特開 2023-149023 光照射装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023149023

(43)【公開日】2023-10-13

(54)【発明の名称】光照射装置

(51)【国際特許分類】

   A61N 5/06 20060101AFI20231005BHJP

   A61N 5/067 20060101ALI20231005BHJP

   A61B 18/20 20060101ALI20231005BHJP

【ＦＩ】

A61N5/06

A61N5/067

A61B18/20

【審査請求】未請求

【請求項の数】7

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022057343

(22)【出願日】2022-03-30

(71)【出願人】

【識別番号】521031567

【氏名又は名称】株式会社ニューロライテック

(74)【代理人】

【識別番号】110000176

【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】清水 一夫

【テーマコード（参考）】

4C026

4C082

【Ｆターム（参考）】

4C026AA04

4C026FF17

4C026FF34

4C082PE03

4C082PE10

4C082RA02

4C082RE17

4C082RE35

(57)【要約】

【課題】生体内の部位の所望の範囲を容易に焼灼することができる光照射装置を提供する。
【解決手段】患部に対して光を照射するための先端部を有する光照射装置であって、前記先端部は、中空の形状を有し、内周面に第１の鏡面が設けられ、光源から導光された光を内部に入射させるための入射口及び前記第１の鏡面で反射した光を外部に出射させるための出射口が設けられた第１のリフレクタと、前記出射口を塞ぐキャップと、を備え、前記キャップの前記出射口を塞ぐ部分は、透光性を有し、平面の形状を有する、光照射装置光照射装置。
【選択図】図３

【特許請求の範囲】

【請求項1】

患部に対して光を照射するための先端部を有する光照射装置であって、
前記先端部は、
中空の形状を有し、内周面に第１の鏡面が設けられ、光源から導光された光を内部に入射させるための入射口及び前記第１の鏡面で反射した光を外部に出射させるための出射口が設けられた第１のリフレクタと、
前記出射口を塞ぐキャップと、
を備え、
前記キャップの前記出射口を塞ぐ部分は、透光性を有し、平面の形状を有する、
光照射装置。

【請求項2】

前記第１のリフレクタ内に配置され、前記出射口から前記入射口の方向に凸状の表面を有し、前記凸状の表面に第２の鏡面が設けられた第２のリフレクタを更に備える、
請求項１に記載の光照射装置。

【請求項3】

前記第１のリフレクタの内周面は、対称軸に対して回転対称な回転楕円体の表面の一部と同様の形状であり、
前記入射口と、前記出射口とは、前記対称軸の方向に対向する位置に設けられる、
請求項２に記載の光照射装置。

【請求項4】

前記第２のリフレクタの凸状の表面は、前記対称軸に対して回転対称である、
請求項３に記載の光照射装置。

【請求項5】

前記第２のリフレクタの凸状の表面は、前記対称軸に対して所定の角度を有する、
請求項４に記載の光照射装置。

【請求項6】

前記第１のリフレクタの内周面は、前記回転楕円体の中心に対して前記入射口側の半分の表面と同様の形状である、
請求項３～５のいずれか一に記載の光照射装置。

【請求項7】

前記第２のリフレクタと前記キャップとの間に、前記第２のリフレクタが発生する熱を前記キャップに直接伝導しないように、空間が設けられることを特徴とする請求項２～６のいずれか一に記載の光照射装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は光照射装置に関する。

【背景技術】

【0002】

子宮頸がんの治療法として、円錐切除術が知られている。円錐切除術は、例えば電気メスを用いて、病変の存在する子宮頸部を円錐状に切除する治療法である。

【0003】

一方、円錐切除術によらない治療法として、レーザ蒸散術が知られている。レーザ蒸散術は、子宮頸部において異形成が発生した部位にＣＯ２レーザを照射し、病変を焼灼する治療法である（例えば、特許文献１）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２０１５―０３３５０４

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

本発明の目的は、生体内の部位の所望の範囲を容易に焼灼することが可能な光照射装置を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0006】

上記目的を達成するための発明は、患部に対して光を照射するための先端部を有する光照射装置であって、前記先端部は、中空の形状を有し、内周面に第１の鏡面が設けられ、光源から導光された光を内部に入射させるための入射口及び前記第１の鏡面で反射した光を外部に出射させるための出射口が設けられた第１のリフレクタと、前記出射口を塞ぐキャップと、を備え、前記キャップの前記出射口を塞ぐ部分は、透光性を有し、平面の形状を有する、光照射装置である。本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。

【発明の効果】

【0007】

本発明によれば、生体内の部位の所望の範囲を容易に焼灼することができる。

【図面の簡単な説明】

【0008】

【図1】実施形態の光照射システムを説明する図である。

【図2】実施形態の光照射装置を説明する図である。

【図3】実施形態の光照射装置を説明する断面図である。

【図4A】実施形態の光照射装置の第１のリフレクタを説明する断面図である。

【図4B】実施形態の光照射装置の第１のリフレクタを説明する側面図である。

【図5A】実施形態の光照射装置の第２のリフレクタを説明する斜視図である。

【図5B】実施形態の光照射装置の第２のリフレクタを説明する側面図である。

【図6A】実施形態の光照射装置のキャップを説明する断面図である。

【図6B】実施形態の光照射装置のキャップを説明する側面図である。

【図7A】実施形態の光照射システムの使用方法を説明する図である。

【図7B】実施形態の光照射システムの使用方法を説明する図である。

【図8】変形例の光照射装置を説明する断面図である。

【図9】変形例の光照射装置を説明する断面図である。

【図10】変形例の光照射装置の第２のリフレクタ説明する斜視図である。

【図11】変形例の光照射装置を説明する断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0009】

＝＝実施形態＝＝
＜＜光照射システム＞＞
本実施形態の光照射システム１は、生体内の所望の範囲に対して光を照射することにより、当該範囲を焼灼するためのシステムである。本実施形態では、子宮頸部に発生した異形成を焼灼することで、子宮頸がんの治療を行う例について説明する。

【0010】

図１は、光照射システム１を説明する図である。光照射システム１は、光源装置２と、光照射装置３とを備える。

【0011】

＜光源装置＞
光源装置２は、生体組織を焼灼するための光を生成する装置である。光源装置２は、焼灼する組織の光吸収／散乱特性に合わせた波長領域の光を生成する光源を有する。具体的に光源は、レーザ光源、ＬＥＤ光源、ハロゲンランプ、キセノンランプ等が用いられる。

【0012】

＜光照射装置＞
光照射装置３は、光源装置２が生成した光を生体組織に照射するための装置である。図２及び３は、本実施形態の光照射装置３を説明する図である。図２は、光照射装置３の斜視図である。図３は、光照射装置３の断面図である。光照射装置３は、ケーブル部３０と、把持部３１と、先端部３２とを有する。

【0013】

なお、光照射装置３のうち、把持部３１と、先端部３２との部分は、図３に示した対称軸Ｘ１に対して略回転対称である。図３は、対称軸Ｘ１を通る平面上の光照射装置３の断面図を示している。

【0014】

［ケーブル部］
ケーブル部３０は、光源装置２からの光を導光するための長尺の部材である。光を導光するための部材としては、例えば光ファイバーのような、光源装置２からの光を光照射装置３まで伝搬させる部材である。本実施形態のケーブル部３０は、中心部のコアと、コアの周囲を囲み、コアを伝搬する光をコアの内部に閉じ込めるためのクラッドとの二層構造を有する光ファイバーである。

【0015】

ケーブル部３０は、第１端３０ａ及び第２端３０ｂを有する。第１端３０ａは、先端部３２に接続可能となっている（詳細は後述）。第２端３０ｂは、光源装置２に接続可能となっている（図１）。第１端３０ａが先端部３２に接続され、且つ第２端３０ｂが光源装置２に接続されることにより、光源装置２からケーブル部３０の第２端３０ｂに入射した光は、ケーブル部３０を伝搬し、先端部３２に入射する。

【0016】

以下の説明では、ケーブル部３０の第１端３０ａにおいて光源装置２からの光が出射する面を「端面３０ｃ」と称する。本実施形態では、ケーブル部３０の端面３０ｃは、平坦な形状である（図３）。

【0017】

［把持部］
把持部３１は、術者が光照射装置３を操作する際に把持するための部材である。

【0018】

把持部３１は、管状の部材であって、第１端３１ａと、第２端３１ｂとを有する。また、把持部３１は、内周面３１ｃと、外周面３１ｄとを有する。把持部３１の内部には、ケーブル部３０の第１端３０ａが配置される。

【0019】

把持部３１の内周面３１ｃは、ケーブル部３０が把持部３１の内部に配置することができれば、形状の制限は特に無い。

【0020】

把持部３１の外周面３１ｄのうち、第１端３１ａの近傍には、接続部３１ｅが設けられている（図３）。

【0021】

詳細は後述するが、把持部３１の第１端３１ａと、第１のリフレクタ３２０とは、互いに接続される。接続部３１ｅは、把持部３１の第１端３１ａと、第１のリフレクタ３２０とが接続された状態において、第１のリフレクタ３２０に当接する部分である。

【0022】

把持部３１の外周面３１ｄのうち、接続部３１ｅ以外の部分は、術者が把持し、光照射装置３を操作するのに適した形状であれば、形状の制限は特に無い。

【0023】

［先端部］
先端部３２は、ケーブル部３０と連結され、所望の部位に対して光を照射するための部材である。先端部３２は、第１のリフレクタ３２０と、第２のリフレクタ３２１と、キャップ３２２とを備える。

【0024】

（第１のリフレクタ）
第１のリフレクタ３２０は、光源装置２で生成された光（ケーブル部３０で導光された光）を反射させ、所定の焦点（この例では後述する第２の焦点Ｆ２）に集光させるための部材である。第１のリフレクタ３２０は、内周面３２０ａと、外周面３２０ｂとを有し、中空の形状を有する部材である。

【0025】

図４Ａ及び図４Ｂは、第１のリフレクタ３２０を説明する図である。第１のリフレクタ３２０は、対称軸Ｘ２を有する。図４Ａは、対称軸Ｘ２を通る平面上の第１のリフレクタ３２０の断面図であり、図４Ｂは、対称軸Ｘ２と平行な方向から見た第１のリフレクタ３２０の図である。

【0026】

本実施形態では、第１のリフレクタ３２０は、対称軸Ｘ２に対して略回転対称な部材である。また、第１のリフレクタ３２０の内周面３２０ａは、対称軸Ｘ２に対して回転対称な回転楕円体の表面の一部と同様の形状である（図４Ａ）。ここでの回転楕円体を、以下では「回転楕円体Ｅ」と称する。回転楕円体Ｅは、対称軸Ｘ２上に２つの焦点Ｆ（第１の焦点Ｆ１及び第２の焦点Ｆ２）を有する。第１のリフレクタ３２０は、回転楕円体Ｅの長軸Ｘａが対称軸Ｘ２上に配置され、回転楕円体Ｅの短軸Ｘｂが対称軸Ｘ２に垂直に配置されるように設計されている。

【0027】

以下では、対称軸Ｘ２に平行な方向であり、第２の焦点Ｆ２から第１の焦点Ｆ１に向かう方向を「第１の方向」と称し、第１の方向に対して反対の方向を「第２の方向」と称する場合がある。

【0028】

第１のリフレクタ３２０には、鏡面３２０ｃ（「第１の鏡面」に相当）と、入射口３２０ｄと、出射口３２０ｅと、固定面３２０ｆと、第１の接続部３２０ｇと、第２の接続部３２０ｈとが設けられている。

【0029】

鏡面３２０ｃは、第１のリフレクタ３２０の内部で、内周面３２０ａに到達した光を反射させるために設けられている。鏡面３２０ｃは、光を反射する材料を内周面３２０ａにコーティングすることによって形成される。光を反射する材料としては、銀（Ａｇ）、アルミニウム（Ａｌ）等の金属材料が用いられる。

【0030】

入射口３２０ｄは、光源装置２で生成された光を第１のリフレクタ３２０の内部に入射させる部分である。

【0031】

本実施形態では、入射口３２０ｄは、第１のリフレクタ３２０の対称軸Ｘ２に平行な方向から見た形状が円形であり（図４Ｂ）、入射口３２０ｄの中心と、対称軸Ｘ２とは一致する。

【0032】

図３に示した通り、第１のリフレクタ３２０の入射口３２０ｄには、ケーブル部３０の第１端３０ａが接続されている。接続した状態において、ケーブル部３０の端面３０ｃは、第１の焦点Ｆ１に対して、第１の方向側に位置する。

【0033】

出射口３２０ｅは、鏡面３２０ｃで反射した光を第１のリフレクタ３２０の外部に出射させる部分である。出射口３２０ｅは、入射口３２０ｄから離れた位置に設けられている。

【0034】

本実施形態では、出射口３２０ｅは、第１のリフレクタ３２０の対称軸Ｘ２に平行な方向から見た形状が円形であり（図４Ｂ）、出射口３２０ｅの中心と、対称軸Ｘ２とは一致する。つまり、本実施形態では、入射口３２０ｄと、出射口３２０ｅとは、対称軸Ｘ２の方向に対向する位置に設けられている。

【0035】

本実施形態では、第１のリフレクタ３２０の内周面３２０ａは、回転楕円体Ｅの中心に対して一方の焦点Ｆ（この例では、第１の焦点Ｆ１）側の半分の表面と同様の形状となっている。そのため、出射口３２０ｅの直径は、回転楕円体Ｅの短軸Ｘｂの長さに等しい。本実施形態では、出射口３２０ｅの直径は、１５．０４ｍｍである。

【0036】

固定面３２０ｆは、後述する第２のリフレクタ３２１の位置を固定するために設けられている。固定面３２０ｆは、第１のリフレクタ３２０の表面のうち、出射口３２０ｅの周縁部に設けられている。

【0037】

本実施形態では、固定面３２０ｆは、内周面３２０ａと、外周面３２０ｂとを接続する面でもある。固定面３２０ｆは、対称軸Ｘ２に対して垂直な平面である。固定面３２０ｆは、対称軸Ｘ２と平行な方向から見た形状が、対称軸Ｘ２を中心とし、所定の幅を有する環状である（図４Ｂ）。固定面３２０ｆと、第２のリフレクタ３２１との関係の詳細については後述する。

【0038】

第１の接続部３２０ｇは、内周面３２０ａのうち、入射口３２０ｄの近傍の部分に設けられている。

【0039】

第１のリフレクタ３２０と、把持部３１とは、互いに接続される。図３は、第１のリフレクタ３２０と、把持部３１とが互いに接続された状態を示している。

【0040】

このとき、第１のリフレクタ３２０の第１の接続部３２０ｇと、把持部３１の接続部３１ｅとが当接している。更に、このとき、対称軸Ｘ２は、対称軸Ｘ１に一致している。

【0041】

第１のリフレクタ３２０と把持部３１とが、第１の接続部３２０ｇと接続部３１ｅとによって互いに接続される態様は特に限定されない。

【0042】

例えば、第１のリフレクタ３２０と、把持部３１とは、嵌め込み式で固定されてもよい。この場合、第１のリフレクタ３２０の第１の接続部３２０ｇと、把持部３１の接続部２１ｅとは、共に対称軸Ｘ１からの距離が均一な面であればよい。

【0043】

或いは、第１のリフレクタ３２０と、把持部３１とは、ネジ式で固定されてもよい。この場合、第１のリフレクタ３２０が雌ネジとなり、把持部３１が雄ネジとなるように、第１の接続部３２０ｇと、接続部２１ｅとに螺旋状の溝が設けられればよい。

【0044】

或いは、第１のリフレクタ３２０と、把持部３１とは、溶着により固定されてもよい。この場合、第１の接続部３２０ｇと、接続部２１ｅとが互いに溶着される。

【0045】

・第１のリフレクタ３２０を介した光の伝搬について
以下では、「回転楕円体Ｅの焦点Ｆ（第１の焦点Ｆ１及び第２の焦点Ｆ２）に対応する位置」を、「第１のリフレクタ３２０の焦点Ｆ（第１の焦点Ｆ１及び第２の焦点Ｆ２）」と称する。回転楕円体の一般的な性質から、第１のリフレクタ３２０は以下の性質を有することがいえる。

【0046】

第１のリフレクタ３２０の内部において、第１のリフレクタ３２０の一方の焦点Ｆを通過した光は、鏡面３２０ｃで反射した場合、第１のリフレクタ３２０の他方の焦点Ｆに向けて進行方向を変え、第１のリフレクタ３２０の他方の焦点Ｆを通過する。更に、第１のリフレクタ３２０の他方の焦点Ｆを通過した光は、鏡面３２０ｃで反射した場合、第１のリフレクタ３２０の一方の焦点Ｆに向けて進行方向を変え、第１のリフレクタ３２０の一方の焦点Ｆを通過する。

【0047】

以上の第１のリフレクタ３２０の性質から、光源装置２で生成された光は、以下のように伝搬する。

【0048】

光源装置２で生成された光は、ケーブル部３０を伝搬し、ケーブル部３０の端面３０ｃから出射する（つまり、光照射装置３の第１のリフレクタ３２０の内部に入射する）。このとき、ケーブル部３０の端面３０ｃに対して多様な角度を持って進行する光が、ケーブル部３０の端面３０ｃから出射する。

【0049】

ケーブル部３０の端面３０ｃから出射した光の一部は、第１の焦点Ｆ１に直接到達し、第１の焦点Ｆ１を通過する。第１の焦点Ｆ１を通過した光は、鏡面３２０ｃにおいて１回反射した後に、第２の焦点Ｆ２に向けて進行方向を変える。そして、第２の焦点Ｆ２に集光し、第２の焦点Ｆ２の近傍に位置する生体組織が効率良く焼灼される。

【0050】

このとき、ケーブル部３０の端面３０ｃから第１のリフレクタ３２０に入射した光のうち、第１の焦点Ｆ１を通過する光の量が多いほど、焼灼のための光の照度を効率的に高くすることができる。

【0051】

（第２のリフレクタ）
第２のリフレクタ３２１は、入射口３２０ｄから入射した光を反射させ、多方向に分散させるための部材である。

【0052】

図５Ａ及び５Ｂは、第２のリフレクタ３２１を説明する図である。第２のリフレクタ３２１は、対称軸Ｘ３を有する。図５Ａは、第２のリフレクタ３２１の斜視図であり、図５Ｂは、対称軸Ｘ３と平行な方向から見た第２のリフレクタ３２１の図である。第２のリフレクタ３２１は、遮光部３２１ａと、支持部３２１ｂとを有する。

【0053】

遮光部３２１ａは、入射口３２０ｄから入射した光をキャップ３２２（詳細は後述）に対して遮光するために設けられている。入射口３２０ｄから入射した光がキャップ３２２（後述）に直接到達すると、キャップ３２２が局所的に発熱しやすい。遮光部３２１ａは、このような発熱を防ぐための部材である。

【0054】

遮光部３２１ａは、凸状の部材である。本実施形態では、遮光部３２１ａは、対称軸Ｘ３に対して回転対称である。遮光部３２１ａの表面は、対称軸Ｘ３に対して所定の角度を有する。つまり、遮光部３２１ａは、円錐の表面のうち、錐面と同様の形状である。この例では、遮光部３２１ａの表面は、対称軸Ｘ３に対して３０°である。

【0055】

支持部３２１ｂは、遮光部３２１ａを所定の位置に支持するための部材である。本実施形態では、支持部３２１ｂは、フレーム３２１ｃと、アーム３２１ｄとから構成されている。

【0056】

フレーム３２１ｃは、環状の部材である。フレーム３２１ｃの環状の内側に、遮光部３２１ａが配置される。フレーム３２１ｃは、対称軸Ｘ３に対して回転対称である。

【0057】

フレーム３２１ｃには、第１の被固定面３２１ｅと、第２の被固定面３２１ｆと、第３の被固定面３２１ｇとが設けられている。第１の被固定面３２１ｅと、第２の被固定面３２１ｆとは互いに平行な平面であり、対称軸Ｘ３に対して垂直な平面である。

【0058】

第１の被固定面３２１ｅと、第２の被固定面３２１ｆとは共に、対称軸Ｘ３に平行な方向から見た形状が、対称軸Ｘ３を中心とる環状である（図５Ｂ）。また、第１の被固定面３２１ｅの外周と、第２の被固定面３２１ｆの外周とは互いに一致する（図５Ｂ）。

【0059】

第３の被固定面３２１ｇは、第１の被固定面３２１ｅと、第２の被固定面３２１ｆとを接続する面であり、対称軸Ｘ３からの距離は均一である。

【0060】

アーム３２１ｄは、遮光部３２１ａと、フレーム３２１ｃとの互いの位置を固定するために設けられている。アーム３２１ｄは、棒状の部材であり、一端が遮光部３２１ａに接続され、他端がフレーム３２１ｃに接続されている。

【0061】

第２のリフレクタ３２１の表面の全体には、鏡面３２１ｈ（「第２の鏡面」に相当）が設けられている。なお、鏡面３２１ｈは、第２のリフレクタ３２１の表面の全体に限らず、少なくとも遮光部３２１ａの凸状の表面に設けられればよい。

【0062】

鏡面３２１ｈは、第１のリフレクタ３２０の内部で、入射口３２０ｄから入射した光を反射させ、多方向に分散させるために設けられている。鏡面３２１ｈは、鏡面３２０ｃと同様の材料を第２のリフレクタ３２１の表面にコーティングすることによって形成される。

【0063】

なお、第２のリフレクタ３２１は任意の構成であり、光照射装置３に設けられなくても構わない。

【0064】

（キャップ）
キャップ３２２は、第１のリフレクタ３２０の出射口３２０ｅを塞ぐための部材である。キャップ３２２の部分のうち、少なくとも出射口３２０ｅを塞ぐ部分は、透光性を有する。

【0065】

図６Ａ及び６Ｂは、キャップ３２２を説明する図である。キャップ３２２は、対称軸Ｘ４を有する。図６Ａは、対称軸Ｘ４を通る平面上のキャップ３２２の断面図であり、図６Ｂは、対称軸Ｘ４の方向から見たキャップ３２２の図である。

【0066】

本実施形態では、キャップ３２２は、対称軸Ｘ４に対して略回転対称な部材である。キャップ３２２は、略均一な所定の厚さを有し、内周面３２２ａと、外周面３２２ｂとを有する。また、キャップ３２２は、筒状の側部３２２ｃと、側部３２２ｃの一端を閉じる頂部３２２ｄとを有する。

【0067】

キャップ３２２の外周面３２２ｂのうち、側部３２２ｃに対応する部分は、円筒の形状である。キャップ３２２の外周面３２２ｂのうち、頂部３２２ｄに対応する部分は、平面の形状である。なお、キャップ３２２は、側部３２２ｃと、頂部３２２ｄとが一体形成された部材であってもよいし、側部３２２ｃと、頂部３２２ｄとが別体形成されて互いに接続された部材であってもよい。

【0068】

キャップ３２２には、固定面３２２ｅと、接続部３２２ｆとが設けられている。

【0069】

固定面３２２ｅは、キャップ３２２の内周面３２２ａのうち、側部３２２ｃと、頂部３２２ｄとの境界の近傍に設けられている。固定面３２２ｅは、第２のリフレクタ３２１の第１の被固定面３２１ｅと接触することにより、第２のリフレクタ３２１を固定するために設けられている（詳細は後述）。

【0070】

固定面３２２ｅは、対称軸Ｘ４に対して垂直な平面である（図６Ａ）。また、固定面３２２ｅは、頂部３２２ｄから対称軸Ｘ４方向に所定の間隔ｄを有する位置に設けられている（図６Ａ）。

【0071】

本実施形態では、固定面３２２ｅは、対称軸Ｘ４に平行な方向から見た形状が、対称軸Ｘ４を中心とし、所定の幅を有する円周状である（図６Ｂ）。

【0072】

接続部３２２ｆは、キャップ３２２の内周面３２２ａのうち、側部３２２ｃに対応する部分に設けられている。

【0073】

前述のように、第１のリフレクタ３２０と、キャップ３２２とは、互いに固定される。図３は、第１のリフレクタ３２０と、キャップ３２２とが互いに固定された状態を示している。

【0074】

このとき、第１のリフレクタ３２０の第２の接続部３２０ｇと、キャップ３２２の接続部３２２ｆとが当接している。更に、このとき、対称軸Ｘ４は、対称軸Ｘ２に一致している。

【0075】

第１のリフレクタ３２０とキャップ３２２とが、第２の接続部３２０ｈと接続部３２２ｆとによって互いに接続される態様は特に限定されない。但し、生体への接触が考えられる部分であるため、防水構造である。第２の接続部３２０ｈと接続部３２２ｆとの間から水の侵入を防ぐことで、内部が水蒸気などで曇ったりしないようにする必要がある。

【0076】

例えば、第１のリフレクタ３２０と、キャップ３２２とは、嵌め込み式で固定されてもよい。この場合、第１のリフレクタ３２０の第２の接続部３２０ｈと、キャップ３２２の接続部３２２ｆとは、共に対称軸Ｘ１からの距離が均一な面であればよい。

【0077】

或いは、第１のリフレクタ３２０と、キャップ３２２とは、ネジ式で固定されてもよい。この場合、第１のリフレクタ３２０が雄ネジとなり、キャップ３２２が雌ネジとなるように、第２の接続部３２０ｈと、接続部３２２ｆとに螺旋状の溝が設けられればよい。

【0078】

また、第１のリフレクタ３２０と、キャップ３２２とが溶着によって固定される場合においては、第２の接続部３２０ｈと接続部３２２ｆとが互いに溶着される。

【0079】

・キャップ３２２と、第１のリフレクタ３２０との関係
キャップ３２２と、第１のリフレクタ３２０とが互いに固定された状態（図３）において、キャップ３２２は、出射口３２０ｅを塞ぐとともに第１のリフレクタ３２０と内部空間を形成する。ここでの内部空間とは、キャップ３２２の内周面３２２ａのうち頂部３２２ｄに対応する部分と、第１のリフレクタ３２０の内周面３２０ａとによって形成される空間である。

【0080】

第１のリフレクタ３２０の第２の焦点Ｆ２に対応する位置は、内部空間の外側である。つまり、光源装置２からの光のうち第１の焦点Ｆ１を通過した光は、鏡面３２０ｃで反射した後、内部空間の外側に集光する。

【0081】

このようなキャップ３２２と、第１のリフレクタ３２０との構成によれば、光源装置２からの光を集光させる位置（第２の焦点Ｆ２）を光照射装置３の外側に設けることができる。

【0082】

・キャップ３２２と、第１のリフレクタ３２０と、第２のリフレクタ３２１との関係
キャップ３２２と、第１のリフレクタ３２０とが互いに固定された状態（図３）において、第２のリフレクタ３２１のフレーム３２１ｃは、キャップ３２２と、第１のリフレクタ３２０とに挟持されている。

【0083】

このとき、キャップ３２２の対称軸Ｘ４と、第１のリフレクタ３２０の対称軸Ｘ２と、第２のリフレクタ３２１の対称軸Ｘ３とは、対称軸Ｘ１上において互いに一致している。

【0084】

具体的には、フレーム３２１ｃの第１の被固定面３２１ｅは、キャップ３２２の固定面３２２ｅに当接している。フレーム３２１ｃの第２の被固定面３２１ｆは、第１のリフレクタ３２０の固定面３２０ｆに当接している。フレーム３２１ｃの第３の被固定面３２１ｇは、キャップ３２２の内周面３２２ａのうち、側部３２２ｃに対応する部分に当接している。

【0085】

これらのことから、第２のリフレクタ３２１は、キャップ３２２と、第１のリフレクタ３２０とに対して、第２のリフレクタ３２１の対称軸Ｘ３方向及び対称軸Ｘ３に垂直な方向への移動が抑止される。

【0086】

また、キャップ３２２の固定面３２２ｅが、キャップ３２２の頂部３２２ｄから対称軸Ｘ４の方向に間隔ｄを有する位置に設けられていることにより、図３の状態において、キャップ３２２の頂部３２２ｄと、第２のリフレクタ３２１は、間隔ｄだけ離れている。これによって、第２のリフレクタ３２１で発生した熱が、頂部３２２ｄへ拡散することを抑制することができる。

【0087】

＜＜光照射システムの使用方法＞＞
本実施形態の光照射システム１の使用方法について説明する。この例では、子宮頸がんを治療する手順について説明する。図７Ａ及び７Ｂは、実施形態の光照射システム１を用いて子宮頸がんを治療する手順を説明する図である。光照射システム１は、術者及び補助者により操作される。具体的に、光照射装置３は術者が操作し、光源装置２は補助者が操作する。

【0088】

先ず、光照射装置３の、先端部３２が、患者の膣腔１０内に挿入される（図７Ａ）。そして、キャップ３２２の頂部３２２ｄが子宮頸部１１に押し当てられる（図７Ｂ）。

【0089】

補助者が光源装置２をオンにした場合、光照射装置３は、先端部３２（キャップ３２２の頂部３２２ｄ）から光を照射する。よって、キャップ３２２の頂部３２２ｄが押し当てられた子宮頸部１１を焼灼することができる。

【0090】

このとき、出射口３２０ｅの範囲に亘って出射される光により、出射口３２０ｅに当接した子宮頸部１１の範囲（この例では、直径が１５．０４ｍｍの円の範囲）を一度に焼灼することができる。

【0091】

また、このとき、第２の焦点Ｆ２に対応する位置又はその近傍に集光するため、子宮頚部１１の表面から、第２の焦点Ｆ２に対応する深さの位置を効率良く焼灼することができる。

【0092】

すなわち、本実施形態の光照射装置３によれば、生体内の部位の所望の範囲を容易に焼灼することができる。

【0093】

＝＝変形例１＝＝
図８は、本変形例の光照射装置４を説明する図である。本変形例の光照射装置４は、実施形態の光照射装置３に比べると、第２のリフレクタ３２３の構成のみが異なっている。

【0094】

本変形例の第２のリフレクタ３２３の遮光部３２３ａの表面は、対称軸Ｘ３に対して４５°である。遮光部３２３ａの表面をこのような形状とすることにより、実施形態の光照射装置３に比べて、出射口３２０ｅから出射される光を、対称軸Ｘ１の外側に分散させることができる。

【0095】

なお、遮光部３２３ａの表面と、対称軸Ｘ３とのなす角が大きいほど、入射口３２０ｄから入射した光のうち、出射口３２０ｅに直接到達する光の量を抑えることができる。この場合、入射口３２０ｄから入射した光のうち、鏡面３２０ｃでの反射を経る光の量が増加する。従って、キャップ３２２の発熱を抑制し、出射口から出射する光の均一性が向上する。

【0096】

また、遮光部３２３ａの表面と、対称軸Ｘ３とのなす角が小さいほど、入射口３２０ｄから入射した光のうち、鏡面３２０ｃでの反射を経ず、出射口３２０ｅに直接到達する光の量は増加する。この場合、出射口３２０ｅの範囲のうち、更に限られた範囲に対して選択的に光を出射することができる。

【0097】

つまり、遮光部３２３ａの表面と、対称軸Ｘ３とのなす角は、キャップ３２２における熱の集中、出射させる光の所望の強度分布等に応じて、適宜設定されればよい。

【0098】

＝＝変形例２＝＝
図９及び１０は、本変形例の光照射装置５を説明する図である。ここで、図１０は、第２のリフレクタ３２４の斜視図である。本変形例の光照射装置５は、実施形態の光照射装置３に比べると、第２のリフレクタ３２４の構成のみが異なっている。

【0099】

本変形例の第２のリフレクタ３２４の遮光部３２４ａの表面は、対称軸Ｘ３に対して３０°である部分と、４５°である部分とを含む。遮光部３２４ａの表面をこのような形状とすることにより、実施形態の光照射装置３に比べて、出射口３２０ｅから出射される光を均一にすることができる。

【0100】

＝＝変形例３＝＝
上記実施形態又は変形例では、第２のリフレクタ３２１において、遮光部３２１ａの表面と、対称軸Ｘ３とのなす角は鋭角（９０°より小さい角）である態様を示したが、これに限られない。

【0101】

遮光部３２１ａの表面と、対称軸Ｘ３とのなす角は、直角（９０°）であってもよい。つまり、鏡面３２１ｈは平面であってもよい。また、遮光部３２１ａの表面と、対称軸Ｘ３とのなす角は、鈍角（９０°より大きい角）であってもよい。これらのような構成であっても、キャップ３２２の局所的な発熱を抑制することができる。

【0102】

＝＝変形例３＝＝
図１１は、本変形例の光照射装置６を説明する図である。本変形例の光照射装置６は、上記実施形態の光照射装置３に比べると、第１のリフレクタ３２０の内部に光を入射させるための構成のみが異なっている。

【0103】

上記実施形態では、光照射装置３は、光源装置２からの光を導光するためのケーブル部３０と、ケーブル部３０に連結され、患部に光を照射するための先端部３２とを有する態様を示した。本変形例では、上記実施形態の光源装置２及びケーブル部３０に代えて、把持部３１の内部であって、第１のリフレクタ３２０の入射口３２０ｄ付近に、光源素子７を配置する構成としている。光源素子７としては、例えばＬＥＤ素子等を用いることができる。

【0104】

本変形例の光源素子７は、出射面７ａを有している。光源素子７で生成された光は、出射面７ａから光源素子７の外部へ出射される。出射面７ａは、実施形態のケーブル部３０の端面３０ｃと同様の位置となるように配置される。つまり、出射面７ａは、対称軸Ｘ１等に対して垂直となるように配置される。

【0105】

このような構成によれば、ケーブル部３０が不要となるため、操作者にとって、光照射装置６を操作しやすくなる。

【0106】

上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。

【0107】

例えば、上記実施形態では、第１のリフレクタ３２０の鏡面３２０ｃは、光を反射する材料を内周面３２０ａにコーティングすることによって形成されることとしたが、これに限られるものではない。例えば、第１のリフレクタ３２０自体を、上述した光を反射する材料を用いて形成することとしてもよい。第２のリフレクタ３２１についても同様である。

【0108】

＝＝まとめ＝＝
以上、実施系形態の光照射装置３は、患部に対して光を照射するための先端部３２を有する光照射装置３であって、先端部３２は、中空の形状を有し、内周面３２０ａに鏡面３２０ｃが設けられ、光源から導光された光を内部に入射させるための入射口３２０ｄ及び鏡面３２０ｃで反射した光を外部に出射させるための出射口３２０ｅが設けられた第１のリフレクタ３２０と、出射口３２０ｅを塞ぐキャップ３２２と、を備え、キャップ３２２の出射口３２０ｅを塞ぐ部分は、透光性を有し、平面の形状を有する。

【0109】

このような構成によれば、出射口３２０ｅの範囲に亘る面状の光を外部に出射させることができる。そして、キャップ３２２を患部に当接又は近接させて光を出射することにより、出射口３２０ｅの範囲に亘って患部を一度に焼灼することができる。つまり、このような構成によれば、生体内の部位の所望の範囲を容易に焼灼することが可能となる。

【0110】

また、光照射装置３は、第１のリフレクタ３２０内に配置され、出射口３２０ｅから入射口３２０ｄの方向に凸状の表面を有し、凸状の表面に鏡面３２１ｈが設けられた第２のリフレクタ３２１を更に備える。入射口３２０ｄから入射した光のうち、鏡面３２０ｃでの反射を経ずに出射口３２０ｅへ直接向かう光の割合が多いほど、キャップ３２２は局所的に発熱しやすい。上記のような構成によれば、出射口３２０ｅへ直接向かう光の割合を減少させることによって、キャップ３２２の局所的な発熱を抑制することができる。

【0111】

第１のリフレクタ３２０の内周面３２０ａは、対称軸Ｘ２に対して回転対称な回転楕円体の表面の一部と同様の形状であり、入射口３２０ｄと、出射口３２０ｅとは、対称軸Ｘ２の方向に対向する位置に設けられる。このような構成によれば、光源からの光は、第１のリフレクタ３２０の内部において第１の焦点Ｆ１を通過すると、第２の焦点Ｆ２を通過することになる。これによって、光源からの光を第２の焦点Ｆ２の近傍に集光することができる。従って、光照射装置３によれば、生体内の所望の範囲を効率良く焼灼することができる。

【0112】

また、光照射装置３において、第２のリフレクタ３２１の凸状の表面は、対称軸Ｘ３に対して回転対称である。このような構成によれば、出射口３２０ｅから出射する光の均一性が向上する。

【0113】

また、光照射装置３において、第２のリフレクタ３２１の凸状の表面は、対称軸Ｘ３に対して所定の角度を有する。このような構成によれば、凸状の表面の角度に応じて、出射口３２０ｅから出射する光の強度分布を調整することができる。

【0114】

また、光照射装置３において、第１のリフレクタ３２０の内周面３２０ａは、回転楕円体の中心に対して入射口３２０ｄ側の半分の表面と同様の形状である。このような構成によれば、出射口３２０ｅのサイズを最大限のサイズにすることができる。これによって、光照射装置３を小型化することができる。

【0115】

光照射装置３において、第２のリフレクタ３２１とキャップ３２２との間にわずかな隙間ｄ（図３、図６Ａ、図８、図９、図１１）が設けられる。このような構成によれば、前記第２のリフレクタ３２１で発生する熱がキャップ３２２に直接伝達することを避けることができ、キャップ３２２が生体に触れた際、前記第２のリフレクタで発生する熱が前記生体へ伝わり、焼灼することを避けることができる。

【符号の説明】

【0116】

１：光照射システム
２：光源装置
３：光照射装置
３０：ケーブル部
３０ａ：第１端
３０ｂ：第２端
３０ｃ：端面
３１：把持部
３１ａ：第１端
３１ｂ：第２端
３１ｃ：内周面
３１ｄ：外周面
３１ｅ：溝
３２：先端部
３２０：第１のリフレクタ
３２０ａ：内周面
３２０ｂ：外周面
３２０ｃ：鏡面
３２０ｄ：入射口
３２０ｅ：出射口
３２０ｆ：固定面
３２０ｇ：溝
３２１：第２のリフレクタ
３２１ａ：遮光部
３２１ｂ：支持部
３２１ｃ：フレーム
３２１ｄ：アーム
３２１ｅ：第１の被固定面
３２１ｆ：第２の被固定面
３２１ｇ：第３の被固定面
３２１ｈ：鏡面
３２２：キャップ
３２２ａ：内周面
３２２ｂ：外周面
３２２ｃ：側部
３２２ｄ：頂部
３２２ｅ：固定面
３２２ｆ：溝
３２３：第２のリフレクタ
３２３ａ：遮光部
３２４：第２のリフレクタ
３２４ａ：遮光部
４：光照射装置
５：光照射装置
６：光照射装置
７：光源素子
１０：膣腔
１１：子宮頸部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4A】

【図4B】

【図5A】

【図5B】

【図6A】

【図6B】

【図7A】

【図7B】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】