(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149042
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】防振制振部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/00 20060101AFI20231005BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20231005BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20231005BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20231005BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20231005BHJP
C08G 18/44 20060101ALI20231005BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20231005BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20231005BHJP
F16F 1/36 20060101ALI20231005BHJP
F16F 1/37 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B29C45/00
B29C44/00 D
B29C44/36
C08G18/76 078
C08G18/42
C08G18/42 069
C08G18/44
F16F15/08 D
F16F7/00 F
F16F1/36 B
F16F1/36 C
F16F1/37 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057377
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】永井 由夏
(72)【発明者】
【氏名】大脇 潤己
(72)【発明者】
【氏名】牧村 敏史
(72)【発明者】
【氏名】山本 峻路
(72)【発明者】
【氏名】水谷 幸治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳一朗
(72)【発明者】
【氏名】酒井 潔
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
3J066
4F206
4F214
4J034
【Fターム(参考)】
3J048AD16
3J048BA24
3J048EA16
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4J034QA05
4J034QB01
4J034QC01
4J034QD01
4J034RA15
(57)【要約】
【課題】高温耐久性等の機械物性に優れるとともに、再生産性に優れ、さらに製造コストの低下も図れる、防振制振部材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリウレタンからなる防振制振部材であって、前記ポリウレタンのポリオール成分が、短鎖ポリオールを除き、ポリエステル系ポリオールからなり、前記ポリウレタンのイソシアネート成分が1,5-ナフタレンジイソシアネートを主成分とするものであり、かつNCOインデックスが0.9~1.04の熱可塑性ウレタン組成物の発泡体からなるものとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンからなる防振制振部材であって、前記ポリウレタンのポリオール成分が、短鎖ポリオールを除き、ポリエステル系ポリオールからなり、前記ポリウレタンのイソシアネート成分が1,5-ナフタレンジイソシアネートを主成分とするものであり、かつNCOインデックスが0.9~1.04の熱可塑性ウレタン組成物の発泡体からなる、防振制振部材。
【請求項2】
前記熱可塑性ウレタン組成物におけるイソシアネート成分の割合が10~30質量%である、請求項1記載の防振制振部材。
【請求項3】
前記ポリウレタンの重量平均分子量が50000~500000である、請求項1または2記載の防振制振部材。
【請求項4】
前記ポリエステル系ポリオールが、ポリエチレンアジペート、ポリカプロラクタム、およびポリカーボネートジオールからなる群から選ばれた少なくとも一つである、請求項1~3のいずれか一項に記載の防振制振部材。
【請求項5】
前記発泡体の密度が0.3~0.8g/cm3である、請求項1~4のいずれか一項に記載の防振制振部材。
【請求項6】
前記発泡体中の発泡セルの数平均径が50~500μmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の防振制振部材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の防振制振部材の製造方法であって、
ポリエステル系ポリオールと1,5-ナフタレンジイソシアネートを主成分とするイソシアネート成分とからウレタンプレポリマーを調製する工程と、
前記ウレタンプレポリマーと残りのポリオール成分とを混合してNCOインデックスが0.9~1.04の熱可塑性ウレタン組成物を調製する工程と、
前記熱可塑性ウレタン組成物からなるポリウレタン発泡体を成形する工程と、
前記ポリウレタン発泡体を成形型から脱型する工程と、
を備えた、防振制振部材の製造方法。
【請求項8】
前記熱可塑性ウレタン組成物からなるポリウレタン発泡体を成形する工程を、
前記熱可塑性ウレタン組成物を一旦ペレット化し、射出成形機により、そのペレットを溶融し発泡状態で成形型に注型し、ポリウレタン発泡体を成形する工程とする、請求項7記載の防振制振部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振部材や制振部材として用いられる防振制振部材およびその製造方法に関するものであり、詳しくは、発泡ポリウレタンからなる防振制振部材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発泡ポリウレタンからなる防振制振部材としては、例えば、車両用のバンパスプリングが挙げられる。
図1に示すように、バンパスプリング2は、車両のサスペンションを構成するショックアブソーバ30のピストンロッド31に対して外挿される略筒状(蛇腹形状)の構造物であり、前記ショックアブソーバ30のシリンダ(アブソーバプレート)32と、車体側の取付部(アッパーサポート33)との間に配置して使用される(特許文献1参照)。
【0003】
前記バンパスプリングには、車両走行時や高入力時の振動吸収と乗り心地を両立するため、高入力時には高エネルギー吸収能が求められ、低入力時は低エネルギー吸収能が求められる。
そして、低入力時における効率的な低エネルギー吸収能を実現するために、一般的には、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等をイソシアネート成分とする、発泡ポリウレタンからなるバンパスプリングが用いられている。
また、前記バンパスプリングのような、高温耐久性(耐熱へたり性)、柔軟性等の機械物性が求められる箇所で使用される部材については、一般的に、熱架橋型発泡ポリウレタンが用いられている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3758343号公報
【特許文献2】特開2004-293697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、熱架橋型発泡ポリウレタンで防振制振部材を製造するには、その材料を金型に注型して加熱する設備が必要となるため、設備投資が大きくなるといった問題がある。
また、熱架橋型発泡ポリウレタンは、注型時の材料粘度を下げることが難しいため、複雑な形状の防振制振部材を製造するのが困難であるといった問題もある。
【0006】
さらに、地球環境に負荷を与えない材料が要求される昨今の状況に鑑み、リサイクル性(再生産性)が高く、しかも、高い機械物性を成立させることができる防振制振部材の材料開発のニーズが高まっている。
しかしながら、熱架橋型発泡ポリウレタンは、熱により溶融しないため再生産性に乏しく、環境負荷の点で問題となっている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、高温耐久性等の機械物性に優れるとともに、再生産性に優れ、さらに製造コストの低下も図れる、防振制振部材およびその製造方法の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、本発明者らは、熱可塑性ポリウレタンの発泡体からなる防振制振部材を製造することを検討した。従来の熱硬化性ポリウレタンを使用した防振制振部材は、熱により軟化はするものの、イソシアネートが過剰に含まれているものが多く、実際には多少架橋が進行していることから、古い防振制振部材を熱溶融して元通りの機械物性を示す防振制振部材を再生産するといったことは難しい。また、バンパスプリングのような防振制振部材は、高荷重による高変形によって発熱するため、前記のような防振制振部材の材料に熱可塑性ウレタンの使用はできないと従来考えられてきた。
しかしながら、このような技術常識のもと、本発明者らはさらに研究を重ねた結果、ポリオール成分をポリエステル系ポリオールとし、イソシアネート成分を1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)とし、かつNCOインデックス[イソシアネート中のNCO基と、ポリオール中の水酸基との当量比(NCO基/OH基)]が0.9~1.04の範囲となるよう調製した非架橋型の熱可塑性ウレタン組成物の発泡体からなる防振制振部材を採用することを検討した。
このようにしたところ、ポリエステル系ポリオールの結晶性と、NDIの強靭さにより、その発泡体は、たとえ前記のようにNCOインデックスを低く(0.9~1.04の範囲に)設定しても、高温耐久性等の機械物性に優れるようになり、また、NCOインデックスが低い非架橋型の熱可塑性ウレタン組成物からなる防振制振部材とすることにより、防振制振部材のリサイクル性(再生産性)に優れるようになることを見いだした。
【0009】
しかるに、本発明は、以下の[1]~[8]を、その要旨とする。
[1] ポリウレタンからなる防振制振部材であって、前記ポリウレタンのポリオール成分が、短鎖ポリオールを除き、ポリエステル系ポリオールからなり、前記ポリウレタンのイソシアネート成分が1,5-ナフタレンジイソシアネートを主成分とするものであり、かつNCOインデックスが0.9~1.04の熱可塑性ウレタン組成物の発泡体からなる、防振制振部材。
[2] 前記熱可塑性ウレタン組成物におけるイソシアネート成分の割合が10~30質量%である、[1]に記載の防振制振部材。
[3] 前記ポリウレタンの重量平均分子量が50000~500000である、[1]または[2]に記載の防振制振部材。
[4] 前記ポリエステル系ポリオールが、ポリエチレンアジペート、ポリカプロラクタム、およびポリカーボネートジオールからなる群から選ばれた少なくとも一つである、[1]~[3]のいずれかに記載の防振制振部材。
[5] 前記発泡体の密度が0.3~0.8g/cm3である、[1]~[4]のいずれかに記載の防振制振部材。
[6] 前記発泡体中の発泡セルの数平均径が50~500μmである、[1]~[5]のいずれかに記載の防振制振部材。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の防振制振部材の製造方法であって、
ポリエステル系ポリオールと1,5-ナフタレンジイソシアネートを主成分とするイソシアネート成分とからウレタンプレポリマーを調製する工程と、
前記ウレタンプレポリマーと残りのポリオール成分とを混合してNCOインデックスが0.9~1.04の熱可塑性ウレタン組成物を調製する工程と、
前記熱可塑性ウレタン組成物からなるポリウレタン発泡体を成形する工程と、
前記ポリウレタン発泡体を成形型から脱型する工程と、
を備えた、防振制振部材の製造方法。
[8] 前記熱可塑性ウレタン組成物からなるポリウレタン発泡体を成形する工程を、
前記熱可塑性ウレタン組成物を一旦ペレット化し、射出成形機により、そのペレットを溶融し発泡状態で成形型に注型し、ポリウレタン発泡体を成形する工程とする、[7]に記載の防振制振部材の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
以上のことから、本発明の防振制振部材は、高温耐久性等の機械物性に優れるとともに、再生産性に優れ、さらに製造コストの低下も図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ウレタン製バンパスプリングの実施態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
なお、本発明において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意とともに、「好ましくはXより大きい」または「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)または「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」または「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【0013】
本発明の防振制振部材(以下、「本防振制振部材」と示す。)は、ポリウレタンからなり、前記ポリウレタンのポリオール成分が、短鎖ポリオールを除き、ポリエステル系ポリオールからなり、前記ポリウレタンのイソシアネート成分が1,5-ナフタレンジイソシアネートを主成分とするものであり、かつNCOインデックスが0.9~1.04の熱可塑性ウレタン組成物の発泡体からなるものである。
前記「主成分」とは、イソシアネート成分の70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは95~100質量%が、1,5-ナフタレンジイソシアネートであることを示す。
また、前記の「前記ポリウレタンのポリオール成分が、短鎖ポリオールを除き、ポリエステル系ポリオールからなり、」とは、前記ポリウレタンのポリオール成分として短鎖ポリオールを使用しないことを意味する趣旨ではなく、前記ポリウレタンに使用のポリオール成分として、短鎖ポリオール以外では、ポリエステル系ポリオールのみが使用されることを意味する趣旨である。ここで、短鎖ポリオールとは、その数平均分子量(Mn)が500以下のポリオールを意味する。
【0014】
以下に、前記熱可塑性ウレタン組成物の構成成分について詳しく説明する。
【0015】
[ポリオール成分]
前記熱可塑性ウレタン組成物において、そのポリオール成分としては、短鎖ポリオールを除き、ポリエステル系ポリオールのみが用いられる。
前記ポリエステル系ポリオールとしては、ポリエチレンアジペート、ポリプロパンジオールアジペート、ポリブタンジオールアジペート、ポリペンタンジオールアジペート、ポリヘキサンジオールアジペート、ポリへプタンジオールアジペート、ポリオクタンジオールアジペート、ポリノナンジオールアジペート、ポリデカンジオールアジペート、ポリドデカンジオールアジペート、ポリカプロラクタム、ポリラウリルラクタム、ポリラウロラクタム、ポリカーボネートジオール等が挙げられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、耐熱性に優れることから、ポリエチレンアジペート、ポリカプロラクタム、ポリカーボネートジオールが好ましい。
【0016】
前記ポリエステル系ポリオールは、その数平均分子量(Mn)が、1000~4000のものが好ましく、1250~3000のものがより好ましく、1500~2500のものがさらに好ましい。
すなわち、このような分子量のポリエステル系ポリオールを用いることにより、狙いの分子量かつ分子構造の熱可塑性ウレタンを作製することができるからである。なお、前記数平均分子量(Mn)は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)法等により求めることができる。
前記熱可塑性ウレタン組成物におけるポリエステル系ポリオールの割合は、50~90質量%が好ましく、55~88質量%がより好ましく、60~85質量%がさらに好ましい。
【0017】
また、前記熱可塑性ウレタン組成物において、短鎖ポリオールは、必要に応じて使用することができる。このような短鎖ポリオールとしては、例えば、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等が挙げられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、流動性に優れることから、1,4-ブタンジオールが好ましい。
前記熱可塑性ウレタン組成物における短鎖ポリオールの割合は0.1~20質量%が好ましく0.3~15質量%がより好ましく、0.5~12質量%がさらに好ましい。
【0018】
[イソシアネート成分]
前記熱可塑性ウレタン組成物において、そのイソシアネート成分としては、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)を主成分とするものが用いられ、好ましくはNDIのみが用いられる。
NDIとともに、他のイソシアネート成分を併用する場合、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;1,2-エチレンジイソシアネート、1,3-プロピレンジイソシアネート、1,4-ブタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加した4,4’-フェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートなどが、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0019】
前記熱可塑性ウレタン組成物におけるイソシアネート成分の割合は、10~30質量%が好ましく、12~28質量%がより好ましく、14~22質量%がさらに好ましい。
そして、前記熱可塑性ウレタン組成物におけるNCOインデックス[イソシアネート中のNCO基と、ポリオール中の水酸基との当量比(NCO基/OH基)]は、0.9~1.04の範囲であり、好ましくは0.9~1.0の範囲、より好ましくは0.95~1.0の範囲である。
すなわち、このように規定することにより、良好な発泡状態が実現可能となり、高温耐久性と再生産性の両立が良好になされるようになる。
【0020】
[その他の成分]
前記熱可塑性ウレタン組成物には、ポリオール成分、イソシアネート成分の他、必要に応じ、発泡剤、鎖延長剤、触媒、整泡剤、加水分解防止剤、難燃剤、減粘剤、安定剤、充填剤、着色剤等が配合される。
前記発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム、アゾジカルボンアミドのようなアゾ化合物、P-トルエンスルホニルアジドのようなアジド化合物、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミンのようなニトロソ化合物等が挙げられる。
なお、本発明において、前記熱可塑性ウレタン組成物は非架橋型であることから、架橋剤の類(架橋に寄与するものを含む)は不含とする。
【0021】
そして、好ましくは、前記ポリエステル系ポリオールの一部(ないし全部)と1,5-ナフタレンジイソシアネートを主成分とするイソシアネート成分とからウレタンプレポリマーを調製した後、そのウレタンプレポリマーと残りのポリオール成分(前記ポリエステル系ポリオールの残りや短鎖ポリオール)とを混合して、NCOインデックスが0.9~1.04の熱可塑性ウレタン組成物を調製することにより、良好な発泡状態が実現可能となり、高温耐久性と再生産性の両立が良好になされる非架橋型の熱可塑性ウレタン組成物とすることができる。
前記の調製作業は、80~120℃の雰囲気温度下で行うことが好ましい。また、その他の成分を配合する場合は、ウレタンプレポリマーと残りのポリオール成分とを混合する段階で加えることが好ましい。
なお、ウレタン組成物の調製法としては、長鎖ポリオール、鎖伸長剤である短鎖グリコールおよびジイソシアネートを同時に重合させるワンショット法と、長鎖ポリオールとジイソシアネートとを予め反応させ、プレポリマーを合成後、短鎖グリコールを添加し、重合させるプレポリマー法のどちらを用いてもよい。製造方法としては、バッチ法、バンドキャスティング法、反応押出法のいずれを用いても良い。
【0022】
前記熱可塑性ウレタン組成物におけるポリウレタンの重量平均分子量(Mw)は、50000~500000のものが好ましく、75000~400000のものがより好ましく、100000~300000のものがさらに好ましい。このような重量平均分子量であると、良好な発泡状態が実現可能となり、高温耐久性と再生産性の両立が良好になされる非架橋型の熱可塑性ウレタン組成物とすることができる。なお、ポリウレタンの重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)法等により求めることができる。
ここで、GPC法における計測機器としては、例えば、高速GPC装置(東ソー社製、HLC-8320GPC)が使用される。そして、標準試料による既知の重量平均分子量と溶出時間との関係をあらかじめ求め、溶出時間から重量平均分子量が求まる検量線を作成する。つぎに、以下の装置および操作条件でポリウレタンの溶出時間を計測し、前記検量線を参照して、重量平均分子量(ポリスチレン換算)を算出する。
<装置および操作条件>
分離カラム:東ソー社製、TSKgelSuperAWM-H(2本を直列に接続して使用)
検出器:示差屈折計
カラム温度:40℃
移動相:関東化学社製、N,N-ジメチルホルムアミド(10mmоl/L LiBr)
標準試料:標準ポリスチレンキット(東ソー社製、PStQuick B)
試料濃度:0.1質量%
試料注入量:30μL
流速:0.5mL/min
【0023】
前記のようにして調製した熱可塑性ウレタン組成物は、必要に応じ、一旦ペレット化した後、射出成形機により、そのペレットを溶融し発泡状態で成形型(金型等)に射出し注型する。
なお、ペレット化せずに、前記熱可塑性ウレタン組成物を溶融発泡状態で成形型に注型するようにしてもよい。
【0024】
前記のように熱可塑性ウレタン組成物を溶融発泡状態にするには、例えば、前記熱可塑性ウレタン組成物中に発泡剤を予め添加しておく他、前記熱可塑性ウレタン組成物の溶融時に発泡剤を加えたり、前記ペレットに発泡剤をドライブレンドして溶融するといった態様や、前記熱可塑性ウレタン組成物の溶融時に炭酸ガスや窒素ガスを吹き込むことにより物理的に発泡させるといった態様により、実現することができる。
前記熱可塑性ウレタン組成物の溶融は、射出成形機等の成形機により、150~290℃で行われる。
【0025】
前記のようにして、熱可塑性ウレタン組成物を溶融発泡状態で成形型に注型した後、前記熱可塑性ウレタン組成物からなるポリウレタン発泡体を成形することができる。
【0026】
そして、前記ポリウレタン発泡体を成形型から脱型することにより、目的とする本防振制振部材を得ることができる。
【0027】
このようにして得られた本防振制振部材において、その密度は、0.3~0.8g/cm3とすることが好ましく、0.4~0.8g/cm3とすることがより好ましく、0.5~0.6g/cm3とすることがさらに好ましい。このような密度とすることにより、高温耐久性(耐熱へたり性)、柔軟性等の機械物性に優れるようになる。
なお、前記密度は、例えば、東洋精機社製の自動比重計DSG-1により測定することができる。
【0028】
また、本防振制振部材における発泡セルの数平均径は、50~500μmであることが好ましく、100~300μmであることがより好ましい。このような発泡セルの数平均径とすることにより、高温耐久性(耐熱へたり性)、柔軟性等の機械物性に優れるようになる。
なお、前記発泡セルの数平均径は、本防振制振部材から、2mm角の測定サンプルを作成し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、1mm角の視野で発泡セル径を50個測長し、その平均を求めたものである。
【0029】
本防振制振部材は、再生産性が高いため、例えば、古い防振制振部材を熱溶融して元通りの機械物性を示す防振制振部材を再生産するといったことや、他の材料にリサイクルするといったことが可能である。
【0030】
そして、本防振制振部材は、高温耐久性(耐熱へたり性)が求められる用途に適しており、例えば、ショックアブソーバのピストンロッドに装着されるバンパスプリングの他、自動車の車両等のエンジンマウント、ミッションマウント、ボディマウント、キャブマウント、メンバーマウント、コンロッド、トルクロッド、ストラットバークッション、センタベアリングサポート、トーショナルダンパー、ステアリングラバーカップリング、テンションロッドブッシュ、ブッシュ、バウンドストッパー、FFエンジンロールストッパー、マフラーハンガー等の、各種の防振制振部材として、良好に適用することができる。
【実施例0031】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、その要旨を超えない限り、これら実施例に限定されるものではない。
【0032】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0033】
[PEA]
数平均分子量2000のポリエチレンアジペート(POLYLITE OD-X-2610、DIC社製)
【0034】
[PCL]
数平均分子量2000のポリカプロラクタム(POLYLITE OD-X-640、DIC社製)
【0035】
[NDI]
1,5-ナフタレンジイソシアネート(東京化成工業社製)
【0036】
[短鎖ポリオール]
1,4-ブタンジオール(東京化成工業社製)
【0037】
[整泡剤]
NIAX silicone L-5388(Momentive Performance Materials社製)
【0038】
[触媒]
N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン(東京化成工業社製)
【0039】
[加水分解防止剤]
スタバックゾールI(ラインケミー社製)
【0040】
[実施例1]
ポリオール成分であるPEAを56質量%と、イソシアネート成分であるNDIを14質量%とを、液温130℃で混合し、ウレタンプレポリマーを調製した。つぎに、前記ウレタンプレポリマーと、新たに前記PEAと同じものを26質量%と、短鎖ポリオール2.5質量%と、整泡剤0.03質量%と、触媒0.03質量%と、加水分解防止剤1.44質量%とを、液温100℃で混合し、NCOインデックスが1.00のウレタン組成物を調製した。
前記ウレタン組成物におけるポリウレタンの重量平均分子量(Mw)を、高速GPC装置(東ソー社製のHLC-8320GPC)を用い、先述の条件に従い測定した結果、200000であった。
つぎに、前記ウレタン組成物を、一軸高速粉砕機(PSF-40、タニ工業社製)によってペレット化し、ついで、射出成形機(J110AD-180H、日本製鋼所製)により、そのペレットを200℃で溶融し、ガス注入量0.26gの条件で窒素ガスを加えて発泡状態にして、成形型に射出成形した。そして、前記成形型から脱型することにより、ポリウレタン成形体(サンプル)を得た。
前記サンプルから、2mm角の測定サンプルを作成し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、1mm角の視野で発泡セル径を50個測長し、その平均を求めた結果、発泡セル径(発泡セルの数平均径)は100μmであった。
また、前記測定サンプルに対し、東洋精機社製の自動比重計DSG-1による密度測定を行った結果、その密度は0.5g/cm3であった。
【0041】
[実施例2]
ポリオール成分であるPEAを54質量%と、イソシアネート成分であるNDIを13質量%とを、液温130℃で混合し、ウレタンプレポリマーを調製した。つぎに、前記ウレタンプレポリマーと、新たに前記PEAと同じものを29質量%と、短鎖ポリオール2.5質量%と、整泡剤0.03質量%と、触媒0.03質量%と、加水分解防止剤1.44質量%とを、液温100℃で混合し、NCOインデックスが0.90のウレタン組成物を調製した。
前記ウレタン組成物におけるポリウレタンの重量平均分子量(Mw)を、高速GPC装置(東ソー社製のHLC-8320GPC)を用い、先述の条件に従い測定した結果、180000であった。
つぎに、前記ウレタン組成物を、一軸高速粉砕機(PSF-40、タニ工業社製)によってペレット化し、ついで、射出成形機(J110AD-180H、日本製鋼所社製)により、そのペレットを200℃で溶融し、ガス注入量0.26gの条件で窒素ガスを加えて発泡状態にして、成形型に射出成形した。そして、前記成形型から脱型することにより、ポリウレタン成形体(サンプル)を得た。
前記サンプルから、2mm角の測定サンプルを作成し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、1mm角の視野で発泡セル径を50個測長し、その平均を求めた結果、発泡セル径(発泡セルの数平均径)は110μmであった。
また、前記測定サンプルに対し、東洋精機社製の自動比重計DSG-1による密度測定を行った結果、その密度は0.5g/cm3であった。
【0042】
[実施例3]
ポリオール成分であるPEAを57質量%と、イソシアネート成分であるNDIを15質量%とを、液温130℃で混合し、ウレタンプレポリマーを調製した。つぎに、前記ウレタンプレポリマーと、新たに前記PEAと同じものを24質量%と、短鎖ポリオール2.5質量%と、整泡剤0.03質量%と、触媒0.03質量%と、加水分解防止剤1.44質量%とを、液温100℃で混合し、NCOインデックスが1.04のウレタン組成物を調製した。
前記ウレタン組成物におけるポリウレタンの重量平均分子量(Mw)を、高速GPC装置(東ソー社製のHLC-8320GPC)を用い、先述の条件に従い測定した結果180000であった。
つぎに、前記ウレタン組成物を、一軸高速粉砕機(PSF-40、タニ工業社製)によってペレット化し、ついで、射出成形機(J110AD-180H、日本製鋼所社製)により、そのペレットを200℃で溶融し、ガス注入量0.26gの条件で窒素ガスを加えて発泡状態にして、成形型に射出成形した。そして、前記成形型から脱型することにより、ポリウレタン成形体(サンプル)を得た。
前記サンプルから、2mm角の測定サンプルを作成し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、1mm角の視野で発泡セル径を50個測長し、その平均を求めた結果、発泡セル径(発泡セルの数平均径)は90μmであった。
また、前記測定サンプルに対し、東洋精機社製の自動比重計DSG-1による密度測定を行った結果、その密度は0.5g/cm3であった。
【0043】
[実施例4]
ポリオール成分であるPEAを40質量%と、イソシアネート成分であるNDIを10質量%とを、液温130℃で混合し、ウレタンプレポリマーを調製した。つぎに、前記ウレタンプレポリマーと、新たに前記PEAと同じものを47質量%と、短鎖ポリオール0.5質量%と、整泡剤0.03質量%と、触媒0.03質量%と、加水分解防止剤2.44質量%とを、液温100℃で混合し、NCOインデックスが1.00のウレタン組成物を調製した。
前記ウレタン組成物におけるポリウレタンの重量平均分子量(Mw)を、高速GPC装置(東ソー社製のHLC-8320GPC)を用い、先述の条件に従い測定した結果、300000であった。
つぎに、前記ウレタン組成物を、一軸高速粉砕機(PSF-40、タニ工業社製)によってペレット化し、ついで、射出成形機(J110AD-180H、日本製鋼所社製)により、そのペレットを200℃で溶融し、ガス注入量0.26gの条件で窒素ガスを加えて発泡状態にして、成形型に射出成形した。そして、前記成形型から脱型することにより、ポリウレタン成形体(サンプル)を得た。
前記サンプルから、2mm角の測定サンプルを作成し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、1mm角の視野で発泡セル径を50個測長し、その平均を求めた結果、発泡セル径(発泡セルの数平均径)は100μmであった。
また、前記測定サンプルに対し、東洋精機社製の自動比重計DSG-1による密度測定を行った結果、その密度は0.5g/cm3であった。
【0044】
[実施例5]
ポリオール成分であるPEAを59質量%と、イソシアネート成分であるNDIを30質量%とを、液温130℃で混合し、ウレタンプレポリマーを調製した。つぎに、短鎖ポリオール10.5質量%と、整泡剤0.03質量%と、触媒0.03質量%と、加水分解防止剤0.44質量%とを、液温100℃で混合し、NCOインデックスが1.00のウレタン組成物を調製した。
前記ウレタン組成物におけるポリウレタンの重量平均分子量(Mw)を、高速GPC装置(東ソー社製のHLC-8320GPC)を用い、先述の条件に従い測定した結果、300000であった。
つぎに、前記ウレタン組成物を、一軸高速粉砕機(PSF-40、タニ工業社製)によってペレット化し、ついで、射出成形機(J110AD-180H、日本製鋼所社製)により、そのペレットを200℃で溶融し、ガス注入量0.26gの条件で窒素ガスを加えて発泡状態にして、成形型に射出成形した。そして、前記成形型から脱型することにより、ポリウレタン成形体(サンプル)を得た。
前記サンプルから、2mm角の測定サンプルを作成し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、1mm角の視野で発泡セル径を50個測長し、その平均を求めた結果、発泡セル径(発泡セルの数平均径)は110μmであった。
また、前記測定サンプルに対し、東洋精機社製の自動比重計DSG-1による密度測定を行った結果、その密度は0.5g/cm3であった。
【0045】
[実施例6]
ポリオール成分であるPEAを56質量%と、イソシアネート成分であるNDIを14質量%とを、液温130℃で混合し、ウレタンプレポリマーを調製した。つぎに、前記ウレタンプレポリマーと、新たに前記PEAと同じものを26質量%と、短鎖ポリオール2.5質量%と、整泡剤0.03質量%と、触媒0.03質量%と、加水分解防止剤1.44質量%とを、液温100℃で混合し、NCOインデックスが1.00のウレタン組成物を調製した。
前記ウレタン組成物におけるポリウレタンの重量平均分子量(Mw)を、高速GPC装置(東ソー社製のHLC-8320GPC)を用い、先述の条件に従い測定した結果、50000であった。
つぎに、前記ウレタン組成物を、一軸高速粉砕機(PSF-40、タニ工業社製)によってペレット化し、ついで、射出成形機(J110AD-180H、日本製鋼所社製)により、そのペレットを200℃で溶融し、ガス注入量0.26gの条件で窒素ガスを加えて発泡状態にして、成形型に射出成形した。そして、前記成形型から脱型することにより、ポリウレタン成形体(サンプル)を得た。
前記サンプルから、2mm角の測定サンプルを作成し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、1mm角の視野で発泡セル径を50個測長し、その平均を求めた結果、発泡セル径(発泡セルの数平均径)は90μmであった。
また、前記測定サンプルに対し、東洋精機社製の自動比重計DSG-1による密度測定を行った結果、その密度は0.5g/cm3であった。
【0046】
[実施例7]
ポリオール成分であるPEAを56質量%と、イソシアネート成分であるNDIを14質量%とを、液温130℃で混合し、ウレタンプレポリマーを調製した。つぎに、前記ウレタンプレポリマーと、新たに前記PEAと同じものを26質量%と、短鎖ポリオール2.5質量%と、整泡剤0.03質量%と、触媒0.03質量%と、加水分解防止剤1.44質量%とを、液温100℃で混合し、NCOインデックスが1.00のウレタン組成物を調製した。
前記ウレタン組成物におけるポリウレタンの重量平均分子量(Mw)を、高速GPC装置(東ソー社製のHLC-8320GPC)を用い、先述の条件に従い測定した結果、500000であった。
つぎに、前記ウレタン組成物を、一軸高速粉砕機(PSF-40、タニ工業社製)によってペレット化し、ついで、射出成形機(J110AD-180H、日本製鋼所社製)により、そのペレットを200℃で溶融し、ガス注入量0.26gの条件で窒素ガスを加えて発泡状態にして、成形型に射出成形した。そして、前記成形型から脱型することにより、ポリウレタン成形体(サンプル)を得た。
前記サンプルから、2mm角の測定サンプルを作成し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、1mm角の視野で発泡セル径を50個測長し、その平均を求めた結果、発泡セル径(発泡セルの数平均径)は100μmであった。
また、前記測定サンプルに対し、東洋精機社製の自動比重計DSG-1による密度測定を行った結果、その密度は0.5g/cm3であった。
【0047】
[実施例8]
ポリオール成分であるPCLを56質量%と、イソシアネート成分であるNDIを14質量%とを、液温130℃で混合し、ウレタンプレポリマーを調製した。つぎに、前記ウレタンプレポリマーと、新たに前記PCLと同じものを26質量%と、短鎖ポリオール2.5質量%と、整泡剤0.03質量%と、触媒0.03質量%と、加水分解防止剤1.44質量%とを、液温100℃で混合し、NCOインデックスが1.00のウレタン組成物を調製した。
前記ウレタン組成物におけるポリウレタンの重量平均分子量(Mw)を、高速GPC装置(東ソー社製のHLC-8320GPC)を用い、先述の条件に従い測定した結果、100000であった。
つぎに、前記ウレタン組成物を、一軸高速粉砕機(PSF-40、タニ工業社製)によってペレット化し、ついで、射出成形機(J110AD-180H、日本製鋼所社製)により、そのペレットを200℃で溶融し、ガス注入量0.26gの条件で窒素ガスを加えて発泡状態にして、成形型に射出成形した。そして、前記成形型から脱型することにより、ポリウレタン成形体(サンプル)を得た。
前記サンプルから、2mm角の測定サンプルを作成し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、1mm角の視野で発泡セル径を50個測長し、その平均を求めた結果、発泡セル径(発泡セルの数平均径)は110μmであった。
また、前記測定サンプルに対し、東洋精機社製の自動比重計DSG-1による密度測定を行った結果、その密度は0.5g/cm3であった。
【0048】
[実施例9]
ポリオール成分であるPEAを56質量%と、イソシアネート成分であるNDIを14質量%とを、液温130℃で混合し、ウレタンプレポリマーを調製した。つぎに、前記ウレタンプレポリマーと、新たに前記PEAと同じものを26質量%と、短鎖ポリオール2.5質量%と、整泡剤0.03質量%と、触媒0.03質量%と、加水分解防止剤1.44質量%とを、液温100℃で混合し、NCOインデックスが1.00のウレタン組成物を調製した。
前記ウレタン組成物におけるポリウレタンの重量平均分子量(Mw)を、高速GPC装置(東ソー社製のHLC-8320GPC)を用い、先述の条件に従い測定した結果、200000であった。
つぎに、前記ウレタン組成物を、一軸高速粉砕機(PSF-40、タニ工業社製)によってペレット化し、ついで、射出成形機(J110AD-180H、日本製鋼所社製)により、そのペレットを200℃で溶融し、ガス注入量0.32gの条件で窒素ガスを加えて発泡状態にして、成形型に射出成形した。そして、前記成形型から脱型することにより、ポリウレタン成形体(サンプル)を得た。
前記サンプルから、2mm角の測定サンプルを作成し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、1mm角の視野で発泡セル径を50個測長し、その平均を求めた結果、発泡セル径(発泡セルの数平均径)は50μmであった。
また、前記測定サンプルに対し、東洋精機社製の自動比重計DSG-1による密度測定を行った結果、その密度は0.5g/cm3であった。
【0049】
[実施例10]
ポリオール成分であるPEAを56質量%と、イソシアネート成分であるNDIを14質量%とを、127℃の雰囲気温度下で混合し、ウレタンプレポリマーを調製した。つぎに、前記ウレタンプレポリマーと、新たに前記PEAと同じものを26質量%と、短鎖ポリオール2.5質量%と、整泡剤0.03質量%と、触媒0.03質量%と、加水分解防止剤1.44質量%とを、液温100℃で混合し、NCOインデックスが1.00のウレタン組成物を調製した。
前記ウレタン組成物におけるポリウレタンの重量平均分子量(Mw)を、高速GPC装置(東ソー社製のHLC-8320GPC)を用い、先述の条件に従い測定した結果、200000であった。
つぎに、前記ウレタン組成物を、一軸高速粉砕機(PSF-40、タニ工業社製)によってペレット化し、ついで、射出成形機(J110AD-180H、日本製鋼所社製)により、そのペレットを200℃で溶融し、ガス注入量0.2gの条件で窒素ガスを加えて発泡状態にして、成形型に射出成形した。そして、前記成形型から脱型することにより、ポリウレタン成形体(サンプル)を得た。
前記サンプルから、2mm角の測定サンプルを作成し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、1mm角の視野で発泡セル径を50個測長し、その平均を求めた結果、発泡セル径(発泡セルの数平均径)は500μmであった。
また、前記測定サンプルに対し、東洋精機社製の自動比重計DSG-1による密度測定を行った結果、その密度は0.5g/cm3であった。
【0050】
[実施例11]
ポリオール成分であるPEAを56質量%と、イソシアネート成分であるNDIを14質量%とを、液温130℃で混合し、ウレタンプレポリマーを調製した。つぎに、前記ウレタンプレポリマーと、新たに前記PEAと同じものを26質量%と、短鎖ポリオール2.5質量%と、整泡剤0.03質量%と、触媒0.03質量%と、加水分解防止剤1.44質量%とを、液温100℃で混合し、NCOインデックスが1.00のウレタン組成物を調製した。
前記ウレタン組成物におけるポリウレタンの重量平均分子量(Mw)を、高速GPC装置(東ソー社製のHLC-8320GPC)を用い、先述の条件に従い測定した結果、200000であった。
つぎに、前記ウレタン組成物を、一軸高速粉砕機(PSF-40、タニ工業社製)によってペレット化し、ついで、射出成形機(J110AD-180H、日本製鋼所社製)により、そのペレットを200℃で溶融し、ガス注入量0.32gの条件で窒素ガスを加えて発泡状態にして、成形型に射出成形した。そして、前記成形型から脱型することにより、ポリウレタン成形体(サンプル)を得た。
前記サンプルから、2mm角の測定サンプルを作成し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、1mm角の視野で発泡セル径を50個測長し、その平均を求めた結果、発泡セル径(発泡セルの数平均径)は90μmであった。
また、前記測定サンプルに対し、東洋精機社製の自動比重計DSG-1による密度測定を行った結果、その密度は0.3g/cm3であった。
【0051】
[実施例12]
ポリオール成分であるPEAを56質量%と、イソシアネート成分であるNDIを14質量%とを、液温130℃で混合し、ウレタンプレポリマーを調製した。つぎに、前記ウレタンプレポリマーと、新たに前記PEAと同じものを26質量%と、短鎖ポリオール2.5質量%と、整泡剤0.03質量%と、触媒0.03質量%と、加水分解防止剤1.44質量%とを、液温100℃で混合し、NCOインデックスが1.00のウレタン組成物を調製した。
前記ウレタン組成物におけるポリウレタンの重量平均分子量(Mw)を、高速GPC装置(東ソー社製のHLC-8320GPC)を用い、先述の条件に従い測定した結果、200000であった。
つぎに、前記ウレタン組成物を、一軸高速粉砕機(PSF-40、タニ工業社製)によってペレット化し、ついで、射出成形機(J110AD-180H、日本製鋼所社製)により、そのペレットを200℃で溶融し、ガス注入量0.2gの条件で窒素ガスを加えて発泡状態にして、成形型に射出成形した。そして、前記成形型から脱型することにより、ポリウレタン成形体(サンプル)を得た。
前記サンプルから、2mm角の測定サンプルを作成し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、1mm角の視野で発泡セル径を50個測長し、その平均を求めた結果、発泡セル径(発泡セルの数平均径)は110μmであった。
また、前記測定サンプルに対し、東洋精機社製の自動比重計DSG-1による密度測定を行った結果、その密度は0.8g/cm3であった。
【0052】
[比較例1]
ポリオール成分であるPEAを54質量%と、イソシアネート成分であるNDIを13質量%とを、液温130℃で混合し、ウレタンプレポリマーを調製した。つぎに、前記ウレタンプレポリマーと、新たに前記PEAと同じものを29質量%と、短鎖ポリオール2.5質量%と、整泡剤0.03質量%と、触媒0.03質量%と、加水分解防止剤1.44質量%とを、液温100℃で混合し、NCOインデックスが0.87のウレタン組成物を調製した。
前記ウレタン組成物におけるポリウレタンの重量平均分子量(Mw)を、高速GPC装置(東ソー社製のHLC-8320GPC)を用い、先述の条件に従い測定した結果、100000であった。
つぎに、前記ウレタン組成物を、一軸高速粉砕機(PSF-40、タニ工業社製)によってペレット化し、ついで、射出成形機(J110AD-180H、日本製鋼所社製)により、そのペレットを200℃で溶融し、ガス注入量0.26gの条件で窒素ガスを加えて発泡状態にして、成形型に射出成形した。そして、前記成形型から脱型することにより、ポリウレタン成形体(サンプル)を得た。
前記サンプルから、2mm角の測定サンプルを作成し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、1mm角の視野で発泡セル径を50個測長し、その平均を求めた結果、発泡セル径(発泡セルの数平均径)は90μmであった。
また、前記測定サンプルに対し、東洋精機社製の自動比重計DSG-1による密度測定を行った結果、その密度は0.5g/cm3であった。
【0053】
[比較例2]
ポリオール成分であるPEAを60質量%と、イソシアネート成分であるNDIを15質量%とを、液温130℃で混合し、ウレタンプレポリマーを調製した。つぎに、前記ウレタンプレポリマーと、新たに前記PEAと同じものを21質量%と、短鎖ポリオール2.6質量%と、整泡剤0.03質量%と、触媒0.03質量%と、加水分解防止剤1.34質量%とを、液温100℃で混合し、NCOインデックスが1.05のウレタン組成物を調製した。
前記ウレタン組成物におけるポリウレタンの重量平均分子量(Mw)を、高速GPC装置(東ソー社製のHLC-8320GPC)を用い、先述の条件に従い測定した結果、100000であった。
つぎに、前記ウレタン組成物を、一軸高速粉砕機(PSF-40、タニ工業社製)によってペレット化し、ついで、射出成形機(J110AD-180H、日本製鋼所社製)により、そのペレットを200℃で溶融し、ガス注入量0.26gの条件で窒素ガスを加えて発泡状態にして、成形型に射出成形した。そして、前記成形型から脱型することにより、ポリウレタン成形体(サンプル)を得た。
前記サンプルから、2mm角の測定サンプルを作成し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、1mm角の視野で発泡セル径を50個測長し、その平均を求めた結果、発泡セル径(発泡セルの数平均径)は110μmであった。
また、前記測定サンプルに対し、東洋精機社製の自動比重計DSG-1による密度測定を行った結果、その密度は0.5g/cm3であった。
【0054】
[比較例3]
ポリオール成分であるPEAを56質量%と、イソシアネート成分であるNDIを14質量%とを、液温130℃で混合し、ウレタンプレポリマーを調製した。つぎに、前記ウレタンプレポリマーと、新たに前記PEAと同じものを26質量%と、短鎖ポリオール2.5質量%と、整泡剤0.03質量%と、触媒0.03質量%と、加水分解防止剤1.44質量%とを、液温100℃で混合し、NCOインデックスが1.00のウレタン組成物を調製した。
前記ウレタン組成物におけるポリウレタンの重量平均分子量(Mw)を、高速GPC装置(東ソー社製のHLC-8320GPC)を用い、先述の条件に従い測定した結果、300000であった。
つぎに、前記ウレタン組成物を、一軸高速粉砕機(PSF-40、タニ工業社製)によってペレット化し、ついで、射出成形機(J110AD-180H、日本製鋼所社製)により、そのペレットを200℃で溶融し、非発泡状態で成形型に射出成形した。そして、前記成形型から脱型することにより、ポリウレタン成形体(サンプル)を得た。
前記サンプルから、2mm角の測定サンプルを作成し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したが、発泡セルは見当たらなかった。
また、前記測定サンプルに対し、東洋精機社製の自動比重計DSG-1による密度測定を行った結果、その密度は1g/cm3であった。
【0055】
つぎに、前記のようにして得られた実施例および比較例のポリウレタン成形体(防振制振部材のサンプル)に関し、下記の基準に従い、各特性の測定および評価を行った。これらの結果を後記の表1に併せて示した。
【0056】
<再生産性>
前記ポリウレタン成形体を裁断して得られたペレット2gを、200℃のオーブンで15分間加熱したときの状態を、下記の基準に従い目視評価し、再生産性の評価とした。
◎:ペレットは溶融し、ペレットを載置した面積の1.5倍以上流動した。
〇:ペレットは溶融し、ペレットを載置した面積の1.5倍未満で流動した。
×:ペレットは溶融しなかった。
【0057】
<高温耐久性>
前記ポリウレタン成形体から、φ29mm×高さ12mmの円柱状のサンプルを作製し、80℃雰囲気下で、7000Nで100回繰り返し圧縮した後、サンプルの高さの減少割合(へたり)を測定し、下記の基準に従い、高温耐久性の評価とした。
◎:サンプルの高さの減少割合(へたり)が20%未満。
〇:サンプルの高さの減少割合(へたり)が20%以上40%未満。
×:サンプルの高さの減少割合(へたり)が40%以上。
【0058】
<柔軟性>
前記ポリウレタン成形体から、φ29mm×高さ12mmの円柱状のサンプルを作製し、23℃雰囲気下で、A型硬度計を用いて硬度を測定し、下記の基準に従い、柔軟性の評価とした。
〇:サンプルのHA硬度が95未満
×:サンプルのHA硬度が95以上
【0059】
【0060】
前記表1の結果から、実施例のポリウレタン成形体は、再生産性および高温耐久性の両立がなされており、さらに高い柔軟性を示していることがわかる。
【0061】
これに対し、比較例1のポリウレタン成形体は、発泡状態は良好であったが、その形成材料のNCOインデックスが本発明の規定(0.9~1.04)よりも低く、高温耐久性に劣る結果となった。比較例2のポリウレタン成形体も、発泡状態は良好であったが、その形成材料のNCOインデックスが本発明の規定(0.9~1.04)よりも高く、再生産性に劣る結果となった。比較例3のポリウレタン成形体は、その形成材料のNCOインデックスが本発明の規定(0.9~1.04)の範囲内であったが、発泡しておらず、柔軟性に劣る結果となった。
本防振制振部材は、高温耐久性(耐熱へたり性)が求められる用途に適しており、例えば、ショックアブソーバのピストンロッドに装着されるバンパスプリングの他、自動車の車両等のエンジンマウント、ミッションマウント、ボディマウント、キャブマウント、メンバーマウント、コンロッド、トルクロッド、ストラットバークッション、センタベアリングサポート、トーショナルダンパー、ステアリングラバーカップリング、テンションロッドブッシュ、ブッシュ、バウンドストッパー、FFエンジンロールストッパー、マフラーハンガー等の、各種の防振制振部材として、良好に適用することができる。
また、本防振制振部材は、再生産性が高いため、例えば、古い防振制振部材を熱溶融して元通りの機械物性を示す防振制振部材を再生産するといったことや、他の材料にリサイクルするといったことが可能である。