IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-連続繊維強化樹脂複合材料 図1
  • 特開-連続繊維強化樹脂複合材料 図2
  • 特開-連続繊維強化樹脂複合材料 図3
  • 特開-連続繊維強化樹脂複合材料 図4
  • 特開-連続繊維強化樹脂複合材料 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149049
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】連続繊維強化樹脂複合材料
(51)【国際特許分類】
   B29B 15/08 20060101AFI20231005BHJP
   B29K 105/12 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
B29B15/08
B29K105:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057387
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】荒谷 悠介
(72)【発明者】
【氏名】秋山 努
【テーマコード(参考)】
4F072
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA08
4F072AB09
4F072AB27
4F072AC08
4F072AC15
4F072AD44
4F072AG05
4F072AK15
4F072AL01
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、連続繊維強化樹脂複合材料のリサイクルに有用な連続強化繊維及び熱可塑性樹脂を含む連続繊維強化樹脂複合材料を提供することにある。
【解決手段】本発明の連続繊維強化樹脂複合材料は、連続強化繊維及び熱可塑性樹脂を含み、最長辺の長さが0.1~20mmであり、前記連続強化繊維の延在方向に延びる層間剥離部を表面に有している、ことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続強化繊維及び熱可塑性樹脂を含み、
最長辺の長さが0.1~20mmであり、
前記連続強化繊維の延在方向に延びる層間剥離部を表面に有している、
ことを特徴とする連続繊維強化樹脂複合材料。
【請求項2】
極界面部の空隙率が20%以下である、請求項1に記載の連続繊維強化樹脂複合材料。
【請求項3】
前記連続繊維強化樹脂複合材料100体積%に対して前記連続強化繊維が35~70体積%含まれている、請求項1又は2に記載の連続繊維強化樹脂複合材料。
【請求項4】
表面を囲う辺における、連続強化繊維の延在方向の辺の2端点を結ぶ線の長さ(La、単位mm)に対する該2端点間の複合材料の表面に沿う線の長さ(Lb、単位mm)の割合(Lb/La)、連続強化繊維の延在方向に直交する辺の2端点を結ぶ線の長さ(La’、単位mm)に対する該2端点間の複合材料の表面に沿う線の長さ(Lb’、単位mm)の割合(Lb’/La’)としたときに、Lb’/La’-Lb/Laが0超となる表面を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の連続繊維強化樹脂複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続繊維強化樹脂複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機械や自動車等の構造部品、圧力容器、及び管状の構造物等には、マトリックス樹脂材料にガラス繊維等の強化材が添加された複合材料成形体が使用されている。特に、強度の観点から、強化繊維が連続繊維である連続繊維強化樹脂複合材料が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-240355号公報
【特許文献2】特開2021-133687号公報
【特許文献3】特開2003-33915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、連続繊維強化樹脂複合材料はその使用量が増え、リサイクルが検討されている。例えば、特許文献1にはプラスチック樹脂リサイクル材の製造方法が記載されている。また、特許文献2には、連続炭素繊維強化樹脂複合材料を破砕し所定の繊維長を有する連続炭素繊維強化樹脂複合材料破砕片を作製する破砕処理後、上記連続炭素繊維強化樹脂複合材料破砕片を加熱し、上記連続炭素繊維強化樹脂複合材料破砕片に含まれるマトリックス樹脂を除去してリサイクル炭素繊維を得る方法が提案されている。また、特許文献3には、破砕及び粉砕して所定粒径の粉体を得る粉体生成工程と、粉体生成工程で得られた粉体を比重に基づいて分別する分別工程と、分別工程で分別された粉体のうち、再生品に適した比重の粉体によって当該再生品を成形する再生加工工程からなる炭素繊維を強化材として添加した連続炭素繊維強化樹脂複合材料から成る廃材から所望の再生品を得るためのリサイクル方法が提案されている。しかしながら、連続繊維強化樹脂複合材料を粉砕した材料の特性について検討されたものはなく、連続繊維強化樹脂複合材料を粉砕した材料のペレット化の容易さや、ペレットの繊維樹脂界面の剥離、ペレットの繊維含有量のばらつきにくさが十分ではなく改善点がある。
【0005】
本発明の目的は、連続繊維強化樹脂複合材料のリサイクルに有用であり、ペレット化の容易さや、ペレットの繊維樹脂界面の剥離、ペレットの繊維含有量のばらつきに優れた連続強化繊維及び熱可塑性樹脂を含む連続繊維強化樹脂複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
連続強化繊維及び熱可塑性樹脂を含み、
最長辺の長さが0.1~20mmであり、
前記連続強化繊維の延在方向に延びる層間剥離部を表面に有している、
ことを特徴とする連続繊維強化樹脂複合材料。
[2]
極界面部の空隙率が20%以下である、[1]に記載の連続繊維強化樹脂複合材料。
[3]
前記連続繊維強化樹脂複合材料100体積%に対して前記連続強化繊維が35~70体積%含まれている、[1]又は[2]に記載の連続繊維強化樹脂複合材料。
[4]
表面を囲う辺における、連続強化繊維の延在方向の辺の2端点を結ぶ線の長さ(La、単位mm)に対する該2端点間の複合材料の表面に沿う線の長さ(Lb、単位mm)の割合(Lb/La)、連続強化繊維の延在方向に直交する辺の2端点を結ぶ線の長さ(La’、単位mm)に対する該2端点間の複合材料の表面に沿う線の長さ(Lb’、単位mm)の割合(Lb’/La’)としたときに、Lb’/La’-Lb/Laが0超となる表面を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の連続繊維強化樹脂複合材料。
【発明の効果】
【0007】
本発明の連続繊維強化樹脂複合材料は、上記構成を有するため、リサイクルに有用であり、ペレット化の容易さや、ペレットの繊維樹脂界面の剥離、ペレットの繊維含有量のばらつきに優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料の写真である。
図2】本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料の層間剥離部を判定する際の、研磨面の観察画像である。
図3】Lb/La、Lb’/La’を説明する図である。
図4】最長辺の長さの測定方法を説明する図である。
図5】(A)は極界面の空隙率の測定方法を説明する図である。(B)は、極界面の空隙率が高い一例の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について、以下詳細に説明する。本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0010】
[連続繊維強化樹脂複合材料]
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、連続強化繊維及び熱可塑性樹脂を含み、最長辺の長さが0.1~20mmであり、上記連続強化繊維の延在方向に延びる層間剥離部を表面に有している。
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、例えば、原料複合材料の熱可塑性樹脂や連続強化繊維、添加材等の材料組成や比率、原料複合材料のサイズや形状や吸水率等と粉砕工程の条件をすり合わせることで得ることができる。
【0011】
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、例えば、作製済みの連続繊維強化樹脂複合材料から調製することができ、作製済みの連続繊維強化樹脂複合材料を粉砕して得た複合材料であってよい。
なお、本明細書において、本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料を「複合材料」と称する場合がある。また、本実施形態の複合材料の原料として用いることができる作製済みの連続繊維強化樹脂複合材料を、「原料複合材料」と称する場合がある。ここで、原料複合材料とは、バージン複合材料の他、リサイクル材を用いて作製した複合材料も含む。
【0012】
(原料複合材料)
上記原料複合材料の形態は、例えば、連続強化繊維の織物や編み物、ノンクリンプファブリック、組紐、パイプ状のものと熱可塑性樹脂とを複合化した形態、一方向に引き揃えた連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを複合化した形態、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなる糸を一方向に引き揃えて賦形した形態、連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなる糸とを織物や編み物、組紐、パイプ状にして賦形した形態等が挙げられる。中でも、リサイクル後に繊維長が長く、強度弾性率が高く、ペレット表面に適度な凹凸ができ、取り扱い性の良い複合材料が得られる観点から、一方向に引き揃えられた連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを複合化した形態、略直交する二方向に交差しておられた連続強化繊維の織物と熱可塑性樹脂とを複合化した形態、が好ましい。
上記原料複合材料は、平板であってよく、連続強化繊維の層と熱可塑性樹脂の層とを含む積層体であってよい。例えば、連続強化繊維の長さ方向が平板の表面に略平行に配置されていてもよい。なお、連続強化繊維の層とは、連続強化繊維を含む層であり、連続強化繊維の内部に熱可塑性樹脂が含浸している層であってよい。
原料複合材料の賦形前の中間材料の形態としては、特に制限されず、連続強化繊維と樹脂繊維との混繊糸、連続強化繊維の束の周囲を樹脂で被覆したコーティング糸、連続強化繊維に予め樹脂を含浸させテープ状にしたもの、連続強化繊維を樹脂のフィルムで挟んだもの、連続強化繊維に樹脂パウダーを付着させたもの、連続強化繊維の束を芯材としてその周囲を樹脂繊維で組紐としたもの、強化繊維の間に予め樹脂を含浸させたもの、連続強化繊維と溶融した樹脂とを接触させた形態等が挙げられる。
【0013】
上記原料複合材料の製造方法は、特に制限されず、以下の種々の方法が挙げられる。
例えば、連続繊維強化樹脂複合材料を構成する基材(例えば、連続強化繊維からなる基材、熱可塑性樹脂からなる基材)を、所望の枚数重ね合わせて裁断又は賦形し、目的とする製品の厚みを考慮して必要個数積み重ね又は必要枚数積層させ、金型に金型形状に合わせてセットする方法が挙げられる。その際、基材を金型にセットした後に金型を閉じて圧縮し、原料複合材料を構成する熱可塑性樹脂の融点以上の温度に金型を温調して熱可塑性樹脂を溶融させ、賦形してよい。
その他の方法としてダブルベルトプレス機や連続圧縮成形装置により連続繊維強化樹脂複合材料を構成する基材を連続的に供給して熱可塑性樹脂の融点以上に加熱して任意の圧力で圧縮成形し、熱可塑性樹脂の結晶化温度やガラス転移温度以下に冷却して製造する方法が挙げられる。
【0014】
上記原料複合材料は、さらにハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物を射出充填したハイブリッド複合材料であってもよい。ハイブリッド複合材料の製造工程においては、金型内に上記基材をセットして金型を閉じ、加圧し、所定の時間後に、更に所定のハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物を射出充填して成形し、基材の熱可塑性樹脂と、所定のハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物とを接合させることにより、ハイブリッド複合材料を製造してもよい。上記ハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂は、原料複合材料中に含まれる熱可塑性樹脂と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0015】
上記原料複合材料を粉砕した後の複合材料中に層間剥離部が形成されやすい箇所としては、例えば、連続強化繊維の層と熱可塑性樹脂との層との層間、互いに異なる方向に引き揃えられた2つの連続強化繊維の層の層間、ハイブリッド層と基材との層間等が挙げられる。
図2は、連続繊維強化樹脂複合材料の研磨面である。層間剥離部である空隙21は、図2の研磨面に対して直交する方向に連続強化繊維が延びる層と、研磨面に平行に連続強化繊維が延びる層との間に層間剥剥離部21が形成されている。
【0016】
(連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法)
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、上記原料複合材料を粉砕することにより製造することができる。なお、本明細書において、粉砕材料とは粉砕後の原料複合材料をいい、本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料でもある。
上記粉砕は、粉砕機、破砕機等を用いて行ってよく、これらを組み合わせて実施することが生産性や連続強化繊維の傷つき性の観点から好ましい。
上記粉砕の条件としては、使用する刃の種類、刃の回転数、刃の形状、粉砕時に原料複合材料にかかる力、原料複合材料の投入量、原料複合材料のサイズと形状が挙げられる。
均一な大きさの粉砕材料が得られる観点から、上記粉砕後に、メッシュサイズ0.1~3mm、好ましくは0.1~2mmのスクリーンを通すことが好ましい。
粉砕材料から粉砕に用いた刃を構成する金属、炭素鋼等を除去する観点から、粉砕材料を高磁力マグネットや磁選機、異物除去装置等により精製してもよい。
【0017】
上記粉砕時の刃の回転数としては、繊維と熱可塑性樹脂との界面の剥離が一層少ない連続繊維強化樹脂複合材料を加工でき、より層間剥離ができやすくなる観点から、100~3000min-1であることが好ましく、より好ましくは300~1500min-1、さらに好ましくは500~1000min-1である。
上記粉砕時の原料複合材料の投入量は、繊維と熱可塑性樹脂との界面の剥離が一層少ない連続繊維強化樹脂複合材料を加工でき、より層間剥離ができやすくなる観点から、5~150kg/hであることが好ましく、より好ましくは15~80kg/h、さらに好ましくは20~65kg/hである。
上記粉砕時の複合材料のサイズと形状としては、繊維と熱可塑性樹脂との界面の剥離が一層少ない連続繊維強化樹脂複合材料を加工でき、より層間剥離ができやすくなる観点から、長辺が10~300mmであることが好ましく、より好ましくは20~100mmであり、さらに好ましくは30~70mmであり、短辺が5~50mmであることが好ましく、より好ましくは15~35mmである、直方体状であることが好ましい。
上記粉砕時の複合材料の吸水率は、繊維と熱可塑性樹脂との界面の剥離が一層少ない連続繊維強化樹脂複合材料を加工でき、より層間剥離ができやすくなる観点から、0.01~2.0wt%であることが好ましく、より好ましくは0.03~1.0wt%、さらに好ましくは0.1~0.5wt%である。なお、吸水率は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
上記粉砕時に使用する刃の種類としては、繊維と熱可塑性樹脂との界面の剥離が一層少ない連続繊維強化樹脂複合材料を加工でき、より層間剥離ができやすくなり、異物の除去が容易になる観点から、合金工具鋼や耐摩耗刃、チタンアルミニウムナイトライド、超硬合金が好ましい。また、同様の観点から、刃は、回転刃および固定刃の組み合わせであることが好ましく、回転刃は1~20刃であることが好ましく、固定刃は20~70°であることが好ましい。
上記原料複合材料100質量%中の熱可塑性樹脂の質量割合は、繊維と熱可塑性樹脂との界面の剥離が一層少ない連続繊維強化樹脂複合材料を加工でき、より層間剥離ができやすくなり、異物の除去が容易になる観点から、15~65質量%であることが好ましく、より好ましくは25~50質量%である。また、同様の観点から、連続強化繊維の質量割合は35~85質量%であることが好ましく、より好ましくは50~75質量%である。
上記原料複合材料中に含まれる熱可塑性樹脂としては、繊維と熱可塑性樹脂との界面の剥離が一層少ない連続繊維強化樹脂複合材料を加工でき、より層間剥離ができやすくなり、異物の除去が容易になる観点から、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトンケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂が好ましく、より好ましくはポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂である。また、連続強化繊維としては、繊維と熱可塑性樹脂との界面の剥離が一層少ない連続繊維強化樹脂複合材料を加工でき、より層間剥離ができやすくなり、異物の除去が容易になる観点から、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維やジュート、セルロース、麻、ラミー等の植物繊維が好ましい。
【0018】
(連続繊維強化樹脂複合材料の特性)
-最長辺の長さ-
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料の最長辺の長さは、リサイクル時の取り扱い性に優れ、本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料を用いてペレットや成形品を調整する際のばらつきが少なくなるの観点から、0.1~20mmであり、好ましくは0.5~15mm、より好ましくは1.0~10mmである。
上記最長辺の長さは、例えば、原料複合材料の粉砕条件、粉砕材料から大きい粉砕材料を除去する条件等により調整することができる。
上記最長辺の長さは、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0019】
-層間剥離部-
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、複合材料中の連続強化繊維の延在方向に延びる層間剥離部を、表面に少なくとも1つ有している。ここで、表面における連続強化繊維の延在方向とは、表面を目視した際に確認できる連続強化繊維の延在方向としてよい。連続強化繊維の延在方向が複数ある場合、いずれか一つの方向において上記を満たしていればよい。
上記層間剥離部は、同一表面に複数あってよい。また上記層間剥離部を有する表面が少なくとも2面以上あることが好ましい。
なお、層間剥離部とは、繊維直行方向断面のSEM観察によって測定することができ、詳細には後述の実施例に記載の方法で測定される、「空隙の厚み直交方向の長さ/空隙の厚み方向の長さ」が3以上且つ「空隙の厚み直交方向の長さ/連続繊維強化樹脂複合材料の長さ」が0.1以上である箇所をいう。本発明者らは、複合材料の表面に上記層間剥離部が存在すると、リサイクル材料を用いるペレット化時の加工効率が向上することを見出した。
「空隙の厚み直交方向の長さ/空隙の厚み方向の長さ」は5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、15以上であることがさらに好ましく、20以上であることが特に好ましい。「空隙の厚み直交方向の長さ/空隙の厚み方向の長さ」が上記範囲であると、連続繊維強化樹脂複合材料のペレット化、成形加工が一層容易になる点及び、ペレット化または成形加工した後の強化繊維含有量のばらつきが少なくなる点から好ましい。
「空隙の厚み直交方向の長さ/連続繊維強化樹脂複合材料の長さ 」は0.3以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましく、0.8以上であることがさらに好ましく、0.9以上であることが特に好ましい。「空隙の厚み直交方向の長さ/連続繊維強化樹脂複合材料の長さ 」が上記範囲であると、連続繊維強化樹脂複合材料のペレット化、成形加工が一層容易になる点及び、ペレット化または成形加工した後の強化繊維含有量のばらつきが少なくなる点から好ましい。
上記層間剥離部は、原料複合材料(例えば、積層体である原料複合材料)を粉砕した際にできる、原料複合材料が層間で割れたあとである。また、上記層間剥離部は、原料複合材料を粉砕することにより形成することができる。
なお空隙とは連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる熱可塑性樹脂及び連続強化繊維、添加材等が存在しない空間部分を指す。本実施形態の複合材料は、表面に層間剥離部である空隙を有している。
厚み方向とは、連続強化繊維配向方向と直交方向であり、強化繊維基材の積層方向である。
連続繊維強化樹脂複合材料の長さとは、SEM観察断面における、厚み方向の直交方向である。
【0020】
本実施形態の複合材料は、任意の一表面を囲う辺における、連続強化繊維の延在方向の辺の2端点を結ぶ線の長さ(La、単位mm)に対する該2端点間の複合材料の表面の辺に沿う線の長さ(Lb、単位mm)の割合(Lb/La)が、連続強化繊維の延在方向に直交する辺の2端点を結ぶ線の長さ(La’、単位mm)に対する該2端点間の複合材料の表面の辺に沿う線の長さ(Lb’、単位mm)の割合(Lb’/La’)より小さいことが好ましい。即ち、該表面において、連続強化繊維の延在方向の辺は比較的直線状であるのに対し、延在方向に直交する方向の辺はジグザグ状であることが好ましい。
図3を用いて説明する。連続強化繊維の延在方向の辺(24又は25側の辺)と連続強化繊維の延在方向に直交する辺(26又は27側の辺)とが存在する、略四角形状の任意の一表面を用いて解析を行う。SEM等で該表面の画像を得る。延在方向の辺の2つの端点を結ぶ線分(図3の24)を引き、その長さLa(mm)を測定する。また、該2つの端点の表面の辺に沿う線分(図3の25)を引き、その長さLb(mm)を測定する。同様にして、延在方向と直交する方向の辺において、2つの端点を結ぶ線分(図3の26)、該2つの端点の表面の辺に沿う線分(図3の27)を引き、その長さLa’(mm)及びLb’(mm)を測定する。
なお、延在方向とは、該表面を目視して確認できる連続強化繊維の延在方向としてよい。複数方向の連続強化繊維が確認できる場合は、最も長い連続強化繊維がある方向を延在方向としてよい。上記表面は、連続強化繊維の延在方向に延びる上記層間剥離部を有する上記表面であってよい。また、表面を囲う辺が複数存在する場合、Lb/La又はLb’/La’が最も大きくなる辺を用いて、上記解析を行う。
「Lb’/La’-Lb/La」は、本実施形態の複合材料を用いるペレット化、成形加工が一層容易になる観点から、0超であることが好ましく、より好ましくは0.1~100、さらに好ましくは0.2~50、さらにより好ましくは0.5~5であり、特に好ましくは0.7~1.5である。
本実施形態の複合材料は、上記「Lb’/La’-Lb/La」を満たす表面が少なくとも1つ存在することが好ましく、2つ存在することがより好ましい。
【0021】
-極界面部の空隙率-
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、複合材料中の連続強化繊維の延在方向に直交する断面における該連続強化繊維1本と該連続強化繊維を囲む部分(例えば熱可塑性樹脂からなる部分)との間の極界面部の空隙率が、20%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。上記空隙率が20%以下であると、連続強化繊維とその周囲とが密着し、複合材料を用いたペレットや成形品の強度に優れる。上記空隙率は、原料複合材料の種類等により調整することができる。
なお、極界面部とは、上記直交する断面における1本の上記連続強化繊維の外周から、該連続強化繊維の中心(重心としてもよい)から該外周上の点までの距離rの10分の1の距離(1/10r)離れた上記連続強化繊維の外周縁領域内の点まで、の間の部分をいう(図5A)。
また、上記空隙率とは、極界面部の面積100%に対する、空隙が占める面積の割合をいう。図5Bは、極界面部に空隙がある例であり、複合材料を用いたペレット化や成形中に連続強化繊維とその周囲とが剥離しやすいため、好ましくない。1本の連続強化繊維の極界面部の空隙率は、該連続強化繊維の延在方向の任意の1つの直交断面から求めてよい。また、本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料の極界面の空隙率は、100本の連続強化繊維の極界面の空隙率の平均値としてよい。上記極界面部の空隙率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0022】
-連続強化繊維の体積割合-
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料100体積%に対する連続強化繊維の体積割合は、リサイクル後の成形品の強度に優れ、本実施形態の複合材料を用いるペレット化、成形加工が一層容易になる観点から、35~70体積%であることが好ましく、より好ましくは40~65体積%、さらに好ましくは45~60体積%である。
上記体積割合は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0023】
(連続強化繊維)
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる連続強化繊維としては、通常の連続繊維強化樹脂複合材料に使用されるものを用いてよい。本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる連続強化繊維は、上記原料複合材料に含まれる連続強化繊維と同一であることが好ましい。
【0024】
連続強化繊維としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、植物繊維、アラミド繊維、超高強力ポリエチレン繊維、ポリベンザゾール系繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリケトン繊維、金属繊維、セラミックス繊維等が挙げられる。
機械的特性、熱的特性、汎用性の観点から、ガラス繊維、炭素繊維、植物繊維、アラミド繊維が好ましく、生産性の面からは、ガラス繊維が好ましい。
上記連続強化繊維は、1種単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
上記連続強化繊維は表面処理剤(好ましくは、後述の集束剤)が処理されていてもよい。
【0025】
-集束剤-
連続強化繊維は、集束剤を付着させていることが好ましい。
上記連続強化繊維として、ガラス繊維を選択する場合、表面処理剤として集束剤を用いてもよい。
集束剤(サイジング剤)は、シランカップリング剤、潤滑剤、及び結束剤からなる群から選択される1種以上を含むものであってよく、少なくとも結束剤又はシランカップリング剤を含むことが好ましい。集束剤は、シランカップリング剤及び結束剤からなるものとしてよく、シランカップリング剤、潤滑剤、及び結束剤からなるものとしてもよい。
連続強化繊維(例えば、ガラス繊維)とその周りを被膜する樹脂との強い結合を作る集束剤であることにより、空隙率の小さい連続繊維強化樹脂複合材料を得ることができる。
集束剤は、使用される材料に対して外的に加えられてもよく、使用される材料に内的に含まれていてもよい。例えば、潤滑剤は、用いられる熱可塑性樹脂の市販品に含まれている場合がある。
【0026】
--シランカップリング剤--
シランカップリング剤は、通常、連続強化繊維(例えば、ガラス繊維)の表面処理剤として用いられ、界面接着強度向上に寄与する。
シランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びγ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類、マレイン酸類等が挙げられる。熱可塑性樹脂としてポリアミドを用いる際には、ポリアミド系樹脂の末端基であるカルボキシル基またはアミノ基と結合しやすいものを選択することが好ましく、アミノシラン類が好ましい。
【0027】
--潤滑剤--
潤滑剤は、連続強化繊維(例えば、ガラス繊維)の開繊性向上に寄与する。
潤滑剤としては、シランカップリング剤及び結束剤を阻害しない限り、目的に応じた通常の液体又は固体の任意の潤滑材料が使用可能であり、以下に限定されるものではないが、例えば、カルナウバワックスやラノリンワックス等の動植物系又は鉱物系のワックス;脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル、芳香族系エステル、芳香族系エーテル等の界面活性剤等が挙げられる。
【0028】
--結束剤--
結束剤は、連続強化繊維(例えば、ガラス繊維)の集束性向上及び界面接着強度向上に寄与する。
結束剤としては、目的に応じたポリマー、連続繊維強化樹脂複合材料の主たる材料としての上記熱可塑性樹脂以外の熱可塑性樹脂が使用可能である。
結束剤としてのポリマーは、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルと共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩等が挙げられる。また、例えば、m-キシリレンジイソシアナート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)及びイソホロンジイソシアナート等のイソシアネートと、ポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから合成されるポリウレタン系樹脂も好適に使用される。
アクリル酸のホモポリマーとしては、重量平均分子量1,000~90,000であることが好ましく、より好ましくは1,000~25,000である。
アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマーを構成する共重合性モノマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するモノマーのうち、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びメサコン酸よりなる群から選択される1種以上が挙げられる(但し、アクリル酸のみの場合を除く)。共重合性モノマーとして、エステル系モノマーを1種以上有することが好ましい。
アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルと共重合性モノマーとのコポリマーにおける、アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル等が挙げられる、上記メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル等が挙げられる。上記共重合性モノマーとしては、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びメサコン酸よりなる群から選択される1種以上のモノマー(好ましくは、無水マレイン酸)が挙げられる。中でも、1種のアクリル酸エステルと、1種のメタクリス酸エステルと、1種の共重合性モノマーとのコポリマーが好ましい。上記コポリマーの重量平均分子量としては、1,000~90,000であることが好ましく、より好ましくは1,000~25,000である。
アクリル酸のホモポリマー及びコポリマーの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩やグリシン塩等が挙げられる。中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤等)との混合溶液の安定性向上や、アミン臭低減の観点から、20~90%とすることが好ましく、40~60%とすることがより好ましい。
塩を形成するアクリル酸のポリマーの重量平均分子量は、特に制限されないが、3,000~50,000の範囲が好ましい。連続強化繊維(例えば、ガラス繊維)の集束性向上の観点から、3,000以上が好ましく、複合成形体とした際の特性向上の観点から50,000以下が好ましい。
熱可塑性樹脂としてポリアミドを用いる際には、結束剤としてはポリアミド樹脂と濡れ性のよい、又は表面張力の近い樹脂を用いることが好ましい。具体的には、例えば、ポリウレタン樹脂のエマルジョンやポリアミド樹脂のエマルジョンやその変性体を選択することができる。
【0029】
結束剤として用いられる熱可塑性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性フッ素系樹脂、及びこれらを変性させた変性熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0030】
更に、一層、連続強化繊維とそれを被覆する熱可塑性樹脂の接着性を向上させ、集束剤を水分散体として連続強化繊維(例えば、ガラス繊維)に付着させる場合において、乳化剤成分の比率を低減、あるいは乳化剤不要とできる等の観点から、結束剤として用いられる熱可塑性樹脂としては、変性熱可塑性樹脂が好ましい。
ここで、変性熱可塑性樹脂とは、熱可塑性樹脂の主鎖を形成し得るモノマー成分以外に、その熱可塑性樹脂の性状を変化させる目的で、異なるモノマー成分を共重合させ、親水性、結晶性、熱力学特性等を改質したものを意味する。
結束剤として用いられる変性熱可塑性樹脂は、以下に限定されるものではないが、例えば、変性ポリオレフィン系樹脂、変性ポリアミド系樹脂、変性ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0031】
結束剤としての変性ポリオレフィン系樹脂とは、エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマーと不飽和カルボン酸及び/又はそのエステル体等のオレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体、又は、不飽和カルボン酸及び/又そのエステル体等のオレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーの単独重合体であり、公知の方法で製造できる。オレフィン系モノマーと不飽和カルボン酸及び/又そのエステル体とを共重合させたランダム共重合体でもよいし、オレフィンに不飽和カルボン酸をグラフトしたグラフト共重合体でもよい。
オレフィン系モノマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等が挙げられる。これらは1種のみを単独で使用してもよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和カルボン酸、及びこれら不飽和カルボン酸のエステル化体(メチルエステル、エチルエステル等)等が挙げられ、これらは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
変性ポリオレフィン系樹脂がオレフィン系モノマーと該オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーとの共重合である場合、モノマー比率としては、共重合の合計質量を100質量%として、オレフィン系モノマー60~95質量%、オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマー5~40質量%であることが好ましく、オレフィン系モノマー70~85質量%、オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマー15~30質量%であることがより好ましい。オレフィン系モノマーが60質量%以上であれば、マトリックスとの親和性が良好であり、また、オレフィン系モノマーの質量%が95質量%以下であれば、変性ポリオレフィン系樹脂の水分散性が良好で、連続強化繊維への均一付与が行いやすい。
【0032】
結束剤として用いられる変性ポリオレフィン系樹脂は、共重合により導入したカルボキシル基等の変性基が、塩基性化合物で中和されていてもよい。塩基性化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ類;アンモニア;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン類が挙げられる。結束剤として用いられる変性ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量は、特に制限されないが、5,000~200,000が好ましく、50,000~150,000がより好ましい。連続強化繊維(例えば、ガラス繊維)の集束性向上の観点から5,000以上が好ましく、水分散性とする場合の乳化安定性の観点から200,000以下が好ましい。
【0033】
結束剤として用いられる変性ポリアミド系樹脂は、分子鎖中にポリアルキレンオキサイド鎖や3級アミン成分等の親水基を導入した変性ポリアミド化合物であり、公知の方法で製造できる。
分子鎖中にポリアルキレンオキサイド鎖を導入する場合は、例えば、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等の一部又は全部をジアミン又はジカルボン酸に変性したものを共重合して製造される。3級アミン成分を導入する場合は、例えばアミノエチルピペラジン、ビスアミノプロピルピペラジン、α-ジメチルアミノε-カプロラクタム等を共重合して製造される。
【0034】
結束剤として用いられる変性ポリエステル系樹脂とは、ポリカルボン酸又はその無水物とポリオールとの共重合体で、かつ末端を含む分子骨格中に親水基を有する樹脂であり、公知の方法で製造できる。
親水基としては、例えば、ポリアルキレンオキサイド基、スルホン酸塩、カルボキシル基、これらの中和塩等が挙げられる。ポリカルボン酸又はその無水物としては、芳香族ジカルボン酸、スルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、3官能以上のポリカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸等が挙げられる。
スルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スルホテレフタル酸塩、5-スルホイソフタル酸塩、5-スルホオルトフタル酸塩等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸又は脂環式ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
3官能以上のポリカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
これらの中で、変性ポリエステル系樹脂の耐熱性を向上させる観点から、全ポリカルボン酸成分の40~99モル%が芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。また、変性ポリエステル系樹脂を水分散液とする場合の乳化安定性の観点から、全ポリカルボン酸成分の1~10モル%がスルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。
【0035】
変性ポリエステル系樹脂を構成するポリオールとしては、ジオール、3官能以上のポリオール等が挙げられる。
ジオールとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA又はそのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。3官能以上のポリオールとしては、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0036】
変性ポリエステル系樹脂を構成するポリカルボン酸又はその無水物とポリオールとの共重合比率としては、共重合成分の合計質量を100質量%として、ポリカルボン酸又はその無水物40~60質量%、ポリオール40~60質量%であることが好ましく、ポリカルボン酸又はその無水物45~55質量%、ポリオール45~55質量%がより好ましい。
変性ポリエステル系樹脂の重量平均分子量としては、3,000~100,000が好ましく、10,000~30,000がより好ましい。連続強化繊維(例えば、ガラス繊維)の集束性向上の観点から3,000以上が好ましく、水分散性とする場合の乳化安定性の観点から100,000以下が好ましい。
【0037】
結束剤として用いる、ポリマー、熱可塑性樹脂は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
結束剤の全量を100質量%として、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルと共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩より選択された1種以上のポリマーを50質量%以上用いることが好ましく、60質量%以上用いることがより好ましい。
【0038】
集束剤が、シランカップリング剤及び結束剤からなる場合、集束剤は、ガラス繊維100質量%に対し、シランカップリング剤及び結束剤の合計質量として、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.2~2質量%、更に好ましくは0.2~1質量%付与して付着させる。ガラス繊維の集束性制御と界面接着強度向上の観点から、集束剤の付着量が、ガラス繊維100質量%に対し、シランカップリング剤及び結束剤の合計質量として0.1質量%以上であることが好ましく、糸の取扱い性の観点から3質量%以下であることが好ましい。
また、集束剤が、シランカップリング剤、潤滑剤、及び結束剤からなる場合、集束剤は、連続強化繊維(例えば、ガラス繊維)100質量%に対し、シランカップリング剤、潤滑剤及び結束剤の合計質量(合計付着質量割合)として、好ましくは0.01~0.3質量%、より好ましくは0.02~0.2質量%、更に好ましくは0.03~0.15質量%付着させる。連続強化繊維(例えば、ガラス繊維)の集束性制御と界面接着強度向上の観点から、集束剤の付着量が、連続強化繊維(例えば、ガラス繊維)100質量%に対し、シランカップリング剤、潤滑剤及び結束剤の合計質量として0.01質量%以上であることが好ましく、糸の取扱い性の観点から0.3質量%以下であることが好ましい。
【0039】
--ガラス繊維用の集束剤の組成--
ガラス繊維用の集束剤におけるシランカップリング剤の配合量は、ガラス繊維の集束性向上及び界面接着強度向上と複合成形体の機械的強度向上との観点から、集束剤100質量%に対して、0.1~2質量%が好ましく、より好ましくは0.1~1質量%、更に好ましくは0.2~0.5質量%である。
ガラス繊維用の集束剤における潤滑剤の配合量は、充分な潤滑性を与えるという観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上であり、界面接着強度向上と複合成形体の機械的強度向上の観点から、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
ガラス繊維用の集束剤における結束剤の配合量は、ガラス繊維の集束性制御及び界面接着強度向上と複合成形体の機械的強度向上との観点から、好ましくは1~25質量%、より好ましくは3~15質量%、更に好ましくは3~10質量%である。
【0040】
連続強化繊維としてガラス繊維を用いる場合であって、集束剤が、シランカップリング剤、潤滑剤、及び結束剤からなる場合、当該ガラス繊維の集束剤においては、それぞれ、シランカップリング剤を0.1~2質量%、潤滑剤を0.01~1質量%、結束剤を1~25質量%を含有することが好ましく、これらの成分を水で希釈し、全質量を100質量%に調整することが好ましい。
【0041】
--ガラス繊維用の集束剤の使用態様--
ガラス繊維用の集束剤は、使用態様に応じて、水溶液、コロイダルディスパージョンの形態、乳化剤を用いたエマルジョンの形態等、いずれの形態に調整してもよいが、集束剤の分散安定性向上、耐熱性向上の観点から、水溶液の形態とすることが好ましい。
上記連続繊維強化樹脂複合材料を構成する連続強化繊維としてのガラス繊維は、上述した集束剤を、公知のガラス繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて、ガラス繊維に付与して製造したガラス繊維を乾燥することによって連続的に得られる。
【0042】
また、連続強化繊維として、炭素繊維を選択した場合も同様に、集束剤を用いてもよく、集束剤は、カップリング剤(例えば、シランカップリング剤)、潤滑剤、及び結束剤からなることが好ましい。カップリング剤としては炭素繊維の表面に存在する水酸基と相性の良いもの、結束剤としては選択した熱可塑性樹脂と濡れ性が良いものや表面張力の近いもの、潤滑剤としてはカップリング剤と結束剤を阻害しないものを選択することができる。
炭素繊維に用いる集束剤の種類については、特に制限はなく、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、特開2015-101794号公報に記載のものを用いることができる。
【0043】
その他の連続強化繊維を用いる場合、連続強化繊維の特性に応じ、ガラス繊維、炭素繊維に用いることが可能な集束剤の種類、付与量を適宜選択すればよく、炭素繊維に用いる集束剤に準じた集束剤の種類、付与量とすることが好ましい。
【0044】
-連続強化繊維の形状-
連続強化繊維は複数本のフィラメントからなるマルチフィラメントであってよく、単糸数は、取扱い性の観点から30~15,000本であることが好ましい。
連続強化繊維の単糸径Rは、強度の観点、及び、取り扱い性の観点から2~30μmであることが好ましく、4~25μmであることがより好ましく、6~20μmであることが更に好ましく、8~18μmであることが最も好ましい。
【0045】
連続強化繊維の単糸径R(μm)と密度D(g/cm)の積RDは、連続強化繊維の取り扱い性と複合材料の強度の観点から、好ましくは5~100μm・g/cm、より好ましくは10~50μm・g/cm、更に好ましくは15~45μm・g/cm、より更に好ましくは20~45μm・g/cmである。
密度Dは、比重計により測定することができる。
他方、単糸径R(μm)は、密度D(g/cm)と繊度(dtex)、単糸数(本)から、以下の式:
【数1】
により算出することができる。また、単糸径R(μm)は例えば、連続強化繊維単糸のSEM観察によって求めることができる。
【0046】
連続強化繊維の積RDを所定の範囲とするには、市販で入手可能な連続強化繊維について、連続強化繊維の有する密度に応じて、繊度(dtex)及び単糸数(本)を適宜選択すればよい。例えば、連続強化繊維としてガラス繊維を用いる場合、密度が約2.5g/cmであるから、単糸径が2~40μmのものを選べばよい。具体的には、ガラス繊維の単糸径が9μmである場合、繊度660dtexで単糸数400本のガラス繊維を選択することにより、積RDは、23となる。また、ガラス繊維の単糸径が17μmである場合、繊度11,500dtexで単糸数2,000本のガラス繊維を選択することにより、積RDは、43となる。連続強化繊維として炭素繊維を用いる場合、密度が約1.8g/cmであるから、単糸径が2.8~55μmのものを選べばよい。具体的には、炭素繊維の単糸径が7μmである場合、繊度2,000dtexで単糸数3,000本の炭素繊維を選択することにより、積RDは、13となる。連続強化繊維としてアラミド繊維を用いる場合、密度が約1.45g/cmであるから、単糸径が3.4~68μmのものを選べばよい。具体的には、アラミド繊維の単糸径が12μmである場合、繊度1,670dtexで単糸数1,000本のアラミド繊維を選択することにより、積RDは、17となる。
【0047】
連続強化繊維、例えば、ガラス繊維は、原料ガラスを計量、混合し、溶融炉で溶融ガラスとし、これを紡糸してガラスフィラメントとし、集束剤を塗布し、紡糸機を経て、ダイレクトワインドロービング(DWR)、ケーキ、撚りを入れたヤーン等の巻き取り形態として製造される。
連続強化繊維はどのような形態でも構わないが、ヤーン、ケーキ、DWRに巻き取ってあると、樹脂を被覆させる工程での生産性、生産安定性が高まるため好ましい。生産性の観点からはDWRが最も好ましい。
【0048】
連続強化繊維の形態は、特に制限されず、織物や編み物、組紐、パイプ状のもの、ノンクリンプファブリック、一方向材等、種々の形態が挙げられ、好ましくは、織物、ノンクリンプファブリック、一方向材の形態である。
【0049】
(熱可塑性樹脂)
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる熱可塑性樹脂は、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド612、ポリアミド6I、ポリアミド1010、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド410、ポリアミド12等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレン等のポリアセタール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテル系樹脂;ポリエーテルスルフォン;ポリフェニレンサルファイド;熱可塑性ポリエーテルイミド;テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体等の熱可塑性フッ素系樹脂;ポリウレタン系樹脂;アクリル系樹脂及びこれらを変性させた変性熱可塑性樹脂が挙げられる。
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる熱可塑性樹脂は、上記原料複合材料に含まれる熱可塑性樹脂と同一であることが好ましい。
【0050】
これらの熱可塑性樹脂の中でも、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性フッ素系樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びアクリル系樹脂が、機械的物性、汎用性の観点からより好ましく、熱的物性の観点を加えるとポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂が更に好ましい。また、繰り返し荷重負荷に対する耐久性の観点からポリアミド系樹脂がより更に好ましい。
【0051】
-ポリエステル系樹脂-
ポリエステル系樹脂とは、主鎖に-CO-O-(エステル)結合を有する高分子化合物を意味する。
ポリエステル系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂は、ホモポリエステルであってもよく、また、共重合ポリエステルであってもよい。
共重合ポリエステルの場合、ホモポリエステルに適宜第3成分を共重合させたものが好ましく、第3成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分等が挙げられる。
また、バイオマス資源由来の原料を用いたポリエステル系樹脂を用いることもでき、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネートアジペート等の脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0052】
-ポリアミド系樹脂-
ポリアミド系樹脂とは、主鎖に-CO-NH-(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。例えば、脂肪族系ポリアミド、芳香族系ポリアミド、全芳香族系ポリアミド等があげられる。
【0053】
ポリアミド系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、ω-アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びにこれらの共重合体が挙げられる。
ポリアミド系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
ラクタムとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ピロリドン、カプロラクタム、ウンデカンラクタムやドデカラクタムが挙げられる。
ω-アミノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラクタムの水による開環化合物であるω-アミノ脂肪酸が挙げられる。ラクタム又はω-アミノカルボン酸はそれぞれ2種以上の単量体を併用して縮合させてもよい。
ジアミン(単量体)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチレンジアミンやペンタメチレンジアミン等の直鎖状の脂肪族ジアミン;2-メチルペンタンジアミンや2-エチルヘキサメチレンジアミン等の分岐型の脂肪族ジアミン;p-フェニレンジアミンやm-フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミンやシクロオクタンジアミン等の脂環式ジアミンが挙げられる。
ジカルボン酸(単量体)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アジピン酸、ピメリン酸やセバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸やイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。単量体としてのジアミン及びジカルボン酸はそれぞれ1種単独又は2種以上の併用により縮合させてもよい。
【0054】
ポリアミド系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド4(ポリα-ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610、ポリアミド612等の脂肪族ポリアミド、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、及びポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)等の半芳香族ポリアミド、並びにこれらを構成成分として含む共重合ポリアミド等が挙げられる。
共重合ポリアミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンテレフタルアミドの共重合体、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンイソフタルアミドの共重合体、並びにヘキサメチレンテレフタルアミド及び2-メチルペンタンジアミンテレフタルアミドの共重合体が挙げられる。
【0055】
ポリアミド樹脂を用いる場合、熱可塑性樹脂が、(A)脂肪族ポリアミドを50~99質量部、及び、イソフタル酸単位を少なくとも75モル%含むジカルボン酸単位と、炭素数4~10のジアミン単位を少なくとも50モル%含むジアミン単位とを含有する(B)半芳香族ポリアミドを1~50質量部、を含有してもよい。
熱可塑性樹脂が、上記範囲の(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドを含むと、ポリアミドとして(A)脂肪族ポリアミドのみを含む場合と比較して、連続繊維強化樹脂複合材料の物性(強度、剛性、高温特性、吸水特性、衝撃特性、及び外観等)が向上する傾向にある。
熱可塑性樹脂100質量%に対して、(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドの合計含有量は、70~100質量%であることが好ましく、より好ましくは80~100質量%、更に好ましくは90~100質量%である。
【0056】
上記(A)脂肪族ポリアミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612等が挙げられる。
熱可塑性樹脂中のポリアミド100質量%中の、(A)脂肪族ポリアミドの含有量は、50~99質量%であることが好ましく、より好ましくは60~90質量%、更に好ましくは70~80質量%である。
【0057】
上記(B)半芳香族ポリアミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド6I、ポリアミド9I、ポリアミド10I等が挙げられる。
上記イソフタル酸単位及び炭素数4~10のジアミン単位の合計量は、(B)半芳香族ポリアミドの全構成単位100モル%に対して、80~100モル%であることが好ましく、90~100モル%であることがより好ましく、95~100モル%であることが更に好ましい。
なお、(B)半芳香族ポリアミドを構成する単量体単位の割合は、例えば、13C核磁気共鳴分光法(NMR)により測定することができる。
【0058】
(B)半芳香族ポリアミドにおいて、ジカルボン酸単位中のイソフタル酸単位の割合は、少なくとも75モル%であり、好ましくは85モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である。ジカルボン酸単位中のイソフタル酸単位の割合が上記範囲であると、高温特性と吸水特性が向上する傾向にある。
【0059】
(B)半芳香族ポリアミドにおいて、ジアミン単位中の炭素数4~10のジアミン単位の割合は、少なくとも50モル%であり、好ましくは60モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上である。ジアミン単位中の炭素数4~10のジアミン単位の割合が上記範囲であると、高温特性と吸水特性が向上する傾向にある。
【0060】
熱可塑性樹脂中のポリアミド100質量%中の、(B)半芳香族ポリアミドの含有量は、1~50質量%であることが好ましく、より好ましくは10~40質量%、更に好ましくは20~30質量%である。
【0061】
上記(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドは、公知の末端封止剤により末端封止されていてもよく、(A)脂肪族ポリアミドと(B)半芳香族ポリアミドとを合わせたポリアミド1gに対する当量として表される(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドの封止された末端量の合計が、5~180μ当量/gであることが好ましく、10~170μ当量/gがより好ましく、20~160μ当量/gがさらに好ましく、30~140μ当量/gが特に好ましく、40~140μ当量/gが最も好ましい。封止された末端量が、上記範囲であると、物性(強度、剛性、高温特性、吸水特性、衝撃特性、及び外観等)が向上する傾向にある。
ここで、封止された末端量とは、封止剤により封止されたアミノ末端及びカルボキシル末端の合計量である。封止された末端量は、H-NMRを用いて測定することができる。
【0062】
(A)脂肪族ポリアミドの末端基濃度は、(B)半芳香族ポリアミドの末端基濃度の1/2以下であることが好ましく、2/5以下であることがより好ましい。(A)脂肪族ポリアミドの末端基濃度が(B)半芳香族ポリアミドの末端基濃度の1/2以下であると、物性(強度、剛性、高温特性、吸水特性、衝撃特性、及び外観等)が向上する傾向にある。
(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドの末端基濃度は、H-NMRを用いて測定することができる。
【0063】
(A)脂肪族ポリアミドと(B)半芳香族ポリアミドとは、tanδのピーク温度の差が45~100℃であることが好ましく、50~90℃であることがより好ましく、60~90℃であることが更に好ましい。(A)脂肪族ポリアミドと(B)半芳香族ポリアミドとのtanδのピーク温度の差が、上記範囲であると、高温特性と吸水特性が向上する傾向にある。
(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドのtanδのピーク温度は、例えば、粘弾性測定解析装置を用いて測定することができる。
【0064】
(A)脂肪族ポリアミドと(B)半芳香族ポリアミドとの粘度の差が3倍以上であることが強度、剛性、成形性、外観の観点から好ましく、4倍以上であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂の粘度はMFR測定(ISO1133に準拠)により求めることができる。
【0065】
(添加剤)
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料には、必要に応じて添加剤が含まれていてよい。上記添加剤としては、例えば、着色剤、老化防止剤、酸化防止剤、耐候剤、金属不活性剤、光安定剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、防菌・防黴剤、防臭剤、導電性付与剤、分散剤、軟化剤、可塑剤、架橋剤、共架橋剤、加硫剤、加硫助剤、発泡剤、発泡助剤、難燃剤、制振剤、造核剤、中和剤、滑剤、ブロッキング防止剤、分散剤、流動性改良剤、離型剤等が挙げられる。なお、上記添加剤とは、上記熱可塑性樹脂、上記連続強化繊維、集束剤中の含有成分、を除くものをいう。
添加剤の含有量は、複合材料100質量%に対して、3質量%以下としてよい。
【0066】
-着色剤-
着色剤としては、カーボンブラック、ニグロシン、アルミ顔料、二酸化チタン、群青、シアニンブルー、シアニングリーン、キナクリドン、珪藻土、モノアゾ塩、ペリレン、ジスアゾ、縮合アゾ、イソインドリン、弁柄、ニッケルチタンイエロー、ジケトンピロロピロール、金属塩、ペリレンレッド、金属酸化物、バナジン酸ビスマス、コバルトグリーン、コバルトブルー、アンスラキノン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー等が挙げられる。中でも、黒色の着色剤が好ましく、カーボンブラック、ニグロシンがより好ましい。
【0067】
上記連続繊維強化樹脂複合材料は、好適には、熱可塑性樹脂100質量部に対して、連続強化繊維の含有量が90~525質量部、これら以外の成分の含有量が0~2質量部であり、より好適には、熱可塑性樹脂100質量部に対して、連続強化繊維の含有量が150~340質量部、これら以外の成分の含有量を0~1質量部である。
【0068】
(用途)
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、リサイクル連続繊維強化樹脂複合材料の原料として用いることができる。
【実施例0069】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0070】
[評価]
実施例及び比較例で得られた複合材料について、下記の測定を行った。
【0071】
(層間剥離部の有無)
実施例及び比較例で得られた複合材料を、研磨機(小型精密試料作成システム IS-POLISHER ISPP-1000(株式会社池上精機))により、連続強化繊維直交断面に研磨圧力が1000g/cmの研磨条件で研磨し、研磨面を作製した。そして、電界放出形走査電子顕微鏡(FESEM(S-4700、株式会社日立ハイテクノロジーズ))により研磨面を観察した(図2)。空隙の、連続繊維強化樹脂複合材料厚み方向の長さ及び厚み直交行方向の長さをImageJにより測定し、「(空隙の厚み直交方向の長さ)/(空隙の厚み方向の長さ)」を求めた。そして、(空隙の厚み直交方向の長さ)/(空隙の厚み方向の長さ)が3以上、かつ(空隙の厚み直交方向の長さ)/(連続繊維強化樹脂複合材料の長さ)が1/10以上である箇所、を層間剥離部と判定した。なお厚み方向とは、連続強化繊維配向方向と直交方向であり、強化繊維基材の積層方向であり、連続繊維強化樹脂複合材料の長さとは、SEM観察断面における、厚み方向の直交方向である。
層間剥離部なしとは、複合材料のどの面から研磨しても、上述の層間剥離部を確認できないことをいう。
上記研磨条件は、耐水ペーパー番手#2000で10分間、炭化ケイ素フィルム粒度9μmで5分間、アルミナフィルム粒度5μmで5分間、アルミナフィルム粒度3μmで5分間、アルミナフィルム粒度1μmで5分間の順番で行った。また、各研磨は、約7mL/minで水を加えながら行い、各研磨の間で研磨面にエアを吹き付け、切削くずを除去した。
【0072】
(極界面の空隙率)
上記層間剥離部の有無の評価と同様に、FESEM観察を行い、極界面部の空隙率を、任意に選択した連続強化繊維100本について測定し、平均値を算出した。
なお、極界面の空隙率の評価では、連続強化繊維の延在方向に対して、直交する断面が研磨面となるように研磨を行った。また、複合材料中に連続強化繊維が100本確認できない場合は、確認できる連続強化繊維全てについて求めた値の平均値としてよい。
【0073】
(連続繊維強化樹脂複合材料の最長辺の長さ)
連続繊維強化樹脂複合材料の平面図が内部に入る最小の円を描き、その直径をもとめ、最長辺の長さとした(図4)。なお、複合材料が複数ある場合、連続繊維強化樹脂複合材料100点の平均値を算出し、最長辺の長さとしてよい。
なお上記平面図とは、複合材料の最長辺の長さが最も長くなるようにして得た平面図であり、水平面に静置した連続繊維強化樹脂複合材料の鉛直上方から平行光線で投影した投影図と得ることができる。
【0074】
(ガラス繊維の体積割合)
連続繊維強化樹脂複合材料2gを、電気炉に入れ、温度650℃で3時間加熱して、樹脂を焼き飛ばした。その後、室温まで自然冷却し、残されたガラス繊維の質量を測定することで、連続繊維強化樹脂複合材料に含まれるガラス繊維と樹脂との質量比率を求めた。また、求めた質量比率から、密度で割りかえすことにより、連続繊維強化樹脂複合材料100体積%に対するガラス繊維の体積比率(Vf、体積%)を求めた。
【0075】
(連続繊維強化樹脂複合材料のペレット化の容易さ)
実施例及び比較例で得られた連続繊維強化樹脂複合材料を、押し出し機(SRV-L40/30、(株)日本油機)に投入し、複合材料中に含まれる各樹脂の融点+35℃の温度にてペレット化した。この時の最大吐出量によりペレット化の容易さを判定した。
【0076】
(ペレットの繊維樹脂界面の剥離)
上記連続繊維強化樹脂複合材料のペレット化の容易さの判定で得られたペレットを、上記極界面の空隙率と同様にして極界面の観察を行い、連続強化繊維100本について空隙率の平均値を求めた。なお、複合材料中に連続強化繊維が100本確認できない場合は、確認できる連続強化繊維全てについて求めた空隙率の平均値としてよい。
【0077】
(ペレットの繊維含有量のばらつき)
上記連続繊維強化樹脂複合材料のペレット化の容易さの判定で得られたペレット100mgを用いて、上記ガラス繊維の体積割合と同様にしてVfを、N10測定し、最大と最小の差を平均値で割った値を算出した。
【0078】
(Lb’/La’-Lb/La)
上記層間剥離部の有無で得られた研磨後のサンプルをマイクロスコープにより研磨面を観察し、ImageJにより、連続強化繊維の延在方向の辺の2端点を結ぶ線の長さ(La、単位mm)に対する該2端点間の複合材料の表面に沿う線の長さ(Lb、単位mm)の割合(Lb/La)及び、連続強化繊維の延在方向に直交する辺の2端点を結ぶ線の長さ(La’、単位mm)に対する該2端点間の複合材料の表面に沿う線の長さ(Lb’、単位mm)の割合(Lb’/La’)をもとめ、Lb’/La’-Lb/Laを算出した。なお、Lb/La又はLb’/La’は最も大きくなる辺を用いて求めた。
【0079】
(吸水率の測定)
カールフィッシャー水分計(京都電子工業株式会社、MKC610)を用いて窒素環境下、0.3g連続繊維強化樹脂複合材料を量り取り、測定した。
【0080】
実施例、比較例で用いた材料は以下のとおりである。
【0081】
(ガラス繊維)
ガラス繊維1:
繊度1.20g/mで単糸数2000本のガラス繊維100質量%に対し、集束剤を0.3質量%付着させたものを製造した。巻き取り形態はDWRであり、平均単糸径は約17μmとした。上記集束剤は、カップリング剤としてγ-アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE-903、信越化学工業株式会社製)0.1質量%、潤滑剤としてカルナウバワックス0.5質量%、結束剤としてポリウレタン樹脂(Y65-55、株式会社ADEKA製)1質量%、及び共重合化合物(無水マレイン酸40質量%、アクリル酸メチル50質量%、及びメタクリル酸メチル10質量%を共重合させた、重量平均分子量が20000である共重合化合物)3質量%、となるように脱イオン水で調整することで作製した。
ガラス繊維2:
繊度1.20g/mで単糸数2000本のガラス繊維100質量%に対し、集束剤を0.3質量%付着させたものを製造した。巻き取り形態はDWRであり、平均単糸径は約17μmとした。上記集束剤は、潤滑剤としてカルナウバワックス0.5質量%、結束剤としてポリウレタン樹脂(Y65-55、株式会社ADEKA製)1質量%となるように脱イオン水で調整することで作製した。
【0082】
(連続強化繊維基材)
ガラスクロス1、ガラスクロス2:
レピア織機(織幅1m)を用い、上記ガラス繊維1またはガラス繊維2を経糸、緯糸として用いて製織することでガラスクロスを製造した。得られたガラスクロスの織形態は、綾織、織密度は6.5本/25mm、目付は640g/mであった。
【0083】
(熱可塑性樹脂フィルム)
PA66(融点265℃)をTダイ押し出し成形機(株式会社創研製)を用いて成形することで熱可塑性樹脂フィルムを得た。熱可塑性樹脂フィルムの厚さは180μmであった。
【0084】
[実施例1]
ガラスクロス1を5枚と熱可塑性樹脂フィルムを6枚準備し、熱可塑性樹脂フィルムが表面となるようにガラスクロスと熱可塑性樹脂フィルムとを交互に重ねて成形を行い、プリプレグを得た。この時、熱可塑性樹脂の仕込み体積の割合は53%であった。成形機として、連続プレス成形機を使用した。
得られたプリプレグを破砕機(KS-4040、(株)ホーライ)により50mm×20mm程度に裁断した。この時破砕後のプリプレグの吸水率は0.3wt%であった。この後、円形メッシュサイズが5mmスクリーンを取り付けた粉砕機(ZI-420、(株)ホーライ)に、30kg/hで材料を投入し、合金工具鋼の回転刃3刃及び45°の固定刃より、刃の回転数965min-1で処理し、連続繊維強化樹脂複合材料を得た。
連続繊維強化樹脂複合材料をペレット化する際の最大吐出量は17kg/hであった。
【0085】
[実施例2]
ガラスクロス1の代わりにガラスクロス2に代えたこと以外は実施例1と同様に連続繊維強化樹脂複合材料を作製・評価した。
連続繊維強化樹脂複合材料をペレット化する際の最大吐出量は13kg/hであった。
【0086】
[実施例3]
熱可塑性樹脂フィルムの枚数を18枚にしたこと以外は実施例1と同様に連続繊維強化樹脂複合材料を作製・評価した。
連続繊維強化樹脂複合材料をペレット化する際の最大吐出量は15kg/hであった。
【0087】
[実施例4]
メッシュサイズが19mmのスクリーンを用いたこと以外は実施例1と同様に連続繊維強化樹脂複合材料を作製・評価した。
連続繊維強化樹脂複合材料をペレット化する際の最大吐出量は14kg/hであった。
【0088】
[実施例5]
破砕後のサンプルのサイズを100mm×30mm程度にしたこと以外は実施例1と同様に連続繊維強化樹脂複合材料を作製・評価した。
連続繊維強化樹脂複合材料をペレット化する際の最大吐出量は10kg/hであった。
【0089】
[実施例6]
材料の投入量を70kg/hにしたこと以外は実施例1と同様に連続繊維強化樹脂複合材料を作製・評価した。
連続繊維強化樹脂複合材料をペレット化する際の最大吐出量は14kg/hであった。
【0090】
[実施例7]
刃の回転数を400min-1にしたこと以外は実施例1と同様に連続繊維強化樹脂複合材料を作製・評価した。
連続繊維強化樹脂複合材料をペレット化する際の最大吐出量は13kg/hであった。
【0091】
[実施例8]
プリプレグを真空乾燥し、吸水率を0.05wt%としたこと以外は実施例1と同様に連続繊維強化樹脂複合材料を作製・評価した。
連続繊維強化樹脂複合材料をペレット化する際の最大吐出量は16kg/hであった。
【0092】
[実施例9]
回転刃を1枚としたこと以外は実施例1と同様に連続繊維強化樹脂複合材料を作製・評価した。
連続繊維強化樹脂複合材料をペレット化する際の最大吐出量は9kg/hであった。
【0093】
[比較例1]
メッシュサイズが30mmのスクリーンを用いたこと以外は実施例1と同様に連続繊維強化樹脂複合材料を作製・評価した。
連続繊維強化樹脂複合材料をペレット化する際の最大吐出量は7kg/hであった。
【0094】
[比較例2]
実施例1のプリプレグを最長辺の長さが5mmとなるようにバンドソーにより切削し、連続繊維強化樹脂複合材料を得たこと以外は実施例1と同様に評価を実施した。
連続繊維強化樹脂複合材料をペレット化する際の最大吐出量は2kg/hであった。
【0095】
[比較例3]
プリプレグの代わりにポリアミド66をガラスクロスに含浸したBond Laminate製「Tepex dynalite 101」を用いたこと以外は実施例1と同様に連続繊維強化樹脂複合材料を作製・評価した。
連続繊維強化樹脂複合材料をペレット化する際の最大吐出量は1kg/hであった。
【0096】
【表1】
【0097】
上記表1から、実施例1~9の連続繊維強化樹脂複合材料は、連続繊維強化樹脂複合材料の熱可塑性樹脂や連続強化繊維、添加材等の材料組成や比率、連続繊維強化樹脂複合材料のサイズや形状や吸水率等に合わせて、適切な粉砕工程の条件を設定することで、最長辺の長さが0.1~20mmであり、前記連続強化繊維の延在方向に延びる層間剥離部を表面に有しているため、ペレット化が容易であり、ペレットの繊維樹脂界面の剥離に優れ、ペレットの繊維含有量のばらつきに優れていた。実施例5~9では実施例1から粉砕工程の条件を変更したため、ペレット化の容易さや、ペレットの繊維樹脂界面の剥離、ペレットの繊維含有量のばらつきにおいてやや劣る結果となった。比較例1では層間剥離を有しているものの、粉砕工程での条件が適切ではなく、最長辺の長さが0.1~20mmでなかったため、ペレット化の容易さや、ペレットの繊維樹脂界面の剥離、ペレットの繊維含有量のばらつきにおいて劣る結果となった。比較例2では、粉砕工程を経ていないため、最長辺の長さが0.1~20mmであったものの、層間剥離を有していなかったことから、ペレット化の容易さや、ペレットの繊維樹脂界面の剥離、ペレットの繊維含有量のばらつきにおいて劣る結果となった。比較例3では原料複合材料の組成や比率がリサイクルに適していなかったことから、連続繊維強化樹脂複合材料に層間剥離を有しておらず、ペレット化の容易さや、ペレットの繊維樹脂界面の剥離、ペレットの繊維含有量のばらつきにおいて劣る結果となった。
【符号の説明】
【0098】
1 連続繊維強化樹脂複合材料
2 層間剥離部
21 空隙(層間剥離部)
22 空隙の厚み方向の長さ
23 空隙の厚み直交方向の長さ
24 表面の連続強化繊維の延在方向の辺の2端点を結ぶ線(La)
25 表面の連続強化繊維の延在方向の辺の2端点間の複合材料の表面に沿う線(Lb)
26 連続強化繊維の延在方向に直交する辺の2端点を結ぶ線(La’)
27 表面の連続強化繊維の延在方向に直交する辺の2端点間の複合材料の表面に沿う線(Lb’)
3 最小の円
4 極界面部
41 連続強化繊維
図1
図2
図3
図4
図5