する2種の識別モデルを生成する例を示した。しかしながら、個人認証装置100は、加圧面積および圧力総和以外にも、例えば、人物の歩行の特徴が波形に現れるようなパラメータが存在する場合には、そのパラメータをさらに用いて、2種以上のパラメータそれぞれに対応する2種以上の識別モデルを生成してもよい。例えば、個人認証装置100は、3種のパラメータそれぞれに対応する3種の識別モデルを生成してよい。
【0163】
また、上記実施形態ではクラウド側の個人認証装置100が識別モデルの生成および識別処理を行う例を示した。しかしながら、エッジ側の端末装置30が識別モデルの生成および識別処理を行ってもよい。つまり、端末装置30が、実施形態に係る個人認証装置として振る舞う構成が採用されてもよく、係る例では、端末装置30に対して、実施形態に係る個人認証プログラムが導入される。
【0164】
〔14.ユースケースについて〕
実施形態に係る識別処理が利用されるシーンとしては、例えば、クリーンルームに入室しようとする人物や、介護施設の入居者等を対象とする認証シーンが考えられる。
【0165】
例えば、クリーンルームに入室しようとする人物は、全身を専用の防塵服で覆っているが、指紋認証等の生態認証が採用されている場合、一部の着用物(手袋やマスク等)を外さなければ場合があり手間であるし、ハザードのリスクが大きくなる。一方、実施形態に係る識別処理では、クリーンルームに入室しようとする人物は、防塵服で覆った状態で測定マット10の上を歩行するだけで良いため利便性が増す。
【0166】
また、介護施設の入居者の多くは、高齢であるうえに身体が不自由であることから認証装置を適切に扱えない場合があるが、実施形態に係る識別処理では、測定マット10の上を歩行するだけで良いため、装置の扱いで手間取ることがなくなるというメリットがある。
【0167】
〔15.効果〕
上述してきたように、本開示に係る個人認証装置(実施形態では個人認証装置100)は、取得部(実施形態では取得部131)と、抽出部(実施形態では抽出部132)と、生成部(実施形態では生成部134)とを有する。取得部は、被検者の足裏に掛かる圧力の分布を示す足圧分布が、被検者の歩行に応じて測定された測定結果である足圧分布データを取得する。抽出部は、足圧分布データに基づいて、圧力に関する複数の異なるパラメータごとに、当該パラメータの経時変化であって、歩行に応じた経時変化を示す経時データを抽出する。生成部は、パラメータごとに抽出された経時データと、当該経時データの元となる足圧分布データが得られた被検者を示す被検者データとの組み合せを学習データとして用いて、対象者が被検者のうちのいずれの人物であるかを識別する識別モデルであって、各パラメータに対して個別に対応するパラメータごとの識別モデルを生成する。このような個人認証装置によれば、より少ないデータ量で高精度な個人認証が実現することができるようになる。
【0168】
また、複数の異なるパラメータの一方は、足裏の複数の領域それぞれに掛けられる圧力の値に基づき、複数の領域の中から抽出された抽出領域の面積を示す加圧面積であり、複数の異なるパラメータのもう一方は、この抽出領域に含まれる領域それぞれでの圧力の値の総和を示す圧力総和であってよい。係る場合、抽出部は、足圧分布データに基づいて、経時データとして、加圧面積の経時変化であって、歩行に応じた経時変化を示す第1の経時データと、圧力総和の経時変化であって、歩行に応じた経時変化を示す第2の経時データとを被検者ごとに抽出してよい。生成部は、第1の経時データと、当該第1の経時データの元となる足圧分布データが得られた被検者を示す被検者データとの組み合せを第1の学習データとして用いて、対象者が被検者のうちのいずれの人物であるかを識別する第1の識別モデルを生成してよい。また、生成部は、第2の経時データと、当該第2の経時データの元となる足圧分布データが得られた被検者を示す被検者データとの組み合せを第2の学習データとして用いて、対象者が被検者のうちのいずれの人物であるかを識別する第2の識別モデルを生成してよい。このような個人認証装置によれば、1種のデータ(圧力分布データ)から、2種のパラメータ(加圧面積、圧力総和)それぞれに対応する2種の経時データが抽出され、そして、これら経時データそれぞれに対応する2種の学習データが調整される。また、この結果、2種のパラメータ(加圧面積、圧力総和)それぞれに対応する2種の識別モデルが生成されるため、より少ないデータ量で高精度な個人認証が実現される。
【0169】
また、個人認証装置は、識別モデルを生成するための前処理として、経時データを規格化する前処理部(実施形態では前処理部133)をさらに有する。このような個人認証装置によれば、複数歩分の経時データの間で生じているバラつきを抑制することができるため、質の高い学習データを調整することができるようになる。
【0170】
また、個人認証装置は、対象者に対応する第1の経時データを入力として第1の識別モデルによって出力された結果である第1の識別結果と、対象者に対応する第2の経時データを入力として第2の識別モデルによって出力された結果である第2の識別結果とに基づいて、対象者が被検者のうちのいずれの人物であるかを識別する識別部(実施形態では識別部136)をさらに有する。このような個人認証装置によれば、第1の識別モデルによって出力された結果と、第2の識別モデルによって出力された結果とに基づいて、総合的な判断を行うことができるため、分類精度を向上させることができるようになる。
【0171】
〔16.ハードウェア構成〕
また、上述してきた実施形態に係る個人認証装置100は、例えば、
図14に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。
図14は、個人認証装置100の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM1300、HDD1400、通信インターフェイス(I/F)1500、入出力インターフェイス(I/F)1600、及びメディアインターフェイス(I/F)1700を有する。
【0172】
CPU1100は、ROM1300またはHDD1400に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0173】
HDD1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、及び、かかるプログラムによって使用されるデータ等を格納する。通信インターフェイス1500は、所定の通信網を介して他の機器からデータを受信してCPU1100へ送り、CPU1100が生成したデータを所定の通信網を介して他の機器へ送信する。
【0174】
CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、ディスプレイやプリンタ等の出力装置、及び、キーボードやマウス等の入力装置を制御する。CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、入力装置からデータを取得する。また、CPU1100は、生成したデータを入出力インターフェイス1600を介して出力装置へ出力する。
【0175】
メディアインターフェイス1700は、記録媒体1800に格納されたプログラムまたはデータを読み取り、RAM1200を介してCPU1100に提供する。CPU1100は、かかるプログラムを、メディアインターフェイス1700を介して記録媒体1800からRAM1200上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。記録媒体1800は、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0176】
例えば、コンピュータ1000が実施形態に係る個人認証装置100として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされたプログラム(例えば、実施形態に係る個人認証プログラム)を実行することにより、制御部130の機能を実現する。コンピュータ1000のCPU1100は、これらのプログラムを記録媒体1800から読み取って実行するが、他の例として、他の装置から所定の通信網を介してこれらのプログラムを取得してもよい。
【0177】
〔17.その他〕
また、上記各実施形態において説明した処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0178】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0179】
また、上記各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0180】
以上、本願の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0181】
1 認証システム
10 測定マット
30 端末装置
100 個人認証装置
120 記憶部
121 測定データ記憶部
122 第1の経時データ記憶部
123 第2の経時データ記憶部
124 第1の学習データ記憶部
125 第2の学習データ記憶部
126 モデルデータ記憶部
130 制御部
131 取得部
132 抽出部
133 前処理部
134 生成部
135 受付部
136 識別部