(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149097
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】クッション
(51)【国際特許分類】
A47C 27/06 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
A47C27/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057482
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】519117189
【氏名又は名称】株式会社ナショナル発条
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 秀和
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AB03
3B096AC05
3B096AD02
3B096AD06
(57)【要約】
【課題】従来よりも座り心地の良いクッションを提供する。
【解決手段】前後方向および左右方向に多数配列されて前後方向および左右方向と直交する厚み方向に伸縮する多数のコイルばねと、面状に広がり多数のコイルばねの一端を覆う一方布材と、面状に広がり多数のコイルばねの他端を覆う他方布材とを備え、一方布材および他方布材は隣り合うコイルばね同士間で互いに隣接して接合されるクッションにおいて、クッションは前後方向および/または左右方向にゾーン65,60,50,55に区分され、各ゾーンは薄墨色で色分けして示すように互いに異なるクッション硬さを有することを特徴とする。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向および左右方向に多数配列され、前後方向および左右方向と直交する厚み方向に伸縮する多数のコイルばねと、
面状に広がり前記多数のコイルばねの一端を覆う一方布材と、
面状に広がり前記多数のコイルばねの他端を覆う他方布材とを備え、
前記一方布材および前記他方布材は、隣り合う前記コイルばね同士間で互いに隣接して接合されるクッションにおいて、
前記クッションは前後方向および/または左右方向にゾーン分けされ、
各ゾーンは、互いに異なるクッション硬さを有することを特徴とする、クッション。
【請求項2】
前記クッションは、当該クッションの左右方向中心を通り前後方向に延びるセンタゾーンと、前記センタゾーンから左側へ連なるレフトゾーンと、前記センタゾーンから右側へ連なるライトゾーンと、を含み、
前記センタゾーンのクッション硬さが、前記レフトゾーンおよび前記ライトゾーンのクッション硬さよりも小さい、請求項1に記載のクッション。
【請求項3】
前記クッションは、当該クッションの左縁を含む左縁ゾーンおよび前記クッションの右縁を含む右縁ゾーンを含み、
前記左縁ゾーンおよび前記右縁ゾーンのクッション硬さが、前記レフトゾーンおよび前記ライトゾーンのクッション硬さよりも大きい、請求項2に記載のクッション。
【請求項4】
前記クッションは、使用者の胴部を支持する背もたれゾーンと、前記背もたれゾーンよりも前方に配置されて使用者の骨盤を支持する座ゾーンとを含み、
前記背もたれゾーンのクッション硬さが、前記座ゾーンのクッション硬さよりも小さい、請求項1に記載のクッション。
【請求項5】
前記クッションは、前記背もたれゾーンから後方へ連なるリヤゾーンをさらに含み、
前記リヤゾーンのクッション硬さが、前記背もたれゾーンのクッション硬さよりも大きい、請求項4に記載のクッション。
【請求項6】
前記クッションは、前記座ゾーンから前方へ連なるフロントゾーンをさらに含み、
前記フロントゾーンのクッション硬さが、前記座ゾーンのクッション硬さよりも小さい、請求項4または5に記載のクッション。
【請求項7】
前記背もたれゾーンは、前記座ゾーンから立設するよう立体的に形成される、請求項4~6のいずれかに記載のクッション。
【請求項8】
前記クッションは、当該クッションの左右方向中心を通り前後方向に延びるセンタ領域と、前記センタ領域から左側へ連なるレフト領域と、前記センタ領域から右側へ連なるライト領域と、を含み、
前記センタ領域のクッション厚み寸法が、前記レフト領域および前記ライト領域のクッション厚み寸法よりも小さい、請求項1~7のいずれかに記載のクッション。
【請求項9】
前記クッションは、当該クッションの左縁を含む左縁領域および前記クッションの右縁を含む右縁領域を含み、
前記左縁領域および前記右縁領域のクッション厚み寸法が、前記左縁領域と前記右縁領域との間の領域のクッション厚み寸法よりも大きい、請求項1~8のいずれかに記載のクッション。
【請求項10】
前記クッション硬さは、クッションの無荷重状態における前記コイルばねの圧縮度によって規定される、請求項1~9のいずれかに記載のクッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下方から人体を支えるクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
クッションとして従来、特開2021-053380号公報(特許文献1)に記載の構造が知られている。特許文献1記載の構造では、複数のコイルばねが、クッションの厚み方向に直立した姿勢で、縦方向および横方向に格子状に配列される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、各コイルばねの硬さの異同について何ら開示がない。一方で、従来よりも座り心地の良いクッションに対するニーズがある。
【0005】
本発明は、上述の実情に鑑み、座り心地を向上させたクッションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のため本発明によるクッションは、前後方向および左右方向に多数配列され、前後方向および左右方向と直交する厚み方向に伸縮する多数のコイルばねと、面状に広がり多数のコイルばねの一端を覆う一方布材と、面状に広がり多数のコイルばねの他端を覆う他方布材とを備え、これら一方布材および他方布材は、隣り合うコイルばね同士間で互いに隣接して接合されるクッションにおいて、クッションは前後方向および/または左右方向にゾーン分けされ、各ゾーンは互いに異なるクッション硬さを有することを特徴とする。
【0007】
かかる本発明によれば、クッションの上に座る使用者に従来よりも快適な座り心地を提供することができる。クッション硬さは、厚み方向に伸縮するコイルばね自身の特性と、一方および他方布材の間に縮設されるコイルばねの弾発力に基づく。各ゾーンのクッション硬さの異なりは、例えば各ゾーンに配列されるコイルばねのばね定数を異ならせることによって実現され、例えば胴径の異なる複数種類のコイルばねを準備したり、線径ないしピッチの異なる複数種類のコイルばねを準備したりする。またはコイルばねを異なる圧縮力で縮設することによって実現される。
【0008】
ゾーン分けされたクッションの各ゾーンは、それぞれ好適なクッション硬さに設定されて、座り心地が向上する。本発明の一局面としてクッションは、当該クッションの左右方向中心を通り前後方向に延びるセンタゾーンと、センタゾーンから左側へ連なるレフトゾーンと、センタゾーンから右側へ連なるライトゾーンと、を含み、センタゾーンのクッション硬さが、レフトゾーンおよびライトゾーンのクッション硬さよりも小さい。かかる局面によれば、クッションが使用者の身体左部および身体右部を好適に支持することができる。
【0009】
本発明の好ましい局面としてクッションは、当該クッションの左縁を含む左縁ゾーンおよびクッションの右縁を含む右縁ゾーンを含み、これら左縁ゾーンおよび右縁ゾーンのクッション硬さが、レフトゾーンおよびライトゾーンのクッション硬さよりも大きい。かかる局面によれば、使用者がクッションから外側へはみ出し難くなり座り心地が向上する。
【0010】
本発明のさらに好ましい局面としてクッションは、使用者の胴部を支持する背もたれゾーンと、かかる背もたれゾーンよりも前方に配置されて使用者の骨盤を支持する座ゾーンとを含み、背もたれゾーンのクッション硬さが、座ゾーンのクッション硬さよりも小さい。かかる局面によれば、背もたれゾーンが座ゾーンよりも柔らかくなり、座り心地が一層向上する。
【0011】
本発明の一局面としてクッションは、背もたれゾーンから後方へ連なるリヤゾーンをさらに含み、リヤゾーンのクッション硬さが、背もたれゾーンのクッション硬さよりも大きい。かかる局面によれば、使用者の胴部の上側部分を確りと支持し得て、座り心地が一層向上する。
【0012】
本発明の一局面としてクッションは、座ゾーンから前方へ連なるフロントゾーンをさらに含み、フロントゾーンのクッション硬さが、座ゾーンのクッション硬さよりも小さい。かかる局面によれば、使用者の大腿を優しく支持し得て、座り心地が一層向上する。
【0013】
本発明の一局面として背もたれゾーンは、座ゾーンから立設するよう立体的に形成される。かかる局面によれば、クッションが前後・左右・上下に立体的に形成されて、保形性を保つことができる。したがって使用者がクッションを使用していない無荷重状態で背もたれゾーンが自立することができる。
【0014】
本発明の一局面としてクッションは、当該クッションの左右方向中心を通り前後方向に延びるセンタ領域と、かかるセンタ領域から左側へ連なるレフト領域と、センタ領域から右側へ連なるライト領域とを含み、センタ領域のクッション厚み寸法がレフト領域およびライト領域のクッション厚み寸法よりも小さい。かかる局面によれば、クッションを床等敷いて使用する際にレフト領域およびライト領域のクッション表面が凸にされ、センタ領域のクッション表面が凹にされる。そしてレフト領域およびライト領域が使用者の身体左部および身体右部を好適に支持することができる。なおクッション厚み寸法は、クッションが使用されていない無負荷状態をいう。
【0015】
本発明の一局面としてクッションは、当該クッションの左縁を含む左縁領域およびクッションの右縁を含む右縁領域を含み、左縁領域および右縁領域のクッション厚み寸法が、左縁領域と右縁領域との間の領域のクッション厚み寸法よりも大きい。かかる局面によれば、左縁領域および右縁領域のクッション表面が相対的に凸に形成されて、使用者がクッションから外部へはみ出し難くなり、座り心地が向上する。
【0016】
クッション硬さは、例えばクッション厚み方向に伸縮するコイルばねのばね定数によって規定される。例えばコイルばねを構成する線材の線径が大きいほどばね定数が大きくなり、コイルばね自身が硬くなり、クッションが硬めにされる(逆も然り)。あるいは本発明の一局面としてクッション硬さは、クッションの無荷重状態における圧縮度によって規定される。クッションの無荷重状態において、コイルばねの圧縮度が大きいほど一方および他方布材が負担する圧縮力が大きい。この場合、クッションの使用者は、クッションが硬いと感じる。逆に、クッションの無荷重状態におけるコイルばねの圧縮度が小さいほど、クッションの使用者は、クッションが柔らかいと感じる。
【発明の効果】
【0017】
このように本発明によれば、従来よりも快適な座り心地を提供することができ、使用者の健康が増進される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態を示す全体斜視図である。
【
図3】同実施形態の一部を取り出して示す斜視図である。
【
図6】同実施形態がねじれる様子を示す斜視図である。
【
図9】同実施形態の他の変形例を示すマップである。
【
図10】同実施形態のさらに他の変形例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態になるクッションを示す斜視図であり、右方からみた状態を表す。
図2は、同実施形態を示す斜視図であり、前上方からみた状態を表す。本実施形態のクッション10は、面状に広がり、椅子のように座ゾーン50および背もたれゾーン60を有する。座ゾーン50は、クッション10の前部に配置され、クッション10の使用者の腰部を支える。背もたれゾーン60は、クッション10の後部に配置されて座ゾーン50の後縁から立ち上がるように広がり、使用者の胴部を支える。以下の説明において、クッション10の上側に位置する使用者(図略)からみて、頭側を後方といい、足側を前方といい、かかる前後方向と直交する方向を左右方向といい、これら前後方向および左右方向と直交する方向をクッション10の厚み方向という。
【0020】
図3は、同実施形態の一部を取り出して示す斜視図であり、何ら外力を受けていない無荷重状態を表す。
図4は、同実施形態の一部を取り出して示す拡大平面図であり、発明の理解を容易にするため、コイルばね同士の間隔を広げて表す。
図5は、同実施形態を示す拡大断面図であり、
図4中、平坦な断面V-Vでクッションを切断し、切断面を矢の方向にみた状態を表す。
図5の下半分は、クッションが厚み方向に荷重を受けない無荷重状態を表す。
図5の上半分は、クッションが前後方向および/または左右方向に引き延ばされた状態を表す。
【0021】
クッション10は、一方布材11、他方布材21、および複数のコイルばね31を備える。複数のコイルばね31は、厚み方向に延在する姿勢にされて、クッション10の前後方向に多数配列され、さらに左右方向にも多数配列され、厚み方向に伸縮する。各コイルばね31は、例えば鋼線やプラスチック線等、弾性変形する線材を巻回してなる圧縮コイルばねである。一方布材11は、前後方向かつ左右方向に広がる1枚のシート膜であり、多数のコイルばね31の一端を覆う。他方布材21も前後方向かつ左右方向に広がる1枚のシートであり、多数のコイルばね31の他端を覆う。本実施形態の布材は、熱溶着可能な化学繊維製の不織布である。
【0022】
各コイルばね31の胴径φcは40~45[mm]の範囲に含まれる所定値である。胴径が40[mm]よりも小さくなると、コイルばねが密集して、クッション10の重量が大きくなり、持ち運び性能が低下する。胴径φcが45[mm]よりも大きくなると、ばね定数が小さくなり、使用者がクッション10に座るとコイルばねが最小長まで縮んでしまういわゆる底着き(そこつき)が生じる。また同様の理由により、各コイルばね31のコイル巻数は、3.0~7.0巻の範囲に含まれる所定値であり、例えば4.0巻である。
【0023】
各コイルばね31を構成するばね線の線径φdは1.3~1.9[mm]の範囲に含まれる所定値であり、例えばφd=1.3、φd=1.6、φd=1.8、φd=1.9 の中から選択される。線径φdが1.9[mm]よりも大きくなるとクッション10の重量が大きくなり、持ち運び性能が低下する。線径φd=が1.3[mm]よりも小さくなると、ばね定数が小さくなり底着きが生じる。
【0024】
各コイルばね31のコイル巻き数は3.0~7.0[巻]の範囲に含まれる所定値である。コイル巻き数が7.0よりも大きいとクッション10の重量が大きくなり、持ち運び性能が低下し、底着きが生じる。コイル巻き数が3.0よりも小さいと、コイルばねが上側シートおよび下側シートを突き破ってしまう虞がある。
【0025】
図4および
図5を参照して、一方布材11および他方布材21は接合点44で互いに隣接して接合される。接合点44は、隣り合うコイルばね31,31同士間で、互いに間隔Jを空けながら断続的に配列される。 接合点44は、第1接合点44aおよび第2接合点44bを含む。第1接合点44aおよび第2接合点44bは、非接合部分44cを空けて向き合い、2点で1対をなす。接合点44は隣り合うコイルばね31,31同士間に配置される。ここで第1接合点44aは一方のコイルばね31側に配列されるのに対し、第2接合点44bは他方のコイルばね31側に配列され、非接合部分44cが、隣り合うコイルばね31,31同士の丁度中央に配置される。
【0026】
コイルばねの配置が特に限定されないが、この実施形態ではコイルばね31が前後方向および左右方向に格子状に配列される。
図4には、隣り合うコイルばね31,31の間を二等分する中間線Nが示される。中間線Nは前後方向および左右方向に延びる直線であり、互いに直交する。
【0027】
接合点44は、隣り合う2個のコイルばね31,31間に2箇所設けられる。つまり1個のコイルばね31は、8個の接合点44に包囲される。これにより一方布材11および他方布材21は、各コイルばね31を収容する袋Pを構成する。
【0028】
間隔Jは、1個のコイルばね31の近傍に配置される接合点44同士の間隔を表す。間隔Jは、1個のコイルばね31の外径寸法の半分以上であるが、当該外径寸法以下である。縦横に対して斜め方向に隣り合うコイルばね31,31間には、貫通口43が配置される。貫通口43を介して隣り合う接合点44,44の間隔は、間隔Jより大きくされてもよい。
【0029】
接合点44は中間線N上に間隔を空けて複数配列される。隣り合うコイルばね31,31同士間を通る中間線Nに関し、非接合部分44cは中間線Nと重なり、第1接合点44aおよび第2接合点44bは中間線Nを挟んで互いに向き合う。
【0030】
互いに向き合う側とは反対側、つまりコイルばね31に近い側、で第1接合点44aは角部分45を丸くされる。第2接合点44bも同様である。これにより接合点44は、剥がれ難くされ、耐久性が向上する。
【0031】
第1接合点44aは、中間線Nに沿って長く延びる形状にされる。つまり第1接合点44aは、隣り合うコイルばね31,31を横切る方向に短くされる。第2接合点44bも同様に細長い形状にされる。これら細長い形状の第1接合点44aおよび第2接合点44bが向き合って対をなすことにより、接合点44は一方布材11および他方布材12を強力に接合する。
【0032】
本実施形態では、非接合部分44cを通過する中間線Nで切り離し可能であれる。これにより、コイルばね31を収容する袋Pは破損しない。本実施形態によれば、マット構造の製造者は予め大きなマット構造を製造しておき、次に中間線Nで切断することにより、所定の前後寸法L、左右寸法Wのマット構造を容易かつ多数得ることができる。
【0033】
本実施形態の一方布材11および他方布材21は、化学繊維からなる不織布であり、適度な通気性と目付[g/m2]を有する。接合点44は溶着により形成される。一方布材11および他方布材21は、点状に間隔を空けて接合される。
【0034】
袋Pの厚み方向の寸法は、コイルばね31の自然な状態の長さよりも短いことから、一方布材11および他方布材21は、これら間にコイルばね31を圧縮する。換言すると、一方布材11および他方布材21間に縮設されたコイルばね31は、クッション10の無荷重状態で一方布材11および他方布材21を互いに離れる方向に押し返しており、かかる押し力が、隣り合うコイルばね31,31の間隔G1を小さくする。これにより、クッション10は無荷重状態でコシおよびハリを備えることができ、クッション10自身にある程度の保形性を与える。
【0035】
本実施形態におけるコイルばね31の胴長は、何ら荷重を受けない自然な長さで40~60[mm]の範囲に含まれる所定値であり、袋Pに縮設された無荷重状態で25~50[mm]の範囲に含まれる所定値である。これにより薄くて持ち運びし易いクッションを提供することができる。本実施形態では、無荷重状態における厚み寸法が一定であって、自然な長さで40[mm]であり、袋Pに縮設された無荷重状態で25~35[mm]の範囲に含まれる所定値である。
【0036】
なお無荷重状態の胴長が25[mm]よりも小さい場合、コイルばね31が圧縮され過ぎてクッション10の重量が大きくなり、持ち運び性能が低下する。反対に胴長が50[mm]よりも大きくなると、底着きが生じる虞がある。
【0037】
図4を参照して、一方布材11および他方布材21は、隣り合う接合点44,44間にしわ42を有する。
図5を参照して、一方布材11および他方布材21は、これらの間に縮設されたコイルばね31によって互いに離れるように押し広げられる。このためクッション10が使用者の体重等の外力を受けない無荷重状態で、コイルばね31同士が互いに接近し、コイルばね31同士の間に多数のしわ42ができる。
【0038】
本実施形態のコイルばね31は、コイルばね31の伸縮方向、つまりクッション10の厚み方向にみて、前後方向および左右方向に格子状に配列される。接合点44は、斜め隣りのコイルばね31,31間以外に設けられる。そして斜め隣りのコイルばね31,3 1間に形成される貫通口43は、クッション10の変形の自由度、換言するとコイルばね31の伸縮の自由度、を増加させる。
【0039】
図4を参照して、前後方向および左右方向に隣り合うコイルばね31,31間に配列される接合点44は、隣り合う貫通口43 ,43の間において、複数個である。本実施形態では2個(偶数個)である。奇数個ではなく、偶数個とすることにより、隣り合うコイルばね31,31が最も近接する箇所Uで、一方布材11および他方布材21は分離している。換言すると、一方布材11および他方布材21の接合点は、隣り合うコイルばね31,31が最も近接する箇所U以外に設けられる。
【0040】
発明の理解を容易にするため、
図4および
図5上半分では、個々のコイルばね31の間隔を広げて描いている。
図4および
図5下半分に示すように、無荷重状態のクッション10は、コイルばね31の弾発力によって、厚み方向に大きくされ、前後方向および左右方向に小さくされ、接合点44および貫通口43はしわ42に覆われている。
【0041】
クッション10は、外力を受けることにより、
図3に示す無荷重状態から弾性変形する。例えば使用者の体重がクッション10に作用することにより各コイルばね31が厚み方向に圧縮されて人体の輪郭に沿うよう弾性変形する。
【0042】
またクッション10は、無荷重状態で
図3に示すように、隣り合うコイルばね31,31が狭い間隔G1で詰まっている。しかし実際のクッション10は、狭い間隔G1の中に、広い幅G2のマチ( 一方布材11および他方布材21)を内在し、しわ42を有する。このため隣り合うコイルばね31,31の距離が、間隔G1を超えて、幅G2まで広がることができ、クッション10の自由な変形が実現する。つまりクッション10は、前後方向および/または左右方向に引張力を受けることにより、
図5上半分に示すように前後方向および/または左右方向に伸びることができる。
【0043】
したがって
図3に示すクッション10の厚み寸法Tは外力を受けて弾性的に縮むことができるとともに、前後寸法Lおよび左右寸法Wが外力を受けて弾性的に延びることができる。これらの弾性変形は、同時に実現可能である。そしてクッション10はねじられて
図6に示すようにねじり変形することができる。したがってクッション10の変形の自由度が確保され、使用者に快適な座り心地を提供する。また
図3から
図6に示すようにクッション10は、緩衝材としての効果を発揮する。
【0044】
本実施形態のクッション10は、
図1および
図2に示すように背もたれ付椅子100に載せられて、座ゾーン50が下方から背もたれ付椅子100の座板に支持される。また背もたれゾーン60が背もたれ付椅子100の背もたれ板に支持される。
【0045】
背もたれゾーン60は、座ゾーン50の後縁51から立ち上がり、上方および後方へ傾斜して広がる。座ゾーン50の後縁51は例えば円弧を描くように形成され、座ゾーン50の左縁部および右縁部よりも左右中央部が後方へ広がる。これに伴い背もたれゾーン50は、少なくとも前半分(下半分)が立体的なアーチ状に形成される。このようにクッション10は立体形状に形成される。
【0046】
図2を参照して背もたれゾーン60の前後方向寸法は、後方(上方)よりも前方(下方)で大きくされる。そして背もたれゾーン60の前縁(下縁)は、少なくとも左右端および左右方向中央部の3点で、座ゾーン50の後縁51に接合される。かかる立体形状のクッション10は、自身の保形性も相俟って、背もたれ板がなくても椅子形状を保持することができる。
【0047】
図7は、クッション10の性状をコイルばね31毎に示すマップであり、
図1および
図2に対応する。
図7中の各格子は、コイルばね31を収容する袋Pをそれぞれ示す。
図7中、薄墨色に着色された格子の濃度はクッション硬さを表し、淡色ほど柔らかく、濃色ほど硬い。
【0048】
本実施形態のクッション10は、前方から後方へ、フロントゾーン55と、座ゾーン50と、背もたれゾーン60と、リヤゾーン65にゾーン分けされる。
【0049】
フロントゾーン55は、座ゾーン50から前方へ延設される。リヤゾーン65は、背もたれゾーン60から後方および上方へ傾斜して延設される。本実施形態では、ゾーン毎に異なるクッション硬さにされる。具体的には、背もたれゾーン60のクッション硬さが、座ゾーン50のクッション硬さよりも小さく(柔らかく)される。つまりクッション10の使用者が背もたれゾーン60を厚み方向に押すと柔らかく感じられ、座ゾーン50を厚み方向に押すと硬く感じられる。本実施形態によれば、座ゾーン50で使用者のヒップ部を確りと支持し、背もたれゾーン60で使用者のウエスト部を優しく支持することができる。
【0050】
また本実施形態では、フロントゾーン55のクッション硬さが、座ゾーン50のクッション硬さよりも小さく(柔らかく)される。つまり使用者がフロントゾーン55を厚み方向に押すと柔らかく感じられ、座ゾーン50を厚み方向に押すと硬く感じられる。本実施形態によれば、座ゾーン50で使用者のヒップ部を確りと支持し、フロントゾーン55で使用者の大腿を優しく支持することができる。
【0051】
また本実施形態では、リヤゾーン65に配置されるコイルばね31の硬さが、背もたれゾーン60に配置されるコイルばね31の硬さよりも大きく(硬く)される。つまり使用者が背もたれゾーン60を厚み方向に押すと柔らかく感じられ、リヤゾーン65を厚み方向に押すと硬く感じられる。本実施形態によれば、背もたれゾーン60で使用者のウエスト部を優しく支持し、リヤゾーン65で使用者の肋骨部を確り支持することができる。
【0052】
なお本実施形態では、コイルばね31が3種類の硬さに設定される。具体的には、3種類の異なるばね定数のコイルばね31が準備され、座ゾーン50の硬さが大きくされ、背もたれゾーン60の硬さが小さくされ、フロントゾーン55およびリヤゾーン65のクッション硬さが中程度にされる。
【0053】
クッション硬さの設定は、各コイルばね31を構成するばね線材の線径φdの変更によって実現される。例えば線径φdを1.9[mm]と太くすることによってコイルばね31は硬くされる。あるいは線径φdを1.3[mm]と細くすることによってコイルばね31は柔らかくされる。あるいは線径φdを1.6[mm]または1.8[mm]にされることによって、中程度の硬さにされる。これは、ばね定数の変更によるものである。
【0054】
あるいはクッション硬さの設定は、クッション無荷重状態における各コイルばね31の圧縮度を変更することによって実現される。具体的には、クッション10の無荷重状態の厚み寸法が一定であるとして、同じ線径・同じ巻きピッチであって自然の長さが異なるばねを多数準備する。そして硬いゾーンには長いコイルばね31を配置して圧縮度を大きくし、柔らかいゾーンには短いコイルばね31を配置して圧縮度を小さくする。圧縮度の大きなコイルばね31は、無荷重状態で大きな支持力を発揮することから、厚み方向に押されても縮みにくく、使用者に硬く感じられる。反対に圧縮度の大きなコイルばね31は、無荷重状態で小さな支持力を発揮することから、厚み方向に押されると縮み易く、使用者に柔らかく感じられる。
【0055】
本実施形態の各ゾーンにおける硬さの設定は、上述したばね定数の変更によってもよいし、あるいは圧縮度の変更によってもよいし、あるいは両者を併用するものであってもよいし、他の変更等によってもよいし、特に限定されない。
【0056】
次に本発明の変形例を説明する。
図8は本発明の変形例を示す斜視図であり、各コイルばね31の特性をマップ化したものである。
図8中の各格子は、コイルばね31を収容する袋Pをそれぞれ示す。また各格子を英文字A~Iと数字1~16の組み合わせで表示する。この変形例につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。この変形例のクッション70は、上述したクッション10(
図1~
図7)と略同一の椅子形状であるが、無荷重状態におけるクッション厚み寸法が互いに異なる。つまり、凹凸の無い椅子表面にクッション70を敷いて各コイルばね31の裏側の他端同士を揃え、各コイルばね31の表側の一端同士を比較すると、クッション70の一方布材11の表面が凹凸状にされる。なおクッション70表面の凹凸を理解し易く表現するため、
図8では座ゾーン50および背もたれゾーン60を同一平面に揃え、前上方から斜め方向にみおろした斜視図で表す。
【0057】
具体的にはクッション70は、当該クッションの左右方向中心を通り前後方向に細長く真っ直ぐ延びるセンタ領域(E10,E11,E12・・・・E16)と、かかるセンタ領域から左側へ連なるレフト領域(F10とF16とH16とH10を結んだ枠に囲まれる領域)と、センタ領域から右側へ連なるライト領域(B10とB16とD16とD10を結んだ枠に囲まれる領域)とを含む。
【0058】
クッション70が使用者の体重を支える際、レフト領域は骨盤左部を支え、ライト領域は骨盤右部を支えることから、レフト領域およびライト領域は、センタ領域と比較して、使用者から大きな圧力を受ける。
【0059】
使用者を支持しない無荷重状態で
図8に示すクッション70は、センタ領域に配置されるコイルばね31のばね胴長が、レフト領域およびライト領域に配置されるコイルばね31のばね胴長よりも短い。このため
図8の実物ではセンタ領域が条溝状にされる。
図8の実施形態では、座り心地が一層良くなる。
【0060】
使用者を支持しない無荷重状態で
図8に示すクッション70は、座面の左縁領域(I10,I11,I12・・・I15)および右縁領域(A10,A11,A12・・・A15)のばね胴長が、レフト領域およびライト領域に配置されるコイルばね31のばね胴長よりも長い。このため
図8の実物では左縁領域および右縁領域が突条にされる。
図8の実施形態では、座り心地が一層良くなる。
【0061】
次に本発明の他の実施形態を説明する。
図9は本発明の他の実施形態を示す斜視図であり、各コイルばね31の特性をマップ化したものである。
図9中の各格子は、コイルばね31を収容する袋Pをそれぞれ示す。また各格子を英文字と数字の組み合わせで表示する。他の実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。他の実施形態のクッション80は座布団のような矩形であり、利用者の好みに応じて、骨盤、肋骨、ウエスト等、自由な部位を支持するクッションとしての利用に供される。
【0062】
クッション80は、リヤゾーン(A21とA24とI24とI21を結んだ枠に囲まれるゾーン)と、当該リヤゾーンから前方へ連続して広がるフロントゾーン(A25とA29とI29とI25を結んだ枠に囲まれるゾーン)にゾーン分けされる。
【0063】
かかるフロントゾーンは、センタゾーン(E25,E26,E27・・・E29)、レフトゾーン(F25とF29とH29とH25を結んだ枠に囲まれるゾーン)、左縁ゾーン(I25,I26・・・I29)、ライトゾーン(B25とB29とD29とD25を結んだ枠に囲まれるゾーン)、おおび右縁ゾーン(A25,A26・・・A29)にさらにゾーン分けされる。左縁ゾーンおよび右縁ゾーンはクッション80の左縁および右縁をそれぞれ占め、前後方向に細長く伸びる。レフトゾーンはセンタゾーンと左縁ゾーンの間を占める。ライトゾーンはセンタゾーンと右縁ゾーンの間を占める。
【0064】
リヤゾーンに配置されるコイルばねは全て線径φd=1.6[mm]である。これに対し、フロントゾーンに配置されるコイルばねは、リヤゾーンよりも硬めに設定される。具体的には、レフトゾーンおよびライトゾーンに配置されるコイルばねは線径φd=1.8[mm]である。また左縁ゾーンおよび右縁ゾーンに配置されるコイルばねは一層硬くされて線径φd=1.9[mm]である。これにより左縁ゾーンおよび右縁ゾーンはフロントゾーンの中で最も硬く設定される。
【0065】
本実施形態では、一部例外として、センタゾーンに配置されるコイルばねは線径φd=1.3[mm]である。これによりセンタゾーンはフロントゾーンの中で最も柔らかく設定され、リヤゾーンよりも柔らかい。
【0066】
クッション80はゾーン分けされて、ゾーン同士を対比してコイルばねの硬さが異なることから、使用者に快適な座り心地を提供する。
【0067】
さらにクッション80の表面には凹凸を設ける。クッション80は、センタ領域(E21,E22・・・E29)と、クッション80の左縁を含む左縁領域(I21,I22・・・I29)と、クッション80の右縁を含む右縁領域(A21,A22・・・A29)と、レフト領域(F21とF29とH29とH21を結んだ枠に囲まれるゾーン)と、ライト領域(B21とB29とD29とD21を結んだ枠に囲まれるゾーン)を有する。そして無荷重状態において、左縁領域に配置されるコイルばねの胴長が、隣接するレフト領域に配置されるコイルばねの胴長より長くされる。また右縁領域に配置されるコイルばねの胴長が、隣接するライト領域に配置されるコイルばねの胴長より長くされる。これにより
図9の実物では左縁領域および右縁領域が突条に形成される。
【0068】
また無荷重状態において、センタ領域に配置されるコイルばねの胴長が、隣接するレフト領域およびライト領域に配置されるコイルばねの胴長より短くされる。これにより
図9の実物ではセンタ領域が条溝に形成される。
【0069】
クッション80の表面は領域を区分されて、領域同士を対比してコイルばねの胴長が異なることから、無荷重状態で表面に凹凸が設けられ、使用者に快適な座り心地を提供する。なお図示はしなかったが、クッション80の前側および/または後側に、前後を区別する目印を設けてもよい。目印は、色や線によるマーキングであったり、クッション80の輪郭等の形状であったり、格子内のコイルばねの胴長を変えたり等によって実現され、使用者に容易に視認される。
【0070】
次に、
図8および
図9に示す実施形態の変形例につき説明する。かかる変形例では、袋Pを構成する接合点44の間隔(つまり袋Pの寸法)を共通にしつつ、コイルばねの胴径を異ならせる。
図10は本実施形態のさらに他の変形例を示す拡大断面図である。
図10に示す変形例では、各コイルばね31a、31b,31cの胴径φca,φcb,φccが異なる(φca<φcb<φcc)。各コイルばね31a、31b,31cは、同一寸法の袋P内で、一方布材11および他方布材21を離反するように押し広げ、袋Pを自身の胴径φcと略同一にして該袋Pに収容される。そうすると、対応する厚み寸法Ta,Tb,Tcがそれぞれ異なる(Ta>Tb>Tc)。
【0071】
つまり全ての袋Pの寸法が同一の場合、コイルばね31の胴径φcとクッションの無荷重状態の厚み寸法Tは反比例関係にある。そこで
図8および
図9に示す実施形態では、凸状の領域、例えばA6,A8,A10,A11・・・A15や、A21,A22・・・A29等に、胴径φcの小さなコイルばね31を配置し、凹状の領域、例えばE10,E11・・・E16や、E21,E22・・・E29に胴径φcの大きなコイルばね31を配置するとよい。これにより、コイルばね31の胴径φcのみでクッション10の厚み寸法Tが調整される。
【0072】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。例えば上述した1の実施形態から一部の構成を抜き出し、上述した他の実施形態から他の一部の構成を抜き出し、これら抜き出された構成を組み合わせてもよい。本実施形態のコイルばね31は図面に示すように格子状に配列されるが、図示しない変形例として、コイルばね31はジグザグ配置や千鳥配置であってもよい。またコイルばねが配置されないゾーンが設けられてもよい。
【0073】
図7に示す実施形態では、クッション10を4つにゾーン分けし、3種類の異なる硬さのコイルばね31を準備したが、本発明のゾーン分けは4つに限られず、2以上の複数であればよい。また各ゾーンに配置されるコイルばねの種類は、2種類に限られず、4種類でも5種類でもそれ以上の種類であってもよい。つまりコイルばね31の硬さの種類数とゾーン数は一致してもよいし不一致であってもよい。
【0074】
本実施形態の接合点44は、2個1対であるがこれに限られない。接合点は点線を成すよう1個ずつ配列されていてもよい。
図8および
図9に示す突条の高さは、共通するものであってもよいし、あるいはジグザグ状に異なってもよい。
【0075】
また
図7および
図8を参照して、クッション表面のうち使用者の骨盤を支える左右領域C11,C12,D11,D12,F11,F12,G11,G12に凹部を形成してもよい。かかる凹部は、コイルばね31の胴長および/または胴径を前述したとおり小さくすることによって構成される。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、日用品において有利に利用される。
【符号の説明】
【0077】
10 クッション、 11 一方布材、 21他方布材、
31コイルばね、 42 しわ、 43 貫通口、 44 接合点。