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特開2023-149093マスク用メルトブロー不織布フィルターの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149093
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】マスク用メルトブロー不織布フィルターの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/16 20060101AFI20231005BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20231005BHJP
   D04H 3/007 20120101ALI20231005BHJP
   A41D 13/11 20060101ALI20231005BHJP
   A62B 18/02 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
D04H3/16
B01D39/16 A
D04H3/007
A41D13/11 Z
A62B18/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057477
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】落合 貴仁
【テーマコード(参考)】
2E185
4D019
4L047
【Fターム(参考)】
2E185BA07
2E185CB11
4D019AA01
4D019BA13
4D019BB03
4D019BC01
4D019CB06
4L047AA14
4L047AA29
4L047BA09
4L047BB02
4L047DA00
4L047EA05
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、JIS規格を上回る捕集性能と通気性能を有し、且つJIS規格における人工血液バリア性クラスIIIをクリア可能なマスク用メルトブロー不織布フィルターの製造方法を提供することにある。
【解決手段】マスク用メルトブロー不織布フィルターの製造方法において、ヒンダードアミン化合物及びメルトフローレートが1300~1500g/10minであるポリプロピレンを含有する樹脂混合物ペレットを用い、且つヒンダードアミン系化合物の樹脂混合物ペレットに対する添加量が0.5~1.5質量%であり、0.2mmΦの孔径を持つメルトブロー用ノズルヘッドを用いて、1mmあたりの樹脂吐出量が3.0~5.0g/minであり、樹脂吐出量1.0g/minあたりの熱風風量が0.037~0.038m/minであり、ダイとコンベア間の距離が100~200mmである条件にて、メルトブロー法で坪量20~30g/mのメルトブロー不織布を形成し、形成したメルトブロー不織布に対して帯電処理を行うことを特徴とするマスク用メルトブロー不織布フィルターの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク用メルトブロー不織布フィルターの製造方法において、ヒンダードアミン化合物及びメルトフローレートが1300~1500g/10minであるポリプロピレンを含有する樹脂混合物ペレットを用い、且つヒンダードアミン系化合物の樹脂混合物ペレットに対する添加量が0.5~1.5質量%であり、0.2mmΦの孔径を持つメルトブロー用ノズルヘッドを用いて、1mmあたりの樹脂吐出量が3.0~5.0g/minであり、樹脂吐出量1.0g/minあたりの熱風風量が0.037~0.038m/minであり、ダイとコンベア間の距離が100~200mmである条件にて、メルトブロー法で坪量20~30g/mのメルトブロー不織布を形成し、形成したメルトブロー不織布に対して帯電処理を行うことを特徴とするマスク用メルトブロー不織布フィルターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク用メルトブロー不織布フィルターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、東アジア内陸部の砂漠、乾燥地域からの砂塵(黄砂)や、PM2.5、スギ、ヒノキなどの花粉の飛散、また、インフルエンザ等のウィルスによる感染症の流行が健康へ及ぼす影響からフィルター性能を備えた不織布マスクの需要が高まっており、特に医療分野においてはバクテリア、ウィルスの侵入阻害に加え、医療行為中に飛散した血液の侵入を阻害する性能が求められている。例えば、特許文献1には、ポリオレフィン繊維シート(Ia)およびポリオレフィン繊維シート(Ib)から選ばれる抗菌性のポリオレフィン繊維シート(I)よりなる層を内側に有し、両表面に乾式不織布(II)よりなる層を有する積層シートからなることを特徴とするマスク用フィルタが開示されている。特許文献1において、ポリオレフィン繊維シート(Ia)は、無機系抗菌剤微粒子を含有するポリオレフィン系樹脂組成物よりなるポリオレフィン繊維から形成され且つ無機系抗菌剤微粒子の体積の1/100以上がポリオレフィン繊維の表面に露出している箇所を繊維シート面積1.0×10-2mm当たり1箇所以上の割合で有する抗菌性のポリオレフィン繊維シートであり、ポリオレフィン繊維シート(Ib)は、無機系抗菌剤微粒子を含有するポリオレフィン系樹脂組成物よりなるポリオレフィン繊維から形成され且つ無機系抗菌剤微粒子が0.01μm以上の面積でポリオレフィン繊維の表面に露出している箇所を繊維シート面積1.0×10-2mm当たり1箇所以上の割合で有する抗菌性のポリオレフィン繊維シートである。
【0003】
現在、マスクの性能を示す規格として、日本産業規格「JIS T9001:2021 医療用マスク及び一般用マスクの性能要件及び試験方法」がある。この規格を満足するマスク用メルトブロー不織布フィルターを提供するためには、特許文献1のようなマスク用フィルタなどの既存フィルターでは、捕集性能、通気性能、人工血液バリア性等の性能に対して改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-86626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、JIS規格を上回る捕集性能と通気性能を有し、且つJIS規格における人工血液バリア性クラスIIIをクリア可能なマスク用メルトブロー不織布フィルターの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記発明が見出された。
【0007】
マスク用メルトブロー不織布フィルターの製造方法において、ヒンダードアミン化合物及びメルトフローレートが1300~1500g/10minであるポリプロピレンを含有する樹脂混合物ペレットを用い、且つヒンダードアミン系化合物の樹脂混合物ペレットに対する添加量が0.5~1.5質量%であり、0.2mmΦの孔径を持つメルトブロー用ノズルヘッドを用いて、1mmあたりの樹脂吐出量が3.0~5.0g/minであり、樹脂吐出量1.0g/minあたりの熱風風量が0.037~0.038m/minであり、ダイとコンベア間の距離が100~200mmである条件にて、メルトブロー法で坪量20~30g/mのメルトブロー不織布を形成し、形成したメルトブロー不織布に対して帯電処理を行うことを特徴とするマスク用メルトブロー不織布フィルターの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、マスク用フィルターとして用いられるフィルターにおいて、JIS T9001:2021に規定される微小粒子捕集効率(PFE)、ウィルス飛まつ捕集効率(VFE)、バクテリア飛まつ捕集効率(BFE)が各99%以上であり、通気抵抗(圧力損失)が40Pa/cm以下であり、人工血液バリア性のクラスIIIを達成できるマスク用メルトブロー不織布フィルターを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、「マスク用メルトブロー不織布フィルター」を「フィルター」と記載する場合がある。
【0010】
本発明のフィルターの製造方法は、ヒンダードアミン化合物及びメルトフローレート(MFR)が1300~1500g/10minであるポリプロピレン(PP)を含有する樹脂混合物ペレットを用い、且つヒンダードアミン系化合物の樹脂混合物ペレットに対する添加量が0.5~1.5質量%であり、0.2mmΦの孔径を持つメルトブロー(MB)用ノズルヘッドを用いて、1mmあたりの樹脂吐出量が3.0~5.0g/minであり、樹脂吐出量1.0g/minあたりの熱風風量が0.037~0.038m/minであり、ダイとコンベア間の距離(DCD)が100~200mmである条件にて、MB法で坪量20~30g/mのMB不織布を形成し、形成したMB不織布に対して帯電処理を行うことを特徴とする、フィルターの製造方法である。
【0011】
本発明の検討の結果、ヒンダードアミン化合物及びMFRが1300~1500g/10minであるポリプロピレンを含有する樹脂混合物ペレットを用い、且つヒンダードアミン系化合物の樹脂混合物ペレットに対する添加量が0.5~1.5質量%であり、0.2mmΦの孔径を持つMB用ノズルヘッドを用いて、1mmあたりの樹脂吐出量が3.0~5.0g/minであり、樹脂吐出量1.0g/minあたりの熱風風量が0.037~0.038m/minであり、ダイとコンベア間の距離が100~200mmである条件にて、MB法で坪量20~30g/mのMB不織布を形成し、形成したMB不織布に対して帯電処理を行うことで、JIS T9001:2021に規定されるPFE、VFE、BFEの各捕集効率が99%以上であり、通気抵抗(圧力損失)が40Pa/cm以下であり、人工血液バリア性のクラスIIIを達成できるフィルターを製造することができる。
【0012】
本発明において、MFRが1300~1500g/10minであるPPを用いることで、MB法において安定して溶融樹脂をノズルヘッドに供給することができる。該MFRが1300g/10minを下回ると、溶融樹脂の粘性が高くなり過ぎ、溶融樹脂をノズルヘッドに供給する際にノズル内圧が高くなるために十分な量を供給できず、生産性が悪化する。該MFRが1500g/10minを上回ると、溶融樹脂の粘性が低くなり過ぎ、樹脂吐出後の熱風による延伸時に樹脂繊維が切れやすくなり、安定紡糸が難しくなる。
【0013】
0.2mmΦの孔径を持つノズルヘッドに対し、1mmあたりの樹脂吐出量が3.0~5.0g/minであり、樹脂吐出量1.0g/minあたりの熱風風量が0.037~0.038m/minであることで、安定して紡糸を行え、熱風による延伸により樹脂が切れずに且つ繊維径を細くすることができる。繊維径を細くすることで、単位質量あたりの繊維本数を増加させることができ、捕集性能が向上する。該樹脂吐出量が3.0g/minを下回ると、樹脂の吐出量が少なくなり過ぎ、安定紡糸が難しくなる。該樹脂吐出量が5.0g/minを上回ると、ノズルの内圧が高くなりやすく、ノズルヘッドの割れや変形の危険が生じる。該熱風風量が0.037m/minを下回ると、紡糸時に十分な延伸ができず、繊維径が太くなることで、捕集性能が低下する。該熱風風量が0.038m/minを上回ると、紡糸時に延伸し過ぎることで、樹脂繊維が切れやすくなり、安定紡糸が難しくなる。
【0014】
DCDが100~200mmであることで、ノズルヘッドから吐出し熱風により延伸された樹脂繊維同士が良好に接着し、且つ適度な空隙が生まれることで、捕集効率を向上させつつ通気抵抗を低くすることができ、さらに十分な厚さが得られることで人工血液を不織布内部に保持することができ、人工血液バリア性を高めることができる。DCDが100mmを下回ると、ノズルヘッドとの距離が近くなり過ぎるとことで、樹脂繊維同士の接着が過剰に生じ、空隙が減少することで通気抵抗が悪化しやすくなる。さらに厚みが薄くなるため、人工血液を保持する機能も低下し、人工血液バリア性も悪化する。DCDが200mmを上回ると、樹脂繊維同士の接着が少なくなり、捕集効率が低下し、さらに不織布としての強度が低下するため、マスク加工時に破断等の問題が発生する。
【0015】
本発明では、MB法で坪量20~30g/mの不織布を形成する。該坪量が20g/mを下回ると、単位体積あたりの繊維本数が少なくなり過ぎ、捕集効率が低下し、該坪量が30g/mを上回ると、単位体積あたりの繊維本数が多くなり過ぎ、通気抵抗が悪化する。
【0016】
MB不織布に対して帯電処理を行うと、不織布を形成する樹脂繊維を帯電させ、微小粒子を電気的に吸着しやすくなるよう改質することができる。この際、ヒンダードアミン系化合物をMB不織布に添加すると、原理は不明であるが、帯電処理の効率を大幅に引き上げることができ、より微小粒子が吸着しやすくなることで、捕集効率が大幅に向上する。樹脂混合物ペレットに対するヒンダードアミン系化合物の添加量は、質量比で0.5~1.5質量%であり、さらに好ましくは1.0~1.5質量%である。該添加量が0.5質量%を下回ると、捕集効率の向上効果が限定的となり、安定した高捕集効率が得られない。該添加量が1.5質量%を上回ると、添加したヒンダードアミン系化合物が紡糸を阻害し、熱風による延伸時に樹脂繊維が切れる。ヒンダードアミン系化合物の添加方法は特に限定されないが、操業性の面であらかじめ高濃度でPP樹脂に練り込んだ樹脂混合物ペレット、いわゆるマスターバッチとして用いるのが好適である。
【0017】
該ヒンダードアミン系化合物は、1種を用いても良いし、2種以上を併用して用いても良い。ヒンダードアミン系化合物としては、2,4-ジクロロ-6-(1,1,3,3-テトラメチルブチルアミノ)-1,3,5-トリアジン・N,N′-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン重縮合物、N-ブチル-1-ブタンアミン,N-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミン,1,6-ヘキサンジアミン・N,N′-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)・2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン重縮合物、ポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)]、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、コハク酸ジメチル・4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノール重縮合物等が挙げられる。
【0018】
帯電処理の方法は特に限定されるものではないが、例えば、直流コロナ荷電法、ハイドロチャージ法が挙げられる。直流コロナ荷電法の場合は、帯電処理後の捕集効率が向上する条件であれば特に限定されないが、多数の針電極を用いて高電圧且つ針電極でスパークが発生しない条件が好ましく、出力電流が2.0mA以上が好ましい。ハイドロチャージ法の場合は、超純水などの導電率が低い液体を用い、MB不織布が破損しない程度の高圧水流をMB不織布上部より付与し、且つ高圧吸引にて付与した液体を吸引し、その後乾燥機にてMB不織布表面の温度が65℃以下になる条件で乾燥させることが好ましい。乾燥時にMB不織布表面温度が65℃を上回ると、原理は明確ではないが捕集効率が低下しやすい。
【0019】
本発明の製造方法において、メルトブロー不織布はメルトブロー紡糸機を用いたメルトブロー法によって形成される。
【0020】
メルトブロー法では、まず、樹脂混合物ペレットを加温可能な押出機に投入し、樹脂の分解温度以下の温度で溶融しつつ搬送し、その後、スクリーン(異物、塊等除去)等の工程を通り、定量ポンプで均一な流量で樹脂の分解温度以下に加温された紡糸用ノズルに送り、同じく加温されたノズルヘッド先端から溶融樹脂を吐出する。吐出された溶融樹脂に対し、ノズルヘッドと同等以上の温度に加温された熱風を、樹脂の吐出方向と平行に吹き付けることで吐出された溶融樹脂を延伸して紡糸を行い、樹脂繊維を得る。さらに、紡糸された樹脂繊維を、メッシュ状のワイヤーを備えたコレクター装置で受け止めることでメルトブロー不織布が得られる。紡糸された樹脂繊維を受け止める際、高圧吸引することもできる。樹脂ペレットを投入する際、搬送性を向上させるために、ステアリン酸マグネシウム等に代表される金属石鹸を添加することもできる。
【0021】
メルトブロー紡糸機としては、例えば、ノズルヘッドを下向きに設置し、ノズルヘッドの直下にコレクター装置を設置した縦型紡糸機、ノズルヘッドを横向きに設置し、ノズルヘッドの横にコレクター装置を設置した横型紡糸機、ノズルヘッドを複数台設置した多層紡糸機、縦型紡糸機と横型紡糸機を組み合わせたコンビネーション紡糸機等を使用することができる。
【実施例0022】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。以下、特にことわりの無い限り、実施例に記載される部及び比率は質量を基準とする。
【0023】
(実施例1)
MFR1300g/10minのPP樹脂ペレット98.5質量%、ヒンダードアミン系化合物A(Chimassorb(登録商標)2020FDL、BASF社製)1.35質量%、ヒンダードアミン系化合物B(Tinuvin(登録商標)622SF、BASF社製)0.15質量%を溶融混合し、樹脂混合物ペレットを調製した。この樹脂混合物ペレットを押出機に投入し、押出機内で段階的に220℃まで加温溶融し、ノズルヘッド温度を240℃にし、熱風温度を240~250℃にした条件で、0.2mmΦの孔径を持つメルトブロー用ノズルヘッドを組み込んだ縦型紡糸機を用いて、1mmあたりの樹脂吐出量を4.8g/minとし、樹脂吐出量1.0g/minあたりの熱風風量を0.0376m/minとし、DCDを150mmに制御した条件で、MB法で坪量25g/mのMB不織布を形成した後、直流コロナ荷電法にて出力電流2.0mA以上になる電圧出力で印加を行い、フィルターを得た。
【0024】
(実施例2)
実施例1において、MFR1300g/10minのPP樹脂ペレットをMFR1500g/10minのPP樹脂ペレットに変更した以外は同様にして、フィルターを得た。
【0025】
(実施例3)
実施例1において、MFR1300g/10minのPP樹脂ペレット99.0質量%、ヒンダードアミン系化合物A(Chimassorb2020FDL、BASF社製)0.9質量%、ヒンダードアミン系化合物B(Tinuvin622SF、BASF社製)0.1質量%を溶融混合し、樹脂混合物ペレットを調製した以外は同様に、フィルターを得た。
【0026】
(実施例4)
実施例1において、MFR1300g/10minのPP樹脂ペレット99.5質量%、ヒンダードアミン系化合物A(Chimassorb2020FDL、BASF社製)0.45質量%、ヒンダードアミン系化合物B(Tinuvin622SF、BASF社製)0.05質量%を溶融混合し、樹脂混合物ペレットを調製した以外は同様に、フィルターを得た。
【0027】
(実施例5)
実施例1において、1mmあたりの樹脂吐出量を3.0g/minに変更した以外は同様に、フィルターを得た。
【0028】
(実施例6)
実施例1において、1mmあたりの樹脂吐出量を5.0g/minに変更した以外は同様に、フィルターを得た。
【0029】
(実施例7)
実施例1において、DCDを100mmに変更した以外は同様に、フィルターを得た。
【0030】
(実施例8)
実施例1において、DCDを200mmに変更した以外は同様に、フィルターを得た。
【0031】
(実施例9)
実施例1において、坪量を20g/mに変更した以外は同様に、フィルターを得た。
【0032】
(実施例10)
実施例1において、坪量を30g/mに変更した以外は同様に、フィルターを得た。
【0033】
(比較例1)
実施例1において、MFR1300g/10minのPP樹脂ペレットをMFR1100g/10minのPP樹脂ペレットに変更した以外は同様に、フィルターを得た。
【0034】
(比較例2)
実施例1において、MFR1300g/10minのPP樹脂ペレットをMFR1800g/10minのPP樹脂ペレットに変更した以外は同様に、フィルターを得た。
【0035】
(比較例3)
実施例1において、MFR1300g/10minのPP樹脂ペレット99.7質量%、ヒンダードアミン系化合物A(Chimassorb2020FDL、BASF社製)0.27質量%、ヒンダードアミン系化合物B(Tinuvin622SF、BASF社製)0.03質量%を溶融混合し、樹脂混合物ペレットを調製した以外は同様に、フィルターを得た。
【0036】
(比較例4)
実施例1において、MFR1300g/10minのPP樹脂ペレット98.0質量%、ヒンダードアミン系化合物A(Chimassorb2020FDL、BASF社製)1.8質量%、ヒンダードアミン系化合物B(Tinuvin622SF、BASF社製)0.2質量%を溶融混合し、樹脂混合物ペレットを調製した以外は同様に、フィルターを得た。
【0037】
(比較例5)
実施例1において、1mmあたりの樹脂吐出量を2.5g/minに変更した以外は同様に、フィルターを得た。
【0038】
(比較例6)
実施例1において、1mmあたりの樹脂吐出量を5.5g/minに変更した以外は同様に、フィルターを得た。
【0039】
(比較例7)
実施例1において、樹脂吐出量1.0g/minあたりの熱風風量を0.0365m/minに変更した以外は同様に、フィルターを得た。
【0040】
(比較例8)
実施例1において、樹脂吐出量1.0g/minあたりの熱風風量を0.0385m/minに変更した以外は同様に、フィルターを得た。
【0041】
(比較例9)
実施例1において、DCDを80mmに変更した以外は同様に、フィルターを得た。
【0042】
(比較例10)
実施例1において、DCDを220mmに変更した以外は同様に、フィルターを得た。
【0043】
(比較例11)
実施例1において、坪量を15g/mに変更した以外は同様に、フィルターを得た。
【0044】
(比較例12)
実施例1において、坪量を35g/mに変更した以外は同様に、フィルターを得た。
【0045】
実施例及び比較例で得られたフィルターに対して、以下の測定及び評価を行い、結果を表1に示した。
【0046】
測定1(坪量)
JIS P8124:2011に準拠して、坪量を測定した。
【0047】
測定2(厚み)
精密厚さ測定器(Swiss Instruments社製、商品名:Tesa Micro-Hite100)を用いて、測定圧1.27N/cm設定にて厚さを測定した。試験片の調整、試験片の測定位置、測定回数は、JIS P8118:2014に準じ、測定をしたものの平均値を、JIS Z8401:1999に規定する方法で有効数字2桁にしたものを、厚みとした。
【0048】
評価3(捕集効率)
JIS B9908:2011の形式1に準じた試験装置を用い、エアフィルターに風速1.5m/sにて通風した際の粒子径0.3μm以上0.5μm未満の大気塵の捕集効率を測定した。本測定において、89%以上の捕集効率を示したフィルターは、JIS T9001:2021に規定されるPFE、VFE、BFE評価において、98%以上の捕集効率が得られる。
【0049】
評価4(圧力損失)
JIS T9001:2021に準拠して、圧力損失を測定した。
【0050】
評価5(人工血液バリア性)
得られたフィルターと、マスク用ポリプロピレン製スパンボンド不織布(19g/m)を用いて3層不織布マスクを作製し、JIS T9001:2021に準拠して、人工血液バリア性を評価した。
【0051】
性能区分
レベルIII:21.3kPaの圧力で人工血液を吹き付けた際に、人工血液の貫通が見られるサンプルが、31枚評価したうちの3枚以内。
レベルII:16.0kPaの圧力で人工血液を吹き付けた際に、人工血液の貫通が見られるサンプルが、31枚評価したうちの3枚以内。
レベルI:10.6kPaの圧力で人工血液を吹き付けた際に、人工血液の貫通が見られるサンプルが、31枚評価したうちの3枚以内。
NG:10.6kPaの圧力で人工血液を吹き付けた際に、人工血液の貫通が見られるサンプルが、31枚評価したうちの4枚以上。
【0052】
【表1】
【0053】
実施例1~10のフィルターは、本発明で規定するフィルターの製造方法に従って製造されており、良好な捕集効率と圧力損失を示すと共に、人工血液バリア性においてレベルIIIを達成するフィルターである。
【0054】
これに対して、比較例1及び2のフィルターは、本発明で規定するメルトフローレート範囲のポリプロピレン樹脂ペレットを用いておらず、安定した紡糸ができなかった。
【0055】
比較例3のフィルターは、本発明で規定するヒンダードアミン系化合物の添加量を下回っており、捕集効率がJIS T9001:2021で規定されるマスクの性能区分レベルIIIを下回った。
【0056】
比較例4のフィルターは、本発明で規定するヒンダードアミン系化合物の添加量を上回っており、安定した紡糸ができなかった。
【0057】
比較例5のフィルターは、本発明で規定する1mmあたりの樹脂吐出量を下回っており、安定した紡糸ができなかった。
【0058】
比較例6のフィルターは、本発明で規定する1mmあたりの樹脂吐出量を上回っており、紡糸は可能なもののノズル内圧が上昇しており、連続操業に危険がある。また、捕集効率と人工血液バリア性がJIS T9001:2021で規定されるマスクの性能区分レベルIIIを下回った。
【0059】
比較例7のフィルターは、本発明で規定する樹脂吐出量1.0g/minあたりの熱風風量を下回っており、捕集効率と人工血液バリア性がJIS T9001:2021で規定されるマスクの性能区分レベルIIIを下回った。
【0060】
比較例8のフィルターは、本発明で規定する樹脂吐出量1.0g/minあたりの熱風風量を上回っており、安定した紡糸ができなかった。
【0061】
比較例9のフィルターは、本発明で規定するDCDを下回っており、人工血液バリア性がJIS T9001:2021で規定されるマスクの性能区分レベルIIIを下回った。
【0062】
比較例10のフィルターは、本発明で規定するDCDを上回っており、捕集効率がJIS T9001:2021で規定されるマスクの性能区分レベルIIIを下回った。
【0063】
比較例11のフィルターは、本発明で規定する坪量を下回っており、捕集効率と人工血液バリア性がJIS T9001:2021で規定されるマスクの性能区分レベルIIIを下回った。
【0064】
比較例12のフィルターは、本発明で規定する坪量を上回っており、圧力損失が40Pa/cmを上回った。
【0065】
以上より、本発明のフィルターの製造方法は、JIS T9001:2021に規定される微小粒子捕集効率(PFE)、ウィルス飛まつ捕集効率(VFE)、バクテリア飛まつ捕集効率(BFE)が各99%以上であり、通気抵抗(圧力損失)が40Pa/cm以下であり、人工血液バリア性のクラスIIIを達成できるマスク用メルトブロー不織布フィルターの製造に用いることができる。