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特開2023-14911パネル位置調整治具及びこれを用いたパネル位置調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014911
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】パネル位置調整治具及びこれを用いたパネル位置調整方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/18 20060101AFI20230124BHJP
   E04B 2/90 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
E04G21/18 C
E04B2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119120
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504082025
【氏名又は名称】株式会社イング
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古河 春樹
(72)【発明者】
【氏名】原田 清一
(72)【発明者】
【氏名】永木 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 悦二
【テーマコード(参考)】
2E002
2E174
【Fターム(参考)】
2E002NA01
2E002NB05
2E002PA04
2E002RA03
2E002RB01
2E002RB03
2E002TA02
2E002WA19
2E002XA18
2E174AA01
2E174AA03
2E174BA01
2E174DA10
2E174DA14
2E174DA34
2E174DA38
2E174DA58
(57)【要約】
【課題】パネルに疵がつくことを抑えることができるパネル位置調整治具及びこれを用いたパネル位置調整方法を提案する。
【解決手段】パネル位置調整治具1は、構造躯体の一部を構成する横架材2に対してその長手方向にスライド可能に係止され、かつ付属部品30が固定されたパネル3の位置を調整する。パネル位置調整治具1は、一方向に延びた治具本体4と、治具本体4の長手方向の一部に設けられ、横架材2に引っ掛けられる引っ掛け部5と、引っ掛け部5を横架材2に固定及び固定解除することのできる固定操作部6と、治具本体4の長手方向の他の一部に設けられ、パネル3の付属部品30に当てられる押圧部7と、押圧部7を治具本体4の長手方向にスライド移動させることのできるスライド操作部8と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造躯体の一部を構成する横架材に対してその長手方向にスライド可能に係止され、かつ付属部品が固定されたパネルの位置を調整するためのパネル位置調整治具であって、
一方向に延びた治具本体と、
前記治具本体の長手方向の一部に設けられ、前記横架材に引っ掛けられる引っ掛け部と、
前記引っ掛け部を前記横架材に対して固定及び固定解除することのできる固定操作部と、
前記治具本体の長手方向の他の一部に設けられ、前記パネルの前記付属部品に当てられる押圧部と、
前記押圧部を前記治具本体の長手方向にスライド移動させることのできるスライド操作部と、を備える、
パネル位置調整治具。
【請求項2】
前記治具本体は、外周面にねじ溝を有する棒状部材であり、
前記押圧部は、前記治具本体の長手方向の一部に固定され、
前記引っ掛け部は、前記治具本体の長手方向の他の一部に前記長手方向にスライド移動可能に取り付けられ、
前記スライド操作部は、前記治具本体の長手方向の更に他の一部に前記長手方向に回転移動可能に取り付けられている、
請求項1に記載のパネル位置調整治具。
【請求項3】
前記スライド操作部は、ナット状の操作部分と、前記操作部分よりも前記引っ掛け部側に位置する筒状部分と、を有する、
請求項2に記載のパネル位置調整治具。
【請求項4】
前記押圧部は、前記横架材の長手方向の一部を挿入可能な係止溝を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のパネル位置調整治具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のパネル位置調整治具を用いて、前記パネルの位置を調整するパネル位置調整方法であって、
前記横架材に前記引っ掛け部を引っ掛け、
前記固定操作部を操作して、前記引っ掛け部を前記横架材に固定し、
前記スライド操作部を操作して、前記押圧部を前記治具本体の前記長手方向にスライド移動させることで、前記押圧部で前記パネルの前記付属部品を押圧して前記パネルをスライド移動させて、前記パネルの位置を調整する、
パネル位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パネルの位置を調整するパネル位置調整治具及びこれを用いたパネル位置調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、構造躯体の一部を構成する横架材に対してその長手方向にスライド可能に係止されるパネルと、このパネルに隣接した位置で固定された固定パネルとの間の目地幅を調整するための目地幅調整治具が、記載されている。
【0003】
目地幅調整治具は、横架材に係止される係止部と、係止部を横架材に固定し、かつ固定を解除することのできる固定操作部と、パネルのうち固定パネルとは反対側を向く側面に当てられる押圧部と、押圧部を横架材の長手方向にスライド移動させることのできるスライド操作部と、を備えている。
【0004】
この目地幅調整治具では、押圧部をパネルのうち固定パネルとは反対側を向く側面に当てることで、パネルを横架材の長手方向にスライド移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-59954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の目地幅調整治具では、押圧部をパネルの側面に当てて、パネルをスライド移動させるため、パネルに疵がつく恐れがあった。
【0007】
上記事情に鑑みて、パネルに疵がつくことを抑えることができるパネル位置調整治具及びこれを用いたパネル位置調整方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係るパネル位置調整治具は、構造躯体の一部を構成する横架材に対してその長手方向にスライド可能に係止され、かつ付属部品が固定されたパネルの位置を調整する。一態様に係るパネル位置調整治具は、一方向に延びた治具本体と、前記治具本体の長手方向の一部に設けられ、前記横架材に引っ掛けられる引っ掛け部と、前記引っ掛け部を前記横架材に対して固定及び固定解除することのできる固定操作部と、前記治具本体の長手方向の他の一部に設けられ、前記パネルの前記付属部品に当てられる押圧部と、前記押圧部を前記治具本体の長手方向にスライド移動させることのできるスライド操作部と、を備える。
【0009】
また、本開示の一態様に係るパネル位置調整方法は、前記パネル位置調整治具を用いて、前記パネルの位置を調整する。一態様に係るパネル位置調整方法では、前記横架材に前記引っ掛け部を引っ掛け、前記固定操作部を操作して、前記引っ掛け部を前記横架材に固定し、前記スライド操作部を操作して、前記押圧部を前記治具本体の前記長手方向にスライド移動させることで、前記押圧部で前記パネルの前記付属部品を押圧して前記パネルをスライド移動させて、前記パネルの位置を調整する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様に係るパネル位置調整治具及びこれを用いたパネル位置調整方法では、パネルに疵がつくことを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第一実施形態のパネル位置調整治具を用いてパネルの位置を調整する様子を示す一部破断した平面図である。
図2図2は、同上のパネル位置調整治具を示す正面図である。
図3図3は、同上のパネル位置調整治具を示す側面図である。
図4図4は、同上のパネル位置調整治具を示す他の側面図である。
図5図5は、同上のパネルの一例を示す斜視図である。
図6図6Aは、図5のA-A線における断面図である。図6Bは、図5のB-B線における断面図である。
図7図7は、図5のC-C線における断面図である。
図8図8は、同上のパネル位置調整治具を用いてパネル間の目地幅を調整する様子を示す平面図である。
図9図9は、同上のパネル位置調整治具を用いてパネル間の目地幅が調整された壁構造を示す斜視図である。
図10図10は、同上のパネル位置調整治具を用いてパネル間の目地幅を調整する他の様子を示す平面図である。
図11図11は、第二実施形態のパネル位置調整治具を用いてパネルの位置を調整する様子を示す一部破断した平面図である。
図12図12は、同上のパネル位置調整治具の変形例を示す一部破断した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第一実施形態)
1.概要
図1に示す第一実施形態のパネル位置調整治具1は、構造躯体の一部を構成する横架材2に対してその長手方向にスライド可能に係止され、かつ付属部品30が固定されたパネル3の位置を調整する。パネル位置調整治具1は、一方向に延びた治具本体4と、治具本体4の長手方向の一部に設けられ、横架材2に引っ掛けられる引っ掛け部5と、引っ掛け部5を横架材2に対して固定及び固定解除することのできる固定操作部6と、治具本体4の長手方向の他の一部に設けられ、パネル3の付属部品30に当てられる押圧部7と、押圧部7を治具本体4の長手方向にスライド移動させることのできるスライド操作部8と、を備える。
【0013】
上記構成を備えることで、本実施形態のパネル位置調整治具1では、横架材2にスライド可能に係止されたパネル3の付属部品30の側方において、引っ掛け部5を横架材2に引っ掛けた状態で、固定操作部6を操作することで、引っ掛け部5を横架材2に固定することができる。その後、本実施形態のパネル位置調整治具1では、スライド操作部8を操作することで、押圧部7をスライド移動させて、押圧部7をパネル3の付属部品30に当ててパネル3をスライド移動させることができる。このように本実施形態のパネル位置調整治具1では、押圧部7を付属部品30に当ててパネル3をスライド移動させることができるため、パネル3に疵がつくことを抑えることができる。
【0014】
また、本実施形態のパネル位置調整方法は、上述したパネル位置調整治具1を用いて、パネル3の位置を調整する。このパネル位置調整方法では、横架材2に引っ掛け部5を引っ掛け、固定操作部6を操作して、引っ掛け部5を横架材2に固定し、スライド操作部8を操作して、押圧部7を治具本体4の長手方向にスライド移動させることで、押圧部7でパネル3の付属部品30を押圧してパネル3をスライド移動させて、パネル3の位置を調整する。
【0015】
上記構成を備える本実施形態のパネル位置調整方法では、パネル位置調整治具1の押圧部7をパネル3の付属部品30に当てて、パネル3をスライド移動させることができるため、パネル3に疵がつくことを抑えることができる。
【0016】
2.詳細
続いて、図1から図4に示す本実施形態のパネル位置調整治具1及びこれを用いたパネル位置調整方法について更に詳しく説明する。
【0017】
以下では、図1に示す横架材2の長手方向を左右方向とし、横架材2に対してパネル3が位置する側を前方とし、その反対側を後方とし、この左右方向及び前後方向に対して直交する方向を上下方向として、各構成について詳しく説明する。
【0018】
2-1.パネル位置調整治具
パネル位置調整治具1は、図1から図4に示すように、治具本体4、引っ掛け部5、固定操作部6、押圧部7、及びスライド操作部8を備える。
【0019】
2-1-1.治具本体
図1及び図2に示すように、治具本体4は、一方向に延びた部材である。本実施形態では、治具本体4は、その外周面にねじ溝400を有する棒状部材40である。ねじ溝400は、螺旋状に設けられている。棒状部材40の長手方向の一方の端部(本実施形態では左端部)には、押圧部7が取り付けられ、棒状部材40の長手方向の他方の部分(本実施形態では右部分)には、引っ掛け部5及びスライド操作部8が取り付けられる。治具本体4は、本実施形態では、金属製である。
【0020】
2-1-2.引っ掛け部
引っ掛け部5は、横架材2に引っ掛け可能に構成されている。本実施形態では、引っ掛け部5は、図1及び図3に示すように、略直方体のブロック状である。引っ掛け部5は、横架材2の後述する縦板部20が差し込まれる差込溝50と、棒状部材40が挿通される挿通孔51と、を有する。引っ掛け部5は、本実施形態では、金属製である。
【0021】
より詳しくは、引っ掛け部5は、上下方向を長手方向とする直方体状の第一縦片52、第一縦片52の上端部から前方に延びた横片53と、横片53の前端部から下方に延びた直方体状の第二縦片54と、を有する。
【0022】
第二縦片54は、第一縦片52に対して平行であり、第一縦片52から横架材2の縦板部20の厚みと同程度の距離だけ離れて位置する。第一縦片52と横片53と第二縦片54とで囲まれた空間が、縦板部20が差し込まれる差込溝50である。
【0023】
第一縦片52には、第一縦片52の一部を前後方向に貫通するねじ孔520が設けられている。ねじ孔520は、差込溝50につながっている。第一縦片52には、ねじ孔520よりも上側の部分に挿通孔51が設けられている。挿通孔51は、ねじ孔520の上方に位置する。
【0024】
挿通孔51の直径は、棒状部材40の直径よりも大きい。これにより、引っ掛け部5は、棒状部材40の長手方向の任意の位置に移動できる。
【0025】
2-1-3.固定操作部
固定操作部6は、引っ掛け部5を横架材2に対して固定及び固定解除することができるように構成されている。本実施形態では、図2及び図3に示すように、固定操作部6は、横架材2に対して接離するように、引っ掛け部5に取り付けられた固定用ボルト60と、固定用ボルト60に連結された操作レバー61と、を有する。
【0026】
詳しくは、固定用ボルト60は、引っ掛け部5の第一縦片52のねじ孔520に挿入された軸部62と、軸部62の後端部に設けられた頭部63と、を有する。頭部63に、操作レバー61が連結されている。頭部63は、六角柱状である。操作レバー61は、図2に示すように、施工者によって把持可能な帯板状のハンドル部610と、連結孔611と、回転規制部612と、を有する。連結孔611は、六角形状の孔である。操作レバー61は、連結孔611に固定用ボルト60の頭部63を嵌め込むことで、固定用ボルト60に連結され、固定用ボルト60と一体に動作する。なおこのとき、頭部63に対する操作レバー61の取付角度は、適宜選択可能であり、これにより、引っ掛け部5の差込溝50内への固定ボルト60の軸部62の突出長さを任意に変更できる。
【0027】
回転規制部612は、操作レバー61の長手方向の一端部に取り付けられた棒状の部材で構成されている。この棒状の部材は、本実施形態では、ボルト64である。回転規制部612は、操作レバー61を固定用ボルト60に連結した状態において、操作レバー61から前方に突出し、固定用ボルト60に対して平行に延びている。
【0028】
固定操作部6は、操作レバー61を掴んで、固定用ボルト60をその軸周りに回転させることで、固定用ボルト60の軸部62の第一縦片52から前側への突出量を調整することができる。本実施形態では、操作レバー61は、棒状部材40のうち引っ掛け部5よりも押圧部7とは反対側(右側)の部分又はこの部分に位置するスライド操作部8の後述する第二操作部81に回転規制部612が当たって操作レバー61が棒状部材40に対して略平行となる位置から、棒状部材40のうち引っ掛け部5よりも押圧部7側(左側)の部分又はこの部分に位置するスライド操作部8の後述する第一操作部80に回転規制部612が当たって操作レバー61が棒状部材40に対して略平行となる位置までの範囲で、回転移動可能である。つまり、操作レバー61は、棒状部材40に対して平行であり且つ固定用ボルト60の頭部63の中心を通る基準線に対して、およそ0~180度の範囲内で回転移動が可能である。回転規制部612によって操作レバー61が所定以上回転することが防がれるため、固定用ボルト60が引っ掛け部5のねじ孔520から外れ落ちることや、固定用ボルト60が必要以上に差込溝50内に突出することを防ぐことができる。
【0029】
操作レバー61を後方から見て時計回りに回転操作して、固定用ボルト60の軸部62の先端(前端)を縦板部20に対して押し当てることで、引っ掛け部5は横架材2に固定される。また、操作レバー61を反時計回りに回転操作して、固定用ボルト60の軸部62の先端(前端)を、縦板部20から離すことで、引っ掛け部5の横架材2に対する固定が解除される。本実施形態では、後方から見て操作レバー61を掴んで右側に倒す(右回りに回転させる)と、引っ掛け部5を横架材2に固定でき、後方から見て操作レバー61を掴んで左側に倒す(左回りに回転させる)と、引っ掛け部5が横架材2に固定された状態を解除することができる。
【0030】
また、操作レバー61は、後方から見て反時計回りに回転操作されることによって、固定解除状態から固定状態へと切り替わるように構成されてもよく、すなわち、固定用ボルト60の軸部62は、後方から見て反時計回りに回すとネジが閉まる逆ネジであってもよい。
【0031】
2-1-4.スライド操作部
スライド操作部8は、押圧部7を治具本体4の長手方向にスライド移動させることができるように構成されている。本実施形態では、スライド操作部8は、図1及び図2に示すように、治具本体4に回転移動可能に取り付けられた第一操作部80と第二操作部81を含む。
【0032】
第一操作部80は、引っ掛け部5と押圧部7の間に位置する。第一操作部80は、回転操作されるナット状の操作部分800と、操作部分800よりも引っ掛け部5側に位置する筒状部分801と、を含む。本実施形態では、操作部分800と筒状部分801とは、互いに別部材である。筒状部分801は、円筒状であり、内面が平滑であり、治具本体4の長手方向に移動可能である。筒状部分801は、操作部分800によって押されることで、移動する。筒状部分801の外径は、引っ掛け部5の挿通孔51の直径よりも大きい。
【0033】
操作部分800は、本実施形態では、六角ナットである。操作部分800の内周面には、治具本体4のねじ溝400と係合するねじ山が設けられている。操作部分800は、電動工具やレンチ等の工具で回転操作される。
【0034】
第二操作部81は、引っ掛け部5に対して第一操作部80とは反対側に位置する。第二操作部81は、回転操作されるナット状の操作部分810と、操作部分810よりも引っ掛け部5側に位置する筒状部分811と、を含む。筒状部分811は、円筒状であり、内面が平滑であり、治具本体4の長手方向に移動可能である。筒状部分811は、操作部分810によって押されることで、移動する。筒状部分811の外径は、引っ掛け部5の挿通孔51の直径よりも大きい。
【0035】
操作部分810は、本実施形形態では、六角ナットである。操作部分810の内周面には、治具本体4のねじ溝400と係合するねじ山が設けられている。操作部分810は、電動工具やレンチ等の工具で回転操作される。
【0036】
引っ掛け部5を横架材2に固定した状態で、第一操作部80又は第二操作部81を回転操作することで、押圧部7を治具本体4の長手方向にスライド移動させることができる。
【0037】
詳しくは、第一操作部80の操作部分800を引っ掛け部5に近づく方向に回転操作して、操作部分800、筒状部分801及び引っ掛け部5を互いに接する状態とし、この状態から操作部分800を同方向に更に回転操作することで、操作部分800の回転により治具本体4及び押圧部7を左方へと移動させることができる。つまり、第一操作部80を回転操作することで、治具本体4の長手方向のうち引っ掛け部5から離れる方向(左方)へ押圧部7を移動させることができる。
【0038】
また、第二操作部81の操作部分810を引っ掛け部5に近づく方向に回転操作して、操作部分810、筒状部分811及び引っ掛け部5を互いに接する状態とし、この状態から更に操作部分810を同方向に回転操作することで、操作部分810の回転により治具本体4及び押圧部7を右方へと移動させることができる。つまり、第二操作部81を回転操作することで、治具本体4の長手方向のうち引っ掛け部5に近づく方向(右方)へ押圧部7を移動させることができる。
【0039】
ただし、第二操作部81を回転操作する際には、第一操作部80の操作部分800及び筒状部分801を引っ掛け部5から離れた位置に配置しておき、治具本体4の移動を妨げないようにしておく。
【0040】
2-1-5.押圧部
押圧部7は、パネル3の付属部品30に当てられて、付属部品30を押圧することができるように構成されている。本実施形態では、押圧部7は、図4に示すように、略直方体のブロック状である。押圧部7は、引っ掛け部5と構造が類似している。なお、押圧部7は、引っ掛け部5のねじ孔520に対応する孔を有していない。
【0041】
押圧部7は、横架材2の縦板部20の長手方向の一部を挿入可能な係止溝70と、棒状部材40の一方の端部(左端部)が挿通された挿通孔71と、を有する。係止溝70は、治具本体4の長手方向に延びる溝である。係止溝70は、押圧部7の左右の面と下面のそれぞれにおいて開口している。押圧部7は、本実施形態では、金属製である。
【0042】
押圧部7は、上下方向を長手方向とする直方体状の第一縦片72と、第一縦片72の上端部から前方に延びた横片73と、横片73の前端部から下方に延びた直方体状の第二縦片74と、を有する。第一縦片72には、左右方向に貫通するように、挿通孔71が設けられている。
【0043】
第二縦片74は、第一縦片72に対して平行であり、第一縦片72から横架材2の縦板部20の厚みと同程度の距離だけ離れて位置する。第一縦片72と横片73と第二縦片74で囲まれた空間が、縦板部20が差し込まれる係止溝70である。
【0044】
第二縦片74は、引っ掛け部5側を向く第一押圧面740と、引っ掛け部5とは反対側を向く第二押圧面741と、を有する。第一押圧面740又は第二押圧面741が、パネル3の付属部品30に当てられる。
【0045】
挿通孔71の直径は、治具本体4の直径よりも大きい。第一縦片72の引っ掛け部5とは反対側を向く面のうち、挿通孔71の周囲の部分には、ナット等の固定具75が固定されている。挿通孔71には、治具本体4の長手方向の一端部が挿通され、固定具75には、治具本体4の長手方向の一端が固定される。これにより、押圧部7は、治具本体4の長手方向の一端に固定される。なお、挿通孔71は、ねじ孔としてもよく、この場合、固定具75は省略可能である。
【0046】
押圧部7は、治具本体4に対して、引っ掛け部5と同じ前後位置に配置されている。押圧部7の前面と、引っ掛け部5の前面とは、同一平面上又は略同一平面上に位置する。そのため、本実施形態のパネル位置調整治具1は、前後方向の長さが抑えられている。
【0047】
押圧部7は、スライド操作部8の操作によって治具本体4が移動することによって、治具本体4の長手方向に移動して、第一押圧面740又は第二押圧面741によってパネル3の付属部品30を押圧する。
【0048】
2―2.パネル
パネル3は、横架材2に対してその長手方向にスライド可能に係止され、かつ付属部品30が固定されたパネルである。図5には、パネル3の一例が示されている。本実施形態では、パネル3は、建物の壁を形成するサンドイッチパネルである。
【0049】
パネル3は、矩形板状である。パネル3は、上下方向と平行な長手方向と、左右方向と平行な短手方向と、前後方向と平行な厚み方向と、を有する。パネル3は、例えば、上下方向の長さが、0.5~6.0mであり、左右方向の長さ(幅)が、0.2~1.5mであり、前後方向の長さ(厚み)が、30~150mmである。
【0050】
パネル3は、図5図6A図6B及び図7に示すように、芯材31と、芯材31を前側から覆う第一外皮32と、芯材31を後側から覆う第二外皮33と、を備える。
【0051】
芯材31は、その全体形状が、矩形の板状である。全体形状が板状とは、1枚の板に限らず、複数の部材を1枚の板をなすように並べたものも含まれる。芯材31は、左右の側面に凹条部310を有している。凹条部310は、芯材31の左右の側面の前後方向の略中央部に上下方向の全長にわたって位置する。凹条部310には、石膏ボードや、珪酸カルシウムボードなどの板状部材と、アルカリアースシリケートブランケット(生体溶解性繊維)などの繊維状無機材料とで形成された耐火目地材11(図8参照)が挿入される。
【0052】
芯材31は、断熱性を有する。芯材31は、ロックウールやグラスウールなどの繊維状無機材をバインダー等でブロック状に固めた複数のブロック体を1枚の矩形板状に並べたものである。なお、芯材31は、ウレタンフォーム、フェノールフォーム等の発泡系の有機材で形成されてもよいし、スチレンボード、ウレタンボード等であってもよい。
【0053】
第一外皮32と第二外皮33のそれぞれは、金属板をロール加工やプレス加工などにより所望の形状に成形することによって得られる。金属板は、例えば、厚みが0.23~6.0mmである。金属板は、塗装鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)、エスジーエル(登録商標)鋼板等であるが、これらに限定されない。
【0054】
第一外皮32は、後側に向けて開口した矩形の箱状である。第一外皮32は、芯材31の前面を覆う矩形板状の本体部320と、芯材31の上面を覆う上壁部321と、芯材31の下面を覆う下壁部322と、を有する。第一外皮32は更に、芯材31の左の側面のうち凹条部310よりも前側の部分を覆う左の側壁部323と、芯材31の右の側面のうち凹条部310よりも前側の部分を覆う右の側壁部324と、を有する。
【0055】
上壁部321は、本体部320の上縁から後側に突出し、下壁部322は、本体部320の下縁から後側に突出し、左の側壁部323は、本体部320の左縁から後側に突出し、右の側壁部324は、本体部320の右縁から後側に突出している。本体部320に対して4つの壁部321,322,323,324のそれぞれは、略直角である。上下の壁部321,322のそれぞれは、矩形の平板状である。左右の側壁部323,324は、矩形の平板部323a,324aと、平板部323a,324aの後端から左右方向外側に略直角に突出した矩形板状の突出部323b,324bと、を有する。
【0056】
第二外皮33は、芯材31の芯材31の後面を覆う矩形板状の本体部330と、芯材31の左の側面のうち凹条部310よりも後側の部分を覆う左の側壁部331と、芯材31の右の側面のうち凹条部310よりも後側の部分を覆う右の側壁部332と、を有する。左の側壁部331は、本体部330の左縁から前側に突出し、右の側壁部332は、本体部330の右縁から前側に突出している。なお、第二外皮33は、芯材31の上面や下面を覆う部分を有さない。
【0057】
左右の側壁部331,332のそれぞれは、平面視U字状に湾曲した湾曲部331a,332aと、湾曲部331a,332aの前端部から前側に突出した矩形状の平板部331b,332bと、を有する。
【0058】
外皮32,33のそれぞれは、本体部320,330が芯材31の前後の面に接着されて、芯材31と一体化している。
【0059】
パネル3は、壁部321,322,323,324のそれぞれに取り付けられるパッキン34を更に備える。なお、図5では、パッキン34の図示は省略している。パッキン34は、直線状の複数のパッキン340と、L字状の複数のコーナーパッキン(図示せず)と、を含む。図6A図6B及び図7に示すように、直線状のパッキン340は、上壁部321の上面の前後方向の中央部と、下壁部322の下面の前後方向の中央部と、左右の側壁部323,324の平板部323a,324aの後端部のそれぞれに、取り付けられる。パッキン340は、長手方向に直交する断面が、中空の半円形状である。コーナーパッキンは、壁部321,322,323,324のうち隣接する2つの壁部によって形成されるコーナー部分に取り付けられる。コーナーパッキンは、L字状の中実なブロックである。パッキン34は、パネル3を全周にわたって囲むように正面視にて矩形枠状に設けられる。パッキン34は、例えば合成ゴム製である。
【0060】
図5及び図7に示すように、パネル3は、パネル3の後面の下端部に固定され、横架材2への取り付けに用いられる下取付部材35と、パネル3の後面の上端部に固定され、他の横架材2への取り付けに用いられる上取付部材36と、を更に備える。
【0061】
下取付部材35は、パネル3の後面の下端部に固定される側面視L字状の三つのパネル固定板35aと、三つのパネル固定板35aのうち左端と右端の二つのパネル固定板35aにボルト37により固定される二つの側面視略Z字状の取付板35bとから構成される。ボルト37は、本実施形態では、片面側から締結することができるボルトである。
【0062】
三つのパネル固定板35aは、左右方向に間隔をおいて配置されている。三つのパネル固定板35aのそれぞれは、パネル3の後面に平行な縦片350と、縦片350の下端部から前側に延び、パネル3の下面に平行な横片351と、を有する。縦片350がパネル3の第二外皮33の本体部330の下端部にビス等の固定具で固定され、横片351の前端部がパネル3の第一外皮32の下壁部322にビス等の固定具で固定されている。
【0063】
左端と右端の二つのパネル固定板35aのそれぞれの縦片350の上部に、取付板35bの上部がボルト37で固定され、縦片350の下部と、取付板35bの下部との間には、横架材2の縦板部20を差し込み可能な差込溝38が形成される。差込溝38の幅は、ボルト37のねじ締め具合で調整可能である。ボルト37を最後までねじ締めることで、取付板35bを縦板部20に押し当てることができる。
【0064】
本実施形態では、三つのパネル固定板35aのうちのいずれか1つが、パネル位置調整治具1の押圧部7が当てられる付属部品30を構成している。
【0065】
上取付部材36は、パネル3の後面の上端部に固定される側面視L字状の二つのパネル固定板36aと、二つのパネル固定板36aのそれぞれにボルト39により固定される二つの矩形板状の取付板36bとから構成される。ボルト39は、本実施形態では、片面側から締結することができるボルトである。
【0066】
二つのパネル固定板36aは、左右方向に間隔をおいて配置されている。二つのパネル固定板36aは、左右方向における位置が、三つのパネル固定板35aのうち、左右両端に位置する二つのパネル固定板35aと同じである。二つのパネル固定板36aのそれぞれは、パネル3の後面に平行な縦片360と、縦片360の上端部から前側に延び、パネル3の上面に平行な横片361と、を有する。縦片360がパネル3の第二外皮33の本体部330の上端部にビス等の固定具で固定され、横片361の前端部がパネル3の第一外皮32の上壁部321にビス等の固定具で固定されている。二つのパネル固定板36aのそれぞれの縦片360に、取付板36bの下部がボルト39で固定される。
【0067】
パネル3は、二つの取付板35bとこれに対向する二つのパネル固定板35aとの間の差込溝38に、横架材2の縦板部20を差し込んで、二つの取付板35bを縦板部20に引っ掛けることで、横架材2によって左右方向にスライド移動可能に支持される。なおこのとき、ボルト37は、取付板35bがパネル固定板35aから外れない程度にねじ締めされた仮保持状態とされる。
【0068】
2-3.横架材
図9に示すように、横架材2は、構造躯体の一部を構成するものであり、本実施形態では、側面視L字状のアングル材である。横架材2は、鋼製である。横架材2は、縦板部20と、縦板部20の下端部から後側に延びた横板部21と、を有する。なお、縦板部20の厚み(前後方向の長さ)は、例えば、10mm未満であって、好ましくは、6~9mm程度である。
【0069】
構造躯体は、上下に並ぶ複数の横架材2を備える。複数の横架材2のそれぞれは、建物
の床や天井を構成する土台10に取り付けられている。なお、複数の横架材2のそれぞれは、梁に固定されてもよいし、複数の柱に架け渡して固定されてもよい。
【0070】
上下に並ぶ複数の横架材2は、パネル3に取り付けられた上下の取付部材35,36の間隔と同程度、上下方向に離れて位置する。上下に並ぶ二つの横架材2のうち、上側に位置する横架材2には、パネル3の上取付部材36が取り付けられ、下側に位置する横架材2には、パネル3の下取付部材35が取り付けられる。
【0071】
各横架材2の縦板部20のうち、パネル3の下取付部材35の左右方向の中央に位置するパネル固定板35aに対応する部分の前面には、このパネル固定板35aを下から支持する側面視L字状の受け部材22が溶接等で固定されている。
【0072】
3.パネル位置調整方法
続いて、上述したパネル位置調整治具1を用いて、パネル3の位置を調整するパネル位置調整方法の一例について説明する。以下では、図8に示すように、構造躯体(本実施形態では横架材2)に対して位置が固定された固定パネル9の側方(右方)において、パネル3の位置を調整する方法について説明する。固定パネル9は、本実施形態では、パネル3と同じ構造のサンドイッチパネルである。
【0073】
まず、横架材2に固定された固定パネル9の側方(右方)に、パネル3を配置する。このとき、パネル3の下端部の二つの取付板35bを、横架材2の縦板部20に引っ掛ける。取付板35bは、ボルト37によってパネル固定板35aに対して仮止めしておき、パネル3を横架材2の長手方向にスライド移動可能としておく。パネル3は、パネル3の左の側面のパッキン34が固定パネル9の右の側面のパッキン34に当たるように配置する。固定パネル9とパネル3の間には、耐火目地材11を挟み込む。なお、パネル3は、クレーン等の吊り上げ手段によって吊り上げた状態で、位置調整が行われる。
【0074】
次いで、パネル3の右端のパネル固定板35aの側方(右方)において、パネル位置調整治具1の引っ掛け部5の差込溝50に横架材2の縦板部20を差し込んで、引っ掛け部5を縦板部20に係止させる。またこのとき、パネル位置調整治具1の押圧部7の係止溝70に横架材2の縦板部20を差し込んで、押圧部7を縦板部20に係止させる。またこのとき、押圧部7の第二押圧面741をパネル3の右端のパネル固定板35aの右の側面に対向させて又は当てて配置する。
【0075】
次いで、固定操作部6の操作レバー61を、固定用ボルト60を中心に後方から見て時計回りに回転させて、固定操作部6の固定用ボルト60の先端を縦板部20に押し当て、引っ掛け部5を縦板部20に固定する。
【0076】
次いで、スライド操作部8の第一操作部80の操作部分800を引っ掛け部5に近づく方向に回転操作して、押圧部7を治具本体4の長手方向の一方(左方)にスライド移動させる。これにより、押圧部7でパネル3の右端のパネル固定板35aを押圧してパネル3を左方にスライド移動させることができる。
【0077】
次いで、パネル3と固定パネル9の間の目地幅が所定の長さになったら、スライド操作部8の回転操作を止める。本実施形態では、上述のようにパネル位置調整治具1によってパネル3の位置を調整することで、パネル3と固定パネル9との間の目地幅を所定の長さに調整することができる。
【0078】
パネル3が所望の位置に移動したら、パネル3を横架材2に対して固定する。詳しくは、パネル3の上取付部材36の二つの取付板36bを上側の横架材2の縦板部20に対して、溶接等の適宜手段で固定する。
【0079】
次いで、パネル3の下取付部材35の二つのボルト37を最後までねじ締めして、二つの取付板35bを横架材2の縦板部20に押し当てる。このとき、パネル3の下端部の左右方向の中央部に位置するパネル固定板35aは、横架材2の縦板部20に固定された受け部材22の上に載置され、パネル3の自重は受け部材22によって支持される。なお、受け部材22に対してパネル固定板35aは、溶接等で固定しない。
【0080】
パネル3の下側に他のパネル3が既に設置されている場合には、パネル3の二つの取付板35bとこれに対向するパネル固定板35aとの間に、横架材2の縦板部20と他のパネル3の取付板36bとを挟み込む。
【0081】
以上のようにすることで、パネル3は、上下二つの横架材2に対して固定される。
【0082】
パネル3の上下二つの横架材2への固定が終わったら、パネル位置調整治具1の固定操作部6の操作レバー61を回転操作して、引っ掛け部5の縦板部20への固定を解除し、縦板部20から引っ掛け部5及び押圧部7を取り外して、パネル位置調整治具1を横架材2から取り外す。
【0083】
以上のように施工することで、パネル3は、固定パネル9との間に所定の目地幅を形成した状態で、横架材2に固定される。上述の施工方法により複数のパネル3を横架材2に対して固定することで、例えば、図9に示す壁構造を形成することができる。
【0084】
4.作用効果
以上説明した本実施形態のパネル位置調整治具1は、横架材2にスライド可能に係止されたパネル3のパネル固定板35a(付属部品30)の側方において、引っ掛け部5を横架材2に係止させた状態で、固定操作部6を操作することで、引っ掛け部5を横架材2に固定することができる。その後、スライド操作部8を操作することで、押圧部7をスライド移動させて、押圧部7によってパネル3の付属部品30を押圧してパネル3をスライド移動させることができ、パネル3の位置を調整することができる。
【0085】
このように本実施形態のパネル位置調整治具1では、押圧部7を付属部品30に当ててパネル3をスライド移動させることができるため、パネル3(特に外皮32,33)に疵がつくことを抑えることができる。
【0086】
また、本実施形態のパネル位置調整治具1では、スライド操作部8として、第一操作部80と第二操作部81を有するため、押圧部7の位置を適宜変更することができて、パネル3の位置調整が行いやすい。
【0087】
また、本実施形態のパネル位置調整治具1では、押圧部7の係止溝70に縦板部20が挿入された状態で、押圧部7を移動させることができるため、移動時の押圧部7の前後位置が安定しやすくて、パネル3の付属部品30の側面に押圧部7を当てやすい。
【0088】
また、本実施形態のパネル位置調整治具1では、スライド操作部8の操作部80,81が、ナット状の操作部分800,810を有するため、押圧部7の位置調整を無段階で行うことができて、パネル3の位置調整がしやすい。
【0089】
また、本実施形形態のパネル位置調整治具1では、ナット状の操作部分800,810が、引っ掛け部5から筒状部分801,811の長さ分だけ少なくとも離れて位置するため、操作部分800,810の回転操作がしやすい。
【0090】
また、本実施形態のパネル位置調整治具1では、治具本体4、引っ掛け部5、スライド操作部8、及び押圧部7が、前後方向の所定の幅内に収まっているため、前後方向にコンパクトに設けられている。
【0091】
5.変形例
以上説明した本実施形態のパネル位置調整治具1及びパネル位置調整方法の変形例について説明する。
【0092】
パネル位置調整方法は、図10に示す変形例のように、パネル3と固定パネル9との間の目地に対向する位置に治具本体4を配置して、パネル3の位置を調整してもよい。この変形例では、引っ掛け部5と押圧部7とを左右逆に配置したパネル位置調整治具1を用いて、パネル3の位置を調整している。押圧部7は、治具本体4の右端部に固定され、引っ掛け部5は、治具本体4の左側の部分に取り付けられている。
【0093】
この変形例では、パネル位置調整治具1は、押圧部7の第一押圧面740をパネル3の左端のパネル固定板35aの右の側面に対向させて配置し、スライド操作部8の第二操作部81の操作部分810を引っ掛け部5に近づく方向に回転操作して、押圧部7を治具本体4の長手方向の一方(左方)にスライド移動させる。これにより、押圧部7でパネル3の左端のパネル固定板35aを押圧してパネル3を左方にスライド移動させることができる。
【0094】
変形例のパネル位置調整方法では、パネル3と固定パネル9との間の目地に対向する位置でパネル位置調整治具1を操作できるため、目地幅を所定の長さとする調整が行いやすい。
【0095】
また、パネル位置調整治具1は、図8図10に示す方法に限らず、他の方法で使用してもよい。パネル位置調整治具1の押圧部7は、3つのパネル固定板35aのうち、中央のパネル固定板35aを押圧してもよい。また、パネル位置調整治具1は、パネル3を移動させたい方向に応じて、第一押圧面740と第二押圧面741を適宜使い分け可能である。
【0096】
また、パネル位置調整治具1は、パネル3と固定パネル9との間の目地幅の調整に限らず、その他の用途で、パネル3の位置を調整してもよい。
【0097】
パネル3の付属部品30は、パネル3の下端部の3つのパネル固定板35aのいずれかに限定されず、パネル3の上端部の2つのパネル固定板36aのいずれかであってもよく、また、パネル3に固定された他の部品であってもよい。
【0098】
治具本体4は、外周面にねじ溝400を有する棒状部材40に限定されない。例えば、治具本体4は、ねじ溝400を有さない棒状部材であってもよく、横架材2に固定された引っ掛け部5に対して、スライド移動することができる部材であればよい。
【0099】
スライド操作部8は、押圧部7を横架材2の長手方向にスライド移動させることができるように構成されたものであればよく、図1等に示す構造のものに限定されない。例えば、スライド操作部8は、回転しながらスライド移動するものに限らず、回転せずにスライド移動するものであってもよい。
【0100】
また、スライド操作部8は、第一操作部80と第二操作部81のうち、一方だけを有してもよい。
【0101】
また、操作部80,81のそれぞれは、操作部分800,810と筒状部分801,811のうち、操作部分800,810のみを有してもよい。
【0102】
また、操作部80,81のそれぞれは、操作部分800,810と筒状部分801,811が、別体ではなく一体に設けられてもよい。
【0103】
また、押圧部7は、係止溝70を有さなくてもよく、パネル3の付属部品30に当たって押圧できるように構成されればよい。
【0104】
また、パネル3は、図5から図7に示す構造のサンドイッチパネルに限定されない。パネル3は、金属製の外皮を有するサンドイッチパネルに限らず、窯業系のパネルであってもよいし、金属サイディング材であってもよいし、木製のパネルであってもよく、特に限定されない。
【0105】
固定パネル9は、パネル3とは異なる形状及び大きさのパネルであってもよい。また、固定パネル9は、パネル3が引っ掛かる横架材2とは別の構造躯体に対して位置が固定されたものであってもよい。
【0106】
横架材2は、側面視L字状のアングル材に限らず、縦板部20のみで構成されるものであってよい。
【0107】
また、固定操作部6は、引っ掛け部5を横架材2に固定することができるように構成されたものであればよく、図1等に示す構造のものに限定されない。例えば、固定操作部6は、操作レバー61を有さなくてよく、固定用ボルト60のみで構成されてもよい。この場合、固定用ボルト60の頭部63を、電動工具やレンチ等の工具で回転操作することで、引っ掛け部5を横架材2に対して固定及び固定解除することができる。
【0108】
(第二実施形態)
1.詳細
次に、第二実施形態のパネル位置調整治具1について、図11に基づいて説明する。なお、本実施形態のパネル位置調整治具1の基本的な構成及び施工方法は、第一実施形態と共通であるから、第一実施形態と重複する説明については、図中に同符号を付して説明を省略する。
【0109】
本実施形態のパネル位置調整治具1は、スライド操作部8が1つの操作部(詳しくは第二操作部81)で構成されている。スライド操作部8は、治具本体4のうち、引っ掛け部5に対して押圧部7とは反対側の部分に、回転可能に取り付けられている。本実施形態のスライド操作部8は、第一操作部80(図1参照)を含まない。
【0110】
本実施形態のパネル位置調整治具1では、スライド操作部8の操作部分810を引っ掛け部5に近づく方向(左側)に回転操作して、操作部分810、筒状部分811及び引っ掛け部5を互いに接する状態とし、この状態から更に操作部分810を同方向に回転操作することで、操作部分810の回転により治具本体4及び押圧部7を右方へと移動させることができる。つまり、スライド操作部8を回転操作することで、治具本体4の長手方向のうち引っ掛け部5に近づく方向(右方)へ押圧部7を移動させることができて、パネル3を右方へと移動させることができる。
【0111】
以上説明した本実施形態のパネル位置調節治具1は、第一実施形態のパネル位置調整治具1に比べて、部品点数が少なくて、製造しやすい。また、本実施形態の位置調節治具1は、治具本体4のうち引っ掛け部5に対して押圧部7とは反対側の部分(治具本体4の長手方向の一端部)にスライド操作部8が取り付けられているため、ラチェットレンチ等の工具でスライド操作部8を回転操作しやすい。
【0112】
2.変形例
以上説明した第二実施形態のパネル位置調整治具1も、上述した第一実施形態のパネル位置調整治具1の変形例と、適宜組み合わせ可能である。また、下記の変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0113】
治具本体4の外周面のねじ溝400は、本実施形態とは逆方向にねじ切りが施されたものであってもよい。この場合、スライド操作部8の操作部分810を引っ掛け部5に近づく方向(左側)に回転操作すると、治具本体4及び押圧部7を左方へと移動させることができる。つまり、第二操作部81を回転操作することで、治具本体4の長手方向のうち引っ掛け部5から離れる方向(左方)へ押圧部7を移動させることができて、パネル3を左方へと移動させることができる。
【0114】
また、図12に示す変形例のように、治具本体4における押圧部7と引っ掛け部5の配置は、左右逆であってもよい。この変形例では、押圧部7は、治具本体4の右端部に固定され、治具本体4の左部分には、引っ掛け部5及びスライド操作部8が取り付けられている。
【0115】
この変形例のパネル位置調整治具1では、スライド操作部8の操作部分810を引っ掛け部5に近づく方向(右側)に回転操作することで、治具本体4及び押圧部7を左方へと移動させることができて、パネル3を左方へと移動させることができる。
【0116】
また、パネル位置調整治具1は、治具本体4の左端部に押圧部7が固定されたもの(実施形態2の治具本体4及び押圧部7)と、治具本体4の右端部に押圧部7が固定されたもの(変形例の治具本体4及び押圧部7)との2つを有し、この2つから選択された一方に、引っ掛け部5、固定操作部6及びスライド操作部8を取り付けたものであってもよい。この場合、使用条件に合わせて、パネル位置調整治具1の構造を変えることができる。
【0117】
(まとめ)
以上説明した第一、第二実施形態及びその変形例のように、第一態様のパネル位置調整治具(1)は、下記の構成を備える。
【0118】
すなわち、第一態様のパネル位置調整治具(1)は、構造躯体の一部を構成する横架材(2)に対してその長手方向にスライド可能に係止され、かつ付属部品(30)が固定されたパネル(3)の位置を調整するためのパネル位置調整治具(1)である。パネル位置調整治具(1)は、一方向に延びた治具本体(4)と、治具本体(4)の長手方向の一部に設けられ、横架材(2)に引っ掛けられる引っ掛け部(5)と、引っ掛け部(5)を横架材(2)に対して固定及び固定解除することのできる固定操作部(6)と、治具本体(4)の長手方向の他の一部に設けられ、パネル(3)の付属部品(30)に当てられる押圧部(7)と、押圧部(7)を治具本体(4)の長手方向にスライド移動させることのできるスライド操作部(8)と、を備える。
【0119】
上記構成を備える第一態様のパネル位置調整治具(1)では、横架材(2)にスライド可能に係止されたパネル(3)の付属部品(30)の側方において、引っ掛け部(5)を横架材(2)に係止させた状態で、固定操作部(6)を操作することで、引っ掛け部(5)を横架材(2)に固定することができる。その後、第一態様のパネル位置調整治具(1)では、スライド操作部(8)を操作することで、押圧部(7)をスライド移動させて、押圧部(7)によってパネル(3)の付属部品(30)を押圧してパネル(3)をスライド移動させることができる。このように第一態様のパネル位置調整治具(1)では、押圧部(7)をパネル(3)の付属部品(30)に当てることで、パネル(3)をスライド移動させることができるため、パネル(3)に疵がつくことを抑えることができる。
【0120】
また、上述した第一、第二実施形態及びその変形例のように、第二態様のパネル位置調整治具(1)は、第一態様のパネル位置調整治具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0121】
すなわち、第二態様のパネル位置調整治具(1)では、治具本体(4)は、外周面にねじ溝(400)を有する棒状部材(40)である。押圧部(7)は、治具本体(4)の長手方向の一部に固定される。引っ掛け部(5)は、治具本体(4)の長手方向の他の一部に前記長手方向にスライド移動可能に取り付けられる。スライド操作部(8)は、治具本体(4)の長手方向の更に他の一部に前記長手方向に回転移動可能に取り付けられている。
【0122】
上記構成を備える第二態様のパネル位置調整治具(1)では、治具本体(4)を、外周面にねじ溝(400)を有する棒状部材(40)といった簡単な構造で形成でき、また、スライド操作部(8)を回転移動させるといった簡単な操作で、押圧部(7)を移動させることができる。
【0123】
また、上述した第一、第二実施形態及びその変形例のように、第三態様のパネル位置調整治具(1)は、第二態様のパネル位置調整治具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0124】
すなわち、第三態様のパネル位置調整治具(1)では、スライド操作部(8)は、ナット状の操作部分(810)と、操作部分(810)よりも引っ掛け部(5)側に位置する筒状部分(811)と、を有する。
【0125】
上記構成を備える第四態様のパネル位置調整治具(1)では、引っ掛け部(5)から離れた位置でナット状の操作部分(810)を回転操作することができるため、スライド操作部(8)の回転操作がしやすい。また、第四態様のパネル位置調整治具(1)では、操作部分(810)がナット状であるため、押圧部(7)を無段階で移動させることができて、パネル(3)の位置の微調整が行いやすい。
【0126】
また、上述した第一、第二実施形態及びその変形例のように、第四態様のパネル位置調整治具(1)は、第一から第三態様のいずれか一つの態様のパネル位置調整治具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0127】
すなわち、第四態様のパネル位置調整治具(1)では、押圧部(7)は、横架材(2)の長手方向の一部を挿入可能な係止溝(70)を有する。
【0128】
上記構成を備える第四態様のパネル位置調整治具(1)では、押圧部(7)の係止溝(70)に横架材(2)に差し込んだ状態で、押圧部(7)を移動させることができるため、移動時の押圧部(7)の位置ズレを抑えやすい。そのため、第五態様のパネル位置調整治具(1)では、押圧部(7)によってパネル(3)の付属部品(30)を押しやすい。
【0129】
また、上述した第一、第二実施形態及びその変形例のように、第五態様のパネル位置調整方法は、第一から第四態様のいずれか一つの態様のパネル位置調整治具(1)を用いて、パネル(3)の位置を調整するパネル位置調整方法である。第五態様のパネル位置調整方法では、横架材(2)に引っ掛け部(5)を引っ掛け、固定操作部(6)を操作して、引っ掛け部(5)を横架材(2)に固定し、スライド操作部(8)を操作して、押圧部(7)を治具本体(4)の長手方向にスライド移動させることで、押圧部(7)でパネル(3)の付属部品(30)を押圧してパネル(3)をスライド移動させる。
【0130】
上記構成を備える第五態様のパネル位置調整治具(1)では、押圧部(7)でパネル(3)の付属部品(30)を押圧してパネル(3)を移動させることができるため、パネル(3)に疵がつくことを抑制しやすい。
【0131】
以上、本開示を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本開示は上記の各実施形態に限定されるものではなく、本開示の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0132】
1 パネル位置調整治具
2 横架材
3 パネル
30 付属部品
4 治具本体
40 棒状部材
400 ねじ溝
5 引っ掛け部
6 固定操作部
7 押圧部
70 係止溝
8 スライド操作部
810 操作部分
811 筒状部分
図1
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図3
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図5
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図12