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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149130
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】光学系およびそれを有する撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20231005BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057538
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 慎一郎
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087KA02
2H087LA01
2H087MA07
2H087NA07
2H087PA07
2H087PA18
2H087PB08
2H087QA02
2H087QA06
2H087QA12
2H087QA21
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA26
2H087QA37
2H087QA39
2H087QA41
2H087QA45
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087UA01
(57)【要約】
【課題】小型かつ軽量でありながら色収差を含む諸収差を良好に補正し高い光学性能が得られる光学系およびそれを有する撮像装置を提供する。
【解決手段】光学系L0は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、第3レンズ群からなり、フォーカシングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化する光学系である。光学系は、接合レンズを含む。第3レンズ群は、非球面レンズを含む。フォーカシングに際して第2レンズ群が移動する。光学系において最も物体側に配置された第1正レンズの焦点距離fp1、光学系の焦点距離f、光学系の光学全長TLは所定の条件式を満足する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、第3レンズ群からなり、フォーカシングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化する光学系であって、
前記光学系は、接合レンズを含み、
前記第3レンズ群は、非球面レンズを含み、
フォーカシングに際して前記第2レンズ群が移動し、
前記光学系において最も物体側に配置された第1正レンズの焦点距離をfp1、前記光学系の焦点距離をf、前記光学系の光学全長をTLとするとき、
0.0<fp1/f<2.0
0.8<TL/f<1.2
なる条件式を満足することを特徴とする光学系。
【請求項2】
前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の空気間隔からなる空気レンズのシェープファクタをSFAとするとき、
-1.0<SFA<2.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記光学系を構成する全てのレンズの材料のうち最大となる屈折率をndmとするとき、
1.75<ndm<2.20
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の光学系。
【請求項4】
前記光学系を構成する全てのレンズのうち負レンズの材料の屈折率の平均値をndnとするとき、
1.49<ndn<1,80
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項5】
前記第2レンズ群は、正レンズを含み、
前記正レンズの屈折率をndLPとするとき、
1.65<ndLp<2.20
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項6】
前記第2レンズ群は、正レンズを含み、
前記正レンズの物体側のレンズ面の曲率半径をr1Lpとするとき、
-0.55<r1Lp/f<-0.10
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項7】
前記第1レンズ群の焦点距離をf1、前記第2レンズ群の焦点距離をf2とするとき、
-1.30<f1/f2<-0.65
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項8】
前記第2レンズ群の焦点距離をf2とするとき、
-0.9<f2/f<-0.2
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項9】
前記第1レンズ群は、複数枚の正レンズと、1枚の負レンズからなることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項10】
前記第1レンズ群において、前記負レンズは、接合レンズの一部であることを特徴とする請求項9に記載の光学系。
【請求項11】
前記第1レンズ群は、非球面を有するレンズを含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項12】
前記第1レンズ群の最も像側に開口絞りが配置されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項13】
前記第2レンズ群は、1枚の負レンズと1枚の正レンズから構成されることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項14】
前記第2レンズ群は、物体側から像側へ順に配置された、負の屈折力の球面レンズと、像側に凸形状を有するメニスカス形状の正の屈折力の球面レンズから構成されることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項15】
フォーカシングに際して、前記第2レンズ群のみが移動することを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項16】
前記第3レンズ群は、正の屈折力を有することを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項17】
前記第3レンズ群は、非球面レンズから構成されることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項18】
前記第3レンズ群は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の非球面レンズ、負の屈折力の非球面レンズから構成されることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項19】
前記第1レンズ群、前記第2レンズ群、および前記第3レンズ群の各レンズ群において、負レンズの枚数は、1であることを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項20】
前記光学系は、6枚以上12枚以下のレンズから構成されることを特徴とする請求項1から19のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項21】
請求項1から20いずれか一項に記載の光学系と、該光学系によって形成された像を受光する撮像素子を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系に関し、デジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、放送用カメラ、銀塩フィルム用カメラ、監視用カメラ等に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像装置に用いられる光学系は、レンズ系全体が小型で色収差補正を含めた高い光学性能を有すことが強く要望されている。
【0003】
一般に、テレフォト型の光学系は、焦点距離を長くするにつれてレンズ系全体が大型化し、質量が増加してくる。テレフォト型のパワー配置で光学系を小型化するには、物体側の正の屈折力、像側の負の屈折力を夫々強めることが有効であるが、歪曲収差や像面湾曲の補正との両立に課題が生じる。
【0004】
また、大きな撮像素子に対応した光学系では、フォーカシングを小型軽量のレンズ群で迅速に、しかも駆動装置の負担を少なくして行うことが重要になってくる。テレフォト型の光学系において、フォーカシングを容易に行い、フォーカシングに際しての収差変動が少なくするには、各レンズ群のレンズ構成を適切に設定することが重要になってくる。
【0005】
特許文献1には、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、第3レンズ群からなり、フォーカシングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化する光学系が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-28317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の光学系では、光学系を構成するレンズ枚数が多く、光学系が十分に小型化できていない。
【0008】
本発明は、小型かつ軽量でありながら色収差を含む諸収差を良好に補正し高い光学性能が得られる光学系およびそれを有する撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面としての光学系は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、第3レンズ群からなり、フォーカシングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化する光学系であって、前記光学系は、接合レンズを含み、前記第3レンズ群は、非球面レンズを含み、フォーカシングに際して前記第2レンズ群が移動し、前記光学系において最も物体側に配置された第1正レンズの焦点距離をfp1、前記光学系の焦点距離をf、前記光学系の光学全長をTLとするとき、
0.0<fp1/f<2.0
0.8<TL/f<1.2
なる条件式を満足することを特徴とする。
【0010】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施形態において説明される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型かつ軽量でありながら色収差を含む諸収差を良好に補正し高い光学性能が得られる光学系およびそれを有する撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の光学系のレンズ断面図である。
図2】実施例1の光学系の無限遠合焦時の収差図である。
図3】実施例2の光学系のレンズ断面図である。
図4】実施例2の光学系の無限遠合焦時の収差図である。
図5】実施例3の光学系のレンズ断面図である。
図6】実施例3の光学系の無限遠合焦時の収差図である。
図7】実施例4の光学系のレンズ断面図である。
図8】実施例4の光学系の無限遠合焦時の収差図である。
図9】実施例5の光学系のレンズ断面図である。
図10】実施例5の光学系の無限遠合焦時の収差図である。
図11】撮像装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の光学系及びそれを有する撮像装置の実施例について、添付の図面に基づいて説明する。
【0014】
図1図3図5図7図9は、それぞれ実施例1乃至5の光学系L0の無限遠合焦時におけるレンズ断面図である。各実施例の光学系L0はデジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、放送用カメラ、銀塩フィルム用カメラ、監視用カメラ等の撮像装置に用いられる光学系である。なお、各実施例の光学系L0は投射装置(プロジェクタ)用の投射光学系として用いることもできる。
【0015】
各レンズ断面図において左方が物体側で、右方が像側である。各実施例の光学系L0は複数のレンズ群を有して構成されている。本願明細書においてレンズ群とは、フォーカシングに際して一体的に移動または静止するレンズのまとまりである。すなわち、各実施例の光学系L0では、無限遠から近距離へのフォーカシングに際して隣接するレンズ群同士の間隔が変化する。なお、レンズ群は1枚のレンズから構成されていても良いし、複数のレンズから成っていても良い。また、レンズ群は開口絞りを含んでいても良い。
【0016】
各実施例の光学系L0は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群L1、負の屈折力の第2レンズ群L2、第3レンズ群L3からなる。
【0017】
また、SPは開放Fナンバー(Fno)の光束を決定(制限)する開口絞りである。FPはフレアーカット絞りであり、不要光をカットしている。GBはカバーガラスやローパスフィルタ等の光学ブロックである。IPは像面であり、各実施例の光学系L0をデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラの撮影光学系として使用する際にはCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)の撮像面が配置される。各実施例の光学系L0を銀塩フィルム用カメラの撮影光学系として使用する際には像面IPにはフィルム面に相当する感光面が置かれる。
【0018】
また、各レンズ断面図に示したフォーカスに関する矢印は無限遠から近距離へのフォーカシングに際してのレンズ群の移動方向を表している。
【0019】
図2図4図6図8図10は、それぞれ実施例1乃至5の光学系の無限遠合焦時の収差図である。
【0020】
球面収差図においてFnoはFナンバーであり、d線(波長587.6nm)、g線(波長435.8nm)に対する球面収差量を示している。非点収差図においてΔSはサジタル像面における非点収差量、ΔMはメリディオナル像面における非点収差量を示している。歪曲収差図においてd線に対する歪曲収差量を示している。色収差図ではg線における色収差量を示している。ωは撮像半画角(°)であり、近軸計算による画角である。
【0021】
次に、各実施例の光学系における特徴的な構成について述べる。
【0022】
各実施例の光学系L0は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群L1、負の屈折力の第2レンズ群L2、第3レンズ群L3からなる。各実施例の光学系L0では、フォーカシングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化する。光学系L0は、接合レンズを含む。第3レンズ群L3は、非球面レンズを含む。フォーカシングに際して第2レンズ群L2が移動する。
【0023】
さらに、各実施例の光学系L0は、以下の条件式(1)および(2)を満足する。
【0024】
0.0<fp1/f<2.0 ・・・(1)
0.8<TL/f<1.2 ・・・(2)
ここで、fp1は光学系L0において最も物体側に配置された第1正レンズPの焦点距離である。fは光学系L0の焦点距離である。TLは光学系L0の光学全長である。
【0025】
光学全長(最も物体側のレンズ面から像面IPまでの光軸上の長さ)を短縮し、光学系L0の小型化を図るほど、軸上色収差及び倍率色収差などの色収差、像面湾曲などの諸収差、および非点隔差の発生が多くなり、光学性能が低下する傾向にある。特にレンズ全長(最も物体側のレンズ面から最終レンズ面までの光軸上の長さ)の短縮化を図ったテレフォト型の光学系では、像面湾曲の抑制が難しくなる。また、焦点距離が長くなるにつれて、正の屈折力の第1レンズ群L1、負の屈折力の第2レンズ群L2が大型化しやすく、各レンズ群の構成を適切にすることが重要となる。さらに、望遠レンズでは物体側ほどレンズの有効径が大きくなるため、Fナンバーが小さくなれば物体側のレンズの有効径も増大する。このため、球面収差やコマ収差を抑制することが非常に重要となる。
【0026】
各実施例の光学系L0は、接合レンズを含んでいる。これにより、球面収差等の諸収差を良好に補正しつつ、光学全長を短縮した際に課題となる偏心収差(偏心誤差による収差の発生)を抑制することができる。
【0027】
また、各実施例の光学系L0では、第3レンズ群L3は非球面レンズを含んでいる。これにより、光学全長を短縮した際に課題となる歪曲収差を抑制することができ、フォーカシング時の像面湾曲変動を抑えることができる。
【0028】
また、各実施例の光学系L0では、フォーカシングに際して第2レンズ群L2が移動する。迅速にかつ駆動装置の負担を少なくしてフォーカシングを行うため、径サイズを抑えることができる小型軽量な第2レンズ群L2を主フォーカスレンズ群としている。また、第2レンズ群L2は第1レンズ群L1に比べ軸上光線高さが抑えられているため、球面収差のフォーカシング変動を抑制しやすく、至近状態においても結像性能を確保しやすい。
【0029】
条件式(1)は、光学系L0において最も物体側に配置された正レンズPの焦点距離fp1を光学系L0の焦点距離fで正規化した式である。光学系L0の小型化、全長短縮を図るためには、最も物体側に配置された正レンズPの屈折力を適切に設定することが重要である。条件式(1)は、球面収差およびコマ収差をバランスよく補正し、光学系L0の小型化を実現するための条件を示している。
【0030】
条件式(1)の上限値を上回ると、最も物体側に配置された正レンズPの焦点距離が短くなり屈折力が強くなるため、正レンズPより像側のレンズに入射する光束の収斂性が強くなる。そのため、フォーカシングによる緒収差の変動を抑制しようとすると、第2レンズ群L2へ入射する光束の収斂性を弱くするために、第1レンズ群L1において正レンズPの像側に負の屈折力のレンズを配置する必要が生じる。この場合、第1レンズ群L1に強い負の屈折力のレンズを配置する、あるいは複数枚の負の屈折力のレンズを配置する必要が生じ、結果として、球面収差の製造誤差に対するロバスト性を確保しづらくなる。
【0031】
条件式(1)の下限値を下回ると、正レンズPの近軸領域の焦点距離が無限大あるいは負であることを意味し、非球面形状等で収差補正することを意味する。近軸領域が負の屈折力を有し、周辺域で正の屈折力を有す構成とした場合、高次の球面収差が発生しやすくなり、高い結像性能を確保しづらくなる。
【0032】
条件式(2)は、光学系L0の光学全長TLと光学系L0の焦点距離fの比を規定した式で所謂テレ比を規定している。ここで、光学全長とは、最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの光軸上の距離に空気換算でのバックフォーカスBFを加えた長さである。空気換算でのバックフォーカスBFは、実質的に屈折力を有さない光学部材であるカバーガラスやローパスフィルタ等の光路長を空気換算した値である。また、光学系L0に配置されてもよい実質的に屈折力を有さない光学部材である屈曲プリズムやカバーガラス等は、レンズとはみなさない。たとえば、光学系L0の最も物体側もしくは最も像側に配置されるカバーガラスは、光学系L0の屈折力の20分の1以下の屈折力となり、実質的に屈折力を有しておらず、レンズとはみなさない。
【0033】
光学全長を短縮しようとすると、前方レンズ群だけでは軸上色収差と倍率色収差をバランス良く補正することが困難となる。このため、例えば、開口絞りSPよりも像側の後方レンズ群でも色収差を補正することが必要となってくる。
【0034】
条件式(2)の上限値を上回った場合、収差補正の観点では有利だが、光学系L0が大型化し、光学系L0を保持する鏡筒の大型化を招く。条件式(2)の下限値を下回った場合、球面収差およびコマ収差といった諸収差の補正と色収差補正の両立が難しくなり、レンズ枚数の増加を招く。
【0035】
各実施例の光学系L0では、条件式(1)および(2)を満足するように各要素を適切に設定している。これにより、小型かつ軽量でありながら色収差を良好に補正し高い光学性能が得られる光学系を実現することができる。
【0036】
さらに、条件式(1)および(2)の数値範囲を以下の条件式(1a)および(2a)の範囲とすることがより好ましい。
【0037】
0.3<fp1/f<1.9 ・・・(1a)
0.90<TL/f<1.17 ・・・(2a)
条件式(1a)を満たすことにより、球面収差の発生を抑えつつ、像面湾曲の抑制ができ、光学系L0の軽量化の実現と高い結像性能の確保が容易となる。
【0038】
条件式(2a)を満たすことにより、軸上色収差を所定量に保ちつつ、歪曲収差を抑制しやすい。
【0039】
また、条件式(1)および(2)の数値範囲は、以下の条件式(1b)および(2b)の範囲とすることがさらに好ましい。
【0040】
0.55<fp1/f<1.85 ・・・(1b)
0.95<TL/f<1.15 ・・・(2b)
また、小型な撮像装置を形成するためには装着される光学系も小型であることが要求されるため、光学系L0のレンズの構成枚数は少ない方が好ましい。しかしながら、レンズの構成枚数が少なる過ぎると、結像性能の確保が難しくなる、あるいは製造誤差による性能劣化が生じやすい。このため、要求性能に必要とされる適切な組み合わせ枚数で光学系L0を構成することが重要である。
【0041】
各実施例の光学系L0は中望遠系の光学系であって、6枚以上12枚以下のレンズから実質的に構成されている。中望遠系の光学系のため、撮像レンズにおいて課題となる主光線角度(CRA)、歪曲、および周辺光量確保が改善しやすいため、12枚以下の構成枚数で十分に収差を抑制することができ、光学系の小型化も図ることができる。
【0042】
次に、各実施例の光学系が満足することが好ましい条件について述べる。各実施例の光学系は、以下の条件式(2)から(12)のうち1つ以上を満足することが好ましい。
【0043】
-1.0<SFA<2.0 ・・・(3)
1.75<ndm<2.20 ・・・(4)
1.49<ndn<1.80 ・・・(5)
1.65<ndLp<2.20 ・・・(6)
-0.55<r1Lp/f<-0.10 ・・・(7)
-1.30<f1/f2<-0.65 ・・・(8)
-0.9<f2/f<-0.2 ・・・(9)
ここで、SFAは第1レンズ群L1と第2レンズ群L2の空気間隔からなる空気レンズのシェープファクタ(形状因子)である。ndmは光学系L0を構成する全ての光学素子(レンズ)の材料のうち最大となる屈折率である。ndnは光学系L0を構成する全ての光学素子(レンズ)のうち負レンズの材料の屈折率の平均値(平均屈折率)である。ndLPは第2レンズ群L2に含まれる正レンズLpの屈折率である。r1Lpは第2レンズ群L2に含まれる正レンズLpの物体側のレンズ面の曲率半径である。f1は第1レンズ群L1の焦点距離である。f2は第2レンズ群L2の焦点距離である。
【0044】
シェープファクタSFAは、第1レンズ群L1の最も像側のレンズ面と第2レンズ群L2の最も物体側のレンズ面とで形成される空気レンズのシェープファクタである。第1レンズ群L1の最も像側のレンズ面の曲率半径をR1L、第2レンズ群L2の最も物体側のレンズ面の曲率半径をR2Fとするとき、シェープファクタSFAは、SFA=(R2F+R1L)/(R2F-R1L)で定義される。レンズ面が非球面形状の場合は、曲率半径はそのベースR(基準となる2次曲面の半径)を意味する。
【0045】
条件式(3)は、第1レンズ群L1と第2レンズ群L2の空気間隔からなる空気レンズの形状を規定した式である。条件式(3)は、無限遠物体における球面収差を抑えつつ、フォーカシングの際に生じる至近側での球面収差やコマ収差の変動を抑制するためのものである。この空気レンズの物体側の面の屈折力が大きい場合、特に空気レンズの物体側の面が強い凸面を有する場合、フォーカシングによる収差変動を抑制することが難しくなる。条件式(3)の上限値を上回ると、空気レンズの物体側の面の曲率が強まり、至近域の球面収差の補正不足を招き、好ましくない。条件式(3)の下限値を下回ると、空気レンズの像側の面の曲率が強まり、至近域の像面湾曲や非点隔差の増大を招き、好ましくない。
【0046】
条件式(4)は、光学系L0に使われている材料の屈折率のうち最大となる屈折率ndmを規定した式である。条件式(4)は、光学全長の短縮を図りつつ、球面収差及びコマ収差を良好に補正するためのものである。条件式(4)の上限値を上回って、正レンズに使われている材料の屈折率が高くなると、諸収差の補正には有利だが、アッベ数が不足し、軸上色収差および倍率色収差の補正、特に二次スペクトルの補正が困難となる。結果、所望の性能を確保しようとすると、光学系L0の大型化やレンズ構成枚数の増加を招くため好ましくない。条件式(4)の下限値を下回って、材料の屈折率が低くなると、軸上色収差の補正には有利だが、像面湾曲および歪曲収差の補正が困難になり好ましくない。
【0047】
条件式(5)は、光学系L0を構成するレンズのうち負レンズに使われている材料の屈折率の平均値ndnを規定した式である。条件式(5)は、ペッツバール和を抑制し、像面湾曲を補正するためのものである。条件式(5)の上限値を上回って、負レンズに使われている材料の屈折率が高くなると、ペッツバール和の改善が困難となる。結果、所望の性能を確保しようとすると、光学系L0の大型化を招くため好ましくない。条件式(5)の下限値を下回って、負レンズに使われている材料の屈折率が低くなると、像面湾曲の補正には有利だが、ガラスの特性上、屈折率が低くなるにつれて、アッベ数大きくなり、一次の色収差補正不足を招く。このため、倍率色収差の補正が困難になり好ましくない。
【0048】
条件式(6)は、第2レンズ群L2に含まれる正レンズLpの屈折率ndLpを規定したものである。ガラスの特性上、屈折率が大きくなるにつれて、アッベ数が小さくなり、二次分散が大きくなるため、倍率色収差の補正不足を招く。このため、所望の色収差に抑えようとすると屈折力を弱くせざるを得ず、レンズ全長の大型化を招く。テレフォト型のレンズにおいて、レンズ構成枚数を少なくし小型化を図った場合、ペッツバール和が負の値となりやすく、像面IPがオーバー側へ倒れ、非点隔差が大きくなってしまう。そのため、正レンズLpの屈折率を適性化し、像面湾曲や非点隔差を良好に補正することが重要となる。
【0049】
条件式(6)の上限値を上回ると、像面補正には有利だが、歪曲収差と倍率色収差の補正を両立させることが難しくなり好ましくない。条件式(6)の下限値を下回ると、像面湾曲を補正するために負レンズの屈折力を弱める必要があり、その結果バックフォーカスの増大を招くため好ましくない。
【0050】
条件式(7)は、第2レンズ群L2に含まれる正レンズLpの物体側のレンズ面の曲率半径r1Lpを光学系L0の焦点距離fで規定した式である。条件式(7)は、光学系L0の像面湾曲を補正し、さらにフォーカシングによる像面湾曲変動および歪曲収差変動を抑制するためのものである。条件式(7)の上限値を上回った場合、正レンズLpの物体側のレンズ面の曲率半径が正となり、軸上色収差および球面収差の補正には有利となる。しかし、フォーカシングの際に生じる像面湾曲変動が大きくなり、好ましくない。条件式(7)の下限値を下回った場合、正レンズLpの物体側のレンズ面の曲率半径が小さくなりすぎ、所望の屈折力を確保しにくくなる。このため、第2レンズ群L2内の色消し作用を得ることが難しくなり好ましくない。
【0051】
条件式(8)は、第1レンズ群L1の焦点距離f1と第2レンズ群L2の焦点距離f2の比を規定した式であり、フォーカシングによる球面収差変動を適切に設定するためのものである。条件式(8)の上限値を上回ると、第1レンズ群L1の焦点距離f1が短く、屈折力が強くなるため、第2レンズ群L2に入射する光束の収斂性が強くなる。そのため、フォーカシングによる緒収差の変動を抑制しようとすると、第2レンズ群L2の屈折力を強くする必要がある。しかし、これにより、製造誤差に対する球面収差の敏感度が高くなるため好ましくない。条件式(8)の下限値を下回ると、第2レンズ群L2の屈折力が強くなり、光学系L0の全長短縮には有利だが、フォーカシングによる軸上色収差の変動が大きくなり、好ましくない。
【0052】
条件式(9)は、第2レンズ群L2の焦点距離f2と光学系L0の焦点距離fの比を規定した式で、フォーカスレンズ群の小型化と諸収差を良好に抑制するためのものである。条件式(9)の上限値を上回って、第2レンズ群L2の焦点距離f2が大きくなると、第2レンズ群L2の屈折力が強くなり過ぎて、フォーカシングの際の軸上色収差および球面収差といった緒収差の変動を抑えることが難しくなるため好ましくない。条件式(9)の下限値を下回って、第2レンズ群L2の焦点距離f2が小さくなると、第2レンズ群L2の屈折力が弱くなり、フォーカスストロークの増加を招き、光学系L0の大型化を招くなるため好ましくない。
【0053】
なお、条件式(3)乃至(9)の数値範囲は、以下の条件式(3a)乃至(9a)の範囲とすることがより好ましい。
【0054】
0<SFA<1.1 ・・・(3a)
1.80<ndm<2.15 ・・・(4a)
1.50<ndn<1.75 ・・・(5a)
1.72<ndLp<2.15 ・・・(6a)
-0.45<r1Lp/f<-0.15 ・・・(7a)
-1.0<f1/f2<-0.8 ・・・(8a)
-0.8<f2/f<-0.4 ・・・(9a)
また、条件式(3)乃至(9)の数値範囲は、以下の条件式(3b)乃至(9b)の範囲とすることがさらに好ましい。
【0055】
0.19<SFA<0.86 ・・・(3b)
1.83<ndm<2.10 ・・・(4b)
1.55<ndn<1.68 ・・・(5b)
1.8<ndLp<2.1 ・・・(6b)
-0.31<r1Lp/f<-0.22 ・・・(7b)
-0.98<f1/f2<-0.84 ・・・(8b)
-0.65<f2/f<-0.45 ・・・(9b)
次に、各実施例の光学系L0において、満足することが好ましい構成について述べる。
【0056】
第1レンズ群L1は、複数枚の正レンズと、1枚の負レンズからなることが好ましい。これにより、球面収差、軸上色収差、および倍率色収差を良好に補正することが容易になる。また1枚の負レンズは、単レンズではなく、接合レンズの一部として第1レンズ群L1内に配置されることが好ましい。これにより、屈折力を大きくした際に課題となる偏心収差(偏心コマ収差、偏心色収差)の発生を抑制することができる。
【0057】
また、第1レンズ群L1は、非球面を有するレンズを含むことが好ましい。光学系L0の光学全長を短縮すると、球面収差および画面周辺域のコマ収差を抑制することが難しくなる。そのため、軸上の光線高さが比較的高い第1レンズ群L1に非球面を有するレンズを配置することにより、光学全長の短縮と収差抑制の両立がしやすくなる。
【0058】
開口絞りSPは、第1レンズ群L1の最も像側に配置されていることが好ましい。これにより、第3レンズ群L3へ入射する軸外光線の光線高さを確保しやすく、光学系L0の小型化を図った際に課題となる像面湾曲および歪曲収差の補正が容易となる。
【0059】
第2レンズ群L2は、1枚の負レンズと、1枚の正レンズから構成されることが好ましい。これにより、第2レンズ群L2内の色消しが実現でき、至近領域での軸上色収差を抑えることができる。また、各レンズの屈折力を適正化しやすく、フォーカシングの際に生じる像面湾曲の変動および画面周辺域(軸外)のコマ収差の変動を良好に抑制することができる。
【0060】
また、第2レンズ群L2は、物体側から像側へ順に配置された、負の屈折力の球面レンズと、像側に凸形状を有するメニスカス形状の正の屈折力の球面レンズから構成されることが好ましい。これにより、第2レンズ群L2は、所望の屈折力を確保した上で、フォーカシングによる像面湾曲変動を抑えることができる。
【0061】
フォーカシングに際して、第2レンズ群L2のみが移動することが好ましい。フォーカシングの際に像面IPに対して第1レンズ群L1を固定することにより、高い位置精度を必要とする第2レンズ群L2を外部から保護する筒状の構成とすることが可能となる。また、可動群を減らすことができ、機構部品の簡素化が図れ、コスト低減につながる。機構部品の簡素化は、ゴミ等の発生を低減することができ、高い性能を維持し、ロバストな光学系を構成することができる。
【0062】
第3レンズ群L3は、正の屈折力を有することが好ましい。これにより、第2レンズ群L2の位置敏感度(フォーカス敏感度)を確保しやすく、第2レンズ群L2のフォーカスストロークを短縮でき、光学系L0の全長短縮が可能となる。位置敏感度ESとは、移動レンズ群を光軸方向に移動させた距離Δxに対する結像位置(ピント位置)の光軸方向の移動量Δskの比(ES=Δsk/Δx)である。
【0063】
第3レンズ群L3は、非球面レンズから構成されることが好ましい。これにより、第3レンズ群L3を構成するレンズの少枚数化を図ることができ、また、像面湾曲および非点隔差を効果的に補正することができる。非球面レンズは、一般的に球面レンズと比べた場合製造難易度が高い。特に、プラスチック非球面レンズは、温度環境下または湿度環境下によって特性が変化しやすい。第3レンズ群L3に入射する軸上光線の光線高さは、第1レンズ群L1や第2レンズ群L2の場合に比べて低く、上記特性変化による光学系L0の性能変化が生じにくい。このため、第3レンズ群L3を非球面レンズから構成することで、第3レンズ群L3を構成するレンズの少枚数化と像面湾曲および非点隔差の効果的な補正の両立がしやすい。非球面レンズの材料にプラスチックを採用することにより、レンズ形状に変曲点があっても高い精度でレンズを成形でき、また光学系L0の軽量化を図ることもできる。
【0064】
また、第3レンズ群L3は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の非球面レンズと負の屈折力の非球面レンズの2枚のレンズから構成されることが好ましい。これにより、第3レンズ群L3内での屈折力配置をテレフォト構成とすることができ、バックフォーカスを短縮することができ、光学系L0の全長短縮を実現できる。
【0065】
第1レンズ群L1、第2レンズ群L2、および第3レンズ群L3の各レンズ群において、負レンズの枚数は1であることが好ましい。これにより、各レンズ群内での一次の色消しを行うことができ、フォーカシングを行った際に課題となる軸上色収差や倍率色収差の変動を抑えることができる。
【0066】
また、各実施例の光学系L0では、いずれかのレンズ群全体又はその一部を防振群として光軸に対して垂直な方向の成分を含むように移動させ、又は光軸を含む面内方向へ回転移動(揺動)させることにより、防振を行う構成とすることもできる。これにより、像ぶれ補正を行うことができる。
【0067】
次に、各実施例の光学系L0について詳細に述べる。
【0068】
実施例1の光学系L0は、Fナンバー2.06、半画角17.2度のテレフォト型の光学系である。実施例1の光学系L0は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群L1、負の屈折力の第2レンズ群L2、正の屈折力の第3レンズ群L3からなる。第1レンズ群L1は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の非球面レンズ、正レンズ、負レンズと正レンズの接合レンズから構成される。開口絞りSPは、第1レンズ群L1の最も像側に配置されている。第2レンズ群L2は、物体側から像側へ順に配置された、負レンズ、正レンズから構成され、フレアーカット絞りFPがその間に配置されている。第3レンズ群L3は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の非球面レンズ、負の屈折力の非球面レンズから構成される。
【0069】
実施例2の光学系L0は、Fナンバー2.06、半画角17.2度のテレフォト型の光学系である。実施例2の光学系L0は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群L1、負の屈折力の第2レンズ群L2、正の屈折力の第3レンズ群L3からなる。第1レンズ群L1は、物体側から像側へ順に配置された、正レンズ、正の屈折力の非球面レンズ、負レンズと正レンズの接合レンズから構成される。開口絞りSPは、第1レンズ群L1の最も像側に配置されている。第2レンズ群L2は、物体側から像側へ順に配置された、負レンズ、正レンズから構成され、フレアーカット絞りFPがその間に配置されている。第3レンズ群L3は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の非球面レンズ、負の屈折力の非球面レンズから構成される。
【0070】
実施例3の光学系L0は、Fナンバー2.83、半画角17.2度のテレフォト型の光学系である。実施例3の光学系L0は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群L1、負の屈折力の第2レンズ群L2、正の屈折力の第3レンズ群L3からなる。第1レンズ群L1は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の非球面レンズ、負レンズと正レンズの接合レンズから構成される。開口絞りSPは、第1レンズ群L1の最も像側に配置されている。第2レンズ群L2は、物体側から像側へ順に配置された、負レンズ、正レンズから構成され、フレアーカット絞りFPがその間に配置されている。第3レンズ群L3は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の非球面レンズ、負の屈折力の非球面レンズから構成される。
【0071】
実施例4の光学系L0は、Fナンバー2.83、半画角14.3度のテレフォト型の光学系である。実施例4の光学系L0は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群L1、負の屈折力の第2レンズ群L2、正の屈折力の第3レンズ群L3からなる。第1レンズ群L1は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の非球面レンズ、負レンズと正レンズの接合レンズから構成される。開口絞りSPは、第1レンズ群L1の最も像側に配置されている。第2レンズ群L2は、物体側から像側へ順に配置された、負レンズ、正レンズから構成され、フレアーカット絞りFPがその間に配置されている。第3レンズ群L3は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の非球面レンズ、負の屈折力の非球面レンズから構成される。
【0072】
実施例5の光学系L0は、2.40、半画角16.1度のテレフォト型の光学系である。実施例5の光学系L0は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群L1、負の屈折力の第2レンズ群L2、正の屈折力の第3レンズ群L3からなる。第1レンズ群L1は、物体側から像側へ順に配置された、正レンズ、正の屈折力の非球面レンズ、正レンズと負レンズの接合レンズから構成される。開口絞りSPは、第1レンズ群L1の最も像側に配置されている。第2レンズ群L2は、物体側から像側へ順に配置された、負レンズ、正レンズから構成され、フレアーカット絞りFPがその間に配置されている。第3レンズ群L3は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の非球面レンズ、負の屈折力の非球面レンズから構成される。
【0073】
各実施例において、無限遠から近距離へのフォーカシングに際して第2レンズ群L2が像側へ移動する。
【0074】
以下に、実施例1~5にそれぞれ対応する数値実施例1~5を示す。
【0075】
各数値実施例の面データにおいて、rは各光学面の曲率半径、d(mm)は第m面と第(m+1)面との間の軸上間隔(光軸上の距離)を表わしている。ただし、mは光入射側から数えた面の番号である。また、ndは各光学部材のd線に対する屈折率、νdは光学部材のアッベ数を表わしている。なお、ある材料のアッベ数νdは、フラウンホーファ線のd線(587.6nm)、F線(486.1nm)、C線(656.3nm)における屈折率をNd、NF、NCとするとき、νd=(Nd-1)/(NF-NC)で表される。
【0076】
なお、各数値実施例において、d、焦点距離(mm)、Fナンバー、半画角(°)は全て各実施例の光学系が無限遠物体に焦点を合わせた時の値である。「バックフォーカス」は、レンズ最終面(最も像側のレンズ面)から近軸像面までの光軸上の距離を空気換算長により表記したものである。「光学全長」は、光学系の最前面(最も物体側のレンズ面)から最終面までの光軸上の距離にバックフォーカスを加えた長さである。「レンズ群」は、複数のレンズから構成される場合に限らず、1枚のレンズから構成される場合も含むものとする。
【0077】
また、光学面が非球面の場合は、面番号の右側に、*の符号を付している。非球面形状は、Xを光軸方向の面頂点からの変位量、hを光軸と垂直な方向の光軸からの高さ、Rを近軸曲率半径、kを円錐定数、A4、A6、A8、A10、A12を各次数の非球面係数とするとき、
x=(h2/R)/[1+{1-(1+k)(h/R)21/2]+A4×h4+A6×h6+A8×h8+A10×h10+A12×h12
で表している。なお、各非球面係数における「e±XX」は「×10±XX」を意味している。
【0078】

[数値実施例1]
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd θgF
1* 45.484 6.54 1.61881 63.85 0.5418
2* 100.032 0.20
3 41.588 7.67 1.49700 81.61 0.5386
4 -77.723 0.20
5 1085.457 1.50 1.57501 41.50 0.5767
6 20.428 8.40 1.53775 74.70 0.5392
7 -113.549 2.50
8(絞り) ∞ 1.10
9 257.137 0.80 1.48749 70.44 0.5303
10 15.989 4.67
11 ∞ 3.44
12 -21.529 3.39 1.92286 20.88 0.6391
13 -21.702 5.38
14* 230.134 5.66 1.54390 56.00 0.5567
15* -38.290 8.66
16* -1988.488 2.29 1.63560 23.90 0.6353
17* 43.861 14.16
18 ∞ 2.00 1.51680 64.20 0.5342
19 ∞ 1.00
像面 ∞

非球面データ
第1面
K = 2.96806e+00 A 4=-9.13771e-06 A 6=-1.42560e-08 A 8=-2.48313e-11
A10=-1.11937e-14

第2面
K =-8.23971e-01 A 4=-3.47633e-07 A 6=-1.14014e-08 A 8=-3.75067e-13
A10=-6.03222e-14 A12= 1.27110e-16

第14面
K = 0.00000e+00 A 4= 1.27087e-05 A 6=-1.82007e-07 A 8= 9.64103e-10
A10=-4.63195e-12 A12= 6.92900e-15

第15面
K = 0.00000e+00 A 4= 1.90712e-05 A 6=-2.79056e-07 A 8= 1.07545e-09
A10=-3.71626e-12 A12= 3.80000e-15

第16面
K = 0.00000e+00 A 4=-5.91629e-05 A 6=-1.07865e-07 A 8= 6.08516e-10
A10= 1.30833e-13 A12=-4.21693e-16

第17面
K = 0.00000e+00 A 4=-7.74968e-05 A 6= 4.03666e-08 A 8= 3.86151e-10
A10=-7.47589e-13 A12= 8.18071e-16

各種データ

焦点距離 70.00
Fナンバー 2.06
半画角(°) 17.17
像高 21.64
光学全長 78.88
BF 16.48

レンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 37.50
2 9 -43.71
3 14 238.06

[数値実施例2]
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd θgF
1 29.451 5.91 1.60311 60.64 0.5415
2 193.782 0.20
3* 41.932 6.09 1.54390 56.00 0.5567
4* 227.711 0.20
5 107.914 1.50 1.72342 37.95 0.5836
6 15.874 8.76 1.55200 70.70 0.5421
7 -101.869 1.50
8(絞り) ∞ 1.10
9 151.404 1.00 1.48749 70.23 0.5300
10 13.927 4.87
11 ∞ 3.54
12 -17.537 3.20 2.00069 25.46 0.6136
13 -18.180 5.33
14* 3626.846 7.59 1.54390 56.00 0.5567
15* -38.784 4.55
16* 99.881 2.87 1.63560 23.90 0.6353
17* 40.156 14.78
18 ∞ 2.00 1.51680 64.20 0.5342
19 ∞ 1.00
像面 ∞

非球面データ
第3面
K =-3.55217e+00 A 4=-4.98759e-06 A 6=-1.93372e-08 A 8=-5.56193e-11
A10= 7.27618e-14

第4面
K = 2.53637e+01 A 4=-7.77878e-06 A 6=-1.52029e-08 A 8=-5.90537e-11
A10= 1.69256e-13 A12=-1.39815e-16

第14面
K = 0.00000e+00 A 4= 7.79426e-06 A 6=-1.42624e-07 A 8= 7.43783e-10
A10=-1.11380e-12 A12= 8.46885e-16

第15面
K = 0.00000e+00 A 4= 1.60490e-05 A 6=-3.76320e-07 A 8= 1.75141e-09
A10=-4.95971e-12 A12= 7.87279e-15

第16面
K = 0.00000e+00 A 4=-5.97085e-05 A 6=-2.58163e-07 A 8= 1.14394e-09
A10=-1.18007e-12 A12= 1.19198e-15

第17面
K = 0.00000e+00 A 4=-8.31052e-05 A 6=-1.79256e-08 A 8= 6.00358e-10
A10=-1.30517e-12 A12= 1.47772e-15

各種データ

焦点距離 70.00
Fナンバー 2.06
半画角(°) 17.17
像高 21.64
光学全長 75.31
BF 17.10

レンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 35.61
2 9 -39.82
3 14 170.25

[数値実施例3]
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd θgF
1* 20.753 6.59 1.58313 59.46 0.5418
2* 112.895 0.20
3 33.624 1.50 1.83400 37.34 0.5790
4 14.293 6.95 1.55032 75.50 0.5405
5 -166.220 2.50
6(絞り) ∞ 0.98
7 2160.278 1.13 1.48749 70.23 0.5300
8 13.601 3.97
9 ∞ 4.90
10 -16.863 2.11 1.84666 23.78 0.6205
11 -16.052 7.49
12* 577.479 5.00 1.54390 56.00 0.5567
13* -47.486 5.68
14* 2219.682 2.57 1.63560 23.90 0.6353
15* 55.669 15.09
16 ∞ 2.00 1.51680 64.20 0.5342
17 ∞ 1.00
像面 ∞

非球面データ
第1面
K =-1.81046e+00 A 4= 2.09166e-05 A 6= 4.00281e-09 A 8=-5.74860e-13
A10= 3.98211e-14

第2面
K = 3.56894e+01 A 4= 2.02190e-06 A 6= 1.41944e-09 A 8=-3.44025e-11
A10=-7.13559e-14 A12= 2.75841e-16

第12面
K = 0.00000e+00 A 4= 5.98833e-06 A 6=-3.50743e-07 A 8= 1.70794e-09
A10=-3.69872e-12 A12= 2.21229e-15

第13面
K = 0.00000e+00 A 4= 1.72442e-05 A 6=-6.27232e-07 A 8= 2.57544e-09
A10=-5.47644e-12 A12= 4.10841e-15

第14面
K = 0.00000e+00 A 4=-6.88918e-05 A 6=-3.51633e-07 A 8= 1.55300e-09
A10=-4.50926e-14 A12=-1.93775e-15

第15面
K = 0.00000e+00 A 4=-9.44259e-05 A 6=-3.68800e-08 A 8= 1.12558e-09
A10=-2.88301e-12 A12= 3.34678e-15

各種データ

焦点距離 70.00
Fナンバー 2.83
半画角(°) 17.17
像高 21.64
光学全長 68.97
BF 17.41

レンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 32.27
2 7 -38.25
3 12 440.33

[数値実施例4]
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd θgF
1* 24.080 7.27 1.58313 59.38 0.5423
2* 151.493 0.24
3 40.424 1.82 1.83400 37.34 0.5790
4 17.178 8.28 1.53775 74.70 0.5392
5 -119.964 3.04
6(絞り) ∞ 1.28
7 382.294 0.94 1.51633 64.14 0.5353
8 15.267 4.00
9 ∞ 4.77
10 -20.175 2.97 1.84666 23.78 0.6205
11 -19.631 10.54
12* -241.447 7.51 1.54390 56.00 0.5567
13* -48.092 9.65
14* -186.739 3.15 1.63560 23.90 0.6353
15* 132.546 15.23
16 ∞ 2.00 1.51680 64.20 0.5342
17 ∞ 1.00
像面 ∞

非球面データ
第1面
K =-1.56357e+00 A 4= 1.11325e-05 A 6= 6.10845e-09 A 8=-4.04958e-12
A10= 2.47904e-14

第2面
K = 3.51445e+01 A 4= 3.16642e-06 A 6= 5.37378e-09 A 8=-2.66373e-11
A10= 5.84652e-14 A12=-5.53356e-17

第12面
K = 0.00000e+00 A 4= 3.17902e-06 A 6=-6.92691e-08 A 8= 8.20301e-10
A10=-1.82511e-12 A12= 1.49613e-15

第13面
K = 0.00000e+00 A 4=-1.80995e-06 A 6=-1.14062e-07 A 8= 6.97151e-10
A10=-1.34906e-12 A12= 2.21425e-15

第14面
K = 0.00000e+00 A 4=-5.48109e-05 A 6=-9.72549e-08 A 8= 4.73922e-10
A10= 5.35016e-13 A12=-1.34552e-15

第15面
K = 0.00000e+00 A 4=-5.89697e-05 A 6=-1.26044e-08 A 8= 4.24455e-10
A10=-7.41555e-13 A12= 8.03208e-16

各種データ

焦点距離 85.00
Fナンバー 2.83
半画角(°) 14.28
像高 21.64
光学全長 83.01
BF 17.55

レンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 36.16
2 7 -11.58
3 11 21.27

[数値実施例5]
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd θgF
1 40.157 4.25 1.60311 60.64 0.5415
2 122.611 0.21
3* 47.097 7.45 1.54390 56.00 0.5567
4* -25033.646 0.21
5 38.385 4.60 1.52841 76.46 0.5396
6 -1430.299 1.07 1.86966 20.02 0.6434
7 75.853 2.68
8(絞り) ∞ 1.15
9 -508.195 1.07 1.51680 64.20 0.5342
10 19.067 5.47
11 ∞ 4.90
12 -22.230 3.00 1.80809 22.76 0.6285
13 -22.263 12.12
14* 202.449 7.53 1.54390 56.00 0.5567
15* -32.763 12.28
16* 734.377 2.36 1.63560 23.90 0.6353
17* 43.025 13.32
18 ∞ 2.00 1.51680 64.20 0.5342
17 ∞ 1.00
像面 ∞

非球面データ
第3面
K = 3.79173e+00 A 4=-4.71472e-06 A 6= 8.43671e-10 A 8=-1.71943e-11
A10= 2.51763e-14

第4面
K =-2.74433e+09 A 4= 6.44551e-07 A 6= 2.16364e-08 A 8=-1.09249e-10
A10= 4.45518e-13 A12=-5.48525e-16

第14面
K = 0.00000e+00 A 4=-5.80441e-06 A 6=-5.03833e-08 A 8= 7.16794e-11
A10=-6.46924e-15 A12=-7.52974e-17

第15面
K = 0.00000e+00 A 4=-2.07249e-06 A 6=-5.28643e-08 A 8= 6.83784e-11
A10= 2.03482e-14 A12=-1.34488e-16

第16面
K = 0.00000e+00 A 4=-8.77813e-05 A 6= 1.31099e-07 A 8= 1.27917e-10
A10=-8.22664e-14 A12=-2.67554e-16

第17面
K = 0.00000e+00 A 4=-9.83811e-05 A 6= 2.13096e-07 A 8=-2.21469e-10
A10= 1.83559e-13 A12= 8.92750e-18

各種データ

焦点距離 75.00
Fナンバー 2.40
半画角(°) 16.09
像高 21.64
光学全長 86.00
BF 15.64

レンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 40.80
2 9 -42.22
3 14 110.83

各数値実施例における種々の値を、以下の表1にまとめて示す。
【0079】
【表1】
【0080】
[撮像装置]
次に、本発明の光学系L0を撮像光学系として用いたデジタルスチルカメラ(撮像装置)10の実施例について、図11を用いて説明する。図11において、13はカメラ本体、11は実施例1乃至5で説明したいずれかの光学系L0によって構成された撮影光学系である。12はカメラ本体13に内蔵され、撮影光学系11によって形成された光学像を受光して光電変換するCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)である。カメラ本体13はクイックターンミラーを有する所謂一眼レフカメラでも良いし、クイックターンミラーを有さない所謂ミラーレスカメラでも良い。
【0081】
このように本発明の光学系L0をデジタルスチルカメラ等の撮像装置に適用することにより、レンズが小型である撮像装置を得ることができる。
【0082】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について説明したが、本発明はこれらの実施形態及び実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の組合せ、変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
L0 光学系
L1 第1レンズ群
L2 第2レンズ群
L3 第3レンズ群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11