(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149070
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】蒸着システム及び蒸着方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/50 20060101AFI20231005BHJP
C23C 14/04 20060101ALI20231005BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20231005BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231005BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C23C14/50 F
C23C14/04 A
H01L21/68 N
H05B33/14 A
H05B33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057427
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】川崎 博司
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
5F131
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107FF15
3K107GG04
3K107GG28
3K107GG32
3K107GG33
3K107GG42
4K029AA06
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4K029KA09
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA13
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5F131EA03
5F131EA17
5F131EA22
5F131EB32
5F131KB07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マスクを押圧してマスクを全体的に変形させた際に、マスクに割れなどの破損が生じることを抑制する。
【解決手段】蒸着システムは、マスクと、マスクを基板に向けて押す第1プレス機構と、を備える。マスクは、マスク第1面301と、マスク第2面302と、少なくとも1つの第1開口31と、を含む第1層30と、マスク第2面に対向するマスク第3面401と、マスク第4面402と、平面視において第1開口に重なる複数の第2開口41と、を含む第2層40と、を含む。第1プレス機構は、マスク第1面に面する第1基準面721と、マスク第1面に向かう第1移動方向において第1基準面からマスクに向かって突出した第1プレス層73と、を含む第1プレス部材71と、第1プレス層が第1開口に進入して第2層を押すよう第1移動方向において第1プレス部材を移動させる第1移動機構74と、を含む。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基板の前記第2面に蒸着材料を付着させる蒸着システムであって、
前記第2面に面する出射面と、前記出射面の反対側に位置する入射面と、を含むマスクと、
前記マスクを前記基板に向けて押す第1プレス機構と、を備え、
前記マスクは、
前記入射面に位置するマスク第1面と、前記マスク第1面の反対側に位置するマスク第2面と、前記マスク第1面から前記マスク第2面へ貫通する少なくとも1つの第1開口と、を含む第1層と、
前記マスク第2面に対向するマスク第3面と、前記マスク第3面の反対側に位置するマスク第4面と、前記マスク第3面から前記マスク第4面へ貫通し、平面視において前記第1開口に重なる複数の第2開口と、を含む第2層と、を含み、
前記第1プレス機構は、前記マスク第1面に面する第1基準面と、前記マスク第1面に向かう第1移動方向において前記第1基準面から前記マスクに向かって突出した第1プレス層と、を含む第1プレス部材と、前記第1プレス層が前記第1開口に進入して前記第2層を押すよう前記第1移動方向において前記第1プレス部材を移動させる第1移動機構と、を含む、蒸着システム。
【請求項2】
前記第1プレス層の厚みは、前記第1層の厚みよりも大きい、請求項1に記載の蒸着システム。
【請求項3】
前記第1プレス層は、前記第2層を押すプレス面を含み、
前記第1開口の面積に対する前記プレス面の面積の比率が、0.70以上である、請求項1又は2に記載の蒸着システム。
【請求項4】
前記第1層は、シリコンを含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の蒸着システム。
【請求項5】
前記第1層の厚みが300μm以上である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の蒸着システム。
【請求項6】
前記第2層は、樹脂材料を含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の蒸着システム。
【請求項7】
前記第2層は、粒子を含む、請求項6に記載の蒸着システム。
【請求項8】
前記第2層は、粒子を含まない、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の蒸着システム。
【請求項9】
前記第1プレス層は、樹脂材料を含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の蒸着システム。
【請求項10】
前記第1プレス部材は、シリコンを含み、前記第1基準面を構成する第1支持基板を備える、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の蒸着システム。
【請求項11】
前記第1プレス層は、前記第2層を押すプレス面と、前記プレス面に位置する溝と、を含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の蒸着システム。
【請求項12】
前記第1プレス機構は、平面視において1つの前記第1開口に重なる複数の前記第1プレス層を含む、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の蒸着システム。
【請求項13】
前記第1プレス層は、プレス面を含み、
前記プレス面は、前記第2層を押す第1プレス面と、平面視において前記第1プレス面よりも内側に位置し、前記第1プレス面に対して前記第1基準面に近い位置で前記第2層を押す第2プレス面と、を含む、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の蒸着システム。
【請求項14】
前記第1プレス層は、前記第2層を押すプレス面を含み、
前記プレス面は、前記第2層に向かって凸となるよう湾曲している、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の蒸着システム。
【請求項15】
前記基板を前記マスクに向けて押す第2プレス機構を備える、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の蒸着システム。
【請求項16】
前記第2プレス機構は、前記基板の前記第1面に面する第2基準面と、前記第1移動方向において前記第2基準面から前記基板に向かって突出した第2プレス層と、を含む第2プレス部材を備え、
前記第2プレス層は、平面視において前記第1開口に重なる、請求項15に記載の蒸着システム。
【請求項17】
前記第2プレス機構は、前記基板の前記第1面に面する第2基準面と、前記第1移動方向において前記第2基準面から前記基板に向かって突出した第2プレス層と、を含む第2プレス部材を備え、
前記第2プレス層は、平面視において前記第1層の前記マスク第2面に重なる、請求項15に記載の蒸着システム。
【請求項18】
前記第1プレス機構が配置される第1チャンバと、
蒸着源が配置される第2チャンバと、
前記第1チャンバと前記第2チャンバを接続する接続路と、
前記接続路を介して前記基板及び前記マスクを前記第1チャンバから前記第2チャンバへ搬送する搬送機構と、を備える、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の蒸着システム。
【請求項19】
請求項1に記載の蒸着システムを用いて前記基板の前記第2面に蒸着材料を付着させる蒸着方法であって、
前記第1プレス機構が前記マスクを前記基板に向けて押すプレス工程と、
前記マスクの前記第2開口を介して蒸着材料を前記基板に付着させる蒸着工程と、を備える、蒸着方法。
【請求項20】
前記プレス工程の後、前記第1プレス部材を、平面視において前記マスクと重ならない位置へ移動させる工程を備える、請求項19に記載の蒸着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、蒸着システム及び蒸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
精密なパターンを形成するための方法として、蒸着法が知られている。蒸着法においては、まず、開口が形成されたマスクを基板に組み合わせる。続いて、マスクの開口を介して蒸着材料を基板に付着される。これにより、マスクの開口のパターンに対応したパターンで、蒸着材料を含む蒸着層を基板上に形成することができる。蒸着法は、例えば、有機EL表示装置の画素を形成する方法として用いられている。
【0003】
蒸着法は、基板及びマスクが上下方向において重なるように基板及びマスクの端部が保持された状態で実施される。基板及びマスクは、重力に起因して下方へ撓む。撓みが大きくなり、基板とマスクとの間に隙間が生じると、蒸着層の位置が理想位置からずれる。このような課題を解決するため、例えば特許文献1は、マスク押圧部材を用いてマスクを基板に向けて押圧することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マスクを押圧してマスクを全体的に変形させると、マスクに割れなどの破損が生じることがある。
【0006】
本開示の実施形態は、このような課題を効果的に解決し得る蒸着システム及び蒸着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態は、第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基板の前記第2面に蒸着材料を付着させる蒸着システムであって、
前記第2面に面する出射面と、前記出射面の反対側に位置する入射面と、を含むマスクと、
前記マスクを前記基板に向けて押す第1プレス機構と、を備え、
前記マスクは、
前記入射面に位置するマスク第1面と、前記マスク第1面の反対側に位置するマスク第2面と、前記マスク第1面から前記マスク第2面へ貫通する少なくとも1つの第1開口と、を含む第1層と、
前記マスク第2面に対向するマスク第3面と、前記マスク第3面の反対側に位置するマスク第4面と、前記マスク第3面から前記マスク第4面へ貫通し、平面視において前記第1開口に重なる複数の第2開口と、を含む第2層と、を含み、
前記第1プレス機構は、前記マスク第1面に面する第1基準面と、前記マスク第1面に向かう第1移動方向において前記第1基準面から前記マスクに向かって突出した第1プレス層と、を含む第1プレス部材と、前記第1プレス層が前記第1開口に進入して前記第2層を押すよう前記第1移動方向において前記第1プレス部材を移動させる第1移動機構と、を含む、蒸着システムである。
【0008】
本開示の一実施形態による蒸着システムにおいて、前記第1プレス層の厚みは、前記第1層の厚みよりも大きくてもよい。
【0009】
本開示の一実施形態による蒸着システムにおいて、前記第1プレス層は、前記第2層を押すプレス面を含んでもよい。前記第1開口の面積に対する前記プレス面の面積の比率が、0.70以上であってもよい。
【0010】
本開示の一実施形態による蒸着システムにおいて、前記第1層は、シリコンを含んでもよい。
【0011】
本開示の一実施形態による蒸着システムにおいて、前記第1層の厚みが300μm以上であってもよい。
【0012】
本開示の一実施形態による蒸着システムにおいて、前記第2層は、樹脂材料を含んでもよい。
【0013】
本開示の一実施形態による蒸着システムにおいて、前記第2層は、粒子を含んでもよい。
【0014】
本開示の一実施形態による蒸着システムにおいて、前記第2層は、粒子を含まなくてもよい。
【0015】
本開示の一実施形態による蒸着システムにおいて、前記第1プレス層は、樹脂材料を含んでもよい。
【0016】
本開示の一実施形態による蒸着システムにおいて、前記第1プレス部材は、シリコンを含み、前記第1基準面を構成する第1支持基板を備えてもよい。
【0017】
本開示の一実施形態による蒸着システムにおいて、前記第1プレス層は、前記第2層を押すプレス面と、前記プレス面に位置する溝と、を含んでもよい。
【0018】
本開示の一実施形態による蒸着システムにおいて、前記第1プレス機構は、平面視において1つの前記第1開口に重なる複数の前記第1プレス層を含んでもよい。
【0019】
本開示の一実施形態による蒸着システムにおいて、前記第1プレス層は、プレス面を含んでもよく、前記プレス面は、前記第2層を押す第1プレス面と、平面視において前記第1プレス面よりも内側に位置し、前記第1プレス面に対して前記第1基準面に近い位置で前記第2層を押す第2プレス面と、を含んでもよい。
【0020】
本開示の一実施形態による蒸着システムにおいて、前記第1プレス層は、前記第2層を押すプレス面を含んでもよく、前記プレス面は、前記第2層に向かって凸となるよう湾曲していてもよい。
【0021】
本開示の一実施形態による蒸着システムは、前記基板を前記マスクに向けて押す第2プレス機構を備えてもよい。
【0022】
本開示の一実施形態による蒸着システムにおいて、前記第2プレス機構は、前記基板の前記第1面に面する第2基準面と、前記第1移動方向において前記第2基準面から前記基板に向かって突出した第2プレス層と、を含む第2プレス部材を備えてもよい。前記第2プレス層は、平面視において前記第1開口に重なってもよい。
【0023】
本開示の一実施形態による蒸着システムにおいて、前記第2プレス機構は、前記基板の前記第1面に面する第2基準面と、前記第1移動方向において前記第2基準面から前記基板に向かって突出した第2プレス層と、を含む第2プレス部材を備えてもよい。前記第2プレス層は、平面視において前記第1層の前記マスク第2面に重なってもよい。
【0024】
本開示の一実施形態による蒸着システムは、前記第1プレス機構が配置される第1チャンバと、蒸着源が配置される第2チャンバと、前記第1チャンバと前記第2チャンバを接続する接続路と、前記接続路を介して前記基板及び前記マスクを前記第1チャンバから前記第2チャンバへ搬送する搬送機構と、を備えてもよい。
【0025】
本開示の一実施形態は、上記記載の蒸着システムを用いて前記基板の前記第2面に蒸着材料を付着させる蒸着方法であって、
前記第1プレス機構が前記マスクを前記基板に向けて押すプレス工程と、
前記マスクの前記第2開口を介して蒸着材料を前記基板に付着させる蒸着工程と、を備える、蒸着方法である。
【0026】
本開示の一実施形態による蒸着方法は、前記プレス工程の後、前記第1プレス部材を、平面視において前記マスクと重ならない位置へ移動させる工程を備えてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本開示の実施形態によれば、基板とマスクの間に隙間が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図4A】入射面の側から見た場合のマスクの一例を示す平面図である。
【
図4B】入射面の側から見た場合のマスクの一変形例を示す平面図である。
【
図4C】入射面の側から見た場合のマスクの一変形例を示す平面図である。
【
図5】出射面の側から見た場合のマスクの一例を示す平面図である。
【
図6A】
図4AのマスクのVI-VI線に沿った断面図である。
【
図10】プレス面と第1開口の位置関係を示す図である。
【
図11】マスクの製造方法の一例を示す断面図である。
【
図12】マスクの製造方法の一例を示す断面図である。
【
図13】マスクの製造方法の一例を示す断面図である。
【
図14】マスクの製造方法の一例を示す断面図である。
【
図15】マスクの製造方法の一例を示す断面図である。
【
図16】マスクの製造方法の一例を示す断面図である。
【
図25】第2プレス機構の一例を示す断面図である。
【
図26】第2プレス機構の一例を示す断面図である。
【
図27】第1プレス機構の一例を示す断面図である。
【
図28】第1プレス機構の一例を示す断面図である。
【
図29】第1プレス機構の一例を示す断面図である。
【
図30】第1プレス機構の一例を示す断面図である。
【
図31】第1プレス機構の一例を示す断面図である。
【
図40】有機デバイスを備える装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1の実施の形態)
一実施形態に係るマスクの構成及びその製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は本開示の実施形態の一例であって、本開示はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。本明細書において、「板」、「基材」、「シート」、「フィルム」など用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「板」はシートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。「面」とは、対象となる部材を全体的かつ大局的に見た場合において、部材の平面方向と一致する面のことを指す。本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」や「直交」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈する。
【0030】
本明細書において、あるパラメータに関して複数の上限値の候補及び複数の下限値の候補が挙げられている場合、そのパラメータの数値範囲は、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせることによって構成されてもよい。例えば、「パラメータBは、例えばA1以上であり、A2以上であってもよく、A3以上であってもよい。パラメータBは、例えばA4以下であり、A5以下であってもよく、A6以下であってもよい。」と記載されている場合を考える。この場合、パラメータBの数値範囲は、A1以上A4以下であってもよく、A1以上A5以下であってもよく、A1以上A6以下であってもよく、A2以上A4以下であってもよく、A2以上A5以下であってもよく、A2以上A6以下であってもよく、A3以上A4以下であってもよく、A3以上A5以下であってもよく、A3以上A6以下であってもよい。
【0031】
本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0032】
本明細書の一実施形態においては、マスクが、有機EL表示装置を製造する際に有機層又は電極を基板上に形成するために用いられる例について説明する。ただし、マスクの用途が特に限定されることはなく、種々の用途に用いられるマスクに対し、本実施形態を適用することができる。例えば、仮想現実いわゆるVRや拡張現実いわゆるARを表現するための画像や映像を表示又は投影するための装置の有機層、電極などの層を形成するために、本実施形態のマスクを用いてもよい。また、液晶表示装置の電極などの、有機EL表示装置以外の表示装置の層を形成するために、本実施形態のマスクを用いてもよい。また、圧力センサの有機層、電極などの、表示装置以外の有機デバイスの層を形成するために、本実施形態のマスクを用いてもよい。
【0033】
有機デバイス100について説明する。
図1は、有機デバイス100の一例を示す断面図である。
【0034】
有機デバイス100は、基板110と、基板110の面内方向に沿って並ぶ複数の素子115と、を含む。基板110は、第1面111及び第1面111の反対側に位置する第2面112を含む。素子115は、第1面111に位置している。素子115は、例えば画素である。基板110は、2以上の種類の素子115を含んでいてもよい。例えば、基板110は、第1素子115A及び第2素子115Bを含んでいてもよい。図示はしないが、基板110は、第3素子を含んでいてもよい。第1素子115A、第2素子115B及び第3素子は、例えば、赤色画素、青色画素及び緑色画素である。
【0035】
素子115は、第1電極120と、第1電極120上に位置する有機層130と、有機層130上に位置する第2電極140と、を有していてもよい。有機層130は、マスクを用いる蒸着工程によって形成される。
【0036】
有機デバイス100は、絶縁層160を備えていてもよい。絶縁層160は、平面視において隣り合う2つの第1電極120の間に位置する。絶縁層160は、例えばポリイミドを含んでいる。絶縁層160は、第1電極120の端部に重なっていてもよい。「平面視」とは、基板110などの板状の部材の面の法線方向に沿って対象を見ることを意味する。
【0037】
基板110は、絶縁性を有する部材であってもよい。基板110の材料は、リジッド材であってもよく、フレキシブル材であってもよい。リジッド材は、例えば、シリコン、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の、可撓性に乏しい材料である。フレキシブル材は、例えば、樹脂フィルム、光学用樹脂板、薄ガラス等の、可撓性を有する材料である。基板110は、半導体製造で用いられるシリコンウエハと同様の平面形状を有していてもよい。この場合、半導体製造工程を実施する装置を用いて基板110を処理することができる。例えば、半導体製造工程を実施する装置を用いて基板110に第1電極120、絶縁層160などを形成できる。
【0038】
素子115は、第1電極120と第2電極140との間に電圧が印加されることにより、又は、第1電極120と第2電極140との間に電流が流れることにより、何らかの機能を実現するよう構成されている。例えば、素子115が、有機EL表示装置の画素である場合、素子115は、映像を構成する光を放出することができる。
【0039】
第1電極120は、導電性を有する材料を含む。例えば、第1電極120は、金属、導電性を有する金属酸化物や、その他の導電性を有する無機材料などを含む。第1電極120は、インジウム・スズ酸化物などの、透明性及び導電性を有する金属酸化物を含んでいてもよい。
【0040】
有機層130は、有機材料を含む。有機層130が通電されると、有機層130は、何らかの機能を発揮することができる。通電とは、有機層130に電圧が印加されること、又は有機層130に電流が流れることを意味する。有機層130としては、通電により光を放出する発光層、通電により光の透過率や屈折率が変化する層などを用いることができる。有機層130は、有機半導体材料を含んでいてもよい。
【0041】
図1に示すように、有機層130は、第1有機層130A及び第2有機層130Bを含んでいてもよい。第1有機層130Aは、第1素子115Aに含まれる。第2有機層130Bは、第2素子115Bに含まれる。図示はしないが、有機層130は、第3素子に含まれる第3有機層を含んでいてもよい。第1有機層130A、第2有機層130B及び第3有機層は、例えば、赤色発光層、青色発光層及び緑色発光層である。
【0042】
第1電極120と第2電極140との間に電圧を印加すると、両者の間に位置する有機層130が駆動される。有機層130が発光層である場合、有機層130から光が放出され、光が第2電極140側又は第1電極120側から外部へ取り出される。
【0043】
有機層130は、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層などを更に含んでいてもよい。
【0044】
第2電極140は、金属などの、導電性を有する材料を含んでいてもよい。第2電極140の材料としては、例えば、白金、金、銀、銅、鉄、錫、クロム、アルミニウム、インジウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、クロム、炭素等及びこれらの合金を用いることができる。
図1に示すように、第2電極140は、平面視において隣り合う2つの有機層130に跨るように広がっていてもよい。
【0045】
次に、有機層130を蒸着法によって基板110に形成する方法について説明する。
図2は、蒸着システム1の一例を示す図である。蒸着システム1は、プレス装置10及び蒸着装置15を備える。蒸着装置15は、基板110に蒸着材料を蒸着させる蒸着工程を、マスク20を用いて実施する。プレス装置10は、マスク20を基板110に向けて押すプレス工程を、蒸着工程の前に実施する。
図2において矢印で示すように、蒸着システム1は、プレス装置10においてプレス工程を実施した後、マスク20を蒸着装置15に搬送する。
【0046】
蒸着システム1は、マスク20をプレス装置10から蒸着装置15へ搬送する搬送機構17を備えてもよい。搬送機構17は、第2移動方向F2においてマスク20を搬送する。第2移動方向F2は、例えば水平方向である。搬送機構17は、水平方向において移動又は伸縮するアームを含んでもよい。搬送機構17は、蒸着装置15に位置していてもよく、プレス装置10に位置していてもよい。
【0047】
プレス装置10は、第1チャンバ11を含んでもよい。蒸着装置15は、第2チャンバ16を含んでもよい。蒸着システム1は、第1チャンバ11と第2チャンバ16を接続する接続路2を備えてもよい。蒸着システム1は、第2チャンバ16から第1チャンバ11を遮断するシャッター3を備えてもよい。シャッター3は、接続路2に位置していてもよい。
【0048】
図3は、蒸着装置15の一例を示す図である。蒸着装置15は、その内部に、蒸着源6、ヒータ8、及びマスク20を備えていてもよい。蒸着装置15は、蒸着装置15の内部を真空雰囲気にするための排気手段を更に備えていてもよい。蒸着源6は、例えばるつぼである。蒸着源6は、有機材料、金属材料などの蒸着材料7を収容する。ヒータ8は、蒸着源6を加熱して、真空雰囲気の下で蒸着材料7を蒸発させる。
【0049】
マスク20は、入射面201、出射面202及び第2開口41を含む。入射面201は、蒸着源6と対向している。出射面202は、入射面201の反対側に位置する。出射面202は、基板110の第1面111と対向している。出射面202からマスク20に入った蒸着材料7の一部は、第2開口41を通過して出射面202から出る。出射面202から出た蒸着材料7は、基板110の第1面111に付着する。マスク20の出射面202は、基板110の第1面111に接していてもよい。
【0050】
次に、マスク20について詳細に説明する。
図4Aは、入射面201の側から見た場合のマスク20の一例を示す平面図である。
図5は、出射面202の側から見た場合のマスク20の一例を示す平面図である。
図6Aは、
図4Aのマスク20のVI-VI線に沿った断面図である。
【0051】
図6Aに示すように、マスク20は、入射面201から出射面202に向かって順に並ぶ第1層30及び第2層40を備える。第1層30は、シリコン又はシリコン化合物を含んでもよい。シリコン化合物は、例えばシリコンカーバイド(SiC)である。第2層40は、樹脂材料を含んでもよい。マスク20は、第1層30と第2層40の間に位置する中間層50を備えてもよい。以下、各層について説明する。
【0052】
第1層30は、マスク第1面301、マスク第2面302、第1開口31及び第1壁面32を含む。マスク第1面301は、入射面201に位置する。マスク第1面301が入射面201を構成していてもよい。マスク第2面302は、マスク第1面301の反対側に位置している。
【0053】
第1開口31は、マスク第1面301からマスク第2面302へ貫通している。
図4Aに示すように、第1層30は、複数の第1開口31を含んでいてもよい。複数の第1開口31は、第1方向D1及び第2方向D2に並んでいてもよい。第2方向D2は、第1方向D1に直交していてもよい。
【0054】
第1開口31は、有機EL表示装置の1つの画面に対応していてもよい。
図4Aに示すマスク20は、複数の画面に対応する有機層のパターンを同時に基板110に形成することができる。
図4Aに示すように、第1開口31は、平面視において矩形の輪郭を有していてもよい。平面視は、例えば、マスク第1面301の法線方向に沿って対象を見ることを意味する。
【0055】
図4B及び
図4Cはそれぞれ、マスク20のその他の例を示す平面図である。
図4Bに示すように、第1開口31の輪郭の角部は曲線を含んでいてもよい。
図4Cに示すように、第1開口31の輪郭は八角形であってもよい。
図4B及び
図4Cに示す例によれば、第1開口31の輪郭に応力が加わる場合に、応力が角部に集中することを抑制できる。このため、第1層30が破損することを抑制できる。
【0056】
第1壁面32は、第1開口31に面する第1層30の面である。
図6Aに示す例において、第1壁面32は、マスク第1面301の法線方向D3に沿って広がっている。
【0057】
図4Aに示すように、第1開口31が形成されていない第1層30の領域は、外側領域35及び内側領域36に区画されてもよい。内側領域36は、平面視において隣り合う2つの第1開口31の間に位置する領域である。外側領域35は、平面視において、第1層30の外縁303と第1開口31との間に位置する領域である。
図4Aに示すように、内側領域36は、第1方向D1及び第2方向D2に延びていてもよい。
【0058】
図4A及び
図5に示すように、第1層30は、アライメントマーク39を含んでいてもよい。アライメントマーク39は、例えばマスク第2面302に形成されている。アライメントマーク39は、マスク第1面301に形成されていてもよい。アライメントマーク39は、例えば、マスク20に対する基板110の相対的な位置を調整するために利用される。基板110が可視光を透過させる性質を有する場合、基板110を介しアライメントマーク39を視認できる。
【0059】
図4A及び
図5に示すように、アライメントマーク39は、平面視において十字形の輪郭を有していてもよい。図示はしないが、アライメントマーク39は、矩形や円形など、十字形以外の輪郭を有していてもよい。アライメントマーク39は、外側領域35に位置していてもよく、内側領域36に位置していてもよい。アライメントマーク39は、平面視における第1層30の中心点を通る直線に重なるように配置されていてもよい。シリコン
図4Aの例において、アライメントマーク39は、第1方向D1に延びる中心線D1に重なっている。第1層30がシリコンウエハである場合、中心点は、シリコンウエハの輪郭に重なる円の中心点であってもよい。
【0060】
断面図におけるアライメントマーク39の形状は任意である。
例えば、アライメントマーク39は、マスク第1面301又はマスク第2面302に位置する凹部を含んでいてもよい。アライメントマーク39は、マスク第1面301からマスク第2面302に貫通する孔を含んでいてもよい。凹部及び孔は、マスク第1面301又はマスク第2面302をエッチングすることによって形成されてもよい。凹部及び孔は、マスク第1面301又はマスク第2面302にレーザを照射することによって形成されてもよい。
例えば、アライメントマーク39は、マスク第1面301又はマスク第2面302の上に位置する層を含んでいてもよい。層は、第1層30とは異なる材料によって形成されている。マスク第2面302の上に層が形成される場合、第2層40及び中間層50は、層に重なる貫通孔を含んでいてもよい。これにより、アライメントマーク39の視認性を高めることができる。
アライメントマーク39は、第1層30以外の層に形成されていてもよい。
【0061】
第1層30は、例えば、シリコンウエハを加工することによって作製される。
図3Aに示すように、第1層30の外縁303は、直線状の部分を含んでいてもよい。直線状の部分は、オリエンテーションフラットとも称される。図示はしないが、外縁303には切り欠きが形成されていてもよい。切り欠きは、ノッチとも称される。オリエンテーションフラット及びノッチは、シリコンウエハの結晶方位を表す。
【0062】
平面視における第1層30の最大の寸法S1は、例えば100mm以上であり、150mm以上であってもよく、200mm以上であってもよい。寸法S1は、例えば500mm以下であり、400mm以下であってもよく、300mm以下であってもよい。
【0063】
第1開口31が並ぶ方向における第1開口31の寸法S2は、例えば5mm以上であり、10mm以上であってもよく、20mm以上であってもよい。寸法S2は、例えば100mm以下であり、50mm以下であってもよく、30mm以下であってもよい。
【0064】
第1開口31が並ぶ方向における2つの第1開口31の間の間隔S3は、例えば0.1mm以上であり、0.5mm以上であってもよく、1.0mm以上であってもよい。間隔S3は、例えば20mm以下であり、15mm以下であってもよく、10mm以下であってもよい。
【0065】
第1層30の厚みは、外側領域35の最大の厚みT1として定義される。厚みT1は、例えば50μm以上であり、100μm以上であってもよく、200μm以上であってもよく、300μm以上であってもよい。厚みT1は、例えば1000μm以下であり、800μm以下であってもよく、600μm以下であってもよい。
【0066】
次に、第2層40について説明する。第2層40は、マスク第3面401、マスク第4面402、及び複数の第2開口41を含む。マスク第3面401は、第1層30のマスク第2面302に対向している。マスク第4面402は、マスク第3面401の反対側に位置している。
【0067】
第2開口41は、マスク第3面401からマスク第4面402へ貫通している。1つの第2開口41が、1つの有機層130に対応している。規則的に並ぶ複数の第2開口41の一群が、有機EL表示装置の1つの画面に対応している。
図4A及び
図5に示すように、規則的に並ぶ複数の第2開口41の一群が、平面視において1つの第1開口31に重なっていてもよい。第2開口41の複数の群が、シリコンウエハなどの1枚の部材を加工することによって形成された第1層30によって支持されている。
【0068】
第2層40は、周縁領域43及び有効領域44に区画されてもよい。周縁領域43は、平面視において第1層30に重なる領域である。有効領域44は、規則的に並ぶ複数の第2開口41の一群が分布している領域である。
【0069】
図6Bは、有効領域44の一例を示す断面図である。第2層40は、第2開口41に面する第2壁面42を含む。
図6Bに示すように、第2壁面42は、マスク第3面401に向かうにつれて第2開口41の中心から離れるように広がるテーパ面42aを含んでいてもよい。第2壁面42がテーパ面42aを含むことにより、第2壁面42の近傍においてシャドウが生じることを抑制できる。シャドウとは、第2開口41の壁面の近傍に形成される蒸着層の厚みが、第2開口41の中心に形成される蒸着層の厚みよりも小さくなる現象である。シャドウは、蒸着材料7がマスク20の壁面に付着すること、蒸着材料7がマスク20と基板110との間の隙間に入り込むこと、などに起因して生じる。
【0070】
図6Bにおいて、符号S8は、第2開口41が並ぶ方向におけるテーパ面42aの幅を表す。幅S8は、例えば0.2μm以上であり、0.5μm以上であってもよく、1.0μm以上であってもよい。幅S7は、例えば25μm以下であり、20μm以下であってもよく、10μm以下であってもよい。
【0071】
図6Bにおいて、符号θ1は、第2壁面42とマスク第4面402とが成す角度を表す。角度θ1は、例えば50°以上であり、55°以上であってもよく、60°以上であってもよい。角度θ1は、例えば90°未満であり、85°以下であってもよく、80°以下であってもよい。
【0072】
第2層40の樹脂材料は、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セロファン、アイオノマー等である。第2層40は、単一の樹脂層によって構成されっていてもよく、複数の樹脂層を含んでいてもよい。
【0073】
第2層40の厚みは、第1層30の厚みT1よりも小さい。第2層40の厚みは、例えば25μm以下であり、10μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。これにより、シャドウの発生を抑制できる。第2層40の厚みは、例えば0.5μm以上であり、1.0μm以上であってもよく、2.0μm以上であってもよい。これにより、ピンホール等の欠陥や変形等が第2層40に生じることを抑制できる。
【0074】
平面視における第2開口41の寸法S4は、例えば1μm以上であり、2μm以上であってもよく、3μm以上であってもよい。寸法S4は、例えば25μm以下であり、10μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。
【0075】
第2開口41が並ぶ方向における2つの第2開口41の間の間隔S5は、例えば1μm以上であり、2μm以上であってもよく、3μm以上であってもよい。寸法S4は、例えば25μm以下であり、10μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。
【0076】
平面視における第1壁面32と第2開口41との間の間隔S6は、間隔S5よりも大きくてもよい。これにより、第1壁面32に近接する第2開口41においてシャドウが生じることを抑制できる。
【0077】
第2層40は、アライメントマークを含んでいてもよい。第2層40のアライメントマークは、第1層30のアライメントマーク39とは別に形成されていてもよく、第1層30のアライメントマーク39の替わりに形成されていてもよい。
【0078】
第2層40のアライメントマークは、マスク第3面401又はマスク第4面402に位置する凹部を含んでいてもよい。第2層40のアライメントマークは、マスク第3面401からマスク第4面402に貫通する孔を含んでいてもよい。凹部及び孔は、マスク第3面401又はマスク第4面402をエッチングすることによって形成されてもよい。凹部及び孔は、マスク第3面401又はマスク第4面402にレーザを照射することによって形成されてもよい。
【0079】
図7は、第2層40の構成の一例を示す断面図である。第2層40は、樹脂材料45を含むコーティング材料を第1層30上に塗布することによって形成されてもよい。
【0080】
第2層40の材料を第1層30上にコーティングした後、第2層40を加熱する加熱工程を実施してもよい。これにより、第2層40を固化させることができる。例えば、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を含むコーティング材料を第1層30上にコーティングした後、加熱工程を実施することにより、イミド化反応を生じさせることができる。これにより、ポリイミドを含む第2層40を形成できる。加熱工程の温度は、例えば200℃以上であり、300℃以上であってもよい。加熱工程の温度は、例えば500℃以下であり、400℃以下であってもよい。加熱工程の時間は、例えば10分以上であり、20分以上であってもよい。加熱工程の時間は、例えば200分以下であり、100分以下であってもよい。
【0081】
第2層40のマスク第4面402上には離型層が形成されていてもよい。離型層は、離型剤を含む。離型層を形成することにより、マスク20が基板110から分離されやすくなる。
【0082】
次に、中間層50について説明する。中間層50は、第1層30又は第2層40に対する何らかの機能を果たす層を含む。例えば中間層50は、第1中間層51を含む。
図6Aに示す例において、第1中間層51は、第1層30と第2層40との間に位置している。
【0083】
第1中間層51は、エッチングによって第1層30を加工する工程において、エッチングをストップさせるストッパ層として機能してもよい。具体的には、第1中間層51は、第1層30をエッチングするエッチャントに対する耐性を有する。第1中間層51は、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、又は酸化シリコンを含む。
【0084】
第1中間層51の厚みは、第2層40の厚みよりも小さくてもよい。第1中間層51の厚みは、例えば5nm以上であり、50nm以上であってもよく、75nm以上であってもよい。第1中間層51の厚みは、例えば5μm以下であり、1μm以下であってもよく、150nm以下であってもよい。第1層30用のエッチャントに対する第1中間層51の耐性が高いほど、第1中間層51の厚みを小さくできる。第1中間層51の厚みが1μm以下であることが特に好ましい。
【0085】
中間層50は、第1層30と第2層40とを接合する機能を果たす層を含んでいてもよい。例えば第1中間層51は、接着剤を含む接合層であってもよい。接合層の厚みは、例えば0.1μm以上であり、0.2μm以上であってもよく、0.5μm以上であってもよい。接合層の厚みは、例えば3μm以下であり、2μm以下であってもよく、1μm以下であってもよい。
【0086】
好ましくは、中間層50は、平面視において第2開口41に重ならないよう位置している。これにより、中間層50に起因するシャドウが生じることを抑制できる。
【0087】
第1中間層51は、アライメントマークを含んでいてもよい。第1中間層51のアライメントマークは、第1層30又は第2層40のアライメントマークとは別に形成されていてもよく、第1層30又は第2層40のアライメントマークの替わりに形成されていてもよい。
【0088】
各層の厚み、各構成要素の寸法、間隔などは、走査型電子顕微鏡を用いてマスク20の断面の画像を観察することによって測定できる。
【0089】
次に、プレス装置10について説明する。
図8は、プレス装置10の一例を示す図である。プレス装置10は、第1プレス部材71及び第1移動機構74を含む。第1移動機構74は、例えば、第1プレス部材71を下方から支持するアームを含む。第1移動機構74は、マスク20に向かう第1移動方向F1において第1プレス部材71を移動させる。第1移動方向F1は、マスク第1面301の法線方向D3であってもよい。第1移動機構74が第1プレス部材71を移動させることにより、第1プレス部材71がマスク20を基板110に向けて押すことができる。
【0090】
図9は、マスク20に接触している状態の第1プレス部材71を示す断面図である。第1プレス部材71は、第1基準面721と、第1基準面721からマスク20に向かって突出した第1プレス層73と、を含む。例えば、第1プレス部材71は、第1基準面721を含む第1支持基板72を備える。第1基準面721は、マスク第1面301に面している。第1プレス層73は、平面視において第1開口31に重なっている。第1プレス層73は、平面視においてマスク第1面301に重なっていなくてもよい。第1移動機構74は、第1プレス層73が第1開口31に進入して第2層40を押すよう第1移動方向F1において第1プレス部材71を移動させる
【0091】
第1支持基板72は、第1移動方向F1において下方から第1プレス層73を支持する。第1支持基板72の材料は、リジッド材であってもよい。例えば、第1支持基板72は、シリコン、石英ガラス、金属などを含んでもよい。これにより、第1支持基板72が重力に起因して撓むことを抑制できる。このため、第1移動方向F1における第1プレス層73の位置を精密に調整できる。これにより、第1プレス層73がマスク20を押す量を精密に調整できる。
【0092】
第1支持基板72の厚みT4は、例えば50μm以上であり、100μm以上であってもよく、200μm以上であってもよい。厚みT4は、例えば1000μm以下であり、800μm以下であってもよく、600μm以下であってもよい。
【0093】
第1プレス層73は、第2層40を押すプレス面731を含む。
図9に示すように、プレス面731は、第2層40に接触してもよい。図示はしないが、プレス面731は、他の層を介して第2層40を押してもよい。例えば、第2層40のマスク第3面401上に中間層50が位置している場合、プレス面731は、中間層50に接触してもよい。プレス面731を中間層50に接触して中間層50を上方へ押すことにより、第2層40が上方へ押される。
【0094】
第1プレス層73は、樹脂材料を含んでもよい。これにより、第1プレス層73との接触に起因してマスク20が傷つくことを抑制できる。例えば、第2層40が傷つくことを抑制できる。
【0095】
第1プレス層73の樹脂材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリエチレンテレフタラート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、フェノール(PF)、ユリア樹脂(UF)、メラミン(MF)、エポキシ、カゼイン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等である。第1プレス層73は、単一の樹脂層によって構成されっていてもよく、複数の樹脂層を含んでいてもよい。
【0096】
第1プレス層73は、粒子を含んでいてもよい。粒子は、プレス面731に現れていてもよい。第1プレス層73が粒子を含むことにより、第1プレス層73がマスク20を押した後、第1プレス層73をマスク20から分離させやすくなる。第1プレス層73の粒子は、例えば、カーボンブラック、シリカなどの無機材料を含む。粒子は、磁性材料からなる磁性粒子であってもよい。粒子46は、金の微粒子からなる金ナノ粒子であってもよい。
【0097】
第1プレス層73が磁性粒子を含む場合、磁力を利用して基板110とマスク20との間の隙間を低減してもよい。例えば、基板110の第2面112側に、磁性を有する部材を配置してもよい。例えば、第2面112上に板を配置し、板の上に磁石を配置してもよい。
図9に示すように第1プレス層73が第1開口31に位置している時、第1プレス層73が、基板110に向かう方向へ磁力によって引き寄せられる。若しくは、基板110の第2面112側に位置する磁性部材が、マスク20に向かう方向へ磁力によって引き寄せられる。これにより、基板110とマスク20との間の隙間を低減できる。
【0098】
第1プレス層73のプレス面731上には離型層が形成されていてもよい。離型層は、離型剤を含む。離型層を形成することにより、第1プレス層73をマスク20から分離させやすくなる。
【0099】
第1プレス層73の厚みT5は、第1層30の厚みT1よりも大きくてもよい。これにより、プレス面731が第2層40を押圧しているときに第1基準面721が第1層30に接触することを抑制できる。すなわち、プレス面731が第2層40を押圧しているときに、第1層30と第1基準面721との間に隙間を形成できる。これにより、第1層30に割れなどの破損が生じることを抑制できる。隙間の寸法S9は、例えば50μm以上であり、100μm以上であってもよく、200μm以上以下であってもよい。
【0100】
一方、第1層30と第1基準面721との間の隙間の寸法S9が大きすぎると、第1プレス層73のアスペクト比が大きくなり、第1プレス層73の形状が不安定になることが考えられる。この点を考慮し、寸法S9は、第1層30の厚みT1よりも小さくてもよい。例えば、寸法S9は、厚みT1の0.9倍以下であってもよく、厚みT1の0.7倍以下であってもよく、厚みT1の0.5倍以下であってもよい。第1プレス層73のアスペクト比は、寸法T6に対する厚みT5の比率である。寸法T6は、第1基準面721の面方向における第1プレス層73の寸法の最小値である。
【0101】
図9に示すように、プレス面731が第2層40を押しているときに、第1開口31の第1壁面32と第1プレス層73との間に隙間が形成されるよう、第1プレス層73の寸法T6が決定されていてもよい。第1壁面32と第1プレス層73との間の隙間の寸法S10は、例えば0.1mm以上であり、0.2mm以上であってもよく、0.3mm以上であってもよい。寸法S10は、例えば2.0mm以下であり、1.0mm以下であってもよく、0.8mm以下であってもよい。寸法S10は、マスク第1面301の位置で測定されてもよい。
【0102】
図10は、マスク20の平面図に、マスク20を押しているときのプレス面731の輪郭を追加したものである。
図10は、プレス面731と第1開口31の位置関係を示すことができる。1つの第1開口31に進入するプレス面731の面積SA2は、1つの第1開口31の平面視における面積SA1よりも小さい。1つの第1開口31に位置する第2層40を全体的に基板110に接触させるためには、面積SA1に対する面積SA2の比率が一定値以上であることが好ましい。面積SA1に対する面積SA2の比率は、例えば0.70以上であり、0.75以上であってもよく、0.80以上であってもよい。一方、面積SA1に対する面積SA2の比率が高すぎると、隙間の寸法S10が小さくなり、第1開口31に対する第1プレス層73の位置合わせの難易度が高くなる。この点を考慮し、面積SA1に対する面積SA2の比率は、例えば0.95以下であり、0.92以下であってもよく、0.90以下であってもよい。
【0103】
第2層40が基板110に対する高い密着性を有する場合、面積SA1に対する面積SA2の比率は、上述の数値よりも小さくてもよい。例えば、第2層40が樹脂材料を含むが粒子46を含まない場合、第2層40の一部が基板110に接すると、第2層40のその他の部分も自発的に基板110に引き寄せられることがある。この場合、面積SA1に対する面積SA2の比率は、例えば0.10以上0.50以下であってもよい。
【0104】
図10に示すように、全ての第1開口31において第1プレス層73が第2層40を押すよう、第1プレス部材71が構成されていてもよい。図示はしないが、第1プレス層73が進入しない第1開口31があってもよい。例えば、第2層40の撓みが生じにくい位置にある第1開口31には第1プレス層73が進入しなくてもよい。
【0105】
(蒸着マスクの製造方法)
次に、本実施の形態による蒸着マスクの製造方法について、
図11乃至
図16を参照して説明する。まず、第1層30を準備する。第1層30として、シリコンウエハを用いてもよい。第1層30のマスク第1面301及びマスク第2面302は、鏡面状に研磨されていてもよい。マスク第1面301及びマスク第2面302の算術平均粗さRaは、1.5nm以下であってもよく、1.0nm以下であってもよい。マスク第1面301及びマスク第2面302の面方位は、(100)、(110)などであってもよい。
【0106】
続いて、
図11に示すように、第1層30のマスク第2面302上に中間層50を形成する。中間層50は、例えば第1中間層51を含む。中間層50は、マスク第2面302の全体に形成されてもよい。中間層50は、例えば、スパッタリング法などの真空成膜法によって形成されてもよい。
【0107】
続いて、
図12に示すように、中間層50上に第2層40を形成する。これによって、第1層30、中間層50及び第2層40を備える積層体22を得ることができる。第2層40は、中間層50の全体に形成されてもよい。第2層40は、例えば、スピンコート法などのコーティング法によって形成されてもよい。
【0108】
第2層40の材料を中間層50上にコーティングした後、第2層40を加熱する加熱工程を実施してもよい。これにより、第2層40を固化させることができる。例えば、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を中間層50上にコーティングした後、加熱工程を実施することにより、イミド化反応を生じさせることができる。これにより、ポリイミドを含む第2層40を形成できる。加熱工程の温度は、例えば200℃以上であり、300℃以上であってもよい。加熱工程の温度は、例えば500℃以下であり、400℃以下であってもよい。加熱工程の時間は、例えば10分以上であり、20分以上であってもよい。加熱工程の時間は、例えば200分以下であり、100分以下であってもよい。
【0109】
図示はしないが、第2層40を押圧する押圧工程を実施してもよい。例えば、第1層30とは別のシリコンウエハ、ガラスウエハなどの基板の面を第2層40に押し付けてもよい。基板の面が第2層40のマスク第4面402よりも平坦である場合、押圧工程によってマスク第4面402の平坦性を高めることができる。基板の面は、凹凸パターンを含んでいてもよい。この場合、押圧工程によってマスク第4面402に凹凸パターンを付与できる。押圧工程は、第2層40を加熱する工程の前に実施されてもよい。
【0110】
図示はしないが、積層体22は、第2層40のマスク第4面402上に位置する保護層を備えていてもよい。保護層は、例えば、第1中間層51の材料と同一の材料を含む。マスク第4面402に保護層を形成することにより、後述する第1加工工程においてマスク第4面402がエッチングされることを抑制できる。保護層は、第1中間層51と同時に除去されてもよい。
【0111】
続いて、
図13に示すように、第1層30のマスク第1面301上に部分的にレジスト層38を形成するレジスト形成工程を実施する。レジスト層38には、第1開口31に対向するレジスト開口381が形成されている。
【0112】
レジスト層38は、フォトレジストであってもよい。この場合、まず、マスク第1面301上に液状のレジスト材をコーティングすることによって、マスク第1面301上にレジスト層38を形成する。コーティングの後、レジスト層38を加熱する工程を実施してもよい。続いて、レジスト層38を露光及び現像するフォトリソグラフィ処理を実施する。これによって、レジスト層38にレジスト開口381を形成できる。
【0113】
図示はしないが、レジスト層38は、マスク第1面301に部分的に形成されたシリコン酸化膜であってもよい。シリコン酸化膜は、例えば、マスク第1面301に部分的に熱酸化処理などを実施することによって形成される。シリコン酸化膜は、中間層50及び第2層40を第1層30に積層する前に第1層30に形成されていてもよい。
【0114】
続いて、
図14に示すように、マスク第1面301側から第1層30をエッチングすることによって、第1層30に第1開口31を形成する第1加工工程を実施する。第1加工工程におけるエッチングは、エッチングガスを用いたドライエッチングであってもよい。エッチングガスは、上述のエッチャントの一例である。中間層50がエッチャントに対する耐性を有するので、
図14に示すように、エッチングが第2層40まで進行することを抑制できる。
【0115】
続いて、レジスト層38を除去するレジスト除去工程を実施してもよい。例えば、レジスト処理液をマスク第1面301に供給する。
レジスト層38がフォトレジストである場合、レジスト処理液は、例えばN-メチル-2-ピロリドンを含む。酸素プラズマをレジスト層38に照射することによってレジスト層38を除去してもよい。
レジスト層38がシリコン酸化膜である場合、レジスト処理液は、例えばフッ酸を含む。CF4ガスなどを用いるドライエッチングによってレジスト層38を除去してもよい。
【0116】
第1加工工程の後、中間層50を除去する中間層除去工程を実施してもよい。例えば、中間層50用のエッチャントを第1開口31に供給する。これにより、
図15に示すように、平面視において第1開口31に重なる中間層50を除去することができる。中間層50のエッチングは、フッ素系ガスなどを用いるドライエッチングであってもよく、酸性のエッチング液を用いるウェットエッチングであってもよい。レジスト除去工程及び中間層除去工程の順序は特には限定されない。レジスト除去工程及び中間層除去工程が同時に実施されてもよい。
【0117】
続いて、第2層40に複数の第2開口41を形成する第2加工工程を実施する。例えば
図16に示すように、マスク第3面401側から第2層40にレーザLを照射する。これによって、第2層40に第2開口41を形成できる。レーザLとしては、波長248nmのKrFのエキシマレーザ、波長355nmのYAGレーザなどを使用できる。
【0118】
第2加工工程は、第2層40のマスク第4面402に保護フィルム又は保護膜が形成されている状態で実施されてもよい。
保護フィルムは、マスク第4面402に貼り付けられる部材である。保護フィルムは、例えば、樹脂フィルム及び接着層を含む。接着層がマスク第4面402に接するよう、保護フィルムがマスク第4面402に貼り付けられる。接着層は、粘着層であってもよく、吸着層であってもよい。
保護膜は、樹脂を含む液をマスク第4面402上に塗布することにより形成される。塗布方法は、例えばバーコート法、スピンコート法、スプレーコート法などである。
保護フィルム又は保護膜は、第2加工工程が終了した後に除去されてもよい。
好ましくは、レーザに対する保護フィルム又は保護膜の反応性が、レーザに対する第2層40よりも低い。反応性とは、レーザによって保護フィルム又は保護膜若しくは第2層40が加工される速度である。
【0119】
第2加工工程においては、まず、マスク第4面402がステージ面に対向するように積層体22をステージに載せる。続いて、積層体22に対する照射ヘッドの位置を調整する。位置を調整する工程においては、照射ヘッドを移動させてもよく、ステージを移動させてもよい。レーザの照射及び位置の調整を繰り返し実施することにより、第2層40に複数の第2開口41を形成できる。このようにして、
図6Aに示すマスク20を得ることができる。
【0120】
若しくは、複数の第2開口41のパターンに対応したレーザ用マスクを用いてもよい。この場合、レーザ用マスクと第2層40との間に集光レンズを設置してもよい。縮小投影光学系を用いたレーザ加工法によって、複数の第2開口41を形成できる。
【0121】
図示はしないが、レーザ以外の手段を用いて第2層40に第2開口41を形成してもよい。例えば、フォトリソグラフィ法によって第2層40に第2開口41を形成してもよい。この場合、第2層40は、感光性を有する樹脂材料を含む。
【0122】
次に、有機デバイス100を製造する方法の一例について説明する。
【0123】
まず、第1電極120が形成されている基板110を準備する。基板110は、シリコンウエハであってもよい。第1電極120は、例えば、第1電極120を構成する導電層を真空成膜法などによって基板110に形成した後、フォトリソグラフィ法などによって導電層をパターニングすることによって形成されてもよい。導電層のパターニングは、半導体製造工程を実施する装置を用いて実施されてもよい。隣り合う2つの第1電極120の間に位置する絶縁層160が基板110に形成されていてもよい。
【0124】
続いて、第1有機層130A、第2有機層130Bなどを含む有機層130を第1電極120上に形成する。例えば、まず、第1のマスク20を含む蒸着システム1を用いる蒸着方法によって第1有機層130Aを形成する。第1のマスク20は、第1有機層130Aに対応する第2開口41を備える。続いて、第2のマスク20を含む蒸着システム1を用いる蒸着方法によって第2有機層130Bを形成する。第2のマスク20は、第2有機層130Bに対応する第2開口41を備える。続いて、第3のマスク20を含む蒸着システム1を用いる蒸着方法によって第3有機層を形成する。第3のマスク20は、第3有機層に対応する第2開口41を備える。
【0125】
蒸着システム1を用いる蒸着方法の一例を、
図17乃至
図20を参照して説明する。
【0126】
図17に示すように、プレス装置10の第1チャンバ11にマスク20を配置する。マスク20は、例えばマスクホルダ5Aによって保持されている。続いて、基板110の第1面111がマスク20の出射面202に面するよう、基板110とマスク20とを組み合わせる。
図18は、組み合わされた状態のマスク20及び基板110を示す断面図である。基板110は、基板ホルダ5Bによって保持されていてもよい。基板ホルダ5Bをマスク20に向けて移動させることにより、第1面111を出射面202に接触させることができる。蒸着システム1は、プレス装置10においてマスク20及び基板110を下方から支持するサポーター5Dを備えていてもよい。
【0127】
第2層40の有効領域44は、第1層30と重なっていない。第2層40が水平方向に広がるようにマスク20が保持されている場合、
図18に示すように、第2層40の有効領域44が重力によって下方に撓むことが考えられる。第2層40の撓みが基板110の撓みよりも大きい場合、基板110とマスク20との間に隙間が生じる。隙間が大きいほど、蒸着によって基板110に形成される蒸着層の位置、形状などの精度が低下する。
【0128】
隙間を低減するため、プレス工程が実施される。
図17及び
図18に示すように、第1プレス部材71は、第1基準面721が入射面201に面するよう配置されている。第1プレス部材71の第1プレス層73は、平面視において第1開口31に重なっている。プレス工程は、第1プレス部材71を用いてマスク20を基板110に向けて押す。例えば、第1移動方向F1において第1移動機構74が第1プレス部材71を移動させる。これにより、第1プレス層73が第1開口31に進入して第2層40を押すことができる。この結果、第1移動方向F1において第2層40が基板110に向かって変位するので、基板110とマスク20との間の隙間を低減できる。
【0129】
第1移動方向F1における第2層40の変位量は、第2層40が最も撓んでいる位置において最大になる。第2層40が最も撓んでいる位置は、例えば、平面視における有効領域44の中心である。第1移動方向F1における第2層40の変位量の最大値は、例えば2μm以上であり、5μm以上であってもよく、8μm以上であってもよい。第1移動方向F1における第2層40の変位量の最大値は、例えば20μm以下であり、15μm以下であってもよく、12μm以下であってもよい。
【0130】
第1移動方向F1における第1プレス部材71の移動は、第2層40の有効領域のマスク第4面402が基板110の第1面111に接触した時に停止されてもよい。停止のタイミングは、例えば、第1移動機構74に備えられた荷重センサからの情報に基づいて判断されてもよい。荷重センサの測定値は、第1プレス部材71が第2層40に接触するタイミング、第1プレス部材71によって押された第2層40が基板110に接触するタイミングなどで変化する。荷重センサの測定値が変化するタイミングに基づいて、停止のタイミングを判断できる。
【0131】
続いて、第1プレス部材71をマスク20から離す。例えば、
図19に示すように、第1プレス部材71がマスク20から離れる向きで第1移動方向F1において第1移動機構74が移動する。
【0132】
続いて、
図19に示すように、シャッター3を開く。続いて、
図19及び
図20に示すように、マスク20及び基板110をプレス装置10の第1チャンバ11から蒸着装置15の第2チャンバ16へ搬送する。例えば、
図19に示すように、搬送機構17が第2移動方向F2において第2チャンバ16から第1チャンバ11へ向かう向きに移動する。続いて、搬送機構17を上昇させる。これにより、マスク20及び基板110がサポーター5Dから持ち上げられる。続いて、
図20に示すように、搬送機構17にマスク20及び基板110が置かれた状態で、搬送機構17が第2移動方向F2において第1チャンバ11から第2チャンバ16へ向かう向きに移動する。マスク20及び基板110は、マスクホルダ5A及び基板ホルダ5Bによって保持された状態で第1チャンバ11から第2チャンバ16へ搬送されてもよい。続いて、搬送機構17を下降させる。これにより、マスク20及び基板110が、第2チャンバ16に位置するサポーター5Cに置かれる。
【0133】
マスク20及び基板110が第2チャンバ16に搬送された後、
図20に示すように、シャッター3を閉じる。また、搬送機構17を、マスク第1面301の法線方向D3においてマスク20と重ならない位置へ移動させる。続いて、ヒータ8を用いて蒸着材料7を加熱する。蒸発した蒸着材料7は、マスク20の第2開口41を通って基板110に付着する。これにより、有機層130などの蒸着層が基板110に形成される。
【0134】
続いて、有機層130上に第2電極140を形成する。例えば
図1に示すように、真空成膜法などによって第1面111の全体に第2電極140を形成してもよい。若しくは、図示はしないが、有機層130と同様に、マスク20を用いる蒸着法によって第2電極140を形成してもよい。その後、図示しない封止層などを第2電極140上に形成してもよい。このようにして、有機デバイス100を得ることができる。
【0135】
1つの基板110に複数の有機デバイス100が形成されてもよい。1つの有機デバイス100は、マスク20の1つの第1開口31に対応していてもよい。この場合、基板110を裁断する工程を実施してもよい。例えば、マスク20の内側領域36に対応する基板110の領域に沿って基板110を裁断する。これによって、複数の有機デバイス100を得ることができる。
【0136】
マスク20を用いる蒸着法によって有機層130、第2電極140などを形成する場合の、マスク20の効果について説明する。
【0137】
マスク20は、シリコン又はシリコン化合物を含む第1層30を備える。このため、基板110がシリコンを含む場合、基板110に生じる熱膨張とマスク20に生じる熱膨張との間に差が生じることを抑制できる。これにより、マスク20の熱膨張に起因して有機層130、第2電極140などの蒸着層の位置、形状などの精度が低下することを抑制できる。従って、高い素子密度を有する有機デバイス100を提供できる。
【0138】
マスク20は、複数の第2開口41を含む第2層40を備える。第2層40は、樹脂材料を含む。第1層30とは別に第2層40を設けることによって、第2層40の厚みを小さくできるので、蒸着工程においてシャドウが発生することを抑制できる。また、平面視における第1壁面32と第2開口41との間の間隔S6を適切に確保することにより、シャドウを抑制しながら第1層30の厚みを適切に確保できる。これにより、マスク20をハンドリングするときに、例えばマスクを移動させるときに、第1層30が破損することを抑制できる。また、第2層40が樹脂材料を含むので、第2層40は、基板110又は基板110上の構成要素に接触しやすい。理由としては、以下の(A)、(B)などが考えられる。
(A)ファンデルワールス力が生じること。
(B)樹脂材料が柔軟性を有するので、第2層40が基板110上の構成要素の形状に応じて変形しやすいこと。
第2層40が基板110又は基板110上の構成要素に接触しやすいことにより、第2層40と基板110又は基板110上の構成要素との間に隙間が生じることを抑制できる。このことも、シャドウの抑制に寄与することができる。蒸着工程において、好ましくは、第2層40が基板110又は基板110上の構成要素に接触している。マスク第4面402上に保護膜が形成されている場合、蒸着工程において、好ましくは、保護膜が基板110又は基板110上の構成要素に接触している。保護膜の厚みは、好ましくは1.0μm以下であり、0.8μm以下であってもよく、0.6μm以下であってもよい。
【0139】
蒸着工程の前に、第1プレス機構70を用いてマスク20を基板110に向けて押すプレス工程が実施される。これにより、第2層40の有効領域44の撓みに起因して第2層40と基板110又は基板110上の構成要素との間に隙間が生じることを抑制できる。このことも、シャドウの抑制に寄与することができる。
【0140】
第1層30がシリコン又はシリコン化合物を含む場合、マスク20を押してマスク20を全体的に変形させると、第1層30に割れなどの破損が生じることが考えられる。上述のプレス工程は、第1開口31に位置する第2層40を基板110に向けて押す。このため、第1層30に破損が生じることを抑制しながら、第2層40と基板110又は基板110上の構成要素との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0141】
マスク20の第2層40の周縁領域43は、第1層30のマスク第2面302に対して固定されている。このため、第2層40の有効領域44が撓むことを抑制できる。
【0142】
樹脂材料を含む第2層40が第1層30に中間層50を介して結合されているので、仮に第1層30が破損した場合であっても、第1層30の破片が飛散することを抑制できる。
【0143】
上述した一実施形態を様々に変更できる。以下、必要に応じて図面を参照しながら、その他の形態について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した一実施形態と同様に構成され得る部分について、上述の一実施形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いる。重複する説明は省略する。また、上述した一実施形態において得られる作用効果がその他の形態においても得られることが明らかである場合、その説明を省略する場合もある。
【0144】
(第2の実施の形態)
図21乃至
図24を参照して、第2の実施の形態について説明する。
【0145】
図21は、蒸着システム1の一例を示す図である。プレス装置10は、第2プレス機構75を備えていてもよい。第2プレス機構75は、基板110をマスク20に向けて押す。第2プレス機構75を用いることにより、マスク20と基板110の間に隙間が生じることを更に抑制できる。
【0146】
第2プレス機構75は、第2プレス部材76を備える。第2プレス部材76は、基板110に面する第2プレス層78を含む。第2プレス部材76は、第2プレス層78を支持する第2支持基板77を含んでいてもよい。図示はしないが、第2プレス機構75は、基板110に向かう第1移動方向F1において第2プレス部材76を移動させる第2移動機構を備えていてもよい。
【0147】
図22は、基板110に接触している状態の第2プレス機構75を示す断面図である。第2プレス層78は、平面視においてマスク第2面302及び第1開口31に重なるよう広がっていてもよい。第2プレス層78は、平面視において複数の第1開口31に重なるよう広がっていてもよい。
【0148】
第2支持基板77は、第1移動方向F1において上方から第2プレス層78を支持する。第2支持基板77の材料は、リジッド材であってもよい。例えば、第2支持基板77は、シリコン、石英ガラス、金属などを含んでもよい。これにより、第2支持基板77が重力に起因して撓むことを抑制できる。このため、第1移動方向F1における第2プレス層78の位置を精密に調整できる。これにより、第2プレス層78が基板110を押す量を精密に調整できる。
【0149】
第2プレス層78は、樹脂材料を含んでもよい。これにより、第2プレス層78との接触に起因して基板110又は基板110上の構成要素が傷つくことを抑制できる。第2プレス層78の樹脂材料としては、第1プレス層73の樹脂材料として例示したものを採用できる。
【0150】
蒸着システム1を用いる蒸着方法の一例を、
図21乃至
図24を参照して説明する。
【0151】
第1の実施の形態の場合と同様に、第1チャンバ11において基板110とマスク20とを組み合わせる。続いて、プレス工程を実施する。プレス工程は、
図21及び
図22に示すように、第1プレス部材71がマスク20を基板110に向けて押す工程、及び、第2プレス部材76が基板110をマスク20に向けて押す工程を含む。
【0152】
続いて、第1プレス部材71をマスク20から離す。例えば、
図23に示すように、第1プレス部材71がマスク20から離れる向きで第1移動方向F1において第1移動機構74が移動する。第2プレス部材76は、基板110から離されなくてもよい。
【0153】
続いて、
図24に示すように、シャッター3を開く。続いて、
図23及び
図24に示すように、マスク20及び基板110をプレス装置10の第1チャンバ11から蒸着装置15の第2チャンバ16へ搬送する。例えば、搬送機構17にマスク20及び基板110が置かれた状態で、搬送機構17が第2移動方向F2において第1チャンバ11から第2チャンバ16へ向かう向きに移動する。第2プレス部材76は、基板110と組み合わされた状態で第2チャンバ16へ搬送されてもよい。図示はしないが、第2プレス部材76は、第1チャンバ11において基板110から離されてもよい。
【0154】
マスク20及び基板110が第2チャンバ16に搬送された後、
図24に示すように、シャッター3を閉じる。また、搬送機構17を、マスク第1面301の法線方向D3においてマスク20と重ならない位置へ移動させる。続いて、ヒータ8を用いて蒸着材料7を加熱する。蒸発した蒸着材料7は、マスク20の第2開口41を通って基板110に付着する。これにより、有機層130などの蒸着層が基板110に形成される。
【0155】
(第3の実施の形態)
図25は、第3の実施の形態による第2プレス機構75の一例を示す断面図である。
図25に示すように、第2プレス機構75は、基板110の第1面111に面する第2基準面771を含んでもよい。第2プレス層78は、第2基準面771から基板110に向かって突出していてもよい。第2プレス層78は、平面視において第1開口31に重なっていてもよい。これにより、第1開口31に重なる基板110の領域を選択的に押すことができる。このため、第2層40と基板110との間を効率的に低減できる。第2プレス層78は、平面視において第2層40のマスク第4面402に重なっていてもよく、重なっていなくてもよい。
【0156】
(第4の実施の形態)
図26は、第4の実施の形態による第2プレス機構75の一例を示す断面図である。
図26に示すように、第2プレス層78は、第2基準面771から基板110に向かって突出していてもよい。第2プレス層78は、平面視において第1層30のマスク第2面302に重なっていてもよい。第2プレス層78は、平面視において第1開口31に重なっていなくてもよい。本実施の形態によれば、第2の実施の形態に比べて、第2プレス層78の体積を低減できる。このため、第2プレス部材76のコストを低減できる。
【0157】
(第5の実施の形態)
図27は、第5の実施の形態による第1プレス機構70の一例を示す断面図である。
図27に示すように、第1プレス層73は、プレス面731に位置する溝732を含んでもよい。これにより、マスク20に接するプレス面731の面積を低減できる。このため、プレス工程の後、第1プレス層73がマスク20から分離されやすくなる。
【0158】
溝732は、異なる2方向に延びていてもよい。例えば、溝732は、第1の方向に延びる第1の溝と、第1の溝と交差するように第2の方向に延びる第2の溝と、を含んでいてもよい。プレス面731は、溝732によって複数の領域に分割されてもよい。例えば、プレス面731は、溝732によって4つの領域に分割されてもよい。
【0159】
(第6の実施の形態)
図28は、第6の実施の形態による第1プレス機構70の一例を示す断面図である。
図28に示すように、第1プレス部材71は、1つの第1開口31に重なる複数の第1プレス層73を含んでいてもよい。これにより、マスク20に接するプレス面731の面積を低減できる。このため、プレス工程の後、第1プレス層73がマスク20から分離されやすくなる。
【0160】
平面視において1つの第1開口31に重なる第1プレス層73の数は任意である。第1の方向及び第2の方向のそれぞれにおいて、複数の第1プレス層73が並んでいてもよい。第1の方向に並ぶ第1プレス層73の数と、第2の方向に並ぶ第1プレス層73の数は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0161】
(第7の実施の形態)
図29は、第7の実施の形態による第1プレス機構70の一例を示す断面図である。
図29に示すように、プレス面731は、第2層40に向かって凸となるよう湾曲していてもよい。これにより、第1プレス層73との接触に起因してマスク20が損傷することを抑制できる。
【0162】
(第8の実施の形態)
図30は、第8の実施の形態による第1プレス機構70の一例を示す断面図である。
図30に示すように、プレス面731は、第1プレス面731aと、第1プレス面に対して第1基準面721に近い位置にある第2プレス面731bと、を含んでもよい。例えば、第1プレス部材71は、第1プレス面731aを含み、厚みT41を有する第1プレス層73と、第2プレス面731bを含み、厚みT41よりも大きい厚みT42を有する第1プレス層73と、を含んでもよい。第2プレス面731bは、平面視において第1プレス面731aよりも内側に位置してもよい。「内側」とは、平面視において第1開口31の中心点に近い側である。
【0163】
図30に示すように、第1開口31に重なる基板110の領域が下方に撓むことがある。基板110が撓むと、第1開口31に重なる第2層40も同様に下方に撓む。第2層40の撓み量は、内側ほど大きくなる。本実施の形態によれば、基板110が撓んでいる場合に、第1プレス層73が第2層40を押す力に、位置に応じた差が生じることを抑制できる。
【0164】
第1移動方向F1における第1プレス面731aの位置と第2プレス面731bの位置の差は、例えば0.1μm以上であり、0.2μm以上であってもよく、0.5μm以上であってもよい。第1移動方向F1における第1プレス面731aの位置と第2プレス面731bの位置の差は、例えば2.0μm以下であり、1.5μm以下であってもよく、1.0μm以下であってもよい。
【0165】
(第9の実施の形態)
図31は、第9の実施の形態による第1プレス機構70の一例を示す断面図である。第1プレス層73は、マスク20に向かうにつれて断面積が減少するよう構成されていてもよい。例えば、第1プレス層73は、
図31に示すように、ピラミッドの構造を有していてもよい。断面積は、マスク第1面301に平行な平面で第1プレス層73を切断した場合の面積である。
【0166】
(第10の実施の形態)
上述の実施の形態においては、プレス工程が第1チャンバ11において実施され、蒸着工程が第2チャンバ16において実施される例を示した。本実施の形態においては、プレス工程及び蒸着工程が同一のチャンバで実施される例を説明する。
【0167】
図32は、蒸着システム1の一例を示す図である。蒸着システム1は、チャンバ9と、チャンバ9に位置する蒸着源6と、チャンバ9に位置する第1プレス機構70と、を備える。
【0168】
蒸着システム1を用いる蒸着方法の一例を、
図32乃至
図35を参照して説明する。
【0169】
チャンバ9において基板110とマスク20とを組み合わせる。続いて、チャンバ9においてプレス工程を実施する。プレス工程は、
図33に示すように、第1プレス部材71がマスク20の入射面201に面するよう第1プレス部材71を移動させる第1移動工程を含む。例えば、第1プレス部材71を保持する第1移動機構74を第2移動方向F2において移動させる。
【0170】
続いて、プレス工程は、第1プレス部材71がマスク20を基板110に向けて押す第2移動工程を実施する。例えば、
図34に示すように、第1プレス部材71を保持する第1移動機構74を第1移動方向F1においてマスク20に向けて移動させる。
【0171】
続いて、第1プレス部材71をマスク20から離す第3移動工程を実施する。例えば、第1プレス部材71がマスク20から離れる向きで第1移動方向F1において第1移動機構74が移動する。続いて、
図35に示すように、第1プレス部材71を、マスク第1面301の法線方向においてマスク20と重ならない位置へ移動させる第4移動工程を実施する。続いて、ヒータ8を用いて蒸着材料7を加熱する。蒸発した蒸着材料7は、マスク20の第2開口41を通って基板110に付着する。これにより、有機層130などの蒸着層が基板110に形成される。
【0172】
第2移動工程及び第4移動工程における第1プレス部材71の移動方向は任意である。例えば、第1プレス部材71の移動は、直線移動であってもよく、回転移動であってもよい。回転移動は、例えば、第1移動機構74が連結された回転軸を回転させることによって実現される。
【0173】
(第11の実施の形態)
上述の実施の形態においては、平面視において1つの第1開口31が1つの有効領域44に重なる例を示した。本形態においては、1つの第1開口31が2つ以上の有効領域44に重なる例を説明する。
【0174】
例えば
図36又は
図37に示すように、第1層30が1つの第1開口31を含み、1つの第1開口31が2つ以上の有効領域44に重なっていてもよい。第1開口31は、
図36に示すように、平面視において、複数の直線の辺を含む輪郭を有していてもよい。第1開口31は、
図37に示すように、平面視において、湾曲した部分を含む輪郭を有していてもよい。
図37に示すように、第1開口31の輪郭は、第1層30の輪郭の相似形であってもよい。
【0175】
例えば
図38又は
図39に示すように、第1層30が2つ以上の第1開口31を含み、1つの第1開口31が2つ以上の有効領域44に重なっていてもよい。第1開口31は、
図38に示すように、平面視において、第2方向D2に並ぶ2以上の有効領域44の列を囲んでいてもよい。第1開口31は、
図39に示すように、平面視において、第1方向D1に並ぶ2以上の有効領域44及び第2方向D2に並ぶ2以上の有効領域44を囲んでいてもよい。
【0176】
本実施の形態によれば、上述の実施の形態の場合に比べて、平面視における第1層30の面積を低減できる。このことは、基板110に対するマスク20の出射面202の密着性を高める可能性がある。
【0177】
(第12の実施の形態)
図40は、有機デバイス100を備える装置200の一例を示す図である。装置200は、基板110と、有機層130とを含む。有機層130は、マスク20を用いる蒸着法によって形成された層である。装置200は、例えばスマートフォンである。装置200は、タブレット端末、ウエアラブル端末などであってもよい。ウエアラブル端末は、スマートグラス、ヘッドマウントディスプレイなどである。
【0178】
(第13の実施の形態)
上述の実施の形態においては、第2層40が樹脂材料を含む例を示したが、第2層40が樹脂材料以外の材料によって構成されていてもよい。例えば、第2層40は、無機酸化物、無機窒化物などの無機化合物を含んでいてもよい。
【0179】
第1プレス層73も、樹脂材料以外の材料によって構成されていてもよい。第2プレス層78も、樹脂材料以外の材料によって構成されていてもよい。
【0180】
上記の実施の形態に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記の実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0181】
1 蒸着システム
2 接続路
3 シャッター
5A マスクホルダ
5B 基板ホルダ
5C サポーター
5D サポーター
6 蒸着源
7 蒸着材料
8 ヒータ
9 チャンバ
10 プレス装置
11 第1チャンバ
15 蒸着装置
16 第2チャンバ
17 搬送機構
20 マスク
201 入射面
202 出射面
30 第1層
301 マスク第1面
302 マスク第2面
303 外縁
31 第1開口
32 第1壁面
35 外側領域
36 内側領域
38 レジスト層
39 アライメントマーク
40 第2層
401 マスク第3面
402 マスク第4面
41 第2開口
50 中間層
70 第1プレス機構
71 第1プレス部材
72 第1支持基板
721 第1基準面
73 第1プレス層
731 プレス面
731a 第1プレス面
731b 第2プレス面
732 溝
74 第1移動機構
75 第2プレス機構
76 第2プレス部材
77 第2支持基板
771 第2基準面
78 第2プレス層
100 有機デバイス