(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149098
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】積層体、金属張積層板、プリント配線板および半導体装置
(51)【国際特許分類】
H05K 1/03 20060101AFI20231005BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H05K1/03 630F
B32B15/08 J
H05K1/03 610R
H05K1/03 610T
H05K1/03 610L
H05K1/03 610N
H05K1/03 610S
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057483
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】津田 和洋
(72)【発明者】
【氏名】梅野 邦治
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA01A
4F100AA03B
4F100AA03C
4F100AA07B
4F100AA07C
4F100AA08B
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4F100GB43
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4F100JG04A
4F100JG04B
4F100JG04C
4F100JG05
4F100JJ07
(57)【要約】
【課題】耐リフロー性を向上させた低誘電特性を備える絶縁層を含む金属張積層板およびプリント配線板、かかるプリント配線板を備え、信頼性に優れた電子機器を提供すること。
【解決手段】金属張積層板100は、第一の樹脂組成物と繊維基材により構成された第一のプリプレグ101から成る第一の絶縁層をコア部材とし、第一の樹脂組成物が、第一の熱硬化性樹脂と、第一の無機充填材と、を含み、第一の無機充填材が、5%重量減少温度が300℃以上である一種または二種以上の難燃剤を含み、コア部材の両面に、第一の絶縁層、または、第二の樹脂組成物と有機不織布により構成された第二のプリプレグ102から成る第二の絶縁層が積層され、金属張積層板100の少なくとも片方の面において最も外側に位置する絶縁層が第二の絶縁層である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の樹脂組成物と繊維基材により構成された第一のプリプレグから成る第一の絶縁層と、
第二の樹脂組成物と有機不織布により構成された第二のプリプレグから成る第二の絶縁層と、
で構成される積層体であって、
前記第一の樹脂組成物が、
第一の熱硬化性樹脂と、
第一の無機充填材と、
を含み、
前記第一の無機充填材が、5%重量減少温度が300℃以上である一種または二種以上の難燃剤を含む、積層体。
【請求項2】
第一の樹脂組成物と繊維基材により構成された第一のプリプレグから成る第一の絶縁層をコア部材とする金属張積層板であって、
前記第一の樹脂組成物が、
第一の熱硬化性樹脂と、
第一の無機充填材と、
を含み、
前記第一の無機充填材が、5%重量減少温度が300℃以上である一種または二種以上の難燃剤を含み、
前記コア部材の両面に、
前記第一の絶縁層、または、
第二の樹脂組成物と有機不織布により構成された第二のプリプレグから成る第二の絶縁層、
が積層され、
当該金属張積層板の少なくとも片方の面において最も外側に位置する絶縁層が前記第二の絶縁層である、金属張積層板。
【請求項3】
前記第一の樹脂組成物が、難燃性エポキシ樹脂を含み、
前記第一の樹脂組成物中の前記難燃性エポキシ樹脂の含有量が、前記第一の樹脂組成物全体に対して10質量%以上50質量%未満である、請求項2に記載の金属張積層板。
【請求項4】
前記第一の樹脂組成物中の前記第一の無機充填材の含有量が、前記第一の樹脂組成物全体に対して30質量%以上60質量%未満である、請求項2または3に記載の金属張積層板。
【請求項5】
前記第一の無機充填材が、
水酸化マグネシウムおよびベーマイトからなる群から選択される少なくとも一つの前記難燃剤を前記第一の樹脂組成物全体に対して20質量%以上含む、請求項2乃至4いずれか一項に記載の金属張積層板。
【請求項6】
前記有機不織布の材料が、ポリアミド樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、ポリオレフィン樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、フッ素樹脂繊維、ポリシクロオレフィン樹脂繊維およびポリフェニレンエーテル樹脂繊維からなる群から選択される一または二以上の樹脂繊維である、請求項2乃至5いずれか一項に記載の金属張積層板。
【請求項7】
前記第二の樹脂組成物が、エポキシ樹脂、マレイミド化合物、シアネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル共重合体、および、分子中に不飽和二重結合を2個以上有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項2乃至6いずれか一項に記載の金属張積層板。
【請求項8】
前記第二の絶縁層が、有機充填材および第二の無機充填材の少なくとも一方を含む、請求項2乃至7いずれか一項に記載の金属張積層板。
【請求項9】
前記第二の無機充填材が、無機ケイ酸塩、無機酸化物、無機炭酸塩、無機水酸化物、無機硫酸塩、無機ホウ酸塩、無機窒化物および無機チタン酸塩からなる群から選択される少なくとも一種を主として含む、請求項8に記載の金属張積層板。
【請求項10】
前記有機充填材が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルペンテン、ポリビニルブチラール、アクリロニトリルブタジエンゴム、環状オレフィン共重合体、ポリフェニレンエーテル、パルプおよび木粉からなる群から選択される少なくとも一種を主として含む、請求項8または9に記載の金属張積層板。
【請求項11】
当該金属張積層板の各絶縁層同士の間、または最表層に、金属層を有する、請求項2乃至10いずれか一項に記載の金属張積層板。
【請求項12】
請求項11に記載の金属張積層板の前記金属層の1層または2層以上が回路加工された導体回路層を有して成る、プリント配線板。
【請求項13】
請求項12に記載のプリント配線板と、
前記プリント配線板の上部に搭載された半導体素子と、
を備える半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、金属張積層板、プリント配線板および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の電子機器等が備えるプリント配線基板として、例えば、板状をなすプリプレグの少なくとも一方の面に金属層が設けられた金属張積層板において、この金属層をパターニングした構成をなすものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、このような電子機器を、各種センサーや、アンテナおよび受信機等に適用することが提案されており、この場合、かかる電子機器が備えるプリント配線基板には、優れた高周波特性を有することが求められ、誘電率や誘電正接の低い絶縁層が用いられる(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
さらに、近年、これらの電子機器の高速化および高精度化に伴い、高周波帯域で用いられるプリント配線板には、より安定した高速信号を伝送する事が求められる。プリント配線板を構成する絶縁層に、ガラスクロスに代表される織布を基材としたプリプレグを用いた場合、繊維を束ねた縦糸と横糸で構成される織布は、経糸と横糸が重なる点や、網目となる糸の存在しない箇所(バスケットホール)など構造的に粗密があり、この絶縁層上に設けられた回路においては、織布と絶縁層を構成する樹脂組成物との比誘電率の差から生じる伝播時間の差(スキュー)が信号品質劣化の要因となる(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-31957号公報
【特許文献2】特開2003-12710号公報
【特許文献3】特開2006-232952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、織布の構造的粗密を軽減する為に、より構造的粗密の少ない不織布を用いる事が考えられているが、低誘電特性の樹脂組成物と低誘電特性の有機不織布とからなるプリプレグで形成した金属張積層板は、リフロー等の加熱処理により、金属張積層板内部より発散する揮発分の影響により、有機不織布と樹脂の界面剥離に起因する絶縁層の内部破壊が起こり易い。
【0006】
本発明は、耐リフロー性を向上させた低誘電特性を備える絶縁層を含む金属張積層板およびプリント配線板、ならびに、かかるプリント配線板を備え、信頼性に優れた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが、鋭意検討を行った結果、難燃剤を適切に選定して、繊維基材を有し難燃性を満たす絶縁層と、有機不織布を有する絶縁層と、を組み合わせる事で、上記課題を解決できる事を見出した。
【0008】
本発明によれば、
第一の樹脂組成物と繊維基材により構成された第一のプリプレグから成る第一の絶縁層と、
第二の樹脂組成物と有機不織布により構成された第二のプリプレグから成る第二の絶縁層と、
で構成される積層体であって、
前記第一の樹脂組成物が、
第一の熱硬化性樹脂と、
第一の無機充填材と、
を含み、
前記第一の無機充填材が、5%重量減少温度が300℃以上である一種または二種以上の難燃剤を含む、積層体が提供される。
【0009】
本発明によれば、
第一の樹脂組成物と繊維基材により構成された第一のプリプレグから成る第一の絶縁層をコア部材とする金属張積層板であって、
前記第一の樹脂組成物が、
第一の熱硬化性樹脂と、
第一の無機充填材と、
を含み、
前記第一の無機充填材が、5%重量減少温度が300℃以上である一種または二種以上の難燃剤を含み、
前記コア部材の両面に、
前記第一の絶縁層、または、
第二の樹脂組成物と有機不織布により構成された第二のプリプレグから成る第二の絶縁層、
が積層され、
当該金属張積層板の少なくとも片方の面において最も外側に位置する絶縁層が前記第二の絶縁層である、金属張積層板が提供される。
【0010】
さらに、本発明によれば、上記第一のプリプレグから成る絶縁層をコア部材とした積層体の各絶縁層の間、又は最表層に、金属層を有する金属張積層板が提供される。
【0011】
さらに、本発明によれば、上記金属張積層板の金属層の1層または2層以上が回路加工された導体回路層を有して成る、プリント配線板が提供される。
【0012】
さらに、本発明によれば、上記プリント配線板と、上記プリント配線板の上部に搭載された半導体素子と、を備える半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐リフロー性を向上させた低誘電特性を備える絶縁層を含む金属張積層板およびプリント配線板、ならびに、かかるプリント配線板を備え、信頼性に優れた電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態における金属張積層板の構成の一例を示す断面図である。
【
図2】実施形態における第一のプリプレグから成る第一の絶縁層の構成の一例を示す断面図である。
【
図3】実施形態における第二のプリプレグから成る第二の絶縁層の構成の一例を示す断面図である。
【
図4】実施形態におけるプリント配線板の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
本実施形態において、組成物は、各成分をいずれも単独でまたは二種以上を組み合わせて含むことができる。
【0016】
(金属張積層板)
図1は、本実施形態における金属張積層板の構成の一例を示す断面図である。
図2は、
図1に示した第一のプリプレグ101から成る第一の絶縁層の構成の一例を示す断面図であり、
図3は、
図1に示した第二のプリプレグ102から成る第二の絶縁層の構成の一例を示す断面図である。
第一の絶縁層が第一のプリプレグ101から成るとは、具体的には、第一の絶縁層が第一のプリプレグ101またはその硬化物であることをいう。また、第二の絶縁層が第二のプリプレグ102から成るとは、具体的には、第一の絶縁層が第二のプリプレグ102またはその硬化物であることをいう。また、以下、第一及び第二の絶縁層について、それぞれ、適宜第一および第二のプリプレグを参照して説明する。
図1に示した金属張積層板100は、第一の樹脂組成物111と繊維基材112により構成された第一のプリプレグ101から成る第一の絶縁層をコア部材とする金属張積層板であって、第一の樹脂組成物111が、第一の熱硬化性樹脂と、第一の無機充填材と、を含み、第一の無機充填材が、5%重量減少温度が300℃以上である一種または二種以上の難燃剤を含む。そして、コア部材の両面に、第一の絶縁層、または、第二の樹脂組成物113と有機不織布114により構成された第二のプリプレグ102から成る第二の絶縁層が積層され、金属張積層板100の少なくとも片方の面において最も外側に位置する絶縁層が第二の絶縁層である。
さらに具体的には、
図1に示した金属張積層板100は、第一のプリプレグ101から成る第一の絶縁層と、第二のプリプレグ102から成る第二の絶縁層と、金属層103とを有する。
【0017】
第一の絶縁層は、第一の樹脂組成物111を繊維基材112に含浸して成る第一のプリプレグ101により構成された絶縁層である。第一のプリプレグ101は1枚でもよく、また、複数枚を積層することもできる。第一の絶縁層の上には金属箔等の金属層103を設ける事ができ、金属箔と重ね合わせて積層した金属張積層板100とすることができる。また、設計に応じたパターニングを施して、プリント配線板のコア部材として用いることができる。
【0018】
第一の絶縁層と金属層103の各々の層数も設計に応じたものとすることができ、第一の絶縁層と金属層103とを含んで構成される金属張積層板100の全体として、複数ある金属層103はスルーホールやビアホール等で設計に応じて電気的に接続される。
また、第一の絶縁層をコア部材として用いる態様として、他に、第一の絶縁層と金属層とから成るコア部材に対し、第一のプリプレグ101をビルドアップ部材としてさらに積層してもよい。
【0019】
第二の絶縁層は、第二の樹脂組成物113を有機不織布114に含浸して成る第二のプリプレグ102により構成された絶縁層である。コア部材の少なくとも一方の面、又は両面にビルドアップ材として第二の絶縁層を積層することができる。第二の絶縁層の上には金属層103を設ける事ができ、設計に応じたパターニングを施して、プリント配線板の構成部材として用いることができる。
【0020】
また、絶縁層と金属層103の各々の層数は
図1に示した数には限られず、設計に応じたものとすることができる。たとえば、第二の絶縁層上に設けられた金属層103は、第一の絶縁層に設けられた金属層103を含めた複数ある金属層103とスルーホールやビアホール等で設計に応じて電気的に接続される。また、第一のプリプレグ101をコア部材に積層した後に、第二のプリプレグ102を積層してもよく、第二のプリプレグ102を積層した後に、更に第二のプリプレグ102を積層してもよい。
【0021】
金属張積層板100は、難燃性および耐熱性に優れる第一のプリプレグ101から成る第一の絶縁層と、誘電特性に優れる第二のプリプレグ102から成る第二の絶縁層と金属層103により構成される。このため、第二の絶縁層に対し、リフロー処理により第一の絶縁層から発散される揮発分の影響を軽減する事ができる。すなわち、第二の絶縁層の内部において、第二の樹脂組成物113と有機不織布114との界面剥離に起因する内部破壊を効果的に抑制できる。
【0022】
また、第二のプリプレグ102から成る第二の絶縁層を、金属張積層板を構成する絶縁層全体の表層に積層することで、例えば表層の絶縁層上に設けられたアンテナ回路に対し、低誘電特性を効果的に活用できる。
また、本実施形態によれば、たとえば、難燃性に優れる絶縁層と、低誘電特性に優れた絶縁層とを備え、耐リフロー性を並立する金属張積層板100を得ることも可能となり、金属張積層板100をプリント配線基板や半導体装置に用いることもできる。
【0023】
(積層体)
本実施形態において、積層体は、上述の第一の絶縁層と上述の第二の絶縁層とで構成される。
以下、各層の構成をさらに具体的に説明する。
【0024】
(第一の絶縁層)
図2は、本実勢形態における第一のプリプレグ101から成る第一の絶縁層の断面図である。第一の絶縁層は、第一の樹脂組成物111を繊維基材112に含浸して成る第一のプリプレグ101により構成された絶縁層である。この絶縁層上には金属層を設ける事ができ、プリント配線板の設計に応じたパターニングを施してコア部材とすることができる。また、第一のプリプレグ101の複数枚を積層することもできる。絶縁層と金属層の各々の層数も設計に応じたものとすることができ、第一の絶縁層と金属層で構成される金属張積層板全体として、複数ある金属層は電気的にビアで接続される。また、設計に応じて、第一のプリプレグ101をビルドアップ部材としてコア部材に積層してもよい。
【0025】
第一の樹脂組成物111における第一の熱硬化性樹脂は、信頼性およびリフロー耐性向上の観点から、好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂、難燃性エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂;およびノボラック型フェノール樹脂等のフェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含み、より好ましくはエポキシ樹脂を含む。第一の熱硬化性樹脂は、さらに難燃性を高める為に難燃性エポキシ樹脂を含む事が好ましい。難燃性エポキシ樹脂として、たとえば、臭素化エポキシ樹脂が挙げられる。
【0026】
第一の樹脂組成物111中の難燃性エポキシ樹脂の含有量は、難燃性向上や機械強度向上の観点から、第一の樹脂組成物111の全組成に対して好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上である。
また、信頼性向上の観点から、第一の樹脂組成物111中の難燃性エポキシ樹脂の含有量は、第一の樹脂組成物111の全組成に対して好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは50質量%未満、さらに好ましくは45質量%以下である。
【0027】
第一の樹脂組成物111中の熱硬化性樹脂の総含有量は、たとえば20質量%以上であり、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であり、また、たとえば90質量%以下であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
【0028】
第一の樹脂組成物111中の第一の無機充填材の含有量は、難燃性およびリフロー耐性向上の観点から、第一の樹脂組成物111の全組成に対して好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。
また、成形性向上の観点から、第一の樹脂組成物111中の第一の無機充填材の含有量は、第一の樹脂組成物111の全組成に対して好ましくは60質量%未満であり、より好ましくは58質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下である。
【0029】
第一の樹脂組成物111は、5%重量減少温度が300℃以上である難燃剤を含む。かかる難燃剤の具体例として、水酸化マグネシウムおよびベーマイトが挙げられる。
5%重量減少温度が300℃以上である難燃剤の含有量は、難燃性の観点から、第一の樹脂組成物111全体に対して好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは23質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上である。
また、成形性の観点から、5%重量減少温度が300℃以上である難燃剤の含有量は、第一の樹脂組成物111全体に対して好ましくは60質量%未満であり、より好ましくは58質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下である。
【0030】
ここで、5%重量減少温度(℃)とは、材料の熱重量分析において、室温(25℃)での重量に対する重量減少が5%に達した温度を意味する。ここで、熱重量分析は試料を空気雰囲気下に置き、5℃/分の速度で昇温して測定する。
【0031】
第一の樹脂組成物111に含まれる第一の無機充填材の材料は、難燃性およびリフロー耐性向上の観点から、水酸化マグネシウムおよびベーマイトからなる群から選択される少なくとも一つの難燃剤を20質量%以上含み、より好ましくは水酸化マグネシウムである。
第一の樹脂組成物111は、その他、ホウ酸亜鉛や三酸化アンチモンなどの難燃助剤や、シリカや天然粘土鉱物(タルク、マイカ、カオリン、クレー)などの無機充填材を含んでもよい。
【0032】
第一の樹脂組成物111は、第一の熱硬化性樹脂および第一の無機充填材以外の成分を含んでもよい。かかる成分として、たとえば、溶媒、熱硬化性樹脂以外の硬化剤、イミダゾール化合物等の硬化促進剤、着色剤、カップリング剤、レベリング剤、感光剤、消泡剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、イオン捕捉剤などが挙げられる。
これらの成分の含有量は、第一の樹脂組成物111全体に対してたとえば0.01~2質量%程度とすることができる。
【0033】
第一のプリプレグ101は、例えば、第一の樹脂組成物111を有機溶剤に溶解させたワニスを繊維基材112に含浸し、加熱等により半硬化(Bステージ化)して製造することができる。繊維基材112の材料としては、例えば、Eガラス、Sガラス、低誘電ガラス、Qガラス等の無機ガラスなど、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。
【0034】
これらの繊維基材112は、例えば、織布、不織布、チョップドストランドマット、ロービング等の形状で、目的とする積層板の用途、性能等により選択される。また、必要により、一種類または二種類以上の材質及び形状を組み合わせてもよい。繊維基材112の厚さは、例えば、約0.01mm以上0.5mm以下のものを使用することができる。これらの繊維基材112は、シランカップリング剤等で表面処理したもの又は機械的に開繊処理を施したものが、耐熱性、耐湿性、加工性等の面から好ましい。
【0035】
第一の樹脂層すなわち第一のプリプレグ101の厚さは、材料強度向上、反り抑制の観点から、好ましくは0.05mm以上であり、より好ましくは0.1mm以上であり、さらに好ましくは0.2mm以上である。また、加工性向上の観点から、第一の樹脂層すなわち第一のプリプレグ101の厚さは、好ましくは3mm以下であり、より好ましくは2mm以下である。
【0036】
(第二の絶縁層)
図3は、本実勢形態における第二のプリプレグ102から成る第二の絶縁層の断面図である。第二の絶縁層は、第二の樹脂組成物113を有機不織布114に含浸して成る第二のプリプレグ102により構成された絶縁層である。例えばコア部材に第二の絶縁層をビルドアップ部材として積層することができる。この絶縁層上には金属層を設ける事ができ、設計に応じたパターニングを施してプリント配線板の構成部材とすることができる。また、第二のプリプレグ102を複数枚積層することもできる。絶縁層と金属層の各々の層数も設計に応じたものとすることができ、第一の絶縁層と第二の絶縁層と金属層とで構成される金属張積層板全体として、複数ある金属層は電気的にビアで接続される。
【0037】
(有機不織布)
有機不織布114の材料は、誘電率低下の観点から、好ましくはポリアミド樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、ポリプロピレン樹脂繊維のようなポリオレフィン樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、フッ素樹脂繊維、ポリシクロオレフィン樹脂繊維およびポリフェニレンエーテル樹脂繊維からなる群から選択される一または二以上の樹脂繊維であり、より好ましくはポリオレフィン樹脂繊維である。
【0038】
有機不織布114の含有量は、機械的強度向上の観点から、第二のプリプレグ102により形成される絶縁層全体に対して好ましくは20体積%以上であり、より好ましくは25体積%以上、さらに好ましくは30体積%以上である。
また、誘電率低下の観点から、第二のプリプレグ102により形成される絶縁層中の有機不織布114の含有量は、第二のプリプレグ102により形成される絶縁層全体に対して好ましくは60体積%以下であり、より好ましくは50体積%以下、さらに好ましくは35体積%以下である。
【0039】
第二の樹脂組成物113は、信頼性およびリフロー耐性向上の観点から、好ましくはエポキシ樹脂、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン化合物、ノボラック型シアネート樹脂等のシアネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル共重合体、トリアリルイソシアヌレート等の分子中に不飽和二重結合を2個以上有する化合物、およびポリイミド化合物からなる群から選択される一種または二種以上を含み、より好ましくはエポキシ樹脂、マレイミド化合物、シアネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル共重合体、および、分子中に不飽和二重結合を2個以上有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含み、さらに好ましくはエポキシ樹脂およびシアネート樹脂を含み、またはマレイミド化合物および変性ポリフェニレンエーテル共重合体および分子中に不飽和二重結合を2個以上有する化合物を含む。
第二の樹脂組成物113は、イミダゾールやラジカル開始剤等の硬化促進剤をさらに含んでもよい。
【0040】
第二の絶縁層中の第二の樹脂組成物113の含有量は、有機不織布114の含有量を除いた残部である。
第二の絶縁層中の第二の樹脂組成物113の含有量は、機械的強度の観点から、第二の絶縁層全体に対して好ましくは20体積%以上であり、より好ましくは30体積%以上、さらに好ましくは40体積%以上である。
また、加工性向上の観点から、第二の絶縁層中の第二の樹脂組成物113の含有量は、第二の絶縁層全体に対して好ましくは60体積%以下であり、より好ましくは50体積%以下である。
【0041】
(充填材)
また、第二の絶縁層は、第二の無機充填材及び有機充填材の少なくとも一方を含んでもよい。
【0042】
第二の無機充填材としては、無機系材料で構成されるものであれば、限定されないが、例えば、タルク、焼成(または未焼成)クレー、マイカ、シリカのような無機ケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、ベーマイトのような無機酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムのような無機炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムのような無機水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウムのような無機硫酸塩、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸ナトリウムのような無機ホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素のような無機窒化物、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムのような無機チタン酸塩等が挙げられ、これらのうちの一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。力学的強度や誘電率などをより好ましいものとする観点から、第二の無機充填材は、より好ましくは無機ケイ酸塩、無機酸化物、無機炭酸塩、無機水酸化物、無機硫酸塩、無機ホウ酸塩、無機窒化物および無機チタン酸塩からなる群から選択される少なくとも一種を主として含み、さらに好ましいのはシリカである。
ここで、上記主として含むとは、具体的には、かかる成分が第二の無機充填材の主たる成分であることをいい、好ましくは第二の無機充填材全体に対してかかる成分を50質量%以上含むことをいう。
【0043】
また、有機充填材としては、有機系材料で構成されるものであれば、限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルペンテン、ポリビニルブチラール、アクリロニトリルブタジエンゴム、環状オレフィン共重合体、ポリフェニレンエーテル、パルプおよび木粉が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも一種を主として含むことができる。力学的強度や誘電率などの観点から、有機充填材としてさらに好ましいのはポリテトラフルオロエチレンである。
ここで、上記主として含むとは、具体的には、かかる成分が有機充填材の主たる成分であることをいい、好ましくは有機充填材全体に対してかかる成分を50質量%以上含むことをいう。
【0044】
さらに、第二の絶縁層中、第二の無機充填材と有機充填材との双方を含む充填材の総含有量は、力学的強度向上の観点から5体積%以上が好ましく、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上である。また、成形性向上の観点から、上記充填材の含有量は、80体積%以下が好ましく、より好ましくは60体積%以下、さらに好ましくは40体積%以下、さらにより好ましくは30体積%以下である。
【0045】
第二の絶縁層の厚さすなわち第二のプリプレグ102の厚さは、機械的強度向上の観点から、好ましくは0.05mm以上であり、より好ましくは0.08mm以上であり、さらにより好ましくは0.1mm以上である。
また、加工性向上の観点から、第二の絶縁層の厚さすなわち第二のプリプレグ102の厚さは、好ましくは0.3mm以下であり、より好ましくは0.28mm以下であり、さらにより好ましくは0.25mm以下である。
【0046】
(金属層)
金属層103の材料として、たとえば、銅および銅を含む合金が挙げられる。すなわち、金属張積層板100は、具体的には銅張積層板である。
金属層103の厚さは、たとえば5μm以上であり、また、たとえば100μm以下である。
【0047】
図1には、金属張積層板100が金属層103/第二のプリプレグ102/第一のプリプレグ101/第二のプリプレグ102/金属層103の積層構造を有する例を示したが、本実施形態において、金属張積層板の積層構造は、第一のプリプレグ101をコア部材とし少なくとも片方の面において最も外側に位置する絶縁層が第二のプリプレグ102であればかかる積層構造には限られず、たとえば、金属張積層板の各絶縁層同士の間、または最表層に、金属層103を有してもよい。
【0048】
次に、金属張積層板の製造方法を説明する。
図1に示した金属張積層板100においても、以下の各工程を適宜取捨選択して組み合わせることにより得ることができる。
金属張積層板の製造方法は、たとえば以下の工程を含む。
(工程1)第一のプリプレグ101と第二のプリプレグ102を準備する工程
(工程2)第一のプリプレグ101と金属層103とから成る金属張積層板を作製する工程
(工程3)コア部材の表裏に、第二のプリプレグ102と金属層103を積層して金属張積層板を作製する工程
以下、各工程を具体的に説明する。
【0049】
(工程1)
本実施形態の第一のプリプレグ101の製造方法は、限定されないが、第一の樹脂組成物111を繊維基材112に含浸させるためには、第一の樹脂組成物111を溶媒で希釈してワニス状となすものとした後に、この希釈された第一の樹脂組成物111を繊維基材112に含浸させるのが好ましい。
第一の樹脂組成物111を繊維基材112に含浸させる方法としては、例えば、繊維基材112を第一の樹脂組成物111に浸漬させる方法、各種コーターにより繊維基材112に第一の樹脂組成物111を塗布する方法、スプレーにより繊維基材112に第一の樹脂組成物111を吹き付ける方法等が挙げられる。そして、繊維基材112に対する第一の樹脂組成物111の含浸の後に、このものを加熱して、第一の樹脂組成物111中に含まれる溶媒を揮発させて第一の樹脂組成物111を乾燥させることにより、第一のプリプレグ101を得ることができる。
【0050】
また、本実施形態の第二のプリプレグ102の製法は限定されないが、前述の第一のプリプレグ101の製造方法に準じて作製することができる。
すなわち、第二の樹脂組成物113を有機不織布114に含浸させるためには、第二の樹脂組成物113を溶媒で希釈してワニス状となすものとした後に、この希釈された第二の樹脂組成物113を有機不織布114に含浸させるのが好ましい。
第二の樹脂組成物113を有機不織布114に含浸させる方法としては、例えば、有機不織布114を第二の樹脂組成物113に浸漬させる方法、各種コーターにより有機不織布114に第二の樹脂組成物113を塗布する方法、スプレーにより有機不織布114に第二の樹脂組成物113を吹き付ける方法等が挙げられる。そして、有機不織布114に対する第二の樹脂組成物113の含浸の後に、このものを加熱して、第二の樹脂組成物113中に含まれる溶媒を揮発させて第二の樹脂組成物113を乾燥させることにより、第二のプリプレグ102を得ることができる。また、第二の樹脂組成物113を溶媒で希釈してワニス状とした後に、フィルム基材に塗布し、加熱して溶媒を揮発させて乾燥したフィルム付樹脂シートを、有機不織布114の表裏に設置して加熱加圧することにより、有機不織布114に第二の樹脂組成物113を含浸した後に、フィルムを剥離して第二のプリプレグ102を得ることもできる。
【0051】
(工程2)
金属層としての金属箔と、第一のプリプレグ101と、上記金属箔とを、この順に重ねて加熱加圧成形することにより、第一のプリプレグ101と金属箔とから成る金属張積層板を得ることができる。金属箔には、銅、アルミニウム、ニッケルなどの少なくともいずれかの金属元素を含有する金属箔を用いることができる。この中でも、導電性に優れ、エッチングによる回路形成が容易であり、また安価であることから銅または銅合金が好ましい。すなわち金属箔としては銅箔が好ましい。金属箔は、第一のプリプレグ101の両面に形成されていてもよいし、片面のみに形成されていてもよい。また、第一のプリプレグ101を複数枚重ねて金属張積層板を作製してもよい。
【0052】
尚、上述の方法により得られる金属張積層板の金属層は、選択的にエッチングして所定のパターン形状を有する導体回路層を備えた回路基板を形成することもできる。また、金属箔を全面エッチングして金属層を取り除いた絶縁層とすることもできる。この様にして得られる金属張積層板をコア部材として、次の工程に用いる。
【0053】
(工程3)
金属層としての金属箔と、第二のプリプレグ102と、第一のプリプレグ101とから成る金属張積層板と、第二のプリプレグ102と、金属箔とを、この順に重ねて加熱加圧成形することにより、第一のプリプレグ101と第二のプリプレグ102と金属箔とから成る金属張積層板を得ることができる。金属箔としては前述の工程2と同様に銅箔が好ましい。
【0054】
尚、以上により得られる金属張積層板の金属層は、選択的にエッチングして所定のパターン形状を有する導体回路層を備えた回路基板を形成することもできる。また、金属箔を全面エッチングして金属層を取り除いた絶縁層とすることもできる。
【0055】
また、工程2により作製したコア部材に、第一のプリプレグ101と金属を積層した後に、第二のプリプレグ102と金属層を積層することもできる。更には、第二のプリプレグ102と金属層を積層した後に、第二のプリプレグ102と金属層を積層することもできる。
【0056】
以上の手順により、第一のプリプレグ101と第二のプリプレグ102と金属箔とから成る金属張積層板が得られる。
得られる金属張積層板は、たとえばプリント配線板、電子装置の製造に用いることができる。
【0057】
(プリント配線板)
本実施形態において、プリント配線板は、本実施形態における金属張積層板の金属層の1層または2層以上が回路加工された導体回路層を有して成る。
図4は、金属張積層板を用いて得られるプリント配線板の構成例を示す断面図である。
【0058】
本実施形態のプリント配線板200は、ビア204が設けられた絶縁層201と、絶縁層201の少なくとも一方の面に設けられた金属層(導体回路層)202とを少なくとも有する。絶縁層201は、上述した第一のプリプレグ101から成る第一の絶縁層と、第二のプリプレグ102から成る第二の絶縁層を有し、ソルダーレジスト層205をさらに備える構造を有していてもよい。
【0059】
なお、本実施形態において、絶縁層の全層を貫通したスルーホール203と、絶縁層の一部を貫通したビア204は、いずれも、層間を電気的に接続するためのものである。また、ビア204は、例えば電解メッキ処理により金属を埋設して形成されたフィルドビアとしてもよい。
【0060】
金属層202の厚みは、限定されないが、通常は5μm以上100μm以下である。金属層202の材料は、例えば、銅または銅系合金、アルミニウムまたはアルミ系合金等を主材料として構成される金属箔や、銀ペーストのような導電性ペーストを用いて形成することができる。
【0061】
図4に示したプリント配線板200における金属張積層板の基本構成は、
図1に示した金属張積層板100と同様であるが、第一の絶縁層すなわち第一のプリプレグ101、第二の絶縁層すなわち第二のプリプレグ102、および、金属層の各々の層数が異なる。絶縁層201においては、3つの第一のプリプレグ101を有する積層体の両面に、いずれも、2つの第二のプリプレグ102を有する積層体が設けられている。
また、各層に配置された金属箔は加工され所定のパターンが施された導体回路層202となっており、プリント配線板200を断面方向に貫通するスルーホール203と、各絶縁層に設けられたビア204で電気的に接続されている。更に、最外層にソルダーレジスト層205が設けられている。
プリント配線板200は、半導体装置やこれを備える電子機器の構成部材として好適に用いることができる。
【0062】
(半導体装置)
本実施形態において、半導体装置は、本実施形態におけるプリント配線板と、プリント配線の上部に搭載された半導体素子とを備える。
半導体装置は、たとえば、本実施形態のプリント配線板200上に半導体素子を実装して、得ることができる。
半導体装置にはプリント配線板200が用いられているため、低誘電特性を備える絶縁層を含み、半導体素子を接続する際のリフロー処理における耐リフロー性に優れている。
【0063】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0064】
以下、実施例を挙げて本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
(第一のプリプレグ)
1.材料等の準備
<繊維基材>
繊維基材としてガラス繊維織布(日東紡社製「#7628」、厚み180μm、坪量208.0g/m2、線膨張係数5.5ppm/℃)を用意した。
【0066】
<熱硬化性樹脂>
熱硬化性樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(長春人造樹脂社製、BE-188)、難燃性エポキシ樹脂(ダウ・ケミカル社製、臭素化エポキシ樹脂、DER530)、フェノール樹脂硬化剤:ノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト社製、製品名「スミライトレジンPR-51470」)を用意した。
【0067】
<硬化促進剤>
硬化促進剤として、4-メチル-2-フェニルイミダゾール(四国化成社製、2P4MZ)を用意した。
【0068】
<無機充填材>
難燃剤として、水酸化マグネシウム(神島化学工業社製、EP1-S、5%重量減少温度=380℃)、合成ベーマイト(神島化学工業社製、FKB-104、5%重量減少温度=500℃)、水酸化アルミニウム(山東呂業社製、H-WF-1、5%重量減少温度=260℃)を用意した。
その他充填材として、シリカ(DSLジャパン社製、カープレックスCS-5、5%重量減少温度=500℃以上)、焼成クレー(BASF社製、SP-33、5%重量減少温度=500℃以上)を用意した。
【0069】
<その他>
カップリング剤として、シランカップリング剤:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製、SILQUEST A-187)を用意した。
溶媒として、メチルエチルケトン、トルエンを用意した。
【0070】
2.ワニスの調整
表1に実施した樹脂組成物を示す。
(製造例1)
表1に示す樹脂成分(無機充填材とカップリング剤を除いた熱硬化性樹脂と硬化剤の各成分)をメチルエチルケトンとトルエンの1:1混合溶媒に溶解、分散させた。さらに、表1に示す無機充填材とカップリング剤を添加した後、高速撹拌装置で撹拌して、樹脂組成物のワニスを調製した。
【0071】
3.プリプレグの作製
ガラス繊維織布に、得られた樹脂ワニスを塗布装置で含浸させ、180℃の加熱炉で2分間乾燥して、厚さ204μmのプリプレグを得た。
【0072】
4.金属張積層板の作製
得られたプリプレグを6枚積層し、両面に厚み18μmの電解銅箔を配置し、圧力40kgf、温度200℃で70分加熱加圧成形し、厚さ1.2mmの両面に銅箔を有する金属張積層板を作製した。
【0073】
(評価方法)
各種評価について、以下方法で評価を行った。
(成形性)
金属張積層板をエッチングして表面の銅箔を取り除いたのち、表面を顕微鏡で観察し、0.5mm以上のボイドが見られるかどうかを検討した。表に記載した符号は以下のとおりである。
○:530mm□の積層板表面を観察し、1つもボイドが見られない
×:530mm□の積層板表面を観察し、1つ以上のボイドが観察される
【0074】
(難燃性)
UL94規格に従って垂直燃焼試験を行った。具体的には、上述した方法で得られた金属張積層板の銅箔をエッチングにより除去し、銅箔を除去した樹脂硬化物により形成された層から厚さ1.2mmの短冊状の試験片を各製造例及び各比較製造例について5個ずつ切り出して用意した。その後、略垂直状に支持した短冊状試験片に対して下側からバーナー炎をあてて10秒間保ち、その後、バーナー炎を短冊状試験片から離した。炎が消えれば直ちにバーナー炎をさらに10秒間あてた後、バーナー炎を離した。このとき、1回目と2回目の接炎終了後の有炎燃焼持続時間、2回目の接炎終了後の有炎燃焼持続時間及び無炎燃焼持続時間の合計、5本全ての試験片の有炎燃焼時間の合計、燃焼滴下物の有無で判定した。そして、V-0規格は、1回目、2回目ともに10秒以内に終えたときである。
また、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間との合計がV-0規格は30秒以内である。さらに、5本の試験片の有炎燃焼時間の合計がV-0規格は50秒以内である。
表に記載した符号は以下のとおりである。
○:難燃性試験において、V-0を達成する
×:難燃性試験において、V-0を達成しない
【0075】
(製造例2)
製造例2について、難燃剤を水酸化マグネシウム(EP1-S)から合成ベーマイト(FKB-104)に変更した他は、製造例1に準じて本例の金属張積層板を得た。
【0076】
(製造例3)
製造例3について、その他充填材に焼成クレー(SP-33)を追加した他は、製造例1に準じて本例の金属張積層板を得た。
【0077】
(製造例4)
製造例4について、難燃剤を水酸化マグネシウム(EP1-S)単体から合成ベーマイト(FKB-104)との併用に変更した他は、製造例1に準じて本例の金属張積層板を得た。
【0078】
(比較製造例1)
比較製造例1について、難燃剤を水酸化マグネシウム(EP1-S)から水酸化アルミニウム(HWF-1)に変更した他は、製造例1に準じて本例の金属張積層板を得た。
【0079】
(第二のプリプレグ)
1.材料等の準備
<繊維基材>
繊維基材として、ポリプロピレンで構成される有機不織布(デルスター社製、「デルポア DP1001-27P」)を用意した。
【0080】
<熱硬化性樹脂>
熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂(DIC社製、「HP-5000」)、ノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製、「PT-30」)、マレイミド化合物(日本化薬社製、「MIR-3000-70T」)、変性ポリフェニレンエーテル共重合体(SABIC社製、「SA9000」)、分子中に不飽和二重結合を2個以上有する化合物としてトリアリルイソシアヌレート(三菱ケミカル社製、「TAIC」)を用意した。
【0081】
<硬化促進剤>
硬化促進剤として、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製、「キュアゾール2P4MHZ」)、1,3-ビス(ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日油社製、「パーブチルP」)を用意した。
【0082】
<無機充填材>
無機充填材として、球状溶融シリカ(アドマテックス社製、「SO-32R」、平均粒子径1μm)を用意した。
【0083】
<有機充填材>
有機充填材として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)充填材(ダイキン社製、「ルブロンL-5F」、平均粒子径0.2μm)を用意した。
【0084】
2.ワニスの調整
表2に実施した樹脂組成物を示す。
(製造例A)
エポキシ樹脂49質量%とノボラック型シアネート樹脂49質量%と硬化促進剤2質量%との配合比率でそれぞれ配合された樹脂成分をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。さらに充填材を添加した後、高速攪拌装置で攪拌して、樹脂組成物のワニスを調製した。なお、表2に示す通り、樹脂成分と充填材との容積比が70体積%:30体積%となるように、上記樹脂成分と充填材とを添加することで樹脂組成物のワニスを調製した。充填材における無機充填材と有機充填材との容積比は、50体積%:50体積%とした。
【0085】
3.プリプレグの作製
有機不織布に、得られた樹脂ワニスを塗布装置で含浸させ、150℃の加熱炉で2分間乾燥して、有機不織布の容積率が30体積%のプリプレグを得た。
【0086】
4.金属張積層板の作製
得られたプリプレグの両面に厚み18μmの電解銅箔を配置し、圧力40kgf、温度200℃で70分加熱加圧成形し、両面に銅箔を有する金属張積層板を作製した。
【0087】
(評価方法)
以下方法で評価を行った。
(比誘電率および誘電正接の測定)
上述した方法で得られた金属張積層板の銅箔をエッチングにより除去し、乾燥させた。各製造例における、比誘電率および誘電正接(tanδ)を、それぞれ、JIS C2565に準拠した、空洞共振器法を用いて測定した。
【0088】
(製造例B)
製造例Bについて、製造例Aの充填材をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)充填材(ルブロンL-5F)のみに変更した他は、製造例Aに準じて本例の金属張積層板を得た。
【0089】
(製造例C)
製造例Cについて、製造例Aの充填材を球状溶融シリカ(SO-32R)のみに変更した他は、製造例Aに準じて本例の金属張積層板を得た。
【0090】
(製造例D)
製造例Dについて、樹脂組成物をマレイミド化合物39質量%と変性ポリフェニレンエーテル共重合体19質量%とトリアリルイソシアヌレート39質量%と硬化促進剤3質量%の配合比率でそれぞれ配合した他は、製造例Aに準じて本例の金属張積層板を得た。
【0091】
(製造例E)
製造例Eについて、製造例Dの充填材をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)充填材(ルブロンL-5F)のみに変更した他は、製造例Aに準じて本例の金属張積層板を得た。
【0092】
(製造例F)
製造例Fについて、製造例Dの充填材を球状溶融シリカ(SO-32R)のみに変更した他は、製造例Aに準じて本例の金属張積層板を得た。
【0093】
(第一および第二のプリプレグの組み合わせ)
(実施例1-A、2-A、3-A、4-A、1-B、1-C、1-D、2-D、3-D、4-D、1-Eおよび1-F、比較例1-A、1-B、1-C、1-D、1-Eおよび1-F)
1.金属張積層板の作製
上記により作製した第一のプリプレグを有するコア部材の銅箔を両面エッチングして取り除き、乾燥したのち、上記により作製した第二のプリプレグと、厚み18μmの電解銅箔が外側になるように、それぞれコア部材の両面に配置し、圧力40kgf、温度200℃で70分加熱加圧成形し、両面に銅箔を有する金属張積層板を作製した。
各例において用いた第一および第二のプリプレグの組み合わせを表3に示す。
【0094】
(評価方法)
各例で得られた金属張積層板について、以下の方法で評価を行った。
(耐リフロー性)
得られた金属張積層板の銅箔を10mm幅でエッチングをして銅箔を取り除き、等間隔のストライプ状パターンを設けた基板を作製した。尚、表裏は90度直交する様なストライプ状のパターンとした。100mm□で切り出した後、端面4辺を#2000のサンドペーパーで研磨し、乾燥させた。次いで、250℃リフロー炉を通し、膨れの有無を評価した。下記表1に記載した符号は、以下の通りである。
○:3回繰り返した場合においても、基板の膨れは発生しなかった。
×:3回繰り返す前に、基板の膨れが発生した。
【0095】
(評価結果)
評価結果を表1と表2と表3に示す。
表1より、製造例1、2、3、4いずれの場合においても成形性と難燃性が得られることを確認した。また、製造例1、2、3、4のコア部材と、表2に示す低誘電特性のプリプレグとを組み合わせた表3の実施例1-A、2-A、3-A、4-A、1-B、1-C、1-D、2-D、3-D、4-D、1-Eおよび1-Fでは、いずれの場合においても耐リフロー性を達成することを確認した。
表1に示す比較製造例1の水酸化アルミニウムを用いたものは、第一のプリプレグとしては成形性と難燃性が得られているが、表3に示したように、金属張積層板の比較例1-A、1-B、1-C、1-D、1-E、1-Fでは耐リフロー性が未達となった。
以上の結果より、第一のプリプレグについて、無機充填材を40質量部含み、無機充填材のうち、5%重量減少温度が300℃以上である難燃剤を25質量部以上含み、難燃性エポキシ樹脂を27質量部含んだ絶縁層は難燃性を備え、低誘電特性の絶縁層を組み合わせた金属張積層板において、耐リフロー性を満たすことが分かった。
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