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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149031
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】熱源機システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04014 20160101AFI20231005BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20231005BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20231005BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20231005BHJP
   F23N 3/00 20060101ALI20231005BHJP
   F23N 5/00 20060101ALI20231005BHJP
   F23N 1/00 20060101ALI20231005BHJP
   H01M 8/04089 20160101ALI20231005BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20231005BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20231005BHJP
【FI】
H01M8/04014
H01M8/04 Z
H01M8/04746
H01M8/04537
F23N3/00
F23N5/00 L
F23N1/00 102Z
H01M8/04089
H01M8/12 101
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057357
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本道 正樹
(72)【発明者】
【氏名】香田 淳也
(72)【発明者】
【氏名】高須 俊樹
【テーマコード(参考)】
3K003
3K068
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
3K003FB05
3K003JA13
3K003KA05
3K003KB02
3K003NA04
3K068AA01
3K068BB01
3K068FB06
3K068FC06
3K068HA06
5H126BB06
5H127AA04
5H127AA06
5H127AA07
5H127AB02
5H127AB21
5H127AC15
5H127BA01
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA18
5H127BA40
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127DB66
5H127DC02
(57)【要約】
【課題】炭化水素及び水素を主成分とする混合ガスを、簡易に効率的に利用する。
【解決手段】熱源機システム10Aは、ガス導管Gから供給される炭化水素及び水素を主成分とする混合ガスが燃料極20Aに供給され、混合ガス中の水素を発電反応に用いて発電する燃料電池セルスタック20と、燃料電池セルスタック20の燃料極20Aから排出される燃料極オフガスを燃焼させるバーナ32と、バーナ32による燃焼熱と加熱対象流体との間で熱交換を行う熱交換器34と、を有する熱源機30と、燃料極オフガスの熱量が熱源機30の要求熱量となるように、燃料供給ブロワ24により供給される混合ガスの流量調整を行うコントローラ40と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス導管から供給される炭化水素及び水素を主成分とする混合ガスが燃料供給部により燃料極に供給され、前記混合ガス中の水素を発電反応に用いて発電する燃料電池と、
前記燃料電池の燃料極から排出される燃料極オフガスを燃焼させるバーナと、前記バーナによる燃焼熱と加熱対象流体との間で熱交換を行う熱交換器と、を有する熱源機と、
前記燃料極オフガスの熱量が前記熱源機の要求熱量となるように、前記燃料供給部により供給される前記混合ガスの流量調整を行う制御部と、
を備えた、熱源機システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記要求熱量及び前記燃料電池の発電出力に基づいて、前記燃料極オフガスの熱量が前記熱源機の要求熱量となるように、前記燃料供給部により供給される前記混合ガスの流量調整を行う、
請求項1に記載の熱源機システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記燃料電池が電力供給先の電力負荷に応じた発電出力となるように前記燃料電池の出力及び前記燃料供給部を制御する、
請求項1または請求項2に記載の熱源機システム。
【請求項4】
前記バーナへ燃焼用空気を送出する燃焼空気供給部を有し、
前記制御部は、前記燃料供給部により供給される前記混合ガスの流量及び前記バーナへ供給される前記燃料極オフガスの組成に基づいて、前記バーナへ供給される空気の流量が調整されるように前記燃焼空気供給部を制御する、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の熱源機システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記熱源機への運転要求がある時にのみ前記混合ガスが前記燃料極へ供給されるように前記燃料供給部を制御する、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の熱源機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
低炭素社会の実現に向けて、従来の都市ガス等のメタンを主成分とする炭化水素系のガスに水素を混合した混合ガスを利用することが検討されている。このような混合ガスをガス導管から供給する場合、ユーザ側での対応が問題となる。
【0003】
特許文献1、2では、水素燃料用設備と既存のガス燃焼機器が並存する場合に、両方の機器を支障なく利用するため、混合ガス中の水素と炭化水素系ガスを分離し、機器で利用できない分離した未使用のガスを導管に戻し、他の需要家へ供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4530193号
【特許文献2】特許4721525号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2のように、ガス導管へ分離後のガスを戻す場合、戻された先のガスの水素や炭化水素の濃度にバラツキが生じると共に、ガス導管システムが大がかりとなる。一方、混合ガスを既存のガス燃焼機器で燃焼させることも考えられるが、水素を効率的に利用できない。需用者側に、水素燃料用設備利用者と既存のガス燃焼機器利用者が並存する場合に、混合ガスを簡易、且つ効率的に利用する方法が求められる。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して成されたものであり、炭化水素及び水素を主成分とする混合ガスを、簡易に効率的に利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る熱源機システムは、ガス導管から供給される炭化水素及び水素を主成分とする混合ガスが燃料供給部により燃料極に供給され、前記混合ガス中の水素を発電反応に用いて発電する燃料電池と、前記燃料電池の燃料極から排出される燃料極オフガスを燃焼させるバーナと、前記バーナによる燃焼熱と加熱対象流体との間で熱交換を行う熱交換器と、を有する熱源機と、前記燃料極オフガスの熱量が前記熱源機の要求熱量となるように、前記燃料供給部により供給される前記混合ガスの流量調整を行う制御部と、を備えている。
【0008】
請求項1に係る熱源機システムでは、ガス導管からの炭化水素及び水素を主成分とする混合ガスは、燃料電池の燃料極に供給され、燃料電池では混合ガス中の水素が発電に利用される。発電に利用されずに燃料極から排出される燃料極オフガスは、熱源機のバーナの燃焼に供され、熱交換器においてバーナによる燃焼熱と加熱対象流体との間で熱交換が行われ、加熱対象流体が加熱される。
【0009】
請求項1に係る熱源機システムによれば、混合ガス中の水素が燃料電池で利用され、未利用の炭化水素が熱源機で利用される。したがって、熱源機のみで水素及び炭化水素を燃焼させて利用する場合と比較して、混合ガスを効率よく利用することができる。また、分離装置も必要なく、簡易な構成にすることができる。
【0010】
また、制御部によって、燃料極オフガスの熱量が熱源機の要求熱量となるように、燃料供給部により供給される混合ガスの流量調整が行われる。したがって、燃料電池の発電により消費される熱量を考慮して、燃料供給部により供給される混合ガスの流量調整を行うことにより、熱源機の要求熱量をバーナへ供給することができる。
【0011】
請求項2に係る熱源機システムは、前記制御部は、前記要求熱量及び前記燃料電池の発電出力に基づいて、前記燃料極オフガスの熱量が前記熱源機の要求熱量となるように、前記燃料供給部により供給される前記混合ガスの流量調整を行う。
【0012】
請求項2に係る熱源機システムによれば、前記燃料電池の発電出力に応じて変化する消費水素量を計算することにより、容易に燃料極オフガスの熱量を熱源機の要求熱量とすることができる。
【0013】
請求項3に係る熱源機システムは、前記制御部は、前記燃料電池が電力供給先の電力負荷に応じた発電出力となるように前記燃料電池の出力及び前記燃料供給部を制御する。
【0014】
請求項3に係る熱源機システムによれば、燃料電池による発電出力を負荷追従させて余剰電力を少なくしつつ、熱源機へ要求熱量を供給することができる。
【0015】
請求項4に係る熱源機システムは、前記バーナへ燃焼用空気を送出する燃焼空気供給部を有し、前記制御部は、前記燃料供給部により供給される前記混合ガスの流量及び前記バーナへ供給される前記燃料極オフガスの組成に基づいて、前記バーナへ供給される空気の流量が調整されるように前記燃焼空気供給部を制御する。
【0016】
請求項4に係る熱源機システムによれば、燃焼効率が向上する適切な量の空気をバーナへ供給することができる。
【0017】
請求項5に係る熱源機システムは、前記制御部は、前記熱源機への運転要求がある時にのみ前記混合ガスが前記燃料極へ供給されるように前記燃料供給部を制御する。
【0018】
請求項5に係る熱源機システムによれば、制御部によって、熱源機への運転要求がある時にのみ燃料電池へ混合ガスが供給されるように燃料供給部が制御される。ここでの「熱源機に対する運転要求がある時」は、熱源機へ運転要求があり且つ要求に応じて熱源機が運転中の場合を意味する。したがって、燃料電池のみが運転されて熱源機が運転されない事態が生じず、燃料電池から排出される、炭化水素や未利用水素が含まれる燃料極オフガスを、熱源機において適切に処理することができる。そして、燃料極オフガスを処理するための機器を別途設ける必要がなく、また、分離装置も必要なく、簡易な構成にすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る熱源機システムによれば、炭化水素及び水素を主成分とする混合ガスを、簡易に効率的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る熱源機システムの構成図である。
図2】本実施形態に係る熱源機システムの制御関連の構成図である。
図3】空燃比テーブルの一例である。
図4】発電制御処理のフローチャートである。
図5】流量調整処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
熱源機システム10Aは、ユーザ宅や、集合住宅等に設置されている、水などの加熱対象流体を加熱するためのシステムであり、給湯設備や温水式床暖房設備などの熱源となる機器である。図1には、本発明の実施形態に係る熱源機システム10Aの主要構成の概略が示されている。本発明の実施形態に係る熱源機システム10Aは、主要な構成として、発電ユニット12、及び熱源機30を備えている。
【0023】
熱源機システム10Aには、所定の地域にガスを供給するガス導管Gから混合ガスが供給される。混合ガスは、水素及び炭化水素を主成分とするガスであり、一例として都市ガスに水素を混合させたガスを用いることができる。また、一例として、混合ガス中の水素濃度は0.1%~10%程度、メタン濃度は90%~99.9%程度に設定することができる。ガス導管Gから分岐して燃料供給管P1が設けられており、燃料供給管P1を介して熱源機システム10Aへ混合ガスが供給される。
【0024】
発電ユニット12は、混合ガスの水素を利用して発電する機器であり、脱硫器14、燃料電池セルスタック20、空気供給ブロワ22、燃料供給ブロワ24、及びパワーコンディショナ26を有している。
【0025】
燃料電池セルスタック20は、積層された複数の燃料電池セルを有するセルスタックである。燃料電池セルスタック20は、本発明における燃料電池の一例であり、個々の燃料電池セルは、電解質層(不図示)と、当該電解質層の表裏面にそれぞれ積層された燃料極20A、及び空気極20Bと、を有している。なお、燃料電池セルスタック20として、固体酸化物型燃料電池(SOFC)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)、固体高分子型燃料電池(PEFC)等、種々の燃料電池を適用することができる。本実施形態では、PEFCを例に説明する。
【0026】
燃料極20Aの入口側には、燃料供給管P1が接続され、空気極20Bの入口側には、空気供給管P2が接続されている。燃料供給管P1には、上流側から順に燃料供給ブロワ24、及び脱硫器14が設けられている。燃料供給ブロワ24は、混合ガスを指示された流量で燃料極20Aへ向かって送出する。脱硫器14は、混合ガス中の付臭剤としての硫黄成分を除去する。硫黄成分が除去された混合ガスは、水素及びメタンを含んでおり、改質されることなく燃料電池セルスタック20の燃料極20Aへ供給される。空気供給管P2には、空気供給ブロワ22が設けられており、空気供給ブロワ22により空気極20Bへ空気が供給される。
【0027】
燃料極20Aの出口側には、燃料極オフガス管P3が接続され、空気極20Bの出口側には、空気極オフガス管P4が接続されている。燃料極オフガス管P3の下流端は、熱源機30の後述するバーナ32に接続されている。空気極20Bから排出される空気極オフガスは、空気極オフガス管P4から大気に放散される。燃料極20Aから排出される燃料極オフガスは、燃料極オフガス管P3を介してバーナ32へ供給される。
【0028】
燃料電池セルスタック20には、パワーコンディショナ26が電気的に接続されている。パワーコンディショナ26により、燃料電池セルスタック20による発電出力が制御されると共に、電力がユーザへ供給される。パワーコンディショナ26は、電力供給先(ユーザ)の電力負荷に応じて発電出力を制御する。但し、本実施形態では、熱源機30の要求熱量(必要熱量)を超える混合ガスが必要となる負荷追従は実行せず、要求熱量の範囲内の流量の混合ガスに含まれる水素で発電可能な出力とする。
【0029】
熱源機30は、発電ユニット12の燃料電池セルスタック20の燃料極20Aから排出された燃料極オフガスを燃料として加熱対象流体を加熱する機器であり、バーナ32、及び熱交換器34を有している。熱交換器34には、水供給管P5から上水が供給される。
【0030】
バーナ32には、燃料極オフガス管P3及び燃焼空気供給管P8が接続されている。燃料極オフガス管P3からは、燃料電池セルスタック20の燃料極20Aから排出された燃料極オフガスが供給される。燃焼空気供給管P8の上流端には、燃焼空気供給ブロワ28が設けられており、燃焼空気供給ブロワ28の駆動によりバーナ32へ燃焼空気が供給される。バーナ32は熱交換器34と隣接配置されている。バーナ32は、燃料極オフガス中の可燃成分を燃焼させ、燃焼熱により熱交換器34へ供給された上水を加熱する。
【0031】
熱交換器34で加熱された上水は、配管P7から送出され、給湯用、床暖用へ供給される。バーナ32からの燃焼排ガスは、排ガス管P6から排出される。
【0032】
図2には、熱源機システム10Aの制御系に係る概略ブロック図が示されている。熱源機システム10Aには、コントローラ40が設けられており、コントローラ40により発電ユニット12及び熱源機30が制御されている。
【0033】
コントローラ40は、図2に示されるように、CPU(Central Processing Unit)41と、ROM(Read Only Memory)42と、RAM(Random Access Memory)43と、入出力インターフェース(I/F)44と、記憶部45と、を備えている。
【0034】
CPU41、ROM42、RAM43、及びI/F44は、バス46を介して各々接続されている。I/F44には、記憶部45を含む各機能部が接続されている。これらの各機能部は、I/F44を介して、CPU41と相互に通信可能とされる。
【0035】
記憶部45としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等が用いられる。記憶部45には、熱源機システム10Aの各部を制御するための制御プログラムや、各種のデータが記憶される。なお、この制御プログラム、各種データは、ROM42に記憶されていてもよい。
【0036】
本実施形態では、制御プログラムの一部として、発電制御処理プログラム等が格納されている。また、この処理に使用されるデータとして、発電条件情報J、混合ガス必要量対応テーブルT1、空燃比テーブルT2等が格納されている。
【0037】
発電条件情報Jは、発電ユニット12において、発電運転が実行されるための条件である。本実施形態では、熱源機30の稼働が発電運転の条件とされ、且つ、操作パネル50から床暖開始の入力があった場合、浴槽湯張り開始の入力があった場合、給湯時間が所定時間T以上となった場合、のいずれかが条件とされている。所定時間Tとしては、例えば、10秒~20秒など、床暖房や浴槽湯張りよりも短く設定され、床暖房や浴槽湯張りよりも短いが、ユーザの湯の使用時間がある程度長くなる時間を設定することができる。床暖房の時間、浴槽湯張り時間、及び所定時間T以上が、本発明の発電可能時間の例となる。
【0038】
混合ガス必要量対応テーブルT1は、燃料電池セルスタック20における発電による水素の消費量に基づいて、燃料極20Aへ供給される混合ガスの流量を決定するためのテーブルである。熱源機30で要求される単位時間当たりの熱量をE0(以下「要求熱量E0」という)、水素消費前において要求熱量E0となる混合ガスの流量をF0(以下「非発電時流量F0」という)、非発電時流量F0において水素消費後の燃料極オフガスの熱量をE1(以下「水素消費後熱量E1」という)とすると、水素消費後の燃料極オフガスの熱量が要求熱量E0となる混合ガスの流量F1(以下「発電時流量F1」という)は、下記の(1)式で表すことができる。
【0039】
(1) F1 = F0 × (E0/E1)
【0040】
水素消費後熱量E1は、燃料電池セルスタック20における発電において消費される水素分の熱量(非発電時流量F0中)を要求熱量E0から減じることにより算出することができる。非発電時流量F0における水素の消費量Xは、燃料電池セルスタック20での発電電流に比例して増加する。ファラデー定数を96485、混合ガスのモル体積を22.4、発電電流をI、燃料電池セルスタック20のセル数をN、とすると、水素の消費量Xは、下記の(2)式で表すことができる。
【0041】
(2) X = 22.4×N×I/(2×96845)
【0042】
単位モル当たりの水素の燃焼熱(熱量)をEH2とし、混合ガスにおける水素の組成(モル比率または体積比率)をaとすると、燃料電池セルスタック20における発電において消費される水素の熱量E2(非発電時流量F0中)は、下記の(3)式で表すことができ、E1は下記の(4)式で表すことができる。
【0043】
(3) E2 = EH2×X/22.4
(4) E1 = E0-E2
【0044】
上記の(1)(2)(3)(4)より、変数パラメータである要求熱量E0、発電電流Iに基づいて発電時流量F1を算出することができ、この発電時流量F1が、燃料供給ブロワ24で混合ガスを供給する流量となる。混合ガス必要量対応テーブルT1では、要求熱量E0と発電電流Iに対応した発電時流量F1が設定され、混合ガス必要量対応テーブルT1を参照することにより、混合ガスを供給する流量(発電時流量F1)を簡易に求めることができる。
【0045】
空燃比テーブルT2は、混合ガスの発電時流量F1と、バーナ32へ供給される燃料極オフガス中の水素の組成(モル比率)と、に基づいて、混合ガスの空燃比λを決定するためのテーブルである。一例として、図3に示す空燃比テーブルT2を用いることができる。空燃比テーブルT2で得られた空燃比λに基づいて、燃料極オフガスにおける成分毎の燃焼空気必要量(以下「燃焼空気必要量FA」という)を下記の(5)式で計算し、その合計で燃焼空気の必要量FAを算出することができる。Zは各成分の組成比率であり、Yは各成分のO2量論混合比であり、成分毎に異なる。
【0046】
(5)FA=Y×F1×(Z×カーボン(C)量+Z×水素(H)量)/0.21×λ
【0047】
前述のように、燃料電池セルスタック20での発電反応で水素が消費されるため、発電電流Iの変化により、燃料極オフガスにおける水素成分の組成比率が変化する。これにより変化する空燃比λに基づいて、燃焼空気必要量FAを算出することができる。
【0048】
コントローラ40は、空気供給ブロワ22、燃料供給ブロワ24、パワーコンディショナ26、燃焼空気供給ブロワ28、バーナ32、操作パネル50等と接続されている。操作パネル50は、表示器、ランプ、及び、スイッチ等を有しており、ユーザが各種の指示を入力できると共に、熱源機システム10Aの状態等が表示される。
【0049】
次に、熱源機システム10Aの作用について説明する。
【0050】
ユーザにより、操作パネル50から熱源機システム10Aの電源がオンされると、コントローラ40では、図4に示す発電制御処理が実行される。
【0051】
ステップS10で、熱源機30の駆動指示があったかどうかを判断し、判断が肯定された場合には、ステップS12で、熱源機30の駆動を開始する。判断が否定された場合には、熱源機の駆動指示があるまで待機する。熱源機30の駆動指示は、ユーザによる操作パネル50からの入力(床暖開始、浴槽の湯張り等)、または着火最低流量を超える上水の出水で行われる。
【0052】
熱源機30の駆動開始により、燃料供給ブロワ24が駆動され、ガス導管Gから混合ガスが、非改質で、脱硫器14、燃料電池セルスタック20の燃料極20Aを経て、熱源機30のバーナ32に供給される。そして、バーナ32で混合ガス(燃料極オフガス)が燃焼され、熱交換器34に供給される加熱対象流体である水が燃焼熱で加熱される。なお、本実施形態では加熱対象流体として水を例に説明するが、不凍液(床暖房の場合)など他の流体であってもよい。ここでの燃料供給ブロワ24による混合ガスの供給は、要求熱量E0となる混合ガスの非発電時流量F0で行われる。要求熱量E0は、ユーザによる要求出湯流量、要求出湯温度、等から設定される。
【0053】
ステップS14で、発電条件を満たすかどうかを判断する。発電条件を満たすか否かは、記憶部45に記憶されている発電条件情報Jを満たすか否かで判断される。本実施形態では、操作パネル50から床暖開始の入力があった場合、浴槽湯張り開始の入力があった場合、上水の出水後に給湯時間が所定時間T以上となった場合、に判断が肯定される。
【0054】
ステップS14で発電条件を満たすと判断された場合には、ステップS16で発電ユニット12において発電運転を開始する指示を出力する。発電開始により、空気供給ブロワ22が駆動されて空気極20Bへ空気が供給され、パワーコンディショナ26により燃料電池セルスタック20の発電出力が開始される。パワーコンディショナ26では、電力負荷に応じて発電出力が制御される。混合ガスの非発電時流量F0が、電力負荷に対応する発電に必要な水素量に満たない場合には、非発電時流量F0内での最大出力とする。
【0055】
これにより、燃料電池セルスタック20へ供給された混合ガス中の水素が発電反応に用いられて消費され、水素消費後の燃料極オフガスがバーナ32へ供給される。バーナ32では、燃料電池セルスタック20での水素消費後の燃料極オフガスが燃焼される。
【0056】
次に、ステップS30で、流量調整処理を実行する。流量調整処理は、図5に示されるように、ステップS32で、発電量に変化があるかどうかを判断し、発電量に変化がないがない場合には、流量調整処理を終了してステップS18へ進む。発電量に変化がある場合には、ステップS33で発電電流Iを取得し、ステップS34で発電時流量F1を決定する。発電時流量F1の決定は、混合ガス必要量対応テーブルT1を参照し、要求熱量E0及び発電電流Iに基づいて決定する。
【0057】
次に、ステップS35で、燃焼空気必要量FAを決定する。燃焼空気必要量FAの決定は、発電時流量F1とバーナ32へ供給される燃料極オフガス中の水素の組成(モル比率)に基づいて、空燃比テーブルT2で得られた空燃比λを用い、前述の式(5)により算出して行うことができる。
【0058】
そして、ステップS36で、燃料供給ブロワ24を制御して、混合ガス流量を発電時流量F1となるように調整し、ステップS37で、燃焼空気供給ブロワ28を制御して、バーナ32へ供給される燃焼空気を燃焼空気必要量FAとなるように調整する。
【0059】
次に、ステップS18で、熱源機30の停止指示があるかどうかを判断し、熱源機30の停止指示がない場合には、ステップS30の流量調整処理を繰り返す。熱源機30の停止指示があった場合には、ステップS20で熱源機30の停止指示を出力し、ステップS22で発電ユニット12の発電運転を停止する。
【0060】
ステップS24で、熱源機システム10Aの停止指示があったかどうかを判断し、判断が肯定された場合には、本処理を終了する。熱源機システム10Aの停止指示がない場合には、ステップS10へ戻り、上記の処理を繰り返す。
【0061】
本実施形態の熱源機システム10Aでは、混合ガス中の水素が燃料電池セルスタック20の発電で利用され、燃料電池セルスタック20で未利用のメタン等の可燃成分が熱源機30で利用される。したがって、熱源機30のバーナ32のみで水素及びメタンを含む混合ガスを燃焼させて利用する場合と比較して、混合ガスを効率よく利用することができる。
【0062】
また、燃料電池セルスタック20へ供給する混合ガスに水素が含まれているので、改質器を必要とせず、簡易な構成とすることができる。
【0063】
また、本実施形態では、熱源機30の運転時にのみ燃料電池へ混合ガスを供給するので、燃料電池セルスタック20から排出される、可燃成分が含まれる燃料極オフガスを、外部排出することなく、熱源機30において適切に処理することができる。
【0064】
また、本実施形態では、熱源機30の運転継続時間が床暖房の時間、浴槽湯張り時間、及び所定時間T以上であると判断された場合に、燃料電池セルスタック20の発電運転が開始されるので、非効率な燃料電池セルスタック20の発電運転を抑制することができる。なお、必ずしも、熱源機30の運転継続時間が床暖房の時間、浴槽湯張り時間、及び所定時間T以上であると判断された場合に、燃料電池セルスタック20の発電運転が開始される必要はなく、熱源機30の駆動と同時に燃料電池セルスタック20の発電運転を開始してもよい。
【0065】
また、本実施形態では、燃料電池セルスタック20の発電により消費される熱量を考慮して、バーナ32へ供給される燃料極オフガスの熱量が熱源機30の要求熱量となるように、燃料供給ブロワ24で供給される混合ガスの流量調整が行われる。したがって、適切な熱量の燃料極オフガスをバーナへ供給することができる。
【0066】
また、本実施形態では、燃料供給ブロワ24で供給される混合ガスの流量及びバーナ32へ供給される燃料極オフガスの組成に基づいて、バーナ32へ供給される燃焼空気の流量が調整される。したがって、燃焼効率が向上する適切な量の空気をバーナ32へ供給することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、燃料電池セルスタック20の発電出力(発電電流I)の変化に基づいて、燃料極オフガスが要求熱量E0となるように混合ガス流量(発電時流量F1)を調整したが、他の手段により調整してもよい。例えば、燃料極オフガス管P3にガス熱量を測定するための計器を設置し、当該計器により測定される熱量が要求熱量E0となるようにフィードバック制御して、混合ガス流量(発電時流量F1)を調整してもよい。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
10A 熱源機システム
20 燃料電池セルスタック(燃料電池)
20A 燃料極
24 燃料供給ブロワ(燃料供給部)
28 燃焼空気供給ブロワ(燃焼空気供給部)
30 熱源機
32 バーナ
34 熱交換器
40 コントローラ(制御部)
E0 要求熱量
G ガス導管
I 発電電流(発電出力)
図1
図2
図3
図4
図5