(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149116
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】インフレーション成形装置、インフレーション成形装置のサイジングリングおよびインフレーション成形装置のサイジングリングの可動部材
(51)【国際特許分類】
B29C 48/90 20190101AFI20231005BHJP
B29C 48/885 20190101ALI20231005BHJP
B29C 48/92 20190101ALI20231005BHJP
B29C 48/32 20190101ALI20231005BHJP
B29C 48/89 20190101ALI20231005BHJP
B29L 7/00 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
B29C48/90
B29C48/885
B29C48/92
B29C48/32
B29C48/89
B29L7:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057508
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】303050355
【氏名又は名称】住友重機械モダン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】塩田 隆宏
【テーマコード(参考)】
4F207
【Fターム(参考)】
4F207AG08
4F207AJ08
4F207AM23
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA17
4F207KA19
4F207KL88
4F207KM16
4F207KW26
(57)【要約】
【課題】成形不良を抑制する、技術を提供する。
【解決手段】インフレーション成形装置は、バブルが通る挿通孔を形成するサイジングリングを備える。前記サイジングリングは、前記挿通孔の孔径を変化させる孔径可変機構を備える。前記孔径可変機構は、前記挿通孔を画成する可動部材を、前記挿通孔の周方向に連続的に複数有する。前記可動部材は、隣の前記可動部材との離間を制限する離間制限部を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バブルが通る挿通孔を形成するサイジングリングを備える、インフレーション成形装置であって、
前記サイジングリングは、前記挿通孔の孔径を変化させる孔径可変機構を備え、
前記孔径可変機構は、前記挿通孔を画成する可動部材を、前記挿通孔の周方向に連続的に複数有し、
前記可動部材は、隣の前記可動部材との離間を制限する離間制限部を含む、インフレーション成形装置。
【請求項2】
前記離間制限部は、隣の前記可動部材を吸着する吸着部を含む、請求項1に記載のインフレーション成形装置。
【請求項3】
前記吸着部は、磁石を含む、請求項2に記載のインフレーション成形装置。
【請求項4】
前記離間制限部は、隣の前記可動部材と嵌合する嵌合部を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のインフレーション成形装置。
【請求項5】
インフレーション成形装置のサイジングリングであって、
バブルが通る挿通孔の孔径を変化させる孔径可変機構を備え、
前記孔径可変機構は、前記挿通孔を画成する可動部材を、前記挿通孔の周方向に複数有し、
前記可動部材は、隣の前記可動部材との離間を制限する離間制限部を含む、インフレーション成形装置のサイジングリング。
【請求項6】
バブルが通る挿通孔を形成するサイジングリングを備え、前記サイジングリングは前記挿通孔の孔径を変化させる孔径可変機構を備え、前記孔径可変機構は前記挿通孔を画成する可動部材を前記挿通孔の周方向に複数有する、インフレーション成形装置のサイジングリングの可動部材であって、
前記可動部材は、隣の前記可動部材との離間を制限する離間制限部を含む、インフレーション成形装置のサイジングリングの可動部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフレーション成形装置、インフレーション成形装置のサイジングリングおよびインフレーション成形装置のサイジングリングの可動部材に関する。
【背景技術】
【0002】
インフレーション成形装置は、溶融樹脂をダイからチューブ状に押し出し、その内側に空気を吹き込んで膨らませ、薄いフィルムを成形する(例えば特許文献1参照)。インフレーション成形装置には、溶融樹脂を上向きに押し出す上向き式と、下向きに押し出す下向き式とがある。
【0003】
インフレーション成形装置は、サイジングリングを備える。サイジングリングは、チューブ状の樹脂フィルムであるバブルの外径を規定する。サイジングリングは、バブルが通る挿通孔を形成する。挿通孔の壁面とバブルの間には、冷却水などの冷媒の膜が形成される。バブルの外径は、挿通孔の孔径よりも冷媒の膜の厚みの分、小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、バブルの外径を変更する場合、挿通孔の孔径を変更すべく、サイジングリングを取り替える必要があった。サイジングリングの取り替えは、煩雑な作業であり、作業負担が大きい。また、取り替えには時間がかかり、その間は樹脂フィルムの製造が停止してしまう。また、サイジングリングを取り替えるには成形を止める必要があり、成形を再開する際には、樹脂のロスが発生してしまう。
【0006】
そこで、サイジングリングとして、挿通孔の孔径を変化させる孔径可変機構を備えるものが考えられる。孔径可変機構は、挿通孔を画成する可動部材を、挿通孔の周方向に連続的に複数有する。複数の可動部材は、孔径を小さくさせる方向と、孔径を大きくさせる方向の両方向に移動可能である。
【0007】
ところで、孔径を変化させる方向に複数の可動部材を移動させる際に、隣り合う可動部材の摺動面同士の間に隙間が生じてしまうことが考えられる。生じた隙間から冷却水などの冷媒が漏出してしまうと、冷媒の膜が挿通孔の壁面とバブルとの間に均一に形成されず、成形不良が生じてしまう。
【0008】
本発明の一態様は、成形不良を抑制する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るインフレーション成形装置は、バブルが通る挿通孔を形成するサイジングリングを備える。前記サイジングリングは、前記挿通孔の孔径を変化させる孔径可変機構を備える。前記孔径可変機構は、前記挿通孔を画成する可動部材を、前記挿通孔の周方向に連続的に複数有する。前記可動部材は、隣の前記可動部材との離間を制限する離間制限部を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、離間制限部によって隣り合う可動部材の摺動面同士の離間を制限することで、摺動面同士の間に隙間が形成されるのを防止でき、成形不良を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るインフレーション成形装置を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の第2冷却装置の一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は一実施形態に係るサイジングリングを示す斜視図であって、
図3(A)は孔径が最大の状態を示す斜視図であり、
図3(B)は孔径が最小の状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は一実施形態に係るサイジングリングを示す断面図であって、
図4(A)は孔径が最大の状態を示す断面図であり、
図4(B)は孔径が最小の状態を示す斜視図である。
【
図5】
図5は可動部材の一例を示す図であって、
図5(A)は斜視図であり、
図5(B)は断面図である。
【
図6】
図6は可動部材の別の一例を示す図であって、
図6(A)は斜視図であり、
図6(B)は
図6(A)とは別の方向から見た斜視図であり、
図6(C)はサイジングリングの径方向外方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。本明細書において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向およびY軸方向は水平方向を表し、Z軸方向は鉛直方向を表す。
【0013】
図1を参照して、一実施形態に係るインフレーション成形装置1について説明する。インフレーション成形装置1は、ダイ10と、第1冷却装置20と、第2冷却装置30と、一対の安定板40と、ピンチロール50と、を備える。インフレーション成形装置1は、ダイ10から下向きに樹脂を押し出す下向式である。なお、本発明は、ダイ10から上向きに樹脂を押し出す上向き式のインフレーション成形装置にも適用可能である。
【0014】
ダイ10には、不図示の押出機から溶融樹脂が供給される。供給された溶融樹脂は、ダイ10に形成されたリング状の樹脂吐出口11から押し出される。押し出された溶融樹脂の内側には、樹脂吐出口11よりも内側に形成されたエア噴出口12から適宜にエアが噴出される。これにより、チューブ状の樹脂フィルムであるバブルBが成形される。
【0015】
第1冷却装置20は、ダイ10の下方に配置される。第1冷却装置20は、バブルBに冷却ガスを吹き付けてバブルBを冷却する。第2冷却装置30は、第1冷却装置20の下方に配置される。第2冷却装置30は、バブルBに冷却水を接触させてバブルBを冷却する。第2冷却装置30の詳細は後述する。第1冷却装置20および第2冷却装置30に冷却され、バブルBは固化する。
【0016】
一対の安定板40は、第2冷却装置30の下方に配置され、バブルBを一対のピンチロール50の間に案内する。一対のピンチロール50は、安定板40の下方に配置される。一対のピンチロール50は、案内されたバブルBを引っ張り下げながら扁平に折りたたむ。巻取機60は、折りたたまれた樹脂フィルムを巻き取り、フィルムロールRを形成する。
【0017】
図2を参照して、第2冷却装置30の一例について説明する。第2冷却装置30は、水槽31と、サイジングリング32と、第1円筒部材33と、第2円筒部材34と、回転機構35と、を備える。水槽31は、サイジングリング32に供給する冷却水を溜める。サイジングリング32は、バブルBの外径を規定する。サイジングリング32は、バブルBが通る挿通孔32aを形成する。第1円筒部材33は、水槽31の底部31aに載置され、水槽31の底部31aから所定の高さの位置にサイジングリング32を支持する。第2円筒部材34は、水槽31の底部31aから下方に延びており、バブルBを環囲することで冷却水の飛散を抑制する。回転機構35は、サイジングリング32を回転させる。
【0018】
水槽31は、特に限定されないが平面視で円形状あり、上面が開放される。水槽31の底部31aには、バブルBが通る挿通孔31bが形成されている。また、水槽31の底部31aには、冷却水の供給口31cが形成されている。さらに、水槽31の底部31aには、オーバーフロー管36が取り付けられている。オーバーフロー管36は、サイジングリング32よりも上側まで延びており、上端に排出口36aを有する。冷却水は、供給口31cから供給され、排出口36aから排出される。冷却水の水位WHは、排出口36aの位置で規定され、サイジングリング32よりも上側の所定水位に保たれる。サイジングリング32の挿通孔32aの壁面と、バブルBとの間には、冷却水の膜が形成される。冷却水は、挿通孔32aの壁面とバブルBの外周の間を流れ落ちながらバブルBを冷却する。
【0019】
水槽31の外周面31dには、複数(例えば4つ)のプレート37が固定される。複数のプレート37には、それぞれ第1ボルト71が鉛直下向きに螺合される。第1ボルト71は、周方向に例えば等間隔に設けられる。第1ボルト71はプレート37を貫通し、第1ボルト71の先端はそれぞれ載置台70の上面70aに当接する。水槽31は、複数の第1ボルト71を介して載置台70に支持される。第1ボルト71とプレート37はボールねじ機構を構成し、第1ボルト71を回すとプレート37ひいては水槽31が上下方向に移動する。つまり水槽31の高さが調整される。
【0020】
載置台70の上面70aには複数(例えば4つ)の支持部材73が固定される。複数の支持部材73には、それぞれ第2ボルト72が水槽31の中心軸に向かって水平に螺合される。第2ボルト72は、周方向に例えば等間隔に設けられる。第2ボルト72は支持部材73を貫通し、第2ボルト72の先端はそれぞれ水槽31の外周面31dに当接する。複数の第2ボルト72により、水槽31が水平方向に位置決めされる。例えば、サイジングリング32の中心軸がダイ10の樹脂吐出口11の中心軸と一致するように、水槽31を水平方向に位置決めする。
【0021】
サイジングリング32は、挿通孔32aの孔径によってバブルBの外径を規定する部材である。挿通孔32aの壁面とバブルBとの間には、冷却水の膜が形成される。従って、バブルBの外径は、挿通孔32aの孔径よりも、冷却水の膜の厚みの分、小さい。サイジングリング32は、詳しくは後述するが、挿通孔32aの孔径を変化させる孔径可変機構100(
図3参照)を備える。これにより、バブルBの外径を変更する場合、サイジングリング32を取り替える作業を省略できる。なお、冷却水以外の冷却液が用いられてもよい。また、冷却液の代わりに、冷却ガスが冷媒として用いられてもよい。
【0022】
第1円筒部材33は、中心軸が鉛直方向に延在するように設けられる。第1円筒部材33の下端は、水槽31の底部31aに対してインロー嵌合される。第1円筒部材33の上端には、サイジングリング32が載置される。つまり、サイジングリング32は第1円筒部材33に支持される。第1円筒部材33の上端は、サイジングリング32、具体的には後述する第2保持部材132にインロー嵌合される。
【0023】
第2円筒部材34は、水槽31の底部31aから下方に延びている。第2円筒部材34は、水槽31の挿通孔31bと同じ内径を有し、バブルBを環囲することで冷却水の飛散を防止する。
【0024】
回転機構35は、サイジングリング32を回転させる。回転機構35は、サイジングリング32を例えば20~30分で1回転させる。サイジングリング32の回転は、サイジングリング32の挿通孔32aが真円ではない場合に行われる。挿通孔32aが真円ではない場合、挿通孔32aの周方向に挿通孔32aの壁面とバブルBとの間隔がばらつく。間隔が広い部分は、間隔が狭い部分に比べて、冷却水の流れる量が多く、バブルBの固化にかかる時間が短い。バブルBの固化にかかる時間が短い部分は、長い部分に比べて、一対のピンチロール50によって引き伸ばされにくく、厚くなりやすい。その結果、バブルBの周方向に、バブルBの厚みが不均一になる。
【0025】
回転機構35は、サイジングリング32を回転させることで、バブルBの厚い部分と薄い部分をバブルBの周方向に回転させる。これにより、巻取機60がフィルムロールRを形成する際に、バブルBの厚い部分同士が積み重なることを防止でき、また、バブルBの薄い部分同士が積み重なることを防止できる。フィルムロールRの外周に凹凸ができるのを防止でき、樹脂フィルムに歪が生じるのを防止できる。
【0026】
回転機構35は、水槽31を回転させることで、サイジングリング32を回転させてもよい。水槽31と共にサイジングリング32を回転させることで、水槽31の内部に回転機構35の構成部品を入れなくて済み、水槽31の内部の冷却水の揺れを抑制できる。その結果、水槽31の内部の冷却水の揺れによってバブルBに偏肉が生じるのを防止できる。
【0027】
回転機構35は、例えば、駆動装置80と、伝達機構81と、を含む。駆動装置80は、例えばモータやギヤモータであり、回転力を出力する。伝達機構81は、駆動装置80による回転力を水槽31に伝達する機構であり、外歯車82と、ベアリング83と、を含む。外歯車82は、駆動装置80の出力軸80aに嵌合される。
【0028】
ベアリング83は、バブルBを環囲するように配置される。ベアリング83の中心軸と、サイジングリング32の中心軸と、水槽31の中心軸とは、実質的に一致している。
【0029】
ベアリング83は、内輪83aと、外輪83bと、を含む。内輪83aは、図示しないフレームに固定される。外輪83bは、水槽31に対して固定される。外輪83bは、載置台70に固定されることで間接的に水槽31に固定されているが、直接的に水槽31に固定されてもよい。外輪83bの外周には、外歯車82と噛み合う外歯83cが形成されている。
【0030】
出力軸80aの回転に伴って外歯車82が回転すると、外輪83bが回転する。上述したように、外輪83bは水槽31に対して固定されている。また、サイジングリング32は水槽31に対して固定されている。したがって、外輪83bが回転すると、サイジングリング32が回転する。
【0031】
回転機構35は、好ましくは、水槽31を所定の角度範囲(例えば360°以下の所定の角度範囲)で回転(すなわち往復回動)させてもよい。これにより、供給口31cに接続されるホース(不図示)のねじれを避けられる。
【0032】
図3~
図5を参照して、サイジングリング32の孔径可変機構100の一例について説明する。
図3および
図4に示すように、孔径可変機構100は、挿通孔32aの孔径を変化させる。孔径可変機構100は、挿通孔32aを画成する可動部材110を、挿通孔32aの周方向に連続的に複数(例えば32個)有する。可動部材110は、孔径を小さくさせる方向と、孔径を大きくさせる方向の両方向に移動可能である。
【0033】
複数の可動部材110によってサイジングリング32の挿通孔32aが画成され、複数の可動部材110の側面によってその挿通孔32aの壁面が構成される。可動部材110の高さによって挿通孔32aの壁面の高さが決まる。壁面の高さは、バブルBの外径を規定するのに十分な高さに設定される。
【0034】
図5に示すように、可動部材110は、例えば三角柱形状のブレード111を有する。ブレード111は、上面111aと、下面111bと、第1側面111cと、第2側面111dと、第3側面111eと、を有する。上面111aと下面111bは、三角形状であって、サイジングリング32の径方向内側に向けて先細り状である。第1側面111cと第2側面111dと第3側面111eは、長方形状である。
【0035】
ブレード111の上面111aには、第1突起121が設けられている。第1突起121は、第1保持部材131の第1スリット131a(
図3参照)に挿入される。一方、ブレード111の下面111bには、第2突起122が設けられている。第2突起122は、第2保持部材132の第2スリット132a(
図4参照)に挿入される。第1突起121と第2突起122は、同一の鉛直線上に配置されている。
【0036】
孔径可変機構100は、第1保持部材131を有する。第1保持部材131は、挿通孔32aの孔径を変化させる方向に、ブレード111を移動自在に保持する。第1保持部材131は、薄肉の円環状の部材である。第1保持部材131には、複数のブレード111と同数の第1スリット131aが周方向に等間隔に形成されている。上方から見て、第1スリット131aは、直線状に延びており、サイジングリング32の径方向内側に向かうほど反時計回り方向に傾斜している。
【0037】
また、孔径可変機構100は、第2保持部材132を有する。第2保持部材132は、挿通孔32aの孔径を変化させる方向に、ブレード111を移動自在に保持する。第2保持部材132は、第1保持部材131と同様の形状および大きさを有する部材である。すなわち、第2保持部材132は薄肉の円環状の部材である。第2保持部材132には、複数のブレード111と同数の第2スリット132aが周方向に等間隔に形成されている。上方から見て、第2スリット132aは、直線状に延びており、サイジングリング32の径方向内側に向かうほど時計回り方向に傾斜している。つまり、上方から見て、第2スリット132aは、第1スリット131aとは逆向きに傾斜している。
【0038】
図4に示すように、一のブレード111の第1側面111cと、隣のブレード111の第2側面111dとが接触する。第1側面111cと第2側面111dは、摺動面であって、鉛直な平面である。上方から見て、第1側面111cと第2側面111dは、サイジングリング32の径方向内側に向かうほど時計回り方向に傾斜する。サイジングリング32の径方向に複数のブレード111が重なっている。
【0039】
上方から見て、第1保持部材131を第2保持部材132に対して時計回り方向に回転させると、第1突起121が第1スリット131aに沿って径方向内側に移動すると共に、第2突起122が第2スリット132aに沿って径方向内側に移動する。その結果、ブレード111が径方向内側に移動し、サイジングリング32の挿通孔32aの孔径が小さくなる。
【0040】
一方、上方から見て、第1保持部材131を第2保持部材132に対して反時計回り方向に回転させると、第1突起121が第1スリット131aに沿って径方向外側に移動すると共に、第2突起122が第2スリット132aに沿って径方向外側に移動する。その結果、ブレード111が径方向外側に移動し、サイジングリング32の挿通孔32aの孔径が大きくなる。
【0041】
ここでは、第1保持部材131を第2保持部材132に対して回転させる場合について説明したが、第2保持部材132を第1保持部材131に対して回転させてもよい。
【0042】
また、ここでは、上方から見て第1側面111cと第2側面111dがサイジングリング32の径方向内側に向かうほど時計回り方向に傾斜する場合について説明したが、上方から見て第1側面111cと第2側面111dがサイジングリング32の径方向内側に向かうほど反時計回り方向に傾斜してもよい。後者の場合、第1スリット131aはサイジングリング32の径方向内側に向かうほど時計回り方向に傾斜する。また、後者の場合、第2スリット132aはサイジングリング32の径方向内側に向かうほど反時計回り方向に傾斜する。
【0043】
ところで、挿通孔32aの孔径を変化させる方向に複数のブレード111を移動させる際に、隣り合うブレード111の摺動面同士の間に隙間が生じてしまうことが考えられる。隙間が生じる原因として、例えば上方から見てブレード111が第1突起121および第2突起122を中心に回転しうることが考えられる。生じた隙間から冷却水が漏出してしまうと、冷却水の膜が挿通孔32aの壁面とバブルBとの間に均一に形成されず、成形不良が生じてしまう。
【0044】
そこで、
図4および
図5に示すように、ブレード111は、隣のブレード111との離間を制限する離間制限部112を含む。離間制限部112によって隣り合うブレード111の摺動面同士の離間を制限することで、摺動面同士の間に隙間が形成されるのを防止できる。よって、隙間から冷却水が漏出するのを抑制でき、冷却水の膜を挿通孔32aの壁面とバブルBとの間に均一に形成でき、成形不良を抑制できる。
【0045】
例えば、離間制限部112は、隣のブレード111を吸着する吸着部113を含む。吸着部113は、第1側面111cと第2側面111dの境界に交差する方向に吸着力を発生させ、第1側面111cと第2側面111dの間に隙間が生じるのを制限する。なお、複数のブレード111は、吸着力に逆らって、挿通孔32aの孔径を変化させる方向に移動可能である。
【0046】
なお、吸着部113は、複数のブレード111をまとめて吸着してもよい。例えば吸着部113は、離れているブレード111を吸着することで、隣のブレード111を吸着してもよい。従って、全てのブレード111が吸着部113を含んでいなくてもよい。例えば、吸着部113を含むブレード111と、吸着部113を含まないブレード111とが、サイジングリング32の周方向に交互に配置されてもよい。
【0047】
吸着部113は、例えば磁石113Aを含む。磁石113Aの磁力で吸着力を発生させることができる。磁石113Aは、永久磁石でもよいし、電磁石でもよい。永久磁石の場合、電気配線が不要である。一方、電磁石の場合、電磁石に対する供給電流を制御することで、吸着力の発生と消失を制御できる。例えば、挿通孔32aの孔径を変化させる際には吸着力を消失させ、挿通孔32aの孔径を固定する際には吸着力を発生させることができる。
【0048】
図5に示すように、ブレード111は、磁石113Aに加えて、第1カバー部材114と、第2カバー部材115と、を含んでもよい。第1カバー部材114と第2カバー部材115は、図示しないボルトなどの締結具で締結され、三角柱形状の部材を構成する。第1カバー部材114と第2カバー部材115は、磁石113Aを内部に収容する。磁石113Aは、板形状である。
【0049】
第1カバー部材114は、三角柱形状の部材である。第2カバー部材115は、第1カバー部材114と同程度の大きさの三角柱形状の部材と、上面と下面が台形である四角柱形状の部材とを一体化させた部材である。
【0050】
図4(A)に示すように挿通孔32aの孔径が最大である時も、
図4(B)に示すように挿通孔32aの孔径が最小である時も、上方から見たときに、一の磁石113Aをその磁化方向に投影すると、隣の磁石113Aの少なくとも一部と重なるように、磁石113Aの大きさと位置が決められる。
図4において、各磁石113Aの磁化方向は、各磁石113Aの長手方向と直交する方向である。
【0051】
なお、ブレード111は、その一部のみが磁石113Aであるが、全体が磁石であってもよい。また、全てのブレード111が磁石113Aを含まなくてもよく、磁石113Aを含むブレード111と、磁石113Aを含まないブレード111とが、サイジングリング32の周方向に交互に配置されてもよい。磁石113Aを含まないブレード111は、磁石113A(硬磁性材料)の代わりに、鉄などの軟磁性材料を含むことが好ましい。軟磁性材料は、磁石113Aによって吸着される。
【0052】
なお、吸着部113の吸着力として、本実施形態では磁力を利用するが、真空吸着力も利用可能である。
【0053】
図6を参照して、離間制限部112の変形例について説明する。
図6に示すように、離間制限部112は、隣のブレード111と嵌合する嵌合部116を含んでもよい。嵌合部116として、嵌合突起116Aと嵌合溝116Bが用いられる。嵌合突起116Aは第2側面111dに直線状に設けられ、嵌合溝116Bは第1側面111cに直線状に設けられる。嵌合突起116Aと嵌合溝116Bは、それぞれ、断面T字状であるが、断面L字状であってもよい。断面形状は、特に限定されない。
【0054】
一のブレード111の第2側面111dに設けた嵌合突起116Aと、隣のブレード111の第1側面111cに設けた嵌合溝116Bとは、互いに嵌合することで、隣り合うブレード111の離間を制限する。嵌合突起116Aと嵌合溝116Bは、互いに嵌合した状態で、長手方向に相対的に移動可能である。それゆえ、挿通孔32aの孔径を変化させる方向に、隣り合うブレード111を移動可能である。
【0055】
嵌合突起116Aと嵌合溝116Bの配置は逆でもよく、嵌合突起116Aが第1側面111cに設けられ、嵌合溝116Bが第2側面111dに設けられてもよい。いずれにしろ、全てのブレード111が同一形状を有する場合、ブレード111の製造コストおよび管理コストを低減できる。
【0056】
なお、全てのブレード111が同一形状を有しなくてもよい。第1側面111cと第2側面111dの両方に嵌合突起116Aを有するブレード111と、第1側面111cと第2側面111dの両方に嵌合溝116Bを有するブレード111とが、サイジングリング32の周方向に交互に配置されてもよい。
【0057】
図示しないが、嵌合突起116Aと嵌合溝116Bは、上面111aまたは下面111bに設けられてもよい。例えば、一のブレード111の上面111aに嵌合溝116Bが設けられ、その嵌合溝116Bに対して上方から差し込まれる嵌合突起116Aが隣のブレード111の上面111aに設けられてもよい。
【0058】
但し、嵌合突起116Aと嵌合溝116Bは、第1側面111cまたは第2側面111dに設けられることが好ましい。嵌合突起116Aと嵌合溝116Bをサイジングリング32の内部に隠すことができ、冷却水の流れが乱れるのを防止できる。
【0059】
なお、離間制限部112は、吸着部113と嵌合部116の一方のみを含んでもよいが、両方を含んでもよい。
【0060】
以上、本発明に係るインフレーション成形装置、インフレーション成形装置のサイジングリングおよびインフレーション成形装置のサイジングリングの可動部材の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0061】
1 インフレーション成形装置
32 サイジングリング
32a 挿通孔
100 孔径可変機構
110 可動部材
112 離間制限部
B バブル