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特開2023-149032発電制御装置及び発電制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149032
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】発電制御装置及び発電制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20231005BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20231005BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20231005BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20231005BHJP
【FI】
H02J3/38 170
H01M8/04537
H01M8/04858
H01M8/0438
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057358
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱口 直大
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 崇之
(72)【発明者】
【氏名】安部 翔太
(72)【発明者】
【氏名】河越 雅雄
【テーマコード(参考)】
5G066
5H127
【Fターム(参考)】
5G066HB07
5H127AB23
5H127AC15
5H127BA02
5H127BB02
5H127DB02
5H127DB66
5H127DB69
5H127DC42
5H127DC90
5H127GG03
(57)【要約】
【課題】電力負荷と現在の発電出力とに所定の差分が生じた場合、最適な一次エネルギーの消費効率となるように、負荷追従するか現状維持とするかの判断を行う。
【解決手段】発電出力の全域にわたって、ガス使用量との関係が、定格(例えば、図4(A)及び(B)では400W)近傍のような安定した特性(正の傾きの正比例関係)にならず、負荷追従した場合に、かえって一次エネルギーが増加することを回避するべく、通信インタバル毎の実績値(追従一次エネルギーA、現在一次エネルギーB、及び買電一次エネルギーC)で、負荷追従の要否を判断するようにした。このため、発電出力-ガス使用量の特性に適合した発電制御を、定格近傍のみならず、全ての発電域で実現することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源に対して系統連系された発電装置の運転を制御する発電制御装置であって、
前記商用電源の出力を所定値に維持するように、負荷の増減に応じて前記発電装置の発電量を追従させる制御を行う基本制御部と、
前記発電装置の発電量を必要とする負荷電力と現在の発電出力とに差分が発生している場合に、前記差分を前記基本制御部の制御に基づき発電量を追従させたときの一次エネルギーの使用量である第1の使用量、現在の発電出力における一次エネルギーの使用量である第2の使用量、及び、前記差分を前記商用電源による電力を利用したときの一次エネルギーの使用量である第3の使用量、を選択的に用いて、前記基本制御部による発電出力の追従を実行する否かを判定する判定部と、
を有する発電制御装置。
【請求項2】
前記判定部が、
必要な負荷電力が現在の発電出力以上の場合、前記第1の使用量と、前記第2の使用量及び第3の使用量の合計値と、を比較し、
第1の使用量が、前記合計値以上の場合は、現在の発電出力を維持し、
第1の使用量が、前記合計値未満の場合は、前記基本制御部の制御に基づき、発電出力を必要な電力負荷に追従させる、請求項1記載の発電制御装置。
【請求項3】
前記判定部が、
必要な負荷電力が現在の発電出力未満の場合、前記第1の使用量と、前記第2の使用量と、を比較し、
第1の使用量が、前記第2の使用量以上の場合は、現在の発電出力を維持し、
第1の使用量が、前記第2の使用量未満の場合は、前記基本制御部の制御に基づき、発電出力を必要な負荷電力に追従させる、請求項1記載の発電制御装置。
【請求項4】
前記判定部で、前記基本制御部による発電出力の追従をせず、現在の発電出力を維持する判定の場合、余剰の電力を、前記発電装置を構成する内部電力消費機器で消費させると共に、前記内部電力消費機器による消費でも逆潮流が発生する場合は、前記基本制御部による発電出力の追従を実行する、請求項1記載の発電制御装置。
【請求項5】
コンピュータを、
請求項1~請求項4の何れか1項記載の発電制御装置として動作させる、
発電制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散型電源設備の発電制御装置に関するものである。詳しくは、分散型電源設備の一例である、家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの発電制御において、電力負荷に応じて発電出力を追従させる発電制御装置及び発電制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池システムの発電制御として、電力負荷に追従して発電出力を変更する負荷追従運転制御がある。発電出力を負荷の変化に追従させるため、電力負荷に対して発電量の過不足を小さくすることができる。
【0003】
追従運転に関する先行文献として、特許文献1には、燃料電池の運転に際して、負荷変動が大きい場合にフィードフォワード制御で制御することにより負荷変動に早急に追従できる電力負荷追従による燃料電池の運転制御方法及びシステムが記載されている。
【0004】
特許文献1では、燃料電池における、実際の発電出力をPac(n)、目標発電出力をPac(n+1)、実際の発電出力Pac(n)と目標発電出力Pac(n+1)の差をΔPとし、ある閾値P1を定めたとき、ΔPの絶対値がP1以下のときはフィードバック制御を行い、ΔPの絶対値がP1より大きいときはフィードフォワード制御を行うことが記載されている。
【0005】
また、追従運転を効率よく行う先行文献として、特許文献2には、家庭用コージェネレーションシステムに、電力負荷のサンプリング値について所定時間毎に偏差を算出して記憶する電力負荷処理手段と、所定の条件に基づいて読み出した電力負荷及び電力負荷偏差に基づいて燃料電池を負荷追従運転したときの発電出力、発電効率、熱回収率、買電量、熱回収量を演算し、燃料電池の起動時刻と停止時刻を仮決めする運転パターン仮決め手段と、仮決めされた運転パターンの消費エネルギー量を演算する消費エネルギー量演算手段と、消費エネルギー量が最小となる運転パターンを選定する運転パターン選定手段と、を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-233439号公報
【特許文献2】特開2005-030211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
燃料電池の発電のためのエネルギー源であるガスの使用量と発電出力との関係は、理論上は発電出力が増加するにつれてガス使用量が増えるという線形な比例関係(正の傾き)である。
【0008】
ここで、一次エネルギー使用量は、燃料電池の発電のためのエネルギー源がガスの場合、以下の式で計算される。
【0009】
一次エネルギー=(燃料電池の発電のためのガス使用量×ガス熱量)+(購入電力量×一次エネルギー換算係数)
【0010】
発電出力とガス使用量との関係が、理論上の線形な比例関係であれば、追従運転を常に継続することで、一次エネルギーの削減となり得る。
【0011】
しかしながら、発電出力とガス使用量との関係が、必ずしも線形な比例関係を維持するとは限らない。極端な場合、正の傾きの相関と、負の傾き相関とが混在する場合もある。
【0012】
発電出力とガス使用量との関係が、負の傾きの相関の領域では、発電出力を増加することで、ガス使用量を軽減する場合もある。
【0013】
すなわち、一次エネルギーの観点から考えると、現在の電力負荷、及び現在の電力負荷から増減する電力負荷の状況によっては、負荷追従しない方が一次エネルギーの使用量を軽減できる場合がある。
【0014】
例えば、発電装置には、定格(400W又は700W等)があり、通常はこの定格で最大の能力(燃費を含む)を発生するように設計されており、それ以外(例えば、40W~200W)の領域では、発電出力とガス使用量との関係は、正比例にならず、また、非線形な特性になる場合がある。このような不安定な領域では、必要な電力負荷に追従して発電量を調整することが、かえって、燃費を悪くする(ガス使用量を増加させる)原因となる。
【0015】
一例として、図4(A)に示される如く、ある時刻の負荷が40Wで、発電装置も40Wで発電しているとする。
【0016】
次の時刻の負荷を取得すると80Wであったとする。
【0017】
このとき、負荷追従して発電出力を80Wに変更すると、ガス使用量が増加する。
【0018】
一方、負荷追従せずに40Wで発電出力を維持すると、ガス使用量が変化しないが、商用電源から購入する電力量が40W増加する。
【0019】
負荷追従する場合又は発電出力を維持する場合、図4(A)の特性の中で現在の発電電力の違い、或いは、図4(A)と(B)等のように特性の違いで、一次エネルギー使用量が異なる場合がある。
【0020】
本発明は、電力負荷と現在の発電出力とに所定の差分が生じた場合、最適な一次エネルギーの消費効率となるように、負荷追従するか現状維持とするかの判断を行うことができる発電制御装置及び発電制御プログラムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係る発電制御装置は、商用電源に対して系統連系された発電装置の運転を制御する制御を行う発電制御装置であって、前記商用電源の出力を所定値に維持するように、負荷の増減に応じて前記発電装置の発電量を追従させる基本制御部と、前記発電装置の発電量を必要とする負荷電力と現在の発電出力とに差分が発生している場合に、前記差分を前記基本制御部の制御に基づき発電量を追従させたときの一次エネルギーの使用量である第1の使用量、現在の発電出力における一次エネルギーの使用量である第2の使用量、及び、前記差分を前記商用電源による電力を利用したときの一次エネルギーの使用量である第3の使用量、を選択的に用いて、前記基本制御部による発電出力の追従を実行する否かを判定する判定部と、を有している。
【0022】
本発明において、前記判定部が、必要な負荷電力が現在の発電出力以上の場合、前記第1の使用量と、前記第2の使用量及び第3の使用量の合計値と、を比較し、第1の使用量が、前記合計値以上の場合は、現在の発電出力を維持し、第1の使用量が、前記合計値未満の場合は、前記基本制御部の制御に基づき、発電出力を必要な電力負荷に追従させることを特徴としている。
【0023】
本発明において、前記判定部が、必要な負荷電力が現在の発電出力未満の場合、前記第1の使用量と、前記第2の使用量と、を比較し、第1の使用量が、前記第2の使用量以上の場合は、現在の発電出力を維持し、第1の使用量が、前記第2の使用量未満の場合は、前記基本制御部の制御に基づき、発電出力を必要な負荷電力に追従させることを特徴としている。
【0024】
本発明において、前記判定部で、前記基本制御部による発電出力の追従をせず、現在の発電出力を維持する判定の場合、余剰の電力を、前記発電装置を構成する内部電力消費機器で消費させると共に、前記内部電力消費機器による消費でも逆潮流が発生する場合は、前記基本制御部による発電出力の追従を実行することを特徴としている。
【0025】
本発明に係る発電制御プログラムは、コンピュータを、上記発電制御装置として動作させることを特徴としている。
【0026】
本発明によれば、発電装置の発電量を必要とする電力負荷と現在の発電出力とに差分が発生している場合に、差分を基本制御部の制御に基づき発電量を追従させたときの一次エネルギーの使用量である第1の使用量、現在の発電出力における一次エネルギーの使用量である第2の使用量、及び、差分を商用電源による電力を利用したときの一次エネルギーの使用量である第3の使用量、を選択的に用いて、前記基本制御部による発電出力の追従を実行する否かを判定することで、電力負荷と現在の発電出力とに所定の差分が生じた場合、最適な一次エネルギーの消費効率となるように、負荷追従するか現状維持とするかの判断を行うことができる。
【0027】
例えば、負荷追従したときのガス使用量の一次エネルギーをA、現在発電出力におけるガス使用量の一次エネルギーをB、(電力負荷―現在の発電出力)の一次エネルギーをCと定義し、電力負荷を取得して、発電装置の発電量を必要とする電力負荷が現在の発電電力以上と判定された場合は、A≧B+Cで現在の発電出力を維持し、A<B+Cで発電出力を電力負荷と一致するように変更(追従)する。
【0028】
また、電力負荷を取得して、発電装置の発電量を必要とする電力負荷が現在の発電電力未満と判定された場合は、A≧Bで現在の発電出力を維持し、A<Bで発電出力を電力負荷と一致するように変更(追従)する。
【発明の効果】
【0029】
以上説明した如く本発明によれば、電力負荷と現在の発電出力とに所定の差分が生じた場合、最適な一次エネルギーの消費効率となるように、負荷追従するか現状維持とするかの判断を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本実施の形態に係るコージェネレーション装置及び当該コージェネレーション装置が設置された家屋の概略図(無線方式で電力情報を取得する場合)である。
図2】本実施の形態に係るコージェネレーション装置のコントローラの制御ブロック図である。
図3】本実施の形態に係るコージェネレーション装置のコントローラにおける、発電制御機能に特化した機能ブロック図である。
図4】(A)及び(B)は、それぞれ本実施の形態に適用可能な、異なるコージェネレーション装置の発電出力-ガス使用量特性図である。
図5】本実施の形態に係るコージェネレーション装置の発電制御ルーチンを示すフローチャートである。
図6】変形例1に係るコージェネレーション装置の発電制御ルーチンを示すフローチャートである。
図7】変形例3に係るコージェネレーション装置及び当該コージェネレーション装置が設置された家屋の概略図(有線方式で電力情報を取得する場合)である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1には、本実施の形態に係る分散型電源設備の一例として、家庭用燃料電池コージェネレーション装置(以下、本実施の形態において、単に、「コージェネレーション装置10」という)の概略図が示されている。図1のコージェネレーション装置10は、電力情報を無線方式で取得する構成である。
【0032】
図1に示される如く、コージェネレーション装置10は、タンクユニットと燃料電池ユニットとが併設されたシステムである。なお、併設とは、物理的に隣接していることに限定するものではなく、相互に連携しあうことを意味する。すなわち、タンクユニットと燃料電池ユニットとが離れた状態で設置され、配管や電気配線等で連結するようにしてもよい。
【0033】
コージェネレーション装置10は、家屋12の外壁に沿って設置されるものであり、作業者が現場へ出向き、設置作業を実行する。
【0034】
図1は、設置作業が完了し、試運転が完了し、家屋12側の各種設備(電気機器、給湯設備等)と連携して、定常的に運転可能な状態である。
【0035】
コージェネレーション装置10は、図示は省略したが、ホットモジュール、パワーコンディショナ、排熱回収装置、蓄熱タンク、ラジエータ、熱交換器等を備え、それぞれが、コントローラ14によって、図2に示す、給湯関連制御部27及び発電関連制御部29を介して、相互に連携して制御される。
【0036】
ホットモジュールは、燃料処理装置で水素を取り出し、取り出した水素を燃料電池セルスタックへ供給し、空気中の酸素により直流電力を発生させる。
【0037】
パワーコンディショナは、発電された直流電力を交流電力に変換し、家屋へ供給する。
【0038】
排熱回収装置は、発電によって発生する排熱ガスから熱を回収する。
【0039】
蓄熱タンクは、熱媒を介して回収した熱を高温で貯めることができ、貯められた熱は給湯時に利用される。
【0040】
ラジエータは、熱媒を放熱し冷却する。ラジエータは、必須ではない。
【0041】
熱交換器は、熱媒タンクからの高温熱媒を利用し、水道水を温める。熱交換器は、必須ではない。
【0042】
また、コージェネレーション装置10は、発電電力を、電源線15を介して熱源機16へ送ることも可能である。熱源機16は、コージェネレーション装置10で加熱された温水を、必要に応じて都市ガス(例えば、13A)の燃焼によりさらに加温して家屋12へ供給する。
【0043】
図2に示される如く、コントローラ14は、CPU18、RAM20、ROM22、I/O24、及びこれらを接続するデータバスやコントロールバス等のバス26で構成されたマイクロコンピュータ28を備える。
【0044】
I/O24には、給湯関連制御部27と、発電関連制御部29とが接続され、給湯及び発電に伴う動作がコントローラ14によって制御される。
【0045】
また、I/O24には、大規模記憶装置30が接続されており、コントローラ14で実行される発電及び給湯に関する処理プログラムが記憶される共に、発電に基づく履歴情報(例えば、本実施の形態では、通信インタバルの調整情報等)が記憶されるようになっている。
【0046】
さらに、I/O24には、リモコン32が接続されている。リモコン32は、コージェネレーション装置10が設置される対象の家屋12の内部に設置され、使用者がコージェネレーション装置10(及び熱源機16)に関して指令を入力する機能やコージェネレーション装置10の状態を表示する機能等を有する。
【0047】
(分散型電源の構成)
図1に示される如く、本実施の形態に係る分散型電源では、電源線38によって電力が供給される商用電源34とコージェネレーション装置10の発電電力が、家屋12での電源とされている。
【0048】
分電盤40は、上流側から順に、サービスブレーカ42、漏電遮断器46、及び安全ブレーカ48が設置されている。
【0049】
サービスブレーカ42は、契約容量を決定するための遮断器であるが、設置されていない場合もある。
【0050】
漏電遮断器46は、家屋12の内部配線や電気機器の漏電を素早く感知・遮断し、電気事故を未然に防ぐための遮断器である。
【0051】
安全ブレーカ48は、分電盤40から家屋12の各使用場所へ送電するための分岐回路のそれぞれに取り付けられ、電気機器の故障等に伴うショートや一定以上の電力使用を検知した場合に自動的に回路を保護する遮断器である。
【0052】
ここで、コージェネレーション装置10によって発電した発電電力は、分電盤40に設けられた専用の安全ブレーカ48Aを介して、商用電源34と合流し、家屋12の内部の電気機器の電源として用いることができる。
【0053】
なお、図示は省略したが、コージェネレーション装置10には、商用電源34の停電時専用の電源線が設けられ、停電により商用電源34から電力が供給されない状況において、コージェネレーション装置10の発電電力を、家屋12の一部に取り付けられた停電時専用コンセントを介して、供給することができるようになっている。
【0054】
ここで、コージェネレーション装置10のコントローラ14では、時々刻々と変動する家屋12における電力使用量に応じて、発電電力を追従制御するため、電源線に流れる電流等の電力情報を取得し、取得した電力情報に基づいて、負荷電力に応じて、発電電力量を制御するようにしている。この負荷電力に応じた発電電力の制御を、負荷追従制御という。
【0055】
(無線方式による電力情報取得構成)
図1に示される如く、商用電源34は、スマートメータ36に接続されている。スマートメータ36は商用電源34の電流、電力、電力量をはじめとする電力情報等を計測し、計測した情報を、Aルート、Bルート、Cルートの通信経路によって、特定の通信先へ送信することが可能である。
【0056】
すなわち、Aルートは、スマートメータ36と電力会社とを結ぶ通信経路であり、Bルートは、スマートメータ36と家屋12に設置された機器(例えば、HEMSが構築されている場合は、そのコントローラ等)を結ぶ通信経路であり、Cルートは、Aルートを介して電力会社が取得したデータを第三者(小売電気事業者等)へ提供するための通信経路である。
【0057】
スマートメータ36から出力される電源線38は、家屋12に設置された分電盤40へ配線されている。
【0058】
無線方式では、Bルートの通信経路を介してスマートメータ36から電力情報を取得するインタバルとして、30秒に1回を基準としている。当該インタバルであれば、無線通信の各種基準に抵触することなく、時々刻々と変動する家屋12における使用電力におおむね追従し、負荷推移に近似する制御が可能である。
【0059】
ここで、前述した負荷追従制御は、発電による出力(発電出力)と、発電に使用される都市ガス(以下、単にガスという)の使用量との関係が、正比例(発電出力が大きければ、ガス使用量が増加する関係)であることを前提として、一次エネルギーの抑制に寄与するものである。
【0060】
ところが、発電出力とガス使用量との関係が、必ずしも線形な比例関係を維持するとは限らない。
【0061】
図4(A)と図4(B)とは、同じ仕様(例えば、定格400W)異なるコージェネレーション装置10の発電出力-ガス使用量特性図である。
【0062】
図4(A)及び図4(B)に示す、それぞれの*1部分では、傾きが異なっている。100W域の傾きの方が200W域の傾きよりも立っていることがわかる。これは、100W域では、追従して発電を増加するとき、200W域よりも、多くのガスを使用することを意味する。この100W域の負荷追従のガスの一次エネルギーが、商用電源34から購入した電力(買電)の一次エネルギーよりも大きい場合がある。これは、異なる仕様(図4(A)と図4(B)との間の*2部分参照)でも起こり得る。
【0063】
また、図4(A)と図4(B)との間の比較において、*3部分においては、発電出力が増加するガス使用量が増加する場合(図4(A))と、減少する場合(図4(B))とがある。
【0064】
すなわち、一次エネルギーの観点から考えると、現在の電力負荷、及び現在の電力負荷から増減する電力負荷の状況によっては、負荷追従しない方が一次エネルギーの使用量を軽減できる場合がある。
【0065】
そこで、本実施の形態では、現在の発電電力と、負荷の消費に必要な負荷電力(必要な電力負荷)との比較、及び演算によって求められる現在の一次エネルギー、追従時の一部エネルギー、買電時の一次エネルギーを勘案して、現在の発電出力を維持して商用電源34から買電した方がよいか、発電出力が電力負荷と一致するように、発電電力を負荷追従させた方がよいかを判断し、制御対象デバイスを制御(発電制御)するようにした。
【0066】
図3は、コージェネレーション装置10のコントローラ14における、発電制御のための機能ブロック図である。この機能ブロック図の各ブロックは、機能別に分類したものであり、本実施の形態では、ROM22に記憶された通信インタバル調整プログラムに基づいて、CPU18が当該通信インタバル調整プログラムに基づいて動作する、ソフトウェアによる制御として実行される。なお、一部又は全部の機能ブロックに示す動作プログラムを、ASIC等のICチップを組み込んで動作させるようにしてもよい。
【0067】
図3に示される如く、無線通信部50は、スマートメータ36のBルートの通信経路を介して電力情報を取得するための通信プロトコルを確立する。無線通信部50は、所定の通信インタバル(本実施の形態では、デフォルトとして、30秒に1回の通信インタバル)で通信プロトコルを確立する。
【0068】
無線通信部50は、電力情報取得部52に接続されている。無線通信部50において、通信プロトコルが確立すると(成功すると)、電力情報取得部52は、Bルートの通信経路によって、スマートメータ36から現在の電力情報を取得する。
【0069】
電力情報取得部52は、必要電力負荷演算部54に接続されており、取得した電力情報に基づいて、必要電力負荷Prを演算する。必要電力負荷演算部54の演算結果は、状況比較部56に送出される。
【0070】
状況比較部56は、前記無線通信部50での電力情報の取得毎に、現在発電電力取得部58から現在の発電電力Pgが読み出される。
【0071】
状況比較部56では、第1の比較として、現在発電電力Pgと、必要電力負荷Prとが比較されるようになっている。この第1の比較は、必要とする電力負荷Prが、現在の発電電力Pgに対して不足なのか過剰なのかを判定するものである。
【0072】
一方、必要電力負荷演算部54は、負荷追従時ガス使用量取得部60及び買電エネルギー演算部62に接続されており、演算結果(必要電力負荷Prが)が、負荷追従時ガス使用量取得部60及び買電エネルギー演算部62に送出される。
【0073】
(追従一次エネルギーAの特定)
追従一次エネルギーAは、負荷追従したときのガス使用量の一次エネルギーである。
【0074】
負荷追従時ガス使用量取得部60では、発電出力-ガス使用量テーブルメモリ64に接続されており、コージェネレーション装置10固有の特性である発電出力-ガス使用量特性(一例として、図4(A)又は図4(B))を読み出す。
負荷追従時ガス使用量取得部60では、読み出した特性図に基づき、必要電力負荷Prにおけるガス使用量(負荷追従時ガス使用量)を取得して、追従一次エネルギー演算部66へ送出する。
【0075】
追従一次エネルギー演算部66では、ガス熱量との積算により、追従一次エネルギーAを演算し、状況比較部56へ送出する。
【0076】
(現在一次エネルギーBの特定)
現在一次エネルギーBは、現在の発電出力におけるガス使用量の一次エネルギーである。
【0077】
ここで、現在発電電力取得部58は、現在ガス使用量取得部68に接続されており、現在の発電電力Pgを現在ガス使用量取得部68に送出する。
【0078】
現在ガス使用量取得部68では、発電出力-ガス使用量テーブルメモリ64に接続されており、コージェネレーション装置10固有の特性である発電出力-ガス使用量特性(一例として、図4(A)又は図4(B))を読み出す。
【0079】
現在ガス使用量取得部68では、読み出した特性図に基づき、現在発電電力Pgにおけるガス使用量(現在ガス使用量)を取得して、現在一次エネルギー演算部70へ送出する。
【0080】
現在一次エネルギー演算部70では、ガス熱量との積算により、現在一次エネルギーBを演算し、状況比較部56へ送出する。
【0081】
(買電一次エネルギーCの特定)
買電一次エネルギーCは、電力負荷から現在の発電出力を現在した値の一次エネルギーである。
【0082】
買電エネルギー演算部62は、買電一次エネルギー換算係数メモリ72に接続されており、必要電力を商用電源34から購入した場合の電力を、買電一次エネルギー換算係数を用いて換算し買電一次エネルギーCを演算し、状況比較部56へ送出する。
【0083】
状況比較部56では、前述した第1の比較の結果に基づいて、追従一次エネルギーA、現在一次エネルギーB、及び買電一次エネルギーCを用いて、必要電力負荷に対して、追従して発電量を制御した方がよいか、現状の発電量を維持して商用電源34から電力を購入した方がよいかを選択する。
【0084】
(選択のためのファクターの比較)
前記第1の比較において、現在発電電力Pg≧必要電力負荷Prと判定された場合は、現在の発電電力では不足のため、電力を増加する必要がある。
【0085】
この場合は、第2の比較として、増加する電力を、負荷追従で対応するか、商用電源34から購入した電力で対応するかを判断する必要があり、追従一次エネルギーAと、現在一次エネルギーB及び買電一次エネルギーCの加算値との比較が実行される(A:B+C)。
【0086】
一方、前記第1の比較において、必要電力負荷Pr<現在発電電力Pgと判定された場合は、現在の発電電力は、電力過剰のため、電力を減少する必要がある。
【0087】
この場合は、商用電源34から電力を購入する必要がないので、第3の比較として、追従一次エネルギーAと、現在一次エネルギーBとの比較が実行される(A:B)。
【0088】
状況比較部56では、第1の比較、第2の比較又は第3の比較の結果を発電調整部74へ送出する。発電調整部74では、比較結果に基づいて、現在の発電出力を維持するか、発電出力を電力負荷と一致するように変更(追従)するかを判断し、判断結果(制御指示)をシステム稼働制御部76へ送出する。
【0089】
システム稼働制御部76では、取得した制御指示に基づいて、発電出力等(発電維持、増加等)を計算し、コージェネレーション装置10の必要な制御対象デバイスへ制御指示信号を送出する。これにより、コージェネレーション装置10は、一次エネルギーを考慮して、追従の要否を判定しつつ、家屋12における使用電力におおむね追従した発電出力で運転される。
【0090】
以下に本実施の形態の作用を図5のフローチャートに従い説明する。
【0091】
ステップ100では、無線通信部50の通信インタバル(通信成功時)に合わせて、電力情報を取得し、ステップ102へ移行する。
【0092】
ステップ102では、第1の比較、すなわち、必要電力負荷Prと現在発電電力Pgとを比較する。
【0093】
このステップ102で、必要電力負荷Prが現在発電電力Pg以上(Pr≧Pg)と判定された場合は、現在の発電電力Pgが、必要とする電力負荷Pに対して不足していると判断され、ステップ104へ移行する。
【0094】
ステップ104では、増加する電力を、負荷追従で対応するか、商用電源34から購入した電力で対応するかを判断する。この判断のため、第2の比較を実行する。
【0095】
すなわち、ステップ104では、追従一次エネルギーAと、現在一次エネルギーB及び買電一次エネルギーCの加算値との比較が実行される(A:B+C)。
【0096】
このステップ104で、肯定判定(A≧B+C)された場合は、負荷追従すると、かえって一次エネルギーが増加すると判断し、ステップ106へ移行して、現在の発電出力を維持して、ステップ100へ戻る。この結果、商用電源34から電力を購入(買電)することになる。
【0097】
また、ステップ104で、否定判定(A<B+C)された場合は、負荷追従すると、買電よりも一次エネルギーが減少すると判断し、ステップ108へ移行して、発電出力を電力負荷と一致するように変更(追従)させ、ステップ100へ戻る。
【0098】
一方、ステップ102で、必要電力負荷Prが現在発電電力Pg未満(Pr<Pg)と判定された場合は、現在の発電電力Pgが、必要とする電力負荷Pに対して過剰であると判断され、ステップ110へ移行する。
【0099】
ステップ110では、減少させる場合に負荷追従で対応するか、商用電源34から購入した電力を減らすかを判断する。この判断のため、第3の比較を実行する。
【0100】
すなわち、ステップ110では、追従一次エネルギーAと、現在一次エネルギーBの比較が実行される(A:B)。
【0101】
通常は、発電量を減らせばガス使用量が減るのが一般的(正の傾き)であるが、例えば、図4(B)の*3に示す。*3部分では、負の傾きであるため、発電量を減らすとガス使用量が増えることになる。このように、現在の発電出力域によっては、正の傾きとならない場合があるため、実績値で比較するようにした。
【0102】
このステップ110で、肯定判定(A≧B)された場合は、負荷追従すると、かえって一次エネルギーが増加すると判断し、ステップ106へ移行して、現在の発電出力を維持して、ステップ100へ戻る。この結果、余剰電力は、コージェネレーション装置10の内部(例えば、ヒータ)で消費されることになる。
【0103】
また、ステップ110で、否定判定(A<B)された場合は、負荷追従すると、一次エネルギーが減少すると判断し、ステップ108へ移行して、発電出力を電力負荷と一致するように変更(追従)させ、ステップ100へ戻る。
【0104】
以上説明したように、本実施の形態では、発電出力の全域にわたって、ガス使用量との関係が、定格(例えば、図4(A)及び(B)では400W)近傍のような安定した特性(正の傾きの正比例関係)にならず、負荷追従した場合に、かえって一次エネルギーが増加することを回避するべく、通信インタバル毎の実績値(追従一次エネルギーA、現在一次エネルギーB、及び買電一次エネルギーC)で、負荷追従の要否を判断するようにした。このため、発電出力-ガス使用量の特性に適合した発電制御を、定格近傍のみならず、全ての発電域で実現することができる。
【0105】
(変形例1「逆潮流抑止」)
現在の発電出力を維持した場合、その余剰を燃料電池内部で消費する(ヒータ等)。それでも、逆潮流が発生する場合は、逆潮流抑止を最優先として、今回の発電出力維持は中止する。
【0106】
以下に変形例1の作用を図6のフローチャートに従い説明する。なお、本実施の形態(図5参照)と同一処理のステップについては、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0107】
図6に示される如く、ステップ110において、追従一次エネルギーAと、現在一次エネルギーBの比較が実行され(A:B)、肯定判定(A≧B)された場合は、負荷追従すると、かえって一次エネルギーが増加すると判断し、ステップ112へ移行する。
【0108】
ステップ112では、余剰電力を、コージェネレーション装置10の内部(例えば、ヒータ)で消費しても、逆潮流されるか否かを判断する。
【0109】
逆潮流は、予めその是非が、例えば、契約等で締結されている場合が多い。そこで、ステップ112へ移行して、肯定判定された場合は、現在の発電電力の維持で逆潮流されることになるため、A≧Bであっても、ステップ108へ移行して、発電出力を電力負荷と一致するように変更(追従)させ、ステップ100へ戻る。
【0110】
また、ステップ112で、否定判定された場合は、ステップ106へ移行して、現在の発電出力を維持して、ステップ100へ戻る。この結果、余剰電力は、コージェネレーション装置10の内部(例えば、ヒータ)で消費されることになる。
【0111】
(変形例2「無線方式の変形例」)
本実施の形態に係るコージェネレーション装置10のコントローラ14では、家屋12に設置されたスマートメータ36から直接Bルートを介して、電力情報を取得するようにした。
【0112】
ここで、家屋12には、HEMSが構築されている場合がある。HEMSは、家屋12で使用する電気及びガスを、リアルタイムで管理して節約すると共に、二酸化炭素削減等、温暖化対策にも役立つものである。HEMSに、家電製品等を接続し、電気やガスの使用状況をモニタで管理することで、可視化(モニタ表示)を実現し、かつ家電製品を自動制御する。
【0113】
ところで、HEMSでは、管理のもとになるデータを、スマートメータから取得する。言い換えれば、HEMSは、スマートメータと同等の電力情報を取得している。
【0114】
そこで、変形例では、コージェネレーション装置10のコントローラ14と、HEMSとの間で、Wi-SUN HAN無線通信、Wi-SUN Enhanced HAN無線通信、特定小電力無線通信、LPWA(Low Power Wide Area)等の通信手段を用いて、通信プロトコルを確立し、HEMSから電力情報を取得するようにしてもよい。
【0115】
(変形例3「有線方式の変形例」)
本実施の形態では、電力情報を無線方式で取得するようにしたが、有線方式で取得するようにしてもよい。
【0116】
図7に従い、変形例3に係るコージェネレーション装置10Aについて説明する。なお、本実施の形態のコージェネレーション装置10(図1参照)と同一構成部分については、同一の符号を付して、その構成の説明を省略する。
【0117】
図7に示される如く、コージェネレーション装置10Aは、家屋12の内部の分電盤40(電源線38)には、クランプ型電流センサ78(以下、CTクランプ50という)が取り付けられている。
【0118】
CTクランプ78は、電源線80を流れる電流、電力、電力量をはじめとする電力情報を検出する。検出した電力情報は、信号線52を介して、コージェネレーション装置10のコントローラ14へ送出される。
【0119】
このとき、CTクランプ78は家屋12内に設けられ、コージェネレーション装置10は屋外に設置されるため、必然的に信号線80は家屋12の壁面を貫通させる必要があり、壁面貫通工事によって施工された貫通部12Aを貫通し、配線されることになる。
【0120】
上記のような変形例に係る有線方式の電力情報取得であっても、本発明の発電制御(負荷追従による発電の要否判定に基づく発電制御)は、同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0121】
10 コージェネレーション装置
12 家屋
12A 貫通部
14 コントローラ
15 電源線
16 熱源機
18 CPU
20 RAM
22 ROM
24 I/O
26 バス
27 給湯関連制御部
28 マイクロコンピュータ
29 発電関連制御部
30 大規模記憶装置
32 リモコン
34 商用電源
36 スマートメータ
38 電源線
40 分電盤
42 サービスブレーカ
46 漏電遮断器
48 安全ブレーカ
48A 安全ブレーカ
50 無線通信部
52 電力情報取得部
54 必要電力負荷演算部
56 状況比較部(判定部)
58 現在発電電力取得部
60 負荷追従時ガス使用量取得部
62 買電エネルギー演算部
64 発電出力-ガス使用量テーブルメモリ
66 追従一次エネルギー演算部
68 現在ガス使用量取得部
70 現在一次エネルギー演算部
72 買電一次エネルギー換算係数メモリ
74 発電調整部(基本制御部)
76 システム稼働制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7