(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014903
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】W/O型ピッカリングエマルション、及びこれを含む化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/25 20060101AFI20230124BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230124BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20230124BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20230124BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20230124BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/06
A61K8/37
A61Q1/12
A61Q17/04
A61K8/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119108
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】七原 加奈
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB232
4C083AB242
4C083AC011
4C083AC061
4C083AC122
4C083AC241
4C083AC261
4C083AC262
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC482
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD172
4C083BB12
4C083BB13
4C083BB25
4C083CC12
4C083CC19
4C083DD32
4C083EE01
4C083EE03
4C083FF05
(57)【要約】
【課題】
本発明は、製剤安定性及び製剤の均一性に優れるW/O型ピッカリングエマルションを提供することを課題とする。
【解決手段】
水相と、油相と、疎水化粉体と、を含むW/O型ピッカリングエマルションであって、
前記W/O型ピッカリングエマルションは、
イソステアリン酸と、
イソステアリン酸の他にIOB0.2以上の不揮発性油剤と、
を含む、W/O型ピッカリングエマルション。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相と、油相と、疎水化粉体と、を含むW/O型ピッカリングエマルションであって、
前記W/O型ピッカリングエマルションは、
イソステアリン酸と、
イソステアリン酸の他にIOB0.2以上の不揮発性油剤と、
を含む、W/O型ピッカリングエマルション。
【請求項2】
前記のIOB0.2以上の不揮発性油剤が液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油から選ばれる一又は二以上の油剤である、請求項1に記載のW/O型ピッカリングエマルション。
【請求項3】
イソステアリン酸と、前記のIOB0.2以上の不揮発性油剤の含有質量比が、1:0.5~1:25の範囲内にある、請求項1又は2に記載のW/O型ピッカリングエマルション。
【請求項4】
前記のIOB0.2以上の不揮発性油剤が、メトキシケイ皮酸エチルヘキシルである、請求項1~3の何れか一項に記載のW/O型ピッカリングエマルション。
【請求項5】
前記疎水化粉体は、シリル化シリカである、請求項1~4の何れか一項に記載のW/O型ピッカリングエマルション。
【請求項6】
前記油相に含まれる油剤全量に対して、揮発性油剤を40質量%以上含むことを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載のW/O型ピッカリングエマルション。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載のW/O型ピッカリングエマルションを含む、化粧料。
【請求項8】
ファンデーション又はサンスクリーン剤であることを特徴とする、請求項7に記載の化粧料。
【請求項9】
水相と、油相と、疎水化粉体と、を含むW/O型ピッカリングエマルションの製造方法であって、
水相を調製する工程と、油相を調製する工程と、を備え、
前記油相は、イソステアリン酸と、
イソステアリン酸の他にIOB0.2以上の不揮発性油剤と、を含むことを特徴とする、W/O型ピッカリングエマルションの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、W/O型ピッカリングエマルション、及びこれを含む化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化粧料分野において、ピッカリングエマルションの活用が注目を集めている。
例えば、特許文献1には、ピッカリングエマルションの乳化安定性を向上させる技術として、アクリル酸ポリマーの添加が提案されている(特許文献1)。
【0003】
ここで、紫外線吸収剤などのIOB値が高い極性油を用いた場合には、乳化が困難であることが知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「PEG 系界面活性剤フリー新規サンスクリーンの開発」、[pdf]、2016年、ポーラ化成工業 研究開発部、[令和3年5月18日検索]、インターネット〈URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/sccj/50/4/50_314/_pdf/-char/ja〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記先行技術のあるところ、本発明は、IOB0.2以上の不揮発性油剤を含む形態であっても、製剤安定性及び製剤の均一性に優れるW/O型ピッカリングエマルションを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、前記課題を解決する本発明は、
水相と、油相と、疎水化粉体と、を含むW/O型ピッカリングエマルションであって、
前記W/O型ピッカリングエマルションは、
イソステアリン酸と、
イソステアリン酸の他にIOB0.2以上の不揮発性油剤と、
を含む、W/O型ピッカリングエマルションである。
本発明のピッカリングエマルションは、IOB0.2以上の不揮発性油剤を含む形態であっても、製剤安定性及び製剤の均一性に優れる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記のIOB0.2以上の不揮発性油剤が液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油から選ばれる一又は二以上の油剤である。
上記形態によれば、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油から選ばれる一又は二以上の不揮発性油剤を含む形態であっても、極めて優れた製剤安定性及び製剤の均一性を発揮するピッカリングエマルションを提供することができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、イソステアリン酸と、前記のIOB0.2以上の不揮発性油剤の含有質量比が、1:0.5~1:25の範囲内にある。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記のIOB0.2以上の不揮発性油剤が、メトキシケイ皮酸エチルヘキシルである。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記疎水化粉体は、シリル化シリカである。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記油相に含まれる油剤全量に対して、揮発性油剤を40質量%以上含むことを特徴とする。
【0013】
また、前記課題を解決する本発明は、上述したW/O型ピッカリングエマルションを含む、化粧料である。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記化粧料がファンデーション、又はサンスクリーン剤である。
【0015】
また、本発明は、水相と、油相と、疎水化粉体と、を含むW/O型ピッカリングエマルションの製造方法であって、
水相を調製する工程と、油相を調製する工程と、を備え、
前記油相は、イソステアリン酸と、
イソステアリン酸の他にIOB0.2以上の不揮発性油剤と、を含むことを特徴とする、W/O型ピッカリングエマルションの製造方法でもある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、IOB0.2以上の不揮発性油剤を含む形態であっても、製剤安定性及び製剤の均一性に優れるW/O型ピッカリングエマルションを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<1>W/O型ピッカリングエマルション
本発明は、水相と油相とが、疎水化粉体により乳化されたW/O型ピッカリングエマルションである。
そして、本発明は、イソステアリン酸と、イソステアリン酸の他にIOB0.2以上の不揮発性油剤と、を含むことを特徴とする。
【0018】
本明細書において、W/O型ピッカリングエマルションは、油相と水相との界面に吸着することで乳化剤として働く微粒子(本明細書における、疎水化粉体)を用い製造された油中水型(W/O型)の乳化物をいう。
【0019】
そして、後述する実施例に示す通り、本発明のW/O型ピッカリングエマルションは界面活性剤を用いてもよいがその含有量は極力少なくすることが好ましい。界面活性剤の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0質量%である。
【0020】
本発明によれば、界面活性剤の含有量が上限以下であっても、製剤安定性及び製剤の均一性に優れるW/O型ピッカリングエマルションを提供することができる。
【0021】
本発明のW/O型ピッカリングエマルションは、皮膚外用剤に好適である。
中でも、本発明のW/O型ピッカリングエマルションは、化粧料に用いることが好ましい。
化粧料しては、サンスクリーン剤、日焼け止め、化粧下地、ファンデーションを好ましく挙げることができる。
ここで、ファンデーションとしては、リキッドファンデーションを特に好ましく挙げることができる。
【0022】
以下、本発明のW/O型ピッカリングエマルションの含有成分について詳細に説明する。
【0023】
(1)疎水化粉体
本明細書において、疎水化粉体とは、油相と水相との界面に吸着することで乳化剤として働く微粒子をいう。
【0024】
本明細書における微粒子には、シリカ、二酸化チタン、酸化スズ、粘土鉱物、酸化アルミニウム、ナノ微粒子沈降炭酸カルシウム、石炭、酸化マグネシウム、及び三ケイ酸マグネシウムなどの無機粉体、並びにエチルセルロース、結晶性脂肪アルコール及び脂肪酸、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の樹脂粒子等の有機粉体の何れを用いることができる。
【0025】
また、前述の微粒子の表面を疎水化処理したものであることが好ましい。
ここで、本発明においては、微粒子の表面を部分的に疎水化した、部分疎水化粉体を用いることもできる。
【0026】
疎水化処理としては、有機ケイ素化合物、シリコーン、炭化水素油、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、高級アルコール、ポリオキシアルキレン化合物等の疎水化処理剤で粉体を処理する方法を挙げることができる。
中でも、微粒子の疎水化処理は、有機ケイ素化合物又はシリコーンを疎水化処理剤として粉体を処理する形態であることが好ましい。
【0027】
有機ケイ素化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、モノメチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、トリメチルエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、パルミチルシラン等を挙げることができる。
【0028】
シリコーンとしては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、α-メチルスチレン変性シリコーン、クロルフェニルシリコーン、フッ素変性シリコーン等を挙げることができる。
【0029】
また、疎水化処理剤には、一種或いは二種以上の混合物を用いることができる。
【0030】
本発明では、疎水化粉体として、シリル化シリカ及び/又はハイドロゲンジメチコン処理酸化チタンを用いることが好ましい。
中でも、疎水化粉体は、シリル化シリカであることが好ましい。
【0031】
疎水化粉体の粒径は、平均一次粒子径が200nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下、特に好ましくは15nm以下である。
疎水化粉体の粒子径を上記の範囲とすることによって、W/O型ピッカリングエマルションをより確実に製造することができる。
疎水化粉体の粒子径を上記の範囲とすることによって、乳化粒子を小さく調節することができ、製剤の安定性が向上する。
【0032】
なお、本発明において平均一次粒子径とは、特に制限されず粒子に関して一般的に用いられる方法で測定される一次粒子の径を意味するものである。
具体的には、平均一次粒子径としては、透過電子顕微鏡写真から得た、粒子の長軸と短軸の相加平均の値を用いることができる。
【0033】
疎水化粉体の含有量は、W/O型ピッカリングエマルション全量に対して、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.7質量%以上、特に好ましくは0.9質量%以上である。
【0034】
また、疎水化粉体の含有量は、W/O型ピッカリングエマルション全量に対して、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2.5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
【0035】
また、疎水化粉体の含有量は、水10質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上である。
また、疎水化粉体の含有量は、水10質量部に対して、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下、特に好ましくは0.5質量部以下である。
【0036】
また、疎水化粉体の含有量は、油剤10質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上、特に好ましくは0.2質量部以上である。
【0037】
また、疎水化粉体の含有量は、油剤10質量部に対して、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下である。
【0038】
疎水化粉体の含有量を上記範囲内とすることで、製剤安定性及び製剤の均一性に優れるW/O型ピッカリングエマルションを提供することができる。
【0039】
(2)イソステアリン酸
本発明では、イソステアリン酸を用いることを特徴とする。
【0040】
イソステアリン酸の含有量は、W/O型ピッカリングエマルション全量に対して、好ましくは0.8質量%以上、より好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.2質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上、特に好ましくは1.8質量%以上である。
【0041】
また、イソステアリン酸の含有量は、W/O型ピッカリングエマルション全量に対して、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、より好ましくは11質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下、特に好ましくは6質量%以下である。
【0042】
また、イソステアリン酸と、疎水化粉体の含有質量比は、好ましくは1:0.1~1:10、より好ましくは1:0.2~1:5、より好ましくは1:0.3~1:2、さらに好ましくは1:0.5~1:1の範囲内にある。
【0043】
イソステアリン酸の含有量を上記範囲内とすることで、製剤安定性及び製剤の均一性に優れるW/O型ピッカリングエマルションを提供することができる。
【0044】
ここで、イソステアリン酸は、油相中に含まれる形態であることが好ましい。
【0045】
(3)油相成分
本発明のW/O型ピッカリングエマルションは、油相成分として油剤を含む。
油剤の含有量は、W/O型ピッカリングエマルション全量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上である。
【0046】
また、油剤の含有量は、W/O型ピッカリングエマルション全量に対して、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0047】
油剤の含有量を上記範囲内とすることで、製剤安定性及び製剤の均一性に優れるW/O型ピッカリングエマルションを提供することができる。
【0048】
本発明のW/O型ピッカリングエマルションは、揮発性油剤及び不揮発性油剤の両方を含むことが好ましい。
【0049】
(3―1)不揮発性油剤
以下、本発明のW/O型ピッカリングエマルションに用いる不揮発性油剤について、より好ましい形態を説明する。
【0050】
本発明に用いる不揮発性油剤としては、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、シリコーン油等を挙げることができる。
【0051】
そして、本発明のW/O型ピッカリングエマルションは、IOB値が好ましくは0.2以上、より好ましくは0.25以上の不揮発性油剤を含む。
このような高極性油剤を用いた場合、従来の方法では安定なW/O型ピッカリングエマルションを調製することが難しかった。
本発明によれば、上記のIOB値を有する不揮発性油剤を用いた場合であっても、乳化安定性に優れたW/O型ピッカリングエマルションを調製することができる。
【0052】
ここで、上記のIOB値を有する不揮発性油剤は、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油から選ばれる一又は二以上の油剤であることが好ましい。
【0053】
上記のIOB値を有する不揮発性油剤の含有量は、W/O型ピッカリングエマルション全量に対して、好ましくは0.8質量%以上、より好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは8質量%以上である。
【0054】
また、上記のIOB値を有する不揮発性油剤の含有量は、W/O型ピッカリングエマルション全量に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0055】
また、疎水化粉体と、前記範囲内のIOBを有する不揮発性油剤の含有質量比は、好ましくは1:0.5~1:40、より好ましくは1:1~1:30、より好ましくは1:1.5~1:20、さらに好ましくは1:2~1:10の範囲内である。
【0056】
イソステアリン酸と、前記範囲内のIOBを有する不揮発性油剤の含有質量比は、好ましくは1:0.5~1:25、より好ましくは1:1~1:20、より好ましくは1:2~1:15、さらに好ましくは1:3~1:10の範囲内である。
【0057】
不揮発性油剤の含有量を上記範囲内とすることで、製剤安定性及び製剤の均一性に優れるW/O型ピッカリングエマルションを提供することができる。
【0058】
ここで、上記のIOB値を有する不揮発性油剤は、紫外線吸収剤であることが好ましい。
【0059】
不揮発性油剤は、メイソステアリン酸プロピレングリコール(IOB値:0.4)、セバシン酸ジエチルヘキシル(IOB値:0.24)、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル(IOB値:0.28)、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチルプロパン(IOB値:0.31)、コハク酸ジ2-エチルヘキシル(IOB値:0.32)、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール(IOB値:0.32)、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルヘキシル(IOB値:0.33)、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル(IOB値:0.33)、トリオクタン酸トリメチロールプロパン(IOB値:0.33)、トリカプリル酸グリセリル(IOB値:0.33)、ジオクタン酸エチレングリコール(IOB値:0.35)、ジミリスチン酸グリセリル(IOB値:0.35)、ジラウリン酸ジエチレングリコール(IOB値:0.35)、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット(IOB値:0.35)、ジ酢酸モノステアリン酸グリセリル(IOB値:0.36)、モノステアリン酸プロピレングリコール(IOB値:0.38)、オレイン酸プロピレングリコール(IOB値:0.39)、乳酸オレイル(IOB値:0.39)、ジカプロン酸プロピレングリコール(IOB値:0.4)、モノステアリン酸エチレングリコール(IOB値:0.4)、ジカプリン酸ジエチレングリコール(IOB値:0.41)、ジヤシ油脂肪酸グリセリル(IOB値:0.41)、ジラウリン酸グリセリル(IOB値:0.41)、セスキオレイン酸グリセリル(IOB値:0.41)、モノオレイン酸エチレングリコール(IOB値:0.41)、ヤシ油アルコール(IOB値:0.42)、ラウリルアルコール(IOB値:0.42)、乳酸セチル(IOB値:0.42)、セバシン酸ジエチル(IOB値:0.43)、ヒマシ油脂肪酸メチル(IOB値:0.43)、パルミチン酸エチレングリコール(IOB値:0.44)、ジラウリン酸ポリエチレングリコール(IOB値:0.45)及びジピバリン酸トリプロピレングリコール(IOB値:0.52)、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル(IOB値:0.28)、イソノナン酸イソノニル(IOB値:0.2)、オクチルドデカノール(IOB値:0.26)、リンゴ酸ジイソステアリル(IOB値:0.28)、ラウロリルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)(IOB値:0.30)、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン(IOB値:0.33)、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル(IOB値:0.31)、ジカプリル酸プロピレングリコール(IOB値:0.32)、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(IOB値:0.35)、乳酸オクチルドデシル(IOB値:0.35)、セバシン酸ジイソプロピル(IOB値:0.40)、ヒマシ油(IOB値:0.43)からなる群から選択される1種又は2種以上であってもよい。
【0060】
(3―2)揮発性油剤
以下、本発明のW/O型ピッカリングエマルションに用いる揮発性油剤について、より好ましい形態を説明する。
【0061】
本発明のW/O型ピッカリングエマルションは、揮発性油剤を、油剤全量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上含む。
【0062】
また、本発明のW/O型ピッカリングエマルションは、揮発性油剤を、油剤全量に対して、好ましくは95質量%以下、より好ましくは92.5質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは87.5質量%以下、特に好ましくは85質量%以下含む。
【0063】
揮発性油剤の含有量を上記範囲内とすることで、製剤安定性及び製剤の均一性に優れるW/O型ピッカリングエマルションを提供することができる。
【0064】
以下、本発明のW/O型ピッカリングエマルションが含む油剤の種類についてより好ましい形態を詳述する。
【0065】
揮発性油剤としては、揮発性シリコーン油、揮発性炭化水素油、揮発性エステル油、揮発性天然動植物油及び揮発性フッ素油等が好ましく挙げられ、揮発性シリコーン油、及び揮発性炭化水素油を好ましく挙げることができる。
【0066】
前述の揮発性シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルトリメチコン、トリス(トリメチルシリル)メチルシラン、テトラキス(トリメチルシリル)シラン、ヘキサシクロトリシロキサン、オクタメチルテトラシクロシロキサン、シクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン及びテトラデカメチルシクロへプタシロキサン等を好ましく挙げることができる。
【0067】
前述の揮発性炭化水素油としては、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、イソオクタン、イソデカン、イソドデカン、イソヘキサデカン、シクロデカン及びシクロドデカン等を好ましく挙げることができる。
【0068】
(4)水相成分
本発明のW/O型ピッカリングエマルションの水相における水の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上、特に好ましくは40質量%以上、最も好ましくは45質量%以上である。
【0069】
また、水相における水の含有量は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下、特に好ましくは80質量%以下である。
【0070】
水の含有量は、上記で説明した油剤全量1質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.4質量部以上、特に好ましくは0.5質量部以上である。
水の含有量は、上記で説明した油剤全量1質量部に対して、好ましくは2質量部以下である。
【0071】
また、水の含有量は、揮発性油剤1質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上である。
【0072】
水の含有量は、揮発性油剤1質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、特に好ましくは2.5質量部以下である。
【0073】
W/O型ピッカリングエマルション全量に対する、水相全量の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上、最も好ましくは30質量%以上である。
【0074】
また、W/O型ピッカリングエマルション全量に対する、水相全量の含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下、最も好ましくは55質量%以下である。
【0075】
本発明のW/O型ピッカリングエマルションにおける水相は、通常化粧料に用いられる成分を特に制限なく含むことができるが、例えば、以下の成分を含有することが好ましい。
【0076】
ポリオールとしては、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ヘキシレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等が挙げられ、中でも、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ソルビトールを好ましく挙げることができる。
これらの含有量は、W/O型ピッカリングエマルション全体の好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは3質量%以上、である。
また、上記ポリオールの含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0077】
また、本発明のW/O型ピッカリングエマルションは、増粘剤を含んでもよい。増粘剤としては、キサンタンガム、ジェランガム、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、アクリル酸ナトリウムグラフトデンプン、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、ベントナイト等を好ましく挙げることができる。
【0078】
増粘剤の含有量は、W/O型ピッカリングエマルション全体の好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。 増粘剤の含有量は、W/O型ピッカリングエマルション全体の好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
【0079】
(5)他の成分
本発明のW/O型ピッカリングエマルションにおいては、上記成分以外に通常化粧料で使用される任意成分を発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0080】
<2>W/O型ピッカリングエマルションの製造方法
本発明のW/O型ピッカリングエマルションは以下の製造方法により製造することができる。
まず、上述した任意成分を適宜含む水相を調製する工程と、上述した油相を調製する工程を備える。
【0081】
ここで、本発明においては、油相に、イソステアリン酸と、IOB0.2以上の不揮発性油剤を含むことを特徴とする。
また、本発明の好ましい実施の形態では、油相は、油剤及び疎水化粉体を含み、前記油剤として、油剤全量に対して、40質量%以上の揮発性油剤を含む。
【0082】
次いで、前記水相と前記油相を混合することで、疎水化粉体による水相と油相の乳化が起こり、本発明のW/O型ピッカリングエマルションが製造される。
【0083】
本発明のW/O型ピッカリングエマルション、及びこれを含む化粧料は容器内で保存している状態は、粉体が水相及び油相の界面に存し、乳化状態を保っている。
【0084】
本発明のW/O型ピッカリングエマルションの製造方法における好ましい実施の形態は、前述の説明を援用することができる。
【実施例0085】
<試験例1>
試験例1では、IOB0.2以上の不揮発性油剤を含むW/O型ピッカリングエマルションにおける、イソステアリン酸の影響を確認した。
【0086】
(1)乳化組成物の製造
以下の表1に記載の水相と油相を調製し、これらを混合して乳化させることで、W/O型ピッカリングエマルションを得た。
【0087】
ここで、実施例1~3、実施例5~7は、シリル化シリカ(本発明における疎水化粉体に相当)、イソステアリン酸及び、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル(紫外線吸収剤;本発明におけるIOB0.2以上の不揮発性油剤に相当)を含むW/O型ピッカリングエマルションである。
また、実施例4では、他の疎水化粉体として、ハイドロゲンジメチコン処理酸化チタンを用いたW/O型ピッカリングエマルションである。
【0088】
ここで、比較例1として、疎水化粉体の代わりに界面活性剤(シリコーン系界面活性剤)を用い製造した、W/O型乳化組成物(W/O型ピッカリングエマルションではない、乳化組成物)を用意した。
また、シリル化シリカ(本発明における疎水化粉体に相当)を含み、イソステアリン酸を含まないW/O型ピッカリングエマルションを比較例2とした。
【0089】
(2)評価項目及び、評価手法
製造した乳化組成物を、表1に示す試験に供した。結果を、表1に示す。
【0090】
(2-1)製剤安定性
化粧品の研究開発を専門とする評価者5名が、製造した乳化組成物を常温で1週間静置したときの離水の程度を以下の基準で3段階評価した。
○・・・全く離水が発生しない。
△・・・少し離水が発生する。
×・・・大量の離水が発生する。
【0091】
(2-2)製剤の均一性
製造した乳化組成物の外観について、化粧品の研究開発を専門とする評価者5名が、ダマの有無や離水の有無などの観点から、製剤の均一性を以下の基準で3段階評価した。
○・・・製剤の外観が極めて均一である。
△・・・製剤の外観がほぼ均一。
×・・・製剤が極めて不均一。
【0092】
【0093】
(2-3)評価者による自由評価
比較例に関し、評価者による自由評価に供した。
自由評価の結果、比較例1は、表面に離水したものが見える状態との評価だった。
また、比較例2は、乳化状態が悪く、全体に対して10%ほど離水が起こるとの評価だった。
また、比較例3は、乳化状態が悪く、全体に対して5%ほど離水が起こるとの評価だった。
【0094】
(3)結果及び考察
本試験の結果、IOB0.2以上の不揮発性油剤を含む形態であっても、イソステアリン酸を含むW/O型ピッカリングエマルションとすることで、製剤安定性及び製剤の均一性に優れることがわかった。