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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149047
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/24 20060101AFI20231005BHJP
   F01L 1/04 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F02F1/24 R
F02F1/24 G
F01L1/04 D
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057385
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 和己
(72)【発明者】
【氏名】岡林 大輔
【テーマコード(参考)】
3G016
3G024
【Fターム(参考)】
3G016CA57
3G016GA05
3G024AA05
3G024AA18
3G024BA23
3G024FA01
(57)【要約】
【課題】シリンダヘッドに対してカムシャフトを保持するための構造の剛性を十分に得ることのできる、内燃機関を提供する。
【解決手段】内燃機関10は、ロアカムキャップ14とアッパカムキャップ16と締結部材、補強部32とを備える。ロアカムキャップ14は、下部半孔14a,14bを有する。アッパカムキャップ16は、上部半孔16a,16bを有する。締結部材は、上部半孔16a,16bと下部半孔14a,14bとの組み合わせによってカム孔(軸受部C1,C2)が形成された状態でカム孔を避けた位置でアッパカムキャップ16とロアカムキャップ14を貫通してアッパカムキャップ16とロアカムキャップ14をシリンダヘッド12に締結する。補強部32は、ロアカムキャップ14の装着位置に対応する位置でシリンダヘッド12の短手方向(X方向)の略中央領域からシリンダヘッド12の短手方向の少なくとも一方の外壁30を繋ぐ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドの上面に装着可能で、カムシャフトを下面から支持可能な下部半孔を有するロアカムキャップと、
前記下部半孔に対向し前記カムシャフトを上面から支持可能な上部半孔を有するアッパカムキャップと、
前記上部半孔と前記下部半孔との組み合わせによってカム孔が形成された状態で前記カム孔を避けた位置で前記アッパカムキャップと前記ロアカムキャップを貫通して前記アッパカムキャップと前記ロアカムキャップを前記シリンダヘッドに締結する複数の締結部材と、
前記シリンダヘッドの前記上面において、前記ロアカムキャップの装着位置に対応する位置で前記シリンダヘッドの短手方向の略中央領域から前記シリンダヘッドの前記短手方向の少なくとも一方の外壁を繋ぐ補強部と、
を備え、
前記締結部材の少なくとも一本は、前記補強部に締結される、内燃機関。
【請求項2】
前記シリンダヘッドの前記補強部の非形成部にオイル流路が形成されている、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
シリンダヘッドの上面に装着可能で、カムシャフトを下面から支持可能な下部半孔を有するロアカムキャップと、
前記下部半孔に対向し前記カムシャフトを上面から支持可能な上部半孔を有するアッパカムキャップと、
前記上部半孔と前記下部半孔との組み合わせによってカム孔が形成された状態で前記カム孔を避けた位置で前記アッパカムキャップと前記ロアカムキャップを貫通して前記アッパカムキャップと前記ロアカムキャップを前記シリンダヘッドに締結する複数の締結部材と、
前記シリンダヘッドの前記上面において、前記ロアカムキャップの装着位置に対応する位置で前記シリンダヘッドの短手方向の両方の外壁を繋ぐ補強部と、
を備え、
前記締結部材の全ては、前記補強部に締結される、内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関のシリンダブロック上に装着されるシリンダヘッドには、吸気バルブや排気バルブを所定のタイミングで開閉駆動するカムを備えたカムシャフトが設けられている。カムシャフトは、例えば、シリンダヘッドの上側に組み付けられるカムシャフトハウジングと、当該カムシャフトハウジングの上側に組み付けられるカムキャップとによって形成される軸受部に配置される(特許文献1)。また、気筒ごとに形成されるロアカムホルダーと、ロアカムホルダーの上側に固定される吸気アッパーカムホルダーと排気アッパーカムホルダーとを備える内燃機関も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-57427号公報
【特許文献2】特開2000-170506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の内燃機関の場合、カムシャフトハウジングとカムキャップとを締結部材で締結して一体化したものを、別の締結部材によってシリンダヘッドに固定して一体化している。また、特許文献2の内燃機関の場合も同様に、ロアカムホルダーに対して吸気アッパーカムホルダーと排気アッパーカムホルダーとを締結部材で固定したものを、別の締結部材によってシリンダヘッドに締結して一体化している。つまり、各部品をそれぞれ個別の締結部材で締結している。そのため、複数の締結部材で各部品を締結しているにも拘わらず、シリンダヘッドに対してカムシャフトを保持するために構造の剛性が十分に得られないという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、上記に鑑みてなされたものであって、シリンダヘッドに対してカムシャフトを保持するための構造の剛性を十分に得ることのできる、内燃機関を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明の実施形態に係る内燃機関は、シリンダヘッドの上面に装着可能で、カムシャフトを下面から支持可能な下部半孔を有するロアカムキャップと、前記下部半孔に対向し前記カムシャフトを上面から支持可能な上部半孔を有するアッパカムキャップと、前記上部半孔と前記下部半孔との組み合わせによってカム孔が形成された状態で前記カム孔を避けた位置で前記アッパカムキャップと前記ロアカムキャップを貫通して前記アッパカムキャップと前記ロアカムキャップを前記シリンダヘッドに締結する複数の締結部材と、前記シリンダヘッドの前記上面において、前記ロアカムキャップの装着位置に対応する位置で前記シリンダヘッドの短手方向の略中央領域から前記シリンダヘッドの前記短手方向の少なくとも一方の外壁を繋ぐ補強部と、を備え、前記締結部材の少なくとも一本は、前記補強部に締結される。
【0007】
この構成によれば、例えば、シリンダヘッドの短手方向の略中央領域とシリンダヘッドの短手方向の外壁を繋ぐ補強部を形成する。したがって、アッパカムキャップとロアカムキャップを締結部材で一体的にシリンダヘッドに締結できる。その結果、シリンダヘッドに対してカムシャフトを保持するための構造の剛性を容易に向上することができる。また、補強部に対して締結部材を効率的に用いて剛性を向上することができるので、締結部材の増加を招くことなく、シリンダヘッドに対してカムシャフトを保持するための構造の剛性を容易に向上することができる。
【0008】
また、本発明の実施形態に係る内燃機関は、例えば、前記シリンダヘッドの前記補強部の非形成部にオイル流路が形成されてもよい。
【0009】
この構成によれば、例えば、シリンダヘッドに対してカムシャフトを保持するための構造の剛性向上と、シリンダヘッドの内部空間の有効活用との両立を図ることができる。
【0010】
前記の目的を達成するため、本発明の実施形態に係る内燃機関は、シリンダヘッドの上面に装着可能で、カムシャフトを下面から支持可能な下部半孔を有するロアカムキャップと、前記下部半孔に対向し前記カムシャフトを上面から支持可能な上部半孔を有するアッパカムキャップと、前記上部半孔と前記下部半孔との組み合わせによってカム孔が形成された状態で前記カム孔を避けた位置で前記アッパカムキャップと前記ロアカムキャップを貫通して前記アッパカムキャップと前記ロアカムキャップを前記シリンダヘッドに締結する複数の締結部材と、前記シリンダヘッドの前記上面において、前記ロアカムキャップの装着位置に対応する位置で前記シリンダヘッドの短手方向の両方の外壁を繋ぐ補強部と、
を備え、前記締結部材の全ては、前記補強部に締結される。
【0011】
この構成によれば、例えば、シリンダヘッドの短手方向の略中央領域とシリンダヘッドの短手方向の両方の外壁を繋ぐ補強部を形成する。したがって、アッパカムキャップとロアカムキャップを全ての締結部材で一体的にシリンダヘッドに締結できる。その結果、シリンダヘッドに対してカムシャフトを保持するための構造の剛性を容易かつ確実に向上することができる。また、補強部に対して締結部材を効率的に用いて剛性を向上することができるので、締結部材の増加を招くことなく、シリンダヘッドに対してカムシャフトを保持するための構造の剛性を容易かつ確実に向上することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シリンダヘッドに対してカムシャフトを保持するための構造の剛性を十分に得ることのできる、内燃機関を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る内燃機関の締結構造を示す例示的かつ模式的な斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る内燃機関の締結構造を示す例示的かつ模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用、結果、および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によって実現可能であるとともに、基本的な構成に基づく種々の効果や、派生的な効果のうち、少なくとも1つを得ることが可能である。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る内燃機関10の締結構造を示す例示的かつ模式的な斜視図である。また、図2は、内燃機関10の締結構造を示す例示的かつ模式的な断面図である。
【0016】
なお、本明細書において、便宜上、X軸、Y軸及びZ軸が定義される。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。X軸は、内燃機関10の短手方向に沿って設けられる。Y軸は、内燃機関10の長手方向に沿って設けられる。Z軸は、内燃機関10の高さに沿って設けられる。さらに、本明細書において、X方向、Y方向及びZ方向が定義される。X方向はX軸に沿う方向であって、Y方向はY軸に沿う方向であって、Z方向はZ軸に沿う方向である。
【0017】
本実施形態の内燃機関10は、シリンダヘッド12、ロアカムキャップ14、アッパカムキャップ16及び、それらの部品を相互に締結する締結部材(後述するボルト36,38,40,42)等を含む。
【0018】
シリンダヘッド12は、内燃機関10においてシリンダブロック(不図示)の上側に装着されている。なお、図1において、図示の都合上、シリンダヘッド12は、ロアカムキャップ14およびアッパカムキャップ16によって形成され、カムシャフト18及びカムシャフト20を回転可能に軸支するカム孔、すなわち軸受部C1,C2(図2参照)の下方(ロアカムキャップ14の下方)に存在する部分のみを示し、他の部分は図示を省略している。シリンダヘッド12は、例えば、略矩形のシリンダブロックの上面形状に対応し、矢印X方向及び矢印Y方向に沿って延び、内部に複数の気筒を収容可能な大きさで形成されている。
【0019】
シリンダヘッド12は、図示を省略した複数の締結部材(例えばボルト)によってシリンダブロックに締結される。シリンダヘッド12は、例えば、アルミニウム合金等を材料とする低圧鋳造によって成形可能である。シリンダヘッド12には、吸気バルブおよび排気バルブの機関バルブ、動弁機構の各種部品(不図示)が組み付けられている。
【0020】
シリンダヘッド12の上面12Mには、Y方向に延び、Y軸と平行な回転軸を中心に回転可能な棒状のカムシャフト18及びカムシャフト20を下面から支持可能な下部半孔14a,14bを有するロアカムキャップ14の下面14Nが密着する状態で装着可能である。ロアカムキャップ14は、例えば、アルミニウム合金等の鋳造によって形成可能である。
【0021】
ロアカムキャップ14の上面14Mには、ロアカムキャップ14の下部半孔14a,14bに対向しカムシャフト18及びカムシャフト20を上面から支持可能な上部半孔16a,16bを有するアッパカムキャップ16の下面16Nが密着する状態で装着可能である。アッパカムキャップ16もまた、例えば、アルミニウム合金等の鋳造によって形成可能である。
【0022】
図1図2では、図示を省略しているが、各気筒に対応する位置に吸気バルブ及び排気バルブが形成され、カムシャフト18は、軸上に形成されたカム部18aによって、例えば吸気バルブの開閉を行う。同様に、カムシャフト20は、軸上に形成されたカム部20aによって、例えば排気バルブの開閉を行う。
【0023】
ところで、図2に示されるように、ロアカムキャップ14の下部半孔14a,14bおよびアッパカムキャップ16の上部半孔16a,16bによって形成される軸受部C1,C2は、カムシャフト18,20をスムーズに回転させるために所定レベル以上の真円度を満たすことが望ましい。ロアカムキャップ14の下部半孔14a,14bおよびアッパカムキャップ16の上部半孔16a,16bの弧部分の真円度は加工時に所定値を満たすことが可能であるが、ロアカムキャップ14とアッパカムキャップ16とを組み合わせる際に再度真円度を満たすように組み立てる必要が生じする。
【0024】
そこで、本実施形態の内燃機関10は、ロアカムキャップ14とアッパカムキャップ16とを組み合わせる際の位置決め精度を確保するためのピンリング22を備えている。ピンリング22は、例えば金属製の中空環形状で、特に外周面の精度は、ロアカムキャップ14とアッパカムキャップ16との組み合わせ時の精度を所定精度で実現できるように精密加工されている。ピンリング22の内径側には、ロアカムキャップ14及びアッパカムキャップ16をシリンダヘッド12に締結するための締結部材としてのボルト36(ボルト42)が挿通する。ロアカムキャップ14には、ボルト36(ボルト42)の挿通位置にピンリング22を挿入可能な装着部22aとして、ボルト36(ボルト42)用の挿通穴よりピンリング22の外径分だけ拡径した段付き部が形成されている。同様に、アッパカムキャップ16には、ボルト36(ボルト42)の挿通位置にピンリング22を挿入可能な装着部22bとして、ボルト36(ボルト42)用の挿通穴よりピンリング22の外径分だけ拡径した段付き部が形成されている。なお、ピンリング22の内径は、ボルト36(ボルト42)用の挿通穴の直径と同等となるように形成されている。ロアカムキャップ14における装着部22a及びアッパカムキャップ16における装着部22bの形成位置及び内径面の精度をロアカムキャップ14及びアッパカムキャップ16の加工時に所定レベルで確保するととともに、ピンリング22の外径面の加工精度を所定レベルで確保する。その結果、ピンリング22を介してロアカムキャップ14とアッパカムキャップ16を組み合わせることにより、軸受部C1及び軸受部C2の所定の真円度を容易に確保することができる。
【0025】
なお、ロアカムキャップ14の上面14M及びアッパカムキャップ16の下面16Nにスペース的な余裕がある場合には、装着部22a及び装着部22bをボルト36(ボルト42)の挿入位置とは異なる位置に形成し、ピンリング22を装着してロアカムキャップ14とアッパカムキャップ16とを組み合わせてもよく、同様に組み合わせ精度の確保を行うことができる。この場合、ピンリング22は中実の円筒形状のピンとしてもよく、製造コストの軽減に寄与するようにしてもよい。また、図1図2においては、ピンリング22を2箇所設ける例を示したが、ピンリング22の設置本数及び設置位置は適宜変更可能である。
【0026】
また、図2に示されるように、ロアカムキャップ14とアッパカムキャップ16との組み合わせにより形成された軸受部C1,C2に対して、シリンダヘッド12の組み合わせ位置精度が所定値に維持できない場合がある。この場合、カムシャフト18のカム部18aで動作する吸気バルブやカムシャフト20のカム部20aで動作する排気バルブの動作が正確にできなくなる場合がある。
【0027】
そこで、本実施形態の内燃機関10の場合、ピンリング22を介してアッパカムキャップ16と組み合わせたロアカムキャップ14とシリンダヘッド12とを組み合わせる際の位置決め精度を確保するためのストレートピン24を備えている。ストレートピン24は、例えば金属製の円柱状で、特に外周面の精度は、ロアカムキャップ14とシリンダヘッド12との組み合わせ時の精度を所定精度で実現できるように精密加工されている。シリンダヘッド12には、ストレートピン24を挿入可能な装着部24aとして、ストレートピン24の外径に対応する内径の穴部が形成されている。同様に、ロアカムキャップ14には、ストレートピン24を挿入可能な装着部24bとして、ストレートピン24の外径に対応する内径の穴部が形成されている。シリンダヘッド12における装着部24a及びロアカムキャップ14における装着部24bの内径面の精度をシリンダヘッド12及びロアカムキャップ14の加工時に所定レベルに確保するととともに、ストレートピン24の外径面の加工精度を所定レベルに確保する。その結果、ストレートピン24を介してシリンダヘッド12とロアカムキャップ14を組み合わせることにより、軸受部C1及び軸受部C2に軸支されるカムシャフト18とカムシャフト20の吸気バルブ及び排気バルブの位置決め精度を容易に向上することができる。
【0028】
なお、ストレートピン24をピンリング22と同様な構成として、ボルト36(ボルト42)の挿入位置を用いてシリンダヘッド12とロアカムキャップ14の組み合わせ時の位置決めを行うようにしてもよい。
【0029】
前述したように、シリンダヘッド12に対するロアカムキャップ14、アッパカムキャップ16の締結は、ボルト36,38,40,42によって行うことができる。なお、図1図2に示す例の場合、ボルト38はロアカムキャップ14とアッパカムキャップ16との締結のみに利用し、ボルト36,40,42がロアカムキャップ14とアッパカムキャップ16とシリンダヘッド12との締結に利用する例を説明する。
【0030】
図1図2に示されるように、ボルト36及びボルト42は、シリンダヘッド12の短手方向(X方向)の外壁30の近傍位置に形成された内部に雌ねじが形成された締結部36c(外壁30B側)と、内部に雌ねじが形成された締結部42c(外壁30A側)を利用して締結する。
【0031】
一方、ボルト40は、シリンダヘッド12の外壁30から離れたい位置で締結を行うため、本実施形態の内燃機関10は、ボルト40を締結するために、シリンダヘッド12の上面12Mにおいて、ロアカムキャップ14の装着位置に対応する位置でシリンダヘッド12の短手方向(X方向)の略中央領域、例えば、点火プラグ収納部26の外周部28からシリンダヘッド12の短手方向の少なくとも一方の外壁である外壁30Aを繋ぐ補強部32を設けている。補強部32は、シリンダヘッド12の成形時にシリンダヘッド12の外壁30等と一体的に形成される。点火プラグ収納部26(外周部28)と外壁30Aとを補強部32で連結することにより、シリンダヘッド12の剛性自体も向上することができる。補強部32には、ボルト40の雄ねじ部と螺合する雌ねじ部が形成された締結部40cが形成されている。
【0032】
ロアカムキャップ14には、締結部36c,40c,42cの形成位置に対応してボルト36,40,42を挿通し、締結部36c,40c,42cの雌ねじ部と螺合させるための貫通部36b,40b,42bが形成されている。なお、前述したように、ボルト38は、ロアカムキャップ14とアッパカムキャップ16との締結のみに利用される。したがって、ロアカムキャップ14には、ボルト38の雄ねじ部が螺合可能な雌ねじ部が形成された締結部38bが形成されている。締結部38bは、ロアカムキャップ14を貫通してもよいが、ボルト38に付着した塵埃や切子等がシリンダヘッド12側に落下することを防止するために、止め孔形状とすることが望ましい。なお、シリンダヘッド12に形成する締結部36c,40c,42cも同様に止め孔形状にすることが望ましい。
【0033】
アッパカムキャップ16には、シリンダヘッド12の締結部36c,40c,42cおよびロアカムキャップ14の貫通部40bの形成位置に対応してボルト36,38,40,42を挿通する貫通部36a,38a,40a,42aが形成されている。なお、ロアカムキャップ14には、点火プラグ収納部26に対応する位置に点火プラグとアクセルするための貫通孔26aが形成されている。同様に、アッパカムキャップ16には、点火プラグ収納部26と貫通孔26aに対応する位置に貫通孔26bが形成されている。
【0034】
このように、補強部32には、アッパカムキャップ16とロアカムキャップ14をシリンダヘッド12に共締めする少なくとも一本の締結部材(例えば、ボルト40)が締結される。つまり、図1図2の場合、例えば、シリンダヘッド12の短手方向の略中央領域に形成された点火プラグ収納部26の外周部28とシリンダヘッド12の短手方向の外壁30Aを繋ぐ補強部32を形成することで、アッパカムキャップ16とロアカムキャップ14を締結部材で一体的にシリンダヘッド12に締結できる。その結果、シリンダヘッド12に対してカムシャフト18,20を保持するための構造の剛性を容易に向上することができる。また、補強部32に対して締結部材を効率的に用いて剛性を向上することができるので、締結部材の増加を招くことなく、シリンダヘッド12に対してカムシャフト18,20を保持するための構造の剛性を容易に向上することができる。
【0035】
ところで、図1図2に示されるように、ボルト38は、ロアカムキャップ14とアッパカムキャップ16とを締結するのみで、シリンダヘッド12までには到達しない。つまり、点火プラグ収納部26の外壁30B側には、補強部が形成されず、肉抜き部として空間(非形成部)が確保されている。そのため、シリンダヘッド12の補強部32が形成されない非形成部には、部品の締結に関与しない部品として、例えば、オイル流路34等を形成することができる。オイル流路34は、例えば、内燃機関10の駆動部分の潤滑を行う潤滑液(例えばオイル)を内燃機関10の各位置に供給するための主流路(メインギャラリ)から分岐した流路であり、例えば、ラッシュアジャスタ等にオイルを供給する。
【0036】
このように、本実施形態の10の場合、補強部32の配置位置を調整して、シリンダヘッド12まで到達する締結部材と、非到達の締結部材を選択的に配置するようにすることができる。その結果、シリンダヘッド12に対してカムシャフト18,20を保持するための構造の剛性向上と、シリンダヘッド12の内部空間の有効活用との両立を容易に図ることができる。
【0037】
ところで、図1図2で示した内燃機関10の場合、シリンダヘッド12の短手方向の略中央領域に形成された点火プラグ収納部26の外周部28とシリンダヘッド12の短手方向の外壁30Aを繋ぐ補強部32を形成する例を示した。他の実施形態においては、補強部32をシリンダヘッド12の上面12Mにおいて、ロアカムキャップ14の装着位置に対応する位置でシリンダヘッド12の短手方向の両方の外壁30A,30Bを繋ぐように形成してもよい。この場合、図1におけるボルト38は、ボルト40と同様に、アッパカムキャップ16とロアカムキャップ14をシリンダヘッド12に共締めするための締結部材として利用される。この場合、オイル流路34の配策位置を変更する必要が生じるものの、シリンダヘッド12に対してカムシャフト18,20を保持するための構造の剛性をさらに向上することが可能となり、内燃機関10の性能向上に寄与することができる。
【0038】
なお、本実施形態の内燃機関10においては、カムシャフト18,20を保持するためのロアカムキャップ14をシリンダヘッド12から分離した構造としている。その結果、シリンダヘッド12を低圧鋳造する場合、シリンダヘッド12のZ方向の高さ(サイズ)を縮小することが可能になる。また、シリンダヘッド12の形状の簡略化に寄与可能となり、シリンダヘッド12の鋳造時に用いる中子の小型化を図ることが可能となる。その結果、シリンダヘッド12の製造コストの低減に寄与することができる。また、シリンダヘッド12の高さ方向の縮小化に伴い、鋳造時の湯周り性が改善可能となり、鋳造品質の向上に寄与することができる。このように、補強部32を用いた締結構造を採用することにより、内燃機関10の剛性の向上と内燃機関10の製造コストの削減、品質の向上等を併せて実現することができる。
【0039】
(本実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る内燃機関10は、ロアカムキャップ14とアッパカムキャップ16と締結部材(ボルト36等)、補強部32とを備える。ロアカムキャップ14は、シリンダヘッド12の上面12Mに装着可能で、カムシャフト18,20を下面から支持可能な下部半孔14a,14bを有する。アッパカムキャップ16は、下部半孔14a,14bに対向しカムシャフト18,20を上面から支持可能な上部半孔16a,16bを有する。締結部材は、上部半孔16a,16bと下部半孔14a,14bとの組み合わせによってカム孔(軸受部C1,C2)が形成された状態でカム孔(軸受部C1,C2)を避けた位置でアッパカムキャップ16とロアカムキャップ14を貫通してアッパカムキャップ16とロアカムキャップ14をシリンダヘッド12に締結する。補強部32は、シリンダヘッド12の上面12Mにおいて、ロアカムキャップ14の装着位置に対応する位置でシリンダヘッド12の短手方向(X方向)の略中央領域からシリンダヘッド12の短手方向(X方向)の少なくとも一方の外壁30を繋ぐ。そして、締結部材の少なくとも一本は、補強部32に締結される。これによって、シリンダヘッド12に対してカムシャフト18,20を保持するための構造の剛性を容易に向上することができる。また、補強部32に対して締結部材を効率的に用いて剛性を向上することができるので、締結部材の増加を招くことなく、シリンダヘッド12に対してカムシャフト18,20を保持するための構造の剛性を容易に向上することができる。
【0040】
また、本発明の実施形態に係る内燃機関10は、例えば、シリンダヘッド12の補強部32の非形成部にオイル流路34が形成されてもよい。これによって、例えば、シリンダヘッド12に対してカムシャフト18,20を保持するための構造の剛性向上と、シリンダヘッド12の内部空間の有効活用との両立を図ることができる。
【0041】
また、本発明の実施形態に係る内燃機関10は、ロアカムキャップ14とアッパカムキャップ16と締結部材(ボルト36等)、補強部32とを備える。ロアカムキャップ14は、シリンダヘッド12の上面12Mに装着可能で、カムシャフト18,20を下面から支持可能な下部半孔14a、14bを有する。アッパカムキャップ16は、下部半孔14a,14bに対向しカムシャフトをカムシャフト18,20の上面から支持可能な上部半孔16a,16bを有する。締結部材は、上部半孔16a,16bと下部半孔14a,14bとの組み合わせによってカム孔(軸受部C1,C2)が形成された状態でカム孔(軸受部C1,C2)を避けた位置でアッパカムキャップ16とロアカムキャップ14を貫通してアッパカムキャップ16とロアカムキャップ14をシリンダヘッド12に締結する。補強部32は、シリンダヘッド12の上面12Mにおいて、ロアカムキャップ14の装着位置に対応する位置でシリンダヘッド12の短手方向(X方向)の両方の外壁30A,30Bを繋ぐ。そして、締結部材の全ては、補強部32に締結される。これによって、シリンダヘッド12に対してカムシャフト18,20を保持するための構造の剛性を容易かつ確実に向上することができる。また、補強部32に対して締結部材を効率的に用いて剛性を向上することができるので、締結部材の増加を招くことなく、シリンダヘッド12に対してカムシャフト18,20を保持するための剛性を容易かつ確実に向上することができる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述した実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
10 内燃機関
12 シリンダヘッド
12M,14M 上面
14 ロアカムキャップ
14a,14b 下部半孔
16 アッパカムキャップ
14N,16N 下面
16a,16b 上部半孔
18,20 カムシャフト
22 ピンリング
22a,22b,24a,24b 装着部
24 ストレートピン
26 点火プラグ収納部
26a,26b 貫通孔
28 外周部
30,30A,30B 外壁
32 補強部
34 オイル流路
36,38,40,42 ボルト(締結部材)
36a,36b,38a,40a,40b,42a,42b 貫通部
38b,36c,40c,42c 締結部
図1
図2