IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社パイロットコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特開-軟質部材の取付構造 図1
  • 特開-軟質部材の取付構造 図2
  • 特開-軟質部材の取付構造 図3
  • 特開-軟質部材の取付構造 図4
  • 特開-軟質部材の取付構造 図5
  • 特開-軟質部材の取付構造 図6
  • 特開-軟質部材の取付構造 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149025
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】軟質部材の取付構造
(51)【国際特許分類】
   B43K 29/02 20060101AFI20231005BHJP
   B43L 19/00 20060101ALI20231005BHJP
   B43K 3/00 20060101ALN20231005BHJP
   B43K 23/08 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
B43K29/02 F
B43L19/00 C
B43K3/00 H
B43K23/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057349
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】早川 尚利
(57)【要約】
【課題】軟質部材の確実な抜け止め係止を可能とする軟質部材の取付構造を提供する。
【解決手段】筒体は、該筒体の端部に設けられる突部と、突部の上部に設けられる膨出部と、膨出部の下方に設けられる下方面と、を備える。軟質部材は、軸心に軸方向に貫設される取付孔と、取付孔の上部内周面に設けられる大内径部と、大内径部より小さい内径であり取付孔の下部内周面に設けられる小内径部と、大内径部及び小内径部の間の内周面に設けられる段形状の係止壁部と、係止壁部の上方に設けられる上方面と、を備える。筒体と軟質部材は、膨出部と係止壁部とが軸方向に抜け止め係止されることで互いに装着され、取付孔の下方開口端と筒体の端部とが軸方向に当接され、上方面と下方面との間に軸方向の隙間が設けられる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記具部品である筒体に軟質部材を装着してなる軟質部材の取付構造であって、
前記筒体は、該筒体の端部に設けられる突部と、前記突部の上部に設けられる膨出部と、前記膨出部の下方に設けられる下方面と、を備え、
前記軟質部材は、軸心に軸方向に貫設される取付孔と、前記取付孔の上部内周面に設けられる大内径部と、前記大内径部より小さい内径であり前記取付孔の下部内周面に設けられる小内径部と、前記大内径部及び前記小内径部の間の内周面に設けられる段形状の係止壁部と、前記係止壁部の上方に設けられる上方面と、を備え、
前記筒体と前記軟質部材は、前記膨出部と前記係止壁部とが軸方向に抜け止め係止されることで互いに装着され、前記取付孔の下方開口端と前記筒体の端部とが軸方向に当接され、前記上方面と前記下方面との間に軸方向の隙間が設けられる軟質部材の取付構造。
【請求項2】
前記上方面より上方に突出する上方突起、又は前記下方面より下方に突出する下方突起の少なくともいずれか一方が形成され、前記上方突起及び前記下方突起は周方向に離隔する複数の突起である請求項1に記載の軟質部材の取付構造。
【請求項3】
前記隙間は、前記上方突起及び前記下方突起の軸方向高さ以下である請求項2に記載の軟質部材の取付構造。
【請求項4】
前記突部は、前記膨出部より下方に設けられる小外径部と、該小外径部より下方に延設される大外径部と、を備え、前記大外径部の外径は、前記小内径部の内径より大きく設定され、前記大外径部と前記小内径部とを嵌合させた際、前記大外径部が前記小内径部に圧接される請求項1乃至3のいずれかに記載の軟質部材の取付構造。
【請求項5】
前記軟質部材が、弾性材料により一体に成形される請求項1乃至4のいずれかに記載の軟質部材の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質部材の取付構造に関する。詳細には、筆記具の軸筒の尾端またはキャップの閉鎖端に軟質部材を取り付ける軟質部材の取付構造である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、筆記具の筒体の端部に軟質部材を取り付ける軟質部材の取付構造が開示されている。詳細には、筒体の上端部に突部を設けるとともに、突部の上端部に膨出部が形成され、軟質部材の軸心には、取付孔が貫設され、取付孔の内周面に段形状の係止壁部が形成され、突部の外周面と取付孔の内周面とを嵌合させた際、突部の膨出部が取付孔の係止壁部に抜け止め係止される軟質部材の取付構造である。
【0003】
当該軟質部材の取付構造によれば、突部の外周面と取付孔の内周面とを嵌合させた際、膨出部が係止壁部に抜け止め係止されることにより、突部に対する軟質部材の確実な抜け止めがなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-214515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の軟質部材の取付構造によれば、筒体の端部から膨出部下部までの距離と、軟質部材の取付孔の下方開口端から係止壁部までの距離と、が同一(特許文献1の図6参照)である。これにより、膨出部が係止壁部を乗り越える時、突部(膨出部)と取付孔との滑りが悪い場合、膨出部が係止壁部を乗り越えることができず、軟質部材を抜け止め係止することができない虞がある。
【0006】
本発明は、以上のような知見に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、膨出部が係止壁部を確実に乗り越えることができ、軟質部材の確実な抜け止め係止を可能とする軟質部材の取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、筆記具部品である筒体に軟質部材を装着してなる軟質部材の取付構造であって、前記筒体は、該筒体の端部に設けられる突部と、前記突部の上部に設けられる膨出部と、前記膨出部の下方に設けられる下方面と、を備え、前記軟質部材は、軸心に軸方向に貫設される取付孔と、前記取付孔の上部内周面に設けられる大内径部と、前記大内径部より小さい内径であり前記取付孔の下部内周面に設けられる小内径部と、前記大内径部及び前記小内径部の間の内周面に設けられる段形状の係止壁部と、前記係止壁部の上方に設けられる上方面と、を備え、前記筒体と前記軟質部材は、前記膨出部と前記係止壁部とが軸方向に抜け止め係止されることで互いに装着され、前記取付孔の下方開口端と前記筒体の端部とが軸方向に当接され、前記上方面と前記下方面との間に軸方向の隙間が設けられる軟質部材の取付構造である。
【0008】
本発明によれば、前記筒体と前記軟質部材は、前記膨出部と前記係止壁部とが軸方向に抜け止め係止されることで互いに装着され、前記取付孔の下方開口端と前記筒体の端部とが軸方向に当接され、前記上方面と前記下方面との間に軸方向の隙間が設けられる。これにより、膨出部が係止壁部を確実に乗り越えることができ、軟質部材の確実な抜け止め係止を可能とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、膨出部が係止壁部を確実に乗り越えることができ、軟質部材の確実な抜け止め係止を可能とする、軟質部材の取付構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態における、軟質部材の取付孔と筒体の突部とが嵌合する前の状態を示す要部縦断面図である。
図2図1の軟質部材の取付孔と筒体の突部とが完全に嵌合した状態を示す要部縦断面図である。
図3】本発明の第2実施形態における、軟質部材の取付孔と筒体の突部とが完全に嵌合した状態を示す要部縦断面図である。
図4図3の筒体を示す要部斜視図である。
図5】本発明の第3実施形態における、軟質部材の取付孔と筒体の突部とが完全に嵌合した状態を示す要部縦断面図である。
図6図5の軟質部材を示す平面図である。
図7図6の軟質部材のD-D線の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の3つの実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本実施形態の軟質部材20の取付構造において、「上」とは、筒体10において突部11の先端(膨出部14)側を指し、軟質部材20において大内径部23側を指す。一方、本発明で、「下」とは筒体10において突部11の反対側を指し、軟質部材20において小内径部22側を指す。
【0012】
<第1実施形態>
本実施形態の軟質部材20の取付構造は、筆記具部品である筒体10に軟質部材20を装着してなる軟質部材の取付構造であって、上端部に突部11を備えた筒体10と、筒体10の突部11に装着される軟質部材20とからなる。
【0013】
図1は、本発明の第1実施形態における、軟質部材20の取付孔21と筒体10の突部11とが嵌合する前の状態を示す要部縦断面図である。図2は、図1の軟質部材20の取付孔21と筒体10の突部11とが完全に嵌合した状態を示す要部縦断面図である。
【0014】
・筒体
筒体10は、合成樹脂(例えばポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS製など)の射出成形または押出成形により得られる。筆記具部品である筒体とは、例えば、筆記具の軸筒、又は軸筒のペン先側に着脱自在に設けられるキャップ等を指す。
【0015】
・突部
図1に示すように、筒体10の端部16(上端部)には、軸方向上方に突出する突部11が筒体10と一体に形成される。突部11は、筒体10がキャップの場合には、キャップの閉塞端側に形成され、筒体10が軸筒の場合には、ペン先と反対側の端部(軸筒の尾端)に形成される。
【0016】
なお、突部11は、筒体10と一体に形成される構成以外に、別部品の取り付けにより構成することもできる。また、筒体10(筆記具のキャップ、または筆記具の軸筒)は、合成樹脂以外にも、金属により構成することもできる。
【0017】
突部11は、横断面円形状の軸方向に延びる棒状体である。また、突部11は、突部11の上部に設けられる膨出部14と、膨出部14の下方に設けられる下方面15と、を備える。
【0018】
また突部11は、膨出部14より下方に設けられ且つ膨出部14より小さい外径を有する小外径部13と、該小外径部13より下方に延設され且つ該小外径部13より大きい外径を有する大外径部12と、を備える。
【0019】
・膨出部
突起の上部外周面には環状の膨出部14が一体に形成される。膨出部14は、上方に向かうに従い外径が次第に小さくなる傾斜面(即ち円錐面)よりなるガイド部を有する。また、ガイド部の上方には、最小外径部が形成される。
【0020】
また、膨出部14が挿入される軟質部材20の取付孔21の下方開口端には、面取り部が形成される。これにより、膨出部14を取付孔21に挿入することが容易になり、組み立て性が向上する。
【0021】
膨出部14の最大外径は、後述の係止壁部24(小内径部22)の最小内径より大きく、且つ、後述の大内径部23より小さく設定される。膨出部14の最大外径と係止壁部24(小内径部22)の最小内径との差は、0.5mm~2mm(好ましくは0.5mm~1mm)の範囲が好ましい。
【0022】
それにより、軟質部材20の確実な脱落防止が可能となるとともに、膨出部14と係止壁部24(小内径部22)とのスムーズな乗り越えが可能となる。すなわち、軟質部材20は、膨出部14と係止壁部24とが軸方向に抜け止め係止される。また、軟質部材20の取付孔21と筒体10の突部11とが完全に嵌合した状態において、軟質部材20上部の外周面の変形を防ぐことができる。
【0023】
また、図2に示すように、大外径部12の外径は、後述の小内径部22の内径より大きく設定され、大外径部12と小内径部22とを嵌合させた際、大外径部12が小内径部22に圧接される。
【0024】
これにより、軟質部材20の取付孔21と筒体10の突部11とが完全に嵌合した状態で、軟質部材20をより強固に装着することが可能で、使用中に軟質部材20が回転したり脱落したりすることを防ぐことができる。
【0025】
・軟質部材
本実施形態では、軟質部材20は、熱変色性の筆跡の表面を擦って筆跡を熱変色させる摩擦変色部材が採用される。図1に示すように、軟質部材20は、軸心に軸方向に貫設される取付孔21と、取付孔21の上部内周面に設けられる大内径部23と、該大内径部23より小さい内径であり取付孔21の下部内周面に設けられる小内径部22と、大内径部23及び小内径部22の間の内周面に設けられる段形状の係止壁部24と、該係止壁部24の上方に設けられる上方面25と、を備える。
【0026】
軟質部材20を構成する材料は、例えば、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)又は2種以上のゴム弾性材料の混合物、及び、ゴム弾性材料と合成樹脂との混合物等が挙げられる。
【0027】
軟質部材20を構成する弾性を有する合成樹脂は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)ではなく、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料からなることが好ましい。軟質部材20は、これ以外にも、消しゴム、または携帯情報端末に用いる入力ペンの入力部材等でもよい。また、軟質部材20の上面は凸曲面状を有する。軟質部材20の最大外径は、筒体10の上端の外径よりも小さく設定される。また、軟質部材20は、弾性材料により一体に形成されている。これにより、軟質部材の剛性が向上して所望の嵌合性能を得ることができる。
【0028】
・軸方向の隙間
図2に示すように、筒体10と軟質部材20は、膨出部14と係止壁部24とが軸方向に抜け止め係止されることで互いに装着され、取付孔21の下方開口端と筒体10の端部16とを軸方向に当接させた場合に、上方面25と下方面15との間に軸方向の隙間Cが設けられる。
【0029】
言い換えれば、筒体10の端部16から下方面15までの軸方向の長さAは、取付孔21の下方開口端から上方面25まで軸方向の長さBよりも僅かに(隙間Cに相当)大きく設定される。
【0030】
これにより、膨出部14が係止壁部24を乗り越える時、膨出部14と係止壁部24(小内径部22)との滑りが悪くても、膨出部14が係止壁部24を確実に乗り越えることができ、軟質部材20の確実な脱落防止を可能とする。
【0031】
また、上方面25及び下方面15は、軸線に対して垂直な面であることが好ましい。これにより、より確実に、膨出部14が係止壁部24を確実に乗り越えることができ、軟質部材20をより強固に筒体10に装着することができる。
【0032】
なお、軸方向の隙間Cは、具体的には0.05mm~1.0mm(好ましくは0.1mm~0.5mm)の範囲が有効である。軸方向の隙間Cの寸法により、軟質部材20の装着時の膨出部14と係止壁部24との確実な乗り越えが得られる。本実施形態では、具体的には、軸方向の長さAは、8mmに設定され、軸方向の長さBは、7.9mmに設定される。
【0033】
・軟質部材の装着過程
本実施形態の軟質部材20の装着過程を説明する。まず、筒体10の膨出部14(突部11)を軟質部材20の取付孔21の小内径部22に挿入する。そして、膨出部14が係止壁部24(小内径部22)を乗り越える直前において、軟質部材20(小内径部22)の外周面が径方向外方に膨出変形自在である。これにより、膨出部14と係止壁部24(小内径部22)とのスムーズな乗り越えが可能となる。
【0034】
そして、図2に示すように、膨出部14と係止壁部24との乗り越えが終了した状態において、上方面25と下方面15との間には軸方向の隙間Cが形成される。それにより、膨出部14が係止壁部24を乗り越える時、膨出部14と係止壁部24(小内径部22)との滑りが悪くても、潤滑剤等を塗布すること無しに膨出部14と係止壁部24との確実な乗り越えることができ、軟質部材20の確実な抜け止め係止を可能とする。
【0035】
<第2実施形態>
図3及び図4に、本発明の第2実施形態を示す。図3は、本実施形態における、軟質部材20の取付孔21と筒体10の突部11とが完全に嵌合した状態を示す要部縦断面図である。図4は、図3の筒体10を示す要部斜視図であり、下方面15を下方から見た状態を示す斜視図である。
【0036】
本発明の第2実施形態における第1実施形態との違いは、下方面15より下方に突出する下方突起15aを備えている点であり、第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様であるため、その詳細な説明は省略する。以下に、第2実施形態の構成について詳述する。
【0037】
まず、前述の第1実施形態に示すように、隙間Cが形成されることは、軟質部材20の確実な抜け止め係止を可能とし、しかも、軟質部材20の取付作業を容易とする。しかし、隙間Cの分だけ軟質部材20の軸方向のガタつきが発生してしまう虞がある。
【0038】
言い換えれば、軟質部材20に、筒体10の上方に引き上げる力(軟質部材20を引き抜く力)を加えた際に、隙間Cの分だけ軟質部材20が上方に移動し、軟質部材20の下端部と筒体10の端部16との間に軸方向の隙間ができてしまう虞があり、外観上好ましくない。
【0039】
そこで、本発明の第2実施形態においては、図3及び図4に示すように、筒体10には、下方面15より下方に突出する下方突起15aが形成される。また、該下方突起15aは周方向に離隔する複数の突起である。
【0040】
これにより、軟質部材20の下端部(取付孔21の下方開口端)と筒体10の端部16とが軸方向に当接され、上方面25と下方面15との間に軸方向の隙間が設けられる場合でも、下方突起15aを備えることによって、軸方向のガタつきを抑えることができる。
【0041】
下方突起15aは、図4に示すように、表面にR面取りが施してある略半球状の突起が4個設けられているが、下方突起の形状はこれに限らず、例えば、半球状、四角柱等の柱体、三角錐等の錐体を複数個設けられていてもよい。また、表面にR面取りが施してある突起であることより、膨出部14と係止壁部24との円滑な乗り越えが可能となる。
【0042】
また、本実施形態において、下方突起15aは、筒体10の下方面15上に設けられていることより、硬質材料からなる。また、下方突起15aは、周方向に離隔する複数の突起である。
【0043】
これにより、筒体10に軟質部材20を装着した後は、下方突起15aが、上方面25を、部分的に変形させる。具体的には、下方突起15aが、下方突起15aに対面する上方面25の部分のみ、軸方向に変形させる。言い換えれば、上方面25の、下方突起15aが当接する部分に、下方突起15aが没入される(圧接される)。
【0044】
よって、本実施形態においては、下方突起15aを形成することによって筒体10と軟質部材20の取付時に、嵌合(軸方向の抜け止め係止)の妨げにならない。以上のことから、本実施形態の構成によって、軟質部材20の確実な抜け止め係止を可能とし、しかも、軟質部材20の取付作業を容易とするとともに、軟質部材20の軸方向のガタツキを抑え、軟質部材20と筒体10の端部16との間に軸方向の隙間ができない。
【0045】
また、本実施形態において、隙間Cは、下方突起15aの軸方向高さ以下である。これにより、軟質部材20の軸方向のガタツキを確実に抑え、軟質部材20と筒体10の端部16との間に軸方向の隙間ができず、デザイン(美観)上も優れた形態を提供することができる。
【0046】
<第3実施形態>
図5乃至図7に、本発明の第3実施形態を示す。図5は、本実施形態における、軟質部材20の取付孔21と筒体10の突部11とが完全に嵌合した状態を示す要部縦断面図である。図6は、図5の軟質部材20を大内径部23側から見た状態を示す平面図である。図7は、図6の軟質部材20のD-D線の断面斜視図であり、第3実施形態の軟質部材20及びその上方突起25aを示す断面斜視図である。
【0047】
本発明の第3実施形態における第1及び第2実施形態との違いは、上方面25より上方に突出する上方突起25aを備えている点であり、第3実施形態のその他の構成は、第1及び第2実施形態と同様であるため、その詳細な説明は省略する。以下に、第3実施形態の構成について詳述する。
【0048】
本発明の第3実施形態においては、図5乃至図7に示すように、軟質部材20には、上方面25より上方に突出する上方突起25aが形成される。また、該上方突起25aは周方向に離隔する複数の突起である。
【0049】
これにより、軟質部材20の下端部(取付孔21の下方開口端)と筒体10の端部16とが軸方向に当接され、上方面25と下方面15との間に軸方向の隙間が設けられる場合でも、上方突起25aを備えることによって、軸方向のガタつきを抑えることができる。
【0050】
上方突起25aは、図6及び図7に示すように、表面にR面取りが施してある略半球状の突起が4個設けられているが、上方突起25aの形状はこれに限らず、例えば、半球状、四角柱等の柱体、三角錐等の錐体を複数個設けられていてもよい。また、表面にR面取りが施してある突起であることより、膨出部14と係止壁部24との円滑な乗り越えが可能となる。
【0051】
また、本実施形態において、上方突起25aは、軟質部材20の上方面25上に設けられていることより、軟質材料からなる。また、上方突起25aは、周方向に離隔する複数の突起である。これにより、筒体10に軟質部材20を装着した後は、上方突起25aが、硬質材料からなる下方面15に当接し、軸方向に変形する(圧縮される)。
【0052】
よって、本実施形態においては、上方突起25aを形成することによって筒体10と軟質部材20の取付時に、嵌合(軸方向の抜け止め係止)の妨げにならない。以上のことから、本実施形態の構成によって、軟質部材20の確実な抜け止め係止を可能とし、しかも、軟質部材20の取付作業を容易とするとともに、軟質部材20の軸方向のガタツキを抑え、軟質部材20と筒体10の端部16との間に軸方向の隙間ができない。
【0053】
また、本実施形態において、隙間Cは、上方突起25aの軸方向高さ以下である。これにより、軟質部材20の軸方向のガタツキを確実に抑え、軟質部材20と筒体10の端部16との間に軸方向の隙間ができず、デザイン(美観)上も優れた形態を提供することができる。
【0054】
以上の第1乃至第3実施形態の構成より、本開示は、以下の様に表すことができる。
【0055】
本開示は、筆記具部品である筒体10に軟質部材20を装着してなる軟質部材の取付構造であって、筒体10は、該筒体10の端部16に設けられる突部11と、突部11の上部に設けられる膨出部14と、膨出部14の下方に設けられる下方面15と、を備え、軟質部材20は、軸心に軸方向に貫設される取付孔21と、取付孔21の上部内周面に設けられる大内径部23と、大内径部23より小さい内径であり取付孔21の下部内周面に設けられる小内径部22と、大内径部23及び小内径部22の間の内周面に設けられる段形状の係止壁部24と、係止壁部24の上方に設けられる上方面25と、を備え、筒体10と軟質部材20は、膨出部14と係止壁部24とが軸方向に抜け止め係止されることで互いに装着され、取付孔21の下方開口端と筒体10の端部16とが軸方向に当接され、上方面25と下方面15との間に軸方向の隙間が設けられる軟質部材の取付構造である。
【0056】
本開示によれば、筒体10と軟質部材20は、膨出部14と係止壁部24とが軸方向に抜け止め係止されることで互いに装着され、取付孔21の下方開口端と筒体10の端部16とが軸方向に当接され、上方面25と下方面15との間に軸方向の隙間が設けられる。これにより、膨出部14が係止壁部24を確実に乗り越えることができ、軟質部材20の確実な抜け止め係止を可能とする。
【0057】
また、上方面25より上方に突出する上方突起25a、又は下方面15より下方に突出する下方突起15aの少なくともいずれか一方が形成され、上方突起25a及び下方突起15aは周方向に離隔する複数の突起であることが好ましい。
【0058】
これにより、軟質部材20の下端部(取付孔21の下方開口端)と筒体10の端部16とが軸方向に当接され、上方面25と下方面15との間に軸方向の隙間が設けられる場合でも、上方突起25a又は下方突起15aの少なくともいずれか一方を備えることによって、軸方向のガタつきを抑えることができる。
【0059】
また、隙間は、上方突起25a及び下方突起15aの軸方向高さ以下であることが好ましい。
【0060】
これにより、軟質部材20の軸方向のガタツキを確実に抑え、軟質部材20と筒体10の端部16との間に軸方向の隙間ができず、デザイン(美観)上も優れた形態を提供することができる。
【0061】
また、突部11は、膨出部14より下方に設けられる小外径部13と、該小外径部13より下方に延設される大外径部12と、を備え、大外径部12の外径は、小内径部22の内径より大きく設定され、大外径部12と小内径部22とを嵌合させた際、大外径部12が小内径部22に圧接されることが好ましい。
【0062】
これにより、軟質部材20の取付孔21と筒体10の突部11とが完全に嵌合した状態で、軟質部材20をより強固に装着することが可能で、使用中に軟質部材20が回転したり脱落したりすることを防ぐことができる。
【0063】
また、軟質部材20が、弾性材料により一体に成形されることが好ましい。これにより、軟質部材20の剛性が向上して所望の嵌合性能を得ることができる。
【符号の説明】
【0064】
10 筒体
11 突部
12 大外径部
13 小外径部
14 膨出部
15 下方面
15a 下方突起
16 端部
20 軟質部材
21 取付孔
22 小内径部
23 大内径部
24 係止壁部
25 上方面
25a 上方突起
A 筒体の端部から下方面までの軸方向の長さ
B 取付孔の下方開口端から上方面まで軸方向の長さ
C 軸方向の隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7