(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149018
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】回転電機、及び回転電機の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/2753 20220101AFI20231005BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20231005BHJP
H02K 21/14 20060101ALI20231005BHJP
H02K 1/16 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H02K1/2753
H02K15/02 K
H02K21/14
H02K1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057336
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】清水 謙太
【テーマコード(参考)】
5H601
5H615
5H621
5H622
【Fターム(参考)】
5H601AA22
5H601CC01
5H601CC02
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601GA02
5H601GB12
5H601GB33
5H601GB48
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB02
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP02
5H621AA02
5H621BB07
5H621GA16
5H621HH01
5H621JK01
5H622AA02
5H622CA02
5H622CA10
5H622CB01
5H622CB02
5H622CB05
(57)【要約】
【課題】コギングトルクの脈動を低減できる回転電機、及び回転電機の製造方法を提供する。
【解決手段】回転電機は、ステータとロータとを有している。ステータは、筒状のヨーク、複数のティース、及び複数のスロットを有するステータコアと、ティースに集中巻きで巻回されたコイルとを有している。ロータは、筒状のロータコアと、ロータコアの周方向に並ぶ複数の永久磁石Mとを有している。永久磁石Mは、S極磁石、又は磁化方向がS極磁石とは異なるN極磁石である。S極磁石とN極磁石は、ロータコアの周方向において交互に並んでいる。q=スロットの数/(ロータの極数×コイルの相数)としたとき、qは分数かつq<1/2である。磁束密度の大きい永久磁石Mほど、永久磁石Mの表面積は小さくなっている。永久磁石Mの表面磁束数は、全ての永久磁石Mで同じである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のヨーク、前記ヨークから前記ヨークの径方向に延出するとともに前記ヨークの周方向に間隔を空けて配置された複数のティース、及び前記ヨークの周方向に隣り合う前記ティースの間に位置する空間であるスロットを有するステータコアと、前記ティースに集中巻きで巻回されたコイルとを有するステータと、
筒状のロータコアと、前記ロータコアの周方向に並ぶ複数の永久磁石とを有するロータと、
を備え、
前記永久磁石は、S極磁石、又は磁化方向が前記S極磁石とは異なるN極磁石であり、前記S極磁石と前記N極磁石は、前記ロータコアの周方向において交互に並んでおり、
q=前記スロットの数/(前記ロータの極数×前記コイルの相数)としたとき、qが分数かつq<1/2である回転電機であって、
磁束密度の大きい前記永久磁石ほど、前記永久磁石の表面積は小さくなっており、
前記永久磁石の表面磁束数は、全ての前記永久磁石で同じであることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
磁束密度の大きい前記永久磁石ほど、前記ロータコアの軸方向における前記永久磁石の長さが短いことにより、前記永久磁石の表面積は小さくなっている請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
筒状のヨーク、前記ヨークから前記ヨークの径方向に延出するとともに前記ヨークの周方向に間隔を空けて配置された複数のティース、及び前記ヨークの周方向に隣り合う前記ティースの間に位置する空間であるスロットを有するステータコアと、前記ティースに集中巻きで巻回されたコイルとを有するステータと、
筒状のロータコアと、前記ロータコアの周方向に並ぶ複数の永久磁石とを有するロータと、
を備え、
前記永久磁石は、S極磁石、又は磁化方向が前記S極磁石とは異なるN極磁石であり、前記S極磁石と前記N極磁石は、前記ロータコアの周方向において交互に並んでおり、
q=前記スロットの数/(前記ロータの極数×前記コイルの相数)としたとき、qが分数かつq<1/2である回転電機の製造方法であって、
前記複数の永久磁石のそれぞれについて表面磁束数又は磁束密度を取得する取得工程と、
前記複数の永久磁石のうち、表面磁束数又は磁束密度が最も小さい前記永久磁石を最小磁石とし、前記最小磁石以外の前記永久磁石の表面磁束数が前記最小磁石の表面磁束数と同じになるように、前記最小磁石以外の前記永久磁石を削る加工工程と、
前記最小磁石及び前記加工工程において削られた前記最小磁石以外の前記永久磁石を前記ロータコアの周方向に並べる配置工程と、
を有することを特徴とする回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機、及び回転電機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機は、ステータとロータとを備えている。ステータは、ステータコアとコイルとを有している。ステータコアは、筒状のヨークと、複数のティースと、複数のスロットとを有している。各ティースは、ヨークからヨークの径方向に延出している。複数のティースは、ヨークの周方向に間隔を空けて配置されている。スロットは、ヨークの周方向に隣り合うティースの間に位置する空間である。コイルは、ティースに集中巻きで巻回されている。ロータは、筒状のロータコアと、ロータコアの周方向に並ぶ複数の永久磁石とを有している。永久磁石は、S極磁石、又は磁化方向がS極磁石とは異なるN極磁石である。S極磁石とN極磁石は、ロータコアの周方向において交互に並んでいる。
【0003】
一般に、q=スロットの数/(ロータの極数×コイルの相数)としたとき、qが分数かつq<1/2となる回転電機を分数スロットの回転電機という。例えば、特許文献1のモータは、3相12スロットのステータと、14極のロータとを備えている。このモータは、q=12/(14×3)=2/7である分数スロットのモータである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分数スロットの回転電機では、永久磁石の表面磁束数がばらついていると、機械角1周期の間においてトルクの値が電気角毎に変化するため、コギングトルクの脈動が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するための回転電機は、筒状のヨーク、前記ヨークから前記ヨークの径方向に延出するとともに前記ヨークの周方向に間隔を空けて配置された複数のティース、及び前記ヨークの周方向に隣り合う前記ティースの間に位置する空間であるスロットを有するステータコアと、前記ティースに集中巻きで巻回されたコイルとを有するステータと、筒状のロータコアと、前記ロータコアの周方向に並ぶ複数の永久磁石とを有するロータと、を備え、前記永久磁石は、S極磁石、又は磁化方向が前記S極磁石とは異なるN極磁石であり、前記S極磁石と前記N極磁石は、前記ロータコアの周方向において交互に並んでおり、q=前記スロットの数/(前記ロータの極数×前記コイルの相数)としたとき、qが分数かつq<1/2である回転電機であって、磁束密度の大きい前記永久磁石ほど、前記永久磁石の表面積は小さくなっており、前記永久磁石の表面磁束数は、全ての前記永久磁石で同じであることを要旨とする。
【0007】
磁束密度の大きい永久磁石ほど永久磁石の表面積が小さくなっているため、永久磁石の表面磁束数は全ての永久磁石で同である。このため、電気角周期毎の鎖交磁束の差が小さくなる。よって、コギングトルクの脈動を低減できる。
【0008】
上記回転電機において、磁束密度の大きい前記永久磁石ほど、前記ロータコアの軸方向における前記永久磁石の長さが短いことにより、前記永久磁石の表面積は小さくなっていてもよい。
【0009】
これによれば、永久磁石の表面磁束数は、ロータコアの軸方向における永久磁石の長さに比例している。このため、永久磁石の表面磁束数を全ての永久磁石で同じにするための永久磁石の表面積の調整が容易である。また、ロータコアの軸方向から見たときの永久磁石の形状が全ての永久磁石で同じであるため、ロータのバランスを良好に保つことができる。
【0010】
上記問題点を解決するための回転電機の製造方法は、筒状のヨーク、前記ヨークから前記ヨークの径方向に延出するとともに前記ヨークの周方向に間隔を空けて配置された複数のティース、及び前記ヨークの周方向に隣り合う前記ティースの間に位置する空間であるスロットを有するステータコアと、前記ティースに集中巻きで巻回されたコイルとを有するステータと、筒状のロータコアと、前記ロータコアの周方向に並ぶ複数の永久磁石とを有するロータと、を備え、前記永久磁石は、S極磁石、又は磁化方向が前記S極磁石とは異なるN極磁石であり、前記S極磁石と前記N極磁石は、前記ロータコアの周方向において交互に並んでおり、q=前記スロットの数/(前記ロータの極数×前記コイルの相数)としたとき、qが分数かつq<1/2である回転電機の製造方法であって、前記複数の永久磁石のそれぞれについて表面磁束数又は磁束密度を取得する取得工程と、前記複数の永久磁石のうち、表面磁束数又は磁束密度が最も小さい前記永久磁石を最小磁石とし、前記最小磁石以外の前記永久磁石の表面磁束数が前記最小磁石の表面磁束数と同じになるように、前記最小磁石以外の前記永久磁石を削る加工工程と、前記最小磁石及び前記加工工程において削られた前記最小磁石以外の前記永久磁石を前記ロータコアの周方向に並べる配置工程と、を有することを要旨とする。
【0011】
永久磁石の表面磁束数がばらついていても、加工工程において最小磁石以外の永久磁石を削ることにより、永久磁石の表面磁束数を全ての永久磁石で同じにしている。このため、電気角周期毎の鎖交磁束の差が小さくなる。よって、コギングトルクの脈動を低減できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コギングトルクの脈動を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】実施形態における永久磁石の軸長を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、回転電機、及び回転電機の製造方法を具体化した一実施形態を
図1及び
図2にしたがって説明する。
<<回転電機の構成>>
図1に示すように、回転電機10は、筒状のステータ11と、筒状のロータ12とを備えている。ステータ11は、ロータ12を取り囲んでいる。したがって、ロータ12は、ステータ11の内側に配置されている。
【0015】
<ステータの構成>
ステータ11は、ステータコア21と、U相、V相、及びW相のコイル22とを有している。
【0016】
ステータコア21は、筒状のヨーク23と、複数のティース24と、複数のスロット25とを有している。本実施形態のステータコア21は、複数のティース24として12個のティース24を有するとともに、複数のスロット25として12個のスロット25を有している。
【0017】
ヨーク23は、円筒状である。各ティース24は、ヨーク23の内周面からステータコア21の径方向内側に延出している。複数のティース24は、ヨーク23の周方向において間隔を空けて配置されている。各スロット25は、ヨーク23の周方向に隣り合うティース24の間に位置する空間である。ティース24とスロット25は、ヨーク23の周方向において交互に並んでいる。
【0018】
コイル22は、ティース24に集中巻きで巻回されている。コイル22の一部は、スロット25を通過している。なお、ステータコア21とコイル22との間、及び異なる相のコイル22の間は、図示しない絶縁部材によって絶縁されている。
【0019】
<ロータの構成>
ロータ12は、筒状のロータコア26と、複数の永久磁石Mとを有している。本実施形態のロータ12は、複数の永久磁石Mとして14個の永久磁石Mを有している。
【0020】
ロータコア26は、円筒状である。ロータコア26の内側には、回転軸13が挿通されている。回転軸13は、ロータコア26に固定されている。回転軸13は、ロータ12と一体的に回転する。
【0021】
複数の永久磁石Mは、ロータコア26の周方向に並んでいる。永久磁石Mは、S極磁石又はN極磁石である。S極磁石は、ロータコア26の径方向における永久磁石Mの外側部位にS極が存在するとともに、ロータコア26の径方向における永久磁石Mの内側部位にN極が存在する磁石である。N極磁石は、ロータコア26の径方向における永久磁石Mの外側部位にN極が存在するとともに、ロータコア26の径方向における永久磁石Mの内側部位にS極が存在する磁石である。つまり、S極磁石の磁化方向とN極磁石の磁化方向は、互いに異なっている。S極磁石とN極磁石は、ロータコア26の周方向において交互に配置されている。本実施形態では、14個の永久磁石Mのうち、S極磁石及びN極磁石は各7個である。
【0022】
本実施形態では、複数の永久磁石Mは、ロータコア26の外周面に配置されている。本実施形態のロータ12は、ロータ12の表面に永久磁石Mが配置されたSPM(Surface Permanent Magnet)型のロータである。各永久磁石Mにおいてロータコア26の外周面と対向する面は、ロータコア26の外周面に沿うように湾曲している。また、各永久磁石Mにおいてロータコア26の外周面と対向する面とは反対側の面は、ロータコア26の径方向外側に向けて凸となるように湾曲している。
【0023】
一般に、q=スロット25の数/(ロータ12の極数×コイル22の相数)としたとき、qが分数かつq<1/2となる回転電機を分数スロットの回転電機という。上述したように、本実施形態のステータ11は、3相12スロットのステータである。本実施形態のロータ12は、14極(7極対)のロータである。したがって、本実施形態の回転電機10は、q=12/(14×3)=2/7である分数スロットの回転電機である。
【0024】
<永久磁石の磁束密度>
複数の永久磁石Mのうち、少なくとも1つの永久磁石Mの磁束密度は、他の永久磁石Mの磁束密度と異なっている。
【0025】
本実施形態では、14個の永久磁石Mを第1~第14磁石M1~M14としたとき、第1磁石M1の磁束密度B1は、第2磁石M2の磁束密度B2よりも小さい。また、第2磁石M2の磁束密度B2は、第3~第14磁石M3~M14のそれぞれの磁束密度B3よりも小さい。つまり、第1~第14磁石M1~M14の磁束密度の大小関係は、第1磁石M1の磁束密度B1<第2磁石M2の磁束密度B2<第3~第14磁石M3~M14のそれぞれの磁束密度B3となっている。
【0026】
具体的には、第2磁石M2の磁束密度B2は、第1磁石M1の磁束密度B1の1.1倍である。すなわち、第2磁石M2の磁束密度B2は、1.1Xである。第3~第14磁石M3~M14のそれぞれの磁束密度B3は、第1磁石M1の磁束密度B1の1.2倍である。すなわち、第3~第14磁石M3~M14のそれぞれの磁束密度B3は、1.2Xである。
【0027】
<永久磁石の表面積>
複数の永久磁石Mのうち、少なくとも1つの永久磁石Mの表面積は、他の永久磁石Mの表面積と異なっている。詳しくは、複数の永久磁石Mのうち、磁束密度の大きい永久磁石Mほど、永久磁石Mの表面積は小さくなっている。永久磁石Mの表面積は、永久磁石Mの軸長L及び永久磁石Mの周長Rによって決まる。永久磁石Mの軸長Lとは、ロータコア26の軸方向における永久磁石Mの長さのことである。永久磁石Mの周長Rとは、ロータコア26の周方向における永久磁石Mの外周面の長さのことである。
【0028】
図2に示すように、本実施形態では、第3~第14磁石M3~M14のそれぞれの表面積は、第2磁石M2の表面積よりも小さい。第2磁石M2の表面積は、第1磁石M1の表面積よりも小さい。つまり、第1~第14磁石M1~M14の表面積の大小関係は、第1磁石M1の表面積>第2磁石M2の表面積>第3~第14磁石M3~M14のそれぞれの表面積となっている。
【0029】
第3~第14磁石M3~M14のそれぞれの軸長L3は、第2磁石M2の軸長L2よりも短い。第2磁石M2の軸長L2は、第1磁石M1の軸長L1よりも短い。つまり、第1~第14磁石M1~M14の軸長Lの大小関係は、第1磁石M1の軸長L1>第2磁石M2の軸長L2>第3~第14磁石M3~M14のそれぞれの軸長L3となっている。
【0030】
具体的には、第2磁石M2の軸長L2は、第1磁石M1の軸長L1の1/1.1倍である。すなわち、第2磁石M2の軸長L2は、L1/1.1である。第3~第14磁石M3~M14のそれぞれの軸長L3は、第1磁石M1の軸長L1の1/1.2倍である。すなわち、第3~第14磁石M3~M14のそれぞれの軸長L3は、L1/1.2である。
【0031】
一方で、第1~第14磁石M1~M14のそれぞれの周長Rは、全ての永久磁石Mで同じである。つまり、本実施形態では、磁束密度の大きい永久磁石Mほど、永久磁石Mの軸長Lが短いことにより、永久磁石Mの表面積は小さくなっている。なお、ロータコア26の径方向における永久磁石Mの厚みは、全ての永久磁石Mで同じである。
【0032】
<永久磁石の表面磁束数>
永久磁石Mの表面磁束数は、全ての永久磁石Mで同じである。永久磁石Mの表面磁束数は、永久磁石Mの磁束密度及び永久磁石Mの形状によって決まる。永久磁石Mの表面磁束数は、永久磁石Mの磁束密度が高いほど大きくなる。また、永久磁石Mの表面磁束数は、永久磁石Mの表面積が大きいほど大きくなる。
【0033】
本実施形態では、第2磁石M2の磁束密度B2は、第1磁石M1の磁束密度B1の1.1倍であるのに対し、第2磁石M2の軸長L2は、第1磁石M1の軸長L1の1/1.1倍である。このため、第2磁石M2の表面磁束数は、第1磁石M1の表面磁束数と同じである。また、第3~第14磁石M3~M14のそれぞれの磁束密度B3は、第1磁石M1の磁束密度B1の1.2倍であるのに対し、第3~第14磁石M3~M14のそれぞれの軸長L2は、第1磁石M1の軸長L1の1/1.2倍である。このため、第3~第14磁石M3~M14のそれぞれの表面磁束数は、第1磁石M1の表面磁束数と同じである。つまり、第1~第14磁石M1~M14のそれぞれの表面磁束数は、全ての永久磁石Mで同じである。
【0034】
<<回転電機の製造方法>>
回転電機10の製造方法は、取得工程と、加工工程と、配置工程とを有している。
<取得工程>
取得工程は、回転電機10に使用される複数の永久磁石Mのそれぞれについて表面磁束数又は磁束密度を取得する工程である。取得工程では、永久磁石Mの形状は、全ての永久磁石Mで同じである。なお、「永久磁石Mの形状は全ての永久磁石Mで同じである」には、永久磁石Mの製造公差の範囲内で永久磁石Mの形状が異なっている場合も含まれる。
【0035】
本実施形態の取得工程では、作業者が第1~第14磁石M1~M14のそれぞれについて表面磁束数を測定することにより、第1~第14磁石M1~M14のそれぞれの表面磁束数を取得する。本実施形態の取得工程では、次のような結果を得る。第2磁石M2の表面磁束数φ2は、第1磁石M1の表面磁束数φ1の1.1倍、すなわち1.1φ1である。第3~第14磁石M3~M14のそれぞれの表面磁束数φ3は、第1磁石M1の表面磁束数φ1の1.2倍、すなわち1.2φ1である。
【0036】
<加工工程>
加工工程は、取得工程で取得した永久磁石Mの表面磁束数又は磁束密度に基づいて、永久磁石Mを加工する工程である。加工工程では、まず、複数の永久磁石Mのうち、表面磁束数又は磁束密度が最も小さい永久磁石Mを最小磁石Mminとする。続いて、最小磁石Mmin以外の永久磁石Mの表面磁束数が最小磁石Mminの表面磁束数と同じになるように、最小磁石Mmin以外の永久磁石Mを削る。具体的には、最小磁石Mmin以外の永久磁石Mの表面磁束数を最小磁石Mminの表面磁束数と同じにするためには、最小磁石Mmin以外の永久磁石Mの表面積が小さくなるように最小磁石Mmin以外の永久磁石Mを削る。最小磁石Mmin以外の永久磁石Mの表面積を小さくするためには、最小磁石Mmin以外の永久磁石Mの軸長L及び周長Rの少なくとも一方が小さくなるように最小磁石Mmin以外の永久磁石Mを削る。
【0037】
本実施形態の加工工程では、まず、第1磁石M1を最小磁石Mminとして設定する。したがって、第2~第14磁石M2~M14は、最小磁石Mmin以外の永久磁石Mである。続いて、第2~第14磁石M2~M14の表面磁束数が第1磁石M1の表面磁束数と同じになるように、第2~第14磁石M2~M14を削る。具体的には、第2磁石M2は、軸長L2が第1磁石M1の軸長L1の1/1.1倍となるように削られる。第3~第14磁石M3~M14はそれぞれ、軸長L3が第1磁石M1の軸長L1の1/1.2倍になるように削られる。なお、第1磁石M1の軸長L1と第2磁石M2の軸長L2との差L1-L2、及び第1磁石M1の軸長L1と第3~第14磁石M3~M14のそれぞれの軸長L3との差L1-L3は、製造公差よりも大きい。
【0038】
<配置工程>
配置工程は、最小磁石Mmin及び加工工程において削られた最小磁石Mmin以外の永久磁石Mをロータコア26の周方向に並べる工程である。
【0039】
本実施形態の配置工程では、第1磁石M1及び加工工程において削られた第2~第14磁石M2~M14をロータコア26の周方向に並べる。
本実施形態の作用について説明する。
【0040】
分数スロットではない場合、ティース24と対向する永久磁石Mの組み合わせは、電気角周期毎で同じである。このため、永久磁石Mの表面磁束数がばらついていても、鎖交磁束としては電気角周期毎に変化しない。
【0041】
一方、分数スロットの場合、ティース24と対向する永久磁石Mの組み合わせは、電気角周期毎に異なる。このため、従来の回転電機では、永久磁石Mの表面磁束数がばらついていると、鎖交磁束は電気角周期毎に変化する。その結果、機械角1周期の間においてトルクの値が電気角毎に異なることにより、コギングトルクの脈動が発生する。
【0042】
なお、ロータ12が5n極の場合には、電気角5周期で機械角1周期となるため、ティース24と対向する永久磁石Mの組み合わせは5パターン存在する。したがって、機械角1周期の間に電気角5周期に対応する脈動が発生する。ロータ12が7n極の場合には、電気角7周期で機械角1周期となるため、ティース24と対向する永久磁石Mの組み合わせは7パターン存在する。したがって、機械角1周期の間に電気角7周期に対応する脈動が発生する。
【0043】
本実施形態では、加工工程において、最小磁石Mmin以外の永久磁石Mの表面磁束数が最小磁石Mminの表面磁束数と同じになるように、最小磁石Mmin以外の永久磁石Mを削っている。これにより、磁束密度の大きい永久磁石Mほど、永久磁石Mの表面積は小さくなっているため、永久磁石Mの表面磁束数は、全ての永久磁石Mで同じになっている。したがって、鎖交磁束としては電気角周期毎に同じになるため、電気角周期毎の鎖交磁束の差は小さくなる。よって、コギングトルクの脈動が低減される。
【0044】
本実施形態の効果について説明する。
(1)磁束密度の大きい永久磁石Mほど、永久磁石Mの表面積は小さくなっていることにより、永久磁石Mの表面磁束数は全ての永久磁石Mで同じになっている。これにより、鎖交磁束は電気角周期毎に同じになるため、電気角周期毎の鎖交磁束の差は小さくなる。よって、コギングトルクの脈動を低減できる。
【0045】
(2)磁束密度の大きい永久磁石Mほど、軸長Lが短いことにより、表面積は小さくなっている。永久磁石Mの表面磁束は、永久磁石Mの軸長Lに比例しているため、永久磁石Mの軸長Lを調整することにより、永久磁石Mの表面磁束数を容易に調整できる。また、ロータコア26の軸方向から見たときの永久磁石Mの形状が全ての永久磁石Mで同じであるため、ロータ12のバランスを良好に保つことができる。
【0046】
(3)例えば、表面磁束数が同じ永久磁石Mだけを使用すれば、コギングトルクの脈動は低減される。しかしながら、この場合には、永久磁石Mの製造上発生する、他の永久磁石Mよりも表面磁束数の多い又は少ない永久磁石Mを使用することができない。これに対し、本実施形態では、加工工程前の永久磁石Mの表面磁束数がばらついていても、永久磁石Mの表面磁束数が同じになるように永久磁石Mの形状を調整することによって、コギングトルクの脈動を低減している。したがって、他の永久磁石Mよりも表面磁束数が多い又は少ない永久磁石Mを使用しつつ、コギングトルクの脈動を低減できる。
【0047】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○
図3に示すように、ロータ12は、永久磁石Mがロータコア26に埋め込まれたIPM(Interior Permanent Magnet)型のロータであってもよい。
【0048】
○
図3に示すように、永久磁石Mは、平板状であってもよい。この場合、加工工程では、永久磁石Mの軸長L及び永久磁石Mの幅Wの少なくとも一方を調整することによって、永久磁石Mの表面磁束を調整してもよい。永久磁石Mの幅Wとは、永久磁石Mの板厚方向及びロータコア26の軸方向の両方と直交する方向における永久磁石Mの長さのことである。永久磁石Mの幅Wを調整する場合には、最小磁石Mmin以外の永久磁石Mは、幅W2が最小磁石Mminの幅W1よりも小さくなるように削られる。
【0049】
○ 加工工程において、永久磁石Mの軸長Lの代わりに永久磁石Mの周長Rを調整することによって、永久磁石Mの表面磁束を調整してもよい。また、永久磁石Mの軸長L及び周長Rの両方を変更することによって、永久磁石Mの表面磁束を調整してもよい。
【0050】
○ 加工工程前の永久磁石Mの形状が全ての永久磁石Mで同じ場合、取得工程では、表面磁束数の代わりに磁束密度を取得してもよい。この場合、加工工程では、磁束密度が最も低い永久磁石Mを最小磁石Mminとして設定する。
【0051】
○ 取得工程において、予め作成された各永久磁石Mの磁束密度又は表面磁束数のデータを入手することで、複数の永久磁石Mのそれぞれについて磁束密度又は表面磁束数を取得してもよい。
【0052】
○ qが分数かつq<1/2である分数スロットの回転電機であれば、ロータ12の極数、スロット25の数、及びコイル22の相数は適宜変更されてもよい。一例として、回転電機10は、3相12スロットのステータ11と、10極のロータ12とを備えていてもよい。この場合、q=12/(10×3)=2/5である。他の例として、回転電機10は、3相18スロットのステータ11と、16極のロータ12とを備えていてもよい。この場合、q=18/(16×3)=3/8である。
【0053】
○ 加工工程前の複数の永久磁石Mのうち、少なくとも1つの永久磁石Mの表面磁束数が他の永久磁石Mの表面磁束数と異なっていればよい。
例えば、加工工程前の複数の永久磁石Mのうち、1つの永久磁石Mの表面磁束数が他の永久磁石Mの表面磁束数と異なっていてもよい。具体的には、第1磁石M1の表面磁束数φ1は、第2~第14磁石M2~M14のそれぞれの表面磁束数φ2よりも大きいとする。この場合、加工工程では、第2~第14磁石M2~M14を最小磁石Mminとする。そして、最小磁石Mmin以外の永久磁石Mである第1磁石M1の表面磁束数φ1が第3~第14磁石M3~M14のそれぞれの表面磁束数φ2と同じになるように、第1磁石M1を削る。これにより、第1磁石M1の表面積が第3~第14磁石M3~M14のそれぞれの表面積よりも小さくなることで、第1~第14磁石M1~M14の表面磁束数は同じになる。
【0054】
○ 永久磁石Mの表面磁束数は、全ての永久磁石Mで完全に同じでなくてもよい。「永久磁石Mの表面磁束数は、全ての永久磁石Mで同じである」は、コギングトルクの脈動が許容される範囲内において、永久磁石Mの表面磁束数が若干異なっている場合も含む。例えば、各永久磁石Mの磁束密度に関係なく同じ形状の永久磁石Mを使用する場合の表面磁束数のばらつき(標準偏差)よりも、本発明のように、磁束密度の大きい永久磁石Mほど表面積を小さくした場合の表面磁束数のばらつき(標準偏差)が小さくなっていればよい。
【0055】
○ ヨーク23は、円筒状でなくてもよい。ヨーク23は、例えば、多角筒状であってもよい。
○ ロータコア26は、円筒状でなくてもよい。ロータコア26は、例えば、多角筒状であってもよい。
【0056】
○ 上記実施形態では、S極磁石とN極磁石は、ロータコア26の周方向において1個ずつ交互に配置されていたが、2個ずつ交互に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10…回転電機、11…ステータ、12…ロータ、21…ステータコア、22…コイル、23…ヨーク、24…ティース、25…スロット、26…ロータコア、M…永久磁石、Mmin…最小磁石。