(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149089
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ハイドロゲル保持用基材
(51)【国際特許分類】
D21H 13/24 20060101AFI20231005BHJP
D04H 1/542 20120101ALI20231005BHJP
D04H 1/435 20120101ALI20231005BHJP
【FI】
D21H13/24
D04H1/542
D04H1/435
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057473
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】馬原 悠希
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光男
【テーマコード(参考)】
4L047
4L055
【Fターム(参考)】
4L047AA21
4L047BB00
4L047CC01
4L047CC03
4L047CC08
4L047CC15
4L055AF33
4L055EA03
4L055EA16
4L055EA32
4L055FA11
4L055FA13
4L055FA30
4L055GA21
4L055GA25
4L055GA26
4L055GA50
(57)【要約】
【課題】本発明は、低密度を維持した上で、圧縮耐性を向上させ、ハイドロゲルの保持率に優れ、また、強度に優れ、加工性に優れるハイドロゲル保持用基材を提供することを目的とする。
【解決手段】主体合成繊維とバインダー合成繊維とを少なくとも含有する湿式不織布であり、該主体合成繊維がポリエステル繊維であり、該バインダー合成繊維が芯鞘型繊維であり、該バインダー合成繊維の含有比率が主体合成繊維の含有比率以上であることを特徴とし、より好ましくは、該主体合成繊維として、繊維径15μm以下の主体合成繊維及び繊維径15μm超の主体合成繊維の少なくとも2種類の繊維を含有し、ハイドロゲル保持用基材を構成する全繊維に対して、該繊維径15μm以下の主体合成繊維の含有比率が3~17質量%であり、該繊維径15μm超の主体合成繊維の含有比率が15~42質量%であるハイドロゲル保持用基材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主体合成繊維とバインダー合成繊維とを少なくとも含有する湿式不織布であり、該主体合成繊維がポリエステル繊維であり、該バインダー合成繊維が芯鞘型繊維であり、該バインダー合成繊維の含有比率が該主体合成繊維の含有比率以上であることを特徴とするハイドロゲル保持用基材。
【請求項2】
該主体合成繊維として、繊維径15μm以下の主体合成繊維及び繊維径15μm超の主体合成繊維の少なくとも2種類の繊維を含有し、ハイドロゲル保持用基材を構成する全繊維に対して、該繊維径15μm以下の主体合成繊維の含有比率が3~17質量%であり、該繊維径15μm超の主体合成繊維の含有比率が15~42質量%であることを特徴とする請求項1記載のハイドロゲル保持用基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロゲル保持用基材に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロゲルとは、水を内部に含む物質の総称である。ゲルとは「あらゆる液体に不溶な三次元構造を持つ高分子物質及びその膨潤体」であり、液体が水(水を意味する接頭語”ハイドロ”)の場合をハイドロゲルと呼ぶ。具体的には、コンニャク、寒天、ゼリーのようなものである。水溶性の多糖類(糖が結合してできた水溶性の高分子物質)やゼラチンなどのタンパク質が異なる分子の間で橋かけ(架橋)され、三次元構造を持ち、水に溶けないように(水不溶化)したものである。高分子物質が水に溶けるというのは、高分子物質と水との相互作用から説明できる。高分子物質自身が水を引きつける性質を持っているとき、高分子物質の周囲が水で囲まれ、高分子物質は水に溶けるようになる。ところが、水に溶ける高分子物質でも、高分子鎖が橋かけされ三次元網目構造をとると、水に溶けることができず、その網目構造の内部に多くの水を含んだ膨潤体となる。これがハイドロゲルである(非特許文献1)。
【0003】
ハイドロゲルは、基本的に水との親和性の高い高分子物質が水系媒体中で膨潤したものである。ハイドロゲルは、その用途に応じて、吸水性、膨潤性、保湿性、粘着性、導電性等の種々の特性を有しており、これらの特性を活かして土木建築、農芸、食品、医療、化粧品、電気等の広範囲の分野において利用されている。
【0004】
一般に架橋密度の低いハイドロゲルは、水に対して非常に高い膨潤率を有する。そのようなハイドロゲルは自重を支えられず、自立できないほどに強度が低下するため、疎水性の単量体を共重合することによって高分子物質の膨潤率を下げ、生体適合性を維持したまま強度を付与することが行われている(特許文献1)。
【0005】
例えば、特許文献2には、自重を支えられず、自立できないほどに強度が低下したハイドロゲルであっても、繊維基材に含浸すると形態を保持することができるだけでなく、従来のハイドロゲル材料にはない潤滑性を得られるとしている。
【0006】
このようなハイドロゲル保持用基材は、一般的により多くのハイドロゲルを基材内に包含させる目的で低密度の構成となっている。しかし、低密度であるため、圧縮耐性が不足すると、圧力がかかった際に厚み方向に潰れやすく、ハイドロゲル含浸後の加圧によって基材が潰れることで、ハイドロゲル保持率が低くなり、ハイドロゲルが基材外に流出してしまい、結果的にハイドロゲル含有量が少なくなってしまうという課題があった。また、低密度であるため、繊維間の結着力が弱く、生産速度を上げられないため、加工性に課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2017-531737号公報
【特許文献2】特開2020-120825号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】再生医療、Vol.11、No.3、第57~59ページ、2012年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、低密度を維持した上で、圧縮耐性を向上させ、ハイドロゲルの保持率に優れるハイドロゲル保持用基材を提供することを目的とする。また、強度に優れ、加工性に優れるハイドロゲル保持用基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段は下記のとおりである。
(1)主体合成繊維とバインダー合成繊維とを少なくとも含有する湿式不織布であり、該主体合成繊維がポリエステル繊維であり、該バインダー合成繊維が芯鞘型繊維であり、該バインダー合成繊維の含有比率が該主体合成繊維の含有比率以上であることを特徴とするハイドロゲル保持用基材。
(2)該主体合成繊維として、繊維径15μm以下の主体合成繊維及び繊維径15μm超の主体合成繊維の少なくとも2種類の繊維を含有し、ハイドロゲル保持用基材を構成する全繊維に対して、該繊維径15μm以下の主体合成繊維の含有比率が3~17質量%であり、該繊維径15μm超の主体合成繊維の含有比率が15~42質量%であることを特徴とする(1)に記載のハイドロゲル保持用基材。
【発明の効果】
【0011】
本発明のハイドロゲル保持用基材は、低密度を維持しながら、圧縮耐性に優れ、ハイドロゲルの保持率に優れるものである。また、強度に優れ、加工性に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のハイドロゲル保持用基材について詳説する。
【0013】
本明細書において、「ハイドロゲル保持用基材」を「基材」と略記する場合がある。
【0014】
本発明において、ハイドロゲル保持用基材は、主体合成繊維とバインダー合成繊維とを少なくとも含有する湿式不織布からなる。湿式不織布からなる基材は、一般的な紙を製造する装置を用いて製造される。一般的には、繊維長20mm以下にカットされた主体合成繊維とバインダー合成繊維をパルパー分散装置で水に均一に分散して繊維分散液(抄造用スラリー)を調成し、円網抄紙機、長網抄紙機、傾斜ワイヤー抄紙機等の抄紙機の抄紙ワイヤー上に繊維分散液を流し込み、抄紙ワイヤー下に余分な水を除いて、抄紙ワイヤー上の繊維を抄き上げて乾燥して湿式不織布を作製する。抄紙ワイヤー上に流し込む繊維分散液中の繊維の固形分濃度は0.001~0.5質量%であることが好ましく、繊維は抄紙ワイヤー上で均一に分散されて湿式不織布を形成するため、湿式不織布からなる本発明の基材は、スパンボンド法で作製した乾式不織布からなる基材よりも、繊維が均一に広がった良好な地合が得られる。
【0015】
本発明において、ハイドロゲルの原料となる高分子物質としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドやポリアクリル酸等の水溶性高分子あるいはポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドやポリアクリル酸等の水溶性高分子の共重合体の架橋物からなるものや、アガロース、アルギン酸やゼラチン等の天然高分子等が挙げられる。ハイドロゲルは、前記高分子物質の含水率が高いこと、柔軟性が高いこと、生体との親和性が高いこと等の点で有用な素材であり、医療材料分野、環境分野、日用雑貨等に幅広く利用されている。
【0016】
ハイドロゲルは、単体では強度が弱く切れやすいために、強度の高い基材にハイドロゲルの原料となる高分子物質の溶液(ハイドロゲル溶液)を塗布や含浸することにより、ハイドロゲル単体の欠点を解消するものである。一般的には、ハイドロゲル溶液を所望の深さの容器に流し込み、電子線や紫外線を照射してハイドロゲルを形成する。そのため、生産性が悪いという問題を抱えている。
【0017】
本発明は、塗布や含浸する際にハイドロゲル溶液が基材に入り込みやすく、入り込んだハイドロゲル溶液を保持するとともに、塗布や含浸した状態下で圧縮されてもハイドロゲルを保持できる基材を見出した。
【0018】
本発明の基材において、バインダー合成繊維は、基材を湿式抄紙機で製造する際の加熱処理(例えば、乾燥処理、熱カレンダー処理等)によって、熱溶融する性質を持ち、主体合成繊維とバインダー合成繊維の交点及びバインダー合成繊維同士の交点を接着して基材の強度を高める繊維である。加熱工程において皮膜形成を起こしにくく、基材の低密度を保持することができ、ハイドロゲル溶液の浸透性を阻害せずに、ハイドロゲル保持率を維持することができる芯鞘型繊維(コアシェルタイプ)を本発明では使用する。芯鞘型繊維としては、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)と酢酸ビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせ、ポリエステル(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ等が挙げられるが、基材の強度を高めるという点から、特に、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせからなる芯鞘型ポリエステル系バインダー合成繊維を使用することが好ましい。
【0019】
本発明の基材において、バインダー合成繊維の含有比率は、圧縮耐性及び強度の観点から、主体合成繊維の含有比率以上であることが好ましい。また、ハイドロゲル溶液の浸透性を良好に保つ観点から、該含有比率が、基材を構成する全繊維に対して、好ましくは50~80質量%であり、より好ましくは55~75質量%であることが好ましい。
【0020】
バインダー合成繊維の繊維径は、1~20μmが好ましく、3~18μmがより好ましく、5~15μmがさらに好ましい。バインダー合成繊維の繊維径が20μmを超えた場合、基材の均一性が確保できなくなる場合がある。また、バインダー合成繊維の繊維径が1μm未満の場合、繊維の安定製造が困難になる。
【0021】
バインダー合成繊維の繊維長は、1mm以上15mm以下が好ましく、1mm以上10mm以下がより好ましく、1mm以上7mm以下がさらに好ましい。繊維長が15mmを超えた場合、地合不良となる場合がある。一方、繊維長が1mm未満の場合には、基材の空隙が減少し、ハイドロゲル溶液の基材への入り込み(ハイドロゲル浸透性)が悪化する場合がある。
【0022】
本発明の基材において、主体合成繊維は湿式抄紙機で製造する際の加熱処理(例えば、乾燥処理、熱カレンダー処理等)によって、熱溶融しない繊維であり、基材の骨格を形成する繊維であり、強度とハイドロゲル溶液を保持するための空隙率をコントロールするための繊維である。電子線や紫外線照射時の耐性に優れるポリエステル系繊維が好適である。
【0023】
バインダー繊維を高含有比率で配合しながら、低密度を維持し、圧縮耐性に優れ、且つ均一な基材を提供するために、基材の骨格を形成する太い繊維、及び、繊維間で支柱となり、圧縮耐性を支える細い繊維の少なくとも2種類を含有することが好ましい。この場合、太い繊維の繊維径は、15μm超が好ましく、15μm超30μm以下がより好ましく、さらに好ましくは16μm超20μm以下である。繊維径が30μmを超えた場合、基材の均一性が確保できなくなる場合がある。細い繊維の繊維径は、15μm以下が好ましく、3μm以上15μm以下が好ましく、より好ましくは、5μm以上15μm以下である。繊維径が3μm未満の場合、ハイドロゲル溶液が基材に入り込み難くなる場合がある。また、圧縮耐性の点から、ハイドロゲル保持用基材を構成する全繊維に対して、好ましくは、繊維径15μm以下の主体合成繊維の含有比率が3~17質量%であり、繊維径15μm超の主体合成繊維の含有比率が15~42質量%であり、より好ましくは、繊維径15μm以下の主体合成繊維の含有比率が5~15質量%であり、繊維径15μm超の主体合成繊維の含有比率が18~40質量%である。
【0024】
主体合成繊維の繊維長としては、1mm以上20mm以下が好ましく、3mm以上15mm以下がより好ましく、5mm以上10mm以下がさらに好ましい。繊維長が20mmを超えた場合、地合不良となる場合がある。一方、繊維長が1mm未満の場合には、基材の強度が低くなる場合がある。
【0025】
本発明の基材は、一般紙や湿式不織布を製造するための抄紙機、例えば、長網、円網、傾斜ワイヤー等の抄紙ワイヤーが単独で設置されている抄紙機、長網や傾斜ワイヤー等の同一の抄紙ワイヤー上に2つ以上のヘッドを有した2層以上の多層抄紙可能な抄紙機、抄紙ワイヤーの同種又は異種の2種以上がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機等により製造することができる。抄紙ワイヤー上で形成された湿紙は、エアードライヤー、ヤンキードライヤー、シリンダードライヤー、サクションドラム式ドライヤー、赤外方式ドライヤー等のドライヤーで乾燥させる。
【0026】
本発明の基材の坪量は、特に限定しないが、10~150g/m2が好ましく、15~120g/m2がより好ましく、20~100g/m2がさらに好ましい。150g/m2を超えると、ハイドロゲル溶液の基材への入り込みが悪化する場合があり、10g/m2未満であると、基材の強度が不足する場合や、ハイドロゲル溶液の保持量が少なくなる場合がある。
【0027】
本発明の基材の厚みは特に限定しないが、50~1000μmが好ましく、100~800μmがより好ましく、150~600μmがさらに好ましい。1000μmを超えると、ハイドロゲル溶液の基材への入り込みが悪化する場合があり、50μm未満であると、ハイドロゲル溶液の保持量が少なくなる場合がある。
【0028】
本発明の基材において、基材の密度は、0.05~0.30g/cm3であることが好ましく、0.10~0.28g/cm3がさらに好ましい。密度が0.05g/cm3未満の場合、基材の圧縮耐性が低下し、ハイドロゲル溶液を保持できない場合があり、0.30g/cm3を超えると、ハイドロゲル溶液の基材への入り込みが悪化する場合がある。
【0029】
本発明の基材には、必要に応じて基材の特性を阻害しない範囲で、架橋剤、撥水剤、分散剤、歩留り向上剤、紙力剤、染料等の添加剤を適宜配合することができる。また、基材には、機械的強度、耐水性を付与するために熱可塑性樹脂を含有させることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系、酢酸ビニル系、エポキシ系、合成ゴム系、ウレタン系、ポリエステル系、塩化ビニル系、塩化ビニリデン系、ポリビニルアルコール系、澱粉系、フェノール樹脂等が挙げられ、これらを単独又は2種類以上を併用できる。
【実施例0030】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。なお、実施例中における部や百分率は断りのない限り、すべて質量によるものである。
【0031】
主体合成繊維1:繊維径12μm、繊維長5mm、延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維
【0032】
主体合成繊維2:繊維径17μm、繊維長5mm、延伸PET繊維
【0033】
バインダー合成繊維1:芯部がポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)であり、ジカルボン酸成分がテレフタル酸とイソフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールとジエチレングリコールであり、軟化温度が75℃である非結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする、繊維径14.3μm、繊維長5mmの芯鞘型ポリエステル系バインダー合成繊維(PET芯鞘型繊維、ユニチカ株式会社製メルティ(登録商標))
【0034】
バインダー合成繊維2:繊維径11μm、繊維長5mm、未延伸PET繊維
【0035】
(実施例1~7及び比較例1~2)
バケツに水を4L投入後、表1に示す比率(質量部)で配合し、濃度0.28%でアジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(濃度0.28%)を調成した。この抄造用スラリーを網で手漉きし、130℃のヤンキードライヤーによって、バインダー合成繊維を接着させて強度を発現させ、湿式不織布からなる基材を作製した。
【0036】
<評価>
実施例1~7及び比較例1~2の基材について、下記の評価を行い、坪量、厚さの物性測定結果を表1に示した。また、密度、表面強度、圧縮耐性を評価し、結果を表2に示した。
【0037】
【0038】
【0039】
[坪量]
JIS P8124:2011に準拠して、坪量を測定した。
【0040】
[厚さと密度]
基材の厚さは、JIS P8118:2014に準拠して測定した。また、ハイドロゲル保持率は、基材の密度によって評価した。ハイドロゲル溶液の浸透性及びハイドロゲル保持率の面から、ハイドロゲル保持用基材の密度が0.30g/m2以下であることが適当である。
【0041】
[圧縮耐性(TM/TO)]
自動昇降式紙厚計TM-600(熊谷理機工業株式会社)を用いて、圧力100kPaにおける厚さTO(mm)と定圧厚さ測定器PC-460(株式会社テクロック)を用いて、圧力0.2kPaにおける厚さTM(mm)を計測して、TMをTOで除した値(TM/TO)を算出した。TM/TO値が1に近い程、圧縮耐性が高いことを意味する。
【0042】
評価基準
◎:圧縮耐性が0.85以上で非常に高いハイドロゲル保持率が期待できる。
○:圧縮耐性が0.77以上0.85未満で十分なハイドロゲル保持率が期待できる。
△:圧縮耐性が0.70以上0.77未満で実用可能なハイドロゲル保持率が期待できる。
×:圧縮耐性が0.70未満で実用に向かない。
【0043】
[表面強度]
基材の端に市販のセロハンテープを貼り付け、上から重さ3kgの金属の棒を3回転がした後に基材方向に向かってセロハンテープを剥がした時の繊維脱離の程度によって表面強度を評価した。表面強度が「×」の場合、生産速度を上げられず、加工性に問題がある。
【0044】
評価基準
○:繊維脱離が見られない。
△:基材の端で部分的に繊維の離脱が見られるが、実用の範囲内である。
×:繊維脱離が多数見られる。
【0045】
実施例1~7の基材は、主体合成繊維とバインダー合成繊維とを少なくとも含有する湿式不織布であり、該主体合成繊維がポリエステル繊維であり、該バインダー合成繊維が芯鞘型繊維であり、該バインダー合成繊維の含有比率が該主体合成繊維の含有比率以上であり、低密度であり、圧縮耐性に優れ、表面強度も高かった。バインダー合成繊維が芯鞘型繊維ではない比較例1の基材は、圧縮耐性、表面強度は良好であったが、基材へのハイドロゲル溶液の浸透性に必要な低密度が得られなかった。主体合成繊維の配合比率がバインダー合成繊維の配合比率よりも高い比較例2の基材は、低密度ではあったが、圧縮耐性及び表面強度が低かった。
【0046】
実施例2と実施例3の比較から、バインダー合成繊維の配合率がより高い実施例3は、圧縮耐性及び表面強度がより優れていることが分かる。
【0047】
実施例2と実施例5,実施例3と実施例7の比較から、主体合成繊維として、繊維径15μm以下の主体合成繊維及び繊維径15μm超の主体合成繊維の少なくとも2種類の繊維を含有し、ハイドロゲル保持用基材を構成する全繊維に対して、該繊維径15μm以下の主体合成繊維の含有比率が3~17質量%であり、該繊維径15μm超の主体合成繊維の含有比率が15~42質量%である実施例5及び実施例7は、主体合成繊維が1種類である実施例2及び3と比較して、圧縮耐性に優れ、より高いハイドロゲル保持率が期待できることが分かる。