(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149124
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】表皮材
(51)【国際特許分類】
B32B 5/24 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B32B5/24 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057519
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(72)【発明者】
【氏名】田中 康行
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK41C
4F100AK51A
4F100AK51B
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA08B
4F100DG13B
4F100DJ01A
4F100EC18
4F100EH46
4F100EJ82B
(57)【要約】
【課題】表皮材全体としての難燃性の向上を図ることができる表皮材を提供する。
【解決手段】
表皮材1は、発泡体層2と、難燃剤が含侵された編物からなり、発泡体層2を被覆する表皮3と、表皮3と発泡体層2との間に配置されるコーティング層4であって、難燃剤を含有するコーティング層4とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体層と、
難燃剤が含侵された編物からなり、前記発泡体層を被覆する表皮と、
前記表皮と前記発泡体層との間に配置されるコーティング層であって、難燃剤を含有するコーティング層と
を備える、表皮材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表皮材と、クッション材としてポリウレタンフォームと、裏基布とを備えるラミネート構造体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載されるようなラミネート構造体では、ラミネート構造体を構成する複数の層のそれぞれが十分な難燃性を有していても、それらの層が複合したラミネート構造体全体としての難燃性が、各層の難燃性よりも劣る場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、表皮材全体としての難燃性の向上を図ることができる表皮材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明[1]は、発泡体層と、難燃剤が含侵された編物からなり、前記発泡体層を被覆する表皮と、前記表皮と前記発泡体層との間に配置されるコーティング層であって、難燃剤を含有するコーティング層とを備える、表皮材を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の表皮材によれば、表皮と発泡体層との間に、難燃剤を含有するコーティング層が配置されている。
【0008】
そのため、表皮の燃焼によって発生した可燃性のガスが発泡体層に流れることを、難燃剤を含有するコーティング層で抑制できる。
【0009】
これにより、表皮の燃焼が発泡体層に延焼することを抑制できる。
【0010】
その結果、表皮材全体としての難燃性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態としての表皮材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.表皮材
表皮材1は、例えば、車両シートの表皮材として使用される。なお、表皮材1の用途は、限定されない。表皮材1は、発泡体層2と、表皮3と、コーティング層4と、裏基布5とを備える。表皮材1は、発泡体層2、表皮3、コーティング層4、および、裏基布5のみからなる。
【0013】
表皮材1の厚みは、例えば、2.5mm以上、3.9mm以下である。
【0014】
(1)発泡体層
発泡体層2は、シート形状を有する。発泡体層2の厚み方向において、発泡体層2は、表面S1と裏面S2とを有する。
【0015】
発泡体層2の材料として、例えば、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォームが挙げられる。発泡体層2の材料として、好ましくは、ポリウレタンフォームが挙げられる。
【0016】
発泡体層2の厚みは、例えば、1.5mm以上、2.5mm以下である。
【0017】
(2)表皮
表皮3は、発泡体層2の表面S1を被覆する。表皮3は、フレームラミネートによって、コーティング層4とともに発泡体層2の表面S1に貼り付けられている。これにより、表皮3、コーティング層4および発泡体層2は、一体化(複合)されている。表皮3は、難燃剤が含侵された編物からなる。
【0018】
編物の材料は、例えば、天然繊維、合成繊維、再生繊維が挙げられる。天然繊維として、例えば、綿、麻、絹、羊毛が挙げられる。合成繊維として、例えば、ポリエステル、ナイロンが挙げられる。再生繊維として、例えば、レーヨン、キュプラが挙げられる。編物の材料として、好ましくは、合成繊維、より好ましくは、ポリエステルが挙げられる。
【0019】
難燃剤として、例えば、リン酸エステル、リン酸グアニジンが挙げられる。
【0020】
表皮3の厚みは、例えば、0.8mm以上、1.2mm以下である。
【0021】
表皮3の編物の目付は、例えば、300g/m2以上、400g/m2以下である。
【0022】
(3)コーティング層
コーティング層4は、表皮3と発泡体層2との間に配置される。コーティング層4は、表皮3の裏面をコーティングする。コーティング層4は、樹脂と、難燃剤とを含有する。
【0023】
樹脂として、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。
【0024】
難燃剤として、上記した難燃剤が挙げられる。コーティング層4の難燃剤は、好ましくは、表皮3の難燃剤と同じである。コーティング層4の難燃剤と表皮3の難燃剤とが同じであると、表皮3およびコーティング層4が燃焼したときに、表皮3の燃焼により生じる炭化層と、コーティング層4の燃焼により生じる炭化層とが複合され、緻密な炭化層が形成される。そのため、表皮3およびコーティング層4の燃焼により生じる可燃性のガスが発泡体層2に流れることを、緻密な炭化層によって抑制できる。その結果、表皮3の燃焼が発泡体層2に延焼することを、より抑制でき、表皮材1全体としての(つまり、発泡体層2、表皮3、コーティング層4、および、裏基布5が複合された状態での)難燃性の向上を、より図ることができる。
【0025】
コーティング層4の厚みは、例えば、0.1mm以上、0.2mm以下である。
【0026】
(4)裏基布
裏基布5は、発泡体層2の裏面S2を被覆する。裏基布5は、フレームラミネートによって、発泡体層2の裏面S2に貼り付けられている。これにより、裏基布5と発泡体層2とは、一体化(複合)されている。つまり、表皮3、コーティング層4、発泡体層2、および、裏基布5は、一体化(複合)されている。
【0027】
裏基布5の材料として、例えば、上記した天然繊維、上記した合成繊維、上記した再生繊維が挙げられる。裏基布5の材料として、好ましくは、合成繊維、より好ましくは、ナイロンが挙げられる。
【0028】
裏基布5の厚みは、例えば、0.2mm以上、0.25mm以下である。
【0029】
2.作用効果
表皮材1によれば、
図1に示すように、表皮3と発泡体層2との間に、難燃剤を含有するコーティング層4が配置されている。
【0030】
そのため、表皮3の燃焼によって発生した可燃性のガスが発泡体層2に流れることを、難燃剤を含有するコーティング層4で抑制できる。
【0031】
これにより、表皮3の燃焼が発泡体層2に延焼することを抑制できる。
【0032】
その結果、表皮材1全体としての難燃性の向上を図ることができる。
【実施例0033】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
【0034】
1.表皮材の製造
<実施例>
ナイロン製の裏基布の上に、ポリウレタンフォーム(厚み:2mm)からなる発泡体層と、難燃剤(リン酸エステル)が含侵されており、かつ、難燃剤(リン酸エステル)を含むコーティング層(ウレタン樹脂製)で裏打ちされたポリエステル製の表皮、とを順に重ね、フレームラミネートによって、表皮を発泡体層の一方面に貼り合わせるとともに、裏基布を発泡体層の他方面に貼り合わせた。
【0035】
これにより、
図1に示す表皮材(厚み:3.1mm)を得た。
【0036】
<比較例>
コーティング層を設けなかった以外は、実施例と同様にして、表皮材(厚み:3.0mm)を得た。
【0037】
2.最大燃焼速度の測定
TRIAS 20-J027-01「内装材料の難燃性試験」により、実施例および比較例で得られた表皮材の難燃性を評価した。
【0038】
実施例の表皮材は、「不燃性」であった。
【0039】
比較例の表皮材の「燃焼速度の最大値」は、82mm/分であった。